(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172158
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】カラー、被締結部材及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20241205BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20241205BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241205BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
F16B2/08 B
H02G3/04 087
H02G3/30
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089700
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】岩間 俊樹
【テーマコード(参考)】
3J022
3J034
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA42
3J022EC14
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA12
3J022GB45
3J034AA12
3J034BA14
3J034CA03
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE03
5G363BA02
5G363DA11
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】公差許容範囲が広く、取付対象部材に加わる面圧を分散することが可能なカラーを提供する。
【解決手段】カラー40は、板状の第1鍔部51と第1円筒部52とを含む第1部材50と、板状の第2鍔部61と第2円筒部62とを含み、第2円筒部62が第1円筒部52と連結された第2部材60とを備え、取付対象部材23の貫通孔26に第1円筒部52及び第2円筒部62を挿通した場合に、第1円筒部52及び第2円筒部62の外径は貫通孔26の孔径よりも小さく、第1円筒部52及び第2円筒部62の外周面と貫通孔26の内周面との間には隙間Gが設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1鍔部と、前記第1鍔部の内周側において、前記第1鍔部の一方の面である第1突出面側に突出し、円筒形状を有する第1円筒部とを含む第1部材と、
板状の第2鍔部と、前記第2鍔部の内周側において、前記第2鍔部の一方の面である第2突出面側に突出し、円筒形状を有する第2円筒部とを含み、前記第2円筒部が前記第1円筒部と連結された第2部材と、
を備え、
取付対象部材の貫通孔に前記第1円筒部及び前記第2円筒部を挿通した場合に、前記第1円筒部及び前記第2円筒部の外径は前記貫通孔の孔径よりも小さく、前記第1円筒部及び前記第2円筒部の外周面と前記貫通孔の内周面との間には隙間が設けられる、カラー。
【請求項2】
前記第1円筒部は、前記第1円筒部の中心軸を通る第1対称面を基準として一方の領域である第1領域において、前記第1鍔部とは反対側の第1端面に設けられた第1凹部と、前記第1対称面を基準として前記第1領域とは反対側の領域である第2領域において、前記第1端面に設けられた第1凸部とを含み、
前記第2円筒部は、前記第2円筒部の中心軸を通る第2対称面を基準として一方の領域である第3領域において、前記第2鍔部とは反対側の第2端面に設けられた第2凹部と、前記第2対称面を基準として前記第3領域とは反対側の領域である第4領域において、前記第2端面に設けられた第2凸部とを含み、
前記第1部材と前記第2部材とは同一形状であり、
前記第1凹部と前記第2凸部とが嵌合し、前記第2凹部と前記第1凸部とが嵌合する、請求項1に記載のカラー。
【請求項3】
前記第1凹部及び前記第1凸部は、前記第1円筒部の中心軸方向から見て、前記第1端面の形状に沿って連続して形成された半円円弧形状である、請求項2に記載のカラー。
【請求項4】
貫通孔を有する取付対象部材と、
前記貫通孔に前記第1円筒部及び前記第2円筒部が挿通された請求項1又は2に記載のカラーと、
を備え、
前記第1円筒部及び前記第2円筒部の外周面と前記貫通孔の内周面との間には隙間が設けられている、被締結部材。
【請求項5】
電線と、
請求項4に記載の被締結部材と、
を備え、
前記被締結部材はプロテクタである、ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー、被締結部材及びワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の取付対象部材の貫通孔に金属製のカラーを装着する構造が知られている。樹脂製の取付対象部材に金属製のカラーを装着することで、ボルトなどのような金属製の締結具で取付対象部材を締結した場合であっても、樹脂製の取付対象部材が締結の応力によって経時的に変形し、締結具のゆるみが発生するのを抑制することができる。
【0003】
特許文献1には、締結物である炭素繊維強化樹脂材に貫通孔を形成し、貫通孔に筒状に形成された金属製のカラーを装着することが開示されている。特許文献1では、カラーの第1部材における鍔部が貫通孔のCFRP材の表面側の周縁部に接着剤を介して当接し、カラーの第2部材における当接部が貫通孔のCFRP材の裏面側の周縁部に接着剤を介して当接することが開示されている。特許文献1の記載の構造によれば、CFRP材と金属製のカラーとの間に液体が浸入することを抑制することにより、金属製のカラーの電食を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、カラーの内方に締結具を挿入したのち締結具を締め付けることによって、炭素繊維強化樹脂材と被締結物とを締結し、炭素繊維強化樹脂材の締結構造を形成している。しかしながら、通常、筒状カラーとボルトの軸部との間の公差は、許容幅が少なく、少しの公差しか許容することができない。また、ボルトの挿通孔を楕円筒状にすることも考えられるが、この場合、縦又は横のどちらか1方向の公差しか吸収できないため、設計に制限が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、公差許容範囲が広く、取付対象部材に加わる面圧を分散することが可能なカラー、被締結部材及びワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係るカラーは、板状の第1鍔部と、第1鍔部の内周側において、第1鍔部の一方の面である第1突出面側に突出し、円筒形状を有する第1円筒部とを含む第1部材を備えている。カラーは、板状の第2鍔部と、第2鍔部の内周側において、第2鍔部の一方の面である第2突出面側に突出し、円筒形状を有する第2円筒部とを含み、第2円筒部が第1円筒部と連結された第2部材を備えている。取付対象部材の貫通孔に第1円筒部及び第2円筒部を挿通した場合に、第1円筒部及び第2円筒部の外径は貫通孔の孔径よりも小さく、第1円筒部及び第2円筒部の外周面と貫通孔の内周面との間には隙間が設けられる。
【0008】
本発明の他の態様に係る被締結部材は、貫通孔を有する取付対象部材と、貫通孔に第1円筒部及び第2円筒部が挿通されたカラーとを備える。第1円筒部及び第2円筒部の外周面と貫通孔の内周面との間には隙間が設けられている。
【0009】
本発明の他の態様に係るワイヤーハーネスは、電線と、被締結部材とを備え、被締結部材はプロテクタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、公差許容範囲が広く、取付対象部材に加わる面圧を分散することが可能なカラー、被締結部材及びワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るプロテクタの電線収容空間に電線を収容する前の状態の一例を示す斜視図である。
【
図2】プロテクタの電線収容空間に電線を収容した後の状態の一例を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係るカラーを取付対象部材であるプロテクタのボルト固定部に取り付ける前の状態を示す概略斜視図である。
【
図4】一実施形態に係るカラーをボルト固定部に取り付けて形成されたプロテクタの一例を示す概略斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る第1部材と第2部材とを組付けたカラーの一例を示す断面図である。
【
図6】一実施形態に係る第1部材又は第2部材の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線で切断した面における断面図である。
【
図9】
図7のIX-IX線で切断した面における断面図である。
【
図10】
図7のX-X線で切断した面における断面図である。
【
図11】第1部材の第1円筒部を取付対象部材の貫通孔に挿入した状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本実施形態に係るカラー、被締結部材及びワイヤーハーネスについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0013】
本実施形態に係るワイヤーハーネス1は、複数の電線10と、複数の電線10を収容するプロテクタ20(被締結部材20)とを備えている。
図1は、一実施形態に係るプロテクタ20の電線収容空間Sに電線10を収容する前の状態の一例を示す斜視図である。
図2は、プロテクタ20の電線収容空間Sに複数の電線10の束を収容した後の状態の一例を示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、ワイヤーハーネス1は、プロテクタ20に電線10を収容することによって製造することができる。
【0014】
電線10は、導体と絶縁被覆層とを含んでいる。電線10の一端には図示しない端子金具が取り付けられ、端子金具はハウジングに収容される。プロテクタ20は、ワイヤーハーネス1に含まれる電線10を外力などから保護するものである。プロテクタ20は、本体部21と、蓋部22と、ボルト固定部23とを含んでいる。
【0015】
本体部21は、電線10の長さ方向から見て断面略U字の形状を有しており、上部が開口している。本体部21は、平板の形状を有する底壁部24と、底壁部24の両端から鉛直上方に延在する一対の側壁部25とを含んでいる。本体部21は、底壁部24と一対の側壁部25とに囲われて形成され、電線10を収容可能な電線収容空間Sを有している。蓋部22は、本体部21の上部の開口を塞ぎ、底壁部24と対向するように、一対の側壁部25の上端に取り付けられる。ボルト固定部23は、本体部21の側壁部25から外側に突出しており、図示しないボルトが挿通可能な円筒状の貫通孔26を有している。
【0016】
プロテクタ20は、ボルト固定部23の貫通孔26にボルトを挿通して図示しない自動車などのような車両の車体へ取り付けることによって車体に固定することができる。これにより、ワイヤーハーネス1を車体に確実に固定することができる。
【0017】
ボルト固定部23は、絶縁性の樹脂を用いて形成される。そのため、貫通孔26に金属製のカラー40を装着することで、ボルトなどの金属製の締結具でプロテクタ20を締結した場合であっても、樹脂製のボルト固定部23が締結の応力によって経時的に変形し、締結具のゆるみが発生するのを抑制することができる。
【0018】
次に、本実施形態に係るカラー40について詳細に説明する。
図3は、一実施形態に係るカラー40を取付対象部材23であるプロテクタ20のボルト固定部23に取り付ける前の状態を示す概略斜視図である。
図4は、一実施形態に係るカラー40をボルト固定部23に取り付けて形成されたプロテクタ20の一例を示す概略斜視図である。
図5は、一実施形態に係る第1部材50と第2部材60とを組付けたカラー40の一例を示す断面図である。
【0019】
図2~
図4に示すように、プロテクタ20(被締結部材20)は、貫通孔26を有するボルト固定部23(取付対象部材23)と、貫通孔26に取り付けられたカラー40とを備えている。カラー40は、第1部材50と、第2部材60とを備えている。
図3~
図5に示すように、カラー40は、第1部材50の第1円筒部52と第2部材60の第2円筒部62とを連結することによって形成することができる。本実施形態に係るプロテクタ20は、貫通孔26に第1部材50の第1円筒部52及び第2部材60の第2円筒部62を挿通し、第1円筒部52と第2円筒部62とを連結することによって形成することができる。
【0020】
図6は、一実施形態に係る第1部材50又は第2部材60の一例を示す斜視図である。本実施形態において、第1部材50と第2部材60とは同一形状をしている。
図7は、
図6のVII-VII線で切断した面における断面図である。
図8は、一実施形態に係る第1部材50の平面図である。
図9は、
図7のIX-IX線で切断した面における断面図である。
図10は、
図7のX-X線で切断した面における断面図である。
図6~
図10に示すように、第1部材50は、第1鍔部51と、第1円筒部52とを含んでいる。また、第1部材50は、ボルトのような締結具を挿通するための円筒状の第1挿通孔53を有している。第2部材60は、第2鍔部61と、第2円筒部62とを含んでいる。また、第2部材60は、ボルトのような締結具を挿通するための円筒状の第2挿通孔63を有している。第2円筒部62は第1円筒部52と連結されている。
【0021】
第1鍔部51は、板状の形状を有している。具体的には、第1鍔部51は、円板状の形状を有している。第1鍔部51は、一方の面である第1突出面51aと、第1突出面51aとは反対側の面である第1非突出面51bとを有している。第1突出面51a及び第1非突出面51bは平坦面であり、凹凸を有していない。
【0022】
第1円筒部52は、第1鍔部51の内周側において、第1鍔部51の一方の面である第1突出面51a側に突出している。第1円筒部52は、円筒形状を有している。第1挿通孔53は、第1円筒部52の内周壁によって形成されている。第1円筒部52は、第1凹部54と、第1凸部55と、第1外周壁部56と、第1内周壁部57とを含んでいる。第1外周壁部56は、円筒状の形状を有しており、第1円筒部52の外周壁を形成している。第1内周壁部57は、第1外周壁部56よりも径の小さい円筒状の形状を有しており、第1円筒部52の内周壁を形成している。
【0023】
第1凹部54は、第1円筒部52の中心軸Oを通る第1対称面P1を基準として一方の領域である第1領域に設けられている。具体的には、第1凹部54は、第1挿通孔53の挿通方向(中心軸O方向)において、第1鍔部51とは反対側の第1端面に設けられている。第1凹部54は、第1円筒部52の径方向において、第1外周壁部56と第1内周壁部57との間に配置されている。第1凹部54は、第1外周壁部56及び第1内周壁部57よりも端面の高さが低くなるように形成されており、第1外周壁部56の側壁及び第1内周壁部57の側壁によって第1凹部54の側壁が形成されている。第1凹部54は、第1円筒部52の中心軸O方向から見て、第1端面の形状に沿って連続して形成された半円円弧形状である。
【0024】
第1凸部55は、第1対称面P1を基準として第1領域とは反対側の領域である第2領域に設けられている。具体的には、第1凸部55は、第1端面に設けられている。第1凸部55は、第1円筒部52の径方向において、第1外周壁部56と第1内周壁部57との間に配置されている。第1凸部55は、第1外周壁部56及び第1内周壁部57よりも端面の高さが高くなるように形成されている。第1凸部55は、第1円筒部52の中心軸O方向から見て、第1端面の形状に沿って連続して形成された半円円弧形状である。
図7~
図10から分かるように、第1円筒部52の中心軸O方向から見て、第1凹部54と第1凸部55とは周方向に連続している。
【0025】
第2鍔部61は、板状の形状を有している。第2鍔部61は、一方の面である第2突出面61aと、第2突出面61aとは反対側の面である第2非突出面61bとを有している。第2突出面61a及び第2非突出面61bは平坦面であり、凹凸を有していない。
【0026】
第2円筒部62は、第2鍔部61の内周側において、第2鍔部61の一方の面である第2突出面61a側に突出している。第2円筒部62は、円筒形状を有している。第2挿通孔63は、第2円筒部62の内周壁によって形成されている。第2円筒部62は、第2凹部64と、第2凸部65、第2外周壁部66と、第2内周壁部67とを含んでいる。第2外周壁部66は、円筒状の形状を有しており、第2円筒部62の外周壁を形成している。
【0027】
第2凹部64は、第2円筒部62の中心軸Oを通る第2対称面P2を基準として一方の領域である第3領域に設けられている。具体的には、第2凹部64は、第2挿通孔63の挿通方向(中心軸O方向)において、第2鍔部61とは反対側の第2端面に設けられている。第2凹部64は、第2円筒部62の径方向において、第2外周壁部66と第2内周壁部67との間に配置されている。第2凹部64は、第2外周壁部66及び第2内周壁部67よりも端面の高さが低くなるように形成されており、第2外周壁部66の側壁及び第2内周壁部67の側壁によって第2凹部64の側壁が形成されている。第2凹部64は、第2円筒部62の中心軸O方向から見て、第2端面の形状に沿って連続して形成された半円円弧形状である。第2内周壁部67は、第2外周壁部66よりも径の小さい円筒状の形状を有しており、第2円筒部62の内周壁を形成している。
【0028】
第2凸部65は、第2対称面P2を基準として第3領域とは反対側の領域である第4領域に設けられている。具体的には、第2凸部65は、第2端面に設けられている。第2凸部65は、第2円筒部62の径方向において、第2外周壁部66と第2内周壁部67との間に配置されている。第2凸部65は、第2外周壁部66及び第2内周壁部67よりも端面の高さが高くなるように形成されている。第2凸部65は、第2円筒部62の中心軸O方向から見て、第2端面の形状に沿って連続して形成された半円円弧形状である。
図7~
図10から分かるように、第2円筒部62の中心軸O方向から見て、第2凹部64と第2凸部65とは周方向に連続している。
【0029】
図7に示すように、本実施形態にカラー40においては、第1凹部54と第2凸部65とが嵌合し、第2凹部64と第1凸部55とが嵌合している。具体的には、第1凹部54に第2凸部65が挿入され、第2凹部64に第1凸部55が挿入されている。これにより、第1部材50の第1円筒部52と第2部材60の第2円筒部62とを連結し、カラー40を形成している。これらが嵌合し、第1鍔部51の第1突出面51aと第2鍔部61の第2突出面61aとでボルト固定部23の貫通孔26の周囲を挟み込むことで、ボルト固定部23の貫通孔26にカラー40を取り付け、プロテクタ20を形成することができる。
【0030】
第1円筒部52の外径及び第2円筒部62の外径は、貫通孔26の孔径よりも一回り小さくなるように形成されている。そのため、
図11に示すように、第1円筒部52の外周面及び第2円筒部62の外周面と、貫通孔26の内周面との間は隙間Gが設けられている。このような隙間Gを設けることで、第1円筒部52及び第2円筒部62は、貫通孔26に挿通した場合に貫通孔26の径方向に移動可能であり、公差を吸収することができる。また、第1部材50は円筒形状を有する第1円筒部52を含み、第2部材60は円筒形状を有する第2円筒部62を含んでいる。そのため、公差が発生した場合に、いずれか一方の方向だけでなく、360°全周方向で公差を吸収することができる。
【0031】
本実施形態において、第1部材50と第2部材60とは同一形状をしている。すなわち、第1鍔部51、第1円筒部52及び第1挿通孔53は、第2鍔部61、第2円筒部62及び第2挿通孔63とそれぞれ同一形状をしている。具体的には、第1突出面51a、第1非突出面51b、第1凹部54、第1凸部55、第1外周壁部56、第1内周壁部57は、第2突出面61a、第2非突出面61b、第2凹部64、第2凸部65、第2外周壁部66、第2内周壁部67にそれぞれ対応している。このように、第1部材50と第2部材60とで同じ部材を用い、部品の種類を減らすことにより、在庫管理を容易にすることができる。
【0032】
次に、本実施形態に係るカラー40、被締結部材20及びワイヤーハーネス1の効果について説明する。
【0033】
以上説明した通り、本実施形態に係るカラー40は、板状の第1鍔部51と、第1鍔部51の内周側において、第1鍔部51の一方の面である第1突出面51a側に突出し、円筒形状を有する第1円筒部52とを含む第1部材50を備えている。カラー40は、板状の第2鍔部61と、第2鍔部61の内周側において、第2鍔部61の一方の面である第2突出面61a側に突出し、円筒形状を有する第2円筒部62とを含み、第2円筒部62が第1円筒部52と連結された第2部材60を備えている。取付対象部材23の貫通孔26に第1円筒部52及び第2円筒部を挿通した場合に、第1円筒部52及び第2円筒部62の外径は貫通孔26の孔径よりも小さく、第1円筒部52及び第2円筒部62の外周面と貫通孔26の内周面との間には隙間Gが設けられる。
【0034】
本実施形態に係るカラー40によれば、第1円筒部52と第2円筒部62とを連結することによってカラー40を形成することができる。そのため、板状の第1鍔部51と板状の第2鍔部61とでボルト固定部23の貫通孔26の周囲を挟み込むことでカラー40を形成することができる。これにより、取付対象部材23に加わる面圧を分散することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るカラー40によれば、第1円筒部52及び第2円筒部62の外径を、貫通孔26の孔径よりも小さくすることにより、第1円筒部52及び第2円筒部62は、貫通孔26に挿通した場合に貫通孔26の径方向に移動できる。そのため、貫通孔26の径方向に公差を吸収することができる。また、第1円筒部52及び第2円筒部62は円筒形状を有しているため、貫通孔26の孔径よりも、第1円筒部52及び第2円筒部62の外径が小さくなった場合であっても、いずれか一方の方向だけでなく、360°全周方向で公差を吸収することができる。
【0036】
そのため、本実施形態に係るカラー40によれば、公差許容範囲が広く、取付対象部材23に加わる面圧を分散することができる。
【0037】
また、第1円筒部52は、第1領域において、第1鍔部51とは反対側の第1端面に設けられた第1凹部54と、第1対称面P1を基準として第1領域とは反対側の領域である第2領域において、第1端面に設けられた第1凸部55とを含んでいてもよい。第1領域は、第1円筒部52の中心軸Oを通る第1対称面P1を基準として一方の領域であってもよい。第2円筒部62は、第3領域において、第2鍔部61とは反対側の第2端面に設けられた第2凹部64と、第2対称面P2を基準として第3領域とは反対側の領域である第4領域において、第2端面に設けられた第2凸部65とを含んでいてもよい。第3領域は、第2円筒部62の中心軸Oを通る第2対称面P2を基準として一方の領域であってもよい。第1部材50と第2部材60とは同一形状であってもよい。第1凹部54と第2凸部65とが嵌合し、第2凹部64と第1凸部55とが嵌合してもよい。
【0038】
このような構成とすることにより、第1部材50と第2部材60が同じ形状であり、同じ部材を用いてカラー40を形成することができるため、部材の管理コストを低減することができる。また、第1部材50と第2部材60とを嵌合することによってカラー40を形成することができるため、接着剤のような材料を使用しなくても簡易にカラー40を形成することができる。
【0039】
第1凹部54及び第1凸部55は、第1円筒部52の中心軸O方向から見て、第1端面の形状に沿って連続して形成された半円円弧形状であってもよい。このような形状にすることにより、第1部材50と第2部材60との位置合わせが容易であり、第1部材50と第2部材60とを強固に嵌合することができる。
【0040】
本実施形態に係る被締結部材20は、貫通孔26を有する取付対象部材23と、貫通孔26に第1円筒部52及び第2円筒部62が挿通されたカラー40とを備えていてもよい。第1円筒部52及び第2円筒部62の外周面と貫通孔26の内周面との間には隙間Gが設けられていてもよい。上述したように、本実施形態に係るカラー40によれば、公差許容範囲が広く、取付対象部材23に加わる面圧を分散することができる。そのため、このようなカラー40を用いることにより、カラー40の公差が縦又は横のどちらか1方向の公差しか吸収できないカラーと比較し、設計上の制限が少なく、様々なバリエーションの構造を有する被締結部材20を提供することができる。
【0041】
本実施形態に係るワイヤーハーネス1は、電線10と、被締結部材20とを備えていてもよい。被締結部材20はプロテクタ20であってもよい。上述のように、本実施形態に係るカラー40を用いることにより、様々なバリエーションの構造を有するプロテクタ20を提供することができるため、需要者の要望に沿った様々なバリエーションのワイヤーハーネス1を提供することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、被締結部材としてプロテクタの例について説明した。しかしながら、被締結部材はプロテクタに限定されず、貫通孔にカラー40を取り付けて用いられている種々の用途に用いることができる。
【0043】
また、取付対象部材は、汎用樹脂、エンジニアプラスチック、又は、繊維強化樹脂のような樹脂で形成されていてもよい。繊維強化樹脂としては、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが挙げられる。
【0044】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ワイヤーハーネス
10 電線
20 被締結部材(プロテクタ)
23 取付対象部材(ボルト固定部)
26 貫通孔
40 カラー
50 第1部材
51 第1鍔部
51a 第1突出面
52 第1円筒部
54 第1凹部
55 第1凸部
60 第2部材
61 第2鍔部
61a 第2突出面
62 第2円筒部
64 第2凹部
65 第2凸部
O 中心軸
P1 第1対称面
P2 第2対称面