(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172167
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/36 20120101AFI20241205BHJP
G06Q 20/06 20120101ALI20241205BHJP
【FI】
G06Q20/36
G06Q20/06 300
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089711
(22)【出願日】2023-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】593022629
【氏名又は名称】株式会社ジェーシービー
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】間下 公照
(72)【発明者】
【氏名】南井 享
【テーマコード(参考)】
5L020
5L055
【Fターム(参考)】
5L020AA15
5L020AA68
5L055AA15
5L055AA68
(57)【要約】
【課題】ウォレット統合サービスの信頼性を向上すること。
【解決手段】情報処理装置(10)は、ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する管理部と、前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う移転処理部と、を備え、前記管理部は、前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する管理部と、
前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う移転処理部と、して機能させ、
前記管理部は、前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する、
情報処理プログラム。
【請求項2】
前記管理部は、前記保留状態の前記電子的価値を前記第1ウォレットの残高に関連付けて管理する、
請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記管理部は、前記保留状態の前記電子的価値を前記複数のウォレットとは異なる中間アカウントの残高に含めて管理する、
請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記第1ウォレットの残高に関する情報、前記第2ウォレットの残高に関する情報、又は、前記複数のウォレットとは異なる中間アカウントの残高に関する情報のいずれかとして、前記保留状態の前記電子的価値に関する情報を前記ユーザに対して出力する出力部としてさらに機能させる、
請求項1から請求項3のいずれか情報処理プログラム。
【請求項5】
前記ユーザからの前記電子的価値の移転指示を受け付ける受付部としてさらに機能させ、
前記移転処理部は、前記移転指示に応じて、前記電子的価値の移転に関する処理を行う、
請求項4記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記ユーザからの参照要求を受け付ける受付部としてさらに機能させ、
前記出力部は、前記参照要求に応じて、前記複数のウォレットの少なくとも一つの残高に関する情報を前記ユーザに対して出力する、
請求項4記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記複数のウォレットは、一以上のサブウォレットと前記サブウォレットの残高の合計を少なくとも残高に含むメインウォレットとを含む、
請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
前記サブウォレット用のシステムから通知される前記サブウォレットの残高の変動を前記メインウォレットの残高に反映する変動反映処理部としてさらに機能させる、
請求項7記載の情報処理プログラム。
【請求項9】
ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する管理部と、
前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う移転処理部と、を備え、
前記管理部は、前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する、
を備える情報処理装置。
【請求項10】
ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する情報処理装置が、
前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う工程と、
前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する工程と、
を有する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、仮想通貨、資金移動業者のPay機能、交通系ICカード等の種々の電子的価値にそれぞれ対応した複数のウォレットを統合して管理するサービス(以下、「ウォレット統合サービス」という)が検討されている。例えば、特許文献1には、複数の通貨(例えば、暗号通貨、仮想通貨等)それぞれに対応する複数のウォレットの残高情報を管理するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムにおいて、ユーザが保有する複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに電子的価値を移転する場合、当該第1ウォレット及び第2ウォレット間でタイムリーに残高の同期がなされるとは限らないため、例えば、第2ウォレットに移転されるべき電子的価値が第1ウォレットを用いた支払いに利用されてしまったり、第2ウォレットに移転される電子的価値が第1ウォレットから他のウォレットに二重移転されたりする恐れがあり、ウォレット統合サービスの信頼性を十分に確保できない恐れがある。
【0005】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであって、ウォレット統合サービスの信頼性を向上可能な情報処理プログラム、情報処理システム、情報処理方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る情報処理プログラムは、コンピュータを、ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する管理部と、前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う移転処理部と、して機能させ、前記管理部は、前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する。
【0007】
本開示の他の態様に係る情報処理装置は、ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する管理部と、前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う移転処理部と、を備え、前記管理部は、前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する。
【0008】
本開示の他の態様に係る情報処理装置の情報処理方法は、ユーザが保有する複数のウォレットの残高を管理する情報処理装置が、前記複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する移転処理を、前記第1ウォレット用の第1システム及び前記第2ウォレット用の第2システムそれぞれとの間で行う工程と、前記管理部は、前記移転処理において前記第1システム及び前記第2システムそれぞれから前記第1ウォレット及び前記第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、前記電子的価値を保留状態として管理する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、ウォレット統合サービスの信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理システムの各装置の物理構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る複数のウォレットの残高管理の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る電子的価値の移転処理の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る情報処理装置の出力例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る変動反映処理の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る情報処理システムの動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態における情報処理システムについて、図面を参照して詳細に説明する。また、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付して表している。
【0012】
(構成)
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置10と、ユーザ端末20と、複数のシステム30と、ネットワーク40と、を備える。
【0013】
情報処理装置10は、ユーザが保有する複数のウォレットを管理する一以上の装置である。具体的には、情報処理装置10は、当該複数のウォレットがそれぞれ有する電子的価値の残高を管理してもよい。当該複数のウォレットは、例えば、中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)口座、P2P(Pear-to-Pear)取引用のアカウント、交通系IC、資金移動業者のPay機能用のアカウント、オンラインコマース用のアカウント、店舗利用用のアカウント及び金融機関(例えば、銀行)の口座等の少なくとも二つであってもよい。また、電子的価値は、例えば、通貨(例えば、円、ドル等)、仮想通貨、暗号資産、NFT(Non-Fungible Token)又はポイント等であってもよい。
【0014】
また、当該複数のウォレットは、一つのメインウォレットと一以上のサブウォレットを含んでもよい。メインウォレットは、一以上のサブウォレットの残高の合計を少なくとも保有するウォレットである。メインウォレットとしては、例えば、CBDC口座を用いることが想定されるが、これに限られない。各サブウォレットは、メインウォレットと同一の単位(例えば、円又はドル等の同一の通貨単位、又は、同一の仮想通貨単位等)の電子的価値を保有することもできるし、メインウォレットと異なる単位の電子的価値を保有してもできる。例えば、円とドルや円とBTCのように、メインウォレットとサブウォレットの電子的価値の単位が異なる場合は、メインウォレットは、当該サブウォレットの電子的価値をメインウォレットの単位に変換して保有してもよい。なお、当該複数のウォレットは、メインウォレットを含まず、並列的なウォレットの集合であってもよいことは勿論である。
【0015】
また、当該複数のウォレットは、情報処理装置10内で保有されてもよいし、当該複数のウォレットの少なくとも一部が、情報処理装置10外部の装置(例えば、ユーザ端末20等)で保有されてもよい。情報処理装置10は、自装置の外部で保有される当該複数のウォレットを自装置内に保有してもよいし、該複数のウォレットの少なくとも一部を保有する外部の装置から、当該複数のウォレットの少なくとも一部に関する情報を取得してもよい。
【0016】
ユーザ端末20は、ユーザによって使用される端末である。ユーザ端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等である。
【0017】
複数のシステム30の各々は、例えば、情報処理装置10によって管理される各ウォレットを用いた決済を行うシステムである。当該複数のシステム30の少なくとも二つは、情報処理装置10とオンラインで接続されたオンラインシステム及び情報処理装置10とバッチ処理(例えば、日時バッチ)を行うバッチシステム等、異なるタイプのシステムであってもよい。なお、システム30の数Nは2以上であればよく、システム300~30Nを総称してシステム30という。
【0018】
各システム30は、対応するウォレットの利用(例えば、商品の購入等)に応じて当該ウォレットの残高を更新し、当該残高の変動を情報処理装置10に通知してもよい。また、情報処理装置10によって管理される複数のウォレット間において電子的価値が移転される場合、当該複数のウォレットにそれぞれ対応する複数のシステム30は、当該情報処理装置10からの更新要求に基づいて当該複数のウォレットの残高をそれぞれ更新してもよい。また、当該複数のシステム30は、それぞれ、当該複数のウォレットの残高の更新完了を情報処理装置10に通知してもよい。
【0019】
ネットワーク40は、無線及び/又は有線のネットワークであり、情報処理装置10、ユーザ端末20、複数のシステム30の少なくとも二つを接続する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る情報処理システムの各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理システム1内の各装置(例えば、情報処理装置10、ユーザ端末20又は各システム30内の装置等)は、演算装置に相当するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ11と、記憶部12と、送受信部13と、入出力部14とを有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。
【0021】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、情報処理システム1内の各装置を制御する。プロセッサ11は、プログラムを記憶部12から読み出して実行することで、本実施形態で説明する各種の処理を実行してもよい。情報処理システム1内の各装置は、1又は複数のプロセッサ11により構成されていてもよい。また、当該各装置は、コンピュータと呼ばれてもよい。
【0022】
記憶部12は、例えば、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等のストレージから構成される。記憶部12は、プロセッサ11による処理の実行に必要な各種情報(例えば、プロセッサ11によって実行されるプログラム等)を記憶してもよい。
【0023】
送受信部13は、ネットワーク40を介して通信を行う装置であり、例えば、ネットワークカード、通信モジュール、チップ、アンテナ等を含んでもよい。送受信部13は、ネットワーク40を介して各種情報を送信する送信部、及び/又は、ネットワーク40を介して各種情報を受信する受信部を含んでもよい。
【0024】
入出力部14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等の入力部と、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等の出力部とを含む。入力部は、ユーザからの各種情報の入力を受け付ける。また、出力部は、ユーザに対する各種情報を表示する表示部を含んでもよい。
【0025】
以上説明した物理構成は一例に過ぎない。情報処理システム1内の各装置は、
図2に記載したハードウェアの一部が省略されていてもよいし、
図2に記載されていないハードウェアを備えていてもよい。また、
図2に示すハードウェアが1又は複数のチップにより構成されていてもよい。
【0026】
以上説明したハードウェア構成は一例に過ぎない。各情報処理装置は、
図2に記載したハードウェアの一部が省略されていてもよいし、
図2に記載されていないハードウェアを備えていてもよい。また、
図2に示すハードウェアが1又は複数のチップにより構成されていてもよい。また、情報処理装置が複数の装置で構成される場合、各装置がこれらのハードウェアの少なくとも一部を備えてもよい。
【0027】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成の一例を示す図である。
図3に示すように、情報処理装置10は、管理部101、移転処理部102、出力部103、受付部104及び変動反映処理部105を備える。
【0028】
なお、管理部101は、記憶部12及びプロセッサ11によって実行されるプログラムの少なくとも一部によって実現されてもよい。移転処理部102及び変動反映処理部105は、記憶部12、送受信部13及びプロセッサ11によって実行されるプログラムの少なくとも一部によって実現されてもよい。出力部103は、送受信部13又は入出力部14及びプロセッサ11によって実行されるプログラムの少なくとも一部によって実現されてもよい。受付部104は、入出力部14及びプロセッサ11によって実行されるプログラムの少なくとも一部によって実現されてもよい。なお、当該情報処理プログラムは、記憶部12又は記録媒体に格納されてもよい。また、情報処理装置10が不図示の構成を備えてもよいことは勿論である。
【0029】
管理部101は、複数のウォレットの残高を管理する。上記の通り、当該複数のウォレットは、メインウォレットと一以上のサブウォレットとを含んでもよいが、これに限られず、メインウォレットを含まなくともよいことは勿論である。
【0030】
図4は、本実施形態に係る複数のウォレットの残高管理の一例を示す図である。例えば、
図4では、ユーザ#Aが保有する3つのウォレット#0~#2が管理される場合が示される。ウォレット#0~#2のうち、ウォレット#0はメインウォレットであり、ウォレット#1及び#2はサブウォレットである。ここでは、メインウォレット#0の残高は、サブウォレット#1及び#2の残高の合計と等しいが、これに限られない。メインウォレット#0は、サブウォレット#1及び#2に含まれない残高を含むことができ、ウォレット#0の合計は、サブウォレット#1及び#2の残高の合計よりも大きくてもよい。
【0031】
図4に示すように、管理部101は、各ウォレットの残高と関連付けて、各ウォレットの識別子(以下、「ウォレットID」という)、各ウォレットの種別(以下、「ウォレット種別」という)、各ウォレットを保有するユーザの識別子(以下、「ユーザID」という)、及び、各ウォレットが保有する電子的価値の単位の少なくとも一つを管理してもよい。
【0032】
また、管理部101は、複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転に関する処理(以下、「移転処理」という)において、第1ウォレット用のシステム30(第1システム)及び第2ウォレット用のシステム30(第2システム)それぞれから当該第1ウォレット及び第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまで、当該電子的価値を保留状態として管理してもよい。具体的には、管理部101は、当該保留状態の電子的価値を第1ウォレットの残高に関連付けて管理してもよい。又は、管理部101は、当該保留状態の電子的価値を当該複数のウォレットとは異なる中間アカウントの残高に含めて管理してもよい。
【0033】
ここで、「電子的価値を保留状態として管理する」とは、保留状態の電子的価値の少なくとも一部の二重移転や利用を制限することであってもよい。例えば、第1ウォレットから第2ウォレットから電子的価値を移転する場合に、保留状態として管理される当該電子的価値の少なくとも一部が、他のウォレットに二重移転されることが禁止されてもよい。また、第1ウォレット又は第2ウォレットにおいて保留状態として管理される電子的価値の少なくとも一部が、当該第1ウォレット又は第2ウォレットを用いた支払い等に利用されることが禁止されてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態に係る電子的価値の移転処理の一例を示す図である。なお、ユーザ#Aが保有するウォレット#0、#1及び#2の残高は
図4で説明した通りそれぞれ5000円、4000円及び1000円であるものとする。例えば、
図5において、ウォレット#1からウォレット#2に2000円を移転する場合、ウォレット#1用のシステム30
1においてウォレット#1の残高4000円からウォレット#2に移転される電子的価値としての2000円が減算され、ウォレット#1の残高が2000円に更新される。一方、ウォレット#2用のシステム30
2においてウォレット#2の残高1000円にウォレット#1から移転される電子的価値としての2000円が加算され、ウォレット#2の残高が3000円に更新される。
【0035】
例えば、ウォレット#1用のシステム30
1がオンラインシステムであり、ウォレット#2用のシステム30
2がバッチシステムであるとすると、
図5に示されるようなウォレット#1及び#2の残高の更新にはタイムラグが生じることになる。そこで、管理部101は、ウォレット#1用のシステム30
1及びウォレット#2用のシステム30
2それぞれからウォレット#1及びウォレット#2の残高の更新完了が通知されるまで(すなわち、ウォレット#1及び#2間の残高同期が完了するまで)、ウォレット#1からウォレット#2に移転される電子的価値としての2000円を保留状態として管理する。当該保留状態の2000円は、
図4に示されるウォレット#1の更新前の残高4000円に関連付けて管理されてもよいし、ウォレット#0~#2とは異なる中間アカウントの残高として管理されてもよい。
【0036】
移転処理部102は、複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する電子的価値の移転処理を行う。具体的には、移転処理部102は、第1ウォレット用のシステム30及び第2ウォレット用のシステム30それぞれに対して、電子的価値の移転に伴う残高の更新を要求してもよい。例えば、移転処理部102は、当該残高の更新要求を、送受信部13を介して第1ウォレット用のシステム30及び第2ウォレット用のシステム30それぞれ送信してもよい。
【0037】
また、移転処理部102は、第1ウォレット用のシステム30及び第2ウォレット用のシステム30それぞれから当該第1ウォレット及び第2ウォレットの残高の更新完了の通知を取得する。例えば、移転処理部102は、当該残高の更新完了に関する通知を、送受信部13を介して第1ウォレット用のシステム30及び第2ウォレット用のシステム30それぞれから取得してもよい。
【0038】
出力部103は、管理部101によって管理される保留状態の電子的価値に関する情報(以下、「保留残高情報」という)を出力する。具体的には、出力部103は、第1ウォレットの残高に関する情報(以下、「残高情報」という)、第2ウォレットの残高情報、又は、中間アカウントの残高情報のいずれかとして、当該保留残高情報を出力してもよい。また、出力部103は、後述する受付部104によってユーザからの電子的価値の移転指示が受け付けられた場合に、当該保留残高情報を当該ユーザに対して出力してもよい。
【0039】
また、出力部103は、後述する受付部104によってユーザから参照要求が受け付けられた場合に、管理部101によって管理される複数のウォレットの少なくとも一つの残高情報を当該ユーザに出力してもよい。当該参照要求は、特定のウォレット(例えば、メインウォレット)の残高情報の参照を要求するものであってもよいし、管理部101によって管理される複数のウォレットの残高情報の一覧(以下、「一覧情報」という)の参照を要求するものであってもよい。
【0040】
例えば、出力部103は、情報処理装置10の送受信部13を介して保留残高情報、特定のウォレットの残高情報又は一覧情報をユーザ端末20に送信し、ユーザ端末20の入出力部14からユーザに出力(例えば、表示)させてもよいが、これに限られない。出力部103は、情報処理装置10の入出力部14から保留残高情報、特定のウォレットの残高情報又は一覧情報を出力(例えば、表示)してもよい。
【0041】
図6は、本実施形態に係る情報処理装置の出力例を示す図である。なお、
図6(a)~(d)において、ユーザ#Aが保有するウォレット#0、#1及び#2の残高は
図4で説明した通りそれぞれ5000円、4000円及び1000円であるものとする。また、
図6(b)~(d)では、
図5で説明したように、ウォレット#1からウォレット#2に対する2000円の移転に伴うウォレット#1及び#2の残高同期が未完了であるものとし、当該2000円が保留状態として管理されているものとする。
【0042】
図6(a)に示すように、保留状態の電子的価値が存在しない場合、出力部103は、管理部101によって管理されるウォレット#0~#2の残高情報を一覧情報として出力してもよい。一方、保留状態の電子的価値が存在する場合、
図6(b)に示すように、出力部103は、電子的価値の移転元のウォレット#1(第1ウォレット)の残高情報として、保留残高情報(ここでは「保留状態:¥2000マイナス」)を出力してもよい。
【0043】
或いは、保留状態の電子的価値が存在する場合、
図6(c)に示すように、出力部103は、電子的価値の移転先のウォレット#2(第2ウォレット)の残高情報として、保留残高情報(ここでは「保留状態:¥2000プラス」)を出力してもよい。
図6(c)の場合、出力部103は、移転元のウォレット#1(第1ウォレット)の残高情報として、保留状態の2000円を減算した残高2000円を出力してもよい。
【0044】
或いは、保留状態の電子的価値が存在する場合、
図6(d)に示すように、出力部103は、中間アカウントの残高情報として、保留残高情報(ここでは「ウォレット#1 ¥2000プラス、ウォレット#2 ¥2000マイナス」)を出力してもよい。
図6(c)の場合、出力部103は、移転元のウォレット#1(第1ウォレット)の残高情報として、保留状態の2000円を減算した残高2000円を出力してもよい。
【0045】
このように、
図6(b)及び(d)では、ウォレット#1に保留状態の2000円(すなわち、使用不可の2000円)が存在することを示す保留残高情報がユーザ#Aに出力される。また、
図6(c)では、移転元のウォレット#1から保留状態の2000円を減算した残高がウォレット#1の残高情報としてユーザ#Aに出力される。このため、ユーザ#Aが保留状態の2000円が移転元のウォレット#1から他のウォレットに二重移転されたり、誤って使用されたりするのを防止できる。
【0046】
また、
図6(c)及び(d)では、ウォレット#2に保留状態の2000円(すなわち、残高同期完了後に使用可能となるの2000円)が存在することを示す保留残高情報がユーザ#Aに出力される。このため、ユーザ#Aが残高同期完了後に使用可能となる電子的価値が存在することを予め認識できるので、ユーザ#Aの利便性を向上できる。
【0047】
なお、
図6(a)~(d)は例示にすぎず、一覧情報及び保留残高情報の表示態様は、図示するものに限られない。例えば、
図6(b)~(d)では、保留状態の電子的価値が存在する場合、出力部103は、一覧情報に含めて又は一覧情報とともに保留残高情報が出力するものとしたが、保留残高情報のみを出力してもよい。
【0048】
図3の受付部104は、ユーザからの電子的価値の移転指示を受け付ける。具体的には、受付部104は、管理部101によって管理される複数のウォレットのうちの第1ウォレットから第2ウォレットに対する移転指示を受け付けてもよい。また、受付部104は、ユーザからの残高情報の参照要求を受け付ける。例えば、受付部104は、ユーザ端末20に入力されたユーザからの移転指示及び参照要求を情報処理装置10の送受信部13を介して受信することで、当該移転指示及び参照要求を受け付けてもよい。
【0049】
変動反映処理部105は、管理部101によって管理される複数のウォレットがメインウォレット及び一以上のサブウォレットを含む場合、サブウォレット用のシステム30から通知されるサブウォレットの残高の変動をメインウォレットの残高に反映してもよい。例えば、変動反映処理部105は、サブウォレット用のシステム30からのサブウォレットの残高変動に関する通知を、送受信部13を介して取得し、管理部101によって管理されるメインウォレットの残高に反映させてもよい。
【0050】
図7は、本実施形態に係る変動反映処理の一例を示す図である。なお、ユーザ#Aが保有するウォレット#0、#1及び#2の残高は
図4で説明した通りそれぞれ5000円、4000円及び1000円であるものとする。例えば、
図7において、サブウォレット#2から500円が使用される場合、ウォレット#2用のシステム30
2においてウォレット#2の残高が500円に更新される。変動反映処理部105は、ウォレット#2用のシステム30
2から残高変動に関する通知を、送受信部13を介して取得した場合に、管理部101によって管理されるウォレット#0の残高に当該残高変動を反映させてもよい。
【0051】
(動作)
図8を参照し、本実施形態に係る情報処理システム1における動作を説明する。
図8は、本実施形態に係る情報処理システム1の動作の一例を示す図である。
図8では、
図5に示すように、ユーザ#Aの有するウォレット#0~#2のうち、ウォレット#1からウォレット#2に2000円を移転する場合の動作について説明する。なお、電子的価値の移転は、サブウォレット間に限られず、メインウォレットからサブウォレットに対して電子的価値が移転、又は、サブウォレットからメインウォレットに対して電子的価値が移転される場合にも同様に動作可能であることは勿論である。
【0052】
また、
図8では、参照要求は一覧情報の参照を要求するものとするが、これに限られず、特定のウォレットの参照を要求するものであってもよい。また、
図8の参照要求及び一覧情報の出力のタイミングは移転処理の説明の便宜上のものであり、ステップの順番が変更されてもよいし、一部のステップ(例えば、ステップS101、S102、S106、S107、S109及びS110等)は実施されなくともよい。
【0053】
ステップS101において、情報処理装置10は、ユーザ端末20に入力されたユーザからの参照要求を受け付ける。ステップS102において、情報処理装置10は、参照要求に応じて一覧情報(例えば、
図6(a))をユーザに対して出力する。
【0054】
ステップS103において、情報処理装置10は、ユーザ端末20に入力されたユーザから移転指示を受け付ける。ここでは、当該移転指示は、ウォレット#1からウォレット#2への2000円の移転を指示する情報である。情報処理装置10は、当該移転指示に応じて、後述するステップS105及びステップ108の更新完了が通知されるまで、2000円を保留状態として管理する。
【0055】
ステップS104において、情報処理装置10は、ウォレット#1のシステム30
1及びウォレット#2のシステム30
2の双方に対して、ユーザからの移転指示に応じた残高の更新要求を行う。例えば、
図8に示すように、情報処理装置10は、システム30
1に対する更新要求において、ウォレット#1の残高から2000円を減算するように要求する。一方、情報処理装置10は、システム30
2に対する更新要求において、ウォレット#2の残高に2000円を加算するように要求する。
【0056】
なお、ウォレット#1からウォレット#2への移転の際に、
図8の例では、情報処理装置10が、ウォレット#1のシステム30
1及びウォレット#2のシステム30
2の双方に更新要求を行っているが、更新要求の態様はこれに限られない。例えば、情報処理装置10は、ウォレット#1のシステム30
1及びウォレット#2のシステム30
2の一方に更新要求を行ってもよい。この場合、更新要求を行われた方のシステムが、他方のシステムと連携して残高の移転処理を行う。
【0057】
ステップS105において、情報処理装置10は、ウォレット#1のシステム30
1における残高の更新完了の通知をシステム30
1から取得する。ステップS106において、情報処理装置10がユーザからの参照要求を受け付けると、ステップS107において、情報処理装置10は、ウォレット#2のシステム30
2における残高の更新完了の通知をシステム30
2から取得していないので、例えば、
図6(b)、
図6(c)又は
図6(d)に示されるように、保留残高情報を、一覧情報に含めて又は一覧情報とともにユーザに出力してもよい。
【0058】
なお、残高の更新完了の通知は、各ウォレットのシステム30から送信されるのではなく、情報処理装置10が各ウォレットのシステム30の残高を参照することにより行われてもよい。
【0059】
ステップS108において、情報処理装置10は、ウォレット#2のシステム302における残高の更新完了の通知をシステム302から取得する。ステップS109において、情報処理装置10がユーザからの参照要求を受け付けると、ステップS110において、情報処理装置10は、ウォレット#1からウォレット#2への2000円の移転が反映された一覧情報(不図示)をユーザに出力してもよい。
【0060】
以上のように、ステップS103のユーザからの移転指示に応じてステップS105及びS108においてシステム301及び302の双方からそれぞれ、ウォレット#1及び#2の残高の更新完了が通知されるまでは、情報処理装置10は、ウォレット#1からウォレット#2に移転する電子的価値2000円を保留状態として管理する。したがって、ウォレット#2に移転される電子的価値がウォレット#1を用いた支払いに利用されてしまったり、ウォレット#2に移転される電子的価値がウォレット#1から他のウォレットに二重移転されたりするのを防止できる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る情報処理システム1では、ユーザからの移転指示に応じて第1ウォレット用の第1システム30及び第2ウォレット用の第2システム30の双方からそれぞれ、第1ウォレット及び第2ウォレットの残高の更新完了が通知されるまでは、情報処理装置10は、第1ウォレットから第2ウォレットに移転する電子的価値を保留状態として管理するので、ウォレット統合サービスの信頼性を向上できる。
【0062】
(その他の実施形態)
上記実施形態においては、第1ウォレット用のシステム30(第1システム)及び第2ウォレット用のシステム30(第2システム)は、例えば、オンラインシステム及びバッチシステム等、異なるタイプのシステム30であるものとしたが、これに限られない。第1ウォレット用のシステム30(第1システム)及び第2ウォレット用のシステム30(第2システム)は、例えば、同一システム30のデバイス側及びクラウド側であってもよいし、同一システム30のエッジサーバ及びクラウドサーバであってもよいし、同一のシステム30が提供する異なるアプリケーション等であってもよい。このように、第1システム及び第2システムは、それぞれ、第1ウォレット及び第2ウォレットの残高を更新すればよく、異なるシステム30であってもよいし、又は、同一システム30の異なる装置又は機能であってもよい。
【0063】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…情報処理システム、10…情報処理装置、20…ユーザ端末、30…システム、40…ネットワーク、11…プロセッサ、12…記憶部、13…送受信部、14…入出力部、101…管理部、102…移転処理部、103…出力部、104…受付部、105…変動反映処理部