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特開2024-172182半導体装置、電力変換装置、半導体装置の製造装置、半導体装置の製造方法、および、電力変換装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172182
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置、半導体装置の製造装置、半導体装置の製造方法、および、電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/43 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L29/46
H01L21/28 A
H01L29/44 S
H01L29/48
H01L29/48 D
H01L29/86 301D
H01L29/86 301P
H01L29/86 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089735
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】米澤 雅人
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB06
4M104BB14
4M104CC03
4M104DD22
4M104DD23
4M104DD26
4M104DD34
4M104DD37
4M104DD53
4M104DD62
4M104DD64
4M104DD65
4M104DD78
4M104EE02
4M104EE08
4M104EE09
4M104EE17
4M104EE18
4M104FF13
4M104GG03
4M104GG08
4M104GG09
4M104GG15
4M104GG18
4M104HH08
4M104HH20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金めっき膜にピンホールが形成されることを抑制する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、第1の導電型(n型)の半導体層(エピタキシャル基板207)と、半導体層の一部の上面に接触して設けられる接合層(ショットキー電極層204)と、接合層の上面に設けられる第1の電極層(表面電極層209)と、半導体層の一部の上面に接触して設けられる第2の電極層(アルミニウムアイランド1301)と、第1の電極層の上面に設けられるニッケル電極203と、ニッケル電極に形成される金めっき膜202と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の半導体層と、
前記半導体層の一部の上面に接触して設けられる接合層と、
前記接合層の上面に設けられる第1の電極層と、
前記半導体層の一部の前記上面に接触して設けられる第2の電極層と、
前記第1の電極層の上面に設けられるニッケル電極と、
前記ニッケル電極に形成される金めっき膜とを備える、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であり、
前記接合層が、第2の導電型の不純物層またはショットキー電極層である、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置であり、
前記第1の電極層および前記第2の電極層が、アルミニウムで形成される、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を制御するための制御信号を出力する制御回路とを備える、
電力変換装置。
【請求項5】
複数のアルミニウム電極に、光を照射しながらジンケート処理を行うためのジンケート処理槽と、
前記光を照射するための光源と、
前記ジンケート処理槽内において、前記アルミニウム電極に照射される前記光を拡散させるための光拡散部と、
前記ジンケート処理が行われた後に前記アルミニウム電極に形成された亜鉛膜を置換してニッケルめっきを行うためのニッケルめっき槽と、
ニッケルめっきされた前記アルミニウム電極に金めっきを行うための金めっき槽とを備える、
半導体装置の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造装置であり、
複数の前記アルミニウム電極が、
半導体層の一部の上面に接合層を介して設けられる第1の電極層と、
前記半導体層の一部の前記上面に接触して設けられる第2の電極層とを含み、
前記ニッケルめっきおよび前記金めっきが、前記第1の電極層に行われる、
半導体装置の製造装置。
【請求項7】
第1の導電型の半導体層の一部の上面に接触するように、少なくとも1つの接合層を設け、
前記接合層の上面に少なくとも1つの第1の電極層を設け、
前記半導体層の一部の前記上面に接触するように、少なくとも1つの第2の電極層を設け、
前記第2の電極層が設けられた後で、前記第1の電極層の上面にニッケル電極を設け、
前記ニッケル電極に金めっき膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法であり、
前記第1の電極層および前記第2の電極層が設けられた後で、前記半導体層に光を照射しつつジンケート処理を行って前記第1の電極層の前記上面に亜鉛膜を形成し、
前記ニッケル電極が、前記亜鉛膜を置換しつつ前記第1の電極層の前記上面に形成される、
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法であり、
前記金めっき膜が、前記第2の電極層の溶解に起因する電子の移動で析出する金によって、前記ニッケル電極に形成される、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法であり、
前記第1の電極層および前記第2の電極層が、アルミニウムで形成される、
半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法であり、
前記接合層が、第2の導電型の不純物層またはショットキー電極層である、
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法であり、
半導体ウエハに、前記半導体層が設けられ、
前記接合層を複数設け、
前記接合層を含む素子構造が、前記半導体ウエハから複数切り出され、
それぞれの前記素子構造に、前記第2の電極層の少なくとも一部が含まれる、
半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項7または8に記載の製造方法で製造される半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路を設け、
前記半導体装置を制御するための制御信号を出力する制御回路を設ける、
電力変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、半導体技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高耐圧化、低損失化、高温環境下での使用などを可能とするため、シリコン(Si)半導体装置に比べて、耐電圧、耐熱性に優れる、炭化珪素(SiC)半導体基板を用いた半導体装置として、金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor、すなわち、MOSFET)またはショットキーバリアダイオード(Schottky barrier diode、すなわち、SBD)などの電力用半導体装置への応用がなされている。
【0003】
このような半導体装置を回路基板などに実装する場合、基板上に裏面側をはんだ付け、表面側をアルミワイヤーなどでワイヤーボンディングすることで、電気的な接続が行われる。
【0004】
近年では、半導体装置の通電性能が向上したため、両面をはんだ付けすることで、半導体装置を組み込んだ半導体モジュールの通電性能または放熱性能を向上させる構造に変化しつつある。そのため、半導体装置の表面側に形成する電極層に、はんだ付けのために数μm(ミクロン)レベルのニッケル(Ni)膜が必要とされている。
【0005】
当該ニッケル(Ni)膜を蒸着またはスパッタなどの真空成膜方式で成膜する場合、成膜速度が遅く、生産性または製造コストの面で問題が残る。そのため、高速成膜可能な湿式成膜法である、めっきが注目されている。
【0006】
たとえば、炭化珪素(SiC)ウエハを用いる電力用半導体装置では、電極形成の最終工程においてニッケル(Ni)めっきの後に金(Au)めっきが実施されている。たとえば、特許第4490542号(特許文献1)には、ニッケル(Ni)めっき層が金(Au)めっき層で被覆された端子が記載されている。
【0007】
また、たとえば、特許第6192181号(特許文献2)には、金(Au)めっき層のピンホールを含む表面全体に、有機または無機材料でできた封孔処理剤を塗布している半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4490542号公報
【特許文献2】特許第6192181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ニッケル(Ni)めっき後に無電解金めっきが実施された電極では、無電解金めっきが実施された時に下地のニッケル(Ni)めっき層からニッケル(Ni)が溶出することによって、金(Au)めっき層(無電解金めっき膜)にピンホールが形成される。
【0010】
金(Au)めっき層に形成されたピンホールに金(Au)めっきが実施された時の水分が残っていると、ピンホールを通ってニッケル(Ni)およびニッケル(Ni)酸化物が金(Au)めっき層の上に溶出する。これによって、ニッケル(Ni)めっき層(ニッケル電極)が腐食する。
【0011】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、半導体装置において、金めっき膜にピンホールが形成されることを抑制するための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願明細書に開示される技術の第1の態様である半導体装置は、第1の導電型の半導体層と、前記半導体層の一部の上面に接触して設けられる接合層と、前記接合層の上面に設けられる第1の電極層と、前記半導体層の一部の前記上面に接触して設けられる第2の電極層と、前記第1の電極層の上面に設けられるニッケル電極と、前記ニッケル電極に形成される金めっき膜とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1の態様によれば、接合層に接触する電極層にのみニッケル電極を形成することができる。そして、ニッケル電極に金めっき膜が形成される際には、ニッケル電極からのニッケルイオンの溶出が防がれるため、金めっき膜にピンホールが発生することを抑制することができる。
【0014】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に関する半導体装置の構成の例を概略的に示す平面図である。
図2図1のI-I’線に沿う断面図である。
図3】実施の形態に関する半導体装置の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図4】エピタキシャルウエハと半導体装置との関係の例を示す図である。
図5】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図6】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図7】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図8】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図9】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図10】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図11】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図12】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図13】本実施の形態で示された半導体装置の製造方法、特にめっき方法の例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図15】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図16】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図17】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図18】実施の形態に関する半導体装置の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
図19】実施の形態に関する半導体装置の、通電領域と非通電領域とにおける電極構造の例を概略的に示す平面図である。
図20】実施の形態に関する半導体装置の、通電領域と非通電領域とにおける電極構造の例を概略的に示す平面図である。
図21】実施の形態に関するアルミニウム電極の面積の例を示す図である。
図22】金めっき部およびアルミニウムアイランド部の大きさの関係を示す図である。
図23】1素子内における、通電領域と非通電領域、切り代、アルミニウムアイランドの位置関係の例を示す図である。
図24】ダイシング後のチップの例を示す図である。
図25】実施の形態に関する半導体装置の、通電領域と非通電領域とにおける電極構造の例を概略的に示す平面図である。
図26】実施の形態に関する半導体装置の製造装置、特にめっき装置の例を概略的に示す図である。
図27】実施の形態に関する半導体装置の製造装置、特にめっき装置の例を概略的に示す図である。
図28】めっき処理槽内における、平面視における半導体ウエハと導光板との配置関係の例を示す図である。
図29】導光板の構造の例を示す図である。
図30】実施の形態に関する半導体モジュールの構成の例を示す断面図である。
図31】実施の形態に関する電力変換装置を適用した電力変換システムの構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるために、それらのすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0017】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化などが図面においてなされる。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0018】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0019】
また、本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0020】
また、本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態の内容はこれらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0021】
また、本願明細書に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態が実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0022】
また、本願明細書に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「Aの上面に設けられるB」と記載される場合、AとBとの間に別の構成要素「C」が介在することを妨げるものではない。
【0023】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する半導体装置、半導体装置の製造装置、および、半導体装置の製造方法について説明する。
【0024】
<半導体装置の構成について>
図1および図2を参照して、本実施の形態に関する半導体装置10の構成について説明する。図1は、本実施の形態に関する半導体装置10の構成の例を概略的に示す平面図である。図2は、図1のI-I’線に沿う断面図である。
【0025】
本実施の形態では、半導体装置10は、たとえば、電力用半導体装置である。半導体装置10は、たとえば、炭化珪素(SiC)基板を用いた炭化珪素半導体装置である。半導体装置10は、たとえば、ショットキーバリアダイオード(SBD)である。
【0026】
図1では、通電領域101と、平面視で通電領域101の周囲を囲む領域である非通電領域102とが示されている。通電領域101は無電解金めっき膜が形成される領域である。また、非通電領域102の外周は半導体チップの外周(ダイシングライン)に対応する。非通電領域102には、アルミニウムアイランド1301が形成される。
【0027】
図2において、半導体装置10は、無電解金めっき膜(金膜)202と、ニッケル電極203と、ショットキー電極層204と、保護膜205と、層間絶縁層206と、エピタキシャル基板207と、裏面電極層208と、表面電極層209とを有している。表面電極層209は、たとえば、アルミニウム、シリコンを含むアルミニウム合金電極または金属電極である。
【0028】
エピタキシャル基板207は、ドリフト層210と、ドリフト層211と、炭化珪素(SiC)基板である半導体基板層212とを有している。
【0029】
ドリフト層213は、面S1と面S1と反対の面S2とを有している。半導体基板層212は、ドリフト層213の面S2に面する面S3と面S3と反対の面S4とを有している。
【0030】
半導体基板層212は単結晶基板である。ドリフト層213は、半導体基板層212上に形成されたエピタキシャル層である。
【0031】
ドリフト層213はn型を有している。半導体基板層212は、n型を有している。半導体基板層212は、ドリフト層213の不純物濃度に比して高い不純物濃度を有している。よって、ドリフト層213の不純物濃度は、半導体基板層212の不純物濃度よりも低い。
【0032】
なお、ドリフト層213は、多層構造を有していてもよい。たとえば、ドリフト層213は、面S2をなすドリフト層210と、ドリフト層210上に配置され面S1をなすドリフト層211とを有していてもよい。ドリフト層210の不純物濃度と、ドリフト層211の不純物濃度とは、互いに相違していてもよい。
【0033】
ショットキー電極層204は、ドリフト層213にショットキー接合されている。ショットキー電極層204は、ドリフト層213の面S1の縁から離れて配置されており、面S1の一部と界面をなしている。面S1のうち、この界面が設けられた領域にショットキー接合が形成されている。詳しくは、この界面近傍のドリフト層213内に空乏層が形成されている。
【0034】
ショットキー接合が形成されている領域は、半導体装置10が目的とする素子機能を有している。この素子機能は、具体的には、整流機能である。ショットキー接合が形成されている領域の外側部分は、エピタキシャル基板207の外周部分での放電による半導体装置10の破壊を抑制する機能を有している。
【0035】
表面電極層209は、ショットキー電極層204上に設けられている。表面電極層209の材料は、たとえば、アルミニウム、シリコンを含むアルミニウム合金、または、ニッケルなどである。
【0036】
ニッケル電極203は、表面電極層209上の一部に設けられている。ニッケル電極203は、平面視で保護膜205によって取り囲まれた領域に設けられている。つまり、ニッケル電極203は、表面電極層209上において保護膜205が配置されていない領域に設けられている。
【0037】
無電解金めっき膜202は、ニッケル電極203上に設けられている。無電解金めっき膜202には、ピンホールが形成されていない。
【0038】
層間絶縁層206は、ドリフト層213の面S1上においてショットキー電極層204の周囲に設けられている。層間絶縁層206はショットキー電極層204に接触している。典型的には、ショットキー電極層204は、層間絶縁層206上に配置された端部を有しており、層間絶縁層206の開口部においてドリフト層213と接触している。
【0039】
本実施の形態では、層間絶縁層206を含む内側の領域を通電領域101、平面視でその周囲の領域を非通電領域102と呼ぶ。通電領域101と非通電領域102との境界は、層間絶縁層206の外周側の側面に対応する。
【0040】
保護膜205は、ドリフト層213の面S1上における、層間絶縁層206のさらに外周の構造として設けられ得る。保護膜205は絶縁体からなる。保護膜205の材料は、たとえば、樹脂である。
【0041】
非通電領域102のドリフト層211上には、アルミニウムアイランド1301が形成される。
【0042】
裏面電極層208は、半導体基板層212の面S4上に設けられている。本実施の形態では、裏面電極層208は、半導体基板層212の面S4の全面に設けられている。裏面電極層208は、半導体基板層212の面S4にオーミック接合されている。裏面電極層208は、ショットキー電極層204と平面視で重なるように対向している。よって、半導体装置10の主電流は、図2における裏面電極層208とショットキー電極層204とを結ぶ方向に沿って流れる。すなわち、半導体装置10は、縦型半導体装置、言い換えれば表裏導通型半導体装置である。
【0043】
ニッケル電極203および裏面電極層208のそれぞれは、ワイヤーボンディングまたははんだ付けなどの適切な部材によって、半導体装置10の外部へと配線され得る。
【0044】
<半導体装置の製造方法について>
次に、図3から図18を参照しつつ、本実施の形態に関する半導体装置10の製造方法を説明する。
【0045】
図3は、本実施の形態に関する半導体装置10の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図4は、エピタキシャルウエハWAと半導体装置10との関係の例を示す図である。図5から図12図14から図18は、本実施の形態に関する半導体装置10の製造方法のそれぞれの工程を概略的に示す断面図である。
【0046】
図4および図5に例が示されるように、n型の不純物を有するエピタキシャルウエハWAが準備される(図3におけるステップST01)。エピタキシャルウエハWAの平面視における大きさは、半導体装置10(図1を参照)の平面視における大きさよりも大きい。量産においてはエピタキシャルウエハWAから最終的に複数の半導体装置10がダイシングによって切り出される。
【0047】
図6に例が示されるように、エピタキシャルウエハWAは、面S1と面S1と反対の面S2とを有するドリフト層213と、ドリフト層213の面S2に面する面S3と面S3と反対の面S4とを有する半導体基板層212とを有している。なお、図6に示される断面は、図5におけるV-V’断面に対応する。
【0048】
エピタキシャルウエハWAは、ウエハ状の、言い換えればダイシング前の、半導体基板層212の面S3上におけるエピタキシャル成長によって、ドリフト層213をエピタキシャル成長させることによって得られる。エピタキシャル成長は、典型的には、炭化珪素(SiC)の堆積によって行われ、必要に応じて、不純物が添加されながら行われる。
【0049】
なお、エピタキシャル成長の途中で成膜条件が変更されることによって、ドリフト層213が多層構造に形成されてもよく、たとえば、図6に示されるように、半導体基板層212の面S3上にドリフト層210が形成された後に、このドリフト層210上にドリフト層211が形成されてもよい。たとえば、ドリフト層210が第1の成長温度でエピタキシャル成長させられた後に、ドリフト層211が第1の成長温度よりも低い第2の成長温度でエピタキシャル成長させられてもよい。
【0050】
次に、図7に例が示されるように、ドリフト層213の面S1上に、層間絶縁層206が成膜される。成膜方法としては、たとえば、熱酸化法または堆積法が用いられる。堆積法としては、たとえば、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法が用いられる。
【0051】
次に、図8に例が示されるように、層間絶縁層206にパターンが付与される。このパターニングは、半導体装置10(図2を参照)の完成時において層間絶縁層206がショットキー電極層204(図2を参照)の周囲に配置されることになるように行われる。
【0052】
具体的には、まず、写真製版を用いて、層間絶縁層206上にレジストなどからなるエッチングマスク(ここでは、図示しない)が形成される。次に、プラズマを用いたドライエッチング、または、薬液を用いたウェットエッチングなどによって、層間絶縁層206のうち不要な部分が除去される。その後、プラズマアッシングおよびウェット処理などによってエッチングマスクが除去される。これによって、図8に例が示された構造が得られる。
【0053】
なお、層間絶縁層206の形成前または後に、ドリフト層213の面S1上に不純物が添加されてもよい。たとえば、半導体装置10の耐圧を向上させるために、不純物の添加によって、面S1のうち層間絶縁層206が配置される部分に不純物層が形成されてもよい。不純物の添加は、たとえば、イオン注入および活性化によって行われる。アクセプター不純物としては、たとえば、ボロン(B)またはアルミニウム(Al)が用いられる。ドナー不純物としては、たとえば、リン(P)または窒素(N)が用いられる。
【0054】
次に、図9に例が示されるように、ドリフト層213上にショットキー電極層204が形成される。具体的には、まず、ショットキー電極層204が成膜されることになる面S1に対して、フッ化水素酸を含むウェット処理と、洗浄処理とが、必要に応じて行われる。洗浄処理のためには、たとえば、アンモニアと過酸化水素水との混合液、硫酸と過酸化水素水との混合液、および塩酸と過酸化水素水との混合液が用いられる。次に、ショットキー電極層204が成膜される。その材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)、または白金(Pt)などを、適宜選択することが可能である。
【0055】
その後、ショットキー電極層204にパターンが付与される。このパターニングは、ショットキー電極層204がドリフト層213の面S1の一部と界面をなすように行われる。
【0056】
具体的には、まず、写真製版を用いて、ショットキー電極層204上にレジストなどからなるエッチングマスク(ここでは、図示しない)が形成される。次に、プラズマを用いたドライエッチング、または、薬液を用いたウェットエッチングなどによって、ショットキー電極層204のうち不要な部分が除去される。その後、プラズマアッシングおよびウェット処理などによってエッチングマスクが除去される。
【0057】
これによって、図9に例が示された構造が得られる(図3におけるステップST02)。なお、必要に応じて、ショットキー電極層204とドリフト層213との電気的接続をより確実にするための熱処理が施されてもよい。
【0058】
次に、図10に例が示されるように、ショットキー電極層204上に表面電極層209が形成される(図3におけるステップST03)。具体的には、まず、表面電極層209となる膜が、スパッタ法または蒸着法などによって形成される。堆積される材料は、たとえば、アルミニウム、シリコンを含むアルミニウム合金、またはニッケルなどである。次に、この膜にパターンが付与される。具体的には、まず、写真製版を用いて、この膜の上にレジストなどからなるエッチングマスク(ここでは、図示しない)が形成される。次に、プラズマを用いたドライエッチング、または、薬液を用いたウェットエッチングなどによって、この膜のうち不要な部分が除去される。この際、ドリフト層213上に、表面電極層209とは離間するアルミニウムアイランド1301も形成される。
【0059】
その後、図10において破線で示されるように、半導体基板層212の面S4上での加工が行われることによって、半導体基板層212の厚みが低減されてもよい(図3におけるステップST04)。たとえば、アルミナ砥粒またはダイヤモンド砥粒によって構成された砥石を用いて、面S4に対する研削が行われてもよい。
【0060】
次に、図11に例が示されるように、半導体基板層212の面S4上に裏面電極層208が形成される(図3におけるステップST05)。たとえば、チタン、チタン合金、アルミニウム、シリコンを含むアルミニウム合金、またはニッケルなどが堆積される。なお、裏面電極層208には多層構造が設けられてもよい。たとえば、はんだ付けの際に電極材料が酸化されることを防ぐために、裏面電極層208の最表面に、金、白金、銀、またはパラジウムを含む銀合金などからなる酸化防止膜が形成されてもよい。
【0061】
次に、図12に例が示されるように、その後、保護膜205が形成される。具体的には、まず、窒化珪素(SiN)またはポリイミドなどからなる膜が成膜される。成膜方法としては、たとえば、CVD法、または、スピンコーティングまたはインクジェットを用いた塗布法を用い得る。次に、この膜にパターンが付与される。
【0062】
図13は、本実施の形態で示された半導体装置の製造方法、特にめっき方法の例を示すフローチャートである。
【0063】
図14から図16に例が示されるように、表面電極層209上にニッケル電極203がめっきにより形成される。具体的には、まず以下のようにめっき前処理が行われる(図3におけるステップST06)。
【0064】
表面電極層209に、たとえば、プラズマを利用したプラズマクリーニングが行われる(図13におけるステップST21)。プラズマクリーニングとは、表面電極層209上に焼きついてしまった一般的なめっき前処理で除去することができない有機物残渣を、プラズマで酸化分解するまたは叩き出して表面を清浄にする処理方法である。
【0065】
次に、表面電極層209の表面に残留した軽度の有機物汚染と酸化膜とを除去する脱脂処理が行われる(図13におけるステップST22)。
【0066】
次に、表面電極層209の表面を中和し、当該表面をエッチングして荒らし、後工程での処理液の反応性を高め、めっきの付着力を向上させる酸洗浄が行われる(図13におけるステップST23)。
【0067】
次に、図14および図15に例が示されるように、表面電極層209の表面に、亜鉛(Zn)の皮膜を形成するジンケート処理(亜鉛下地処理)が行われる。
【0068】
ジンケート処理とは、亜鉛(Zn)がイオンとして溶解した水溶液に表面電極層209を浸漬し、表面電極層209の表面に亜鉛(Zn)の皮膜を作る処理である。
【0069】
図14に例が示されるように、ジンケート処理時に光を照射する方法を示す。当該方法は、エピタキシャル基板207の内部でホール電子対を生成させ、通電領域101側(p型側)を集中的にOH-と反応させる方法である。
【0070】
エピタキシャル基板207に光500を照射すると、通電領域101と非通電領域102との境界にある遮光性の表面電極層209がない部分から、エピタキシャル基板207の内部に光が侵入する。この時、エピタキシャル基板207の内部に、光照射によりホール電子対が生成される。
【0071】
ここで通電領域101側の、ショットキー電極層204と接触するエピタキシャル基板207(半導体)の内部はショットキー障壁が形成されている。エピタキシャル基板207がn型である場合は、ショットキー障壁部分はp型と同等である。
【0072】
上記のショットキー障壁の形成によって、ホール電子対のうちのホールは、p型と同等であるショットキー障壁(ショットキー接合部)からショットキー電極層204、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム合金電極)側に拡散する。一方で、ホール電子対のうちの電子は、n型であるエピタキシャル基板207から、非通電領域102のアルミニウムアイランド1301側に拡散する。その結果、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム電極)がプラス、非通電領域102側にあるアルミニウムアイランド1301がマイナスに荷電する(すなわち、電位差が発生する)。
【0073】
次に、ジンケート処理を開始する(図13におけるステップST24)。ジンケート処理液にエピタキシャル基板207を浸漬し、光を照射する。通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム電極)はプラスに荷電しているので、OHイオンを寄せ付け、表面電極層209(アルミニウム電極)の表面に形成された酸化アルミニウム1302(Al)を溶解する。
【0074】
酸化アルミニウム1302(Al)が溶解すると、その下層である表面電極層209(アルミニウム電極)から、少しのアルミニウムイオン(Al3+)が溶け出し始める。この時アルミニウムは電子を放出するが、その電子をジンケート液中の亜鉛イオン(Zn2+)が受け取る。電子を受け取った亜鉛イオン(Zn2+)は、表面電極層209(アルミニウム電極)上に堆積し、亜鉛(Zn)の被膜を作る。つまり、通電領域101側には亜鉛(Zn)の被膜(亜鉛膜1401)が作られる。
【0075】
一方で、アルミニウムアイランド1301側はマイナスに荷電しているので、Zn2+、Hイオンを寄せ付ける。しかし、アルミニウムアイランド1301に形成された酸化アルミニウム(Al)上の亜鉛は密着性が悪く、また表面からはHも発生する。このため、アルミニウムアイランド1301側には亜鉛(Zn)の被膜が作られない。
【0076】
以上のようなジンケート処理(めっき前処理)が、ジンケート剥離を挟んで2回行われ(図13におけるステップST25、ステップST26)、図15に示される構造が形成される。すなわち、表面電極層209上に亜鉛膜1401が形成された構造となる。
【0077】
なお、それぞれの工程の間には十分な水洗時間が確保される。これによって、前の工程の処理液および残渣が次工程に持ち込まれることが抑制される。
【0078】
次に、図16に例が示されるように、無電解ニッケル(Ni)めっきが行われることにより、ニッケル電極203が形成される(図3におけるステップST07、図13におけるステップST27)。
【0079】
具体的には、亜鉛(Zn)で被覆された表面電極層209が無電解ニッケル(Ni)めっき液に浸漬されると、最初は、亜鉛(Zn)の方がニッケル(Ni)よりも標準酸化還元電位が卑であるため、亜鉛(Zn)がイオンとなって溶出し表面電極層209上にニッケル(Ni)が析出する。
【0080】
続いて、表面がニッケル(Ni)で覆われると、めっき液中に含まれる還元剤の作用によって、自動触媒的にニッケル(Ni)が析出する。ただし、この自動触媒的析出時には、還元剤の成分がめっき膜に取り込まれるため、ニッケル電極203は合金となり、また還元剤の濃度が高いと非晶となる。
【0081】
一般に還元剤として次亜燐酸が利用されているため、ニッケル電極203にはリン(P)が含まれている。ニッケル電極203は、亜鉛(Zn)イオンの溶出とニッケル(Ni)の析出とが行われる部分、つまり表面電極層209上で、かつ、保護膜205に覆われていない部分に形成される。
【0082】
続いて、図17および図18に例が示されるように、ニッケル電極203上に、無電解金めっき膜202が形成される(図13におけるステップST28)。
【0083】
具体的には、通電領域101のニッケル電極203および非通電領域102のアルミニウムアイランド1301が同時に無電解金めっき液へ浸漬されると、アルミニウム(Al)の方がニッケル(Ni)よりも標準酸化還元電位が卑であるため、アルミニウム(Al)がイオンとなって溶出する。アルミニウムイオン(Al3+)が溶出する時、アルミニウム電極、n型であるエピタキシャル基板207側からショットキー接合を通って通電領域101であるニッケル電極203へ電子が移動し、金めっき液中の金イオンが電子を受け取り、ニッケル電極203上に金(Au)が析出する。
【0084】
これによって、図18に例が示されるように、無電解金めっき膜202が形成される。無電解金めっき膜202が形成される時、ニッケル電極203からはニッケル(Ni)イオンの溶出がないので、ニッケル(Ni)イオンの溶出に起因する無電解金めっき膜202のピンホールは形成されない。
【0085】
無電解金めっき膜202にピンホールが形成されないことによって、ピンホール内にめっき液が残留することでニッケル電極203を腐食させることが抑制される。そのため、無電解金めっき膜202へのはんだ濡れ性の悪化が抑制される。
【0086】
そして、図4に例が示される、エピタキシャルウエハWA上に複数個形成された半導体装置が、ダイシングにより単一の装置に分割される。以上によって、図1および図2に例が示される、半導体装置10が完成する。
【0087】
なお、上記においては、エピタキシャル基板207がn型の場合について説明されたが、エピタキシャル基板207はp型であってもよい。
【0088】
次に、図18を参照しつつ、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0089】
本実施の形態に関する半導体装置10の製造方法によれば、ニッケル電極203上にのみ無電解金めっき膜202が形成される。
【0090】
無電解金めっき工程では、通電領域101のニッケル電極203および非通電領域102のアルミニウムアイランド1301が同時に無電解金めっき液へ浸漬される。
【0091】
この際、アルミニウム(Al)の方がニッケル(Ni)よりも標準酸化還元電位が卑であるため、アルミニウム(Al)がイオンとなって溶出し、ニッケル電極203上に金(Au)が析出する。
【0092】
これによって、無電解金めっき膜202が形成される。無電解金めっき膜202が形成される時、ニッケル電極203からはニッケル(Ni)イオンの溶出がないので、ニッケル(Ni)イオンの溶出に起因する無電解金めっき膜202のピンホールは形成されない。したがって、無電解金めっき膜202にピンポールが形成されることを抑制することができる。
【0093】
無電解金めっき膜202にピンホールが形成されないことによって、ピンホール内にめっき液が残留することによるニッケル電極203が腐食する、という事象を抑制することができる。
【0094】
腐食の一例として次の事象がある。ピンホール内にめっき液乾燥後の残留物、たとえば、硫酸根の残留物(SOなど)が有ると、大気中から水分を吸収して酸に変わる。酸はニッケルをニッケルイオンとして溶かし出し、ピンホールを起点として金めっき膜上に広がる。残留物として水だけが有った場合でも、ニッケルは少し溶け出す。
【0095】
ニッケルがイオンとして溶け出し、金めっき膜の表面に出て乾燥し、ニッケル酸化物として金の表面を被膜し、ニッケル酸化膜となる。
【0096】
ニッケル酸化膜は、はんだ濡れ性が悪化し、はんだとの接合ができない。よって半導体装置10の信頼性が悪化する。
【0097】
一方で本実施の形態によれば、無電解金めっき膜202にピンホールが形成されないことによって、ニッケル電極203が腐食されず、無電解金めっき膜202へのはんだ濡れ性の悪化が抑制される。このため、はんだとの接合が良好となる。これによって、半導体装置10の信頼性が向上する。
【0098】
続いて、本実施の形態の変形例について説明する。
【0099】
上記においては、エピタキシャルウエハWA(図4図5を参照)を用いてショットキーバリアダイオード(SBD)が形成されたが、半導体装置10はショットキーバリアダイオード(SBD)に限定されるものではなく他の種類の半導体装置であってもよい。
【0100】
この種類に応じて、エピタキシャルウエハWAに対して、絶縁膜および金属膜の形成、写真製版およびエッチングを用いたパターニング、および、イオン注入および活性化による不純物層の形成などが行われることによって、所望の半導体チップが形成されればよい。
【0101】
半導体装置の種類によっては、ショットキー電極層204(図2を参照)に代わりオーミック電極層が設けられる。
【0102】
具体的には、半導体装置10は、ショットキーバリアダイオード(SBD)以外の他の種類のダイオードであってもよい。また、半導体装置10は、ダイオードに限定されるものではなく、たとえば、トランジスタなどの半導体スイッチング素子であってもよい。トランジスタは、たとえば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、または、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0103】
たとえば、nチャネル型MISFETを得るためには、炭化珪素基板によってn型ドレイン領域が構成され、この基板上の半導体層によって、p型ベース領域およびn型ソース領域が設けられたn型ドリフト層が構成される。
【0104】
n型ソース領域は、半導体層の第1の面に配置されている。p型ベース領域はn型ソース領域とn型ドリフト層との間を隔てている。n型ドリフト層の不純物濃度はn型ドレイン領域の不純物濃度よりも小さい。ショットキー電極層(第1の電極層)によって、n型ソース領域に電気的に接続されたソース電極が構成される。裏面電極層(第2の電極層)によって、n型ドレイン領域に電気的に接続されたドレイン電極が構成される。
【0105】
上記の炭化珪素基板および半導体層それぞれは、典型的には、あらかじめ準備された炭化珪素基板と、その上にエピタキシャル成長によって形成された半導体層とである。しかしながら、炭化珪素基板および半導体層は、必ずしもそのようにして準備されたものに限定されるわけではない。
【0106】
たとえば、あらかじめ準備された単結晶基板上に2つの層が成膜され、これら2つの層が炭化珪素基板および半導体層として用いられてもよい。この場合、上記の単結晶基板は炭化珪素半導体装置の製造中に除去されてよい。
【0107】
図19および図20は、本実施の形態に関する半導体装置の、通電領域と非通電領域とにおける電極構造の例を概略的に示す平面図である。
【0108】
図19では、エピタキシャル基板207が設けられた半導体ウエハ面内の、通電領域101(有効領域)と非通電領域102(非有効領域)との位置関係が示されている。また、図20では、1素子周辺における、金めっき部分(無電解金めっき膜202が形成される部分)とアルミニウムアイランド1301との位置関係が示されている。
【0109】
半導体装置のめっき工程までの製造工程では、ウエハの状態で複数の半導体装置(チップ)を作製する(それぞれの素子構造にショットキー電極層204が設けられる)。その後、ダイシング工程により個々のチップに切り離される。
【0110】
チップに切り離される時、切り代1801(ダイシングライン。図20を参照)が必要である。切り代1801は、ダイシング用ブレードにより削られるため、必然的に非通電領域102の一部となる。
【0111】
図20では、アルミニウムアイランド1301の位置が示されている。アルミニウムアイランド1301は、通電領域101とは別の領域として形成する必要が有り、またエピタキシャル基板207に直接、電気的に接触する必要がある。これらの事項から、アルミニウムアイランド1301は非通電領域102に形成する。
【0112】
図21は、本実施の形態に関するアルミニウム電極の面積の例を示す図である。図22は、金めっき部およびアルミニウムアイランド部の大きさの関係を示す図である。図21および図22に例が示されるように、金めっき工程におけるアルミニウムの溶解量と金の析出量との関係から、アルミニウムアイランド部1901の大きさを示す。
【0113】
たとえば、金めっき部1902の面積を1cm、厚さを20nmとする。この時、アルミニウム(Al)が金の析出に必要な電子を放出して溶解すればよいから、アルミニウムアイランド部1901の幅を100μmとした場合、長さは1.7mm、厚さ4μmとすればよいし、アルミニウムアイランド部1901の幅を10μmとした場合、長さは17mm、厚さ4μmとすればよい。
【0114】
アルミニウムアイランド部1901は、通電領域101の表面電極層209と同時に形成することができる。アルミニウムアイランド部1901の形成を、通電領域101の表面電極層209と同時に形成した場合、使用部材の増加および工程の増加が発生しないので、製造コストが増加しない。
【0115】
金めっきを施している間、金めっき液中にアルミニウムが溶出し続けるので、金めっき部1902下層のニッケルは溶出しない。ニッケルが溶出しないので、ニッケル層上の金めっきニッケルの溶出により阻害されることがない。よって、ピンホールのない金めっき層を形成することができる(図17を参照)。
【0116】
図23は、1素子内における、通電領域101と非通電領域102、切り代1801、アルミニウムアイランド1301の位置関係の例を示す図である。また、図24は、ダイシング後のチップの例を示す図である。
【0117】
図23において、切り代1801の幅は、切断刃の幅と、切断時の振動とを考慮して、約50μmとする。また、アルミニウムアイランド1301の幅は、約100μm必要である(図21を参照)。
【0118】
切り代1801およびアルミニウムアイランド1301は半導体装置としては不要な箇所なので、非通電領域102に配置する。また、切り代1801上にアルミニウムアイランド1301を重ねると、非通電領域102を狭く設計することができ、その分通電領域101を広く取ることができるので、ウエハの面積を有効活用することができる。
【0119】
切り代1801上にアルミニウムアイランド1301を重ねると、幅がそれぞれ約50μm、約100μmであることから、アルミニウムアイランド1301の幅が切り代1801の幅よりも広い。このため、ダイシング後は、図24に示されるように、チップ端にアルミニウムアイランド1301の一部が残る。
【0120】
図25は、本実施の形態に関する半導体装置の、通電領域と非通電領域とにおける電極構造の例を概略的に示す平面図である。以下では、ウエハ1枚を1回で露光することができる大型露光装置を使用する工程について説明する。
【0121】
ウエハ1枚を1回で露光することができる大型露光装置を使用した場合、アルミニウムアイランド2103は、ウエハ端付近に形成されてしまう不完全なチップ形状の領域、すなわち、ウエハ端の非通電領域2102に形成することも考えられる。非通電領域2102は、平面視で通電領域2101を囲むように配置される。
【0122】
ただし、ウエハ端の非通電領域2102にアルミニウムアイランド2103を形成した場合、金めっき時に、すべてのチップに均等にアルミニウム(Al)溶解による電子が供給されることがない。したがって、金めっきがむらになったり、ニッケルの溶出によって金めっきにピンホールが発生したりする。よって、チップごとにアルミニウムアイランド1301を形成することが必要である(図20を参照)。
【0123】
図26および図27は、本実施の形態に関する半導体装置10の製造装置、特にめっき装置の例を概略的に示す図である。図26では、1または複数の半導体ウエハ314が時間順次に処理される複数のめっき処理槽が示され、図27では、めっき装置の中で、半導体ウエハをめっき液に浸漬しながら光を照射する機構が示されている。
【0124】
図26に例が示されるように、めっき処理は、半導体ウエハ314を複数のめっき処理槽において順次めっき液に浸漬することによって行われる。具体的には、めっき処理槽300で脱脂処理を行い、めっき処理槽302で酸洗浄処理を行い、その後めっき処理槽304で光照射とともにジンケート処理を行い、その後めっき処理槽306でジンケート剥離処理を行い、その後めっき処理槽308で無電解Niめっき処理を行い、その後めっき処理槽310で無電解Auめっき処理を行い、その後めっき処理槽312で水洗処理を行う。それぞれのめっき処理槽には自動濃度調整機およびめっき液の循環機構が備わっている。
【0125】
各種めっき処理後は、めっき処理槽312へ半導体ウエハ314を移動して水洗処理を行う。半導体ウエハ314を引き上げ移動する際、めっき液が少し滴下することがあるが、他のめっき処理槽への混入を防ぐため、また高温のめっき液から水分が蒸発することを防ぐため、それぞれのめっき処理槽には開閉式の蓋を取り付けてもよい。
【0126】
図27では、めっき装置の中で、半導体ウエハ314をめっき液に浸漬しながら光を照射する機構が示されている。光照射を行うのは、ジンケート処理を行うめっき処理槽304である。
【0127】
光源2302を備える導光板2303を、半導体ウエハ314に隣接して配置する。具体的には、半導体ウエハ314の主面に対向するように配置する。
【0128】
図28は、めっき処理槽304内における、平面視における半導体ウエハ314と導光板2303との配置関係の例を示す図である。図28に示されるように、半導体ウエハ314と平面視で重なるように導光板2303を配置することで、半導体ウエハ314に均一に光2308を照射する。なお、導光板2303は、下方部分を円弧状に形成しておくと、半導体ウエハ314を輸送するためのキャリアに挿入(搭載)することができる。
【0129】
図29は、導光板2303の構造の例を示す図である。図29に例が示されるように、導光板2303には、LEDなどの光源2302から光2308が入射される。ここで、導光板2303の、光2308が放射される側の主面には、光2308を均一に放射するための光拡散フィルム2305が貼り付けられていてもよい。
【0130】
導光板2303から放射される光2308は、半導体ウエハの導光板2303と対向する主面に照射される。
【0131】
図14に例が示されたように、半導体ウエハに光を照射すると、光は半導体ウエハ内部のショットキー接合部に到達し、電位差が発生する。そして、電位差の発生によって通電領域101にのみジンケート処理およびニッケル(Ni)めっき、さらには、通電領域101にはピンホールまたは腐食痕のない金(Au)めっきを行うことができる。
【0132】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に関する電力変換装置、および、電力変換装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0133】
<半導体装置の構成について>
図30は、本実施の形態に関する半導体モジュールの構成の例を示す断面図である。また、図31は、本実施の形態に関する電力変換装置を適用した電力変換システムの構成の例を示す図である。図31における電力変換装置は、第1の実施の形態における半導体装置を炭化珪素半導体装置として適用したものである。
【0134】
以下では、電力変換装置として三相のインバータが例示されるが、特定の電力変換装置に限定されるものではない。
【0135】
図30に例が示されるように、半導体モジュールである炭化珪素半導体装置2502は、少なくとも1つのリードフレーム13上に、少なくとも1つの半導体装置11を備える。具体的には、少なくとも1つの半導体装置11は、たとえば、はんだ12を用いて、少なくとも1つのリードフレーム13上に接合される。炭化珪素半導体装置2502では、少なくとも1つの半導体装置11が、モールド樹脂14によって封止される。
【0136】
図31に例が示されるように、電力変換システムは、電源2504と、電力変換装置2500と、負荷2505とを備える。電源2504は直流電源であり、電力変換装置2500に直流電力を供給する。電源2504は種々のもので構成することが可能であり、たとえば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源2504を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0137】
電力変換装置2500は、電源2504と負荷2505との間に接続された三相のインバータであり、電源2504から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷2505に交流電力を供給する。電力変換装置2500は、図31に例が示されるように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路2501と、主変換回路2501を制御する制御信号を主変換回路2501に出力する制御回路2503とを備えている。
【0138】
負荷2505は、電力変換装置2500から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷2505は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、たとえば、ハイブリッド自動車または電気自動車、鉄道車両、エレベータ、または、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0139】
以下、電力変換装置2500の詳細を説明する。主変換回路2501は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(ここでは、図示しない)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源2504から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷2505に供給する。主変換回路2501の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に関する主変換回路2501は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路2501のそれぞれのスイッチング素子およびそれぞれの還流ダイオードの少なくともいずれかは、上記の実施の形態の半導体装置に相当する炭化珪素半導体装置2502が有するスイッチング素子または還流ダイオードである。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、それぞれの上下アームはフルブリッジ回路のそれぞれの相(U相、V相、W相)を構成する。そして、それぞれの上下アームの出力端子、すなわち、主変換回路2501の3つの出力端子は、負荷2505に接続される。
【0140】
また、主変換回路2501は、それぞれのスイッチング素子を駆動する駆動回路(図示なし)を備えているが、駆動回路は炭化珪素半導体装置2502に内蔵されていてもよいし、炭化珪素半導体装置2502とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路2501のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路2501のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路2503からの制御信号にしたがい、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とをそれぞれのスイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子のしきい値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子のしきい値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0141】
制御回路2503は、負荷2505に所望の電力が供給されるよう主変換回路2501のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷2505に供給すべき電力に基づいて主変換回路2501のそれぞれのスイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。たとえば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路2501を制御することができる。そして、それぞれの時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路2501が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号にしたがい、それぞれのスイッチング素子の制御電極にオン信号またはオフ信号を駆動信号として出力する。
【0142】
本実施の形態に関する電力変換装置では、主変換回路2501を構成する炭化珪素半導体装置2502として上記の実施の形態に関する半導体装置を適用するため、電力変換装置を小型化することができ、かつ、簡易に接続することを実現することができる。
【0143】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに上記の半導体装置を適用する例が説明されたが、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置とされたが、3レベルまたはマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに適用しても構わない。また、直流負荷などに電力を供給する場合にはDC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに適用することも可能である。
【0144】
また、上記の半導体装置が適用された電力変換装置は、負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、たとえば、放電加工機、レーザー加工機、誘導加熱調理器または非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムまたは蓄電システムなどのパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0145】
<電力変換装置の製造方法について>
次に、本実施の形態に関する電力変換装置の製造方法を説明する。
【0146】
まず、以上に記載された実施の形態で説明された製造方法で、半導体装置を製造する。そして、当該半導体装置を有する主変換回路2501を電力変換装置の構成として設ける。主変換回路2501は、入力される電力を変換して出力するための回路である。
【0147】
そして、電力変換装置の構成として駆動回路を設ける。駆動回路は、半導体装置を駆動するための駆動信号を当該半導体装置に出力するための回路である。そして、電力変換装置の構成として制御回路2503を設ける。制御回路2503は、駆動回路を制御するための制御信号を駆動回路に出力するための回路である。
【0148】
以上に記載された実施の形態において用いられる半導体スイッチング素子は、シリコン(Si)半導体から成るスイッチング素子に限られるものではなく、例えば、半導体スイッチング素子は、Si半導体よりもバンドギャップが広い非Si半導体材料から成るものであってもよい。
【0149】
非Si半導体材料であるワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドなどがある。
【0150】
ワイドバンドギャップ半導体から成るスイッチング素子は、Si半導体ではユニポーラ動作が困難な高電圧領域でも使用可能であり、スイッチング動作時に発生するスイッチング損失を大きく低減できる。そのため、電力損失の大きな低減が可能となる。
【0151】
また、ワイドバンドギャップ半導体から成るスイッチング素子は、電力損失が小さく、耐熱性も高い。そのため、冷却部を備えるパワーモジュールを構成する場合、ヒートシンクの放熱フィンを小型化することが可能であるため、半導体モジュールの一層の小型化が可能となる。
【0152】
また、ワイドバンドギャップ半導体から成るスイッチング素子は、高周波スイッチング動作に適している。そのため、高周波化の要求が大きいコンバータ回路に適用された場合、スイッチング周波数の高周波化によって、コンバータ回路に接続されるリアクトルまたはコンデンサなどを小型化することもできる。
【0153】
よって、以上に記載された実施の形態における半導体スイッチング素子は、炭化珪素などのワイドギャップ半導体から成るスイッチング素子となる場合にも、同様な効果が得られる。
【0154】
<以上に記載された複数の実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された複数の実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された複数の実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。すなわち、以下では便宜上、対応づけられる具体的な構成のうちのいずれか1つのみが代表して記載される場合があるが、代表して記載された具体的な構成が対応づけられる他の具体的な構成に置き換えられてもよい。
【0155】
また、当該置き換えは、複数の実施の形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施の形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0156】
以上に記載された実施の形態によれば、半導体装置は、第1の導電型(n型)の半導体層と、接合層と、第1の電極層と、第2の電極層と、ニッケル電極203と、無電解金めっき膜202とを備える。ここで、半導体層は、たとえば、エピタキシャル基板207などに対応する。また、接合層は、たとえば、pn接合を形成するp型の不純物層またはショットキー接合を形成するショットキー電極層204などに対応する。また、第1の電極層は、たとえば、表面電極層209などに対応する。また、第2の電極層は、たとえば、アルミニウムアイランド1301などに対応する。ショットキー電極層204は、エピタキシャル基板207の一部の上面に接触して設けられる。表面電極層209は、ショットキー電極層204の上面に設けられる。アルミニウムアイランド1301は、エピタキシャル基板207の一部の上面に接触して設けられる。ニッケル電極203は、表面電極層209の上面に設けられる。無電解金めっき膜202は、ニッケル電極203に形成される。
【0157】
このような構成によれば、ショットキー電極層204に接触する電極層である表面電極層209にのみニッケル電極203を形成することができる。そして、ニッケル電極203に無電解金めっき膜202が形成される際には、ニッケル電極203からのニッケルイオンの溶出が防がれるため、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することを抑制することができる。
【0158】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0159】
また、以上に記載された実施の形態によれば、接合層が、第2の導電型の不純物層またはショットキー電極層204である。このような構成によれば、pn接合またはショットキー接合の形成によって、ホール電子対のうちのホールは、ショットキー電極層204、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム合金電極)側に拡散する。一方で、ホール電子対のうちの電子は、n型であるエピタキシャル基板207から、非通電領域102のアルミニウムアイランド1301側に拡散する。その結果、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム電極)がプラス、非通電領域102側にあるアルミニウムアイランド1301がマイナスに荷電する(すなわち、電位差が発生する)。そうすると、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム電極)上にジンケート液中の亜鉛イオン(Zn2+)が堆積して亜鉛(Zn)の被膜を作る。一方で、アルミニウムアイランド1301側は酸化アルミニウム(Al)上の亜鉛は密着性が悪く、亜鉛(Zn)の被膜が作られない。
【0160】
また、以上に記載された実施の形態によれば、表面電極層209およびアルミニウムアイランド1301が、アルミニウムで形成される。このような構成によれば、それぞれを別の金属で形成する場合に比べて、製造工程数を削減することができる。
【0161】
また、以上に記載された実施の形態によれば、電力変換装置は、上記の半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路2501と、半導体装置を制御するための制御信号を出力する制御回路2503とを備える。このような構成によれば、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することを抑制することができるため、半導体装置に起因する不具合を抑制することができる。
【0162】
また、以上に記載された実施の形態によれば、半導体装置の製造装置は、ジンケート処理槽と、光を照射するための光源2302と、光拡散部と、ニッケルめっき槽と、金めっき槽とを備える。ここで、ジンケート処理槽は、たとえば、めっき処理槽304などに対応する。また、光拡散部は、たとえば、光拡散フィルム2305などに対応する。また、ニッケルめっき槽は、たとえば、めっき処理槽308などに対応する。また、金めっき槽は、たとえば、めっき処理槽310などに対応する。めっき処理槽304は、複数のアルミニウム電極(たとえば、表面電極層209およびアルミニウムアイランド1301)に、光を照射しながらジンケート処理を行う。光拡散フィルム2305は、めっき処理槽304内において、アルミニウム電極に照射される光を拡散させる。めっき処理槽308は、ジンケート処理が行われた後にアルミニウム電極に形成された亜鉛膜を置換してニッケルめっきを行う。めっき処理槽310は、ニッケルめっきされたアルミニウム電極に金めっきを行う。
【0163】
このような構成によれば、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することが抑制された半導体装置を製造することができる。
【0164】
また、以上に記載された実施の形態によれば、複数のアルミニウム電極が、エピタキシャル基板207の一部の上面にショットキー電極層204を介して設けられる表面電極層209と、エピタキシャル基板207の一部の上面に接触して設けられるアルミニウムアイランド1301とを含む。そして、ニッケルめっきおよび金めっきが、表面電極層209に行われる。このような構成によれば、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することが抑制された半導体装置を製造することができる。
【0165】
以上に記載された実施の形態によれば、半導体装置の製造方法において、第1の導電型のエピタキシャル基板207の一部の上面に接触するように、少なくとも1つのショットキー電極層204を設ける。そして、ショットキー電極層204の上面に少なくとも1つの表面電極層209を設ける。そして、エピタキシャル基板207の一部の上面に接触するように、少なくとも1つのアルミニウムアイランド1301を設ける。そして、アルミニウムアイランド1301が設けられた後で、表面電極層209の上面にニッケル電極203を設ける。そして、ニッケル電極203に無電解金めっき膜202を形成する。
【0166】
このような構成によれば、ショットキー電極層204に接触する電極層である表面電極層209にのみニッケル電極203を形成することができる。そして、ニッケル電極203に無電解金めっき膜202が形成される際には、ニッケル電極203からのニッケルイオンの溶出が防がれるため、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することを抑制することができる。
【0167】
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
【0168】
また、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0169】
また、以上に記載された実施の形態によれば、表面電極層209およびアルミニウムアイランド1301が設けられた後で、エピタキシャル基板207に光を照射しつつジンケート処理を行って表面電極層209の上面に亜鉛膜1401を形成する。ニッケル電極203が、亜鉛膜1401を置換しつつ表面電極層209の上面に形成される。このような構成によれば、光を照射しながらジンケート処理を行うことによってショットキー電極層204に接触する電極層である表面電極層209にのみ亜鉛膜1401を置換してニッケル電極203を形成することができる。そして、ニッケル電極203に無電解金めっき膜202が形成される際には、ニッケル電極203からのニッケルイオンの溶出が防がれるため、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することを抑制することができる。
【0170】
また、以上に記載された実施の形態によれば、無電解金めっき膜202が、アルミニウムアイランド1301の溶解に起因する電子の移動で析出する金によって、ニッケル電極203に形成される。このような構成によれば、光を照射しながらジンケート処理を行うことによってショットキー電極層204に接触する電極層である表面電極層209にのみ亜鉛膜1401を置換してニッケル電極203を形成することができる。そして、ニッケル電極203に無電解金めっき膜202が形成される際には、ニッケル電極203からのニッケルイオンの溶出が防がれるため、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することを抑制することができる。
【0171】
また、以上に記載された実施の形態によれば、表面電極層209およびアルミニウムアイランド1301が、アルミニウムで形成される。このような構成によれば、それぞれを別の金属で形成する場合に比べて、製造工程数を削減することができる。
【0172】
また、以上に記載された実施の形態によれば、接合層が、第2の導電型の不純物層またはショットキー電極層204である。このような構成によれば、pn接合またはショットキー接合の形成によって、ホール電子対のうちのホールは、ショットキー電極層204、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム合金電極)側に拡散する。一方で、ホール電子対のうちの電子は、n型であるエピタキシャル基板207から、非通電領域102のアルミニウムアイランド1301側に拡散する。その結果、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム電極)がプラス、非通電領域102側にあるアルミニウムアイランド1301がマイナスに荷電する(すなわち、電位差が発生する)。そうすると、通電領域101側にある表面電極層209(アルミニウム電極)上にジンケート液中の亜鉛イオン(Zn2+)が堆積して亜鉛(Zn)の被膜を作る。一方で、アルミニウムアイランド1301側は酸化アルミニウム(Al)上の亜鉛は密着性が悪く、亜鉛(Zn)の被膜が作られない。
【0173】
また、以上に記載された実施の形態によれば、半導体ウエハに、エピタキシャル基板207が設けられる。ショットキー電極層204が複数設けられ、ショットキー電極層204を含む素子構造は、半導体ウエハから複数切り出される。そして、それぞれの素子構造に、アルミニウムアイランド1301の少なくとも一部が含まれる。このような構成によれば、半導体ウエハのダイシング時に非通電領域102が削られても、切り出された素子構造(チップ)にアルミニウムアイランド1301の一部が残る。
【0174】
また、以上に記載された実施の形態によれば、電力変換装置の製造方法において、上記の製造方法で製造される半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路2501を設け、半導体装置を制御するための制御信号を出力する制御回路2503を設ける。このような構成によれば、無電解金めっき膜202にピンホールが発生することを抑制することができるため、半導体装置に起因する不具合を抑制することができる。
【0175】
<以上に記載された複数の実施の形態の変形例について>
以上に記載された複数の実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、限定的なものではない。
【0176】
したがって、例が示されていない無数の変形例と均等物とが、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施の形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0177】
また、以上に記載された少なくとも1つの実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【0178】
また、矛盾が生じない限り、以上に記載された実施の形態において「1つ」の構成要素が備えられる、と記載された場合に、当該構成要素が「1つ以上」備えられていてもよい。
【0179】
さらに、以上に記載された実施の形態におけるそれぞれの構成要素は概念的な単位であって、本願明細書に開示される技術の範囲内には、1つの構成要素が複数の構造物から成る場合と、1つの構成要素がある構造物の一部に対応する場合と、さらには、複数の構成要素が1つの構造物に備えられる場合とを含むものとする。
【0180】
また、以上に記載された実施の形態におけるそれぞれの構成要素には、同一の機能を発揮する限り、他の構造または形状を有する構造物が含まれるものとする。
【0181】
また、本願明細書における説明は、本技術に関連するすべての目的のために参照され、いずれも、従来技術であると認めるものではない。
【0182】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0183】
(付記1)
第1の導電型の半導体層と、
前記半導体層の一部の上面に接触して設けられる接合層と、
前記接合層の上面に設けられる第1の電極層と、
前記半導体層の一部の前記上面に接触して設けられる第2の電極層と、
前記第1の電極層の上面に設けられるニッケル電極と、
前記ニッケル電極に形成される金めっき膜とを備える、
半導体装置。
【0184】
(付記2)
付記1に記載の半導体装置であり、
前記接合層が、第2の導電型の不純物層またはショットキー電極層である、
半導体装置。
【0185】
(付記3)
付記1または2に記載の半導体装置であり、
前記第1の電極層および前記第2の電極層が、アルミニウムで形成される、
半導体装置。
【0186】
(付記4)
付記1から3のうちのいずれか1つに記載の半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を制御するための制御信号を出力する制御回路とを備える、
電力変換装置。
【0187】
(付記5)
複数のアルミニウム電極に、光を照射しながらジンケート処理を行うためのジンケート処理槽と、
前記光を照射するための光源と、
前記ジンケート処理槽内において、前記アルミニウム電極に照射される前記光を拡散させるための光拡散部と、
前記ジンケート処理が行われた後に前記アルミニウム電極に形成された亜鉛膜を置換してニッケルめっきを行うためのニッケルめっき槽と、
ニッケルめっきされた前記アルミニウム電極に金めっきを行うための金めっき槽とを備える、
半導体装置の製造装置。
【0188】
(付記6)
付記5に記載の半導体装置の製造装置であり、
複数の前記アルミニウム電極が、
半導体層の一部の上面に接合層を介して設けられる第1の電極層と、
前記半導体層の一部の前記上面に接触して設けられる第2の電極層とを含み、
前記ニッケルめっきおよび前記金めっきが、前記第1の電極層に行われる、
半導体装置の製造装置。
【0189】
(付記7)
第1の導電型の半導体層の一部の上面に接触するように、少なくとも1つの接合層を設け、
前記接合層の上面に少なくとも1つの第1の電極層を設け、
前記半導体層の一部の前記上面に接触するように、少なくとも1つの第2の電極層を設け、
前記第2の電極層が設けられた後で、前記第1の電極層の上面にニッケル電極を設け、
前記ニッケル電極に金めっき膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【0190】
(付記8)
付記7に記載の半導体装置の製造方法であり、
前記第1の電極層および前記第2の電極層が設けられた後で、前記半導体層に光を照射しつつジンケート処理を行って前記第1の電極層の前記上面に亜鉛膜を形成し、
前記ニッケル電極が、前記亜鉛膜を置換しつつ前記第1の電極層の前記上面に形成される、
半導体装置の製造方法。
【0191】
(付記9)
付記7または8に記載の半導体装置の製造方法であり、
前記金めっき膜が、前記第2の電極層の溶解に起因する電子の移動で析出する金によって、前記ニッケル電極に形成される、
半導体装置の製造方法。
【0192】
(付記10)
付記7から9のうちのいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であり、
前記第1の電極層および前記第2の電極層が、アルミニウムで形成される、
半導体装置の製造方法。
【0193】
(付記11)
付記7から10のうちのいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であり、
前記接合層が、第2の導電型の不純物層またはショットキー電極層である、
半導体装置の製造方法。
【0194】
(付記12)
付記7から11のうちのいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であり、
半導体ウエハに、前記半導体層が設けられ、
前記接合層を複数設け、
前記接合層を含む素子構造が、前記半導体ウエハから複数切り出され、
それぞれの前記素子構造に、前記第2の電極層の少なくとも一部が含まれる、
半導体装置の製造方法。
【0195】
(付記13)
付記7から12のうちのいずれか1つに記載の製造方法で製造される半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路を設け、
前記半導体装置を制御するための制御信号を出力する制御回路を設ける、
電力変換装置の製造方法。
【符号の説明】
【0196】
10 半導体装置、11 半導体装置、12 はんだ、13 リードフレーム、14 モールド樹脂、101 通電領域、101 分通電領域、102 非通電領域、202 無電解金めっき膜、203 ニッケル電極、204 ショットキー電極層、205 保護膜、206 層間絶縁層、207 エピタキシャル基板、208 裏面電極層、209 表面電極層、209 溶出し表面電極層、210 ドリフト層、211 ドリフト層、212 半導体基板層、213 ドリフト層、300 めっき処理槽、302 めっき処理槽、304 めっき処理槽、306 めっき処理槽、308 めっき処理槽、310 めっき処理槽、312 めっき処理槽、314 半導体ウエハ、500 光、1301 アルミニウムアイランド、1302 酸化アルミニウム、1401 亜鉛膜、1801 切り代、1901 アルミニウムアイランド部、1902 金めっき部、2101 通電領域、2102 非通電領域、2103 アルミニウムアイランド、2302 光源、2303 導光板、2305 光拡散フィルム、2308 光、2500 電力変換装置、2501 主変換回路、2502 炭化珪素半導体装置、2503 制御回路、2504 電源、2505 負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31