(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172192
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20241205BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241205BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20241205BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20241205BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20241205BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/533
H01M50/538
H01G11/82
H01G11/70
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089746
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】高須 純太
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】盛山 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】杉江 和紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 良哉
【テーマコード(参考)】
5E078
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078HA01
5E078HA21
5E078JA01
5H028AA01
5H028CC05
5H028CC12
5H028HH05
5H029AJ14
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ05
5H029EJ01
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA19
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043EA07
5H043JA02E
5H043KA01E
5H043LA02E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】軸方向における捲回電極体の端部に複数の金属片が設けられる場合に、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのを抑制することが可能な蓄電セルを提供する。
【解決手段】蓄電セル100は、正極板10(第1電極)、負極板20(第2電極)、および、セパレータ30を含む捲回電極体1を備える。正極板10は、Z方向(軸方向)における端部1aに設けられる複数の部分11d(金属片)を含む。複数の部分11dの各々には、貫通孔11f(開口)が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されたセパレータを含む捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容するケースと、を備え、
前記捲回電極体は、前記第1電極、前記第2電極、および、前記セパレータが捲回軸線の周囲を取り囲むように捲回されており、
前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方は、前記捲回軸線が延びる軸方向における前記捲回電極体の端部に設けられる複数の金属片を含み、
前記複数の金属片の少なくとも1つには、少なくとも1つの開口が形成されている、蓄電セル。
【請求項2】
前記少なくとも1つの開口は、複数の開口を含む、請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開口は、前記複数の金属片の各々に設けられている、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記複数の金属片の各々は、前記軸方向と交差するように延びる軸交差部分を含み、
前記少なくとも1つの開口は、前記軸交差部分に設けられている、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記第1電極は、第1集電体と、前記第1集電体の一部に塗工されるとともに、前記捲回電極体の径方向において前記セパレータと対向する第1電極材料層と、を含み、
前記第1集電体は、前記第1電極材料層が塗工された第1塗工部と、前記第1塗工部よりも前記軸方向の一方側の前記端部に位置するとともに、前記第1電極材料層が塗工されていない第1未塗工部と、を有し、
前記第1未塗工部は、前記複数の金属片を含む、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記第2電極は、第2集電体と、前記第2集電体の一部に塗工されるとともに、前記捲回電極体の径方向において前記セパレータと対向する第2電極材料層と、を含み、
前記第2集電体は、前記第2電極材料層が塗工された第2塗工部と、前記第2塗工部よりも前記軸方向の他方側の前記端部に位置するとともに、前記第2電極材料層が塗工されていない第2未塗工部と、を有し、
前記第2未塗工部は、前記複数の金属片を含む、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記少なくとも1つの開口は、貫通孔および切り欠きの少なくとも一方を含む、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項8】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されたセパレータを含む捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容するケースと、を備え、
前記捲回電極体は、前記第1電極、前記第2電極、および、前記セパレータが捲回軸線の周囲を取り囲むように捲回されており、
前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方は、前記捲回軸線が延びる軸方向における前記捲回電極体の端部に設けられる複数の金属片を含み、
前記複数の金属片の各々は、前記捲回電極体の径方向に沿った所定方向に延びる径方向部分を含み、
前記複数の金属片のうち一部の前記径方向部分は、前記複数の金属片のうち残りの前記径方向部分よりも、前記所定方向における長さが小さい、蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
米国出願公開第2020/0144676号明細書(特許文献1)には、第1の基板、セパレータ、および、第2の基板が中心軸の周りに巻かれたセルが開示されている。第1の基板は、導電タブが設けられていないタブレス構造を有する。第1の基板の軸方向端部には、導電部分としての複数の金属片が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国出願公開第2020/0144676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のセルでは、上記のように、第1の基板の軸方向端部に複数の金属片が設けられている。複数の金属片は、セルの軸方向端部を覆うように設けられている。このため、電解液の流通が金属片により妨げられ、セパレータに電解液を浸透させるのが困難な場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軸方向における捲回電極体の端部に複数の金属片が設けられる場合に、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのを抑制することが可能な蓄電セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に係る蓄電セルは、第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に配置されたセパレータを含む捲回電極体と、捲回電極体を収容するケースと、を備える。捲回電極体は、第1電極、第2電極、および、セパレータが捲回軸線の周囲を取り囲むように捲回されている。第1電極および第2電極の少なくとも一方は、捲回軸線が延びる軸方向における捲回電極体の端部に設けられる複数の金属片を含む。複数の金属片の少なくとも1つには、少なくとも1つの開口が形成されている。なお、開口とは、孔および切り欠きの両方を含む。
【0007】
本開示の第1の局面に係る蓄電セルでは、上記のように、複数の金属片の少なくとも1つには、少なくとも1つの開口が形成されている。これにより、開口を通じて電解液をセパレータ側に流通させることができる。その結果、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのを抑制することができる。
【0008】
上記第1の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、上記少なくとも1つの開口は、複数の開口を含む。このように構成すれば、複数の開口を通じて電解液をセパレータ側に流通させることができる。その結果、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのをより抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、上記少なくとも1つの開口は、複数の金属片の各々に設けられている。このように構成すれば、複数の金属片の各々に設けられる開口を通じて電解液をセパレータ側に流通させることができる。これにより、複数の金属片の一部に開口が設けられている場合に比べて、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのをより抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、複数の金属片の各々は、軸方向と交差するように延びる軸交差部分を含む。上記少なくとも1つの開口は、軸交差部分に設けられている。このように構成すれば、軸交差部分が軸方向と交差して延びるように設けられていることによって、捲回電極体に対して軸方向の一方側から流通する電解液は、開口を容易に流通することができる。
【0011】
上記第1の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、第1電極は、第1集電体と、第1集電体の一部に塗工されるとともに、捲回電極体の径方向においてセパレータと対向する第1電極材料層と、を含む。第1集電体は、第1電極材料層が塗工された第1塗工部と、第1塗工部よりも軸方向の一方側の端部に位置するとともに、第1電極材料層が塗工されていない第1未塗工部と、を有する。第1未塗工部は、複数の金属片を含む。このように構成すれば、第1電極材料層が塗工されていない第1未塗工部に設けられた開口を通じて電解液を流通させることができる。これにより、電解液の流通により第1電極材料層が剥がれるのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、第2電極は、第2集電体と、第2集電体の一部に塗工されるとともに、捲回電極体の径方向においてセパレータと対向する第2電極材料層と、を含む。第2集電体は、第2電極材料層が塗工された第2塗工部と、第2塗工部よりも軸方向の他方側の端部に位置するとともに、第2電極材料層が塗工されていない第2未塗工部と、を有する。第2未塗工部は、複数の金属片を含む。このように構成すれば、第2電極材料層が塗工されていない第2未塗工部に設けられた開口を通じて電解液を流通させることができる。これにより、電解液の流通により第2電極材料層が剥がれるのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、上記少なくとも1つの開口は、貫通孔および切り欠きの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、貫通孔および切り欠きを通じて電解液を容易に流通させることができる。
【0014】
本開示の第2の局面に係る蓄電セルは、第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に配置されたセパレータを含む捲回電極体と、捲回電極体を収容するケースと、を備える。捲回電極体は、第1電極、第2電極、および、セパレータが捲回軸線の周囲を取り囲むように捲回されている。第1電極および第2電極の少なくとも一方は、捲回軸線が延びる軸方向における捲回電極体の端部に設けられる複数の金属片を含む。複数の金属片の各々は、捲回電極体の径方向に沿った所定方向に延びる径方向部分を含む。複数の金属片のうち一部の径方向部分は、複数の金属片のうち残りの径方向部分よりも、所定方向における長さが小さい。
【0015】
本開示の第2の局面に係る蓄電セルでは、上記のように、複数の金属片のうち一部の金属片は、複数の金属片のうち残りの金属片よりも、所定方向における径方向部分の長さが小さい。これにより、一部の金属片の径方向部分が比較的短くなっていることによって、金属片同士の間に隙間を形成することができる。その結果、上記隙間を通じて電解液をセパレータ側に流通させることができる。これにより、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのを抑制することができる。
【0016】
本開示によれば、軸方向における捲回電極体の端部に複数の金属片が設けられる場合に、セパレータへの電解液の浸透が金属片により妨げられるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態による蓄電セルの構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態による捲回電極体の構成を示す概略的な斜視図である。
【
図5】第1実施形態による正極板の構成を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態による負極板の構成を示す平面図である。
【
図7】
図5の正極未塗工部付近の部分拡大図である。
【
図8】第2実施形態による捲回電極体の正極側の構成を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態による捲回電極体の負極側の構成を示す断面図である。
【
図10】第1実施形態の変形例による正極未塗工部付近の部分拡大図である。
【
図11】第1実施形態の変形例による正極板の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本開示の実施形態に係る蓄電セル100の全体構成を示す断面図である。蓄電セル100は、たとえば車両に搭載されるリチウムイオン電池である。なお、蓄電セル100の用途および種類は、上記の例に限られない。
【0020】
蓄電セル100は、捲回電極体1と、ケース2と、正極端子3と、正極集電板4と、外部ガスケット5と、内部ガスケット6と、負極集電板7とを備える。
【0021】
捲回電極体1は、ケース2に収容されている。ケース2は、円筒形状を有している。すなわち、蓄電セル100は、円筒型の電池である。なお、ケース2は、銅またはアルミニウムにより形成されている。
【0022】
捲回電極体1は、正極板10と、負極板20と、セパレータ30とを含む。セパレータ30は、正極板10と負極板20との間に設けられている。セパレータ30は、正極板10(正極活物質)と負極板20(負極活物質)との間におけるイオン(たとえばリチウムイオン)の行き来を可能にしつつ、正極板10と負極板20とを分離している。捲回電極体1は、正極板10および負極板20がセパレータ30を介して捲回された極板群により構成されている。なお、正極板10および負極板20は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「第2電極」の一例である。
【0023】
図2に示すように、捲回電極体1は、正極板10、負極板20、および、セパレータ30が捲回軸線αの周囲を取り囲むように捲回されている。
図2では、捲回電極体1の捲回状態が分かりやすいように、捲回電極体1の捲回が僅かに解けている状態が図示されている。
【0024】
再び
図1を参照して、正極端子3は、ディスク部3aと、リベット部3bとを含む。リベット部3bは、ディスク部3aに接続されている。リベット部3bは、ディスク部3aの中央からZ2側に延びるように設けられている。なお、正極端子3は、アルミニウムにより形成されている。
【0025】
図3に示すように、ディスク部3aは、ケース2の上面2a(Z1側の面)に配置されている。ケース2の上面2aには、貫通穴2bが設けられている。リベット部3bは、ケース2の外部に配置されているディスク部3aから貫通穴2bを通ってケース2の内部まで延びている。
【0026】
正極集電板4は、ケース2に収容されている。正極集電板4は、捲回電極体1のZ1側において、正極板10の後述する正極未塗工部11bに溶接されている。これにより、正極集電板4は、正に帯電される。正極集電板4は、リベット部3bのZ2側の端部3cと溶接されている。これにより、正極端子3は、正に帯電されている。
【0027】
外部ガスケット5は、正極端子3のディスク部3aとケース2の上面2aとの間に配置されている。これにより、正極端子3とケース2とが絶縁されている。
【0028】
内部ガスケット6は、ケース2の内部において、ケース2と正極集電板4との間に配置されている。これにより、ケース2と正極集電板4とが絶縁されている。なお、リベット部3bは、内部ガスケット6を貫通することにより正極集電板4と接触している。
【0029】
正極板10は、正極集電体11と、正極合材層12とを含む。正極合材層12は、正極集電体11(後述の正極塗工部11a)の径方向(R方向)の両面に塗工されている。正極合材層12は、R方向においてセパレータ30と対向している。なお、正極集電体11および正極合材層12は、それぞれ、「第1集電体」および「第1電極材料層」の一例である。
【0030】
正極集電体11には、たとえばアルムニウムなどが使用されている。正極合材層12は、正極スラリーを正極集電体11の表面に塗工して乾燥させることにより形成される。正極スラリーとは、正極合材層12の材料(正極活物質やバインダー等)と溶媒とを混練することにより調製されるスラリーである。正極合材層12は、セパレータ30に密着している。正極合材層12の厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0031】
正極集電体11は、正極塗工部11aと、正極未塗工部11bとを含む。正極塗工部11aは、正極集電体11のうち正極合材層12が塗工されている部分である。正極塗工部11aは、セパレータ30同士の間に挟まれている。なお、正極塗工部11aは、本開示の「第1塗工部」の一例である。また、正極未塗工部11bは、本開示の「第1未塗工部」の一例である。
【0032】
正極未塗工部11bは、正極集電体11のうち正極合材層12が塗工されていない部分である。正極未塗工部11bは、正極塗工部11aよりもZ1側に位置している。具体的には、正極未塗工部11bは、正極塗工部11aからZ1側に突出している。正極未塗工部11b(後述の部分11d)は、捲回電極体1のZ1側の端部1aに設けられている。なお、Z1側は、本開示の「軸方向の一方側」の一例である。
【0033】
正極未塗工部11bは、Z方向に沿って延びる部分11cと、R方向に沿って延びる部分11dとを含む。正極未塗工部11bは、径方向内側に折り曲げられている。正極未塗工部11bは、L字状に折り曲げられている。正極未塗工部11bの部分11dは、正極集電板4に接触している。これにより、正極集電板4は、正に帯電されている。なお、正極未塗工部11b(部分11d)は、正極集電板4と溶接により接合されている。また、部分11dは、本開示の「金属片」および「軸交差部分」の一例である。
【0034】
正極未塗工部11bの部分11dは、捲回電極体1の捲回方向に沿って複数並んで配置されている。捲回方向に隣り合う部分11d同士の間にはスリット11e(
図5参照)が設けられている。R方向(径方向)に隣り合う部分11d同士は、互いに部分的に重なり合うように設けられている。なお、正極未塗工部11bの部分11cは、捲回方向に延びるように設けられている。すなわち、1つの部分11cに複数の部分11dの各々が接続されている。
【0035】
図4に示すように、負極集電板7は、ケース2に収容されている。負極集電板7は、捲回電極体1のZ2側において、負極板20の後述する負極未塗工部21bに溶接されている。これにより、負極集電板7は、負に帯電される。なお、負極集電板7は、ケース2と接触している。これにより、ケース2は、負に帯電されている。
【0036】
負極板20は、負極集電体21と、負極合材層22とを含む。負極合材層22は、負極集電体21(後述の負極塗工部21a)の径方向(R方向)の両面に塗工されている。負極合材層22は、R方向においてセパレータ30と対向している。なお、負極集電体21および負極合材層22は、それぞれ、本開示の「第2集電体」および「第2電極材料層」の一例である。
【0037】
負極集電体21には、たとえば銅などが使用されている。負極合材層22は、負極スラリーを負極集電体21の表面に塗工して乾燥させることにより形成される。負極スラリーとは、負極合材層22の材料(負極活物質やバインダー等)と溶媒とを混練することにより調製されるスラリーである。負極合材層22は、セパレータ30に密着している。負極合材層22の厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0038】
負極集電体21は、負極塗工部21aと、負極未塗工部21bとを含む。負極塗工部21aは、負極集電体21のうち負極合材層22が塗工されている部分である。負極塗工部21aは、セパレータ30同士の間に挟まれている。なお、負極塗工部21aは、本開示の「第2塗工部」の一例である。また、負極未塗工部21bは、本開示の「第2未塗工部」の一例である。
【0039】
負極未塗工部21bは、負極集電体21のうち負極合材層22が塗工されていない部分である。負極未塗工部21bは、負極塗工部21aよりもZ2側に位置している。具体的には、負極未塗工部21bは、負極塗工部21aからZ2側に突出している。負極未塗工部21bは、捲回電極体1のZ2側の端部1bに設けられている。なお、Z2側は、本開示の「軸方向の他方側」の一例である。
【0040】
負極未塗工部21bは、Z方向に沿って延びる部分21cと、R方向に沿って延びる部分21dとを含む。負極未塗工部21bは、径方向内側に折り曲げられている。負極未塗工部21bは、L字状に折り曲げられている。負極未塗工部21bの部分21dは、負極集電板7に接触している。これにより、負極集電板7は、負に帯電されている。なお、負極未塗工部21b(部分21d)は、負極集電板7と溶接により接合されている。また、部分21dは、本開示の「金属片」および「軸交差部分」の一例である。
【0041】
負極未塗工部21bの部分21dは、捲回電極体1の捲回方向に沿って複数並んで配置されている。捲回方向に隣り合う部分21d同士の間にはスリット21e(
図6参照)が設けられている。R方向に隣り合う部分11d同士は、互いに部分的に重なり合うように設けられている。なお、負極未塗工部21bの部分21cは、捲回方向に延びるように設けられている。すなわち、1つの部分21cに複数の部分21dの各々が接続されている。
【0042】
ここで、従来の蓄電セルの構成では、未塗工部が捲回電極体の軸方向端部を覆うように設けられている。このため、電解液の流通が未塗工部により妨げられ、セパレータに電解液を浸透させるのが困難な場合がある。
【0043】
そこで、第1実施形態では、
図3に示すように、複数の部分11dの各々には、貫通孔11fが形成されている。複数の部分11dが軸方向(Z方向)と交差(略直交)するように延びているので、貫通孔11fでは、軸方向が貫通方向となっている。なお、貫通孔11fは、本開示の「開口」の一例である。
【0044】
複数の部分11dの各々には、複数の貫通孔11fが設けられている。複数の貫通孔11fのうち少なくとも一部は、Z方向においてセパレータ30とオーバラップする位置に設けられている。これにより、貫通孔11fを流通した電解液を、効率的にセパレータ30まで流通させることが可能である。なお、貫通孔11fの位置は上記の例に限られない。
【0045】
図4に示すように、複数の部分21dの各々には、貫通孔21fが形成されている。複数の部分21dが軸方向(Z方向)と交差(略直交)するように延びているので、貫通孔21fでは、軸方向が貫通方向となっている。なお、貫通孔21fは、本開示の「開口」の一例である。
【0046】
複数の部分21dの各々には、複数の貫通孔21fが設けられている。複数の貫通孔21fのうち少なくとも一部は、Z方向においてセパレータ30とオーバラップする位置に設けられている。これにより、貫通孔21fを流通した電解液を、効率的にセパレータ30まで流通させることが可能である。
【0047】
図5は、正極集電体11の捲回を解いた状態の平面図である。
図5に示すように、複数の部分11dの各々には、5つの貫通孔11fが形成されている。なお、正極未塗工部11bは、正極集電体11のうち、捲回の内側部分11g(たとえば最内周の捲回に対応する部分)には形成されておらず、内側部分11gよりも外周側に設けられている。なお、
図5~
図7に示すX方向は、捲回電極体1の捲回方向に相当する。
【0048】
図6は、負極集電体21の捲回を解いた状態の平面図である。
図6に示すように、複数の部分21dの各々には、5つの貫通孔21fが形成されている。なお、負極未塗工部21bは、負極集電体21のうち、捲回の内側部分21g(たとえば最内周の捲回に対応する部分)には形成されておらず、内側部分21gよりも外周側に設けられている。
【0049】
図7は、
図5の部分拡大図である。
図7に示すように、複数の貫通孔11fの各々は、円形形状を有している。具体的には、複数の貫通孔11fは、直径rを有する真円形状を有する。なお、貫通孔11fの形状は上記の例に限られない。また、貫通孔21fの形状は、貫通孔11fと同じであるので、図示は省略する。
【0050】
また、スリット11eは、X方向において幅Wを有する。貫通孔11fの直径rは、スリット11eの幅Wよりも小さい。なお、直径rが幅W以上であってもよい。また、詳細な図は省略するが、貫通孔21fおよびスリット21eは、それぞれ、貫通孔11fおよびスリット11eと同じ大きさ(形状)を有する。
【0051】
以上のように、第1実施形態では、正極未塗工部11bの複数の部分11dの各々には、貫通孔11fが形成されている。これにより、セパレータ30が正極未塗工部11bに覆われたとしても、貫通孔11fを通じて電解液をセパレータ30に導入することができる。その結果、捲回電極体1の充放電時の膨張に起因して電解液の余剰分が絞り出されても、電解液を速やかに捲回電極体1に戻すことができる。また、捲回電極体1の内部に電解液が不足することに起因して、捲回電極体1の抵抗が悪化するのを抑制することができる。
【0052】
[第2実施形態]
図8および
図9を参照して、本開示の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、正極未塗工部11bおよび負極未塗工部21bの各々に貫通孔が形成されている上記第1実施形態とは異なり、正極未塗工部および負極未塗工部の各々に貫通孔が形成されていない。上記第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付すとともに繰り返しの説明を行わないものとする。
【0053】
図8に示すように、蓄電セル200は、捲回電極体1の代わりに捲回電極体31を備える点において、上記第1実施形態の蓄電セル100と異なる。捲回電極体31は、ケース2に収容されている。
【0054】
捲回電極体31は、正極板110と、負極板120と、セパレータ30とを含む。セパレータ30は、正極板110と負極板120との間に設けられている。なお、正極板110および負極板120は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「第2電極」の一例である。
【0055】
捲回電極体31は、正極板110、負極板120、および、セパレータ30が捲回軸線βの周囲を取り囲むように捲回されている。
【0056】
正極板110は、正極集電体111と、正極合材層12とを含む。正極集電体111は、正極塗工部11aと、正極未塗工部111bとを含む。正極未塗工部111b(後述の部分111d)は、捲回電極体31のZ1側の端部31aに設けられている。
【0057】
正極未塗工部111bは、Z方向に沿って延びる部分11cと、R方向に沿って延びる部分111dとを含む。正極未塗工部111bは、径方向内側に折り曲げられている。正極未塗工部111bは、L字状に折り曲げられている。なお、部分111dは、本開示の「金属片」および「径方向部分」の一例である。
【0058】
正極未塗工部111bの部分111dは、捲回電極体31の捲回方向に沿って複数並んで配置されている。すなわち、複数の部分111dの各々は、捲回方向に延びる1つの部分11cに接続されている。
【0059】
第2実施形態では、複数の部分111dのうちの一部は、複数の部分111dのうちの残りの一部よりも、径方向に沿った方向(
図8において部分111dが延びている方向)における長さが小さい。上記一部の部分111dの長さL1は、上記残りの一部の部分111dの長さL2よりも小さい。これにより、径方向に並んで配置される、長さL1の部分111dと長さL2の部分111dとの間には、隙間S1が形成される。隙間S1(開口)は、軸方向(Z方向)においてセパレータ30と重なる位置に形成されていてもよい。なお、
図8において部分111dが延びている方向は、本開示の「所定方向」の一例である。
【0060】
なお、長さL1の部分111dと、長さL2の部分111dとの位置関係は、
図8に示す例に限られない。たとえば、長さL1の部分111dが、複数の部分111dのうち捲回軸線βに最も近い位置に配置されていてもよい。
【0061】
図9に示すように、負極板120は、負極集電体121と、負極合材層22とを含む。負極集電体121は、負極塗工部21aと、負極未塗工部121bとを含む。負極未塗工部121b(後述の部分121d)は、捲回電極体31のZ2側の端部31bに設けられている。
【0062】
負極未塗工部121bは、Z方向に沿って延びる部分21cと、R方向に沿って延びる部分121dとを含む。負極未塗工部121bは、径方向内側に折り曲げられている。負極未塗工部121bは、L字状に折り曲げられている。なお、部分121dは、本開示の「金属片」および「径方向部分」の一例である。
【0063】
負極未塗工部121bの部分121dは、捲回方向に沿って複数並んで配置されている。すなわち、複数の部分121dの各々は、捲回方向に延びる1つの部分21cに接続されている。
【0064】
第2実施形態では、複数の部分121dのうちの一部は、複数の部分121dのうちの残りの一部よりも、径方向に沿った方向(
図9において部分121dが延びている方向)における長さが小さい。上記一部の部分121dの長さL11は、上記残りの一部の部分121dの長さL12よりも小さい。これにより、径方向に並んで配置される、長さL11の部分121dと長さL12の部分121dとの間には、隙間S2(開口)が形成される。隙間S2は、軸方向(Z方向)においてセパレータ30と重なる位置に形成されていてもよい。なお、
図9において部分121dが延びている方向は、本開示の「所定方向」の一例である。
【0065】
なお、長さL11の部分121dと、長さL12の部分121dとの位置関係は、
図9に示す例に限られない。たとえば、長さL11の部分121dが、複数の部分121dのうち捲回軸線βに最も近い位置に配置されていてもよい。
【0066】
以上のように、第2実施形態では、複数の部分111d(121d)のうち一部は、複数の部分111d(121d)のうち残りの一部よりも、部分111d(121d)が延びる方向における長さが小さい。これにより、互いに長さが異なる部分111d(121d)同士が径方向に並んでいる場合に、上記部分111d(121d)同士の間に隙間S1(S2)が形成される。これにより、電解液を隙間S1(S2)を通してセパレータ30側に流通させることができる。
【0067】
上記第1実施形態では、部分11d(21d)に、複数の貫通孔11f(21f)が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。部分11d(21d)に、1つの貫通孔11f(21f)のみが設けられていてもよい。
【0068】
上記第1実施形態では、複数の部分11d(21d)の各々に、貫通孔11f(21f)が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。複数の部分11d(21d)の一部に、貫通孔11f(21f)が設けられていてもよい。たとえば、貫通孔11f(21f)が1つの部分11d(21d)にのみ設けられていてもよい。
【0069】
上記第1実施形態では、部分11d(21d)に、貫通孔11f(21f)が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。部分11c(21c)に貫通孔が設けられていてもよい。また、部分11d(21d)および部分11c(21c)の各々に貫通孔が設けられていてもよい。
【0070】
上記第1実施形態では、部分11d(21d)に、貫通孔11f(21f)が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。貫通孔以外の開口が設けられていてもよい。
図10に示す例では、部分211dに、切り欠き211aが設けられている。切り欠き211aは、部分211dの端部211b(径方向内側の端部)に設けられている。切り欠き211aは、捲回方向(
図10のX方向)に複数(
図10では2つ)並んで設けられている。なお、負極側についても同様であってもよい。また、貫通孔と切り欠きとの両方が形成されていてもよい。なお、部分211dは、本開示の「軸方向部分」および「金属片」の一例である。また、切り欠き211aは、本開示の「開口」の一例である。
【0071】
上記第1実施形態では、軸方向に延びる単一の部分11cに、複数の部分11dが接続されている例を示したが、本開示はこれに限られない。
図11に示すように、複数の部分11dの各々に、軸方向に延びる部分111c(部分11cに相当する部分)が接続されていてもよい。
図11に示す例では、部分11cと部分11dとにより構成される複数の金属片同士の間に、スリット111eが形成されている。なお、負極側においても同様に構成されていてもよい。
【0072】
上記第1実施形態では、正極未塗工部11bおよび負極未塗工部21bの各々に貫通孔が形成されている例を示したが、本開示はこれに限られない。正極未塗工部11bおよび負極未塗工部21bのいずれか一方のみに貫通孔が形成されていてもよい。
【0073】
上記第2実施形態では、正極側の複数の部分111d、および、負極側の複数の部分121dの両方において、一部の長さが残りの一部の長さよりも小さくなっている例を示したが、本開示はこれに限られない。正極側の複数の部分111d、および、負極側の複数の部分121dのいずれか一方のみにおいて、一部の長さが残りの一部の長さよりも小さくなっていてもよい。
【0074】
上記第1(第2)実施形態では、正極未塗工部11b(111b)および負極未塗工部21b(121b)の各々が径方向内側に折り曲げられている例を示したが、本開示はこれに限られない。正極未塗工部11b(111b)および負極未塗工部21b(121b)の少なくとも一方が径方向外側に折り曲げられていてもよい。
【0075】
なお、上記の実施形態および上記の各変形例の構成が、互いに組み合わされていてもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1、31 捲回電極体,1a、1b、31a、31b 端部,2 ケース,10、110 正極板(第1電極),11 正極集電体(第1集電体),11a 正極塗工部(第1塗工部),11b 正極未塗工部(第1未塗工部),11d、21d、211d 部分(金属片)(軸交差部分),11f、21f 貫通孔(開口),12 正極合材層(第1電極材料層),20、120 負極板(第2電極),21 負極集電体(第2集電体),21a 負極塗工部(第2塗工部),21b 負極未塗工部(第2未塗工部),22 負極合材層(第2電極材料層),30 セパレータ,100、200 蓄電セル,111d、121d 部分(金属片)(径方向部分),211a 切り欠き(開口),L1、L2、L11、L12 長さ,R 方向(径方向),Z 方向(軸方向),α、β 捲回軸線。