(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172173
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】玉揚装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/04 20060101AFI20241205BHJP
D01H 9/04 20060101ALI20241205BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65H67/04 B
D01H9/04 Z
D01H15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089724
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】上田 健一
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112FA07
3F112GD03
3F112GE01
4L056AA01
4L056AA45
4L056BF07
4L056BF51
4L056BF52
4L056BG04
4L056BG16
4L056BG45
4L056BG47
4L056CB04
(57)【要約】
【課題】ブロワ装置の搭載に起因する玉揚装置の問題の発生を抑制する。
【解決手段】玉揚装置3は、筐体50と、車輪82と、サクションマウス54と、種糸サクション74と、ブロワ装置58とを備える。サクションマウス54及び種糸サクション74は、負圧により糸Yを吸引可能に構成されている。ブロワ装置58は、負圧を生成するためのブロワモータ92を有し、サクションマウス54及び種糸サクション74と接続されている。ブロワ装置58は、車輪82よりも下側且つ筐体50の左右方向における両端の内側に配置され、且つ、前後方向から見たときに、左右方向において仮想中心線VLcの両側にまたがるように配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取る巻取装置に対して玉揚げを実行可能に構成され、所定方向に延びたレールに吊り下げられ且つ前記レールに沿って走行可能に構成された玉揚装置であって、
筐体と、
前記筐体の上側に配置され、前記筐体を前記レールに沿って走行させるように構成された車輪と、
負圧により前記糸を吸引可能に構成された吸引部と、
前記負圧を生成するためのブロワモータを有し、前記吸引部と接続されたブロワ装置と、を備え、
前記ブロワ装置は、
前記車輪よりも下側且つ前記筐体の前記所定方向における両端の内側に配置され、且つ、
前記所定方向及び上下方向の両方と直交する直交方向から見たときに、前記所定方向において、前記筐体の前記両端の中心の位置を通って上下方向に延びる仮想中心線の両側にまたがるように配置されていることを特徴とする玉揚装置。
【請求項2】
前記車輪が前記レールに載るように配置されているときに、
前記ブロワ装置は、前記レールよりも下側に配置され、
上下方向における前記レールと前記ブロワモータとの間隔が、前記ブロワモータの上下方向における全長よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の玉揚装置。
【請求項3】
前記ブロワ装置は、前記ブロワモータの動作によって生じる負圧により屑糸を回収して前記屑糸を蓄積することが可能に構成されたダストボックスを有し、
前記ダストボックスは、作業者が前記ダストボックスの内部にアクセスするためのアクセス口を有し、
前記アクセス口は、前記車輪が前記レールに載るように配置されているときに、前記レールの下側に設けられた作業通路からアクセス可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の玉揚装置。
【請求項4】
前記ブロワ装置に接続され、前記ブロワ装置の動作によって気体を前記ブロワモータ側へ流すように構成された配管部材を備え、
前記配管部材の少なくとも一部が透明であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の玉揚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を巻き取る巻取装置に対して玉揚げを行う玉揚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、糸を巻き取る巻取装置に対して玉揚げを行う玉揚装置が開示されている。玉揚装置は、所定方向に延びたレールに吊り下げられた筐体と、筐体をレールに沿って走行させる車輪と、筐体に取り付けられ、糸を一時的に吸引保持するサクションマウス(吸引部材)とを有する。吸引部材は、吸引口を有し、負圧源によって吸引口に負圧を発生させることにより糸を吸引可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負圧源として、一般的なブロワモータを有するブロワ装置が玉揚装置に搭載されうる。この場合、筐体の所定方向における外側にブロワを配置することも考えられる。しかし、このような構成では、一般的に重いブロワモータが、玉揚装置の所定方向における端部に配置されるため、玉揚装置の所定方向におけるバランスが悪化しうる。また、ブロワを支持するためにレールを長大化させる等の必要が生じ、コストの増大を招きうる。
【0005】
本発明の目的は、ブロワ装置の搭載に起因する玉揚装置の問題の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の玉揚装置は、糸を巻き取る巻取装置に対して玉揚げを実行可能に構成され、所定方向に延びたレールに吊り下げられ且つ前記レールに沿って走行可能に構成された玉揚装置であって、筐体と、前記筐体の上側に配置され、前記筐体を前記レールに沿って走行させるように構成された車輪と、負圧により前記糸を吸引可能に構成された吸引部と、前記負圧を生成するためのブロワモータを有し、前記吸引部と接続されたブロワ装置と、を備え、前記ブロワ装置は、前記車輪よりも下側且つ前記筐体の前記所定方向における両端の内側に配置され、且つ、前記所定方向及び上下方向の両方と直交する直交方向から見たときに、前記所定方向において、前記筐体の前記両端の中心の位置を通って上下方向に延びる仮想中心線の両側にまたがるように配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、レールに吊り下げられる玉揚装置において、ブロワ装置が、車輪よりも下側且つ筐体の所定方向における中央部に配置されている。これにより、ブロワ装置が車輪よりも上側又は所定方向における端部に配置されている構成と比べて、玉揚装置の重心を上下方向及び所定方向において中心に近づけることができる。したがって、走行中の玉揚装置のバランスを安定させることができる。また、レールの長大化等によるコスト増大を抑制できる。以上より、ブロワ装置の搭載に起因する玉揚装置の問題の発生を抑制できる。また、ブロワ装置が車輪よりも上側又は所定方向における端部に配置される構成と比べて、ブロワ装置に接続される配管及び配線の引き回しを容易化、シンプル化できる。
【0008】
第2の発明の玉揚装置は、前記第1の発明において、前記車輪が前記レールに載るように配置されているときに、前記ブロワ装置は、前記レールよりも下側に配置され、上下方向における前記レールと前記ブロワモータとの間隔が、前記ブロワモータの上下方向における全長よりも短いことを特徴とする。
【0009】
ブロワモータがレールから離れた位置に配置されていると、ブロワモータの動作時の振動により、車輪のレールとの接触部分を支点として筐体が大きく振動してしまうおそれがある。本発明では、ブロワモータがレールのすぐ近くに配置されているので、筐体の振動を低減できる。また、ブロワ装置がレールよりも下側に配置されているので、レールに吊り下げられた玉揚装置において、メンテナンス時に作業者が容易にブロワ装置にアクセスできる。
【0010】
第3の発明の玉揚装置は、前記第1又は第2の発明において、前記ブロワ装置は、前記ブロワモータの動作によって生じる負圧により屑糸を回収して前記屑糸を蓄積することが可能に構成されたダストボックスを有し、前記ダストボックスは、作業者が前記ダストボックスの内部にアクセスするためのアクセス口を有し、前記アクセス口は、前記車輪が前記レールに載るように配置されているときに、前記レールの下側に設けられた作業通路からアクセス可能な位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
一般的に、ダストボックスに回収された屑糸は、公知の屑糸除去装置によってダストボックスから自動的に排出されることが可能である。しかし、トラブルが発生したとき又はメンテナンスのとき等に、作業者がダストボックスの内部を清掃する必要が生じうる。このような場合でも、本発明によれば、作業者が作業通路からアクセス口に容易にアクセスできる。したがって、ダストボックスの内部を容易に清掃できる。
【0012】
第4の発明の玉揚装置は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記ブロワ装置に接続され、前記ブロワ装置の動作によって気体を前記ブロワモータ側へ流すように構成された配管部材を備え、前記配管部材の少なくとも一部が透明であることを特徴とする。
【0013】
透明であるとは、配管部材の少なくとも一部が透けて見え、配管部材の内部の状態を作業者が視認可能であることを意味する。本発明では、ブロワ装置が動作しているときでも、配管部材の少なくとも一部の内部を作業者が容易に目視確認できる。したがって、配管部材の内部が詰まっていないか作業者が容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る自動ワインダの正面図である。
【
図3】玉揚装置を前後方向において糸巻取ユニット側から見た図である。
【
図4】
図3に示す玉揚装置の上側部分の拡大図である。
【
図8】ブロワ装置から脱着パイプが外された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について説明する。説明の便宜上、
図1に示すように、後述する複数の糸巻取ユニット2(本発明の巻取装置)が配列された方向を左右方向(本発明の所定方向)とする。重力が作用する方向を上下方向とする。左右方向及び上下方向の両方と直交する方向を前後方向(本発明の直交方向)とする。
【0016】
[自動ワインダ]
本実施形態に係る自動ワインダ1の概略構成について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、自動ワインダ1の正面図である。
図1に示すように、自動ワインダ1は、複数の糸巻取ユニット2と、玉揚装置3と、ボビン供給装置4と、屑糸除去装置5と、機台制御装置6とを備える。
【0017】
複数の糸巻取ユニット2の各々は、給糸ボビンBから引き出された糸Yを巻取管Q(
図2参照)に巻き取ってパッケージPを形成するように構成されている。複数の糸巻取ユニット2は、左右方向に配列されている。
【0018】
玉揚装置3は、複数の糸巻取ユニット2の上方に配置されている。玉揚装置3は、左右方向に延びたレールRに沿って移動可能に構成されている。玉揚装置3は、複数の糸巻取ユニット2の各々に対して様々な処理を行うように構成されている。玉揚装置3のより詳細については後述する。
【0019】
ボビン供給装置4は、複数の給糸ボビンBを複数の糸巻取ユニット2に供給可能に構成されている。ボビン供給装置4は、給糸ボビンBが支持された搬送トレイTを各糸巻取ユニット2の下部に供給する。
【0020】
屑糸除去装置5は、玉揚装置3に回収されて蓄積された屑糸などを玉揚装置3から除去するための装置である。屑糸除去装置5は、例えば玉揚装置3の後端部と接続されることが可能に構成されている。
【0021】
機台制御装置6は、例えば複数の糸巻取ユニット2の左側に配置されている。機台制御装置6は、糸巻取ユニット2のユニット制御部2a及び玉揚装置3の玉揚制御部3aと電気的に接続され、これらの制御部との通信を行う。
【0022】
[糸巻取ユニット]
次に、糸巻取ユニット2の構成の例について
図2を参照しつつ説明する。
図2は、糸巻取ユニット2の概略的な側面図である。
図2において、紙面右側が前後方向における前側に相当し、紙面左側が前後方向における後側に相当する。
【0023】
図2に示すように、糸巻取ユニット2は、給糸部10と、糸処理部20と、糸貯留装置30と、巻取部40とを備える。給糸部10は、給糸ボビンBに巻かれた糸Yを供給可能に構成されている。糸処理部20は、給糸部10から供給された糸Yに様々な処理を実行可能に構成されている。糸貯留装置30は、糸処理部20による処理が施された糸Yを一時的に貯留可能に構成されている。巻取部40は、糸貯留装置30から糸Yを引き出して巻取管Qに巻き取り、パッケージPを形成することが可能に構成されている。給糸部10、糸処理部20、糸貯留装置30及び巻取部40は、この順に下から上へ並んで配置されている。
【0024】
給糸部10は、給糸ボビンBからの糸Yの解舒を補助する糸解舒補助装置11を有する。より具体的には、糸解舒補助装置11は、給糸ボビンBから糸Yが解舒される際の膨らみを、規制筒12によって規制する。
【0025】
図2に示すように、糸処理部20は、上糸捕捉部21と、糸継装置22と、下糸捕捉部23と、テンション付与装置24と、糸監視装置25と、誘導機構26とを有する。以下、糸Yが走行する糸走行方向における上流側を単に上流側と呼ぶ。糸走行方向における下流側を単に下流側と呼ぶ。上糸捕捉部21、糸継装置22、下糸捕捉部23、テンション付与装置24及び糸監視装置25は、この順に上流側から下流側に並んで配置されている。給糸部10と巻取部40との間で糸Yが分断されているとき、分断されている糸Yのうち給糸部10側(下側、すなわち上流側)の部分を下糸とも呼ぶ。また、分断されている糸Yのうち巻取部40側(上側、すなわち下流側)の部分を上糸とも呼ぶ。
【0026】
上糸捕捉部21は、上糸(ここでは、糸継装置22よりも上側且つ糸貯留装置30よりも下側の糸Y)を吸引捕捉して糸継装置22へ案内するように構成されている。糸継装置22は、分断された糸Yの糸継ぎを行うように構成されている。より具体的には、糸継装置22は、上糸捕捉部21及び下糸捕捉部23によって糸継装置22に案内された糸端同士をつなぐように構成されている。下糸捕捉部23は、下糸(ここでは、糸継装置22よりも下側の糸Y)を吸引捕捉して糸継装置22へ案内するように構成されている。より詳細には、下糸捕捉部23は、不図示の駆動部によって、先端部の開口を規制筒12の下流側(上側)の位置(
図2の実線参照)と、糸継装置22の下流側(上側)の位置(
図2の二点鎖線参照)との間で旋回移動可能に構成されている。先端部には前記開口に蓋をするクランプ蓋が設けられている。このクランプ蓋が閉じることにより、吸引を遮断すると同時に、吸引した糸Yをクランプすることができる。テンション付与装置24は、走行する糸Yに所定のテンションを付与可能に構成されている。糸監視装置25は、糸Yに含まれる欠陥(糸欠陥)を検出して糸Yを切断することが可能に構成されている。誘導機構26は、糸Yが給糸部10と巻取部40との間で分断されているときに、巻取部40側の糸(上糸)を上糸捕捉部21へ導くことが可能に構成されている。
【0027】
糸貯留装置30は、糸貯留ローラ31に糸Yを巻き付けることにより、給糸部10から糸Yを引き出して一時的に貯留可能に構成されている。
【0028】
図2に示すように、巻取部40は、クレードル41と、綾振ドラム42と、トラバースガイド43とを有する。巻取部40は、クレードル41に装着された巻取管Qを綾振ドラム42によって従動回転させながら、綾振ドラム42によって糸Yを綾振りする。これにより、巻取部40は、回転している巻取管Qに糸Yを綾振りしながら巻き取って、パッケージPを形成する。
【0029】
図2に示すように、各糸巻取ユニット2は、ユニット制御部2aを備える。ユニット制御部2aは、例えばCPU、ROM、RAM等を有する。ユニット制御部2aは、給糸部10、糸処理部20、糸貯留装置30及び巻取部40の各部の動作を制御する。各ユニット制御部2aは、機台制御装置6と通信可能に構成されている。
【0030】
上述した糸巻取ユニット2の各構成要素のより詳細については、例えば特開2018-65659号公報を参照されたい。
【0031】
[玉揚装置]
次に、玉揚装置3の構成の概要について、主に
図3を参照しつつ説明する。
図3は、玉揚装置3を前後方向において糸巻取ユニット2側から(すなわち、後側から)見た図である。
図3における左右方向は、紙面左右方向とは逆であることに留意されたい。
【0032】
玉揚装置3は、糸巻取ユニット2と連携して動作することにより、玉揚処理(玉揚げ)、仕掛け替え処理及び上糸切れ対応処理などの処理を実行可能に構成されている。玉揚処理とは、いずれかの糸巻取ユニット2において形成され終わったパッケージPを新しい空の巻取管Qと交換する処理である。仕掛け替え処理とは、巻取部40によって巻き取られる糸Yの種類を変更する処理である。上糸切れ対応処理とは、糸走行方向においてパッケージPと糸貯留装置30との間で糸Yが分断された場合に、パッケージPに巻かれた糸Y(上糸)を引き出して誘導機構26へ案内する処理である。
【0033】
玉揚装置3は、例えば筐体50と、多機能アーム51と、チャッカー52と、クレードルオープナー53と、サクションマウス54(本発明の吸引部)と、種糸供給部55と、縦ガイドレバー56と、糸飛ばしレバー57と、ブロワ装置58と、走行ユニット59とを有する。
【0034】
筐体50は、例えば上下方向に長く延びた箱状の部材である。筐体50は、例えば左右方向から見たときに概ね長方形状である。これにより、筐体50の左右方向における両端の位置が規定されている。筐体50は、例えばレールRの下側に配置されている。筐体50の後面は開口している。筐体50には、例えば多機能アーム51、チャッカー52、クレードルオープナー53、サクションマウス54、種糸供給部55、縦ガイドレバー56、糸飛ばしレバー57及びブロワ装置58等が収容され又は取り付けられている。
【0035】
多機能アーム51は、玉揚処理、仕掛け替え処理及び上糸切れ対応処理のいずれにおいても用いられる。多機能アーム51は、アーム部61と、ガイド部62と、クランプカッタ部63とを有する。多機能アーム51は、アーム部61の先端部に取り付けられたガイド部62及びクランプカッタ部63を動作させることによって、様々な状況において糸Yの案内及び/又は切断保持を行うことが可能に構成されている。
【0036】
アーム部61は、例えば不図示の複数のモータによって、様々な方向に揺動駆動されることが可能に構成されている。ガイド部62は、糸Yを案内可能に構成されている。ガイド部62は、例えば不図示のモータによって揺動駆動されることが可能に構成されている。クランプカッタ部63は、糸Yを切断する不図示のカッタと、糸Yを保持する不図示のクランプとを有する。クランプカッタ部63は、例えば不図示のエアシリンダによって、糸Yの切断動作と、切断された糸Yの糸端の保持動作とを略同時に行うように構成されている。
【0037】
多機能アーム51は、チャッカー52のチャック部52bが筐体50内に収容されているとき、例えばチャック部52bよりも下側に配置されていると好ましい。
【0038】
チャッカー52は、玉揚処理及び仕掛け替え処理の際に用いられる。チャッカー52は、筐体50内において左右方向に延びる軸52aに回動自在に取り付けられている。チャッカー52は、例えば不図示のモータによって、軸52aを軸中心に旋回駆動される。チャッカー52の先端部には、巻取管Qを把持可能に構成されたチャック部52bが設けられている。チャッカー52は、例えば自動ワインダ1の上端部に位置する不図示のストッカーから空の巻取管Qを取り出してチャック部52bで把持し、下方に旋回する。これにより、クレードル41の近傍に空の巻取管Qが配置される。
【0039】
クレードルオープナー53は、玉揚処理及び仕掛け替え処理の際に用いられる。クレードルオープナー53は、例えば筐体50の右端部近傍に設けられている。クレードルオープナー53は、エアシリンダ又はモータ等の適宜の駆動源によって駆動される。クレードルオープナー53は、揺動及び回動などの様々な動作を行い、クレードル41に設けられた不図示のクレードルレバーを操作する。クレードルレバーが操作されたとき、パッケージPがクレードル41から取り外されることが可能になる。また、空の巻取管Qがクレードル41に装着されることが可能になる。
【0040】
サクションマウス54は、例えば仕掛け替え処理及び上糸切れ対応処理の際に、パッケージPに巻かれた糸Y(上糸)の糸端を吸引保持可能に構成されている。サクションマウス54は、上下方向においてパッケージPと概ね同じ位置に設けられている。サクションマウス54の後端には、左右方向に延びる吸引口54aが設けられている。サクションマウス54は、待機位置と、待機位置よりも糸巻取ユニット2に近接した近接位置との間で移動可能に構成されている。サクションマウス54は、ブロワ装置58と接続されている。サクションマウス54は、ブロワ装置58によって吸引口54aに発生する負圧によって糸Yを吸引保持できる。また、サクションマウス54の右端部のすぐ下方には、糸Yを切断可能に構成されたマウスカッタ54bが設けられている。
【0041】
種糸供給部55は、仕掛け替え処理の際に、新しい種類の糸Yを供給可能に構成されている。以下、種糸供給部55から供給される新しい種類の糸Yを、説明の便宜上、種糸Ysと呼ぶ。種糸供給部55は、種糸ボビン支持部71と、種糸吹き飛ばしノズル72と、種糸案内パイプ73と、種糸サクション74(本発明の吸引部)と、種糸クランプカッタ75とを有する。
【0042】
種糸ボビン支持部71は、例えば筐体50の右端部近傍に設けられている。種糸ボビン支持部71は、種糸Ysが巻かれた種糸ボビンBsを例えば略水平に支持するように構成されている。種糸吹き飛ばしノズル72は、種糸Ysの糸端を例えば上側に吹き飛ばすように構成されている。種糸案内パイプ73は、種糸吹き飛ばしノズル72によって吹き飛ばされた種糸Ysの糸端を種糸サクション74に向けて案内するように構成されている。種糸サクション74は、種糸Ysの糸端を吸引捕捉可能に構成されている。種糸サクション74は、例えば後方へ開口した吸引口(不図示)を有する。種糸サクション74は、ブロワ装置58と接続されている。種糸サクション74は、種糸案内パイプ73の出口から飛び出た種糸Ysの糸端を負圧によって吸引捕捉する。種糸サクション74によって吸引捕捉された種糸Ysは、その後、例えば種糸クランプカッタ75によって切断保持される。
【0043】
縦ガイドレバー56は、仕掛け替え処理及び上糸切れ対応処理の際に用いられる。縦ガイドレバー56は、主に、糸Yを下方へ引っ張るために用いられる。縦ガイドレバー56は、例えば、
図3に示すように、サクションマウス54及び種糸供給部55の近傍に配置されている。縦ガイドレバー56は、例えば、筐体50のすぐ後側に配置されている。縦ガイドレバー56は、少なくとも前後方向に延びた回転軸56aを中心軸として回転可能に構成されている。
【0044】
糸飛ばしレバー57は、仕掛け替え処理及び上糸切れ対応処理の際に用いられる。糸飛ばしレバー57は、例えば左右方向に延びた揺動軸57aを軸中心として揺動可能に構成されている。揺動軸57aは、例えば玉揚装置3の最下端部に設けられている。糸飛ばしレバー57の先端部には、糸Yを拾うための糸拾い部57bが設けられている。糸飛ばしレバー57は、縦ガイドレバー56によって下方へ引っ張られた糸Yを糸拾い部57bで拾い、誘導機構26(
図2参照)に導く。
【0045】
ブロワ装置58は、例えば上述したサクションマウス54及び種糸サクション74に負圧を発生させることが可能に構成されている。ブロワ装置58の構成の詳細については後述する。
【0046】
走行ユニット59(
図3~
図6参照)は、例えば左右方向に延びる2本のレールRに沿って筐体50を走行させるように構成されている。各レールRは、例えば左右方向と直交する断面が略C字状の部材である(
図5参照)。各レールRは、後述の複数の車輪82を載せるための載置面R1を有する。2本のレールRの下方には、作業者が通行可能な作業通路7(
図1及び
図2参照)が設けられている。本実施形態では、作業通路7は、例えば作業者が歩行可能な床面7aと、床面7aの真上の作業空間Swとを含む(
図2参照)。
【0047】
走行ユニット59は、例えばユニットボックス81と、複数の(本実施形態では4つの)車輪82とを有する。ユニットボックス81は、例えば略直方体の箱状の部材である。ユニットボックス81の内部には、例えばモータを含む走行駆動機構(不図示)が収容されている。ユニットボックス81は、例えば筐体50の上端に固定されている。複数の車輪82は、走行駆動機構によって回転駆動される。複数の車輪82は、例えばユニットボックス81の前側及び後側に配置されている(
図5及び
図6参照)。複数の車輪82の各々は、2本のレールRのいずれかの載置面R1に載るように配置されている。以上の構成により、玉揚装置3は、2本のレールRに吊り下げられている。なお、レールRの数は2本に限られない。また、車輪82の数は4つに限られない。
【0048】
図2に示すように、玉揚装置3は、玉揚制御部3aを有する。玉揚制御部3aは、例えばCPUと、ROMと、RAMとを有する。玉揚制御部3aは、機台制御装置6と通信可能に構成されている。玉揚制御部3aは、機台制御装置6からの指令に従って、玉揚装置3の各部を制御する。
【0049】
(自動ワインダによる各処理の概要)
自動ワインダ1では、糸巻取ユニット2と玉揚装置3とが連携して動作することによって、玉揚処理、仕掛け替え処理及び上糸切れ対応処理が行われる。玉揚制御部3aとユニット制御部2aは、例えば機台制御装置6を介して信号のやりとりを行う。以下、これらの処理の各々の概要について説明する。
【0050】
玉揚処理の概要について説明する。例えば、ある糸巻取ユニット2においてパッケージPの形成が完了したとき、ユニット制御部2aは、綾振ドラム42及び糸貯留ローラ31の回転を停止させる。このとき、糸Yは、パッケージPと糸貯留装置30との間でまだつながっている。次に、ユニット制御部2aは、機台制御装置6を介して、玉揚処理を要求する信号を玉揚制御部3aへ送信する。玉揚制御部3aは、玉揚装置3を上記糸巻取ユニット2の正面に移動させる。玉揚制御部3aは、糸Yを切断保持可能な位置までクランプカッタ部63を移動させ、クランプカッタ部63に糸Yを切断及び保持させる。その後、ユニット制御部2aが綾振ドラム42を回転させ、糸Yのうち巻取部40側の糸YをパッケージPに巻き取らせる。次に、玉揚制御部3aは、クレードルオープナー53にクレードル41の操作を行わせる。当該操作により、パッケージPはクレードル41から解放される。次に、玉揚制御部3aは、新しい巻取管Qとクレードル41との間に糸Yを挟むことが可能な位置まで、クランプカッタ部63を移動させる。次に、玉揚制御部3aは、チャッカー52を制御して、空の巻取管Qをクレードル41に装着させる。玉揚制御部3aは、クレードルオープナー53にクレードル41の操作を行わせ、クランプカッタ部63に保持されている糸Yを巻取管Qに固定させる。さらに、玉揚制御部3aは、糸Yを巻取管Qの端部に巻き付けるバンチ巻きを実行する。以上の玉揚処理により、糸Yの巻取りを再開することが可能となる。
【0051】
仕掛け替え処理の概要について説明する。初期状態として、クレードル41からパッケージPが取り外されている。種糸供給部55において、種糸ボビンBsから引き出された種糸Ysが、種糸案内パイプ73を通って種糸クランプカッタ75まで案内され、種糸クランプカッタ75に保持されている。玉揚制御部3aは、例えば多機能アーム51を制御して、種糸Ysをクランプカッタ部63に保持させる。玉揚制御部3aは、例えば玉揚処理に類似した処理として、種糸Ysを空の巻取管Qに固定させ、バンチ巻きの形成を実行する。さらに、ユニット制御部2aが綾振ドラム42及び糸貯留ローラ31を少しだけ巻き取らせる。これにより、巻取管Qにスターターパッケージ(不図示)が形成される。その後、玉揚制御部3aは、例えば多機能アーム51を制御して、種糸ボビンBsとスターターパッケージとの間の種糸Ysを切断させる。さらに、玉揚制御部3aは、スターターパッケージに含まれる種糸Ysをサクションマウス54によって引き出させる。その後、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56及び糸飛ばしレバー57を制御して、種糸Ysを誘導機構26へ導かせる。これにより、給糸部10から供給された糸Yと、スターターパッケージに巻かれた種糸Ysとを糸継装置22によって糸継ぎすることが可能となる。
【0052】
上糸切れ対応処理の概要について説明する。上糸切れとは、糸走行方向において糸貯留装置30とパッケージPとの間で、糸Yが何らかのトラブルに起因して分断される現象である。上糸切れ対応処理は、大きく残糸除去処理及び上糸案内処理の2つに分けられる。残糸除去処理は、糸貯留装置30に巻かれた残糸を除去する処理である。例えば作業者が残糸除去処理を行っても良い。上糸案内処理は、上述した仕掛け替え処理と類似した処理である。すなわち、玉揚制御部3aは、形成中のパッケージPに含まれる糸Yをサクションマウス54によって引き出させる。その後、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56及び糸飛ばしレバー57を制御して、糸Yを誘導機構26へ導かせる。これにより、給糸部10側の糸Yと巻取部40側の糸Yとを糸継装置22によって糸継ぎすることが可能となる。
【0053】
(ブロワ装置及びその近傍の詳細構成)
次に、ブロワ装置58及びその近傍のより詳細な構成について、
図4~
図8を参照しつつ説明する。
図4は、
図3に示す玉揚装置3の上側部分の拡大図である。
図5は、玉揚装置3の側面図である。
図6は、玉揚装置3の平面図である。
図7は、ブロワ装置58の正面図である。
図8は、ブロワ装置58から後述の脱着パイプ97(本発明の配管部材)が取り外された状態を示す説明図である。ブロワ装置58の搭載に起因する種々の問題の発生を抑制するため、ブロワ装置58及びその近傍は以下のように構成されている。
【0054】
ブロワ装置58は、負圧による吸引力を例えばサクションマウス54及び種糸サクション74に発生させる装置である。
図4~
図8に示すように、ブロワ装置58は、例えばベース91と、ブロワモータ92と、羽根車部93と、ダストボックス94とを有する。羽根車部93と、ダストボックス94とが、ベース91に取り付けられている。
【0055】
ベース91は、例えば略直方体の箱状の部材である。ベース91の左右方向における両側は開口している。例えばベース91の左端に羽根車部93の収容部93a(後述)が接続されている。例えばベース91の右端にダストボックス94が接続されている。例えばベース91の内部の右端部には、フィルタ91a(
図4参照)が設けられている。フィルタ91aは、後述する屑糸Yw(
図7参照)がブロワモータ92側に吸い込まれることを防止するフィルタである。
【0056】
ブロワモータ92は、羽根車部93に設けられた羽根車93b(後述)を回転駆動するモータである。ブロワモータ92は、例えば、左右方向において羽根車部93を隔ててベース91の反対側に配置されている。ブロワモータ92は、例えば羽根車部93の収容部93a(後述)の左側面に取り付けられている。ブロワモータ92は、例えば各種部材を収容するハウジング92aを有する。
【0057】
羽根車部93は、ベース91側の空気(気体)を吸引して外部空間に排出するように構成されている。羽根車部93は、例えば左右方向においてベース91とブロワモータ92との間に配置されている。羽根車部93は、例えば収容部93aと、羽根車93bとを有する。収容部93aは、例えば円筒形の箱状の部材である。収容部93aの内部に羽根車93bが回転可能に収容されている。例えば収容部93aの外周面には、収容部93aの周方向に並べて配置された複数の排気孔93cが設けられている。各排気孔93cは、収容部93aの内部空間と収容部93aの外部空間とを連通させる。羽根車93bは、回転することによってベース91側の気体を収容部93aの外部空間へ排出するように構成された部材である。より具体的には、例えば公知の渦巻き羽根車が、羽根車93bとして採用されている。渦巻き羽根車は、例えば公知の渦巻きポンプに設けられる羽根車である。羽根車93bは、ブロワモータ92によって回転駆動される。羽根車93bは、回転することにより収容部93aの内部空間中の気体を吸入し、複数の排気孔93cを介して羽根車93bの径方向における外側(すなわち、収容部93aの外部空間)へ気体を排出する。これにより、ベース91の内部空間と接続されているダストボックス94の内部空間等に負圧が発生する。
【0058】
ダストボックス94は、屑糸Yw及び不図示の風綿(自動ワインダ1が設置された空間に舞う繊維屑)を回収及び蓄積可能に構成された箱状の部材である。ダストボックス94は、例えばベース91の右側面に取り付けられている。例えばダストボックスの前端部には、屑糸Ywが含まれた空気を吸い込むための吸引口94a(本発明のアクセス口。
図7及び
図8参照)が形成されている。
【0059】
図5に示すように、ダストボックス94は、吸引口94a及びパイプ95を介してサクションマウス54と接続されている。空気の流動方向において、例えばパイプ95と吸引口94aとの間には、例えば箱状の中継部98(
図5参照)が設けられている。中継部98には、例えばパイプ95内の空気がダストボックス94側へ流れることを許可可能及び禁止可能に構成されたシャッタ(不図示)が設けられていても良い。また、ダストボックス94は、吸引口94a及びパイプ96(本発明の配管部材)を介して種糸サクション74と接続されている。空気の流動方向において、例えばパイプ96と吸引口94aとの間に、上記中継部98が設けられている。中継部98には、例えばパイプ96内の空気がダストボックス94側へ流れることを許可可能及び禁止可能に構成されたシャッタ(不図示)が設けられていても良い。
【0060】
例えばパイプ96の少なくとも一部は、透明であると好ましい。パイプ96が透明であるとは、パイプ96の当該少なくとも一部の内部が透けて見え、当該内部の状態を作業者が視認可能であることを意味する。つまり、当該内部の状態を作業者が視認可能であれば、パイプ96の当該少なくとも一部に例えば着色が施されていても良い。以下、別の部材においても同様である。本実施形態では、例えばパイプ96の長手方向における一部が、アクリルなどの透明な材料で形成されている。このような構成により、ブロワ装置58の動作中に、パイプ96の内部の少なくとも一部を作業者が容易に目視確認できる(
図7参照)。また、例えばパイプ95の少なくとも一部が透明であっても良い。
【0061】
空気の流動方向において、例えば吸引口94aと中継部98との間には、脱着パイプ97(
図5~
図8参照)が設けられている。脱着パイプ97は、少なくともダストボックス94に対して脱着可能に構成されている。脱着パイプ97は、ダストボックス94及び中継部98の両方に対して脱着可能であっても良い(
図8参照)。脱着パイプ97は、例えばダストボックス94の前側に配置されている。これにより、作業者が脱着パイプ97に前側(作業通路7側)からアクセスできる。脱着パイプ97の少なくとも一部が透明であると好ましい。
【0062】
例えばダストボックス94の後端部には、屑糸除去装置5(
図1参照)とダストボックス94とを接続するための接続管94bが形成されている(
図4参照)。接続管94bは、例えば不図示のシャッタを有するシャッタ機構94cによって、開閉可能に構成されている。ブロワ装置58が稼働しているとき、シャッタは閉じている。シャッタが開いているとき、ダストボックス94内の風綿は、屑糸除去装置5によって除去されることが可能である。
【0063】
上記の構成を有するブロワ装置58において、ブロワモータ92が羽根車93bを回転駆動することにより、例えばベース91内の気体及びダストボックス94内の気体が羽根車部93に吸入され、外部空間に排出される。これにより、ダストボックス94及びパイプ95等を介してサクションマウス54の吸引口54aの近傍に負圧を発生させ、吸引口54aの近傍に位置している糸Yを吸引できる。また、ダストボックス94及びパイプ96等を介して種糸サクション74の吸引口の近傍に負圧を発生させ、吸引口の近傍に位置している糸Yを吸引できる。
【0064】
サクションマウス54又は種糸サクション74によって吸引除去された糸Yは、屑糸Ywとして吸引口94aを通ってダストボックス94に回収される。また、風綿もダストボックス94に回収される。ダストボックス94に吸い込まれた空気は、フィルタ91aを通過して羽根車部93側へ流れ、複数の排気孔93cを通って外部空間へ排出される(例えば
図6の破線矢印を参照)。一方、屑糸Yw及び風綿(以下、屑糸Yw等)の羽根車部93側への移動は、フィルタ91aによって妨げられる。このため、屑糸Yw等はダストボックス94の内部に蓄積される。任意のタイミングでダストボックス94が屑糸除去装置5に接続されることにより、ダストボックス94内の屑糸Yw等を除去できる。或いは、例えばトラブルが発生したとき又はメンテナンスのとき等に、ダストボックス94内の屑糸Yw等を除去する必要が生じうる。この場合には、脱着パイプ97をダストボックス94から取り外すことにより(
図8参照)、吸引口94aを外部に露出させることができる。これにより、作業者が吸引口94aを介してダストボックス94の内部にアクセスし、ダストボックス94内の屑糸Yw等を除去できる。
【0065】
(ブロワ装置の配置の詳細)
ブロワ装置58の配置の詳細について説明する。
図4に示すように、ブロワ装置58は、左右方向において、玉揚装置3のおおよそ中央部に配置されている。より具体的には、玉揚装置3がレールRから吊り下げられているとき(すなわち、車輪82がレールRに載るように玉揚装置3が配置されているとき)を想定する。このとき、ブロワ装置58は、例えばレールR及び複数の車輪82よりも下側に配置されている。また、ブロワ装置58は、筐体50の左右方向における両端の内側に配置されている。また、左右方向において、筐体50の左端の位置を位置PLと定義し、右端の位置を位置PRと定義する。そして、前後方向から見たとき、左右方向において位置PLと位置PRとの中心の位置を通り、上下方向に延びる仮想的な直線を仮想中心線VLcと定義する。前後方向から見たとき、ブロワ装置58は、左右方向において仮想中心線VLcの両側にまたがるように配置されている。ブロワ装置58は、例えばチャッカー52よりも上側に配置されている(
図3参照)。
【0066】
さらに、ブロワモータ92の配置の詳細について説明する。
図4に示すように、ブロワモータ92は、レールRのすぐ下側に配置されている。より詳細な例として、レールRとブロワモータ92との上下方向における間隔(すなわち、上下方向における最短距離)を間隔Dと定義する。また、ブロワモータ92の上下方向における全長を、全長Ltと定義する。より具体的には、全長Ltは、例えばハウジング92aの上下方向における長さで規定されても良い。間隔Dは、例えば全長Ltよりも短い。このように、ブロワモータ92は、上下方向においてレールRの近傍(言い換えると、複数の車輪82の近傍)に配置されている。
【0067】
以上のように、レールRに吊り下げられる玉揚装置3において、ブロワ装置58が、車輪82よりも下側且つ筐体50の左右方向における中央部に配置されている。これにより、ブロワ装置58が車輪82よりも上側又は左右方向における端部等に配置される構成と比べて、玉揚装置3の重心を上下方向及び左右方向において中心に近づけることができる。したがって、走行中の玉揚装置3のバランスを安定させることができる。また、ブロワ装置58が左右方向において筐体50の外側に配置される構成と比べて、レールRの長大化等によるコスト増大を抑制できる。以上より、ブロワ装置58の搭載に起因する玉揚装置3の問題の発生を抑制できる。また、ブロワ装置58が車輪82よりも上側又は左右方向における端部に配置される構成と比べて、ブロワ装置58に接続される配管及び配線の引き回しを容易化、シンプル化できる。
【0068】
また、上述したように、ブロワモータ92がレールRのすぐ近くに配置されている。仮にブロワモータ92がレールRから離れた位置に配置されていると、ブロワモータ92の動作時の振動により、車輪82のレールRとの接触部分を支点として筐体50が大きく振動してしまうおそれがある。この点、本実施形態の構成では、ブロワモータ92がレールRから離れた位置に配置されている構成と比べて、ブロワモータ92の振動に起因する筐体50の振動を低減できる。また、ブロワ装置58がレールRよりも下側に配置されているので、レールRに吊り下げられた玉揚装置3において、メンテナンス時に作業者が容易にブロワ装置58にアクセスできる。
【0069】
また、ダストボックス94の吸引口94aは、車輪82がレールR上に配置されているときに、作業通路7からアクセス可能な位置に配置されている。これにより、作業者が吸引口94aに容易にアクセスできる。したがって、ダストボックス94の内部を容易に清掃できる。
【0070】
また、パイプ96の少なくとも一部が透明である。これにより、ブロワ装置58が動作しているときでも、パイプ96の少なくとも一部の内部を作業者が容易に目視確認できる。したがって、パイプ96の内部が詰まっていないか作業者が容易に確認できる。
【0071】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0072】
(1)前記実施形態において、パイプ96等の少なくとも一部が透明であるものとした。しかしながら、これには限られない。パイプ96等は透明でなくても良い。つまり、パイプ96等は、内部が透けて見えるように構成されていなくても良い。
【0073】
(2)前記までの実施形態において、吸引口94aが本発明のアクセス口に相当するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、ダストボックス94の、作業通路7からアクセス可能な位置に、吸引口94aとは別の開口(不図示)が設けられていても良い。この場合、当該開口を開閉可能な開閉部材(不図示)が設けられていることが求められる。
【0074】
(3)前記までの実施形態において、吸引口94aは、作業通路7からアクセス可能な位置に配置されているものとした。しかしながら、これには限られない。吸引口94aは、作業通路7からアクセス可能でなくても良い。
【0075】
(4)前記までの実施形態において、ブロワモータ92は、レールRのすぐ下側に配置されているものとした。しかしながら、これには限られない。ブロワモータ92は、例えば上下方向においてレールRと重なる位置又はレールRよりも上側に配置されていても良い。或いは、ブロワモータ92は、例えば上下方向においてレールRのかなり下側に配置されていても良い。
【0076】
(5)前記までの実施形態において、サクションマウス54及び種糸サクション74が本発明の吸引部に相当するものとした。しかしながら、これには限られない。サクションマウス54及び種糸サクション74に加え、或いはサクションマウス54及び種糸サクション74の代わりに、ブロワ装置58が生成する負圧によって糸Yを吸引可能な別の吸引部が設けられていても良い。
【0077】
(6)本発明は、糸貯留装置30を有する糸巻取ユニット2に対して玉揚げを行う玉揚装置3に適用されるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、糸貯留装置30を有しない糸巻取ユニット(例えば特開2017-19570号公報等を参照)に対する処理を行う玉揚装置(不図示)に本発明が適用されても良い。また、レールRに移動可能に吊り下げられておりブロワ装置58を有する他の玉揚装置(不図示)に本発明が適用されても良い。
【符号の説明】
【0078】
2 糸巻取ユニット(巻取装置)
3 玉揚装置
7 作業通路
50 筐体
54 サクションマウス(吸引部)
58 ブロワ装置
74 種糸サクション(吸引部)
82 車輪
92 ブロワモータ
94 ダストボックス
94a 吸引口(アクセス口)
96 パイプ(配管部材)
D 間隔
Lt 全長
Q 巻取管
R レール
VLc 仮想中心線
Y 糸