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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172160
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20241205BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20241205BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20241205BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089704
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】細野 寛
(72)【発明者】
【氏名】玉泉 晴天
(72)【発明者】
【氏名】位田 祐基
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紗希
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC03
3D232CC05
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA46
3D232DA63
3D232DA64
3D232DC03
3D232DC08
3D232DC12
3D232DC14
3D232DC18
3D232DC21
3D232DD01
3D232DD06
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC23
3D232EC29
3D232EC37
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】反力調整処理の設定にとって適切な位相補償を実現できるようにした操舵制御装置を提供する。
【解決手段】位相遅れ補償処理M60は、操舵トルクThを入力として位相遅れ補償をした操舵トルクThrを出力する。基本アシスト量設定処理M66は、操舵トルクThrを入力として基本アシスト量Tabを設定する。基本アシスト量Tabに応じたアシスト量Taから軸力を減算した値によって反力モータのトルクが制御される。位相遅れ補償処理M60は、フィルタ係数設定処理M64を備える。フィルタ係数設定処理M64は、ロードインフォメーション処理M110のフィルタ係数τiに応じてフィルタ係数α,T1,T2を設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング軸に操舵反力を付与する反力モータと、ステアリング軸からの動力伝達が遮断された状態で転舵輪を転舵させる転舵モータとを備える操舵系を制御対象とし、
反力設定処理、反力付与処理、および連動処理を実行するように構成され、
前記反力設定処理は、位相補償処理および反力調整処理を利用して前記操舵反力を設定する処理であり、
前記反力付与処理は、前記反力設定処理によって設定された前記操舵反力を入力として前記反力モータを操作する処理であり、
前記反力調整処理は、前記操舵反力を調整する処理であり、
前記位相補償処理は、前記反力調整処理とは別に前記操舵反力の位相補償をする処理であり、
前記連動処理は、位相補償規定変数と反力調整変数との2つのうちのいずれか1つに応じてもう1つを変更する処理であり、
前記位相補償規定変数は、前記位相補償の仕方を規定するための変数であり、
前記反力調整変数は、前記反力調整処理を規定するための変数または前記反力調整処理の出力に関する変数である操舵制御装置。
【請求項2】
前記反力設定処理は、アシスト量設定処理と、軸力設定処理と、を含み、
前記軸力設定処理は、運転者による前記ステアリング軸の回転操作に抗する力である軸力を設定する処理であり、
前記アシスト量設定処理は、前記位相補償処理および前記反力調整処理を利用してアシスト量を設定する処理であり、
前記アシスト量は、前記運転者が前記ステアリング軸を回転させるのをアシストする量であり、
前記操舵反力は、前記軸力から前記アシスト量を減算した値に応じて定まる量である請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記反力調整処理は、所定成分反映処理を含み、
前記反力調整変数は、反映規定変数または前記所定成分反映処理の出力に関する変数を含み、
前記所定成分反映処理は、前記転舵輪に付与される周波数信号のうちの所定成分を前記操舵反力に反映させる処理であって且つ、所定成分抽出処理と、抽出変更処理と、を含み、
前記所定成分抽出処理は、前記反映規定変数の値に応じて前記所定成分を抽出する処理であり、
前記反映規定変数は、前記所定成分の抽出の仕方を規定する変数であり、
前記抽出変更処理は、前記反映規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記反映規定変数の値または前記所定成分反映処理の出力に関する変数の値に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項4】
前記反力調整処理は、所定成分反映処理を含み、
前記反力調整変数は、反映規定変数を含み、
前記所定成分反映処理は、前記転舵輪に付与される周波数信号のうちの所定成分を前記操舵反力に反映させる処理であって且つ、所定成分抽出処理と、抽出変更処理と、を含み、
前記所定成分抽出処理は、前記反映規定変数の値に応じて前記所定成分を抽出する処理であり、
前記反映規定変数は、前記所定成分の抽出の仕方を規定する変数であり、
前記抽出変更処理は、前記反映規定変数の値を変更する処理であり、
前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、
前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記反映規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項5】
前記反力調整処理は、ヒステリシス処理を含み、
前記反力調整変数は、ヒステリシス規定変数または前記ヒステリシス処理の出力に関する変数を含み、
前記ヒステリシス処理は、前記操舵反力にヒステリシス補正量を反映させる処理であって且つ、ヒステリシス補正量算出処理、およびヒステリシス変更処理を含み、
前記ヒステリシス補正量算出処理は、前記ヒステリシス規定変数に応じて切り込み時と切り戻し時とで前記ヒステリシス補正量を互いに異なる値に算出する処理であり、
前記ヒステリシス変更処理は、前記ヒステリシス規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記ヒステリシス規定変数の値または前記ヒステリシス処理の出力に関する変数の値に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項6】
前記反力調整処理は、ヒステリシス処理を含み、
前記反力調整変数は、ヒステリシス規定変数を含み、
前記ヒステリシス処理は、前記操舵反力にヒステリシス補正量を反映させる処理であって且つ、ヒステリシス補正量算出処理、およびヒステリシス変更処理を含み、
前記ヒステリシス補正量算出処理は、前記ヒステリシス規定変数の値に応じて切り込み時と切り戻し時とで前記ヒステリシス補正量を互いに異なる値に算出する処理であり、
前記ヒステリシス変更処理は、前記ヒステリシス規定変数の値を変更する処理であり、
前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、
前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記ヒステリシス規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項7】
前記反力調整処理は、ダンピング処理を含み、
前記反力調整変数は、ダンピング規定変数または前記ダンピング処理の出力に関する変数を含み、
前記ダンピング処理は、前記操舵反力にダンピング補正量を反映させる処理であって且つ、ダンピング補正量算出処理、およびダンピング変更処理を含み、
前記ダンピング補正量算出処理は、前記ダンピング規定変数の値に応じて前記ダンピング補正量を算出する処理であり、
前記ダンピング補正量は、前記ステアリング軸の回転速度と負の相関を有する量であり、
前記ダンピング変更処理は、前記ダンピング規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記ダンピング規定変数の値または前記ダンピング処理の出力に関する変数の値に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項8】
前記反力調整処理は、ダンピング処理を含み、
前記反力調整変数は、ダンピング規定変数を含み、
前記ダンピング処理は、前記操舵反力にダンピング補正量を反映させる処理であって且つ、ダンピング補正量算出処理、およびダンピング変更処理を含み、
前記ダンピング補正量算出処理は、前記ダンピング規定変数の値に応じて前記ダンピング補正量を算出する処理であり、
前記ダンピング補正量は、前記ステアリング軸の回転速度と負の相関を有する量であり、
前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、
前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記ダンピング規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項9】
前記反力調整処理は、ステアリング戻し処理を含み、
前記反力調整変数は、戻し規定変数または前記ステアリング戻し処理の出力に関する変数を含み、
前記ステアリング戻し処理は、前記戻し規定変数の値に応じて前記操舵反力に戻し補正量を反映させる処理であって且つ、戻し補正量算出処理、および戻し変更処理を含み、
前記戻し補正量算出処理は、戻し補正量を算出する処理であり、
前記戻し補正量は、前記ステアリング軸を中立位置へと変位させるための補正量であり、
前記戻し変更処理は、前記戻し規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記戻し規定変数の値または前記ステアリング戻し処理の出力に関する変数に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項10】
前記反力調整処理は、ステアリング戻し処理を含み、
前記反力調整変数は、戻し規定変数を含み、
前記ステアリング戻し処理は、前記戻し規定変数の値に応じて前記操舵反力に戻し補正量を反映させる処理であって且つ、戻し補正量算出処理、および戻し変更処理を含み、
前記戻し補正量算出処理は、戻し補正量を算出する処理であり、
前記戻し補正量は、前記ステアリング軸を中立位置へと変位させるための補正量であり、
前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、
前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、
前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記戻し規定変数の値を変更する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項11】
前記アシスト量設定処理は、基本アシスト量設定処理を含み、
前記基本アシスト量設定処理は、操舵トルクの検出値に応じて基本アシスト量を設定する処理であり、
前記基本アシスト量は、前記アシスト量を設定するためのベースとなる量であり、
前記位相補償処理は、位相遅れ補償処理を含み、
前記位相遅れ補償処理は、前記操舵トルクの検出値を遅延させて前記基本アシスト量設定処理の入力とする処理であり、
前記連動処理の入力となる前記位相補償規定変数は、位相遅れ規定変数を含み、
前記位相遅れ規定変数は、前記遅延のさせ方を規定する変数である請求項2記載の操舵制御装置。
【請求項12】
前記位相補償処理は、位相進み補償処理を含み、
前記位相進み補償処理は、操舵トルクを入力として前記操舵反力の位相を進めるための進み補償量を前記操舵反力に反映させる処理であり、
前記連動処理の入力となる前記位相補償規定変数は、位相進み規定変数を含み、
前記位相進み規定変数は、前記位相の進め方を規定する変数である請求項1記載の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、電動パワーステアリング装置を制御対象とする制御装置が記載されている。この制御装置は、アシスト力を生成するモータのトルクを位相補償処理を利用しつつ設定する。これは、システムの安定化等を狙った設定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-144887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、ステアリング軸と転舵輪との動力伝達が遮断された状態の操舵系の制御を検討した。その場合、操舵系の特性を制御によって調整する自由度が高い。しかし、操舵系の特性を任意に設定する場合、位相補償処理による安定化の効果が損なわれるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.ステアリング軸に操舵反力を付与する反力モータと、ステアリング軸からの動力伝達が遮断された状態で転舵輪を転舵させる転舵モータとを備える操舵系を制御対象とし、反力設定処理、反力付与処理、および連動処理を実行するように構成され、前記反力設定処理は、位相補償処理および反力調整処理を利用して前記操舵反力を設定する処理であり、前記反力付与処理は、前記反力設定処理によって設定された前記操舵反力を入力として前記反力モータを操作する処理であり、前記反力調整処理は、前記操舵反力を調整する処理であり、前記位相補償処理は、前記反力調整処理とは別に前記操舵反力の位相補償をする処理であり、前記連動処理は、位相補償規定変数と反力調整変数との2つのうちのいずれか1つに応じてもう1つを変更する処理であり、前記位相補償規定変数は、前記位相補償の仕方を規定するための変数であり、前記反力調整変数は、前記反力調整処理を規定するための変数または前記反力調整処理の出力に関する変数である操舵制御装置。
【0006】
位相補償処理は、操舵反力の位相補償をする。適切な位相補償は、操舵反力を定める反力調整処理の設定によって変化する。そこで上記構成では、位相補償規定変数と反力調整変数との2つのうちの1つに応じてもう1つを変更する。これにより、反力調整処理の設定に対して、位相補償処理を、安定化の効果を発揮できる処理とすることができる。
【0007】
2.前記反力設定処理は、アシスト量設定処理と、軸力設定処理と、を含み、前記軸力設定処理は、運転者による前記ステアリング軸の回転操作に抗する力である軸力を設定する処理であり、前記アシスト量設定処理は、前記位相補償処理および前記反力調整処理を利用してアシスト量を設定する処理であり、前記アシスト量は、前記運転者が前記ステアリング軸を回転させるのをアシストする量であり、前記操舵反力は、前記軸力から前記アシスト量を減算した値に応じて定まる量である上記1記載の操舵制御装置。
【0008】
ステアリング軸と転舵輪との動力伝達がなされる操舵系では、転舵輪からの軸力が運転者によるステアリング軸の回転操作を妨げる力となる。そのため、アシスト量が運転者の操舵をアシストする量となる。一方、上記構成では、ステアリング軸と転舵輪との動力伝達が遮断された状態で、制御によって仮想的にステアリング軸の回転操作に抗する軸力を実現できる。そのため、ステアリング軸と転舵輪との動力伝達がなされる操舵系と同様のコンセプトで、アシスト量を設定できる。
【0009】
3.前記反力調整処理は、所定成分反映処理を含み、
前記反力調整変数は、反映規定変数または前記所定成分反映処理の出力に関する変数を含み、前記所定成分反映処理は、前記転舵輪に付与される周波数信号のうちの所定成分を前記操舵反力に反映させる処理であって且つ、所定成分抽出処理と、抽出変更処理と、を含み、前記所定成分抽出処理は、前記反映規定変数の値に応じて前記所定成分を抽出する処理であり、前記反映規定変数は、前記所定成分の抽出の仕方を規定する変数であり、前記抽出変更処理は、前記反映規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記反映規定変数の値または前記所定成分反映処理の出力に関する変数の値に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む上記1または2記載の操舵制御装置である。
【0010】
上記所定成分は、路面の情報を有した周波数成分である。したがって、上記構成によれば、所定成分反映処理を利用して操舵反力を設定することから、運転者に路面情報を伝えることができる。
【0011】
ただし、上記所定成分の周波数帯いかんによって、または所定成分の振幅の大きさいかんによって、操舵系が不安定化しやすくなる。そこで上記構成では、所定成分の反映の仕方、または所定成分に応じて位相補償の仕方を変更する。これにより、操舵系を安定させるうえで適切な位相補償を実現できる。
【0012】
4.前記反力調整処理は、所定成分反映処理を含み、前記反力調整変数は、反映規定変数を含み、前記所定成分反映処理は、前記転舵輪に付与される周波数信号のうちの所定成分を前記操舵反力に反映させる処理であって且つ、所定成分抽出処理と、抽出変更処理と、を含み、前記所定成分抽出処理は、前記反映規定変数の値に応じて前記所定成分を抽出する処理であり、前記反映規定変数は、前記所定成分の抽出の仕方を規定する変数であり、前記抽出変更処理は、前記反映規定変数の値を変更する処理であり、前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記反映規定変数の値を変更する処理を含む上記1または2記載の操舵制御装置。
【0013】
上記所定成分は、路面の情報を有した周波数成分である。したがって、上記構成によれば、所定成分反映処理を利用して操舵反力を設定することから、運転者に路面情報を伝えることができる。
【0014】
ただし、上記所定成分の周波数帯いかんによって、または所定成分の振幅の大きさいかんによって、操舵系が不安定化しやすくなる。そこで上記構成では、位相補償の仕方に応じて所定成分の反映の仕方を変更する。これにより、位相補償処理によって許容できる範囲で所定成分を操舵反力に反映させることができる。
【0015】
5.前記反力調整処理は、ヒステリシス処理を含み、前記反力調整変数は、ヒステリシス規定変数または前記ヒステリシス処理の出力に関する変数を含み、前記ヒステリシス処理は、前記操舵反力にヒステリシス補正量を反映させる処理であって且つ、ヒステリシス補正量算出処理、およびヒステリシス変更処理を含み、前記ヒステリシス補正量算出処理は、前記ヒステリシス規定変数に応じて切り込み時と切り戻し時とで前記ヒステリシス補正量を互いに異なる値に算出する処理であり、前記ヒステリシス変更処理は、前記ヒステリシス規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記ヒステリシス規定変数の値または前記ヒステリシス処理の出力に関する変数の値に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む上記1~4のいずれか1つに記載の操舵制御装置。
【0016】
上記ヒステリシス補正量の設定が変更されると、操舵トルクの変化に対する操舵反力の変化の比が変更される。これは、操舵反力のゲインを変更することに対応する。操舵反力のゲインが変更されると、操舵系を安定に保つうえで適切な位相補償の仕方が変化する。
【0017】
そこで上記構成では、ヒステリシス規定変数の値またはヒステリシス補正量に応じて位相補償の仕方を変更する。これにより、ヒステリシス補正量の設定の仕方またはヒステリシス補正量に応じて適切な位相補償を実現できる。
【0018】
6.前記反力調整処理は、ヒステリシス処理を含み、前記反力調整変数は、ヒステリシス規定変数を含み、前記ヒステリシス処理は、前記操舵反力にヒステリシス補正量を反映させる処理であって且つ、ヒステリシス補正量算出処理、およびヒステリシス変更処理を含み、前記ヒステリシス補正量算出処理は、前記ヒステリシス規定変数の値に応じて切り込み時と切り戻し時とで前記ヒステリシス補正量を互いに異なる値に算出する処理であり、前記ヒステリシス変更処理は、前記ヒステリシス規定変数の値を変更する処理であり、前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記ヒステリシス規定変数の値を変更する処理を含む上記1~4のいずれか1つに記載の操舵制御装置。
【0019】
ヒステリシス処理は、操舵トルクの変化に対する操舵反力の変化の比に影響する。これは、ヒステリシス処理が操舵反力のゲインの大きさに影響することを意味する。一方、位相補償処理の仕方によって、操舵系を安定に保つうえで許容される操舵反力のゲインの大きさが変化する。
【0020】
そこで上記構成では、位相補償規定変数の値に応じてヒステリシス規定変数の値を変更する。これにより、位相補償によって操舵系を安定に保つうえで許容される操舵反力のゲインとなるようにヒステリシス処理を制限できる。
【0021】
7.前記反力調整処理は、ダンピング処理を含み、前記反力調整変数は、ダンピング規定変数または前記ダンピング処理の出力に関する変数を含み、前記ダンピング処理は、前記操舵反力にダンピング補正量を反映させる処理であって且つ、ダンピング補正量算出処理、およびダンピング変更処理を含み、前記ダンピング補正量算出処理は、前記ダンピング規定変数の値に応じて前記ダンピング補正量を算出する処理であり、前記ダンピング補正量は、前記ステアリング軸の回転速度と負の相関を有する量であり、前記ダンピング変更処理は、前記ダンピング規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記ダンピング規定変数の値または前記ダンピング処理の出力に関する変数の値に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む上記1~6のいずれか1つに記載の操舵制御装置。
【0022】
ダンピング補正量の設定またはダンピング補正量によって、操舵系の応答性が変化する。そのため、ダンピング補正量の設定またはダンピング補正量によって、操舵系を安定に保つうえで適切な位相補償の仕方が変化する。そこで上記構成では、ダンピング規定変数の値またはダンピング補正量に応じて位相補償の仕方を変更する。これにより、ダンピング補正量の設定の仕方またはダンピング補正量に応じて適切な位相補償を実現できる。
【0023】
8.前記反力調整処理は、ダンピング処理を含み、前記反力調整変数は、ダンピング規定変数を含み、前記ダンピング処理は、前記操舵反力にダンピング補正量を反映させる処理であって且つ、ダンピング補正量算出処理、およびダンピング変更処理を含み、前記ダンピング補正量算出処理は、前記ダンピング規定変数の値に応じて前記ダンピング補正量を算出する処理であり、前記ダンピング補正量は、前記ステアリング軸の回転速度と負の相関を有する量であり、前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記ダンピング規定変数の値を変更する処理を含む上記1~6のいずれか1つに記載の操舵制御装置。
【0024】
ダンピング補正量の設定によって、操舵系の応答性が変化する。一方、位相補償によって、操舵系を安定に保つうえで許容できる操舵系の応答性が変化する。そこで上記構成では、位相補償規定変数の値に応じてダンピング補正量の設定の仕方を変更する。これにより、位相補償の仕方に応じて適切なダンピング処理を実現できる。
【0025】
9.前記反力調整処理は、ステアリング戻し処理を含み、前記反力調整変数は、戻し規定変数または前記ステアリング戻し処理の出力に関する変数を含み、前記ステアリング戻し処理は、前記戻し規定変数の値に応じて前記操舵反力に戻し補正量を反映させる処理であって且つ、戻し補正量算出処理、および戻し変更処理を含み、前記戻し補正量算出処理は、戻し補正量を算出する処理であり、前記戻し補正量は、前記ステアリング軸を中立位置へと変位させるための補正量であり、前記戻し変更処理は、前記戻し規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記戻し規定変数の値または前記ステアリング戻し処理の出力に関する変数に応じて前記位相補償規定変数の値を変更する処理を含む上記1~8のいずれか1つに記載の操舵制御装置。
【0026】
ステアリング戻し処理は、操舵トルクの変化に対する操舵反力の変化の比に影響する。これは、ステアリング戻し処理が操舵反力のゲインの大きさに影響することを意味する。操舵反力のゲインが変更されると、操舵系を安定に保つうえで適切な位相補償の仕方が変化する。
【0027】
そこで上記構成では、戻し規定変数の値または戻し補正量に応じて位相補償の仕方を変更する。これにより、ステアリング戻し処理に応じて適切な位相補償を実現できる。
10.前記反力調整処理は、ステアリング戻し処理を含み、前記反力調整変数は、戻し規定変数を含み、前記ステアリング戻し処理は、前記戻し規定変数の値に応じて前記操舵反力に戻し補正量を反映させる処理であって且つ、戻し補正量算出処理、および戻し変更処理を含み、前記戻し補正量算出処理は、戻し補正量を算出する処理であり、前記戻し補正量は、前記ステアリング軸を中立位置へと変位させるための補正量であり、前記位相補償処理は、補償変更処理を含み、前記補償変更処理は、前記位相補償規定変数の値を変更する処理であり、前記連動処理は、前記位相補償規定変数の値に応じて前記戻し規定変数の値を変更する処理を含む上記1~8のいずれか1つに記載の操舵制御装置。
【0028】
ステアリング戻し処理は、操舵トルクの変化に対する操舵反力の変化の比に影響する。これは、ステアリング戻し処理が操舵反力のゲインの大きさに影響することを意味する。一方、位相補償処理の仕方によって、操舵系を安定に保つうえで許容される操舵反力のゲインの大きさが変化する。
【0029】
そこで上記構成では、位相補償規定変数の値に応じて戻し規定変数の値を変更する。これにより、位相補償によって操舵系を安定に保つうえで許容される操舵反力のゲインとなるようにステアリング戻し処理を制限できる。
【0030】
11.前記アシスト量設定処理は、基本アシスト量設定処理を含み、前記基本アシスト量設定処理は、操舵トルクの検出値に応じて基本アシスト量を設定する処理であり、前記基本アシスト量は、前記アシスト量を設定するためのベースとなる量であり、前記位相補償処理は、位相遅れ補償処理を含み、前記位相遅れ補償処理は、前記操舵トルクの検出値を遅延させて前記基本アシスト量設定処理の入力とする処理であり、前記連動処理の入力となる前記位相補償規定変数は、位相遅れ規定変数を含み、前記位相遅れ規定変数は、前記遅延のさせ方を規定する変数である上記2記載の操舵制御装置。
【0031】
上記構成では、基本アシスト量算出処理の入力となる操舵トルクの位相を調整できる。
なお、上記11は、上記3~10の事項を有してもよい。
12.前記位相補償処理は、位相進み補償処理を含み、前記位相進み補償処理は、操舵トルクを入力として前記操舵反力の位相を進めるための進み補償量を前記操舵反力に反映させる処理であり、前記連動処理の入力となる前記位相補償規定変数は、位相進み規定変数を含み、前記位相進み規定変数は、前記位相の進め方を規定する変数である上記1~11のいずれか1つに記載の操舵制御装置である。
【0032】
上記構成では、操舵トルクの変化に対する操舵反力の変化の位相を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態にかかる操舵システムの構成を示す図である。
図2】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図3】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図4】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図6】第3の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図7】第4の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図8】第5の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図9】第6の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図10】第7の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図11】第8の実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図12】上記各実施形態の変更例にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図13】上記各実施形態の変更例にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図14】上記各実施形態の変更例にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
図15】上記各実施形態の変更例にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1の実施形態>
操舵制御装置の一実施形態を図面に従って説明する。
「前提構成」
図1に示す車両の操舵装置10は、ステアバイワイヤ式の装置である。操舵装置10は、ステアリングホイール12と、ステアリング軸14と、反力アクチュエータ20と、転舵アクチュエータ30と、を備えている。ステアリング軸14は、ステアリングホイール12に連結されている。反力アクチュエータ20は、運転者がステアリングホイール12を操作する力に抗する力を付与するアクチュエータである。反力アクチュエータ20は、反力モータ22と、反力用インバータ24と、反力用減速機構26とを有している。反力モータ22は、ステアリング軸14を介してステアリングホイール12に操舵に抗する力である操舵反力を付与する。反力モータ22は、反力用減速機構26を介してステアリング軸14に連結されている。反力モータ22には、一例として、3相の同期電動機が採用されている。反力用減速機構26は、たとえば、ウォームアンドホイールからなる。
【0035】
転舵アクチュエータ30は、運転者によるステアリングホイール12の操作が示す運転者の操舵の意思に応じて転舵輪34を転舵させる用途を有したアクチュエータである。転舵アクチュエータ30は、ラック軸32と、転舵モータ42と、転舵用インバータ44と、転舵伝達機構46と、変換機構48とを備えている。転舵モータ42には、一例として、3相の表面磁石同期電動機(SPM)が採用されている。転舵伝達機構46は、ベルト伝達機構からなる。転舵伝達機構46によって、転舵モータ42の回転動力が変換機構48に伝達される。変換機構48は、伝達された回転動力を、ラック軸32の軸方向の変位動力に変換する。ラック軸32の軸方向への変位によって、転舵輪34が転舵される。
【0036】
操舵制御装置50は、ステアリングホイール12および転舵輪34を制御対象とする。すなわち、操舵制御装置50は、制御対象としてのステアリングホイール12の制御量である、運転者の操舵に抗する操舵反力を制御する。また、操舵制御装置50は、制御対象としての転舵輪34の制御量である転舵角を制御する。転舵角は、転舵輪34としてのタイヤの切れ角である。
【0037】
操舵制御装置50は、制御量の制御のために、トルクセンサ60によって検出される操舵トルクThを参照する。操舵トルクThは、運転者がステアリングホイール12の操作を通じてステアリング軸14に付与したトルクである。操舵制御装置50は、制御量の制御のために、操舵側回転角センサ62によって検出される、反力モータ22の回転軸の角度である回転角θaを参照する。また、操舵制御装置50は、制御量の制御のために、反力モータ22を流れる電流ius,ivs,iwsを参照する。電流ius,ivs,iwsは、たとえば反力用インバータ24の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として検出されるものであってもよい。操舵制御装置50は、制御量の制御のために、転舵側回転角センサ64によって検出される、転舵モータ42の回転軸の角度である回転角θbを参照する。また、操舵制御装置50は、制御量の制御のために、転舵モータ42を流れる電流iut,ivt,iwtを参照する。電流iut,ivt,iwtは、たとえば転舵用インバータ44の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として検出されるものであってもよい。操舵制御装置50は、車速センサ66によって検出される車速Vを参照する。
【0038】
操舵制御装置50は、PU52、および記憶装置54を備えている。PU52は、CPU、GPU、およびTPU等のソフトウェア処理装置である。記憶装置54は、電気的に書き換え不可能な不揮発性メモリであってもよい。また記憶装置54は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、およびディスク媒体等の記憶媒体であってもよい。
【0039】
「制御の概要」
図2に、操舵制御装置50が実行する処理を示す。図2に示す処理は、記憶装置54に記憶されたプログラムをPU52がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0040】
操舵角算出処理M10は、回転角θaを、例えば、車両が直進しているときのステアリングホイール12の位置であるステアリング中立位置からの反力モータ22の回転数をカウントすることにより、360度を超える範囲を含む積算角に換算する処理を含む。操舵角算出処理M10は、換算して得られた積算角に反力用減速機構26の回転速度比に基づき換算係数を乗算することで、操舵角θsを算出する処理を含む。
【0041】
転舵相当角算出処理M12は、回転角θbを、例えば、車両が直進しているときのラック軸32の位置であるラック中立位置からの転舵モータ42の回転数をカウントすることにより、360度を超える範囲を含む積算角に換算する処理を含む。転舵相当角算出処理M12は、換算して得られた積算角に転舵伝達機構46の減速比および変換機構48のリード等に応じた換算係数を乗算することで、転舵輪34の転舵角に応じた転舵相当角θpを算出する処理を含む。転舵相当角θpは、転舵角と比例関係にある量である。なお、転舵相当角θpは、一例として、ラック中立位置よりも右側の角度である場合に正、左側の角度である場合に負とする。
【0042】
目標転舵相当角算出処理M18は、操舵角θsと、車速Vとに応じて、目標転舵相当角θp*を算出する処理である。
アシスト量設定処理M20は、操舵トルクTh、操舵角θsおよび車速Vを入力として、アシスト量Taを算出する処理である。アシスト量Taは、運転者の操舵方向と同一方向の量となっている。アシスト量Taの大きさは、運転者による操舵をアシストする力を大きくする場合に大きい値に設定される。
【0043】
軸力設定処理M22は、車速V、転舵モータ42のq軸電流iqt、および目標転舵相当角θp*を入力として、転舵輪34を通じてラック軸32に作用する軸力Fを算出する処理である。軸力Fは、転舵輪34を通じてラック軸32に作用する力を制御によって表現する値である。ただし、軸力Fは、ラック軸32に作用する力を高精度に推定することを意図している必要はない。軸力Fは、たとえばラック軸32に作用する力を仮想的に定めたものであってもよい。軸力Fは、ステアリング軸14に加わるトルクに換算されている。すなわち、転舵輪34とステアリング軸14との動力伝達が可能な状態と仮定した場合にステアリング軸14に加わるトルクに換算されている。軸力Fは、運転者の操舵方向とは反対方向に作用する量である。軸力設定処理M22は、目標転舵相当角θp*の絶対値が大きくなるほど、軸力Fの絶対値が大きくなるように軸力Fを算出する処理としてもよい。またたとえば、軸力設定処理M22は、車速Vが大きくなるにつれて軸力Fの絶対値が大きくなるように軸力Fを算出する処理としてもよい。また、軸力設定処理M22は、q軸電流iqtの絶対値が大きくなるほど、軸力Fの絶対値が大きくなるように軸力Fを算出する処理としてもよい。ここで、q軸電流iqtは、PU52によって、転舵相当角θpと、電流iut,ivt,iwtとに応じて算出される。
【0044】
反力算出処理M24は、アシスト量Taから軸力Fを減算した値を、目標反力トルクTsに代入する処理である。目標反力トルクTsは、反力モータ22がステアリング軸14に加えるトルクの目標値である。
【0045】
反力用操作信号生成処理M26は、ステアリング軸14に加えるトルクが目標反力トルクTsとなるように、反力モータ22のトルクを制御すべく、反力用インバータ24に対する操作信号MSsを生成する処理である。詳しくは、反力用操作信号生成処理M26は、目標反力トルクTsを反力モータ22の目標トルクに換算する処理を含む。また、反力用操作信号生成処理M26は、電流のフィードバック制御によって、反力モータ22を流れる電流を目標反力トルクTsから定まる電流に近づけるべく、反力用インバータ24に対する操作信号MSsを算出する処理を含む。なお、操作信号MSsは、実際には、反力用インバータ24の6つのスイッチング素子のそれぞれに対する操作信号となっている。反力モータ22のトルクが目標反力トルクTsとされることにより、ステアリングホイール12を回転させようとする力に抗する操舵反力は、「(-1)・Ts」となる。
【0046】
転舵フィードバック処理M30は、転舵相当角θpを制御量として且つ目標転舵相当角θp*を制御量の目標値とするフィードバック制御の操作量を、目標転舵トルクTt*に代入する処理である。目標転舵トルクTt*は、転舵モータ42のトルクと一定の比率を有する。
【0047】
転舵用操作信号生成処理M32は、転舵モータ42のトルクが目標転舵トルクTt*と一定の比率を有した値となるように、転舵モータ42のトルクを制御すべく、転舵用インバータ44に対する操作信号MStを生成する処理である。詳しくは、転舵用操作信号生成処理M32は、目標転舵トルクTt*を転舵モータ42の目標トルクに換算する処理を含む。また、転舵用操作信号生成処理M32は、電流のフィードバック制御によって、転舵モータ42を流れる電流を目標トルクから定まる電流に近づけるべく、転舵用インバータ44に対する操作信号MStを算出する処理を含む。なお、操作信号MStは、実際には、転舵用インバータ44の6つのスイッチング素子のそれぞれに対する操作信号となっている。
【0048】
「軸力設定処理」
図3に、軸力設定処理M22の詳細を示す。
角度軸力設定処理M40は、目標転舵相当角θp*、および車速Vを入力として、角度軸力Frを算出する処理である。角度軸力Frは、任意に設定する車両のモデル等により規定される軸力の推定値である。角度軸力Frは、路面情報が反映されない軸力として算出される。路面情報とは、車両の横方向への挙動に影響を与えない微小な凹凸や車両の横方向への挙動に影響を与える段差等の情報である。例えば、角度軸力設定処理M40は、目標転舵相当角θp*の絶対値が大きくなるほど、角度軸力Frの絶対値が大きくなるように算出してもよい。またたとえば、角度軸力設定処理M40は、車速Vが大きくなるにつれて角度軸力Frの絶対値が大きくなるように算出してもよい。
【0049】
電流軸力設定処理M42は、転舵モータ42のq軸電流iqtを入力として、電流軸力Fiを算出する処理である。電流軸力Fiは、転舵輪34を転舵させるべく動作するラック軸32に実際に作用する軸力、すなわちラック軸32に実際に伝達される軸力の推定値である。電流軸力Fiは、上記路面情報が反映される軸力として算出される。例えば、電流軸力設定処理M42は、転舵モータ42によってラック軸32に加えられるトルクと、転舵輪34を通じてラック軸32に加えられる力に応じたトルクとが釣り合うとして、電流軸力Fiを算出する。すなわち、電流軸力設定処理M42は、q軸電流iqtの絶対値が大きくなるほど、電流軸力Fiの絶対値を大きい値に算出する処理である。
【0050】
配分比算出処理M46は、車速Vおよび目標転舵相当角θp*を入力として、割合Diを算出する処理である。割合Diは、角度軸力Frと、電流軸力Fiとの和に対する電流軸力Fiの割合である。割合Diは、ゼロ以上1以下の値を有する。配分比算出処理M46は、たとえば記憶装置54にマップデータが記憶された状態でPU52によって割合Diをマップ演算する処理とすればよい。ここで、マップデータは、車速Vおよび目標転舵相当角θp*を入力変数として且つ、割合Diを出力変数とするデータである。
【0051】
なお、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理とすればよい。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。また、これに代えて、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の入力変数の値のうちの最も近い値に対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理としてもよい。
【0052】
第2配分比算出処理M48は、「1」から割合Diを減算することによって、第2割合「1-Di」を算出する処理である。第2割合は、角度軸力Frと、電流軸力Fiとの和に対する角度軸力Frの割合である。
【0053】
第1割合乗算処理M50は、電流軸力Fiに割合Diを乗算する処理である。第2割合乗算処理M52は、角度軸力Frに第2割合を乗算する処理である。加算処理M54は、第1割合乗算処理M50の出力値と、第2割合乗算処理M52の出力値とを加算した値を、軸力Fに代入する処理である。すなわち、軸力Fは、角度軸力Frと電流軸力Fiとの加重平均処理値となっている。
【0054】
「アシスト量設定処理」
図4に、アシスト量設定処理M20の詳細を示す。
位相遅れ補償処理M60は、操舵トルクThの位相を遅らせる処理である。これは、たとえば、トルクセンサ60が備えるトーションバーの両側の位相差の周波数特性を調整すべく、操舵トルクThに位相補償をすることを目的とする処理であってもよい。位相遅れ補償処理M60の出力値である位相補償後の操舵トルクThが、操舵トルクThrである。位相遅れ補償処理M60は、フィルタ処理M62およびフィルタ係数設定処理M64を含む。
【0055】
フィルタ処理M62は、位相遅れフィルタと、ローパスフィルタとを含む。位相遅れフィルタの伝達関数は、「(1+α・T1・s)/(1+T1・s)」である。ローパスフィルタの伝達関数は、「1/(1+T2・s)」である。操舵トルクThに、位相遅れフィルタおよびローパスフィルタによる処理が施された値が操舵トルクThrである。
【0056】
フィルタ係数設定処理M64は、位相遅れフィルタのフィルタ係数α,T1およびローパスフィルタのフィルタ係数T2を設定する処理である。フィルタ係数設定処理M64は、アシスト勾配R、車速V、およびフィルタ係数τiに応じて、フィルタ係数α,T1,T2を設定する処理である。
【0057】
基本アシスト量設定処理M66は、操舵トルクThrおよび車速Vを入力として基本アシスト量Tabを設定する処理である。基本アシスト量設定処理M66は、基本アシスト量Tabを、操舵トルクThrと正の相関を有する値に設定する処理である。この処理は、たとえば、記憶装置54にマップデータが予め記憶された状態において、PU52によって基本アシスト量Tabをマップ演算する処理としてもよい。マップデータは、操舵トルクThrおよび車速Vを入力変数として且つ、基本アシスト量Tabを出力変数とするデータである。
【0058】
基本アシスト量設定処理M66は、アシスト勾配Rを算出して出力する処理を含む。アシスト勾配Rは、操舵トルクThrの変化に対する基本アシスト量Tabの変化の比を示す。
【0059】
位相進み補償処理M70は、アシスト量Taの位相を進ませる処理である。これは、たとえば、操舵トルクThの変化に対するステアリングホイール12の変化の応答遅れを調整すべく、アシスト量Taに位相補償を施すことを目的としてもよい。位相進み補償処理M70は、微分演算M72、ゲイン設定処理M74および乗算処理M76を含む。
【0060】
微分演算M72は、操舵トルクThの1階の時間微分値dThを算出する処理である。ゲイン設定処理M74は、アシスト勾配R、車速Vおよびフィルタ係数τiを入力としてゲインGadを設定する処理である。ゲイン設定処理M74は、記憶装置54にマップデータが予め記憶された状態においてゲインGadをマップ演算する処理であってもよい。このマップデータは、アシスト勾配R、車速Vおよびフィルタ係数τiを入力変数として且つ、ゲインGadを出力変数とするデータである。
【0061】
乗算処理M76は、時間微分値dThにゲインGadを乗算する処理である。時間微分値dThとゲインGadとの積が、位相進み補償処理M70の出力としての進み補償量Tadである。
【0062】
ヒステリシス処理M80は、ヒステリシス補正量Thysを算出する処理である。ヒステリシス補正量Thysは、ステアリングホイール12の切り戻しと切り返しとで、アシスト量Taを異なる値とするための量である。ヒステリシス処理M80は、操舵角θsおよび車速Vを入力としてヒステリシス補正量Thysを算出する処理である。ヒステリシス処理M80は、ヒステリシスマップM82を用いてヒステリシス補正量Thysをマップ演算する処理である。ヒステリシスマップM82は、操舵角θsおよび車速を入力変数として且つヒステリシス補正量Thysを出力変数とする。
【0063】
ダンピング処理M90は、ステアリングホイール12の回転速度と負の相関を有するダンピング補正量Tdampを算出する処理である。ダンピング補正量Tdampは、制御によって、ステアリングホイール12の操作に粘性抵抗を付与するための補正量である。ダンピング処理M90は、微分演算M92、基本補正量設定処理M94、およびゲイン設定処理M96を含む。
【0064】
微分演算M92は、操舵角θsの1階の時間微分値を演算する処理である。時間微分値は、操舵速度ωsである。基本補正量設定処理M94は、操舵速度ωsと負の相関を有する基本補正量Tdbを算出する処理である。基本補正量Tdbは、トルクの次元を有する。基本補正量設定処理M94は、記憶装置54にマップデータが記憶された状態において、PU52によって基本補正量Tdbをマップ演算する処理であってもよい。マップデータは、操舵速度ωsを入力変数として基本補正量Tdbを出力変数とするデータである。
【0065】
ゲイン設定処理M96は、車速Vを入力としてゲインGdを算出する処理である。ゲイン設定処理M96は、記憶装置54にマップデータが記憶された状態でPU52によってゲインGdをマップ演算する処理であってもよい。マップデータは、車速Vを入力変数として且つゲインGdを出力変数とするデータである。
【0066】
乗算処理M98は、基本補正量TdbにゲインGdを乗算する処理である。基本補正量TdbとゲインGdとの積が、乗算処理M98の出力としてのダンピング補正量Tdampである。
【0067】
ステアリング戻し処理M100は、戻し補正量Trvを算出する処理である。戻し補正量Trvは、ステアリングホイール12を中立位置に戻すための補正量である。戻し補正量Trvは、トルクの次元を有する。ステアリング戻し処理M100は、微分演算M101、目標操舵速度設定処理M102、偏差算出処理M103、ベース補償量算出処理M104、速度ゲイン設定処理M105、トルクゲイン設定処理M106、および乗算処理M107を備える。
【0068】
微分演算M101は、操舵角θsを入力としてその1階の時間微分値である操舵速度ωsを算出する処理である。目標操舵速度設定処理M102は、操舵角θsおよび車速Vを入力として目標操舵速度ωs*を設定する処理である。目標操舵速度設定処理M102は、記憶装置54にマップデータが記憶された状態でPU52によって目標操舵速度ωs*をマップ演算する処理であってもよい。マップデータは、操舵角θsおよび車速Vを入力変数として且つ目標操舵速度ωs*を出力変数とするデータである。偏差算出処理M103は、目標操舵速度ωs*と操舵速度ωsとの偏差Δωを算出する処理である。ベース補償量算出処理M104は、偏差Δωを入力としてベース補償量Trvbを算出する処理である。速度ゲイン設定処理M105は、車速Vを入力として速度ゲインGvを設定する処理である。速度ゲイン設定処理M105は、記憶装置54にマップデータが記憶された状態でPU52によって速度ゲインGvをマップ演算する処理であってもよい。マップデータは、車速Vを入力変数として且つ速度ゲインGvを出力変数とするデータである。トルクゲイン設定処理M106は、操舵トルクThを入力としてトルクゲインGtを設定する処理である。トルクゲイン設定処理M106は、記憶装置54にマップデータが記憶された状態でPU52によってトルクゲインGtをマップ演算する処理であってもよい。マップデータは、操舵トルクThを入力変数として且つトルクゲインGtを出力変数とするデータである。乗算処理M107は、ベース補償量Trvbに、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを乗算した値を、戻し補正量Trvに代入する処理である。
【0069】
ロードインフォメーション処理M110は、路面から転舵輪34に加わる力である路面反力に関する情報を、ステアリングホイール12に重畳するための処理である。ロードインフォメーション処理M110は、バンドパスフィルタM112、ゲイン乗算処理M114、およびフィルタ係数設定処理M116を含む。バンドパスフィルタM112には、q軸電流iqtが入力される。q軸電流iqtは、路面反力による転舵輪34の振動成分を含む変数としてバンドパスフィルタM112に入力される。バンドパスフィルタM112は、路面の凹凸に起因した振動周波数帯の信号を選択的に抽出する処理である。ゲイン乗算処理M114は、バンドパスフィルタM112の出力値に、ゲインGを乗算した値を、路面情報トルクTiに代入する処理である。フィルタ係数設定処理M116は、車速Vに応じてバンドパスフィルタM112のフィルタ係数τiを設定する処理である。フィルタ係数τiは、バンドパスフィルタM112が透過させる周波数帯を規定するための変数、または減衰係数であってもよい。周波数帯を規定するための変数は、たとえば中心周波数であってもよい。ここでは、フィルタ係数τiを1つの変数として記載しているが、実際には複数であってもよい。
【0070】
合成処理M120は、基本アシスト量Tabに、進み補償量Tad、ヒステリシス補正量Thys、ダンピング補正量Tdampおよび戻し補正量Trvを加算して且つ、路面情報トルクTiを減算する処理である。こうして算出された値が、アシスト量Taである。
【0071】
「本実施形態の作用および効果」
PU52は、車速Vに応じてロードインフォメーション処理M110におけるフィルタ係数τiを変更する。これにより、車速Vに応じて、運転者に伝えることが適切な路面情報を運転者に伝えることができる。ただし、路面情報トルクTiの周波数帯いかんによって、または路面情報トルクTiの振幅の大きさいかんによって、操舵系が不安定化しやすくなる。
【0072】
そこで、PU52は、フィルタ係数τiに応じて位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2を変更する。これにより、現在採用されているフィルタ係数τiにとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相遅れ補償を実現できる。また、PU52は、フィルタ係数τiに応じて位相進み補償処理M70のゲインGadを変更する。これにより、現在採用されているフィルタ係数τiにとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相進み補償を実現できる。
【0073】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0074】
本実施形態では、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、ロードインフォメーション処理M110のフィルタ係数τiを変更する。
【0075】
図5に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図5において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
図5に示すように、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数設定処理M64の入力変数にフィルタ係数τiは含まれない。また、位相進み補償処理M70のゲイン設定処理M74の入力変数にフィルタ係数τiは含まれない。一方、ロードインフォメーション処理M110のフィルタ係数設定処理M116の入力変数に、フィルタ係数α,T1,T2およびゲインGadが含まれる。
【0076】
そのため、フィルタ係数τiは、フィルタ係数α,T1,T2およびゲインGadに応じて変更される。これにより、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70によって操舵系を安定に保つことができる範囲の路面情報トルクTiとなるように、フィルタ係数τiを設定できる。
【0077】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0078】
本実施形態においては、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadを、ヒステリシス処理M80においてどのヒステリシスマップM82が選択されているかに応じて変更する。
【0079】
図6に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図6において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
図6に示すように、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数設定処理M64は、ヒステリシス処理M80が採用しているヒステリシスマップM82を特定するマップ特定変数Vmhysを入力としてフィルタ係数α,T1,T2を設定する処理である。また、位相進み補償処理M70のゲイン設定処理M74は、ヒステリシス処理M80が採用しているヒステリシスマップM82を特定するマップ特定変数Vmhysを入力としてゲインGadを設定する処理である。
【0080】
なお、本実施形態にかかるヒステリシス処理M80は、車速Vに応じて、ヒステリシスマップM82を切り替える処理を有する。
「本実施形態の作用および効果」
ヒステリシスマップM82が変更されると、操舵トルクThrの変化に対するアシスト量Taの変化の比が変化する。この比は、アシスト勾配Rには含まれない。そのため、ヒステリシスマップM82が変更されると、アシスト勾配Rから把握されるゲインに対して実際のゲインが大きくずれるおそれがある。そのため、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70の入力にアシスト勾配Rを含めたのみでは、操舵系を安定化させるうえで適切な位相補償をすることができないおそれがある。
【0081】
そこで、PU52は、マップ特定変数Vmhysの値に応じてフィルタ係数α,T1,T2を変更する。マップ特定変数Vmhysは、複数のヒステリシスマップM82のうちの採用されているマップを特定するための変数である。これにより、現在採用されているヒステリシスマップM82にとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相遅れ補償を実現できる。また、PU52は、マップ特定変数Vmhysの値に応じて位相進み補償処理M70のゲインGadを変更する。これにより、現在採用されているヒステリシスマップM82にとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相進み補償を実現できる。
【0082】
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0083】
本実施形態では、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、ヒステリシス補正量Thysを算出する。
図7に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図7において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0084】
図7に示すように、ヒステリシス処理M80は、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadを入力としてヒステリシス補正量Thysを算出する処理である。詳しくは、ヒステリシス処理M80は、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、複数のヒステリシスマップM82のうちの利用するマップを変更する処理を含む。これは、PU52が、フィルタ係数α,T1,T2およびゲインGadに応じてマップ特定変数Vmhysの値を算出することで実現できる。
【0085】
これにより、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70によって操舵系を安定に保つことができる範囲のヒステリシス補正量Thysとなるように、ヒステリシスマップM82を設定できる。
【0086】
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0087】
本実施形態においては、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadを、ダンピング処理M90のゲインGdに応じて変更する。
【0088】
図8に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図8において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
図8に示すように、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数設定処理M64は、ダンピング処理M90が採用しているゲインGdを入力としてフィルタ係数α,T1,T2を設定する処理である。また、位相進み補償処理M70のゲイン設定処理M74は、ダンピング処理M90が採用しているゲインGdを入力としてゲインGadを設定する処理である。
【0089】
「本実施形態の作用および効果」
ダンピング処理M90のゲインGdが変更されると、操舵トルクThrの変化に対するアシスト量Taの変化の比が変化することなどに起因して、目標反力トルクTsのゲインが大きくずれるおそれがある。そのため、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70の入力にアシスト勾配Rを含めたのみでは、操舵系を安定化させるうえで適切な位相補償をすることができないおそれがある。
【0090】
そこで、PU52は、ゲインGdに応じてフィルタ係数α,T1,T2を変更する。これにより、現在採用されているゲインGdにとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相遅れ補償を実現できる。また、PU52は、ゲインGdに応じて位相進み補償処理M70のゲインGadを変更する。これにより、現在採用されているゲインGdにとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相進み補償を実現できる。
【0091】
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
本実施形態では、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、ダンピング処理M90のゲインGdを算出する。
【0093】
図9に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図9において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
図9に示すように、ダンピング処理M90のゲイン設定処理M96は、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadを入力としてゲインGdを算出する処理である。詳しくは、ゲイン設定処理M96は、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、車速VとゲインGdとの関係を定める複数のマップデータのうちの1つを選択する処理を含んでもよい。
【0094】
これにより、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70によって操舵系を安定に保つことができる範囲のダンピング補正量Tdampとなるように、ゲインGdを設定できる。
【0095】
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
本実施形態においては、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadを、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtに応じて変更する。
【0097】
図10に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図10において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0098】
図10に示すように、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数設定処理M64は、ステアリング戻し処理M100の速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを入力としてフィルタ係数α,T1,T2を設定する処理である。また、位相進み補償処理M70のゲイン設定処理M74は、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを入力としてゲインGadを設定する処理である。
【0099】
「本実施形態の作用および効果」
ステアリング戻し処理M100の速度ゲインGvおよびトルクゲインGtが変更されると、操舵トルクThrの変化に対するアシスト量Taの変化の比が変化する。そのため、操舵トルクThrに対する目標反力トルクTsのゲインが大きくずれるおそれがある。そのため、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70の入力にアシスト勾配Rを含めたのみでは、操舵系を安定化させるうえで適切な位相補償をすることができないおそれがある。
【0100】
そこで、PU52は、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtに応じてフィルタ係数α,T1,T2を変更する。これにより、現在採用されている戻し補正量マップデータM106aにとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相遅れ補償を実現できる。また、PU52は、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtに応じて位相進み補償処理M70のゲインGadを変更する。これにより、現在採用されている速度ゲインGvおよびトルクゲインGtにとって操舵系の安定性を担保する上で適切な位相進み補償を実現できる。
【0101】
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0102】
本実施形態では、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、戻し補正量Trvを算出する。
図11に、本実施形態にかかるアシスト量設定処理M20の詳細を示す。なお、図11において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0103】
図11に示すように、ステアリング戻し処理M100の速度ゲイン設定処理M105は、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadを入力として速度ゲインGvを算出する処理である。詳しくは、速度ゲイン設定処理M105は、車速Vに加えて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、速度ゲインGvを算出する処理である。一方、トルクゲイン設定処理M106は、操舵トルクThに加えて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2および位相進み補償処理M70のゲインGadに応じて、トルクゲインGtを算出する処理である。
【0104】
これにより、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70によって操舵系を安定に保つことができる範囲の戻し補正量Trvとなるように、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを設定できる。
【0105】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1,11,12]反力設定処理は、アシスト量設定処理M20、軸力設定処理M22および反力算出処理M24に対応する。位相補償処理は、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70に対応する。反力調整処理は、ヒステリシス処理M80、ダンピング処理M90、ステアリング戻し処理M100、およびロードインフォメーション処理M110に対応する。反力付与処理は、反力用操作信号生成処理M26に対応する。連動処理は、図4において、フィルタ係数τiに応じてフィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadを変更する処理に対応する。また、連動処理は、図5において、フィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadに応じてフィルタ係数τiを変更する処理に対応する。また、連動処理は、図6において、マップ特定変数Vmhysの値に応じてフィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadを変更する処理に対応する。また、連動処理は、図7において、フィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadに応じてマップ特定変数Vmhysの値を変更する処理に対応する。また、連動処理は、図8において、ゲインGdに応じてフィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadを変更する処理に対応する。また、連動処理は、図9において、フィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadに応じてゲインGdを変更する処理に対応する。また、連動処理は、図10において、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtに応じてフィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadを変更する処理に対応する。また、連動処理は、図11において、フィルタ係数α、T1,T2およびゲインGadに応じて速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを変更する処理に対応する。[2]図2に示した処理に対応する。[3]所定成分反映処理は、ロードインフォメーション処理M110に対応する。反映規定変数は、フィルタ係数τiに対応する。所定成分抽出処理は、バンドパスフィルタM112に対応する。抽出変更処理は、フィルタ係数設定処理M116に対応する。連動処理は、図4に例示する処理に対応する。[4]所定成分反映処理は、ロードインフォメーション処理M110に対応する。反映規定変数は、フィルタ係数τiに対応する。所定成分抽出処理は、バンドパスフィルタM112に対応する。抽出変更処理は、フィルタ係数設定処理M116に対応する。連動処理は、図5に例示する処理に対応する。[5]ヒステリシス規定変数は、マップ特定変数Vmhysに対応する。ヒステリシス補正量算出処理は、ヒステリシスマップM82を用いてヒステリシス補正量Thysを算出する処理に対応する。ヒステリシス変更処理は、ヒステリシスマップM82を車速Vに応じて変更する処理に対応する。連動処理は、図6に対応する。[6]ヒステリシス規定変数は、マップ特定変数Vmhysに対応する。ヒステリシス補正量算出処理は、ヒステリシスマップM82を用いてヒステリシス補正量Thysを算出する処理に対応する。ヒステリシス変更処理は、ヒステリシスマップM82を車速Vに応じて変更する処理に対応する。連動処理は、図7に対応する。[7]ダンピング規定変数は、ゲインGdに対応する。ダンピング補正量算出処理は、微分演算M92、基本補正量設定処理M94および乗算処理M98に対応する。ダンピング変更処理は、ゲイン設定処理M96に対応する。連動処理は、図8に対応する。[8]ダンピング規定変数は、ゲインGdに対応する。ダンピング補正量算出処理は、微分演算M92、基本補正量設定処理M94および乗算処理M98に対応する。ダンピング変更処理は、ゲイン設定処理M96に対応する。連動処理は、図9に対応する。[9]戻し規定変数は、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtに対応する。戻し補正量算出処理は、微分演算M101、目標操舵速度設定処理M102、偏差算出処理M103、ベース補償量算出処理M104に対応する。連動処理は、図10に示す処理に対応する。[10]戻し規定変数は、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtに対応する。戻し補正量算出処理は、微分演算M101、目標操舵速度設定処理M102、偏差算出処理M103、ベース補償量算出処理M104に対応する。戻し変更処理は、速度ゲイン設定処理M105、トルクゲイン設定処理M106、および乗算処理M107に対応する。連動処理は、図11に示す処理に対応する。
【0106】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0107】
「位相遅れ補償処理について」
図4においては、フィルタ係数設定処理M64が、車速V、アシスト勾配Rおよびフィルタ係数τiを入力としたが、これに限らない。たとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、アシスト勾配Rおよびフィルタ係数τiとしてもよい。またたとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、車速Vおよびフィルタ係数τiとしてもよい。
【0108】
図6においては、フィルタ係数設定処理M64が、車速V、アシスト勾配Rおよびマップ特定変数Vmhysを入力としたが、これに限らない。たとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、アシスト勾配Rおよびマップ特定変数Vmhysとしてもよい。またたとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、車速Vおよびマップ特定変数Vmhysとしてもよい。
【0109】
図8においては、フィルタ係数設定処理M64が、車速V、アシスト勾配RおよびゲインGdを入力としたが、これに限らない。たとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、アシスト勾配RおよびゲインGdとしてもよい。またたとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、車速VおよびゲインGdとしてもよい。
【0110】
図10においては、フィルタ係数設定処理M64が、車速V、アシスト勾配R、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを入力としたが、これに限らない。たとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、アシスト勾配R、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtとしてもよい。またたとえば、フィルタ係数設定処理M64の入力を、車速V、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtとしてもよい。
【0111】
図5,7,9,11においては、フィルタ係数設定処理M64が、車速Vおよびアシスト勾配Rを入力としたが、これに限らない。たとえば、車速Vおよびアシスト勾配Rの2つのうちのいずれか1つに限って、フィルタ係数設定処理M64の入力としてもよい。
【0112】
・フィルタ処理M62が備える位相遅れフィルタは、分母および分子のラプラス演算子の次数がともに1の上述したフィルタに限らない。
・フィルタ処理M62が位相遅れフィルタとローパスフィルタとを含むことは必須ではない。たとえば、位相遅れフィルタのみであってもよい。
【0113】
・上記実施形態では、フィルタ係数α,T1,T2をフィルタ係数設定処理M64による変更対象としたが、これに限らない。たとえば、フィルタ係数α,T1,T2の3つのうちの2つに限って変更対象としてもよい。またたとえば、フィルタ係数α,T1,T2の3つのうちの1つに限って変更対象としてもよい。
【0114】
「位相進み補償処理について」
図4においては、ゲイン設定処理M74が、車速V、アシスト勾配Rおよびフィルタ係数τiを入力としたが、これに限らない。たとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、アシスト勾配Rおよびフィルタ係数τiとしてもよい。またたとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、車速Vおよびフィルタ係数τiとしてもよい。
【0115】
図6においては、ゲイン設定処理M74が、車速V、アシスト勾配Rおよびマップ特定変数Vmhysを入力としたが、これに限らない。たとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、アシスト勾配Rおよびマップ特定変数Vmhysとしてもよい。またたとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、車速Vおよびマップ特定変数Vmhysとしてもよい。
【0116】
図8においては、ゲイン設定処理M74が、車速V、アシスト勾配RおよびゲインGdを入力としたが、これに限らない。たとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、アシスト勾配RおよびゲインGdとしてもよい。またたとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、車速VおよびゲインGdとしてもよい。
【0117】
図10においては、ゲイン設定処理M74が、車速V、アシスト勾配R、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを入力としたが、これに限らない。たとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、アシスト勾配R、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtとしてもよい。またたとえば、ゲイン設定処理M74の入力を、車速V、速度ゲインGvおよびトルクゲインGtとしてもよい。
【0118】
図5,7,9,11においては、ゲイン設定処理M74が、車速Vおよびアシスト勾配Rを入力としたが、これに限らない。たとえば、車速Vおよびアシスト勾配Rの2つのうちのいずれか1つに限って、ゲイン設定処理M74の入力としてもよい。
【0119】
・微分演算M72と乗算処理M76との間に、ローパスフィルタを設けてもよい。その場合、ローパスフィルタの時定数を、フィルタ係数τi等に応じて変更してもよい。
・乗算処理M76において時間微分値dThにゲインGadを乗算する代わりに、時間微分値dThを入力として進み補償量Tadを出力とするマップデータを備えてもよい。
【0120】
・位相進み補償処理が、時間微分値dThを算出する処理を含むことは必須ではない。たとえば、時間微分値dThを算出する代わりに、操舵トルクThを位相進み補償フィルタの入力とする処理を含んでもよい。
【0121】
「位相補償処理について」
・位相補償処理が、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70からなることは必須ではない。たとえば、位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70の2つの処理のうちのいずれか1つのみを含んでもよい。また、たとえば位相遅れ補償処理M60および位相進み補償処理M70の2つの処理以外の処理をさらに含んでもよい。
【0122】
「所定成分抽出処理について」
・所定成分抽出処理としては、上記ロードインフォメーション処理M110に限らない。たとえば、所定成分抽出処理は、複数の周波数帯のそれぞれに対応したバンドパスフィルタを備えて、それらのそれぞれによってq軸電流iqtから抽出された周波数成分を合成した成分に応じて路面情報トルクTiとする処理であってもよい。
【0123】
・転舵輪34に付与される周波数信号を示す変数であって且つ所定成分の抽出対象となる変数としては、q軸電流iqtに限らない。たとえば転舵モータ42のトルクであってもよい。
【0124】
「所定成分変更処理について」
・所定成分変更処理としては、バンドパスフィルタのフィルタ係数を変更する処理に限らない。たとえば、ゲインGを車速Vに応じて変更する処理であってもよい。
【0125】
図4においては、所定成分変更処理が車速Vのみからフィルタ係数τiを変更する処理を例示したが、これに限らない。
「所定成分反映処理について」
・所定成分反映処理が、バンドパフィルタの出力値にゲインを乗算することによって路面情報トルクTiを算出する処理であることは必須ではない。たとえば、バンドパスフィルタの出力値を路面情報トルクTiとする処理であってもよい。
【0126】
「ヒステリシス補正量算出処理について」
・ヒステリシス補正量算出処理がマップ演算をする処理であることは必須ではない。たとえば、操舵角θsを入力として且つヒステリシス補正量Thysを出力する関数近似器を用いてヒステリシス補正量Thysを算出する処理であってもよい。
【0127】
「ヒステリシス変更処理について」
図6には、ヒステリシス変更処理として、車速Vのみからマップを変更する処理を例示したが、これに限らない。
【0128】
・上記「ヒステリシス補正量算出処理について」の欄に記載したように、ヒステリシス補正量算出処理が関数近似器を利用する場合、ヒステリシス変更処理を、利用する関数近似器を変更する処理としてもよい。
【0129】
「ダンピング補正量算出処理について」
・ダンピング補正量算出処理が、微分演算M92、基本補正量設定処理M94、および乗算処理M98を備えることは必須ではない。たとえば、微分演算M92の出力値を直接乗算処理M98の入力としてもよい。
【0130】
「ダンピング変更処理について」
図8においては、ダンピング変更処理が、車速Vのみを入力とする例を示したが、これに限らない。
【0131】
・ダンピング変更処理が、ゲイン設定処理M96であることは必須ではない。たとえば、基本補正量設定処理M94をマップ演算によってダンピング補正量Tdampを算出する処理として且つ、ダンピング変更処理を、採用するマップを変更する処理としてもよい。
【0132】
「戻し補正量算出処理について」
・戻し補正量Trvを算出するための入力に、車速V、操舵角θsおよび操舵トルクThの3つの変数が含まれることは必須ではない。たとえばそれら3つの変数に関しては、いずれか2つの変数のみが含まれてもよい。また、たとえばそれら3つの変数に関しては、いずれか1つの変数のみが含まれてもよい。
【0133】
・戻し補正量算出処理が、ベース補償量Trvbに速度ゲインGvおよびトルクゲインGtを乗算することによって戻し補正量Trvをマップ演算する処理であることは必須ではない。たとえば、操舵速度ωs等を独立変数として且つ戻し補正量Trvを従属変数とする関数近似器を用いて戻し補正量Trvを算出する処理であってもよい。
【0134】
「戻し変更処理について」
・「戻し補正量算出処理について」に記載したように、関数近似器を用いて戻し補正量Trvを算出する場合、戻し変更処理は、採用する関数近似器を変更する処理とすればよい。
【0135】
「反力調整変数について」
・反力調整変数は、反力調整処理を規定するための変数である反力規定変数に限らない。たとえば、反力調整処理の出力に関する変数であってもよい。
【0136】
図12に、PU52が、ロードインフォメーション処理M110の出力である路面情報トルクTiに応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定する例を示す。なお、PU52は、路面情報トルクTiの時間平均値または振幅に応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定することがより望ましい。
【0137】
図13に、PU52が、ヒステリシス処理M80の出力であるヒステリシス補正量Thysに応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定する例を示す。なお、PU52は、ヒステリシス補正量Thysの時間平均値に応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定してもよい。
【0138】
図14に、PU52が、ダンピング処理M90の出力であるダンピング補正量Tdampに応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定する例を示す。なお、PU52は、ダンピング補正量Tdampの時間平均値に応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定してもよい。
【0139】
図15に、ステアリング戻し処理M100の出力である戻し補正量Trvに応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定する例を示す。なお、PU52は、戻し補正量Trvの時間平均値に応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定してもよい。また、PU52は、戻し補正量Trvに代えて、ベース補償量Trvbに応じて、位相遅れ補償処理M60のフィルタ係数α,T1,T2と、位相進み補償処理M70のゲインGadと、を設定してもよい。
【0140】
「操舵制御装置について」
・操舵制御装置としては、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行される処理の少なくとも一部を実行するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、操舵制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成を備える処理回路を含んでいればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶する記憶装置等のプログラム格納装置とを備える処理回路。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える処理回路。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える処理回路。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置は、複数であってもよい。また、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0141】
「そのほか」
・転舵モータ42が同期機であることは必須ではない。たとえば、誘導機であってもよい。
【0142】
・上記各実施形態は、操舵装置10を、ステアリングホイール12と転舵輪34との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、クラッチによりステアリングホイール12と転舵輪34との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。
【符号の説明】
【0143】
10…操舵装置
12…ステアリングホイール
14…ステアリング軸
20…反力アクチュエータ
22…反力モータ
24…反力用インバータ
30…転舵アクチュエータ
32…ラック軸
34…転舵輪
42…転舵モータ
44…転舵用インバータ
50…操舵制御装置
図1
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