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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172181
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】パッキン及び密閉構造体
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20241205BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 B
H05K5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089734
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】真木 善成
(72)【発明者】
【氏名】鵜沢 政利
【テーマコード(参考)】
3J040
4E360
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA01
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA06
3J040HA03
3J040HA09
3J040HA15
4E360AA02
4E360AB12
4E360AB33
4E360AB42
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA01
4E360EA11
4E360ED02
4E360GA22
4E360GA23
4E360GA29
4E360GB99
(57)【要約】
【課題】より有用なパッキン及び密閉構造体を提供する。
【解決手段】密閉構造体は、互いに組み合わされて一体となった状態で、環状をなす合わせ目が互いの間に形成される上下のケース体102,104と、合わせ目に上下のケース体102,104により圧縮した状態で配置されることで合わせ目を密封するパッキン112と、上ケース体102の合わせ目に形成されてパッキン112を受け入れる溝102sと、下ケース体104の合わせ目に形成されて溝102sとの間にパッキン112を挟み込む突条部104sとを備えている。パッキン112の周方向断面をY字形状とし、圧縮方向の上下端にはそれぞれ凹み形状が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組み合わされて一体となる2つの半構造体の間で環状をなす合わせ目に、2つの前記半構造体により圧縮した状態で配置されることで前記合わせ目を密封する環状のパッキンであって、
前記パッキンの周方向断面は、圧縮方向でみた一端側の幅が他端側の幅より大きく形成され、かつ、一端側及び他端側それぞれの幅内で圧縮方向に対向した凹み形状を有していることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
請求項1に記載のパッキンにおいて、
前記パッキンの周方向断面は、
幅方向で一対をなし、圧縮方向に一端側から他端側に延びる第1の両端辺と、
幅方向で一対をなし、圧縮方向に他端側から一端側に延びる前記第1の両端辺よりも長い第2の両端辺と、
幅方向で一対をなし、前記第1の両端辺と前記第2の両端辺との間を繋ぐ中間辺と
を含むことを特徴とするパッキン。
【請求項3】
請求項2に記載のパッキンにおいて、
前記パッキンの周方向断面は、
前記中間辺が圧縮方向に対して傾斜して形成されていることを特徴とするパッキン。
【請求項4】
請求項2に記載のパッキンにおいて、
前記パッキンの周方向断面は、
圧縮方向の他端側で前記凹み形状の幅方向両端と前記第2の両端辺との間をつなぐ一対のコーナー部分が曲線形状に形成されていることを特徴とするパッキン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のパッキンにおいて、
前記パッキンは、
周方向の所定位置で周方向断面に沿う方向に突出して形成され、前記合わせ目に対する周方向の位置関係を指示するための位置決め部
を有することを特徴とするパッキン。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のパッキンにおいて、
材料のショアA硬さが40度を超える70度以下の範囲内に設定されていることを特徴とするパッキン。
【請求項7】
互いに組み合わされて一体となった状態で、環状をなす合わせ目が互いの間に形成される2つの半構造体と、
前記合わせ目に2つの前記半構造体により圧縮した状態で配置されることで前記合わせ目を密封し、周方向断面が圧縮方向でみた一端側の幅を他端側の幅より大きくして形成され、かつ、一端側及び他端側それぞれの幅内で圧縮方向に対向した凹み形状を有する環状のパッキンと、
2つの前記半構造体の一方の前記合わせ目に沿って環状に形成されることで前記パッキンを圧縮方向に受け入れ可能であり、かつ、周方向断面が前記パッキンの受け入れ方向でみた奥側の幅よりも逆側の幅を大きくして形成されることで前記パッキンの一端側及び他端側それぞれの幅に合わせた段付き形状をなす溝と、
2つの前記半構造体の他方の前記合わせ目に沿って環状に形成され、前記一方との組み合わせ状態で前記溝内に嵌まり込みつつ、前記溝との間に前記パッキンを挟み込んで圧縮する突条部と
を備えた密閉構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の密閉構造体において、
前記パッキンの周方向断面は、
幅方向で一対をなし、圧縮方向に一端側から他端側に延びる第1の両端辺と、
幅方向で一対をなし、圧縮方向に他端側から一端側に延びる前記第1の両端辺よりも長い第2の両端辺と、
幅方向で一対をなし、前記第1の両端辺と前記第2の両端辺との間を繋ぐ中間辺と
を含み、
前記溝の周方向断面は、
前記パッキンの周方向断面の一端側の幅に対応した溝幅を有し、かつ、前記パッキンの受け入れ方向に前記第1の両端辺の長さに対応した深さを有した第1の溝空間と、
前記第1の溝空間に連なって前記パッキンの周方向断面の他端側の幅に対応した溝幅を有し、かつ、前記パッキンの受け入れ方向に前記第2の両端辺の長さに対応した深さを有した第2の溝空間と
を含むことを特徴とする密閉構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の密閉構造体において、
前記パッキンの周方向断面の他端側で前記凹み形状の幅方向両端と前記第2の両端辺との間をつなぐ一対のコーナー部分、及び、前記溝の周方向断面の奥側の幅と逆側の幅との間をつなぐ段付き形状における一対のコーナー部分の少なくとも一方が曲線形状に形成されていることを特徴とする密閉構造体。
【請求項10】
請求項7に記載の密閉構造体において、
前記2つの半構造体は、
互いの間の前記合わせ目が立体的な環形状を形成しており、
前記溝は、
前記合わせ目の環形状に対応した立体的な環形状をなし、かつ、前記パッキンの受け入れ方向でみた底面が周方向の全域に亘ってエッジを含まない形状を有することを特徴とする密閉構造体。
【請求項11】
請求項7から10のいずれかに記載の密閉構造体において、
前記パッキンは、
周方向の所定位置で周方向断面に沿う方向に突出して形成され、前記合わせ目に対する周方向の位置関係を指示するための位置決め突部を有しており、
前記2つの半構造体の一方は、
前記合わせ目の周方向の所定位置に形成され、前記所定位置で前記位置決め突部を受け入れ可能な位置決め受部を有していることを特徴とする密閉構造体。
【請求項12】
請求項7から10のいずれかに記載の密閉構造体において、
前記パッキンは、材料のショアA硬さが40度を超える70度以下の範囲内に設定されていることを特徴とする密閉構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばケース部品間の合わせ目を密封するパッキン及び密閉構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパッキン及び密閉構造体に関する先行技術として、例えば携帯端末の筐体として組み合わされる2つのケース部品間にシール部材を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この先行技術は、シール部材となる環状のゴム製パッキンを全周に亘って断面X字状に形成することで、組み付け時にパッキンをねじれ難くするとともに、パッキンを収める溝の幅に余裕を持たせることで、2つのケース部品間でパッキンを圧縮する際にX字形状断面を構成する4つの突起部が幅方向に拡がりながら弾性変形することを可能としている。これにより、パッキンの圧縮率をある程度に高めたとしても、ケース部品間をシールする空間内でのパッキンの充填率が低減されるため、寸法のばらつきに起因した亀裂の発生を抑えられると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-192665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行技術は、単純な円形断面のOリングに比較して、パッキンのねじれ剛性を高めている点である程度有用ではあるものの、ケース部品との間を4つの突起部が周方向で線状にシールしているだけであり、密閉性の面では、Oリングのような平たくつぶれて面状にシールする構造に劣る。また、溝の幅に余裕を持たせて圧縮時にパッキンを幅方向に大きく弾性変形させる構造としている分、組み付け時にはパッキンの姿勢を溝内で安定させることが難しい。このため、溝内で予め意図した姿勢から変位したままパッキンを圧縮してしまうと、突起部が想定した通りに弾性変形せずに、十分な密閉性を得ることができなくなる。
このように、パッキンを用いた密閉構造には依然として改良の余地があり、より有用なものが望まれている。
【0006】
そこで本発明は、より有用なパッキン及び密閉構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の解決手段を提供する。なお、以下の説明における括弧書き等はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、呼称は適宜、他の同義のものに置き換えることができる。
【0008】
〔パッキン(パッキング、封止体、シール部材)〕
本発明は、パッキンを提供する。本発明のパッキンは、例えば2つの半構造体の合わせ目を密封(封止、シール)する環状体である。2つの半構造体は、互いに組み合わされて一体の構造体(例えば、何らかの機器の筐体)となるものであり、このような構造体としては樹脂成形品や金属加工品等が好適に用いられる。パッキンは2つの半構造体(ケース半体)に挟まれて圧縮した状態で合わせ目に配置される。これにより、パッキンが合わせ目を好適に密封する。
【0009】
本発明のパッキンは、周方向の断面形状に特徴を有するものであり、周方向断面は、圧縮方向でみた一端側の幅が他端側の幅より大きい。さらに周方向断面は、圧縮方向でみた一端側及び他端側それぞれの幅内で圧縮方向に対向した凹み形状を有している。
【0010】
なお、パッキンの圧縮方向は、基本的には環状体としての厚み方向であり、環状体としての径方向からみた場合にパッキンが平たい形状である場合は、その圧縮方向も全周に亘って略一様である。ただし、例えばパッキンが環状体としての径方向からみた場合に波打ったような形状である場合、つまり、パッキンが立体的な環状体形状を有する場合は、周方向の位置によって厚みを規定する方向が異なるように、圧縮方向も異なることになる。
【0011】
いずれにしても、周方向断面が上記の形状を有するパッキンによれば、以下の有用性を得ることができる。
【0012】
組み合わせ時に2つの半構造体でパッキンを圧縮するため、組み合わせ状態では常時、2つの半構造体には負荷がかかっている。この点、パッキンの周方向断面における一端側及び他端側で対向する凹み形状は、いわゆる潰れ代となって圧縮方向にパッキンが容易に潰れて変形することを可能とし、パッキンの圧縮による変形分を凹み形状の縮小によって補償する。これにより、圧縮に対するパッキンからの反発力を低減し、組み合わせ状態で各半構造体にかかる負荷を軽減することができる。
【0013】
また、上記のようにパッキンの周方向断面の圧縮方向でみた一端側及び他端側に凹み形状を設けた態様においては、圧縮方向の高さ(パッキンの厚み)をある程度大きく確保する態様が合わせて好適に用いられる。例えば、圧縮方向の高さを一端側の幅よりも大きくすることができ、これにより、周方向断面において圧縮方向でみた一端側及び他端側にそれぞれ凹み形状(潰れ代)を設けた形状とすることが容易になる。
【0014】
また、パッキンの組み付けに際し、例えば一方の半構造体の合わせ目に溝を設けている場合、溝の周方向断面をパッキンの周方向断面における他端側の幅に対応させた(概ね合致した)溝幅を有する形状とすることで、幅が小さい方の他端側から圧縮方向に組み付けた(嵌め込む等した)際に、溝内での姿勢を確実に安定させることができる。
【0015】
また、周方向断面の圧縮方向でみて幅が大きい方の一端側まで溝内に組み付けることを容易とするには、例えば溝の周方向断面をパッキンの周方向断面における一端側の幅に対応させた溝幅を有する形状(いわゆる段付き形状)とすることができ、その場合はパッキンの組み付け方向でみた奥側の幅よりも逆側の幅を大きくすることで、一端側及び他端側それぞれの異なる幅に応じてパッキン全体を圧縮方向に組み付け可能となる。
【0016】
パッキンの圧縮方向の高さをある程度高くしても、上記のように周方向断面の圧縮方向でみた一端側及び他端側とで幅の大きさを異ならせることと、合わせ目に設けられる溝形状(例えば、段付き形状)を一端側及び他端側それぞれの幅に対応させることとの兼ね合いにより、組み合わせ時のパッキンの姿勢を安定させることが容易となる。
【0017】
本発明のパッキンは、以下のいくつかの好ましい態様を含む。
(1)パッキンの周方向断面は、幅方向で一対をなし、圧縮方向に一端側から他端側に延びる第1の両端辺と、幅方向で一対をなし、圧縮方向に他端側から一端側に延びる第1の両端辺よりも長い第2の両端辺と、幅方向で一対をなし、第1の両端辺と第2の両端辺との間を繋ぐ中間辺とを含むことができる。
【0018】
この場合、パッキンの周方向断面は、圧縮方向でみた一端側と他端側とで幅が異なった段付き形状となる。また、第1の両端辺より第2の両端辺が長いことから、合わせ目に溝を設けた場合は、組み付け方向でみた奥側の溝内に嵌まり込む部分の方が長くなり、それだけ溝内での姿勢を安定させることに寄与する。
【0019】
(2)上記(1)において、中間辺が圧縮方向に対して傾斜して形成されていてもよい。
この場合、パッキンの周方向断面は、一端側の凹み形状を加味すると、ちょうどY字形状のような形態となり、合わせ目に溝を設けている場合は、Y字の両腕に相当する部分が第1の両端辺にて溝の内壁面に密着することで、さらに密閉性を高めることができる。
【0020】
(3)上記(1)において、パッキンの周方向断面は、圧縮方向の他端側で凹み形状の幅方向両端と第2の両端辺との間をつなぐ一対のコーナー部分が曲線形状に形成されていてもよい。
この場合、合わせ目に例えば段付き形状の溝を設けている場合に、圧縮方向でみた他端側からパッキンを溝内に組み付ける際の引っかかりを防止することができ、作業性を向上することができる。
【0021】
(4)パッキンは、周方向の所定位置で周方向断面に沿う方向に突出して形成され、合わせ目に対する周方向の位置関係を指示するための位置決め部を有していてもよい。
このような態様であれば、合わせ目にパッキンを組み付ける際に周方向の組み付け位置を容易に見つけることができ、作業性をさらに向上することができる。また、例えば合わせ目側にも周方向で対応する位置に位置決め部を設けておくことで、より確実に両者を位置決めすることができる。
【0022】
(5)パッキンは、材料のショアA硬さが40度を超える70度以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
これにより、パッキンの環状体としての形状の保持性を高めることができ、組み付け時のねじれの発生を防止して作業性を向上するとともに、組み付け状態が製品毎にばらつくことを抑えることができる。
【0023】
〔密閉構造体(ケース、ケース体、筐体)〕
本発明は密閉構造体を提供する。本発明の密閉構造体は、上述した態様のパッキンを用いた構成とすることができる。したがって、密閉構造体は、上述した態様のパッキンの他に、互いに組み合わされて一体となった状態で、環状をなす合わせ目が互いの間に形成される2つの半構造体を備える。
【0024】
さらに密閉構造体は、2つの半構造体の一方の合わせ目に溝を備えるとともに、他方の合わせ目に突状部を備えることができる。このうち溝は、2つの半構造体の一方の合わせ目に沿って環状に形成されることでパッキンを圧縮方向に受け入れ可能であり、かつ、周方向断面がパッキンの受け入れ方向でみた奥側の幅よりも逆側の幅を大きくして形成されることでパッキンの一端側及び他端側それぞれの幅に合わせた段付き形状をなしている。また、突条部は、2つの半構造体の他方の合わせ目に沿って環状に形成され、一方との組み合わせ状態で溝内に嵌まり込みつつ、溝との間にパッキンを挟み込んで圧縮する。
【0025】
本発明の密閉構造体によれば、先に述べたパッキンによる有用性を用いて良好な密閉性を発揮することができる。また、突条部が溝内に嵌まり込んで全周に亘ってパッキンを圧縮することにより、パッキンの圧縮方向でみた一端側における凹み形状が潰れ代として機能しつつ、突条部と面接触で密着することにより、密閉性をさらに高めることができる。
【0026】
溝の周方向断面は、パッキンの周方向断面に対応させた形状とすることができる。すなわち、溝の周方向断面は、第1の溝空間と第2の溝空間とを含む段付き形状とすることができる。このうち第1の溝空間は、パッキンの周方向断面の一端側の幅に対応した溝幅を有し、かつ、パッキンの受け入れ方向に第1の両端辺の長さに対応した深さを有する。また、第2の溝空間は、第1の溝空間に連なってパッキンの周方向断面の他端側の幅に対応した溝幅を有し、かつ、パッキンの受け入れ方向に第2の両端辺の長さに対応した深さを有する。
【0027】
これにより、パッキンの組み付け時に溝内での姿勢を確実に安定させ、作業性を高めて製品毎のばらつきを抑え、密閉構造体としての密閉性を向上することができる。
【0028】
本発明の密閉構造体は、以下のいくつかの態様を含む。
(1)すなわち、パッキンの周方向断面の他端側で凹み形状の幅方向両端と第2の両端辺との間をつなぐ一対のコーナー部分、及び、溝の周方向断面の奥側の幅と逆側の幅との間をつなぐ段付き形状における一対のコーナー部分の少なくとも一方が曲線形状に形成されていてもよい。
【0029】
これにより、パッキンについて上述したものと同様に、圧縮方向でみた他端側からパッキンを溝内に組み付ける際の引っかかりを防止することができ、作業性を向上することができる。
【0030】
(2)2つの半構造体は、互いの間の合わせ目が立体的な環形状を形成しており、溝は、合わせ目の環形状に対応した立体的な環形状をなし、かつ、パッキンの受け入れ方向でみた底面が周方向の全域に亘ってエッジを含まない形状を有することができる。
これにより、合わせ目の形状が立体的であっても、溝の底面には全周に亘ってエッジ(コーナーエッジ、隅部、角部、隅角部)が含まれないことから、全周に亘ってパッキンとの密着性を保持し、密封性を向上させることができる。
【0031】
(3)パッキンは、周方向の所定位置で周方向断面に沿う方向に突出して形成され、合わせ目に対する周方向の位置関係を指示するための位置決め突部を有しており、2つの半構造体の一方は、合わせ目の周方向の所定位置に形成され、所定位置で位置決め突部を受け入れ可能な位置決め受部有していてもよい。
このような態様であれば、合わせ目にパッキンを組み付ける際に、位置決め突部と位置決め受部とで互いに周方向の組み付け位置を容易に見つけることができ、作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、より有用なパッキン及び密閉構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態のパッキン及び密閉構造体を用いた電子機器の例を示す斜視図である。
図2】騒音計100の分解斜視図である。
図3】上ケース体102、下ケース体104及びパッキン112を示す分解斜視図である。
図4】上ケース体102、下ケース体104及びパッキン112を示す分解斜視図である。
図5】上ケース体102及び下ケース体104の組み合わせ状態を示した図である。
図6】パッキン112の圧縮方向を示す三面図である。
図7】パッキン112の周方向断面の形状を表す図である。
図8】上下のケース体102,104の合わせ目の周方向断面を示す図である。
図9】本実施形態の組み付け過程におけるパッキン112の姿勢の安定性を比較例との対比により示す図である。
図10】上ケース体102の溝102s内にパッキン112が配置された状態を示す平面図である。
図11】他の実施形態の上下のケース体102,104の合わせ目の周方向断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、密閉構造体の一例として電子機器の筐体を挙げているが、本発明はこれに限られるものではない。
【0035】
図1は、一実施形態のパッキン及び密閉構造体を用いた電子機器の例を示す斜視図である。ここでは電子機器の一例として騒音計100を例に挙げているが、電子機器についてもこれに限られるものではない。なお、図1では騒音計100の詳細な各部構造の図示を適宜省略している。
【0036】
騒音計100は、音の大きさを測定する電子機器であり、例えば図1中(B),(C)に示されるような立姿勢で設置されることも多いが、本実施形態では便宜上、図1中(A)に示す平置き(いわゆる寝かせた状態)の姿勢を基準として、騒音計100の上下方向及び前後方向を規定するものとする。したがって、図1中(A)に示す騒音計100の平置き状態では、主に筐体を構成する2つのパーツが上ケース体102及び下ケース体104で表され、これら上ケース体102及び下ケース体104の組み合わせ方向が上下方向(Z軸方向)となる。なお、ここで規定する方向は便宜上のものであり、騒音計100の使用時の方向(姿勢、角度)を限定するものではない。
【0037】
騒音計100は、筐体に装着されるマイクロホン部106を備えている。図1中(A)の平置き状態では、筐体の長手方向を騒音計100の前後方向(Y軸方向)として、マイクロホン部106が筐体の前端に装着されており、後端にコネクタカバー108が装着されていることになる。また、図1中(A)の平置き状態では、筐体の長手方向と直交する幅方向を騒音計100の左右方向(X軸方向)として、筐体の右側面にカードスロットカバー110が装着されていることになる。
【0038】
その他、図1中(A)の平置き状態では、筐体(上ケース体102)の上面にタッチパネル部102aが設けられるとともに、筐体の上面でタッチパネル部102aの後側に各種の操作ボタン102bや表示部102cが設けられている。また、図1中(C)に示されているように、筐体(下ケース体104)の下面には電池カバー104aが設けられている。なお、騒音計100の内部構造については、図示とともに説明を省略する。
【0039】
〔全体構成〕
図2は、騒音計100の分解斜視図である。上記のように、騒音計100は上ケース体102と下ケース体104からなる筐体の他に、マイクロホン部106を備えている。図2には、コネクタカバー108が上ケース体102から分離された状態で示されており、このため筐体のコネクタ面102eが後方に露出している。なお、ここでは筐体内部に配置される各種の電子部品については適宜、図示を省略している。
【0040】
〔半構造体,密閉構造体〕
上ケース体102と下ケース体104とは、互いに組み合わされて一体の筐体(密閉構造体)となる2つの半構造体であり、これらの間には環状をなす合わせ目が形成されている。この合わせ目に一実施形態のパッキン112が配置されることで、上ケース体102と下ケース体104との組み合わせ状態で筐体が密閉されるものとなっている。このうち、上ケース体102には合わせ目に沿って環状に溝102sが形成されており、この溝102s内にパッキン112が嵌め込まれる。また、下ケース体104には合わせ目に沿って環状に突条部104sが形成されており、この突条部104sが溝102s内に嵌まり込みつつ、合わせ目に配置されたパッキン112を溝102sとの間で圧縮する。なお、上下のケース体102,104の間の合わせ目以外の上ケース体102と下ケース体104の箇所については、別途適宜の密閉構造により封止されているが、ここでは説明を省略する。
【0041】
筐体の組み付けには、例えば数本(この例では6本)のねじ114が用いられる。上ケース体102と下ケース体104とは、間にパッキン112を挟み込んだ状態で上下方向(Z軸方向)に組み合わされ、下方から下ケース体104を挿通したねじ114により締結される。このときの締結力により、パッキン112に対する圧縮力が作用する。筐体の前端部には、マイクロホン部106の取付部102dが設けられており、この取付部102dは上ケース体102と一体に成形されている。取付部102dには、例えば周囲にねじ山が形成されたコネクタ(図示していない)が設けられており、マイクロホン部106(プリアンプ部)は、例えばリングねじ(符号は図示せず)を用いてコネクタに接続されて筐体に取り付けられる。なお、このような取付の態様は一例であり、これに限られるものではない。
【0042】
図3及び図4は、上ケース体102、下ケース体104及びパッキン112を示す分解斜視図である。このうち図3が上ケース体102を上側に配置して見た斜視図であり、図3中(A)と(B)とでは、上下のケース体102,104の前後の向き(Y軸方向)が反転している。また、図3図4とでは、上下のケース体102,104の上下方向が反転しており、図4は下ケース体104の方を上向きにして見た場合の斜視図となっている。同様に、図4中(A)と(B)とでは、上下のケース体102,104の前後の向き(Y軸方向)が反転している。なお、以下では説明に関係しない部位の符号や、他の構成部品については適宜図示を省略している。
【0043】
〔立体的形状〕
上記のように、上ケース体102と下ケース体104との間には、環状をなす合わせ目が形成されており、この合わせ目にパッキン112が配置されるものとなっている。ここで、上下のケース体102,104の合わせ目の形状に着目すると、この合わせ目が立体的な環形状であることが分かる。すなわち、この合わせ目における環形状は、前後方向及び左右方向(X-Y平面)でみた場合に平らな形状ではなく、全体として上下方向(Z軸方向)に湾曲ないし波打ったような立体的な形状をなしている。
【0044】
したがって、このような合わせ目に沿って形成された上ケース体102の溝102sや下ケース体104の突条部104sもまた、同様の立体的な環形状をなしている。そして、このような合わせ目に配置されるパッキン112についても同様に、立体的な環形状をなしていることになる。なお、溝102sやパッキン112、突条部104sの周方向断面形状については、さらに別の図面を用いて後述する。
【0045】
〔エッジを含まない底面形状〕
ここで、図4に示されているように、上ケース体102の合わせ目に沿って形成されている溝102sについては、その全周に亘って溝102sの底面がエッジを含まない形状に成形されている。例えば、上ケース体102の前端部では、合わせ目がマイクロホン部106の取付部102dを取り囲むようにして急峻に立ち上がった湾曲形状であり、また、後端のコネクタ面102eと両側面とが連なる連続部においても、合わせ目が立体的に湾曲した形状であるが、これらの部位においても、溝102sの底面にはエッジ(コーナーエッジ、隅部、角部)となる部位を含んでおらず、全周に亘って滑らかに連なる面形状に成形されている。これにより、パッキン112との密着性を全周に亘って高め、筐体の密封性を高めることができる。また、下ケース体104の突条部104sの形状についても全周に亘ってエッジを含まないことは同様である。
【0046】
〔圧縮状態〕
図5は、上ケース体102及び下ケース体104の組み合わせ状態を示した図である。このうち、図5中(A)が全体斜視図であり、図5中(B),(C)が前後方向に沿う合わせ目部分の垂直断面図(図5(A)中のBC-BC断面図)であり、図5中(D)が左右方向に沿う合わせ目部分の垂直断面図(図5(A)中のD-D断面図)である。なお、図5中(B)と(C),(D)とでは、図示の拡大倍率が異なっている。
【0047】
図5中(A):ここでは、筐体の上下方向を反転させて示している。このため、図中上側に下ケース体104が位置し、下側に上ケース体102が位置している(これ以降も同様)。なお、溝102sや突条部104sの周方向断面形状、及びパッキン112の周方向断面形状についてはさらに別の図面を参照しつつ後述する。
【0048】
図5中(B):筐体の前端部における合わせ目部分である。ここでは、上ケース体102の溝102s内にパッキン112が嵌まり込み、その反対側(ここでは上方)から下ケース体104の突条部104sが溝102s内に嵌まり込みつつ、パッキン112を溝102sとの間で上下方向に圧縮している。なお、パッキン112の圧縮状態についてはさらに別の図面を用いて後述するものとし、ここでは概略を説明する。
【0049】
図5中(C):筐体の後端部における合わせ目部分である。ここでも同様に、上ケース体102の溝102s内にパッキン112が嵌まり込み、その上方から下ケース体104の突条部104sが溝102s内に嵌まり込みつつ、パッキン112を溝102sとの間で上下方向に圧縮している。
【0050】
図5中(D):筐体の右側端部における合わせ目部分である。ここでもやはり、上ケース体102の溝102s内にパッキン112が嵌まり込み、その上方から下ケース体104の突条部104sが溝102s内に嵌まり込みつつ、パッキン112を溝102sとの間で上下方向に圧縮している。
【0051】
図5中(B)~(D)では、それぞれの断面をとった位置との関係から、パッキン112の圧縮方向が上下のケース体102,104の組み合わせ方向である上下方向(Z軸方向)と概ね一致していた。ただし、上記のように本実施形態では、合わせ目全体が立体的な環形状をなしているため、周方向の全域にわたってパッキン112の圧縮方向が一様ではなく、周方向の位置によって圧縮方向は異なったものとなる。以下、この点について説明する。
【0052】
〔圧縮方向〕
図6は、パッキン112の圧縮方向を示す三面図である。このうち図6中(A)が前方を正面とした場合の正面図であり、図6中(B)がその背面図であり、図6中(C)がその左側面図である。なお、図6では下ケース体104が上ケース体102から分離された状態で示されている。
【0053】
図6中(A):筐体の前端部及びその左右両端部までの合わせ目部分である。ここでは、マイクロホン部106の取付部102dを迂回するようにして合わせ目が山なりの形状をなしており、その左右両側では、それぞれ合わせ目が逆向きに曲率を大きくしたラウンド形状の部分を経て、左右両側の後方(Y軸方向)に向けて回り込みながらなだらかに傾斜している。このような立体的形状の合わせ目においては、合わせ目の位置によってパッキン112の圧縮方向が異なる。総じて基本的には、図中に白抜き矢印で示すように、合わせ目の法線方向にパッキン112の圧縮方向が略一致することになる。
【0054】
図6中(B):筐体の後端部及びその左右両端部までの合わせ目部分である。ここでは、筐体後端のコネクタ面102eを迂回するようにして合わせ目が大きく山なりの形状をなしており、その左右両側では、やや急峻に曲率を大きくしたラウンド形状の部分を経て、左右両側へ大きく傾斜している。このような立体的形状の合わせ目においても同様に、合わせ目の位置によってパッキン112の圧縮方向が異なり、総じて基本的には、図中に白抜き矢印で示すように、合わせ目の法線方向にパッキン112の圧縮方向が略一致することになる。
【0055】
図6中(C):筐体の左側面及びその前後端部までの合わせ目部分である。ここでは、前後方向に合わせ目が全体的に大きく弓なりの形状をなしている。このような立体的形状の合わせ目においても同様に、合わせ目の位置によってパッキン112の圧縮方向が異なり、やはり総じて基本的には、図中に白抜き矢印で示すように、合わせ目の法線方向にパッキン112の圧縮方向が略一致することになる。
【0056】
また、このような圧縮方向は、全周に亘って溝102sの底面に対する垂直方向とも略一致しており、上ケース体102と下ケース体104の組み合わせ状態では、突条部104sからの押圧力が溝102sの底面に対して垂直な方向の分力で作用し、パッキン112を圧縮することになる。
【0057】
〔周方向断面〕
図7は、パッキン112の周方向断面の形状を表す図である。ここでは一例として、断面の位置を筐体の右側端部における合わせ目部分(図5中(D))とすることで、パッキン112の圧縮方向が上下方向(Z軸方向)と一致し、これと直交する幅方向が筐体の左右方向(X軸方向)と一致し、また、断面と垂直な方向が筐体の前後方向(Y軸方向)と一致する場合を示しているが、上記のようにパッキン112の圧縮方向は周方向の位置によって異なるし、幅方向が常に筐体の左右方向であるとは限らないし、断面と垂直な方向が常に筐体の前後方向であるとは限らない。以下、周方向断面の形状について説明する。また、以下では便宜上、図中の上方向を周方向断面の上方向とし、図中の下方向を周方向断面の下方向としているが、方向の規定はこれに限られるものではない。
【0058】
〔全体形状〕
図7に示す方向でみた場合、パッキン112の周方向断面は概ねY字形状をなしている。ここでは一例として、Y字形状の両腕に対応する部分が短く細めで、中央の部分が長く太めになった変形Y字形状断面となっているが、断面形状はこれに限られるものではない。
【0059】
〔高さ,幅〕
パッキン112の圧縮方向(Z軸方向)を上下方向として周方向断面の高さHPを規定すると、これと直交する方向(X軸方向)が幅方向となる。そして、パッキン112の周方向断面は、上端側の幅WP4が下端側の幅WP2より大きく(例えば0.4mm程度大きく)形成されており、大きい方の幅WP4よりも高さHPが大きく(例えば0.2mm程度大きく)形成されている。
【0060】
〔凹み形状〕
また、パッキン112の周方向断面には、上端側及び下端側それぞれの幅WP4,WP2内で圧縮方向に対向した凹み部112a,112bが形成されている。このうち上端側の凹み部112aは、周方向断面の上端縁を下方向に凹ませた形状をなしており、逆に下端側の凹み部112bは、周方向断面の下端縁を上方向に凹ませた形状をなしている。各凹み部112a,112bは円弧形状に形成されており、ここでは上端側の凹み部112aの曲率半径が下端側の凹み部112bの曲率半径よりも大きく(例えば0.2mm程度大きく)形成されている。また、上端側の凹み部112aの幅方向両端部は、その両側の上端縁と逆向き円弧形状をなして滑らかに連なっている。なお、下端側の凹み部112bは、その幅方向両端部がエッジを介して下端縁と連なっているが、下端側の凹み部112bについても上端側の凹み部112aと同様に、エッジを介することなく滑らかに下端縁と連なる形状としてもよい。
【0061】
〔両端辺〕
周方向断面の両側縁には、互いに長さと幅方向の位置が異なる2つの両端辺112c,112dが形成されている。これら両端辺112c,112dは、周方向断面の幅方向で一対をなしており、このうち上端側の両端辺112cが上端側(上端縁)から下端側に延び、下端側の両端辺112dは下端側から上端側に延びている。
【0062】
〔中間辺〕
また、周方向断面の両側縁には、2つの両端辺112c,112dの間を繋ぐ中間辺112eが形成されている。中間辺112eもまた、周方向断面の幅方向で一対をなしており、ここでは例として、中間辺112eが圧縮方向に対して傾斜して形成されている。なお、中間辺112eの傾斜する角度は適宜に設定可能であり、特に中間辺112eが圧縮方向に対して垂直に形成されている態様であってもよい。
【0063】
〔コーナー部分〕
さらに周方向断面には、下端側で凹み部112bの幅方向両端と両端辺112dとの間を繋ぐ一対のコーナー部分112fが形成されている。これらコーナー部分112fは、ある程度の曲率半径(例えば0.15mm程度)を有した曲線形状に形成されているが、これに限られるものではない。
【0064】
上端側の両端辺112cは、上端縁の両側角部から長さL1を有しており、下端側の両端辺112dは、コーナー部分112fを含まない長さL2を有している。ここでは例として、下端側の両端辺112dの長さL2の方が上端側の両端辺112cの長さL1よりも大きく(例えば0.45mm程度大きく)形成されているが、これに限られるものではない。また、中間辺112eは圧縮方向に対して傾斜している分、圧縮方向でみた高さL3よりも実際の長さは大きくなっている。
【0065】
〔ショアA硬さ〕
本実施形態では、パッキン112のゴム材料がショアA硬さで40度を超える70度以下の範囲内の硬度に設定されたものを用いている。好適には、一例として材料のショアA硬さを60度としているが、50度であってもよい。これにより、パッキン112の組み付け時に形状の保持性を高めることができ、作業者等がパッキン112を取り扱う際にパッキン112の形状(立体的な環形状)を安定させ、不用意に変形してしまうことを防止できる。
【0066】
〔数値範囲の意義〕
また、材料のショアA硬さ(硬度)の数値範囲を上記に設定している根拠は、40度のものではパッキン112の形状の保持性があまり良好ではなかったことと、逆に70度を超えるようなものでは形状の保持性は高いものの、圧縮状態での反発力が高くなりすぎて上下のケース体102,104に不所望な負荷がかかってしまったこと、等の実験観察結果に基づいている。このため本実施形態では、パッキン112の材料のショアA硬さを、40度を超えて70度以下の範囲内に設定することとした。ただし、パッキン112の材料の性質がこの例に限られるものではない。
【0067】
〔溝断面形状,突条部断面形状〕
図8は、上下のケース体102,104の合わせ目の周方向断面を示す図である。ここでは、パッキン112、溝102s及び突条部104sを含む合わせ目が周方向の断面形状で示されており、このうち図8中(A)が分解状態を示し、図8中(B)が組み合わせ状態を示している。ここでも便宜上、図中の上方向を周方向断面の上方向としているが、方向の規定はこれに限られるものではない。また、断面の位置は図5中(D)と同じであるが、断面の位置はこれに限られるものではない。なお、以下で言及するパッキン112の各部寸法(幅WP2,WP4、長さL1,L2、高さHP,L3等)については図7を適宜参照するものとし、煩雑化を防止するため図8には図示していない。
【0068】
〔段付き形状〕
図8中(A):溝102sの周方向断面は、パッキン112の受け入れ方向(圧縮方向)で段付きの形状を有している。この例では、パッキン112の受け入れ方向でみた奥側(下側)の幅WG2よりも、その逆側(上側)の幅WG1が大きく形成されている。このうち奥側の幅WG2は、パッキン112の下端側の幅WP2に対応させてこれよりわずかに大きく(例えば0.2mm程度大きく)設定されており、また逆側の幅WG1は、パッキン112の上端側の幅WP1に対応させてこれと略同じに設定されている。なお、幅WG1,2の設定はこれらに限られるものではない。
【0069】
〔溝空間〕
周方向断面が段付き形状をなす溝102s内には、2つの溝空間102sa,102sbがパッキン112の受け入れ方向に並んで上下に形成されている。このうち、上側に位置する溝空間102saは、パッキン112の上端側の両端辺112cの長さL1に対応して、これより大きい深さDG1を有している。また、下側に位置する溝空間102sbは、パッキン112の下端側の両端辺112dの長さL2に対応して、これと略同じか長さL2よりも大きい深さDG2を有している。
【0070】
そして、下側の溝空間102sbの深さDG2は、圧縮されていない状態のパッキン112の周方向断面の下端縁から中間辺112eまでの高さ(両端辺112dの長さL2にコーナー部分112fの高さを加えた分)よりも大きく形成されている。一方、上側の溝空間102saの深さDG1については、パッキン112の周方向断面の上端縁から下端側の両端辺112dまでの高さ(両端辺112cの長さL1に中間辺112eの高さL3)よりも大きく形成されている。これにより、下側の溝空間102sbには、パッキン112の下側部分(Y字形状の脚部分)全体を嵌まり込ませるように受け入れ可能であり、上側の溝空間102saには、パッキン112の上側部分(Y字形状の両腕部分)全体を嵌まり込ませるように受け入れ可能である。また、パッキン112のコーナー部分112fの形状に対応させて、周方向でみた溝102sの底面の両端部は、一方の隅部102kがラウンド形状に形成されており、他方の隅部102hがラウンド形状を含む面取り形状に形成されていることで、溝102sの底面と両壁面とが滑らかに連なっている。なお、溝102s全体の深さ(深さDG1と深さDG2を足し合わせたもの)は、パッキン112の圧縮方向でみた高さHPよりも大きく形成されている。
【0071】
〔ラウンド形状〕
ここで、周方向断面においてパッキン112の下端縁には、上記のように一対のコーナー部分112fが形成されている。このため、周方向断面が段付き形状をなす溝102sにパッキン112を嵌め込む際、溝102sの段付き形状におけるコーナー部分102gにパッキン112の下端縁が引っかかることなく、コーナー部分112fのラウンドした曲面形状に沿ってスムーズにパッキン112を溝102s内に嵌め込むことができる。なお、溝102sのコーナー部分102gをラウンド形状(面取り形状)としてもよく、パッキン112及び溝102sの両方にそれぞれラウンド形状のコーナー部分112f,102gが形成されていてもよい。
【0072】
〔圧縮状態〕
図8中(B):下ケース体104の突条部104sについては、溝102s(上側の溝空間102sa)内に嵌まり込みつつ、パッキン112の上端面に面接触できるだけの幅を有している(寸法は図示せず)。上ケース体102と下ケース体104の組み合わせ状態では、上記のように合わせ目でパッキン112が圧縮された状態で配置されることで合わせ目を密封している。このとき、図中の上下方向でみたパッキン112の下端に形成された凹み部112bが潰れ代となり、溝102s内で圧縮方向へのパッキン112の変形分を補償する。また、図中の上下方向でみたパッキン112の上端に形成された凹み部112aについても同様に潰れ代となり、突条部104sからの押圧に伴う圧縮方向へのパッキン112の変形分を補償する。これにより、組み合わせ状態で上下のケース体102,104にかかる負荷を軽減し、長期間に亘って上下のケース体102,104に歪み等の変形が生じることを防止することができる。
【0073】
〔合わせ目の密封〕
また、圧縮状態では、パッキン112の上端部分が突条部104sに沿って弾性変形することで、パッキン112の上面が全周に亘って突条部104sと広範囲に面接触して強固に密着する。また、突条部104sによる押圧に伴い、パッキン112の上端部分が幅方向に変形(横歪み)することで、周方向でみた溝102sの両壁面にパッキン112の両側面(両端辺112c部分の面)が全周に亘って強固に密着する。さらに、パッキン112の下端部分では、圧縮された状態で一対のコーナー部分112fに対応する両側縁の外面が全周に亘って溝102sの内面(隅部102h,102k部分の面)と強固に密着する。これらの面接触での密着により、合わせ目が長期間に亘って確実に密封される。これにより、騒音計100の筐体を防水性能が極めて高い密閉構造体とすることができる。なお、密閉構造体は防水(液密)性能の他に気密性能や防塵性能を有していてもよく、合わせ目にパッキン112、溝102s及び突条部104sを用いることで各種性能を含めた密封性を向上させることができる。
【0074】
〔姿勢の安定性〕
図9は、本実施形態の組み付け過程におけるパッキン112の姿勢の安定性を比較例との対比により示す図である。以下、この点について説明する。
【0075】
〔本実施形態〕
図9中(A):本実施形態では、パッキン112の周方向断面の形状に対応させて、溝102sの周方向断面を段付き形状としているため、組み付けの過程でパッキン112の姿勢を確実に保持しておくことができる。これにより、本来の圧縮方向に正しく合致させてパッキン112を合わせ目に配置することができ、所望の密封性能を発揮させることができる。
【0076】
〔比較例〕
図9中(B):比較例として挙げたものは、溝202sの周方向断面が段付き形状ではなく、一様な幅を有した矩形状となっている。この場合、パッキン112の周方向断面を本実施形態の形状とすると、組み付けの過程で本来の圧縮方向に対して傾いた姿勢で溝202s内に嵌まり込みやすい。このような姿勢では、パッキン112の両側面(両端辺112cに対応した側面)が正しく溝202sの内壁面と接触することかできないし、下端側の一側縁部(一方のコーナー部分112f)が溝202sの底面から離れてしまい、やはり正しく面接触することができない。したがって、このまま本実施形態と同様に圧縮状態としても、パッキン112を用いた密封性能を十分に発揮することができなくなる。
【0077】
これに対し、本実施形態の場合は組み付け過程でもパッキン112の姿勢を安定させることができるため、完成状態での密封性能を損なうことがない点で極めて優位である。
【0078】
〔位置決め構造〕
図10は、上ケース体102の溝102s内にパッキン112が配置された状態を示す平面図である。このうち図10中(A)が全体図であり、図10中(B)が部分拡大図(図10(A)の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図)である。
【0079】
図10中(A):上記のようにパッキン112は、全体として立体的な環形状をなしているが、特に左右方向(X軸方向)よりも前後方向(Y軸方向)に長く延びた環形状である。このような環形状のパッキン112を環形状の溝102s内に組み付ける際、その周方向の位置決めを好適に実現するため、本実施形態では位置決め構造が用いられている。具体的には、前後方向の前より約1/4の位置で、パッキン112には位置決め突部112rが形成されており、このような位置決め突部112rは、例えばパッキン112の周方向で左右対称となる2箇所に、径方向の内側(周方向断面に沿う方向)に突出するようにして形成されている。なお、位置決め突部112rや位置決め受部102rを形成する位置は、この例に限られるものではない。
【0080】
図10中(B):パッキン112をグレーに着色して示す。パッキン112の位置決め突部112rに対応する溝102sの位置には、2箇所に位置決め受部102rが形成されている。この例では、位置決め突部112rを半円形状の突片とし、位置決め受部102rをこれに対応させた半円形状の凹みとしているが、これらの形状に限られるものではない。
【0081】
これにより、組み付け過程で上ケース体102(溝102s)に対するパッキン112の周方向の位置決めを用意かつ確実にすることができ、作業性の向上や製品毎のばらつきを抑えることができる。
【0082】
〔他の実施形態〕
図11は、他の実施形態の上下のケース体102,104の合わせ目の周方向断面を示す図である。なお、図11中(A),(B)の断面はそれぞれ図8中(A),(B)の断面に対応するものとする。
【0083】
図11中(A):ここでは、例えば突条部104sの圧縮方向でみた先端に、さらに突部104saを設けている。このような突部104saは、合わせ目の全周に亘って形成されており、突条部104sの先端面から一段さらに突出した細い筋状の部分となっている。なお、上ケース体102については先の一実施形態と同様であるが、異なる形態としてもよい。また、突部104saの断面形状や大きさは図示のものに限られない。
【0084】
図11中(B):この場合、先の一実施形態と同様に、突条部104sが溝102s内に嵌まり込みつつ、パッキン112の上端部分が突条部104sに沿って弾性変形することで、パッキン112の上面が全周に亘って突条部104sと広範囲に面接触して強固に密着する。加えて他の実施形態では、さらに突部104saがパッキン112に対して圧縮方向に食い込み、図中の太点線矢印で示すように押し圧を強めることができる。
【0085】
このような他の実施形態は、例えば筐体の大きさを一実施形態の倍程度に設定した場合に有用である。すなわち、筐体が大きくなればなるほど、合わせ目の密閉性(防水性等)をより確実にする必要があるため、このような突部104saを全周に亘って追加することでパッキン112に対する押圧力をさらに強めることができる。
【0086】
上述した各種の実施形態によれば、以下の有用性が得られる。
(1)材料のショアA硬さ(硬度)を好適な数値範囲に設定することで、パッキン112の形状の保持性を向上することができる。
(2)また、硬度が適度に高いことでパッキン112のねじれが発生しにくいため、組み付け時の作業性を向上し、作業者によるばらつきの発生を抑えることができる。
【0087】
(3)硬度を適度に高くしても、パッキン112の圧縮方向でみた両端に凹み形状(周方向断面の凹み部112a,112bに対応する部分)を確保することで、これらが圧縮状態ではパッキン112の潰れ代となり、パッキン112からの反発力を抑えて上下のケース体102,104にかかる負荷を軽減することができる。
【0088】
(4)周方向断面でみたパッキン112の高さHP(厚み)を長い方の幅WP4に匹敵する程度に確保し、全体を肉厚とすることで上記(3)の潰れ代を確保することが可能となる。
【0089】
(5)上記(4)のようにパッキン112の高さHPを確保している分、上ケース体102の合わせ目への嵌め込み時に本来の組み付け姿勢から変位してしまうことを考慮して、溝102sを段付き形状とすることにより、パッキン112が本来の組み付け姿勢で嵌め込まれることを容易にすることができる。これにより、組み付け時の作業性がよくなり、製品毎のばらつきを抑えることができる。
【0090】
(6)パッキン112の嵌め込み側の幅方向両端部をラウンド形状(コーナー部分112fによるR形状)とすることで、組み付け時に溝102sに引っかかることなく容易に嵌め込むことが可能になる。これにより、作業性の向上がさらに図られる。
【0091】
(7)パッキン112と上ケース体102の溝102sにそれぞれ位置決め突部112rと位置決め受部102rを設けることで、組み付け時にパッキン112の位置合わせを容易かつ確実にすることができ、さらに作業性の向上を図り、製品毎のばらつきを抑えることができる。
【0092】
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。一実施形態では、騒音計100等の電子機器の筐体を密閉構造体としているが、電子機器以外の筐体に適用してもよいし、何らかの筐体となる構造体ではなく、内部に流体や粉体等を収容する容器に密閉構造体を適用してもよい。
【0093】
また、半構造体は3つ以上でもよく、この場合、互いの組み合わせ状態で合わせ目が形成される2つの半構造体同士の間に本実施形態のパッキン112や溝102s、突条部104s等を適用することができる。
【0094】
一実施形態では合わせ目やパッキン112を立体的な環形状としているが、同様の周方向断面形状を有した平面的な環形状としてもよい。
上ケース体102や下ケース体104の形態についても適宜に変形が可能であり、それらの間に形成される合わせ目の環形状に応じてパッキン112を適宜に変形することができる。
【0095】
その他、図示とともに挙げた各部の形状や寸法はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜に変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
100 騒音計
102 上ケース体
102r 位置決め受部
102s 溝
104 下ケース体
104s 突条部
112 パッキン
112a,112b 凹み部
112c,112d 両端辺
112e 中間辺
112f コーナー部分
112r 位置決め突部(位置決め部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11