(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172190
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20241205BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241205BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20241205BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/538
H01M50/531
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089743
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】高須 純太
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】盛山 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】杉江 和紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 良哉
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H028AA01
5H028CC08
5H028CC12
5H028HH00
5H028HH05
5H029AJ14
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ06
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA06
5H043EA02
5H043EA12
5H043LA00E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】タブリードが配置される捲回電極体において局所的に圧力がかかるのを抑制することが可能な蓄電セルを提供する。
【解決手段】蓄電セル100は、正極板10(第1電極)、負極板20(第2電極)、および、セパレータ30を含む捲回電極体1を備える。正極板10は、正極集電体11(集電体)と、正極集電体11の一部に塗工された正極合材層12(電極材料層)と、正極タブリード13(タブリード)と、接着材14(緩衝材)とを含む。正極タブリード13は、正極合材層12が塗工されていない未塗工部11cに配置されている。接着材14は、未塗工部11cにおいて正極タブリード13と隣り合う位置に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されたセパレータを含む捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容するケースと、を備え、
前記捲回電極体は、前記第1電極、前記第2電極、および、前記セパレータが捲回軸線の周囲を取り囲むように捲回されており、
前記第1電極は、
集電体と、
前記集電体の一部に塗工された電極材料層と、
前記捲回電極体の軸方向に前記集電体から突出するように設けられるタブリードと、
緩衝材と、を含み、
前記集電体は、前記電極材料層が塗工されていない未塗工部を含み、
前記タブリードは、前記未塗工部に配置されており、
前記緩衝材は、前記未塗工部において前記タブリードと隣り合う位置に配置されている、蓄電セル。
【請求項2】
前記緩衝材の弾性率は、前記タブリードの弾性率よりも低く、
前記第1電極をシート状に広げた状態において、前記集電体と直交する直交方向における前記緩衝材の厚みは、前記直交方向における前記タブリードの厚み以上である、請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記電極材料層の弾性率は、前記タブリードの弾性率よりも低く、
前記第1電極をシート状に広げた状態において、前記直交方向における前記電極材料層の厚みは、前記直交方向における前記タブリードの厚み以上である、請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記緩衝材の弾性率は、前記電極材料層の弾性率よりも低く、
前記第1電極をシート状に広げた状態において、前記直交方向における前記緩衝材の厚みは、前記直交方向における前記電極材料層の厚み以上である、請求項3に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記第1電極が前記第2電極および前記セパレータと共に捲回された状態において、前記捲回電極体の径方向における前記緩衝材の厚みと、前記径方向における前記タブリードの厚みとの差分の絶対値は、前記径方向における前記第1電極の厚み以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記未塗工部は、前記集電体のうち、前記捲回電極体の捲回方向における端部に設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記緩衝材は、接着材を含む、請求項6に記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記未塗工部は、前記捲回軸線が延びる前記軸方向に延びており、
前記緩衝材は、前記軸方向に延びる前記未塗工部に沿って延びるように設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2018/105398号公報(特許文献1)には、正極と負極とがセパレータを介して渦巻き状に捲回された電極体を備える二次電池が開示されている。正極(負極)の集電体には、正極(負極)端子と電気的に接続されるリードが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/105398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の電極体では、集電体のうちリードが設けられる箇所において、リードの厚みに起因して凹凸が形成される場合がある。この場合、捲回電極体の凹凸に起因して、捲回電極体がケース等により拘束された場合に、捲回電極体に局所的に圧力がかかる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、タブリードが配置される捲回電極体において局所的に圧力がかかるのを抑制することが可能な蓄電セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る蓄電セルは、第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に配置されたセパレータを含む捲回電極体と、捲回電極体を収容するケースと、を備える。捲回電極体は、第1電極、第2電極、および、セパレータが捲回軸線の周囲を取り囲むように捲回されている。第1電極は、集電体と、集電体の一部に塗工された電極材料層と、捲回電極体の軸方向に集電体から突出するように設けられるタブリードと、緩衝材と、を含む。集電体は、電極材料層が塗工されていない未塗工部を含む。タブリードは、未塗工部に配置されている。緩衝材は、未塗工部においてタブリードと隣り合う位置に配置されている。
【0007】
本開示の一の局面に係る蓄電セルでは、上記のように、緩衝材が未塗工部においてタブリードと隣り合う位置に配置されている。これにより、タブリードが配置されている未塗工部において緩衝材が配置されていることにより、未塗工部において集電体が剥き出しになっている領域を縮小することができる。その結果、タブリードが配置されている箇所とタブリードが配置されていない箇所との間において凹凸が形成されるのを抑制することができる。これにより、捲回電極体が形成された状態で上記凹凸に起因して捲回電極体に局所的に圧力がかかるのを抑制することができる。
【0008】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、緩衝材の弾性率は、タブリードの弾性率よりも低い。第1電極をシート状に広げた状態において、集電体と直交する直交方向における緩衝材の厚みは、直交方向におけるタブリードの厚み以上である。このように構成すれば、緩衝材の弾性率がタブリードの弾性率よりも低いことによって、緩衝材はタブリードよりも変形しやすい。また、直交方向における緩衝材の厚みがタブリードの厚み以上であることによって、第1電極が捲回されることにより緩衝材およびタブリードの各々が変形した場合に、緩衝材の厚みとタブリードの厚みとの間に差が生じるのを抑制することができる。
【0009】
この場合、好ましくは、電極材料層の弾性率は、タブリードの弾性率よりも低い。第1電極をシート状に広げた状態において、直交方向における電極材料層の厚みは、直交方向におけるタブリードの厚み以上である。このように構成すれば、電極材料層の弾性率がタブリードの弾性率よりも低いことによって、電極材料層はタブリードよりも変形しやすい。また、直交方向における電極材料層の厚みがタブリードの厚み以上であることによって、第1電極が捲回されることにより電極材料層およびタブリードの各々が変形した場合に、電極材料層の厚みとタブリードの厚みとの間に差が生じるのを抑制することができる。
【0010】
上記電極材料層の弾性率がタブリードの弾性率よりも低い蓄電セルにおいて、好ましくは、緩衝材の弾性率は、電極材料層の弾性率よりも低い。第1電極をシート状に広げた状態において、直交方向における緩衝材の厚みは、直交方向における電極材料層の厚み以上である。このように構成すれば、緩衝材の弾性率が電極材料層の弾性率よりも低いことによって、緩衝材は電極材料層よりも変形しやすい。また、直交方向における緩衝材の厚みが電極材料層の厚み以上であることによって、第1電極が捲回されることにより緩衝材および電極材料層の各々が変形した場合に、緩衝材の厚みとの間に差が生じるのを抑制することができる。
【0011】
上記緩衝材の弾性率がタブリードの弾性率よりも低い蓄電セルにおいて、好ましくは、第1電極が第2電極およびセパレータと共に捲回された状態において、捲回電極体の径方向における緩衝材の厚みと、径方向におけるタブリードの厚みとの差分の絶対値は、径方向における第1電極の厚み以下である。このように構成すれば、上記差分が第1電極の厚みよりも大きい場合に比べて、捲回電極体に形成される凹凸を小さくすることができる。
【0012】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、未塗工部は、集電体のうち、捲回電極体の捲回方向における端部に設けられている。このように構成すれば、捲回電極体の端部に凹凸が形成されるのを抑制することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、緩衝材は、接着材を含む。このように構成すれば、捲回電極体の端部において、第1電極と径方向に隣接する部材(たとえばセパレータ)に、第1電極を容易に接着(固定)することができる。
【0014】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、未塗工部は、捲回軸線が延びる軸方向に延びている。緩衝材は、軸方向に延びる未塗工部に沿って延びるように設けられている。このように構成すれば、軸方向において緩衝材が広範囲に設けられるので、捲回電極体に凹凸が形成されるのをより抑制することができる。
【0015】
本開示によれば、タブリードが配置される捲回電極体において局所的に圧力がかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態による蓄電セルの構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態による捲回電極体の構成を示す概略的な斜視図である。
【
図3】一実施形態による正極板の構成を示す平面図である。
【
図4】一実施形態による負極板の構成を示す平面図である。
【
図5】正極タブリード、正極合材層、および、接着材の弾性率の関係を示す図である。
【
図7】捲回された状態の捲回電極体の部分拡大断面図である。
【
図8】一実施形態の変形例による正極板の構成を示す平面図(第1図)である。
【
図9】一実施形態の変形例による負極板の構成を示す平面図である。
【
図10】一実施形態の変形例による正極板の構成を示す平面図(第2図)である。
【
図11】一実施形態の変形例による正極板の構成を示す平面図(第3図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本開示の実施形態に係る蓄電セル100の全体構成を示す断面図である。蓄電セル100は、たとえば車両に搭載されるリチウムイオン電池である。なお、蓄電セル100の用途および種類は、上記の例に限られない。
【0019】
蓄電セル100は、捲回電極体1と、ケース2と、CID(Current Interrupt Device)3と、正側絶縁板4と、負側絶縁板5と、絶縁層6と、を備える。
【0020】
捲回電極体1は、ケース2に収容されている。ケース2は、円筒形状を有している。すなわち、蓄電セル100は、円筒型の電池である。ケース2は、たとえば銅またはアルミニウムにより形成されている。
【0021】
捲回電極体1は、正極板10と、負極板20と、セパレータ30とを含む。セパレータ30は、正極板10と負極板20との間に設けられている。セパレータ30は、正極板10(正極活物質)と負極板20(負極活物質)との間におけるイオン(たとえばリチウムイオン)の行き来を可能にしつつ、正極板10と負極板20とを分離している。捲回電極体1は、正極板10および負極板20がセパレータ30を介して捲回された極板群により構成されている。なお、正極板10および負極板20は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「第2電極」の一例である。
【0022】
図2に示すように、捲回電極体1は、正極板10、負極板20、および、セパレータ30が捲回軸線αの周囲を取り囲むように捲回されている。
図2では、捲回電極体1の捲回状態が分かりやすいように、捲回電極体1の捲回が僅かに解けている状態が図示されている。
【0023】
正極板10は、正極集電体11と(
図3参照)、正極合材層12(
図3参照)と、複数の正極タブリード13(本実施形態では5つ)と、接着材14(
図3参照)とを含む。負極板20は、負極集電体21と(
図4参照)、負極合材層22(
図4参照)と、負極タブリード23とを含む。なお、
図1では、正極タブリード13が2つのみ図示されている。また、接着材14および正極タブリード13は、それぞれ、本開示の「緩衝材」および「タブリード」の一例である。また、正極集電体11および正極合材層12は、それぞれ、本開示の「集電体」および「電極材料層」の一例である。
【0024】
再び
図1を参照して、正側絶縁板4は、ケース2に収容されている。正側絶縁板4は、捲回電極体1(負極板20およびセパレータ30)とケース2とを絶縁するように設けられている。正側絶縁板4は、正極集電体11、負極板20、および、セパレータ30をZ1側から覆うように設けられている。
【0025】
正側絶縁板4は、貫通穴4aを有する。正極タブリード13は、貫通穴4aを貫通することにより、後述する導電膜3bと接触している。これにより、正極タブリード13と導電膜3bとが電気的に接続されている。
【0026】
複数の正極タブリード13のうちの1つが導電膜3bと接触(溶接)されており、残りの正極タブリード13は、導電膜3bと接触している正極タブリード13に溶接されている。なお、複数の正極タブリード13の全てが導電膜3bに溶接されていてもよい。
【0027】
負側絶縁板5は、ケース2に収容されている。負側絶縁板5は、捲回電極体1(正極板10およびセパレータ30)とケース2とを絶縁するように設けられている。負側絶縁板5は、正極板10、負極集電体21、および、セパレータ30をZ2側から覆うように設けられている。
【0028】
負側絶縁板5は、貫通穴5aを有する。負極タブリード23は、貫通穴5aを貫通することにより、ケース2の底部2aと接触している。これにより、負極タブリード23とケースの底部2aとが電気的に接続されている。その結果、ケース2の底部2aと接続されているケース2の側面部2bは、負に帯電される。なお、側面部2bは、捲回電極体1の最外周に設けられる負極板20の負極集電体21と接触している。
【0029】
CID3は、蓄電セル100の過充電に起因して発生したガスによるセル内圧の上昇を利用して電流経路を遮断する素子である。CID3は、ケース2のZ1側の開口を封口するように設けられている。CID3は、外部キャップ3aと、導電膜3bと、ガスケット3cと、ボトムディスク3dとを有する。
【0030】
外部キャップ3aは、図示しない外部のバスバーと電気的に接続されることにより、外部端子としての機能を有する。外部キャップ3aには、脆弱部分3e(薄肉部分)が設けられている。外部キャップ3aは、ケース2の内圧が上昇した場合、脆弱部分3eを起点に壊れやすくなっている。これにより、ガスがケース2の外に速やかに排出される。
【0031】
導電膜3bは、ケース2のZ1側の開口を封口するように設けられている。導電膜3bは、捲回電極体1側(Z2側)に突出する突出部3fを含む。突出部3fは、正極タブリード13と接触している。これにより、導電膜3bは、正に帯電している。また、導電膜3bは、外部キャップ3aと電気的に接続されている。これにより、外部キャップ3aも正に帯電している。なお、突出部3fは、ガスケット3cおよびボトムディスク3dの各々を貫通するように設けられている。
【0032】
導電膜3bには、外部キャップ3aと同様に、脆弱部分3g(薄肉部分)が設けられている。導電膜3bは、ケース2の内圧が上昇した場合、脆弱部分3gを起点に壊れやすくなっている。導電膜3bが内圧の上昇により壊れた場合、導電膜3bと正極タブリード13との接触が解除される。その結果、導電膜3bの正の帯電が解消されるとともに、外部キャップ3aの正の帯電が解消される。その結果、蓄電セル100の充放電が停止される。
【0033】
ケース2には、外部キャップ3aの外周縁にかしめられるかしめ部2cが設けられている。絶縁層6は、かしめ部2cと、外部キャップ3a(および導電膜3b)とを絶縁するように設けられている。
【0034】
図3は、シート状に広げられた状態の正極板10をY1側から見た図である。Y方向は、シート状に広げられた正極集電体11と直交する方向である。正極集電体11は、X方向に延びる長辺と、Z方向に延びる短辺とにより構成される長方形形状を有する。なお、X方向は、本開示の「捲回方向」の一例である。また、Z方向は、本開示の「軸方向」の一例である。また、Y方向は、本開示の「直交方向」の一例である。なお、Y方向は、
図1に示すR方向に相当する方向である。また、R方向は、本開示の「径方向」の一例である。
【0035】
図3に示すように、正極合材層12(斜線部分)は、正極集電体11の一部に塗工されている。すなわち、正極集電体11は、正極合材層12が塗工された塗工部11aと、正極合材層が塗工されていない未塗工部11bおよび未塗工部11cとを含む。なお、未塗工部11cは、本開示の「未塗工部」の一例である。
【0036】
図3に示す例では、未塗工部11cは、正極集電体11のX1側の端部11dおよびX2側の端部11eの各々に設けられている。3つの未塗工部11bは、端部11dと端部11eとの間において、X方向に互いに離間して配置されている。塗工部11aは、未塗工部11cと未塗工部11bとの間、および、未塗工部11b同士の間の各々に設けられている。本実施形態では、X1側およびX2側を、それぞれ、捲回電極体1の捲き終わり側および捲き始め側とする。
【0037】
正極集電体11には、たとえばアルムニウムなどが使用されている。正極合材層12は、正極スラリーを正極集電体11の表面に塗工して乾燥させることにより形成される。正極スラリーとは、正極合材層12の材料(正極活物質やバインダー等)と溶媒とを混練することにより調製されるスラリーである。正極合材層12は、セパレータ30(
図1参照)に密着している。正極合材層12の厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0038】
3つの未塗工部11bおよび2つの未塗工部11cの各々は、Z方向に沿って延びるように設けられている。各未塗工部11bは、X方向において幅W1を有する。各未塗工部11cは、X方向において幅W2を有する。未塗工部11cの幅W2は、未塗工部11bの幅W1よりも大きい。
【0039】
正極タブリード13は、3つの未塗工部11bおよび2つの未塗工部11cの各々に配置されている。正極タブリード13は、正極集電体11から軸方向に(Z1側に)突出するように設けられている。正極タブリード13は、X方向において、各未塗工部11bおよび各未塗工部11cの中央に設けられている。
【0040】
ここで、従来の蓄電セルでは、集電体のうちリードが設けられる箇所において、リードの厚みに起因して凹凸が形成される場合がある。この場合、捲回電極体の凹凸に起因して、捲回電極体がケース等により拘束された場合に、捲回電極体に局所的に圧力がかかる。
【0041】
そこで、本実施形態では、接着材14は、未塗工部11cにおいて正極タブリード13と隣り合う位置に配置されている。具体的には、未塗工部11cにおいて、正極タブリード13のX1側およびX2側の各々に接着材14が配置されている。すなわち、未塗工部11cにおける正極タブリード13は、2つの接着材14によりX方向に挟まれるように配置されている。
【0042】
接着材14は、Z方向に延びる未塗工部11c(正極タブリード13)に沿って延びるように設けられている。すなわち、接着材14は、Z方向に延びるように未塗工部11cの表面に配置されている。
【0043】
具体的には、接着材14は、正極集電体11のZ1側の端部11fの近傍から、正極集電体11のZ2側の端部11gの近傍まで延びるように設けられている。接着材14のZ方向における長さL1は、正極タブリード13のうち未塗工部11cに配置される(未塗工部11cとオーバラップする)部分のZ方向における長さL2よりも大きい。
図3に示す例では、長さL1は、長さL2の2倍以上である。なお、接着材14が端部11f(11g)の位置まで延びていてもよい。
【0044】
図4は、シート状に広げられた状態の負極板20をY1側から見た図である。
図4に示すように、負極集電体21は、正極集電体11と同様に、X方向に延びる長辺と、Z方向に延びる短辺とにより構成される長方形形状を有する。
【0045】
負極集電体21には、たとえば銅箔などが使用される。負極合材層22は、負極スラリーを負極集電体21の表面に塗工して乾燥させることにより形成される。負極スラリーとは、負極合材層22の材料(負極活物質およびバインダー等)と溶媒とを混練することにより調製されたスラリーである。負極合材層22はセパレータ30(
図1参照)に密着している。負極合材層22の厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0046】
負極合材層22は、負極集電体21の一部に塗工されている。すなわち、負極集電体21は、負極合材層22が塗工された塗工部21aと、負極合材層22が塗工されていない未塗工部21bとを含む。負極タブリード23は、未塗工部21bに配置されている。負極タブリード23は、負極集電体21から軸方向(Z2側)に突出するように設けられている。
【0047】
図5は、正極タブリード13、正極合材層12、および、接着材14の弾性率の関係を示す図である。
図5に示すように、弾性率は、正極タブリード13、正極合材層12、接着材14の順で高い。すなわち、正極タブリード13、正極合材層12、接着材14の順で変形しにくい。
【0048】
図6は、
図3のVI-VI線に沿った断面図である。
図6に示すように、正極集電体11は、Y方向における厚みt11を有する。正極合材層12は、Y方向における厚みt12を有する。正極タブリード13は、Y方向における厚みt13を有する。接着材14は、Y方向における厚みt14を有する。なお、正極合材層12の厚みt12、正極タブリード13の厚みt13、および、接着材14の厚みt14の各々は、正極集電体11の厚みt11よりも大きい。
【0049】
接着材14の厚みt14は、正極合材層12の厚みt12よりも大きい(t14>t12)。また、正極合材層12の厚みt12は、正極タブリード13の厚みt13よりも大きい(t12>t13)。すなわち、接着材14、正極合材層12、正極タブリード13の順で厚みが大きい(t14>t12>t13)。したがって、弾性率が低い順(変形しやすい順)に厚みが大きくなるように構成されている。
【0050】
接着材14の厚みt14と、正極タブリード13の厚みt13との差分Δtは、正極集電体11の厚みt11よりも大きい(Δt>t11)。また、差分Δtは、正極タブリード13の厚みt13よりも小さい(Δt<t13)。たとえば、差分Δtは、正極タブリード13の厚みt13の1/3以下である(Δt≦t13/3)。なお、差分Δtが正極集電体11の厚みt11以下であってもよい。また、上記の1/3という値はあくまで一例であって、この例に限られない。
【0051】
図7は、正極板10がセパレータ30および負極板20と共に捲回された状態の断面図である。この状態において、上記の弾性率の差に起因して、接着材14、正極合材層12、正極タブリード13の順で変形量が大きくなる。これにより、接着材14の径方向(R方向)における厚みt24と、正極タブリード13の径方向における厚みt23との差分は、正極集電体11の径方向における厚みt21よりも小さくなる。
【0052】
図7に示す例では、接着材14の厚みt24と、正極タブリード13の厚みt23と、正極合材層12の径方向における厚みt22とは、互いに略等しい。したがって、上記の差分は、略0である。なお、上記差分が0よりも大きく、正極集電体11の厚みt21よりも小さくてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態では、接着材14は、未塗工部11cにおいて正極タブリード13と隣り合う位置に配置されている。正極タブリード13と隣り合う位置において、部材が配置されない空間が形成されるのを抑制することができる。その結果、正極タブリード13と隣り合う位置において凹凸が形成されるのを抑制することができる。これにより、捲回電極体1が形成された状態で、上記凹凸に起因して捲回電極体1に局所的に圧力がかかるのを抑制することができる。
【0054】
上記実施形態では、正極集電体11のX1側の端部11dおよびX2側の端部11eの各々に設けられる未塗工部11cに接着材14が配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。未塗工部11cは正極集電体11の端部11dおよび端部11e以外に設けられていてもよい。
図8に示す正極板110では、正極集電体11の端部11dと端部11eとの間(たとえば中央部)に、正極タブリード13と共に接着材14が配置される未塗工部11cが設けられている。また、図示は省略するが、正極集電体11のX1側の端部11dおよびX2側の端部11eのいずれか一方にのみ未塗工部11cが設けられていてもよい。なお、正極板110は、本開示の「第1電極」の一例である。
【0055】
上記実施形態では、正極集電体11の未塗工部11cに接着材14が配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。負極集電板に接着材14が配置されてもよい。
図9に示す例では、負極板120の負極集電体21には、塗工部21aおよび未塗工部21bに加えて、未塗工部21cが設けられている。未塗工部21cには、負極タブリード23と、接着材14とが配置されている。負極タブリード23は、未塗工部21cにおいて、2つの接着材14に挟まれている。なお、未塗工部21cは、負極集電体21のX1側の端部21dおよび負極集電体21のX2側の端部21eの各々に設けられている。また、負極板120は、本開示の「第2電極」の一例である。
【0056】
上記実施形態では、接着材14と正極タブリード13とがX方向に隣り合う例を示したが、本開示はこれに限られない。
図10に示す正極板210の未塗工部11hでは、正極タブリード13のX方向の両側に加えて、正極タブリード13のZ2側において接着材114が正極タブリード13と隣り合うように配置されている。未塗工部11iでは、正極タブリード13のZ2側において、接着材114が正極タブリード13と隣り合うように配置されている。なお、未塗工部11hにおいて、接着材14と接着材114とが纏められて1つの接着材として配置されていてもよい。また、正極板210および接着材114は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「緩衝材」の一例である。
【0057】
上記実施形態では、接着材14の厚みt14が正極タブリード13の厚みt13よりも大きい例を示したが、本開示はこれに限られない。接着材14の厚みt14が、正極タブリード13の厚みt13と等しくてもよい。また、正極合材層12の厚みt12が、正極タブリード13の厚みt13と等しくてもよい。接着材14の厚みt14が、正極合材層12の厚みt12と等しくてもよい。
【0058】
上記実施形態では、未塗工部11cに接着材14が配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。未塗工部11cに接着性のない緩衝材(たとえばゴム)が配置されてもよい。
【0059】
上記実施形態では、接着材14が未塗工部11cに沿って軸方向に延びる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、
図11に示す正極板310では、接着材214は、未塗工部11jにおけるZ1側の端部にのみ配置されている。また、接着材214は、未塗工部11kにおけるZ方向の中央部近傍にのみ配置されている。なお、正極板310および接着材214は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「緩衝材」の一例である。
【0060】
上記実施形態では、正極タブリード13が複数設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。正極タブリード13が1つのみ設けられていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、未塗工部11cに接着材14が2つ配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。未塗工部11cに接着材14が1つのみ配置されてもよい。
【0062】
なお、上記の実施形態および上記の各変形例の構成が、互いに組み合わされていてもよい。
【0063】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 捲回電極体,2 ケース,10、110、210、310 正極板(第1電極),11 正極集電体(集電体),11a 塗工部,11c、11h、11i、11j、11k 未塗工部, 11d、11e 端部,12 正極合材層(電極材料層),13 正極タブリード(タブリード),14、114、214 接着材(緩衝材),20、120 負極板(第2電極),30 セパレータ,100 蓄電セル,R 方向(径方向),t11 厚み(直交方向における正極集電板の厚み),t12 厚み(直交方向における正極合材層の厚み),t13 厚み(直交方向における正極タブリードの厚み),t14 厚み(直交方向における接着材の厚み),t21 厚み(径方向における正極集電板の厚み),t23 厚み(径方向における正極タブリードの厚み),t24 厚み(径方向における接着材の厚み),X 方向(捲回方向),Y 方向(直交方向),Z 方向(軸方向),α 捲回軸線。