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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172166
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水電解装置およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20241205BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241205BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241205BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20241205BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20241205BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20241205BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20241205BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B1/04
C25B15/08 302
C25B15/02
C25B15/00 303
C25B15/00 302Z
C25B13/02 302
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089710
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健志
(72)【発明者】
【氏名】平方 聡樹
【テーマコード(参考)】
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DB20
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB19
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB35
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED20
4D061FA20
4D061GA14
4D061GC02
4D061GC11
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC06
4K021CA08
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA05
(57)【要約】
【課題】陰極部の近傍における不純物の蓄積に起因した電解性能の低下を抑制する。
【解決手段】水電解装置11は、陰極部31と陽極部32との間にアニオン交換膜33が設置された水電解セル21と、水電解セル21に給電する電源装置22とを具備し、電源装置22が水電解セル21に給電する状態で水電解セル21に電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、陰極部31に除去液を供給することで陰極部31の近傍の不純物を除去する除去動作とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極部と陽極部との間にアニオン交換膜が設置された水電解セルと、
前記水電解セルに給電する電源装置とを具備し、
前記電源装置が前記水電解セルに給電する状態で前記水電解セルに電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、
前記陰極部に除去液を供給することで前記陰極部の近傍の不純物を除去する除去動作と
を実行する水電解装置。
【請求項2】
前記水電解セルは、前記陰極部に連通する第1流路が形成された第1流路部材を含み、
前記除去動作は、前記第1流路部材を介して前記陰極部に前記除去液を供給する第1除去動作を含む
請求項1の水電解装置。
【請求項3】
前記第1除去動作は、前記電解動作に並行して実行される
請求項2の水電解装置。
【請求項4】
前記第1除去動作の実行中における前記陰極部の電圧を、前記電解動作の実行中における前記陰極部の電圧を上回る電圧に設定する
請求項2または請求項3の水電解装置。
【請求項5】
前記水電解セルは、前記陽極部に連通する第2流路が形成された第2流路部材を含み、
前記除去動作は、前記電源装置による給電が停止した状態において、前記第2流路部材と前記陽極部と前記アニオン交換膜とを介して、前記電解液を前記除去液として前記陰極部に供給する第2除去動作を含む
請求項1の水電解装置。
【請求項6】
前記水電解セルに対する印加電圧が所定値を上回る場合に前記除去動作を実行する
請求項1の水電解装置。
【請求項7】
陰極部と陽極部との間にアニオン交換膜が設置された水電解セルと、
前記水電解セルに給電する電源装置とを具備する水電解装置の動作方法であって、
前記水電解装置に、
前記電源装置が前記水電解セルに給電する状態で前記水電解セルに電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、
前記陰極部に除去液を供給することで前記陰極部の近傍の不純物を除去する除去動作と
を実行させる水電解装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解質膜を利用した水電解のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアニオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)等の電解質膜を利用した水電解により水素を製造する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、陽極触媒層と陰極触媒層との間に電解質膜が設置された水電解デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7102599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術においては、陽極触媒層に供給された電解液が電解質膜を通過して陰極触媒層に供給されることで水電解が発生する。以上の構成においては、長期間にわたる動作により、電解液中の不純物が陰極触媒層の近傍(例えば陰極触媒層と電解質膜との界面)に蓄積される。陰極触媒層の近傍に不純物が蓄積されると、電解性能が低下するという課題がある。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、陰極部の近傍における不純物の蓄積に起因した電解性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る水電解装置は、陰極部と陽極部との間にアニオン交換膜が設置された水電解セルと、前記水電解セルに給電する電源装置とを具備し、前記電源装置が前記水電解セルに給電する状態で前記水電解セルに電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、前記陰極部に除去液を供給することで前記陰極部の近傍の不純物を除去する除去動作とを実行する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る水電解装置の動作方法は、陰極部と陽極部との間にアニオン交換膜が設置された水電解セルと、前記水電解セルに給電する電源装置とを具備する水電解装置の動作方法であって、前記水電解装置に、前記電源装置が前記水電解セルに給電する状態で前記水電解セルに電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、前記陰極部に除去液を供給することで前記陰極部の近傍の不純物を除去する除去動作とを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る水電解システムの構成図である。
図2】水電解システムの動作の説明図である。
図3】第1実施形態の効果の説明図である。
図4】第2実施形態に係る水電解システムの構成図である。
図5】第2実施形態に係る水電解システムの動作の説明図である。
図6】第3実施形態における制御装置の動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法および縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における水電解システム100の構成図である。第1実施形態の水電解システム100は、水電解装置11と制御装置12とを具備する。水電解装置11は、水電解により水素と酸素とを生成するシステムであり、水電解セル21と電源装置22と第1供給機構23と第2供給機構24とを具備する。
【0010】
水電解セル21は、水電解により水素と酸素とを生成する機構であり、膜電極接合体30(MEA:Membrane Electrode Assembly)と第1流路部材41と第2流路部材42と第1ガスケット51と第2ガスケット52とを具備する。第1流路部材41と第2流路部材42との間に膜電極接合体30が設置される。具体的には、第1流路部材41と第2流路部材42とが例えばネジまたはボルト等の締結具により相互に固定され、第1流路部材41と第2流路部材42との間に膜電極接合体30が挟持される。
【0011】
膜電極接合体30は、水電解により水素と酸素とを発生させる。第1実施形態の膜電極接合体30は、陰極部31と陽極部32とアニオン交換膜33との積層で構成される。具体的には、陰極部31と陽極部32との間にアニオン交換膜33が設置される。
【0012】
アニオン交換膜33(AEM:Anion Exchange Membrane)は、水酸化物イオン(OH)等の陰イオンが選択的に移動可能な電解質膜である。例えばA201(トクヤマ製)等の各種の高分子材料により、アニオン交換膜33が形成される。ただし、アニオン交換膜33の材料は任意であり、以上の例示には限定されない。例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリエチレンオキシド(PEO)等の高分子材料により、アニオン交換膜33が形成されてもよい。
【0013】
第1実施形態のアニオン交換膜33は、第1面F1と第2面F2とを含む矩形状の薄膜である。第1面F1および第2面F2は、相互に反対側に位置する表面である。アニオン交換膜33の膜厚は例えば30μm程度である。
【0014】
陰極部31は、第1面F1に積層される。陰極部31においては、以下に例示する第1反応により水素ガスが発生する。
4HO+4e→2H+4OH
【0015】
図1に例示される通り、陰極部31は、陰極触媒層311と陰極拡散層312との積層で構成される。第1面F1と陰極拡散層312との間に陰極触媒層311が位置する。陰極触媒層311は、第1面F1に密着する薄膜であり、第1反応を促進する。例えば白金(Pt)等の金属材料を担持したカーボンにより陰極触媒層311が形成される。なお、陰極触媒層311の材料は任意であり、例えばニッケル(Ni)等の材料が利用されてもよい。
【0016】
陰極拡散層312は、第1反応により発生した水素ガスを効率的に分離および排出するための要素である。例えばニッケル(Ni)フォームまたは炭素系材料の多孔質膜が、陰極拡散層312として利用される。また、陰極拡散層312は、導電材料により形成され、陰極触媒層311が授受する電子の経路としても機能する。
【0017】
陽極部32は、第2面F2に積層される。陽極部32においては、以下に例示する第2反応により酸素ガスが発生する。
4OH→O+2HO+4e
【0018】
図1に例示される通り、陽極部32は、陽極触媒層321と陽極拡散層322との積層で構成される。第2面F2と陽極拡散層322との間に陽極触媒層321が位置する。陽極触媒層321は、第2面F2に密着する薄膜であり、前述の第2反応を促進する。例えばイリジウム(Ir)、鉄(Fe)またはニッケル(Ni)等の金属材料により陽極触媒層321が形成される。以上に例示した金属材料の酸化物により陽極触媒層321が形成されてもよい。陰極触媒層311と陽極触媒層321との間にアニオン交換膜33が位置する。
【0019】
陽極拡散層322は、第2反応により発生した酸素ガスを効率的に分離および排出するための要素である。例えばニッケル(Ni)フォームまたは炭素系材料の多孔質膜が陽極拡散層322として利用される。陽極拡散層322は、電解液を陽極触媒層321(さらにはアニオン交換膜33)に効率的に供給するための要素としても機能する。また、陽極拡散層322は、導電材料により形成され、陽極触媒層321が授受する電子の経路としても機能する。
【0020】
第1流路部材41は、金属等の導電材料により形成された板状の構造体(セパレータ)である。第1流路部材41は、陰極部31を挟んで第1面F1に対向する。すなわち、陰極部31は、第1面F1と第1流路部材41との間に位置する。
【0021】
第1流路部材41のうち第1面F1との対向面には第1流路411が形成される。第1流路411は、陰極部31に連通する流路である。例えば、第1反応により陰極部31に発生した水素ガスが第1流路411に流通する。
【0022】
また、第1流路部材41には、第1供給管412と第1排出管413とが設置される。第1供給管412は、後述の除去液を水電解セル21に供給するための管路である。第1排出管413は、第1反応により発生した水素ガスと余剰の電解液とを排出するための管路である。
【0023】
第2流路部材42は、金属等の導電材料により形成された板状の構造体(セパレータ)である。第2流路部材42は、陽極部32を挟んで第2面F2に対向する。すなわち、陽極部32は、第2面F2と第2流路部材42との間に位置する。
【0024】
第2流路部材42のうち第2面F2との対向面には第2流路421が形成される。第2流路421は、陽極部32に連通する流路である。例えば、第2反応により陽極部32に発生した酸素ガスが第2流路421に流通する。第2流路421は、電解液を流通させる経路としても機能する。
【0025】
また、第2流路部材42には第2供給管422と第2排出管423とが設置される。第2供給管422は、水電解セル21に電解液を供給するための管路である。第2排出管423は、第2反応により発生した酸素ガスと余剰の電解液とを排出するための管路である。
【0026】
第1ガスケット51は、第1流路部材41とアニオン交換膜33との間の空間に陰極部31を密封する矩形枠状のシール部材である。同様に、第2ガスケット52は、第2流路部材42とアニオン交換膜33との間の空間に陽極部32を密封するための矩形枠状のシール部材である。第1ガスケット51および第2ガスケット52は、例えば、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の各種の弾性材料により形成される。
【0027】
電源装置22は、水電解セル21に給電する直流電源である。具体的には、電源装置22は、第1流路部材41と第2流路部材42とに電気的に接続される。第1実施形態の電源装置22は、水電解セル21に所定値の電流が供給されるように両端間の電圧を制御する定電流源である。例えば水電解時の電流密度は1A/cm程度である。なお、電源装置22は陰極部31と陽極部32とに電気的に接続されてもよい。
【0028】
第2供給機構24は、第2容器241と第2ポンプ242とを含む。第2容器241は、電解液を貯留する容器である。電解液は、例えば純水またはアルカリ性溶液である。第1実施形態の電解液は、純水と水酸化カリウム(KOH)との混合液である。例えば、20μS/cm程度の純水に1M(mol/L)の濃度で水酸化カリウムを混合した水溶液が電解液として利用される。なお、アニオン交換膜33は、純水に混在する不純物(例えばシリカ)による被毒が少ないから、例えばプロトン交換膜等の他の電解質膜と比較して低純度(例えば20μS/cm)の純水を利用できる。したがって、水電解の運用コストを低減できる。なお、電解液に含まれる不純物としては、例えばナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)またはカルシウム(Ca)等の金属イオンも例示される。
【0029】
第2ポンプ242は、第2容器241に貯留された電解液を水電解セル21に供給する送液機構である。具体的には、第2ポンプ242は、第2容器241内の電解液を第2流路部材42の第2供給管422に供給する。第2ポンプ242から送出された電解液は、第2供給管422を介して第2流路421に供給される。
【0030】
第2流路部材42の第2流路421に供給された電解液は、陽極部32とアニオン交換膜33とを通過して陰極部31に到達する。電源装置22が水電解セル21に給電する状態では、電解液を利用した前述の第2反応により、陽極部32において酸素ガスが発生する。第2反応により発生した酸素ガスと余剰の電解液とは、第2排出管423から第2容器241に排出される。第2容器241は、酸素ガスと電解液とを分離する気液分離槽として機能する。
【0031】
第1供給機構23は、第1容器231と第1ポンプ232とを含む。第1容器231は、電解液を貯留する容器である。電源装置22が水電解セル21に給電する状態では、陽極部32側から供給される電解液を利用した前述の第1反応により、陰極部31において水素ガスが発生する。第1反応により発生した水素ガスと余剰の電解液とは、第1排出管413から第1容器231に排出される。第1容器231は、水素ガスと電解液とを分離する気液分離槽として機能する。
【0032】
以上に説明した通り、電源装置22が水電解セル21に給電する状態において水電解セル21に電解液を供給することで、第1反応と第2反応とを含む水電解の動作(以下「電解動作」という)が実行される。
【0033】
電解動作が長期間にわたり反復された場合、図1に例示される通り、電解液に混在する不純物が陰極部31の近傍に蓄積される場合がある。具体的には、陰極触媒層311とアニオン交換膜33との界面、または陰極部31(特に陰極触媒層311)の内部に、濃縮された不純物が蓄積される。例えばシリカ等の酸化物またはナトリウム等の金属イオンが、電解液の不純物として例示される。なお、陽極部32の近傍には電解液が充分な流量で定常的に供給されるから、陰極部31の近傍と比較して不純物の蓄積は顕在化し難い。
【0034】
陰極部31の近傍に不純物が蓄積された状態では、陰極触媒層311における触媒活性またはアニオン交換膜33の導電率が低下し、結果的に水電解セル21による電解性能が低下する。電解性能は、例えば単位時間内に生成可能な水素量である。
【0035】
以上の課題を解決するために、陰極部31に除去液を供給することで当該陰極部31の近傍の不純物が除去される。具体的には、第1実施形態においては、第1容器231に貯留された電解液が、陰極部31の近傍の不純物を除去するための除去液として利用される。
【0036】
第1供給機構23の第1ポンプ232は、第1容器231に貯留された除去液(電解液)を水電解セル21に供給する送液機構である。具体的には、第1ポンプ232は、第1流路部材41の第1供給管412に除去液を供給する。除去液の流量は、例えば5mL/min程度である。なお、第1ポンプ232から送出される除去液の流量は任意である。すなわち、除去液の流量は、電解動作において第2ポンプ242から送出される電解液の流量と同等でもよいし、電解液の流量と比較して多くても少なくてもよい。
【0037】
第1流路部材41に供給された除去液は、第1流路411から陰極部31に流入し、陰極拡散層312と陰極触媒層311とを通過してアニオン交換膜33に到達する。除去液は、陽極部32側から供給される余剰の電解液とともに陰極部31を通過して第1流路411に流入し、最終的には第1排出管413から第1容器231に排出される。陰極部31の近傍の不純物は、除去液の流動とともに移動し、陰極部31および第1流路411を経由して第1排出管413から排出される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態においては、第1流路部材41を介して陰極部31に除去液を供給することで陰極部31の近傍の不純物を除去する動作(以下「第1除去動作」という)が実行される。なお、陰極拡散層312は、第1除去動作において除去液を陰極触媒層311に効率的に供給するための要素として機能する。
【0038】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、陰極部31に除去液が供給されることで陰極部31の近傍の不純物が除去される。したがって、不純物の蓄積に起因した電解性能の低下を抑制できる。第1実施形態においては特に、第1流路部材41を介して陰極部31に除去液が供給されるから、陰極部31の近傍の不純物を効果的に除去できる。
【0039】
図1の制御装置12は、水電解装置11の動作を制御する。制御装置12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、半導体メモリまたは磁気記録媒体等の記憶装置とを具備するコンピュータシステムである。記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、演算装置は各種の処理を実行する。具体的には、制御装置12は、電源装置22、第1ポンプ232および第2ポンプ242の動作を制御する。
【0040】
図2は、水電解システム100の動作の説明図である。制御装置12は、電解期間Eにおいて電解動作を水電解装置11に継続的に実行させる。具体的には、制御装置12は、電解期間Eにおいて、水電解セル21に給電する状態に電源装置22を維持し、かつ、第2容器241の電解液を水電解セル21に供給する状態に第2ポンプ242を維持する。
【0041】
また、制御装置12は、電解期間E内の複数の除去期間Cの各々において第1除去動作を水電解装置11に実行させる。具体的には、各除去期間Cにおいて、制御装置12は、第1容器231の除去液(電解液)を水電解セル21に供給する動作を第1ポンプ232に実行させる。すなわち、第1実施形態においては、電解動作に並行して第1除去動作が間欠的に反復される。各除去期間Cでは、電源装置22が水電解セル21に給電する状態のもとで第1除去動作が実行される。
【0042】
各除去期間Cの継続時間Dおよび反復周期Tは任意である。例えば、反復周期Tが1日に設定された形態では、継続時間Dは15分に設定される。また、反復周期Tが1週間に設定された形態では、継続時間Dは60分に設定される。なお、反復周期Tは、第1除去動作の頻度に関する数値とも表現される。継続時間Dは除去期間Cの時間長であり、反復周期Tは、相前後する各除去期間Cの始点間の時間長である。
【0043】
図3は、第1実施形態の効果を説明するための図表である。図3の実施例1および実施例2が第1実施形態に相当する。すなわち、実施例1および実施例2は、第1除去動作により不純物を除去する形態である。実施例1は、反復周期Tが1日に設定され、継続時間Dが15分に設定された形態である。また、実施例2は、反復周期Tが1週間に設定され、継続時間Dが60分に設定された形態である。比較例は、陰極部31の近傍の不純物を除去する動作を実行しない形態である。
【0044】
例えば陰極触媒層311の表面に不純物が蓄積されると、陰極触媒層311に対して電解液が接触する面積が減少し、結果的に第1反応が抑制される。また、陰極触媒層311とアニオン交換膜33との界面に不純物が蓄積されると、アニオン交換膜33の導電率が低下する。以上の通り、陰極部31の近傍に不純物が蓄積されると、水電解セル21に電流が流れ難くなる。前述の通り、電源装置22は、水電解セル21に所定値の電流が流れるように両端間の電圧を制御する。したがって、陰極部31における不純物の蓄積に起因して、電源装置22が水電解セル21に印加する電圧(以下「印加電圧V」という)が上昇する。すなわち、印加電圧Vが高いほど不純物の蓄積が進行していると評価できる。図3には、水電解装置11を1ヶ月にわたり稼動した場合に印加電圧Vの上昇が観測されたか否か(すなわち不純物の蓄積の有無)が図示されている。
【0045】
比較例においては、印加電圧Vの上昇が観測された。したがって、比較例では、電解動作に支障が発生する程度に陰極部31の近傍に不純物が蓄積されたことが確認できる。他方、実施例1および実施例2においては、印加電圧Vの上昇は観測されていない。したがって、実施例1および実施例2においては、第1除去動作の実行により陰極部31の近傍の不純物が有効に除去され、結果的に電解動作を支障なく継続できたことが確認できる。以上の通り、第1実施形態によれば、第1除去動作により陰極部31の近傍の不純物が除去される結果、不純物の蓄積に起因した電解性能の低下を抑制できる。
【0046】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0047】
図4は、第2実施形態における水電解システム100の構成図である。第2実施形態の水電解装置11においては、第1実施形態の水電解装置11から第1供給機構23が省略される。水電解装置11の他の構成は、第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態において第1供給機構23が設置されてもよい。
【0048】
第1実施形態においては、前述の通り、第1容器231内の除去液(電解液)を第1流路部材41から陰極部31に供給する第1除去動作により、陰極部31の近傍の不純物が除去される。第2実施形態においては、第2容器241内の電解液が除去液として不純物の除去に利用される。すなわち、第2容器241内の電解液を除去液として第2流路部材42から陰極部31に供給する動作(以下「第2除去動作」という)により、陰極部31の近傍の不純物が除去される。第2除去動作は、電源装置22による給電が停止した状態で実行される。すなわち、電解動作が停止した状態で第2除去動作が実行される。
【0049】
第2除去動作において、第2供給機構24の第2ポンプ242は、第2容器241に貯留された電解液を除去液として水電解セル21に供給する。具体的には、第2ポンプ242は、第2流路部材42の第2供給管422に除去液を供給する。なお、第2除去動作において第2ポンプ242から送出される除去液の流量は任意である。すなわち、除去液の流量は、電解動作において第2ポンプ242から送出される電解液の流量と同等でもよいし、電解液の流量と比較して多くても少なくてもよい。
【0050】
第2流路部材42に供給された除去液は、第2流路421から陽極部32に流入し、陽極部32とアニオン交換膜33とを通過して陰極部31に到達する。除去液は、陰極部31を通過して第1流路411に流入し、最終的には第1排出管413に排出される。陰極部31の近傍の不純物は、以上に説明した除去液の流動により移動し、陰極部31および第1流路411を経由して第1排出管413から排出される。以上の説明の通り、第2除去動作は、電源装置22による給電が停止した状態において、第2流路部材42と陽極部32とアニオン交換膜33とを介して、電解液を除去液として陰極部31に供給する動作である。
【0051】
図5は、第2実施形態における水電解システム100の動作の説明図である。第2実施形態の制御装置12は、第1実施形態と同様に、電解期間Eにおいて電解動作を水電解装置11に継続的に実行させる。具体的には、制御装置12は、電解期間Eにおいて、水電解セル21に給電する状態に電源装置22を維持し、かつ、第2容器241の電解液を水電解セル21に供給する状態に第2ポンプ242を維持する。
【0052】
制御装置12は、電源装置22による給電と第2ポンプ242の動作とを停止することで電解期間Eを終了する。電解期間Eの終了後に除去期間Cが開始される。具体的には、制御装置12は、除去期間Cにおいて、電源装置22を停止した状態に維持したまま、第2容器241の除去液(電解液)を水電解セル21に供給する動作を第2ポンプ242に実行させる。
【0053】
すなわち、第1実施形態においては電解動作に並行して第1除去動作が実行されるのに対し、第2実施形態においては、電解動作の終了後(または停止中)に第1除去動作が実行される。したがって、第1実施形態においては電解期間Eと各除去期間Cとが時間軸上で重複するのに対し、第2実施形態においては電解期間Eと除去期間Cとが時間軸上で重複しない。なお、電解動作が間欠的に反復される形態においては、相前後する2個の電解期間Eの間の除去期間Cにおいて第2除去動作が実行される。また、第2ポンプ242が電解液を水電解セル21に供給する動作が、電解期間Eと除去期間Cとにわたり連続的に継続されてもよい。
【0054】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては特に、第2流路部材42を介した電解液の供給により陰極部31の近傍の不純物が除去される。すなわち、電解動作のための電解液が不純物の除去のための除去液としても流用される。したがって、電解動作のための電解液を水電解セル21に供給する第2供給機構24とは別個に第1供給機構23が必要である第1実施形態と比較して、水電解装置11の規模を抑制できる。
【0055】
他方、第1実施形態においては、電解動作に並行して第1除去動作が実行される。したがって、電解動作が実行される電解期間Eとは別個の除去期間Cに第2除去動作が実行される第2実施形態と比較して、不純物の除去のために電解動作が時間的に制約されることを抑制できるという利点がある。
【0056】
C:第3実施形態
第1実施形態においては、第1除去動作が周期的に反復される形態を例示した。第3実施形態においては、水電解セル21の状態に応じて第1除去動作が実行される。具体的には、陰極部31の近傍に不純物が蓄積されることを条件として第1除去動作が実行される。
【0057】
前述の通り、陰極部31における不純物の蓄積に起因して、水電解セル21の印加電圧Vが上昇する。したがって、水電解セル21の印加電圧Vは、陰極部31の近傍に不純物が蓄積される度合の指標として利用可能である。以上の事情を背景として、第3実施形態の制御装置12は、水電解セル21の印加電圧Vに応じて第1除去動作の要否(不純物の蓄積の有無)を判定する。
【0058】
図6は、第3実施形態における制御装置12の動作を表すフローチャートである。電解動作が実行される電解期間Eにおいて所定の周期で図6の処理が反復される。
【0059】
図6の処理を開始すると、制御装置12は、水電解セル21に対する印加電圧Vを取得する(S1)。例えば、制御装置12は、電源装置22に接続された電圧計(図示略)から印加電圧Vを取得する。なお、印加電圧Vは、第1流路部材41と第2流路部材42との間の電圧、または、陰極部31と陽極部32との間の電圧とも表現される。
【0060】
制御装置12は、水電解セル21の印加電圧Vが所定値Vrefを上回るか否かを判定する(S2)。所定値Vrefは、陰極部31の近傍に不純物が蓄積されていない状態で電解動作の実行中に水電解セル21に印加される電圧を上回り、かつ、電解動作に支障が発生する程度に不純物が蓄積された状態で水電解セル21に印加される電圧を下回るように、統計的または実験的に事前に設定される。したがって、陰極部31の近傍に蓄積された不純物が少ない状態では印加電圧Vが所定値Vrefを下回り、電解動作に支障が発生する程度に不純物が蓄積された状態では印加電圧Vが所定値Vrefを上回る。以上の説明から理解される通り、印加電圧Vと所定値Vrefとの比較は、不純物の除去の要否を判定する処理に相当する。所定値Vrefは、例えば、陰極部31の近傍に不純物が蓄積されていない状態における既定の印加電圧Vを所定の電圧(例えば0.2V)だけ上回る電圧に設定される。
【0061】
印加電圧Vが所定値Vrefを上回る場合には不純物を除去する必要がある。したがって、印加電圧Vが所定値Vrefを上回る場合(S2:YES)、制御装置12は、水電解装置11に第1除去動作を実行させる(S3)。具体的には、制御装置12は、第1容器231の除去液(電解液)を水電解セル21に供給する動作を第1ポンプ232に実行させる。また、制御装置12は、除去期間Cが経過した場合に第1ポンプ232を停止することで第1除去動作を終了させる。
【0062】
他方、印加電圧Vが所定値Vrefを下回る場合には不純物を除去する必要がない。したがって、印加電圧Vが所定値Vrefを下回る場合(S2:NO)、制御装置12は、水電解装置11に第1除去動作を実行させることなく図6の処理を終了する。なお、印加電圧Vが所定値Vrefと等しい場合には、第1除去動作を実行してもよいし実行しなくてもよい。
【0063】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第3実施形態においては、水電解セル21の印加電圧Vが所定値Vrefを上回る場合に第1除去動作が実行される。すなわち、陰極部31の近傍に実際に不純物が蓄積した場合に第1除去動作が実行される。したがって、例えば所定の反復周期Tで第1除去動作が反復される第1実施形態と比較して、第1除去動作の過不足を抑制できる。他方、第1除去動作が反復周期Tで反復される第1実施形態によれば、第3実施形態と比較して第1除去動作の制御が簡便であるという利点がある。
【0064】
なお、以上の説明においては、第1実施形態を基礎として第3実施形態を説明したが、第2実施形態においても、印加電圧Vが所定値Vrefを上回る場合に第2除去動作を実行する構成が採用され得る。具体的には、印加電圧Vが所定値Vrefを上回る場合(S2:YES)、制御装置12は、電源装置22による給電を停止したうえで第2ポンプ242を作動させることで、水電解装置11に第2除去動作を実行させる。
【0065】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0066】
(1)第1実施形態に例示した第1除去動作と第2実施形態に例示した第2除去動作との双方が実行される形態も想定される。すなわち、電解期間E内の各除去期間Cにおいて第1除去動作が実行され、かつ、電解期間Eの終了後の除去期間Cにおいて第2除去動作が実行される。第1除去動作および第2除去動作は、陰極部31に除去液を供給することで陰極部31の近傍の不純物を除去する除去動作として包括的に表現される。
【0067】
(2)第1実施形態において、電解動作の実行中における陰極部31の電圧Vaは、例えば接地電圧等の低電圧に設定される。しかし、電圧Vaが過度に低い電圧に維持された状態では、電解液に混在するナトリウムイオンまたはカリウムイオン等の金属イオン(カチオン)が陰極部31において析出する可能性がある。
【0068】
以上に説明した金属イオンの析出を抑制するため、第1除去動作の実行中に陰極部31の電圧を上昇させる形態も想定される。例えば、制御装置12は、電源装置22を制御することで、第1除去動作の実行中における陰極部31の電圧Vbを、電解動作中の実行中における陰極部31の電圧Vaを上回る電圧に設定する。
【0069】
以上の形態においては、第1除去動作の実行中に陰極部31の電圧が上昇するから、陰極部31における金属イオンの析出を抑制できる。したがって、金属イオンの析出に起因した電解性能の低下を抑制できる。
【0070】
(3)第1実施形態においては、電解動作に並行して第1除去動作が実行される形態を例示したが、電解動作の停止中に第1除去動作が実行されてもよい。すなわち、電解期間Eと各除去期間Cとの重複は第1実施形態において必須ではなく、電解期間Eと各除去期間Cとが相互に重複しない形態も想定される。
【0071】
(4)第1実施形態においては、第1除去動作の反復の条件(継続時間Dおよび反復周期T)が固定された形態を例示したが、第1除去動作の反復の条件は変更されてもよい。例えば、継続時間Dが経時的に増加する形態、または、反復周期Tが経時的に減少する形態(すなわち、第1除去動作の頻度が経時的に増加する形態)が想定される。
【0072】
(5)第1実施形態においては所定の反復周期Tで第1除去動作が反復される形態を例示し、第2実施形態においては電解期間Eの終了により第2除去動作が開始される形態を例示したが、除去動作(第1除去動作または第2除去動作)の実行の条件は、以上の例示に限定されず任意に変更される。例えば、利用者からの指示を契機として除去動作が実行されてもよい。また、水電解システム100の起動の直後または停止の直前に、除去動作が実行されてもよい。
【0073】
(6)第1実施形態においては、第1流路部材41の第1排出管413から排出される余剰の電解液を除去液として流用したが、電解動作用の電解液とは別個の除去液を第1除去動作に使用してもよい。以上の形態によれば、不純物の除去に好適な材料の溶液を、電解動作とは無関係に除去液として採用できる。
【0074】
(7)除去動作(第1除去動作または第2除去動作)において水電解セル21に供給される除去液の流量が可変に制御されてもよい。例えば、制御装置12は、除去動作の実行毎に除去液の流量を変更する。水電解セル21のうち除去液が到達する部位は、除去動作における除去液の流量に依存するという傾向がある。したがって、除去液の流量を変化させる形態によれば、流量が一定である形態と比較して、水電解セル21のうち不純物が特に有効に除去される部位が分散される。したがって、水電解セル21の全体にわたり不純物を効果的に除去できる。
【0075】
(8)本願における「第n」(nは自然数)という記載は、各要素を表記上において区別するための形式的かつ便宜的な標識(ラベル)としてのみ使用され、如何なる実質的な意味も持たない。したがって、「第n」という表記を根拠として、各要素の位置または製造の順番等が限定的に解釈される余地はない。
【0076】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0077】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る水電解装置は、陰極部と陽極部との間にアニオン交換膜が設置された水電解セルと、前記水電解セルに給電する電源装置とを具備し、前記電源装置が前記水電解セルに給電する状態で前記水電解セルに電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、前記陰極部に除去液を供給することで前記陰極部の近傍の不純物を除去する除去動作とを実行する。以上の構成によれば、陰極部に除去液が供給されることで陰極部の近傍の不純物が除去される。したがって、不純物の蓄積に起因した電解性能の低下を抑制できる。なお、「陰極部の近傍」は、水電解セルのうち陰極部側の部位である。具体的には、例えばアニオン交換膜の中心面からみて陰極部側の部位が「陰極部の近傍」に相当する。
【0078】
態様1の具体例(態様2)において、前記水電解セルは、前記陰極部に連通する第1流路が形成された第1流路部材を含み、前記除去動作は、前記第1流路部材を介して前記陰極部に前記除去液を供給する第1除去動作を含む。以上の態様においては、第1流路部材を介した除去液の供給により陰極部の近傍の不純物を効果的に除去できる。
【0079】
態様2の具体例(態様3)において、前記第1除去動作は、前記電解動作に並行して実行される。以上の態様においては、電解動作に並行して第1除去動作が実行されるから、電解動作が実行される期間とは別個の期間に除去動作が実行される形態と比較して、不純物の除去のために電解動作が時間的に制約されることを抑制できる。なお、第1除去動作と電解動作との「並行」は、第1除去動作が実行される期間の少なくとも一部と電解動作が実行される期間の少なくとも一部とが時間軸上で相互に重複することを意味する。
【0080】
態様2または態様3の具体例(態様4)において、前記第1除去動作の実行中における前記陰極部の電圧を、前記電解動作の実行中における前記陰極部の電圧を上回る電圧に設定する。以上の態様においては、第1除去動作の実行中に陰極部の電圧が上昇するから、陰極部における金属イオンの析出を抑制できる。
【0081】
態様1から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記水電解セルは、前記陽極部に連通する第2流路が形成された第2流路部材を含み、前記除去動作は、前記電源装置による給電が停止した状態において、前記第2流路部材と前記陽極部と前記アニオン交換膜とを介して、前記電解液を前記除去液として前記陰極部に供給する第2除去動作を含む。以上の態様においては、第2流路部材を介した電解液の供給により陰極部の近傍の不純物が除去される。電解動作のための電解液が不純物の除去のための除去液としても流用されるから、電解液とは別個の除去液のみが使用される形態と比較して、水電解装置の規模を抑制できる。
【0082】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様6)において、前記水電解セルに対する印加電圧が所定値を上回る場合に前記除去動作を実行する。不純物の蓄積により電解性能が低下した場合に水電解セルに対する印加電圧が上昇する。したがって、印加電圧が所定値を上回る場合に除去動作を実行する形態によれば、除去動作の過不足を抑制できる。
【0083】
本開示のひとつの態様(態様7)に係る動作方法は、陰極部と陽極部との間にアニオン交換膜が設置された水電解セルと、前記水電解セルに給電する電源装置とを具備する水電解装置の動作方法であって、前記水電解装置に、前記電源装置が前記水電解セルに給電する状態で前記水電解セルに電解液を供給することで水電解を発生させる電解動作と、前記陰極部に除去液を供給することで前記陰極部の近傍の不純物を除去する除去動作とを実行させる。
【符号の説明】
【0084】
100…水電解システム、11…水電解装置、12…制御装置、21…水電解セル、22…電源装置、23…第1供給機構、231…第1容器、232…第1ポンプ、24…第2供給機構、241…第2容器、242…第2ポンプ、30…膜電極接合体、31…陰極部、311…陰極触媒層、312…陰極拡散層、32…陽極部、321…陽極触媒層、322…陽極拡散層、33…アニオン交換膜、41…第1流路部材、411…第1流路、412…第1供給管、413…第1排出管、42…第2流路部材、421…第2流路、422…第2供給管、423…第2排出管、51…第1ガスケット、52…第2ガスケット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6