(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172186
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20241205BHJP
B41J 2/52 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/045
B41J2/01 451
B41J2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089739
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 秀之
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB35
2C056EC08
2C056EC25
2C056EC31
2C056EC41
2C056EC42
2C056EC72
2C056ED01
2C056FA04
2C056HA58
2C057AF21
2C057AL19
2C057AL36
2C057AM15
2C057AM21
2C057AR08
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】大液滴及び小液滴の両方の射出速度を適切に調整する。
【解決手段】画像形成装置は、複数のノズルを含むインクジェットヘッドと、媒体に印刷された画像を読み取る画像読取部と、インクジェットヘッドの駆動波形を制御する制御部とを備える。制御部は、駆動波形を変更しながら、インクジェットヘッドに、異なるサイズの液滴からなるドットS,Lを含むテストパターン1130を複数回印刷させ、異なる駆動波形毎に得られたテストパターン1130の各々の画像の特徴に基づいて、インクジェットヘッドの駆動波形を調整する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを含むインクジェットヘッドと、
媒体に印刷された画像を読み取る画像読取部と、
前記インクジェットヘッドの駆動波形を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記駆動波形を変更しながら、前記インクジェットヘッドに、異なるサイズの液滴からなるドットを含むテストパターンを複数回印刷させ、
異なる前記駆動波形毎に得られた前記テストパターンの各々の画像の特徴に基づいて、前記インクジェットヘッドの前記駆動波形を調整する、画像形成装置。
【請求項2】
前記異なるサイズの液滴からなるドットは、前記複数のノズルの中の第1ノズルによって作られたドットを含み、
前記第1ノズルによって作られたドットは、前記媒体の搬送方向に並んだ第1サイズの液滴からなる第1ドットと、前記第1サイズとは異なる第2サイズの液滴からなる第2ドットとを含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記テストパターンの各々の画像の特徴は、前記媒体の搬送方向における前記第1ドット及び前記第2ドット間の距離である、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドの前記駆動波形を調整することは、前記第1ドット及び前記第2ドット間の距離が最大となる駆動波形を選択すること、又は、前記第1ドット及び前記第2ドット間の距離が最小となる駆動波形を選択することを含む、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記テストパターンは、第1サイズの液滴からなる第1ドットと、前記第1サイズとは異なる第2サイズの液滴からなる第2ドットとを含むハーフトーンを含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ハーフトーンの濃度は、前記第1ドット及び前記第2ドットの各々が占有する面積比が略等しい濃度である、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記テストパターンの各々の画像の特徴は、前記ハーフトーンの各々の濃度である、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドの前記駆動波形を調整することは、最も濃い濃度の前記ハーフトーンの駆動波形を選択することを含む、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドの前記駆動波形を調整することは、前記インクジェットヘッドの駆動信号のパルス幅を変更することを含む、請求項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記複数のノズルの各々は、ピエゾ素子によって駆動する、請求項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関し、より特定的には、インクジェットヘッドの駆動信号の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の画像形成装置は、インクジェットヘッドを備える。インクジェットヘッドは、AL(Acoustic Length)によってインクの射出速度が変化する。そのため、画像形成装置は、インクジェットヘッドの製造時の検査により得られるALに応じて、駆動波形を調整することが望ましい。しかしながら、インクジェットヘッドの検査は多くの時間を要する。また、画像形成装置の状態(温度及びインクの状態等)によってもインクジェットヘッドの最適な駆動波形は変化し得る。そのため、より効率的にインクジェットヘッドの駆動波形を調整する技術が望まれている。
【0003】
インクジェットヘッドの駆動波形を調整する技術に関し、例えば、特開2018-058320号公報(特許文献1)は、液体吐出装置の吐出速度調整方法を開示している。当該吐出速度調整方法は、「設定電圧として初期電圧を設定したときに、複数のノズル列のうち吐出部のノズルからのインク滴の吐出速度が最高速のノズル列を基準ノズル列とする。ノズル列毎の吐出部からの吐出速度を、印刷したテストパターンにおけるインク滴の着弾位置から判定する。基準ノズル以外の他のノズル列の吐出部から吐出したインク滴の着弾位置が基準ノズル列の吐出部から吐出したインク滴の着弾位置と許容範囲内で一致しなければ、許容範囲内で一致するまで、設定電圧Vmkをステップ電圧αずつ上昇させ(Vmk=Vmk+α)、許容範囲内で一致すればその設定電圧Vmkを確定する。こうしてノズル列毎に吐出部の吐出速度が調整される」というものである([要約]参照)。
【0004】
また、インクジェットヘッドの駆動波形の調整に関する他の技術が、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-058320号公報
【特許文献2】特開2016-124245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェットヘッドは、大液滴及び小液滴と呼ばれる異なるサイズの液滴を射出し得る。特許文献1及び2に開示された技術によると、大液滴及び小液滴の両方の射出速度を適切に調整することができない。したがって、大液滴及び小液滴の両方の射出速度を適切に調整するための技術が必要とされている。
【0007】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、大液滴及び小液滴の両方の射出速度を適切に調整するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従うと、画像形成装置が提供される。画像形成装置は、複数のノズルを含むインクジェットヘッドと、媒体に印刷された画像を読み取る画像読取部と、インクジェットヘッドの駆動波形を制御する制御部とを備える。制御部は、駆動波形を変更しながら、インクジェットヘッドに、異なるサイズの液滴からなるドットを含むテストパターンを複数回印刷させ、異なる駆動波形毎に得られたテストパターンの各々の画像の特徴に基づいて、インクジェットヘッドの駆動波形を調整する。
【0009】
ある局面において、異なるサイズの液滴からなるドットは、複数のノズルの中の第1ノズルによって作られたドットを含む。第1ノズルによって作られたドットは、媒体の搬送方向に並んだ第1サイズの液滴からなる第1ドットと、第1サイズとは異なる第2サイズの液滴からなる第2ドットとを含む。
【0010】
ある局面において、テストパターンの各々の画像の特徴は、媒体の搬送方向における第1ドット及び第2ドット間の距離である。
【0011】
ある局面において、インクジェットヘッドの駆動波形を調整することは、第1ドット及び第2ドット間の距離が最大となる駆動波形を選択すること、又は、第1ドット及び第2ドット間の距離が最小となる駆動波形を選択することを含む。
【0012】
ある局面において、テストパターンは、第1サイズの液滴からなる第1ドットと、第1サイズとは異なる第2サイズの液滴からなる第2ドットとを含むハーフトーンを含む。
【0013】
ある局面において、ハーフトーンの濃度は、第1ドット及び第2ドットの各々が占有する面積比が略等しい濃度である。
【0014】
ある局面において、テストパターンの各々の画像の特徴は、ハーフトーンの各々の濃度である。
【0015】
ある局面において、インクジェットヘッドの駆動波形を調整することは、最も濃い濃度のハーフトーンの駆動波形を選択することを含む。
【0016】
ある局面において、インクジェットヘッドの駆動波形を調整することは、インクジェットヘッドの駆動信号のパルス幅を変更することを含む。
【0017】
ある局面において、複数のノズルの各々は、ピエゾ素子によって駆動する。
【発明の効果】
【0018】
ある実施の形態に従うと、大液滴及び小液滴の両方の射出速度を適切に調整することが可能である。
【0019】
この開示内容の上記及び他の目的、特徴、局面及び利点は、添付の図面と関連して理解される本開示に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態に従う画像形成装置100の構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に従う画像形成装置100の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】画像形成時におけるヘッドモジュールH及び媒体Pの関係を示す図である。
【
図4】インクジェットヘッド2における媒体Pとの対向面(ノズル面)の一例を示す図である。
【
図5】液滴吐出部22の構成の一例を示す図である。
【
図6】液滴吐出部22の液滴吐出動作の一例を示す図である。
【
図8】大液滴駆動波形及び大液滴駆動波形によって吐出される液滴の一例を示す図である。
【
図9】前半の駆動波形300aの駆動周期(AL)と、大液滴駆動波形300によって形成される大液滴の液滴速度との関係の一例を示す図である。
【
図10】インクジェットヘッドの個体差及びALの違いが印刷に及ぼす影響の一例を示す図である。
【
図11】第1テストパターン1100の一例を示す図である。
【
図12】第2テストパターン1200の一例を示す図である。
【
図13】画像形成装置100による駆動波形の調整の手順の一例を示す図である。
【
図14】ヘッドモジュールHの駆動波形の設定条件1400の一例を示す。
【
図15】第1テストパターン1100の解析結果1500の一例を示す図である。
【
図16】第2テストパターン1200の解析結果1600の一例を示す図である。
【
図17】誤差拡散等のハーフトーンの矩形領域内の小液滴及び大液滴の数の一例を示す図である。
【
図18】駆動波形毎に各濃度のハーフトーンがどのように変化するのかの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、各実施の形態及び各変形例等は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0022】
<A.装置構成>
図1は、本実施の形態に従う画像形成装置100の構成の一例を示す図である。
図2は、本実施の形態に従う画像形成装置100の回路構成の一例を示す図である。
図1及び
図2を参照して、本実施の形態に従う画像形成装置100の構成について説明する。
【0023】
画像形成装置100は、インクジェットプリンターである。画像形成装置100は、搬送部1と、インクジェットヘッド2と、画像読取部3と、制御部4と、操作表示部5とを備える。また、画像形成装置100は、
図1に示される構成以外にも画像形成装置が備える任意の構成を備えていてもよい。画像形成装置100は、主な回路構成として、制御部4と、操作表示部5と、通信部6と、搬送モーター13と、駆動回路21と、液滴吐出部22と、画像読取部3とを備える。
【0024】
搬送部1は、搬送ベルト11と、搬送ベルト11が架け渡される一対の搬送ローラー12と、搬送ローラー12を周回移動させる搬送モーター13とを備える。搬送ベルト11上に載置された媒体Pは、搬送モーター13の回転動作により、矢印により示される方向に搬送される。媒体Pは、予め決められたサイズに裁断されたシート状のものに限らず、長尺状のものであってもよい。また、搬送部1は、図示しない円筒状の搬送ドラムを回転させることで、当該搬送ドラムの表面に配置された媒体Pを回転方向に移動させる構成であってもよい。
【0025】
インクジェットヘッド2は、駆動回路21と液滴吐出部22とを有する。また、インクジェットヘッド2における媒体Pとの対向面(ノズル面)には、複数のヘッドモジュールH(
図3参照)が設けられる。駆動回路21は、液滴吐出部22を駆動させて、各ノズルN(
図3参照)からインクの液滴を吐出させる。駆動回路21は、インクジェットヘッド2の各ノズルNから液滴を吐出するための駆動波形のデータを記憶する駆動波形記憶部21aを含む。駆動波形記憶部21aは、小液滴駆動波形及び大液滴駆動波形のデータを格納する。そして、駆動回路21は、制御部4からの制御信号に基づいて、駆動波形記憶部21aに記憶されている駆動波形のうちの何れかの駆動波形を予め決められたタイミングで液滴吐出部22に出力する。液滴吐出部22は、ノズルに連通して液体(インク)が貯留される圧力室と、圧力室内の液体に圧力を付与する圧力発生手段とを備える。圧力発生手段は、駆動回路21から出力された何れかの駆動波形の印加によって動作し、圧力室内の液体に吐出のための圧力を付与する。これにより、媒体Pに対向するノズル面に配列された各ノズルNから予め決められたタイミングで液滴が吐出される。吐出された液滴により、画像P1が媒体P上に印刷される。
【0026】
画像読取部3は、媒体P上に印刷された画像を読み取り、当該画像を制御部4に出力する。画像読取部3は、画像を読み取るためのイメージセンサー31を備える。制御部4は、画像形成装置100全体を制御する。例えば、制御部4は、通信部6又は操作表示部5から入力された印刷ジョブに基づいて、印刷処理を実行する。また、制御部4は、画像読取部3から取得した画像を解析する。さらに、制御部4は、駆動回路21を介して、インクジェットヘッド2の駆動波形の制御を行い得る。より具体的には、制御部4は、画像読取部3から取得したトナーパターンの画像を解析して、解析結果に基づいて、インクジェットヘッド2(液滴吐出部22)の駆動波形を調整する。
【0027】
操作表示部5は、操作パネル等を表示する画面と、タッチパネルと、ボタンとを備える。操作表示部5は、画像形成装置100に関する各種情報を表示する。また、操作表示部5は、ユーザーからの操作入力を受け付ける。操作表示部5は、受け付けた操作入力に関する信号を制御部4に出力する。通信部6は、他の装置と通信可能に構成される。一例として、通信部6は、画像データ及び印刷ジョブを受信する。通信部6は、受信した画像データ及び印刷ジョブを制御部4に出力する。
【0028】
図3は、画像形成時におけるヘッドモジュールH及び媒体Pの関係を示す図である。ヘッドモジュールHは、一例として、幅Wだけ離間した2列のノズル列L1、L2を有する。そして、各ノズル列L1、L2には、複数のノズルNが配置される。媒体Pは、矢印で示されるように、ノズル列方向(図中の左右方向)と直交する搬送方向に搬送される。画像形成装置100は、媒体PがヘッドモジュールH直下を通り過ぎるときに、各ノズルNから液滴を吐出させることにより、媒体P上に画像を印刷する。媒体Pを基準にすると、2列のノズル列L1、L2が主走査方向(媒体Pの搬送方向の反対方向)に移動していることになる。ノズルNの各々は、相対的に液滴量が多い大液滴と、相対的に液滴量が少ない小液滴とを打ち分け可能である。ある局面において、複数のノズルNの各々は、ピエゾ素子によって駆動する。
【0029】
図4は、インクジェットヘッド2における媒体Pとの対向面(ノズル面)の一例を示す図である。インクジェットヘッド2は、複数のヘッドモジュールHを備える。これにより、インクジェットヘッド2は、主走査方向(媒体Pの搬送方向の反対方向)に直交する媒体Pの幅方向に亘って液滴を吐出可能に構成される。ヘッドモジュールHに設けられた複数のノズルNの各々は、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)等の複数色のインクをそれぞれ独立に吐出可能に構成され得る。
【0030】
媒体Pは、画像形成装置100に固定されたインクジェットヘッド2に対して一方向に搬送される。画像形成装置100は、この媒体Pの搬送過程で、インクジェットヘッド2のノズルから液滴を吐出し、媒体P上に画像をシングルパス方式で形成する。インクジェットヘッド2は、各々のノズルNから大液滴、小液滴を打ち分け可能である。
【0031】
インクジェットヘッド2には、それぞれ複数のノズルNが配列されたヘッドモジュールHが幅方向に千鳥配置で複数配列される。各ヘッドモジュールHは、
図3に示したものと同様の構造を有する。各ヘッドモジュールHの幅方向端部に配置されるノズルNは、他のヘッドモジュールHの幅方向端部に配置されるノズルNと幅方向の位置が重複するように配置される。このような配置により、インクジェットヘッド2は、全体として幅方向に切れ目無くインクを吐出することができる。
【0032】
図5は、液滴吐出部22の構成の一例を示す図である。
図5(a)は、液滴吐出部22の一側面を断面で示す斜視図である。
図5(b)は液滴吐出部22の断面図である。
図5には、1列のノズル列を構成する部位のみを示す。
【0033】
液滴吐出部22は、チャネル基板70と、チャネル71と、隔壁72と、カバー基板73と、ノズルプレート74と、共通流路75とを備える。細溝状の複数のチャネル71と隔壁72とが、チャネル基板70上に交互に設けられる。カバー基板73は、チャネル基板70の上面に設けられる。カバー基板73は、チャネル71の図中上方を塞ぐ。チャネル基板70とカバー基板73の端面には、ノズルプレート74が接合される。各チャネル71の一端は、このノズルプレート74に形成されたノズルNを介して外部と連通する。
【0034】
各チャネル71の他端は、チャネル基板70に対して徐々に浅溝となるように形成される。カバー基板73には、各チャネル71の他端と連通する共通流路75が形成される。共通流路75には、供給管(図示せず)等を介して、液体(インク)が供給される。
【0035】
隔壁72は、電気・機械変換手段であるPZT等の圧電素子(ピエゾ素子)から構成される。一例として、隔壁72は、上壁部72aと下壁部72bとが互いに反対方向に分極処理された圧電素子によって形成される。他の例として、圧電素子によって形成される部分は、上壁部72aのみであってもよい。隔壁72及びチャネル71は交互に並設されているため、1つの隔壁72はその両隣のチャネル71で共用される。
【0036】
チャネル71の内面には、両側の隔壁72の壁面から底面に亘って、それぞれ駆動電極(図示せず)が形成される。隔壁72を挟んで配置される2つの駆動電極に、駆動回路21からそれぞれ膨張パルス及び収縮パルスを含む駆動波形が印加されたとする。この場合、隔壁72は、上壁部72aと下壁部72bとの接合面を境にしてせん断変形する。隣り合う2つの隔壁72が互いに反対方向にせん断変形すると、これらの隔壁72に挟まれたチャネル71の容積が膨張又は収縮し、内部に圧力波が発生する。これによってチャネル71内の液体に吐出のための圧力が付与される。
【0037】
液滴吐出部22は、隔壁72がせん断変形することによってチャネル71内の液体(インク)をノズルNから吐出させるせん断モード型のヘッドである。せん断モード型のヘッドは、駆動波形として矩形波を使用することにより、効率良く液滴を吐出させることができる。
【0038】
チャネル基板70、隔壁72、カバー基板73及びノズルプレート74により囲まれるチャネル71は、圧力室を構成する。また、隔壁72及びその表面の駆動電極は、圧力発生手段を構成する。
【0039】
図6は、液滴吐出部22の液滴吐出動作の一例を示す図である。
図6には、
図5に示す液滴吐出部22をチャネル71の長さ方向と直交する方向に切断した断面の一部が示されている。また、
図6には、チャネル71A,71B,71Cと、隔壁72A,72B,72C,72Dと、駆動電極76A,76B,76Cとが示されている。液滴を吐出するチャネル71Bを挟む両隣のチャネル71A,71Cは、ダミーのチャネルである。ダミーのチャネル71A,71Cは、ノズルNが形成されておらず、液滴の吐出を行わない。
図6を参照して、中央のチャネル71Bから液滴を吐出させる場合の液滴吐出部22の動作について説明する。
【0040】
図6(a)において、駆動電極76A,76B,76Cの全ては、中立状態である。駆動回路21は、
図6(a)の状態において、駆動電極76A及び76Cを接地すると共に駆動電極76Bに膨張パルスを印加する。当該印加により、
図6(b)に示されるように、隔壁72B、72Cは、互いに外側に向けて屈曲変形し、隔壁72B、72Cに挟まれたチャネル71Bの容積が膨張する。これにより、チャネル71B内に負の圧力が発生し、共通流路75からチャネル71B内に液体が流れ込む。その後、駆動回路21が膨張パルスの印加を終了すると、チャネル71Bは膨張状態から収縮し、
図6(a)に示される中立状態に戻る。
【0041】
次に、駆動回路21は、駆動電極76A及び76Cを接地すると共に駆動電極76Bに収縮パルスを印加する。当該印加により、
図6(c)に示されるように、隔壁72B、72Cは、互いに内側に向けて屈曲変形し、隔壁72B、72Cに挟まれたチャネル71Bの容積が収縮する。これによりチャネル71B内に正の圧力が発生する。この圧力がチャネル71B内の液体をノズルNから吐出させる程に大きくなると、ノズルNから液滴が吐出される。その後、駆動回路21が収縮パルスの印加を終了すると、チャネル71Bは収縮状態から膨張し、
図6(a)に示される中立状態に戻る。
【0042】
<B.駆動波形及び液滴の関係>
次に
図7~
図10を参照して、小液滴及び大液滴の各々がどのような駆動波形により生成されるのかについて説明する。併せて、インクジェットヘッド2の個体差及びALの違いが印刷に及ぼす影響について説明する。インクジェットヘッド2の個体差とは、ヘッドモジュールHの個体差又はノズルNの個体差であるとも言える。
【0043】
図7は、小液滴駆動波形の一例を示す図である。小液滴駆動波形は、ノズルNから小液滴を吐出させるための駆動波形である。小液滴駆動波形は、駆動回路21によって生成され、液滴吐出部22に印加される。
【0044】
小液滴駆動波形200は、1画素周期内に、膨張パルス201、第1の収縮パルス202及び第2の収縮パルス203をこの順に有する。膨張パルス201は、チャネル71の容積を膨張させ、一定時間後に収縮させる(戻す)パルスである。第1の収縮パルス202は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。第2の収縮パルス203は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。
【0045】
膨張パルス201は、基準電位から立ち上がり、一定時間後に基準電位まで立ち下がるパルスである。第1の収縮パルス202及び第2の収縮パルス203は、基準電位から立ち下がり、一定時間後に基準電位まで立ち上がるパルスである。膨張パルス201及び第1の収縮パルス202は、間に休止期間を置かずに連続する。第1の収縮パルス202と第2の収縮パルス203との間には、基準電位を一定期間維持するための休止期間204が設けられる。
【0046】
膨張パルス201、第1の収縮パルス202、第2の収縮パルス203及び休止期間204の各々の幅は、特に限定されない。一例として、膨張パルス201の幅は1AL、第1の収縮パルス202の幅は0.5AL、第2の収縮パルス203の幅は1AL、休止期間204の幅は0.5ALであってもよい。
【0047】
ALとは、Acoustic Lengthの略であり、チャネル71における圧力波の音響的共振周期の1/2のことである。ALの算出のために、駆動電極に矩形波の駆動信号を印加した際に吐出される液滴の飛翔速度が測定される。ALは、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、液滴の飛翔速度が最大になるパルス幅である。パルス幅は、基準電圧を0%、波高値電圧を100%とした場合に、基準電圧からの立ち上がり10%と波高値電圧からの立ち下がり10%との間の時間として定義される。
【0048】
小液滴駆動波形200によって吐出される小液滴の発射速度を調整する場合、例えば膨張パルス201のパルス幅を調整することによって行うことができる。また、駆動電圧を調整することによって液滴の発射速度を調整することもできる。これにより、小液滴の吐出によって形成されるドットの位置を本来の位置からずらすことができる。駆動電圧を調整する場合、液滴によって媒体P上に作られるドットのドット径も大きく変化してしまう。そこで、後述するように、本実施の形態に従う画像形成装置100は、駆動波形のパルス幅を調整することで、液滴の発射速度を調整する。
【0049】
図8は、大液滴駆動波形及び大液滴駆動波形によって吐出される液滴の一例を示す図である。大液滴駆動波形は、ノズルNから大液滴を吐出させるための駆動波形である。大液滴駆動波形は、駆動回路21によって生成され、液滴吐出部22に印加される。
【0050】
大液滴駆動波形300は、1画素周期内に、2種類の駆動波形300a、300bを組み合わせることによって構成される。
【0051】
前半の駆動波形300aは、第1の膨張パルス301、第1の収縮パルス302、第2の膨張パルス303、第2の収縮パルス304及び第3の収縮パルス305をこの順に有する。第1の膨張パルス301は、チャネル71の容積を膨張させ、一定時間後に収縮させる(戻す)パルスである。第1の収縮パルス302は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。第2の膨張パルス303は、チャネル71の容積を膨張させ、一定時間後に収縮させる(戻す)パルスである。第2の収縮パルス304は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。第3の収縮パルス305は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。
【0052】
後半の駆動波形300bは、第3の膨張パルス307、第4の収縮パルス308及び第5の収縮パルス309をこの順に有する。第3の膨張パルス307は、チャネル71の容積を膨張させ、一定時間後に収縮させる(戻す)パルスである。第4の収縮パルス308は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。第5の収縮パルス309は、チャネル71の容積を収縮させ、一定時間後に膨張させる(戻す)パルスである。
【0053】
第1の膨張パルス301、第2の膨張パルス303及び第3の膨張パルス307は、基準電位から立ち上がり、一定時間後に基準電位まで立ち下がるパルスである。第1の収縮パルス302、第2の収縮パルス304、第3の収縮パルス305、第4の収縮パルス308及び第5の収縮パルス309は、基準電位から立ち下がり、一定時間後に基準電位まで立ち上がるパルスである。
【0054】
第1の膨張パルス301及び第1の収縮パルス302は、間に休止期間を置かずに連続する。第1の収縮パルス302及び第2の膨張パルス303は、間に休止期間を置かずに連続する。第2の膨張パルス303及び第2の収縮パルス304は、間に休止期間を置かずに連続する。第3の膨張パルス307及び第4の収縮パルス308は、間に休止期間を置かずに連続する。
【0055】
第2の収縮パルス304と第3の収縮パルス305との間には、基準電位を一定期間維持するための休止期間306が設けられている。第3の収縮パルス305と第3の膨張パルス307との間には、基準電位を一定期間維持するための休止期間311が設けられている。第4の収縮パルス308と第5の収縮パルス309との間には、基準電位を一定期間維持するための休止期間310が設けられている。
【0056】
前半の駆動波形300aにおける第1の膨張パルス301及び第1の収縮パルス302によって、ノズルNから第1液滴DR1が吐出される。続く第2の膨張パルス303及び第2の収縮パルス304によって、同じノズルNから、第1液滴DR1よりも大きな第2液滴DR2が吐出される。第1液滴DR1は、第2液滴DR2に対して相対的に液滴速度は遅い。このため、第1液滴DR1及び第2液滴DR2は、吐出直後の飛翔中に合体する。「液滴速度」とは、液滴が飛翔するときの速度である。
【0057】
第1液滴DR1及び第2液滴DR2の吐出後に、後半の駆動波形300bによって、同じノズルNから、第3液滴DR3が吐出される。第3液滴DR3は、第1液滴DR1及び第2液滴DR2が合体した液滴(「合体液滴」と呼ぶ)よりも液滴速度が速い。そのため、第3液滴DR3は、飛翔中に合体液滴と合体、又は、媒体P上の合体液滴の着弾位置とほぼ同じ位置に着弾して合体液滴と合体する。その結果、媒体P上に、十分に大きな液滴量を持つ大液滴DRからなる大ドットが形成される。
【0058】
前半の駆動波形300aだけでも、ノズルNは、比較的大きな液滴を射出し得る。しかしながら、大液滴DRは、液滴速度の遅い第1液滴DR1と液滴速度が速い第2液滴DR2とにより形成された合体液滴に、第3液滴DR3が合体することにより形成される。すなわち、画像形成装置100は、複数の液滴からなる大液滴DRを吐出することで、同じ液滴量の1個の液滴を吐出する場合に比べて、液滴速度を遅くし、サテライト量も抑制し得る。
【0059】
第1の膨張パルス301、第1の収縮パルス302、第2の膨張パルス303、第2の収縮パルス304及び第3の収縮パルス305の幅は、特に限定されない。同様に、第3の膨張パルス307、第4の収縮パルス308及び第5の収縮パルス309の幅は、特に限定されない。同様に、休止期間306、311、310の幅は、特に限定されない。一例として、前半の第1の膨張パルス301の幅は0.8AL、第1の収縮パルス302の幅は0.4AL、第2の膨張パルス303の幅は1AL、第2の収縮パルス304の幅は0.5AL、第3の収縮パルス305の幅は1AL、休止期間306の幅は0.5ALであってもよい。また、後半の第3の膨張パルス307の幅は1AL、第4の収縮パルス308の幅は0.5AL、第5の収縮パルス309の幅は1ALであってもよい。さらに、休止期間311の幅は1.3AL、休止期間310の幅は0.5AL、であってもよい。この場合、第1の膨張パルス401の立ち上がりから5.5AL経過後に第3の膨張パルス307が立ち上がる。
【0060】
図8に示されるように、前半の駆動波形300a及び後半の駆動波形300bの2つの駆動波形により吐出された液滴が合一して1つの大液滴を形成する。そのため、画像形成装置100は、例えば前半の駆動波形300aの駆動周期を変化させることによって、吐出される大液滴の液滴速度を調整することができる。
【0061】
図9は、前半の駆動波形300aの駆動周期(AL)と、大液滴駆動波形300によって形成される大液滴の液滴速度との関係の一例を示す図である。駆動波形300aの駆動周期は、第1の膨張パルス301の立ち上がりから、第3の膨張パルス307の立ち上がりまでの期間である。
図9のグラフに示されるように、画像形成装置100は、例えば、駆動周期を5.5ALから長短に調整することにより、大液滴の液滴速度を調整し得る。
【0062】
また、画像形成装置100は、大液滴駆動波形300における後半の駆動波形300bのパルス幅を調整することによって、大液滴の液滴速度を調整し得る。より具体的には、画像形成装置100は、第3の膨張パルス307のパルス幅を調整することによって、大液滴の液滴速度を調整し得る。
【0063】
上述した小液滴駆動波形及び大液滴駆動波形の波形構成及びパルス幅はあくまで一例であり、これらに何ら限定されない。大液滴駆動波形は、チャネル71の容積を膨張させ一定時間後に戻す第1の膨張パルスと、チャネル71の容積を収縮させ一定時間後に戻す第1の収縮パルスと、チャネル71の容積を膨張させ一定時間後に戻す第2の膨張パルスと、チャネル71の容積を収縮させ一定時間後に戻す第2の収縮パルスとをこの順に有する駆動波形を含むものであればよい。画像形成装置100は、液滴吐出部22の具体的な構造、使用される液体の種類等によって、画像形成時及び補間設定時に使用される各駆動波形を適宜変更し得る。なお、膨張パルスは、チャネル71の容積を膨張させた後の一定時間後に戻すパルスに限定されず、一定時間後に収縮させるパルスであればよい。また、収縮パルスは、チャネル71の容積を収縮させた後の一定時間後に戻すパルスに限定されず、一定時間後に膨張させるパルスであればよい。
【0064】
図10は、インクジェットヘッドの個体差及びALの違いが印刷に及ぼす影響の一例を示す図である。一例として、画像形成装置100は、1つのノズルNを使用して、小液滴による第1ドット1010、白(インク無し)、白(インク無し)、大液滴による第2ドット1020を媒体P上に描画したとする。
【0065】
仮に、画像形成装置100が、最適なALであるパルス幅を用いてインクジェットヘッド2を駆動させたとする。この場合、小液滴による第1ドット1010Aと、大液滴による第2ドット1020Aとが媒体P上に描画される。第1ドット1010A及び第2ドット1020Aの位置は、第1ドット1010及び第2ドット1020の位置(狙った位置)と一致又は限りなく近い位置になる。また、第1ドット1010A及び第2ドット1020Aの中心間の距離Aは理論値通り3ドットになる。ここでの理論値は、第1ドット1010及び第2ドット1020の中心間の距離である。
【0066】
仮に、画像形成装置100が、最適なALから5%ずれたパルス幅を用いてインクジェットヘッド2を駆動させたとする。この場合、小液滴による第1ドット1010Bと、大液滴による第2ドット1020Bとが媒体P上に描画される。第1ドット1010B及び第2ドット1020Bの位置は、第1ドット1010及び第2ドット1020の位置(狙った位置)からずれた位置になる。特に、大液滴によって形成される第2ドット1020Bの位置は、第2ドット1020(狙った位置)から大きくずれる。小液滴と大液滴の中心間の距離Bは5ドット程度になる。すなわち、第1ドット1010B及び第2ドット1020Bの中心間の距離Bは5ドットになり、理論値の3ドットから大きくずれてしまう。
【0067】
インクジェットヘッド2の駆動波形(パルス幅)が最適なALからずれることにより、インクの射出速度が低下する。また、大液滴は、小液滴よりも、ALのずれの影響を受けやすい。そのため、主走査方向において、上流に小液滴によるドットがあり下流に大液滴によるドットがある場合、
図9の例のようにドット間の距離は拡大していく。逆に、主走査方向において上流に大液滴によるドットがあり下流に小液滴によるドットがある場合、ドット間の距離は縮小していく。
【0068】
このように、インクジェットヘッド2の駆動波形が最適なALからずれることにより、大液滴の射出速度(吐出速度)が大きく変ってしまう。これにより、画像形成装置100が大液滴を用いた横線を媒体Pに描画する際等に、画像にがたつきが生じることがある。また、インクジェットヘッド2の駆動波形が最適なALからずれることにより、小液滴と大液滴が混在するハーフトーンパッチの濃度が変化し得る。
【0069】
そのため、画像形成装置100は、各ノズルN又は各液滴吐出部22に最適な駆動波形(AL)を用いて、インクジェットヘッド2を駆動させることが望ましい。そこで、画像形成装置100は、
図11又は
図12のテストパターンの解析を行うことで、各ノズルN又は各液滴吐出部22に最適な駆動波形(AL)を推定する。一例として、画像形成装置100は、推定結果に基づいて、ノズルN単位で、駆動波形(AL)を調整してもよい。他の例として、画像形成装置100は、推定結果に基づいて、液滴吐出部22単位で、駆動波形(AL)を調整してもよい。
【0070】
<C.駆動波形の調整手順>
次に、
図11~
図18を参照して、画像形成装置100が描画する2つのテストパターンについて説明する。また、各テストパターンのから最適な駆動波形(AL)を推定する手順について説明する。ある局面において、画像形成装置100は、
図11及び
図12に示されるテストパターンのいずれか片方のみを用いて、最適な駆動波形(AL)を推定し得る。他の局面において、画像形成装置100は、
図11及び
図12に示されるテストパターンの両方を用いて、最適な駆動波形(AL)を推定し得る。画像形成装置100は、画像読取部3により、
図11及び
図12に示される各テストパターンを読み取る。また、画像形成装置100は、画像読取部3から取得した各テストパターンの画像を解析し、解析結果から最適な駆動波形(AL)を選択する。
【0071】
図11は、第1テストパターン1100の一例を示す図である。第1テストパターン1100は、各ヘッドモジュールHのノズル列毎のテストパターンを含む。また、ノズル列毎のテストパターンは、互いに異なる複数の駆動波形(条件A~Eでの駆動波形)を用いて描画されたテストパターンを含む。互いに異なる複数の駆動波形は、複数のAL設定(
図14参照)であるとも言える。
【0072】
図4に示されるインクジェットヘッド2を例に、第1テストパターン1100についてより詳細に説明する。インクジェットヘッド2は、第1~第8ヘッドモジュールHを備える。また、各ヘッドモジュールHは、複数のノズル列(L1、L2)を備える。複数のノズル列(L1、L2)の各々には、複数のノズルNが設けられる。
【0073】
テストパターン1110は、第1ヘッドモジュールの1列目(L1)に配置されたノズルNによるテストパターンである。テストパターン1110は、条件Aで描画されたテストパターン1111Aと、条件Bで描画されたテストパターン1111Bと、条件Cで描画されたテストパターン1111Cと、条件Dで描画されたテストパターン1111Dと、条件Eで描画されたテストパターン1111Eとを含む。
【0074】
テストパターン1120は、第1ヘッドモジュールの2列目(L2)に配置されたノズルNによるテストパターンである。テストパターン1120は、条件Aで描画されたテストパターン1121Aと、条件Bで描画されたテストパターン1121Bと、条件Cで描画されたテストパターン1121Cと、条件Dで描画されたテストパターン1121Dと、条件Eで描画されたテストパターン1121Eとを含む。
【0075】
同様に、第1テストパターン1100は、第2~8ヘッドモジュールHのノズル列(L1、L2)毎の駆動波形別のテストパターンを含む。なお、
図11の例では、5つの条件(条件A~E)が示されているがこれは一例に過ぎない。条件(駆動波形)の数は、任意の数に設定され得る。例えば、条件(駆動波形)の数が10個であれば、テストパターン1110,1120は、それぞれ、駆動波形別(条件A~E別)の10個のテストパターンを含む。
【0076】
テストパターン1130は、各ノズル列が描画するテストパターン1111A~1111E,1121A~1121Eの詳細を示す図である。テストパターン1130は、孤立した小液滴のドットSと、孤立した大液滴のドットLとを含む。ドットSを形成する小液滴及びドットLを形成する大液滴は、同一のノズルNから吐出される。ドットS及びドットLは、媒体Pの搬送方向(又は主操作方向)に離れている。媒体Pの搬送方向(又は主操作方向)におけるドットS及びドットLのドット間距離1150は、条件A~E毎に変化する。
図11の例では、主走査方向(媒体Pの搬送方向の逆方向)において、小液滴のドットSが上流に位置し、大液滴のドットLが下流に位置する。
【0077】
なお、ノズル列上の複数のノズルNの各々は、ドットS及びドットLを媒体Pに描画する。そのため、テストパターン1130は、ノズルN毎のドットS及びドットLの組み合わせ1140を含む。例えば、ノズル列が12個のノズルNを備える場合、ドットS及びドットLはそれぞれ12個描画され、組み合わせ1140も12個になる。
【0078】
次に、第1テストパターン1100に基づいて、駆動波形を選択する方法について説明する。一般的に、最適な駆動波形(AL)を用いた場合、インクの射出速度は最も速くなる。逆に、駆動波形(AL)が最適値からずれるに従い、インクの射出速度は遅くなる。また、前述のように、大液滴は、小液滴よりも、駆動波形(AL)の変化の影響を受けやすい(射出速度が変化しやすい)。
【0079】
前述の通り、テストパターン1130は、上流に小液滴のドットSがあり、下流に大液滴のドットLがある。この場合、駆動波形(AL)が最適値に近づくほど、ドット間距離1150は短くなる。なぜならば、駆動波形(AL)が最適値に近づくほど、大液滴の射出速度が大きく向上し、小液滴が媒体Pに着弾してから大液滴が媒体Pに着弾するまでの時間が短くなるためである。そのため、画像形成装置100(制御部4)は、ドット間距離1150の平均値が最小となる条件(駆動波形)を最適な駆動波形(最適なAL)として選択し得る。
【0080】
第1ヘッドモジュールHのノズル列(L1)を例に説明すると、画像形成装置100は、テストパターン1111A~1111E毎に、ドット間距離1150の平均値を算出する。画像形成装置100は、各ノズルNが描画したドットS及びドットLのドット間距離1150を合算し、合算結果をノズルN数で割ることで、ドット間距離1150の平均値を算出し得る。
【0081】
ある局面において、画像形成装置100は、テストパターン1130内のドットS及びドットLの位置関係を逆にしてもよい。すなわち、主走査方向において、大液滴によるドットLが上流に位置し、小液滴によるドットSが下流に位置してもよい。この場合、駆動波形(AL)が最適値に近づくほど、ドット間距離1150は長くなる。なぜならば、駆動波形(AL)が最適値に近づくほど、大液滴の射出速度が大きく向上し、大液滴が媒体Pに着弾してから小液滴が媒体Pに着弾するまでの時間が長くなるためである。そのため、画像形成装置100(制御部4)は、ドット間距離1150の平均値が最大となる条件(駆動波形)を最適な駆動波形(最適なAL)として選択し得る。
【0082】
また、他の局面において、画像形成装置100は、ヘッドモジュールH毎に算出されたドット間距離1150の差が最小となる駆動波形(AL)を選定してもよい。例えば、第1ヘッドモジュールHのドット間距離1150が最小であり、第2ヘッドモジュールHのドット間距離1150が最大であったとする。この場合、第1ヘッドモジュールH及び第2ヘッドモジュールHの個体差が大きすぎて、第2ヘッドモジュールHでは、第1ヘッドモジュールHのドット間距離1150を再現できないかもしれない。このような場合、画像形成装置100は、全てのヘッドモジュールHが再現可能なドット間距離1150を実現するための駆動波形を選定し得る。
【0083】
図11の例では、画像形成装置100は、液滴吐出部22単位(ノズル列単位)で、駆動波形を調整しているが、これは一例に過ぎない。駆動回路21が各ノズルNを個別に駆動できる場合、画像形成装置100は、ノズルN単位で駆動波形を調整し得る。この場合、画像形成装置100は、ノズルN毎に、条件を変更しながら、テストパターン(ドットS及びドットLの組み合わせ1140)を描画する。画像形成装置100は、ノズルN毎に、駆動波形別のドット間距離1150を算出する。画像形成装置100は、ドットSが上流にありドットLが下流にある場合、ノズルN毎に、ドット間距離1150が最小となる駆動波形(AL)を選択する。画像形成装置100は、ドットLが上流にありドットSが下流にある場合、ノズルN毎に、ドット間距離1150が最大となる駆動波形(AL)を選択する。
【0084】
図12は、第2テストパターン1200の一例を示す図である。第2テストパターン1200は、各ヘッドモジュールHのテストパターンを含む。また、ヘッドモジュールH毎のテストパターンは、互いに異なる複数の駆動波形(条件A~Eでの駆動波形)を用いて描画されたテストパターンを含む。
【0085】
図4に示されるインクジェットヘッド2を例に、第2テストパターン1200についてより詳細に説明する。テストパターン1210は、第1ヘッドモジュールによるテストパターンである。テストパターン1210は、誤差拡散又はディザ処理等のハーフトーン処理がなされた中間調の矩形領域のパッチ画像である。
【0086】
テストパターン1210は、条件Aで描画されたテストパターン1211Aと、条件Bで描画されたテストパターン1211Bと、条件Cで描画されたテストパターン1211Cと、条件Dで描画されたテストパターン1211Dと、条件Eで描画されたテストパターン1211Eとを含む。
【0087】
同様に、第2テストパターン1200は、第2~8ヘッドモジュールH毎の駆動波形別のテストパターンを含む。なお、
図12の例では、5つの駆動波形(条件A~Eでの駆動波形)が示されているがこれは一例に過ぎない。駆動波形の数は、任意の数に設定され得る。例えば、駆動波形の数が10個であれば、テストパターン1210は、駆動波形別の10個のテストパターンを含む。
【0088】
次に、第2テストパターン1200に基づいて、駆動波形を選択する方法について説明する。ハーフトーン処理のパラメータは、各ドットが理想的な位置に配置されることを前提に設定される。しかしながら、ALが最適値からずれたことによりインクの射出速度が想定される速度から変化した場合、ドット同士の位置関係もずれてしまう。その結果、位置ずれしたドット同士の重なりが増えてしまう。ドット同士の重なりが増えると、媒体P上の空白(印字されない領域)が増えることになる。そのため、ハーフトーンの濃度は薄くなる。
【0089】
このことから、画像形成装置100は、読み取られたハーフトーン(矩形領域)の濃度が最も高くなる駆動波形を最適な駆動波形として選定し得る。例えば、画像形成装置100は、テストパターン1121Cの濃度が最も高い場合、条件Cを最適な駆動波形として選定し得る。
【0090】
ある局面において、画像形成装置100は、ヘッドモジュールH毎に算出された濃度の差が最小となる駆動波形(AL)を選定してもよい。例えば、第1ヘッドモジュールHによるハーフトーンの濃度が最も高く、第2ヘッドモジュールHによるハーフトーンの濃度が最も低かったとする。この場合、第1ヘッドモジュールH及び第2ヘッドモジュールHの個体差が大きすぎて、第2ヘッドモジュールHでは、第1ヘッドモジュールHと同じ濃度を再現できないかもしれない。このような場合、画像形成装置100は、全てのヘッドモジュールHが再現可能な濃度を実現するための駆動波形を選定し得る。
【0091】
ある局面において、画像形成装置100は、第1テストパターン1100のみを用いて、駆動波形(AL)を調整してもよい。他の局面において、画像形成装置100は、第2テストパターン1200のみを用いて、駆動波形(AL)を調整してもよい。
【0092】
さらに、他の局面において、画像形成装置100は、第1テストパターン1100及び第2テストパターン1200の両方を用いて、駆動波形(AL)を調整してもよい。例えば、画像形成装置100は、第1テストパターン1100の解析の結果、条件Aを第1ヘッドモジュールHの最適な駆動波形として選択したとする。次に、画像形成装置100は、第2テストパターン1200の解析の結果、条件Bを第1ヘッドモジュールHの最適な駆動波形として選択したとする。この場合、画像形成装置100は、条件A及び条件Bの平均値を駆動波形として選択してもよい。また、画像形成装置100は、第1テストパターン1100の解析結果である条件Aを優先して選択してもよい。逆に、画像形成装置100は、第2テストパターン1200の解析結果である条件Bを優先して選択してもよい。
【0093】
上記の通り、画像形成装置100は、複数のノズルNを含むインクジェットヘッド2と、媒体に印刷された画像を読み取る画像読取部3と、インクジェットヘッド2の駆動波形を制御する制御部4とを備える。制御部4は、駆動波形を変更しながら、インクジェットヘッド2に、異なるサイズの液滴からなるドットを含むテストパターンを複数回印刷させる。すなわち、制御部4は、第1テストパターン1100又は第2テストパターン1200をインクジェットヘッド2に印刷させる。また、制御部4は、異なる駆動波形毎に得られたテストパターンの各々の画像の特徴に基づいて、インクジェットヘッド2の駆動波形を調整する。第1テストパターン1100における画像の特徴は、ドット間距離1150である。第2テストパターン1200における画像の特徴は、ハーフトーンの濃度である。
【0094】
上記のインクジェットヘッド2の駆動波形を調整することは、インクジェットヘッド2の駆動信号のパルス幅を変更することを含む。より具体的には、制御部4は、駆動波形(AL)を変更することで、例えば
図7及び
図8に示される各液滴の駆動信号のパルス幅を調整(変更)し得る。
【0095】
ある局面において、異なるサイズの液滴からなるドットは、複数のノズルNの中の第1ノズルNによって作られたドットを含む。また、第1ノズルNによって作られたドットは、媒体の搬送方向に並んだ第1サイズの液滴(小液滴)からなる第1ドットと、第1サイズとは異なる第2サイズの液滴(大液滴)からなる第2ドットとを含む。例えば、画像形成装置100が第1テストパターン1100を印刷したとする。この場合、第1テストパターン1100は、
図11に示されるように同一ノズルNによって印刷されたドットS及びドットLを含む。この場合、複数のテストパターンの各々の画像の特徴は、媒体の搬送方向における第1ドット(ドットS)及び第2ドット(ドットL)間の距離(ドット間距離1150)である。
【0096】
また、第1テストパターン1100が使用された場合、制御部4がインクジェットヘッド2の駆動波形を調整することは、次の2つの処理を含み得る。1つ目の処理は、第1ドット(ドットS)及び第2ドット(ドットL)間の距離(ドット間距離1150)が最小となる駆動波形を選択することである。第1ドット(ドットS)が主走査方向の上流に印刷され、第2ドット(ドットL)が主走査方向の下流に印刷された場合、制御部4は、1つ目の処理を実行する。
図15を例に説明すると、画像形成装置100は、最適な駆動波形として条件CのALを選択する。2つ目の処理は、第1ドット(ドットS)及び第2ドット(ドットL)間の距離(ドット間距離1150)が最大となる駆動波形を選択することである。第2ドット(ドットL)が主走査方向の上流に印刷され、第1ドット(ドットS)が主走査方向の下流に印刷された場合、制御部4は、2つ目の処理を実行する。
【0097】
他の局面において、テストパターンは、第1サイズの液滴からなる第1ドットと、第1サイズとは異なる第2サイズの液滴からなる第2ドットとを含むハーフトーンを含む。例えば、画像形成装置100が第2テストパターン1200を印刷したとする。この場合、第2テストパターン1200は、
図12に示されるように、第1サイズの液滴(小液滴)からなる第1ドット(ドットS)と、第1サイズとは異なる第2サイズの液滴(大液滴)からなる第2ドット(ドットL)とを含むハーフトーンを含む。画像形成装置100は、ヘッドモジュールH毎に、駆動波形別のハーフトーンを印刷する。この場合、複数のテストパターンの各々の画像の特徴は、ハーフトーンの各々の濃度である。また、第2テストパターン1200が使用された場合、制御部4がインクジェットヘッド2の駆動波形を調整することは、最も濃い濃度のハーフトーンの駆動波形を選択することを含む。
図16を例に説明すると、画像形成装置100は、最適な駆動波形として条件CのALを選択する。
【0098】
図13は、画像形成装置100による駆動波形の調整の手順の一例を示す図である。ある局面において、制御部4は、
図13の処理を行うためのプログラムをストレージ又はフラッシュメモリー等(図示せず)からメモリー(図示せず)に読み込む。また、制御部4は、プロセッサ(図示せず)により、メモリーに読み込まれたプログラムを実行する。他の局面において、当該処理の一部又は全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0099】
ステップS1310において、画像形成装置100は、テストパターンを媒体Pに出力する。ある局面において、画像形成装置100は、第1テストパターン1100を出力してもよい。他の局面において、画像形成装置100は、第2テストパターン1200を出力してもよい。さらに、他の局面において、画像形成装置100は、第1テストパターン1100及び第2テストパターン1200の両方を出力してもよい。
【0100】
ステップS1320において、画像形成装置100は、画像読取部3により、ステップS1310にて出力されたテストパターンの画像を読み取る。ステップS1330において、画像形成装置100は、テストパターンの画像を解析する。
【0101】
ステップS1340において、画像形成装置100は、テストパターンの画像の解析結果に基づいて、駆動波形を選択する。ここでの駆動波形の選択方法は、
図11又は
図12を参照して説明した方法である。ある局面において、画像形成装置100は、ヘッドモジュールH単位で駆動波形を調整してもよい。他の局面において、画像形成装置100は、ノズルN単位で駆動波形を調整してもよい。
【0102】
図14は、ヘッドモジュールHの駆動波形の設定条件1400の一例を示す。画像形成装置100は、設定条件1400に相当するデータをストレージ又はフラッシュメモリーに格納する。画像形成装置100は、設定条件1400内のAL設定を参照することで、駆動波形(AL)別のテストパターンを出力する。また、画像形成装置100は、テストパターンの解析結果に基づいて選択された条件(AL)を用いて、通常の印字処理を実行する。
【0103】
一般的に、ヘッドモジュールHの設計上の評価又は設計後の評価により、ヘッドモジュールHの標準的なALは予め決められる。また、ALは、パルスの区間の長さを示すTal(μS)に置き換えることができる。すなわち、画像形成装置100は、Tal(μS)を調整することで、駆動信号のパルスの区間(駆動波形)を調整し得る。各AL設定は、Tal(μS)にかける係数の値であってもよい。又は、各AL設定は、Tal(μS)に係数をかけた値であってもよい。例えば、画像形成装置100は、条件Aを使用する場合、Tal(μS)*0.9をAL設定として使用する。他の例として、画像形成装置100は、条件Cを使用する場合、Tal(μS)*1.0をAL設定として使用する。
【0104】
図15は、第1テストパターン1100の解析結果1500の一例を示す図である。解析結果1500は、駆動波形(条件A~Eでの駆動波形)毎のドット間距離1150を示す図である。画像形成装置100は、ヘッドモジュールH毎又はノズルN毎に、解析結果1500を得る。解析結果1500の縦軸がドット間距離1150を示し、解析結果1500の横軸が、条件(使用されるAL設定)を示す。
【0105】
前述の通り、最適な駆動波形が使用された場合、液滴の射出速度は最大となる。小液滴のドットSが上流にあり大液滴のドットLが下流にある場合、駆動波形が最適値に近づく程、ドット間距離1150は短くなる。解析結果1500によると、条件Cにおいて、ドット間距離1150は最小となっている。このことから、条件Cが最適な駆動波形であるとわかる。よって、画像形成装置100は、印刷時の駆動波形を条件CのAL設定「Tal(μS)*1.0」に基づく駆動波形に調整する。
【0106】
なお、大液滴のドットLが上流にあり小液滴のドットSが下流にある場合、駆動波形が最適値に近づく程、ドット間距離1150は長くなる。この場合、画像形成装置100は、ドット間距離1150が最大となる条件のAL設定に基づく駆動波形を最適な駆動波形として選択する。
【0107】
図16は、第2テストパターン1200の解析結果1600の一例を示す図である。解析結果1600は、駆動波形(条件A~Eでの駆動波形)毎のテストパターンの濃度を示す図である。画像形成装置100は、ヘッドモジュールH毎に、解析結果1600を得る。解析結果1600の縦軸がテストパターン(ハーフトーン)の濃度を示し、解析結果1600の横軸が、条件(使用されるAL設定)を示す。
【0108】
前述の通り、駆動波形が最適な駆動波形(理論値)からずれるほど、ドット同士の重なりが増える。その結果、テストパターン(ハーフトーン)の濃度は薄くなる。このことから、テストパターンの濃度が最も濃い条件Cが最適な駆動波形であるとわかる。よって、画像形成装置100は、印刷時の駆動波形(AL設定)を条件CのAL設定「Tal(μS)*1.0」に基づく駆動波形に調整する。
【0109】
図17は、誤差拡散等のハーフトーンの矩形領域内の小液滴及び大液滴の数の一例を示す図である。ここでのハーフトーンは、例えば、
図12を参照して説明した第2テストパターン1200である。
図17のグラフの横軸は、矩形領域内の画像の濃度であり、縦軸は、単位画素面積あたりの液滴数(ドット数)を示す。グラフ1710は、小液滴のドット数を示す。グラフ1720は、大液滴のドット数を示す。
【0110】
ハーフトーン内の低濃度の領域は、粒状性を考慮して小液滴のドットで構成される。領域内の濃度が高くなる程、領域内の大液滴のドットの割合が増加する。ハーフトーンに大液滴の混入が始まる濃度付近(領域1730付近)で、小液滴のドットは減少し始める。
【0111】
実験及びシミュレーションの結果、領域1730付近において、液滴の射出速度の変化によるハーフトーンの濃度変化が最も顕著になることが分かっている。領域1730付近は、小液滴のドットの面積の総和と、大液滴のドットの面積の総和とがほぼ等しくなる領域である。
【0112】
領域1730付近の濃度は、例えば、次の条件により求められる。小液滴のドット面積をXs、大液滴のドット面積をXlとする。互いの面積の関係をXl=α*Xsとする(αは1以上であり、通常は2程度)。予め決められた濃度の矩形領域のパッチの小液滴のドット数をDs、大液滴のドット数をDlとする。この場合に、領域1730付近の濃度は、関係式「Xs*Ds=Xl*Dl(α*Xs*D1)」を満たす濃度となる。
【0113】
図18は、駆動波形毎に各濃度のハーフトーンがどのように変化するのかの一例を示した図である。ここでのハーフトーンは、例えば、
図12を参照して説明した第2テストパターン1200である。
図18のグラフの横軸は、矩形領域内の画像の設定濃度(ハーフトーンの印刷設定)であり、縦軸は、実際に描画された矩形領域内の画像の読み取り濃度である。
【0114】
グラフ1810は、最適な駆動波形(AL)で描画されたハーフトーンの濃度変化を示す。グラフ1820は、最適な駆動波形(AL)から5%ずれた駆動波形で描画されたハーフトーンの濃度変化を示す。
【0115】
低濃度領域(グラフ1810,1820の左端付近)は、小液滴のドットしか存在せず、また、ドット間の距離も十分に離れている。そのため、低濃度領域では、駆動波形が変化しても、濃度はほとんど変化しない。結果として、低濃度領域では、グラフ1810及びグラフ1820に顕著な差は無い。
【0116】
逆に、高濃度領域(グラフ1810,1820の右端付近)は、大液滴のドットしか存在せず、また、多くのドットが互いに重なっている。そのため、高濃度領域では、駆動波形が変化しても、濃度はほとんど変化しない。
【0117】
中濃度領域(領域1830)は、小液滴のドット及び大液滴のドットの各々が占有する面積比が略等しい濃度である。中濃度領域(領域1830)は、領域1730に相当する。中濃度領域において駆動波形が変化すると、他の濃度領域と比較してハーフトーンの濃度は大きく変化する。そこで、画像形成装置100は、駆動波形毎の印刷結果の差を識別しやすい中濃度領域(領域1830)のハーフトーンを媒体Pに描画する。画像形成装置100は、中濃度領域(領域1830)のハーフトーンの画像を解析することで、最適な駆動波形(AL)を推定し得る。画像形成装置100は、中濃度領域(領域1830)のハーフトーンの画像を解析するだけでよく、様々な濃度のハーフトーンの画像を個別に測定する必要がない。結果として、画像形成装置100は、短時間で、駆動波形の調整を完了し得る。すなわち、第2テストパターン1200に含まれる複数のハーフトーンの各々の濃度は、第1ドット(ドットS)及び第2ドット(ドットL)の各々が占有する面積比が略等しい濃度である。
【0118】
上記のように、画像形成装置100は、主に、第1テストパターン1100又は第2テストパターン1200を使用して、駆動波形を調整し得る。画像形成装置100は、第1テストパターン1100を用いることで、小液滴及び大液滴の射出速度又は着弾位置を直接的に計測し得る。第2テストパターン1200の画像は、第1テストパターン1100の画像と比較して、低解像度であってもよい。そのため、画像形成装置100は、第2テストパターン1200を用いることで、低解像度のカメラしかない場合でも、駆動波形の調整を行い得る。
【0119】
ある局面において、画像形成装置100は、第1テストパターン1100及び第2テストパターン1200を切り替える機能を備えてもよい。例えば、ユーザーは、操作表示部5を介して、使用するテストパターンの選択入力を行い得る。この場合、ユーザーは、要求される画像品質又は装置構成等を考慮して好ましい方のテストパターンを選択し得る。
【0120】
<D.用語>
本明細書において、「駆動波形」は、インクジェットヘッド2、液滴吐出部22、ヘッドモジュールH及び/又はノズルNの駆動波形である。駆動回路21がヘッドモジュールH単位で駆動波形を出力する場合、当該駆動波形は、ヘッドモジュールHの駆動波形であると言える。また、駆動回路21がノズルN単位で駆動波形を出力する場合、当該駆動波形は、ノズルN及びヘッドモジュールHの駆動波形であると言える。また、インクジェットヘッド2は、ノズルN及びヘッドモジュールHを含む。そのため、駆動波形は、インクジェットヘッド2の駆動波形であると言える。
【0121】
また、本明細書において、「駆動波形」、「AL」及び「パルス幅」は、適宜互いに読み替えてもよい。駆動波形は、ALに基づいて決まる。また、ALに基づいて駆動波形を調整することは、駆動信号のパルス幅を調整することを含む。すなわち、駆動波形を調整することは、ALを調整することであり、駆動信号のパルス幅を調整することであるとも言える。
【0122】
また、本明細書において、
図14の「条件」は、各条件に紐付けられたAL、AL設定、駆動波形、パルス幅と読み替えてもよい。例えば、条件Cを、条件CのAL設定、条件Cのパルス幅、条件CのAL設定又はパルス幅に基づく駆動波形と読み替えてもよい。また、条件Cの駆動波形は、条件CのAL設定に基づいてパルス幅を調整された駆動波形である。また、テストパターンの解析の結果、条件Cを選択することは、条件Cの駆動波形を選択することを含む。
【0123】
また、本明細書において、「駆動波形を調整すること」は、「駆動波形を選択すること」を含む。上述の通り、画像形成装置100は、テストパターンの解析結果に基づいて、設定条件1400の中から、最適な駆動波形(AL)を選択する。すなわち、画像形成装置100は、印刷時に使用する駆動波形を、設定条件1400の中から選択された条件の駆動波形に調整していると言える。また、「駆動波形を調整すること」は、「駆動信号のパルス幅を調整すること」を含む。画像形成装置100は、
図7及び
図8等に示されるような各パルスの幅を調整することで、駆動波形を調整し得る。
【0124】
以上説明した通り、本実施の形態に従う画像形成装置100は、駆動波形を変更しながら、インクジェットヘッド2に、異なるサイズの液滴からなるドットを含むテストパターンを複数回印刷させる。また、画像形成装置100は、異なる駆動波形毎に得られたテストパターンの各々の画像の特徴に基づいて、駆動波形を調整する。
【0125】
これにより、画像形成装置100は、ヘッドモジュールHの製造ばらつき又はインクの粘性などの状態、装置の環境(温度等)等による液滴と大液滴の射出速度(着弾位置)の変動を検出し得る。その上で、画像形成装置100は、各ヘッドモジュールH又は各ノズルNの駆動波形を調整する。これにより、画像形成装置100は、液滴の着弾位置ずれ又はハーフトーンの濃度変化等の画質問題を解決し得る。また、画像形成装置100は、小液滴からなるドットS及び大液滴からなるドットLの両方を含むテストパターンを使用して、駆動波形を調整する。これにより、画像形成装置100は、小液滴及び大液滴の両方の射出速度を適切に調整し得る。
【0126】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態及び各変形例において説明された開示内容は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 搬送部、2 インクジェットヘッド、3 画像読取部、4 制御部、5 操作表示部、6 通信部、11 搬送ベルト、12 搬送ローラー、13 搬送モーター、21 駆動回路、21a 駆動波形記憶部、22 液滴吐出部、31 イメージセンサー、70 チャネル基板、71,71A,71B,71C チャネル、72,72A,72B,72C,72D 隔壁、72a 上壁部、72b 壁部、73 カバー基板、74 ノズルプレート、75 共通流路、76A,76B,76C 駆動電極、100 画像形成装置、115,1150 ドット間距離、200 小液滴駆動波形、201 膨張パルス、202,302 第1の収縮パルス、203,304 第2の収縮パルス、204,306,310,311 休止期間、300 大液滴駆動波形、300a,300b 駆動波形、301,401 第1の膨張パルス、303 第2の膨張パルス、305 第3の収縮パルス、307 第3の膨張パルス、308 第4の収縮パルス、309 第5の収縮パルス、1010,1010A,1010B 第1ドット、1020,1020A,1020B 第2ドット、1100 第1テストパターン、1110,1111A,1111B,1111C,1111D,1111E,1120,1121A,1121B,1121C,1121D,1121E,1130,1210,1211A,1211B,1211C,1211D テストパターン、1140 組み合わせ、1200 第2テストパターン、1400 設定条件、1500,1600 解析結果、1730,1830 領域、1810,1820 グラフ、DR 大液滴、DR1 第1液滴、DR2 第2液滴、DR3 第3液滴、H ヘッドモジュール、L,S ドット、L1,L2 ノズル列、N ノズル、P 媒体、P1 画像。