(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172150
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネス取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20241205BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241205BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60R16/02 623Z
H02G3/04
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089691
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】鯉江 之典
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD14
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA20
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】車体への取り付けを自動化するのに有利なワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】車体に取り付けられるワイヤーハーネス10であって、電線11と、電線11の一部を覆うように電線11に取り付けられるシート20と、シート20に保持され、車体の取付対象40に吸着する磁石30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられるワイヤーハーネスであって、
電線と、
前記電線の一部を覆うように前記電線に取り付けられるシートと、
前記シートに保持され、前記車体の取付対象に吸着する磁石と、
を備える、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記電線は、並列に並ぶように複数あり、
前記シートは、折り曲げられて、複数の前記電線を挟み込みながら張り合わされ、
前記磁石は、板状であり、前記シートにおいて複数の前記電線が並んだ面に対向する平面状の部分に保持される、請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記磁石は、前記シートの内側で保持され、
前記シートは、前記磁石の一部を露出させる開口部を有する、請求項1又は2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
ワイヤーハーネスと、
車体の一部であり、前記ワイヤーハーネスが取り付けられる取付対象と、を有し、
前記ワイヤーハーネスは、請求項1又は2に記載のワイヤーハーネスであり、
前記取付対象は、前記磁石が吸着される位置を示す目印を有する、ワイヤーハーネス取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネス取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内部には、各種のワイヤーハーネスが配索されている。特許文献1は、シート部を含み、ワイヤーハーネスを構成する電線に巻き付けられる保護部材に関する技術を開示している。当該保護部材を巻き付けたワイヤーハーネスには、係止頭を含むクランプのバンドが更に巻き付けられる。バンドを巻き付けたワイヤーハーネスは、車体に形成されている嵌着係止孔に係止頭が嵌着されることで、車体に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤーハーネスを車体に取り付ける工程は、コスト又は工数削減等のために自動化されることが望ましい。しかし、特許文献1に開示のワイヤーハーネスでは、保護部材の周りをバンドで締め付ける作業工程を要することから、ワイヤーハーネスの取り付けを自動化させるには難がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、車体への取り付けを自動化するのに有利なワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車体に取り付けられるワイヤーハーネスであって、電線と、電線の一部を覆うように電線に取り付けられるシートと、シートに保持され、車体の取付対象に吸着する磁石と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体への取り付けを自動化するのに有利なワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るワイヤーハーネスの斜視図である。
【
図2】一実施形態に係るワイヤーハーネスの製作段階の状態を示す平面図である。
【
図3】一実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて一実施形態に係るワイヤーハーネス及びワイヤーハーネス取付構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るワイヤーハーネス10の斜視図である。
図1では、各々の一部が外方に露出した複数の磁石30が視認される方向から見たワイヤーハーネス10が示されている。また、
図1では、ワイヤーハーネス10に含まれる複数の電線11の両端部の図示は、便宜上、省略されている。
【0011】
ワイヤーハーネス10は、電力の供給又は通信信号の伝達のために自動車等の車両の内部に配索される部品である。ワイヤーハーネス10は、電線11と、シート20と、磁石30とを備え、車両を構成する車体の一部に取り付けられる。
【0012】
電線11は、電力線、信号線若しくはアース線等のいずれか又はそれらのいくつかの組み合わせである。本実施形態では、電線11は、3つある。電線11が複数ある場合、各々の電線11は、並列に並ぶ。以下、説明のために、各方向を次のように規定する。Z方向は、各々の電線11が並ぶ方向である。X方向及びY方向は、互いに垂直であり、かつ、各々Z方向に対して垂直である。X方向は、電線11の延伸方向である。なお、本実施形態では、各々の電線11がX方向に沿って直線状に延伸するものとしているが、一部の電線11が途中経路で分岐し、枝線となってもよい。
【0013】
図2は、ワイヤーハーネス10の製作段階の状態を示す平面図である。具体的には、
図2では、シート20を折り曲げる前のワイヤーハーネス10の状態が示されている。
【0014】
シート20は、電線11の一部を覆うように電線11に取り付けられる保護部材である。シート20は、例えば、自己粘着シート又はビニールシートである。ワイヤーハーネス10の製作前では、シート20は、電線11の一部に取り付けられる所定の長さに合わせてX方向を長さ方向とした矩形状の平形シートである。シート20には、Z方向に沿った幅方向でのおおよそ中心位置で、長さ方向に延伸する折り目FLが設定されている。本実施形態では、シート20は、折り目FLを基準として各々の領域が規定される、第1シート部21と第2シート部22とを有する。
【0015】
第1シート部21は、幅方向で折り目FLよりも一方の側にある。また、ワイヤーハーネス10が完成状態にあるときの第1シート部21において、外側に露出する面を第1外面21aと規定し、内側に隠れる面を第1内面21bと規定する。第1内面21bには、
図2に示すように、複数の電線11が、X方向に沿って延伸するように、かつ、Z方向で並ぶように配置される。
【0016】
第2シート部22は、幅方向で折り目FLよりも他方の側にある。また、ワイヤーハーネス10が完成状態にあるときの第2シート部22において、外側に露出する面を第2外面22aと規定し、内側に隠れる面を第2内面22bと規定する。第2内面22bには、
図2に示すように、後述する複数の磁石30が配置される。
【0017】
シート20は、第1内面21bに複数の電線11が配置され、更に第2内面22bに複数の磁石30が配置された後、
図2中の白抜きの矢印で示すように、折り目FLを基準として折り曲げられる。そして、シート20において、第1内面21bと第2内面22bとが複数の電線11を挟み込みながら張り合わされる。
【0018】
また、シート20は、磁石30の一部を露出させる開口部23を有する。本実施形態では、以下で詳説するが、各々の長さが異なる第1磁石30aと第2磁石30bとが第2シート部22に保持される。そこで、第2シート部22は、磁石30の設置数に合わせて、第1開口部23aと第2開口部23bとの2つの開口部23を有する。第1開口部23aは、第1磁石30aの配置位置に合わせて形成され、第1磁石30aの表面の一部を外方に露出させる形状を有する。第2開口部23bは、第2磁石30bの配置位置に合わせて形成され、第2磁石30bの表面の一部を外方に露出させる形状を有する。第1開口部23aと第2開口部23bとは、X方向で互いに離間する。開口部23の形状は、配置される磁石30の外形に合わせて設定される。本実施形態では、第1開口部23aと第2開口部23bとの開口形状は、各々矩形である。ただし、Z方向に沿った幅方向の寸法は、第1開口部23aと第2開口部23bとで互いに同一であるが、X方向に沿った長さ方向の寸法は互いに異なる。
【0019】
磁石30は、ワイヤーハーネス10が車両の内部に配索されるときに車体の一部に吸着する。磁石30は、板状である。磁石30の平面形状は、例えば矩形である。また、磁石30は、シート20において、複数の電線11が並んだときの各々同方向の側面である第1側面11aに対向する平面状の部分に保持される。本実施形態では、シート20の第2シート部22の一部が、第1側面11aに対向する平面状の部分となる。本実施形態では、磁石30は、上記のとおり、第2シート部22の第2内面22bに配置される。この場合、ワイヤーハーネス10の完成状態では、磁石30は、シート20の内側で保持されることになる。また、磁石30と第2内面22bとがY方向で重なる範囲では、例えば両面テープを用いて第2内面22bに磁石30を貼付させることで、磁石30を保持させることができる。
【0020】
また、磁石30は、ワイヤーハーネス10が車体の一部に取り付けられる長さ範囲に合わせて、X方向で互いに離間するように複数設けられてもよい。本実施形態では、第1磁石30aと第2磁石30bとの2つの磁石30が設けられる。また、複数の磁石30は、要求される吸着力又は吸着範囲に応じて、互いに異なる形状であってもよい。例えば、第1磁石30aと第2磁石30bとの各々のZ方向に沿った幅方向の寸法は、配置対象である第2シート部22の幅方向の寸法が均一であることから、互いに同一であってもよい。一方、第2磁石30bのX方向に沿った長さ方向の寸法である第2長さL2は、第1磁石30aの長さ方向の寸法である第1長さL1よりも長くてもよい。この場合、ワイヤーハーネス10において第2磁石30bが配置される部位は、第1磁石30aが配置される部位よりも、強い吸着力が得られ、かつ、車体の一部に対してより広い範囲で支持される。
【0021】
ここで、第2シート部22には、上記のとおり、第1磁石30aの配置位置に合わせて第1開口部23aが形成され、第2磁石30bの配置位置に合わせて第2開口部23bが形成されている。第1開口部23a及び第2開口部23bの各々の開口形状は、
図2に示すように、各々に対応する磁石30の平面形状に対してY方向視で内包されるように設定される。このように開口部23の開口形状が設定されることで、例えば、磁石30がワイヤーハーネス10から外れて車体の一部に吸着した状態で残存し、ワイヤーハーネス10が所定の取付位置から脱落するという事象を回避させやすくすることができる。
【0022】
図3は、一実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造1の斜視図である。
【0023】
ワイヤーハーネス取付構造1は、ワイヤーハーネス10を車両内の所定の取付位置に取り付けるための構造である。ワイヤーハーネス取付構造1は、ワイヤーハーネス10と、ワイヤーハーネス10が取り付けられる取付対象40とを有する。
【0024】
取付対象40は、車体の一部であり、例えば、金属製の板体である。取付対象40は、磁石30が吸着される位置を示す目印42を有してもよい。目印42は、例えば、各々磁石30の一部を露出させる各々の開口部23の開口形状及び形成位置に合わせて、取付対象40の表面41に形成されたケガキ線である。本実施形態では、表面41には、第1開口部23aの開口形状及び形成位置に合わせた第1目印42aと、第2開口部23bの開口形状及び形成位置に合わせた第2目印42bとが形成されている。
【0025】
なお、目印42は、ケガキ線に代えて、例えば、車体表面が非金属のシート等で覆われている場合に、各々の開口部23の開口形状及び形成位置に合わせて金属面のみを露出させた単なる平面部であってもよい。
【0026】
次に、ワイヤーハーネス10等の効果について説明する。
【0027】
車体に取り付けられるワイヤーハーネス10は、電線11と、電線11の一部を覆うように電線11に取り付けられるシート20と、シート20に保持され、車体の取付対象40に吸着する磁石30とを備える。
【0028】
このワイヤーハーネス10は、磁石30が設けられている部位を取付対象40上の所定の取付位置に近づけるのみで、車体に取り付けられる。そのため、ワイヤーハーネス10は、車体に取り付けられるに際して、係止頭を有して保護部材の周りをベルトで締め付けるベルトクランプ、又は、保護部材の周りをテープ巻きするテープ止めクランプなどのクランプ構造を要しない。つまり、ワイヤーハーネス10を車体に取り付ける工程では、少なくとも、ワイヤーハーネス10へのクランプの取付工程が不要となる。したがって、ワイヤーハーネス10によれば、製作コスト又は作業工数を低減させることができる。また、ワイヤーハーネス10の車体への取り付けは、ワイヤーハーネス10を取付対象40に近づけるという単純作業となることから、作業者に実施させる場合のみならず、作業ロボットに自動で実施させる場合にも簡易的に適用し得る。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、車体への取り付けを自動化するのに有利なワイヤーハーネス10を提供することができる。
【0030】
なお、ワイヤーハーネス10によれば、ベルトクランプ等のクランプ構造を要しないことから、車体の取付対象40には、例えばベルトクランプの係止頭を嵌合させるようなクランプ孔も要しない。したがって、本実施形態によれば、車体に関しても、クランプ孔を削減することができるので、車体のコスト又は製造工数の低減にも有利となり得る。
【0031】
また、ワイヤーハーネス10では、電線11は、並列に並ぶように複数有ってもよい。シート20は、折り曲げられて、複数の電線11を挟み込みながら張り合わされてもよい。磁石30は、板状であり、シート20において複数の電線11が並んだ面である第1側面11aに対向する平面状の部分に保持されてもよい。
【0032】
このワイヤーハーネス10によれば、シート20は、単に一度折り曲げられる作業のみで複数の電線11に取り付けられるので、ワイヤーハーネス10を容易に製作させることができ、ひいては、製作工数を低減させることができる。また、磁石30が板状であるとともにシート20の平面状の部分に保持されるので、上記例示のY方向の寸法に相当するワイヤーハーネス10の厚みをより薄くすることができ、ひいては、ワイヤーハーネス10のコンパクト化に有利となる。
【0033】
また、ワイヤーハーネス10では、磁石30は、シート20の内側で保持されてもよい。シート20は、磁石30の一部を露出させる開口部23を有してもよい。
【0034】
このワイヤーハーネス10によれば、磁石30がシート20の内側で保持されるので、ワイヤーハーネス10からの磁石30の脱落等を予め抑止させることができる。また、磁石30の一部は、シート20に設けられた開口部23から露出して直接的に取付対象40と対面するので、より強い吸着力で取付対象40と吸着し、その結果、ワイヤーハーネス10をより強固に取付対象40に支持させることができる。
【0035】
更に、ワイヤーハーネス取付構造1は、ワイヤーハーネスと、車体の一部であり、ワイヤーハーネスが取り付けられる取付対象40とを有する。ワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネス10である。取付対象40は、磁石30が吸着される位置を示す目印42を有してもよい。
【0036】
このワイヤーハーネス取付構造1によれば、作業者が目印42に基づいて磁石30を吸着させる位置を容易に把握することができるので、作業工数の更なる低減に有利となる。また、このような目印42の存在は、ワイヤーハーネス10の取り付けの自動化においても、例えば、センサー等に磁石30を吸着させる位置を瞬時に計測させることができる点で有利となる。
【0037】
なお、上記説明では、磁石30がシート20の内側で保持され、かつ、シート20が磁石30の一部を露出させる開口部23を有する場合を例示した。これに対して、例えば、シート20に対して磁石30を強固に貼付することで、シート20からの磁石30の脱落を抑止することができるなどの条件を満たす限り、磁石30がシートの外側で保持されてもよい。この場合、磁石30は、ワイヤーハーネス10の完成状態でシート20の外側で保持されるように、第2シート部22の第2外面22aに配置されることになる。また、磁石30がシート20の内側で保持される場合でも、必要な吸着力が得られるなどの条件を満たす限り、シート20に開口部23を設けず、磁石30は、シート20を介して車体の取付対象40に吸着されてもよい。
【0038】
以上、各実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ワイヤーハーネス取付構造
10 ワイヤーハーネス
11 電線
11a 第1側面
20 シート
22b 第2内面
23 開口部
30 磁石
40 取付対象
42 目印