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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017218
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】センタリング装置および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20240201BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240201BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/68 K
H01L21/30 564C
H01L21/30 569C
G03F9/00 A
H01L21/68 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119717
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】南 翔耀
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
5F146
【Fターム(参考)】
2H197CD22
2H197CD43
2H197EB20
5F131AA02
5F131BA18
5F131BA19
5F131BA37
5F131BB03
5F131BB23
5F131CA18
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
5F131EA02
5F131EA06
5F131EA24
5F131EB01
5F131FA13
5F131FA25
5F131FA32
5F131GA14
5F131KA12
5F131KA47
5F131KB04
5F131KB55
5F146JA10
5F146JA16
5F146JA27
5F146LA05
5F146LA08
5F146LA19
(57)【要約】
【課題】周縁部に切欠部が設けられた円板状の基板を載置した基板支持部を水平面内で囲むように設けられた3つ以上の当接部材を用いるセンタリング装置および当該センタリング装置を用いた基板処理装置において、センタリング精度を高める。
【解決手段】この発明では、3つ以上の当接部材は、基板の端面に当接可能な当接面を有するとともに当接面を基板の端面に向けた姿勢で水平面内において基板支持部を囲むように配置される。また、当接面は、水平面と交差して形成される当接可能領域が、直線または基板側に曲率中心が位置するとともに基板の半径よりも大きな曲率半径を有する曲線であり、しかも切欠部により基板の円周が切り取られる弧よりも長くなるように、仕上げられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部に切欠部が設けられた円板状の基板を水平姿勢で基板支持部の上面に載置した状態で、前記基板の中心が前記基板支持部の中心に一致するように前記基板を水平移動させて位置決めするセンタリング装置であって、
前記基板の端面に当接可能な当接面を有するとともに前記当接面を前記基板の端面に向けた姿勢で水平面内において前記基板支持部を囲むように配置される、3つ以上の当接部材と、
前記当接部材を互いに異なる方向から前記基板に向かって移動させる移動機構と、
前記当接部材が前記基板に向かって移動して前記基板を挟み込むように、前記移動機構を制御する制御部と、を備え、
前記当接面は、前記水平面と交差して形成される当接可能領域が、直線または前記基板側に曲率中心が位置するとともに前r記基板の半径よりも大きな曲率半径を有する曲線であり、しかも前記切欠部により前記基板の円周が切り取られる弧よりも長くなるように、仕上げられている
ことを特徴とするセンタリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンタリング装置であって、
前記当接部材として、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心から前記基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた、第1基準位置から前記基板支持部の中心に向う第1水平方向に移動自在な第1当接部材と、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側で前記基板支持部の中心から前記第1水平方向に延びる仮想線から外れるとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた、第2基準位置から前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第2水平方向に移動自在な第2当接部材と、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側かつ前記仮想線に対して前記第2当接部材の反対側で前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた、第3基準位置から前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第3水平方向に移動自在な第3当接部材と、
が設けられ、
前記移動機構は、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材を、それぞれ前記第1水平方向、前記第2水平方向および前記第3水平方向に移動させ、
前記制御部は、
前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動を繰り返し、
前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材で前記基板を挟み込んだことを確認すると、前記微小移動を停止するセンタリング装置。
【請求項3】
周縁部に切欠部が設けられた円板状の基板を水平姿勢で支持する上面を有する基板支持部と、
請求項1または2に記載のセンタリング装置と、
前記センタリング装置により位置決めされた前記基板と前記基板支持部との間を排気して前記基板を前記基板支持部に吸着保持させる吸引部と、
前記基板を吸着保持する前記基板支持部を、前記基板支持部の中心まわりに回転させる回転駆動部と、
前記基板支持部と一体的に前記基板支持部の中心まわりに回転される前記基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給機構と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周縁部にノッチ等の切欠部が設けられた円板状の基板を水平姿勢で基板支持部の上面に載置した状態で、当該基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板を水平移動させて位置決めするセンタリング技術および当該技術を利用して基板を処理する基板処理装置に関するものである。当該処理には、ベベルエッチング処理が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板の周縁部に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、基板がスピンチャック(本発明の「基板支持部」の一例に相当)により下方から支持されながら吸着保持される。このとき、スピンチャックの中心と、基板の中心とがずれていると、処理品質の低下を招いてしまう。そこで、上記装置では、基板に対して処理を施す前に、スピンチャックに対する基板の偏心量を減少させる、いわゆるセンタリング処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-149423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来装置では、センタリング処理が2段階で行われる。まず、スピンチャックに対する基板の偏心量が測定される。次に、スピンチャック上の基板をプッシャーで水平に押すことで、基板の中心がスピンチャックの中心(回転軸線)の方に移動される。したがって、スループットの面で改良の余地が残されている。
【0005】
そこで、偏心量測定を行うことなく、センタリング処理を行う技術が検討されている。より詳しくは、3つ以上の当接部材が水平面内でスピンチャックを囲むように設けられる。そして、スピンチャック上に基板が載置された状態で当接部材が互いに異なる方向から基板の端面に向けて移動して基板を挟み込む。これによって、当該当接部材の移動のみにより、スピンチャックの上面に載置された円板状の基板の中心をスピンチャックの中心に一致させることができる。
【0006】
ただし、基板にノッチ等の切欠部が設けられている場合、後で図4を参照しつつ詳述するが、当接部材の構成によってセンタリング精度が相違する。したがって、3つ以上の当接部材を用いたセンタリング装置においては、センタリング精度を高めるために、当接部材の構成を工夫する必要があった。しかしながら、この点について十分に検討されていなかった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、周縁部に切欠部が設けられた円板状の基板を載置した基板支持部を水平面内で囲むように設けられた3つ以上の当接部材を用いるセンタリング装置および当該センタリング装置を用いた基板処理装置において、センタリング精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1態様は、周縁部に切欠部が設けられた円板状の基板を水平姿勢で基板支持部の上面に載置した状態で、基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板を水平移動させて位置決めするセンタリング装置であって、基板の端面に当接可能な当接面を有するとともに当接面を基板の端面に向けた姿勢で水平面内において基板支持部を囲むように配置される、3つ以上の当接部材と、当接部材を互いに異なる方向から基板に向かって移動させる移動機構と、当接部材が基板に向かって移動して基板を挟み込むように、移動機構を制御する制御部と、を備え、当接面は、水平面と交差して形成される当接可能領域が、直線または基板側に曲率中心が位置するとともに基板の半径よりも大きな曲率半径を有する曲線であり、しかも切欠部により基板の円周が切り取られる弧よりも長くなるように、仕上げられていることを特徴としている。
【0009】
また、この発明の第2態様は、基板処理装置であって、周縁部に切欠部が設けられた円板状の基板を水平姿勢で支持する上面を有する基板支持部と、上記センタリング装置と、センタリング装置により位置決めされた基板と基板支持部との間を排気して基板を基板支持部に吸着保持させる吸引部と、基板を吸着保持する基板支持部を、基板支持部の中心まわりに回転させる回転駆動部と、基板支持部と一体的に基板支持部の中心まわりに回転される基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給機構と、を備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、基板の端面に当接可能な当接面を有する当接部材が3つ以上設けられている。これらの当接部材は、当接面を基板の端面に向けた姿勢で水平面内において基板支持部を囲むように配置されている。そして、これらの当接部材が互いに異なる方向から基板に向かって移動して基板を挟み込む。このとき、当接面が基板の切欠部と対向していると、切欠部の影響を受けるが、本発明では、当接面は、水平面と交差して形成される当接可能領域が、直線または基板側に曲率中心が位置するとともに基板の半径よりも大きな曲率半径を有する曲線であり、しかも切欠部により基板の円周が切り取られる弧よりも長くなるように、仕上げられている。このため、当接部材の一部が切欠部に入り込むのを防止することができ、その結果、センタリング精度に対する切欠部の影響が抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センタリング精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムを示す図である。
図2】基板処理装置の一実施形態の構成を概略的に示す図である。
図3】基板処理装置の基板保持部およびセンタリング機構の構成を示す斜視図である。
図4】センタリング機構で採用可能な当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
図5】センタリング機構の動作を模式的に示す図である。
図6】微小移動前後の当接部材とスピンベースの中心との位置関係を模式的に示す図である。
図7】第1実施形態におけるベース中心から当接面までの距離の変化に対する負荷トルクの変動を示すグラフである。
図8】当接面に対するノッチの位置関係に対応した偏心量および偏心方向を示すグラフである。
図9】本発明にかかるセンタリング装置の第2実施形態で採用された当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
図10】当接面の湾曲度合に対する偏心ズレ量の変化を示すグラフである。
図11】本発明に係るセンタリング装置の第3実施形態の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムを示す図である。基板処理システム100は、基板Sに対して処理を施す基板処理部110と、この基板処理部110に結合されたインデクサ部120とを備えている。インデクサ部120は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening UnifiedPod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121と、この容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0014】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0015】
基板処理部110は、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット111と、この基板搬送ロボット111を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111はランダムにアクセスして基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1の一つが本発明に係る基板処理装置10に相当している。
【0016】
図2は基板処理装置の一実施形態の構成を概略的に示す図である。図3は基板処理装置の基板保持部およびセンタリング機構の構成を示す斜視図である。図4はセンタリング機構で採用可能な当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。図5はセンタリング機構の動作を模式的に示す図である。図6は微小移動前後の当接部材とスピンベースの中心との位置関係を模式的に示す図である。基板処理装置10は、ベベルエッチング処理を本発明の「処理」の一例として実行する装置であり、処理チャンバ内で基板Sの上面の周縁部に処理液を供給する。この目的のために、基板処理装置10は、基板保持部2、本発明に係るセンタリング装置の主要構成であるセンタリング機構3、処理液供給機構4を備えている。これらの動作は装置全体を制御する制御ユニット9により制御される。
【0017】
基板保持部2は、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンベース21を備えている。スピンベース21は、その下面中央部から下向きに延びる回転支軸22により、上面211が水平となるように支持されている。回転支軸22は回転駆動部23により回転自在に支持されている。回転駆動部23は回転モータ231を内蔵しており、制御ユニット9からの制御指令に応じて回転モータ231が回転する。この回転駆動力を受けて、スピンベース21がスピンベース21の中心21Cを通過して鉛直方向に延びる鉛直軸AX(1点鎖線)回りに回転する。図2においては上下方向が鉛直方向である。また、図2の紙面に対して垂直な面が水平面である。なお、図2以降の図面における方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。
【0018】
スピンベース21の上面211は基板Sを支持可能な広さを有しており、スピンベース21の上面211への基板Sの載置が可能となっている。この上面211には、図示を省略するが、複数の吸着孔や吸着溝などが設けられている。これら吸着孔などは、吸引配管241を介して吸引ポンプ24と接続されている。この吸引ポンプ24が制御ユニット9からの制御指令に応じて作動すると、吸引ポンプ24からスピンベース21に吸引力が与えられる。その結果、スピンベース21の上面211と基板Sの下面との間から空気が排気され、基板Sがスピンベース21に吸着保持される。このように吸着保持された基板Sは、スピンベース21の回転と一緒に鉛直軸AXまわりに回転される。したがって、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cと一致していない、つまり基板Sが偏心している場合、ベベルエッチング処理の品質低下を招く。
【0019】
そこで、本実施形態では、センタリング機構3が設けられている。センタリング機構3は、吸引ポンプ24による吸引を停止している間(つまりスピンベース21の上面211上で基板Sが水平移動可能となっている間)に、センタリング処理を実行する。このセンタリング処理により上記偏心が解消され、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cと一致する。なお、センタリング機構3の詳しい構成および動作については、後で説明する。
【0020】
センタリング処理を受けた基板Sに対してベベルエッチング処理を施すために、処理液供給機構4が設けられている。処理液供給機構4は、処理液ノズル41と、処理液ノズル41を移動させるノズル移動部42と、処理液ノズル41に処理液を供給する処理液供給部43とを有している。ノズル移動部42は、処理液ノズル41を図2中の実線で示すように基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、同図の点線で示すように基板Sの周縁部上方の処理位置との間を移動させる。
【0021】
処理液ノズル41は処理液供給部43に接続されている。そして、処理位置に位置決めされた処理液ノズル41に対して処理液供給部43から適宜の処理液が送給されると、処理液ノズル41から回転している基板Sの周縁部に処理液が吐出される。これにより、基板Sの周縁部全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0022】
なお、図2への図示を省略しているが、スプラッシュガード部が基板保持部2を側方から取り囲むように設けられている。スプラッシュガード部は、ベベルエッチング処理中に、基板Sから振り切られた処理液の液滴を捕集し、同液滴が装置周辺に飛散するのを効果的に防止する。
【0023】
次に、図2ないし図6を参照しつつセンタリング機構3の構成について説明する。センタリング機構3は、スピンベース21の上面211に載置された基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致するように基板Sをスピンベース21の上面211上で水平移動させて位置決めする機能を有している。センタリング機構3は、図3に示すように、X方向において、スピンベース21の中心21Cに対してX2方向(同図の右手方向)側に配置された当接部材31と、X1方向(同図の左手方向)側に配置された当接部材32、33とを有している。また、センタリング機構3は、当接部材31~33を水平方向に移動させるための移動機構34を有している。
【0024】
移動機構34は、当接部材31を移動させるためのシングル移動部35と、当接部材32、33を一括して移動させるためのマルチ移動部36と、を有している。スピンベース21の中心21Cに対し、シングル移動部35がX2方向側に配置される一方、マルチ移動部36がX1方向側に配置されている。
【0025】
シングル移動部35は、固定ベース351と、回転モータ352と、動力伝達部353と、スライダー354とを有している。固定ベース351に対して回転モータ352が取り付けられるとともに、固定ベース351上に動力伝達部353およびスライダー354がこの順序で積層されている。回転モータ352は、当接部材31をX方向に移動させるための駆動源である。制御ユニット9からの制御指令に応じて回転モータ352が作動すると、回転軸(図示省略)が回転する。この回転軸は固定ベース351の上部から動力伝達部353に延びており、回転モータ352で発生した回転駆動力が動力伝達部353に伝達される。動力伝達部353は、例えばラックアンドピニオン構造などにより、回転駆動力に応じた回転運動をX方向の直線運動に変換し、スライダー354に伝達する。これにより、スライダー354は回転量に応じた距離だけX方向に往復移動する。その結果、スライダー354の上部に取り付けられた当接部材31がスライダー354の移動に伴ってX方向に移動される。
【0026】
マルチ移動部36は、スライダー364の構造が一部相違している点を除き、基本的にシングル移動部35と同様に構成されている。すなわち、マルチ移動部36は、固定ベース361に取り付けられた回転モータ362で発生した回転駆動力を動力伝達部363によってスライダー364に与え、スライダー364をX方向に移動させる。スライダー364の上部は、X2方向に延びる2本のアーム364a、364bがY方向に互いに離間しており、鉛直上方からの平面視で略C字形状を呈している。そして、アーム364a、364bのX2方向側の端部に対し、当接部材32、33がそれぞれ取り付けられている。したがって、制御ユニット9からの制御指令に応じて回転モータ362が作動すると、シングル移動部35と同様に回転モータ362の回転量に応じた距離だけスライダー364がX方向に往復移動する。その結果、スライダー364に取り付けられた当接部材32、33がスライダー364の移動に伴ってX方向に移動される。
【0027】
当接部材31~33は、それぞれ基板Sの端面Seに当接可能な当接面311~331を有している。そして、これらの当接面311~331を基板Sの端面Seに向けた姿勢で、当接部材31~33は、XY平面(水平面)内において基板保持部2を囲むように配置されている。当接面311~331は平面形状を有しており、それらの面法線は鉛直軸AXを向いている。例えば図4の(a)欄に示すように、当接面321では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する直線領域322が本発明の「当接可能領域」の一例に相当しており、その長さLは、ノッチNTにより基板Sの円周が切り取られる弧の長さLnよりも長くなっている。したがって、センタリング時には、当接部材32が基板Sの端面Seに向かって移動されると、直線領域322において基板Sの端面Seと1点または2点で当接する。つまり、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、直線領域322上の2つの当接点CP1、CP2が基板Sの端面Seと当接する。一方、それ以外においては、直線領域322上の1つの当接点が基板Sの端面Seと当接する。このことは、当接面311、331についても同様である。なお、当接部材31~33を上記のように構成した理由については、後で図4を参照しつつ詳述する。
【0028】
シングル移動部35によって当接部材31がX1方向に移動されると、当接部材31の当接面311がスピンベース21の中心21Cに向って進み、基板Sの端面Seに当接する。このように本実施形態では、基板Sに当接するための当接部材31の移動方向D1はX1方向であり、これが本発明の「第1水平方向」に相当している。そして、当接後において当接部材31がさらにD1方向に移動することで、基板SをX1方向に押圧しながらスピンベース21の上面211でX1方向に水平移動させる。このように本実施形態では、発明内容の理解を助けるために、図3図5および図6においてスピンベース21の中心21CからX1方向に延設させた仮想線VLが追加記載されている。これが本発明の「仮想線」に相当している。以下、仮想線VLを適宜利用しながら、センタリング機構3の構成説明を続ける。
【0029】
マルチ移動部36による当接部材32、33の移動態様は、当接部材31のそれと一部相違している。というのも、水平面内において、当接部材32、33は仮想線VLに対して線対称に配置されており、その配置状態のままX方向に移動されるからである。より詳しくは、当接部材32は、図5の(a)欄に示すように、仮想線VLからY2方向側に所定距離W(ただし、基板Sの半径rsよりも短い)だけ外れて配置されている。一方、当接部材33は、仮想線VLに対して当接部材32の反対側、つまりY1方向側に当接部材32と同じ距離Wだけ外れて配置されている。したがって、マルチ移動部36によって当接部材32、33がX2方向に移動されると、当接部材32の当接面321が仮想線VLよりもY2方向側の基板端面に当接するとともに、当接部材33の当接面331が仮想線VLよりもY1方向側の基板端面に当接する。このように、本実施形態では、基板Sに当接するための当接部材32の移動方向D2はX2方向であり、これが本発明の「第2水平方向」に相当している。また、基板Sに当接するための当接部材33の移動方向D3もX2方向であり、これが本発明の「第3水平方向」に相当している。したがって、スピンベース21の中心21Cから各当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接面311、321、331を移動させるためには、単位時間当たりの移動量を当接部材31と当接部材32、33とで相違させる必要がある。その点について図5および図6を参照しつつ詳述するとともに、上記移動態様を利用したセンタリング処理について説明する。
【0030】
スピンベース21の上面211に基板Sを載置するためには、少なくとも基板Sの外径公差の最大値を考慮して当接面311、321、331が基準位置に位置決めされるのが望ましい。例えば直径300mmの基板Sでは、外径公差が0.2mmである。したがって、当接面311、321、331がスピンベース21の中心21Cから150.1mmあるいはそれ以上の距離だけ離れている必要がある。この距離を本実施形態では「基準距離r0」と称し、図5の(a)欄に示すように、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径が基準距離r0の円(1点鎖線)を基準円とする。
【0031】
次に、当該基準円に当接面311、321、331が位置するように当接部材31~33を位置決めした後で、当接面311、321、331を基板Sに向けて移動させる場合について検討する。この場合、基準円に当接面311を位置させるための当接部材31の位置が本発明の「第1基準位置」に相当し、基準円に当接面321を位置させるための当接部材32の位置が本発明の「第2基準位置」に相当し、基準円に当接面331を位置させるための当接部材33の位置が本発明の「第3基準位置」に相当する。
【0032】
ここで、当接部材31~33がそれぞれ第1基準位置、第2基準位置および第3基準位置に位置した状態から当接部材31を基板Sに向けて第1移動量Δd1だけD1方向(X1方向)に微小移動された場合について検討する。これに対応して当接部材32、33を同じ距離だけD2方向(X2方向)に微小移動させると、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離は不揃いとなる。したがって、単位時間当たりの移動量を統一したまま当接部材31~33の微小移動を繰り返すと、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致することはない。
【0033】
これに対して、図5の(b)欄および図6に示すように、当接部材31を第1移動量Δd1だけD1方向に微小移動させるのに対応して、当接部材32を第2移動量Δd2だけD2方向に微小移動させ、当接部材33を第3移動量Δd3(=Δd2)だけD3方向に微小移動させることで、スピンベース21の中心21Cから各当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接面311、321、331を移動させることができる。
【0034】
図6は、微小移動前後の当接部材32とスピンベース21の中心21Cとの位置関係を模式的に示す図である。図6は、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との位置関係、およびスピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との位置関係を示す。図6は、当接部材32を第2移動量Δd2だけD2方向に微小移動させる前の当接部材32を実線で示し、微小移動させた後の当接部材32を二点鎖線で示す。図6は、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との接点324と、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との接点325を示す。
【0035】
図6に示すように、接点324と、接点325とは、当接部材32上での位置が異なる。一方、スピンベース21の中心21Cと接点324とを結ぶ直線と、スピンベース21の中心21Cと接点325とを結ぶ直線とは重なる。さらに、スピンベース21の中心21Cと接点324とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度と、スピンベース21の中心21Cと接点325とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度とは、同じである。
【0036】
このため、当接部材32を微小移動させる距離Δd2(本発明の「第2移動量」に相当)および当接部材33を微小移動させる距離Δd3(本発明の「第3移動量」に相当)を以下のように、
Δd2=Δd3=(r1-r2)/cosθ=Δd1/cosθ
r1=r0
r2=r1-Δd1
ただし、
r1:微小移動前の中心21Cから当接面321までの距離、
θ:スピンベース21の中心21Cと接点324及び接点325とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度、
r2:微小移動後の中心21Cから当接面321までの距離、
W:仮想線VLから当接部材32の離間距離、
設定することができる。この場合、微小移動後においても、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離は一致している。このような微小移動を繰り返すことで、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接部材31~33が基板Sに近づいていく。すると、例えば図5に示すような偏心が生じている場合、上記微小移動の繰り返し中に、最初に当接部材31が基板Sに当接し、基板SをD1方向に移動させる(図5の(c)欄参照)。それに続いて、当接部材32が当接部材31で押動されている基板Sに当接して水平移動させる。そして、図5の(d)欄に示すように、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離が基板Sの半径となると、最後の当接部材33も基板Sに当接する。こうして当接部材31~33により基板Sが挟み込まれて基板Sの移動が停止されるとともに、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致する。このようにして、基板Sのセンタリング処理を実行可能となっている。
【0037】
上記したセンタリング機構3を有する本実施形態では、制御ユニット9が基板処理装置10の装置各部を制御して上記センタリング処理およびそれに続くベベルエッチング処理を実行する。この制御ユニット9には、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random Access Memory)等を有するコンピューターにより構成される演算処理部91と、ハードディスクドライブなどの記憶部92と、モータ制御部93とが設けられている。
【0038】
演算処理部91は、予め記憶部92に記憶されているセンタリングプログラムやベベルエッチングプログラムを適宜読み出し、RAM(図示省略)に展開し、図5に示すセンタリング処理およびベベルエッチング処理を行う。特に、センタリング処理を行う際に、演算処理部91は第1移動量Δd1ないし第3移動量Δd3を算出するとともにこれらの移動量Δd1~Δd3に基づきモータ制御部93を介して移動機構34の回転モータ352、362を制御する。また、演算処理部91は、回転モータ352に与えられるモータ電流値からシングル移動部35での負荷トルクを算出するとともに、回転モータ362に与えられるモータ電流値からマルチ移動部36での負荷トルクを算出する。ここで、微小移動を繰り返している間にスピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離(ベース中心から当接面までの距離)が変化するのに伴って、負荷トルクは例えば図7に示すように変動する。同図に示すように、上記距離が基板Sの半径rsと一致する、つまり当接部材31~33が基板Sを挟み込んだ時点で、シングル移動部35およびマルチ移動部36において、ほぼ同時に負荷トルクが急激に増大する。そこで、演算処理部91は、負荷トルクがしきい値を超えた時点でセンタリング処理が完了したとして判断し、当接部材31~33の移動を停止させる。なお、本実施形態では、全モータ352、362について負荷トルクの変動を監視しているが、一方のモータのみを監視することで当接部材31~33の移動停止タイミングを特定してもよい。また、負荷トルクをモータ電流値以外に基づいて算出してもよいことは言うまでもない。
【0039】
以上のように、本実施形態では、当接部材31~33の微小移動の繰り返しにより、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接部材31~33を基板Sに徐々に近接させている。そして、これら3つの当接部材31~33で基板Sを挟み込むことで基板Sの中心SCをスピンベース21の中心21Cに一致させている。このように当接部材31~33の微小移動の繰り返し動作のみによりセンタリング処理を行っており、優れたスループットでセンタリング処理をおこなうことができる(作用効果A)。
【0040】
また、負荷トルク変動に基づいてセンタリング処理の完了を確認するとともに、直ちに当接部材31~33の移動を停止させている。このため、基板Sにダメージを与えることなく、センタリング処理を適切なタイミングで終了させることができる(作用効果B)。この点については、後で説明する実施形態においても同様である。
【0041】
さらに、図4の(a)欄に示すように、当接部材31~33が、XY平面と交差して形成される直線領域312、322、332を有しているため、さらに別の作用効果が得られる。基板Sの端面Seを水平方向から押して移動させる技術としては、半円盤形状に仕上げられた先端部(図4の(b)欄参照)や先鋭形状に仕上げられた先端部を有する当接部材、あるいはローラ形状の当接部材が一般的である。したがって、これらの形状を有する当接部材を用いることで、上記した作用効果Aおよび作用効果Bが得られる。
【0042】
しかしながら、例えば図4の(b)欄に示す比較例では、当接部材39の先端部393が半円盤形状を有している。この当接部材39では、基板Sの端面Seと対向する当接面391は基板Sに向かって凸形状に仕上げられている。したがって、当接面391では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する曲線領域392は、当接部材39側に曲率中心が位置する曲線形状となる。そのため、ノッチNTが当接面391と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、先端部393の一部がノッチNTに入り込んだ状態で曲線領域392上の2つの当接点CP1、CP2で当接する。その結果、センタリング時において、当接面391が基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心ズレ量Lbだけ基板S側に進んだ位置P1まで移動する。その結果、当接部材39の押し当て位置が正確なセンタリング処理を行うための位置からずれる。例えば図3に示すセンタリング機構3において、当接部材31~33の全てを当接部材39に置き換え、センタリング処理を行うと、次の実験結果が得られた。ここでは、スピンベース21に載置された基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sを鉛直軸AXまわりに適当な回転角(例えば32゜、180゜、328゜)だけ回転させ、ノッチNTを当接面391に対向させた状態でセンタリング処理を行うと、押し当て位置のズレ量、つまり偏心ズレ量は最大240μmにも達した。
【0043】
これに対し、本実施形態では、当接部材31~33の当接面311~331は平面形状を有している。このため、図4の(a)欄に示すように、当接面311~331において基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する領域(本発明の「当接可能領域」の一例に相当)はそれぞれ直線形状である。しかも、これらの直線領域312、321、332はいずれも弧の長さLnよりも長い。したがって、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、直線領域322上の2つの当接点CP1、CP2がノッチNTのショルダ部位で係止され、当接部材32の一部がノッチNTに入り込むことを効果的に阻止することができる。また、当接面321は基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心ズレ量Laだけ基板S側に進んだ位置P2まで移動するものの、偏心ズレ量Laは比較例における偏心ズレ量Lbよりも大幅に低減される。
【0044】
ここで、図3に示すセンタリング機構3においてスピンベース21に載置された基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sを鉛直軸AXまわりに回転角を326.25゜から329.75゜の範囲で0.25゜ずつ切り替えながら偏心量および偏心方向を計測すると、図8に示す実験結果が得られた。
【0045】
図8は当接面に対するノッチの位置関係に対応した偏心量および偏心方向を示すグラフである。同図において、回転角は、ノッチNTと当接面321との位置関係を示しており、328゜では、図4に示すようにノッチNT全体が当接面321と対向しており、327.25゜以下または328.75゜以上では、ノッチNTは当接面321から基板Sの周方向に外れている。また、同図において、菱形印はセンタリング動作後の偏心量を示し、四角印はセンタリング動作後の偏心方向を示している。同図から明らかなように、ノッチNTが当接面321に対向する姿勢でセンタリング処理を行ったとしても、偏心量を最大11μm程度に抑えることができる。つまり、上記のように構成された当接面321を有する当接部材32を用いることでノッチNTの位置にかかわらず偏心ズレ量を大幅に抑制することができる。この点については、当接部材31の当接面311および当接部材33の当接面331についても同様である。その結果、これらの当接面311、321、331でスピンベース21の上面に載置された基板Sを挟み込んでセンタリング処理を実行することで、比較例に比べ、センタリング精度を大幅に向上させることができる。
【0046】
ところで、上記センタリング機構3および制御ユニット9の組み合わせが本発明にかかるセンタリング装置の第1実施形態に相当するが、センタリング機構3における当接面311、321、331の構成はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、XY平面と交差する当接可能領域が曲線となるように、当接面311、321、331を仕上げてもよい(第2実施形態)。
【0047】
図9は本発明にかかるセンタリング装置の第2実施形態で採用された当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、当接面311、321、331が基板Sの端面Seに沿って湾曲形状を有していることであり、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図9の(a)欄に示すように、当接面321では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する曲線領域323が本発明の「当接可能領域」の一例に相当している。すなわち、曲線領域323の曲率中心が基板S側に位置するとともに曲線領域323の曲率半径が基板Sの半径よりも大きくなるように、当接面321は仕上げられている。したがって、センタリング時には、当接部材32が基板Sの端面Seに向かって移動されると、曲線領域323において基板Sの端面Seと1点または2点で当接する。つまり、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、曲線領域323上の2つの当接点P1、CP2がノッチNTのショルダ部位で係止され、当接部材32の一部がノッチNTに入り込むのを効果的に阻止することができる。また、当接面321は基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心ズレ量Lcだけ基板S側に進んだ位置P3まで移動するものの、偏心ズレ量Lcは第1実施形態における偏心ズレ量Laよりも低減される。この点については、当接部材31の当接面311および当接部材33の当接面331についても同様である。
【0049】
ここで、上記曲率半径を多段階に変更しながら基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sに設けられたノッチNT(角度1.119゜)による偏心ズレ量を求めると、図10に示す実験結果が得られた。図10は当接面の湾曲度合(曲率半径)に対する偏心ズレ量の変化を示すグラフである。同図から明らかなように、曲率半径が基板Sの半径に近づくにしたがって、偏心ズレ量Lは小さくなる。そして、曲率半径が基板Sの半径と一致する場合には、理論的にはノッチNTの影響を受けない。ただし、基板Sの公差を考慮すると、曲率半径を基板Sの半径と一致させることは実際に使用できない。したがって、第2実施形態では、曲線領域323の曲率半径が基板Sの半径よりも大きくなるように、当接面311、321、331が仕上げられている。
【0050】
上記したように、基板処理装置10においては、センタリング機構3と制御ユニット9との組み合わせが本発明に係るセンタリング装置の実施形態に相当している。すなわち、当接部材31~33がそれぞれ本発明の「第1当接部材」、「第2当接部材」および「第3当接部材」の一例に相当している。また、制御ユニット9が本発明の「制御部」の一例に相当している。また、スピンベース21および中心21Cが、それぞれ本発明の「基板支持部」および「基板支持部の中心」の一例に相当している。また、吸引ポンプ24が本発明の「吸引部」の一例に相当している。
【0051】
なお、上記第1実施形態では、マルチ移動部36により2つの当接部材32、33をそれぞれD2方向(X2方向)およびD3方向(X2方向)に移動させているが、マルチ移動部36に代え、シングル移動部35と同様に構成された当接部材32用シングル移動部および当接部材33用シングル移動部を設けてもよい。この場合、当接部材31~33毎に設けられるシングル移動部がそれぞれ本発明の「第1シングル移動部」、「第2シングル移動部」および「第3シングル移動部」の一例に相当する。
【0052】
また、このように当接部材32用シングル移動部および当接部材33用シングル移動部を設けた場合、D2方向およびD3方向の両方をX2方向に統一する必然性はなく、D2方向およびD3方向の少なくとも一方をX2方向から変更してもよい(第3実施形態)。
【0053】
図11は本発明に係るセンタリング装置の第3実施形態の構成を模式的に示す図である。第3実施形態が第1実施形態と大きく相違しているのは、マルチ移動部36に代え、シングル移動部35と同様に構成された当接部材32用シングル移動部37および当接部材33用シングル移動部38が設けられている点と、D2方向およびD3方向のいずれもがX2方向と異なっている点である。この第2実施形態では、図5の(a)および(b)欄およびそれらに基づく第2移動量および第3移動量の検討内容と同様にして、第2移動量および第3移動量が個別に設定される。その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様である。
【0054】
このように構成された第3実施形態においても、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接部材31~33が順次、基板Sに当接して基板Sを挟み込む。これによって、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致する。したがって、当接部材31~33の微小移動の繰り返し動作のみによりセンタリング処理を行っており、優れたスループットでセンタリング処理をおこなうことができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、負荷トルク変動に基づき当接部材31~33による基板Sの挟み込み、つまりセンタリング処理の完了を検出しているが、その他の方法により上記検出を行ってもよい。例えば、シングル移動部35、38やマルチ移動部36にロードセルや歪ゲージなどのセンサを設け、当接部材31~33で基板Sを挟み込んだときに応力または歪みをセンサが検出して検出信号を出力するように構成してもよい。この場合、制御ユニット9がセンサからの検出信号に基づいて当接部材31~33による基板Sの挟込を確認する。
【0056】
また、上記実施形態では、ベベルエッチング処理を行う基板処理装置10に装備されたセンタリング装置に対して本発明を適用しているが、本発明に係るセンタリング装置は、円板状の基板を回転させながら処理する基板処理装置に装備されるセンタリング技術全般に適用することができる。また、本発明に係るセンタリング装置を単独で用いてもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、3つの当接部材を用いて基板をセンタリングしているが、4つ以上の当接部材を用いるセンタリング装置に対して本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、周縁部にノッチ等の切欠部が設けられた円板状の基板を水平姿勢で基板支持部の上面に載置した状態で、当該基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板を水平移動させて位置決めするセンタリング技術および当該技術を利用して基板を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
3…センタリング機構
4…処理液供給機構
9…制御ユニット(制御部)
10…基板処理装置
21…スピンベース(基板支持部)
21C…(スピンベース)の中心
23…回転駆動部
24…吸引ポンプ(吸引部)
31…(第1)当接部材
32…(第2)当接部材
33…(第3)当接部材
34…移動機構
211…(スピンベースの)上面
311、321、331…(当接部材の)当接面
322…直線領域(当接可能領域)
323…曲線領域(当接可能領域)
324…スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との接点
325…スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との接点
D1…第1水平方向
D2…第2水平方向
D3…第3水平方向
NT…ノッチ(切欠部)
S…基板
SC…(基板の)中心
Se…(基板の)端面
VL…仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11