(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172194
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】X線診断装置、及び、X線診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241205BHJP
【FI】
A61B6/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089748
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 章夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 賢治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章仁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真吾
(72)【発明者】
【氏名】坂田 充
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093EC16
4C093FA47
(57)【要約】
【課題】被検体にデバイスを挿入する操作時のX線照射による被曝を低減すること。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、被検体にデバイスを挿入し、被検体内でデバイスを移動させることができるカテーテルロボットを操作する操作部と通信可能なX線診断装置であって、受信部と、撮影部と、X線制御部と、表示部と、表示制御部とを備える。受信部は、操作部からカテーテルロボットの操作の内容を示す制御信号を受信する。撮影部は、X線を被検体に照射することによって被検体の透視画像を取得する。X線制御部は、被検体に対するX線照射を制御する。表示部は、透視画像を表示可能である。表示制御部は、X線照射が行われている場合、逐次取得している透視画像を表示部に表示させ、X線照射が停止している場合、X線照射の停止前に取得した透視画像に基づいて再生画像を作成し、再生画像を表示部に表示させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にデバイスを挿入し、前記被検体内で前記デバイスを移動させることができるカテーテルロボットを操作する操作部と通信可能なX線診断装置であって、
前記操作部から前記カテーテルロボットの操作の内容を示す制御信号を受信する受信部と、
X線を前記被検体に照射することによって前記被検体の透視画像を取得する撮影部と、
前記被検体に対するX線照射を制御するX線制御部と、
前記透視画像を表示可能な表示部と、
前記X線照射が行われている場合、逐次取得している前記透視画像を前記表示部に表示させ、前記X線照射が停止している場合、当該X線照射の停止前に取得した前記透視画像に基づいて再生画像を作成し、当該再生画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記X線制御部は、
前記デバイスが前記被検体内を移動していることを前記制御信号が示す場合、前記X線照射を行い、前記デバイスが前記被検体内で停止していることを前記制御信号が示す場合、当該X線照射を停止する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
ユーザの操作によって前記X線照射のオンとオフを行う操作スイッチをさらに備え、
前記X線制御部は、
前記操作スイッチがオンで、かつ、前記デバイスが前記被検体内を移動していることを前記制御信号が示す場合、前記被検体に対する前記X線照射を行い、
前記デバイスが前記被検体内で停止していることを前記制御信号が示す場合、前記操作スイッチがオンであっても、前記X線照射を停止する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記X線制御部は、
前記デバイスが前記被検体内で停止したことによって前記X線照射を停止した後、前記デバイスが前記被検体内で移動を開始した場合、前記X線照射を再開する、
請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記再生画像は、前記X線照射の停止前に取得した、前記被検体の少なくとも1心拍分の前記透視画像であり、
前記表示制御部は、前記X線照射が停止している期間中、前記少なくとも1心拍分の前記透視画像を繰り返し再生して、前記表示部に表示させる、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記被検体の心電情報を取得する心電情報取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、取得した前記心電情報に基づく心拍周期に応じて、前記再生画像の再生周期を調整する、
請求項5に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記再生画像の再生周期が前記心電情報に基づく心拍周期に合致するように、前記再生画像の再生周期を調整する、
請求項6に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記再生画像は、前記X線照射の停止前に取得した、前記被検体の少なくとも1呼吸分の前記透視画像であり、
前記表示制御部は、前記X線照射が停止している期間中、前記少なくとも1呼吸分の前記透視画像を繰り返し再生して、前記表示部に表示させる、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記被検体の呼吸情報を取得する呼吸情報取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、取得した前記呼吸情報に基づく呼吸周期に応じて、前記再生画像の再生周期を調整する、
請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記再生画像の再生周期が前記呼吸情報に基づく呼吸周期に合致するように、前記再生画像の再生周期を調整する、
請求項9に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記撮影部は、前記操作の術式及び前記被検体の対象部位に応じて、前記透視画像を取得する時間を調整する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記再生画像の再生速度を調整可能とする、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項13】
ユーザの操作によって前記X線照射のオンとオフを行う操作スイッチをさらに備え、
前記表示制御部は、前記ユーザによる前記操作スイッチの操作によって前記X線照射を終了した場合、前記撮影部が直近に取得した前記透視画像、前記X線照射が終了したときに前記表示部に表示されていた前記再生画像、又は、所定の心拍位相の前記再生画像を静止画像として前記表示部に表示させる、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項14】
当該X線診断装置は、前記操作部以外の周辺機器、又は、当該X線診断装置以外の医療装置の駆動を行う駆動部とさらに通信可能であり、
前記受信部は、前記駆動部から前記駆動の内容を示す駆動信号を受信し、
前記X線制御部は、前記駆動が行われていることを前記駆動信号が示す場合、前記被検体に対する前記X線照射を行い、前記駆動が行われていないことを前記駆動信号が示す場合、当該X線照射を停止する
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項15】
ユーザの操作によって前記X線照射のオンとオフを行う操作スイッチと、
前記操作スイッチのオンとオフの状態と、による前記X線照射のオン、オフと、前記デバイスの移動と停止の状態とを互いに関連させて前記X線照射のオン、オフを制御するか否かを選択する選択スイッチと、
をさらに備える、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項16】
ユーザの操作によってX線照射のオンとオフを行う第1の操作スイッチと、
ユーザの操作によってX線照射のオンとオフを行う第2の操作スイッチと、
をさらに備え、
前記第1の操作スイッチによる前記X線照射のオンとオフは、前記デバイスの移動と停止に基づいた前記X線制御部による前記X線照射のオン、オフと独立して切り替え可能であり、
前記第2の操作スイッチは、当該第2の操作スイッチのオン、オフ状態と、前記デバイスの移動と停止の状態とを互いに関連させて前記X線照射のオン、オフを制御する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項17】
カテーテルロボットと、X線診断装置とを備えるX線診断システムであって、
前記カテーテルロボットは、
被検体にデバイスを挿入し、前記被検体内で前記デバイスを移動させることができるロボット本体と、
前記ロボット本体を操作することができる操作部と、
を備え、
前記X線診断装置は、
前記操作部から前記カテーテルロボットの操作の内容を示す制御信号を受信する受信部と、
X線を前記被検体に照射することによって前記被検体の透視画像を取得する撮影部と、
前記被検体に対するX線照射を制御するX線制御部と、
前記透視画像を表示可能な表示部と、
前記X線照射が行われている場合、逐次取得している前記透視画像を前記表示部に表示させ、前記X線照射が停止している場合、当該X線照射の停止前に取得した前記透視画像に基づいて再生画像を作成し、当該再生画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、
X線診断システム。
【請求項18】
前記X線制御部は、
前記デバイスが前記被検体内を移動していることを前記制御信号が示す場合、前記X線照射を行い、前記デバイスが前記被検体内で停止していることを前記制御信号が示す場合、当該X線照射を停止する、
請求項17に記載のX線診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置、及び、X線診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルロボットは、医師がPCI(Percutaneous Coronary Intervention、経皮的冠動脈インターベンション)等のカテーテル処置を行う際に支援を行う。例えば、カテーテルロボットは、被検体にカテーテル等のデバイスを挿入し、被検体内でデバイスを移動させることができる。X線アンギオ装置等のX線診断装置の傍や、X線診断装置から離れた遠隔地に設置されたロボット操作卓を医師等が操作することによって、被検体内に挿入されたカテーテル等のデバイスを、カテーテルロボットに移動させることができる。
通常、カテーテルロボットの操作は、X線アンギオ装置等のX線診断装置によるX線撮影と同時に行われる。例えば、カテーテルロボットが移動させるカテーテルの動きや位置、脈管系の動きを医師が観察できるように、X線診断装置は、被検体にX線を照射してリアルタイムの透視画像を取得する。そのような場合に、カテーテルや脈管系の動きに合わせて、X線のフレームレートを下げることにより、被検体や医師の被曝を抑制する技術がある。
【0003】
しかしながら、心臓等のように動きのある臓器に対してX線のフレームレートを下げてしまうと、滑らかな動きを観察することができなくなる。また、X線のフレームレートを下げたとしても、X線を出力し続けることに変わりはなく、被曝しないわけではない。
【0004】
また、医師にとって、カテーテルロボットの操作は、通常のカテーテル操作(医師の手作業)よりも直感的な操作が難しい。従って、医師がカテーテル先端の現在位置を確認するのに手間取ることが想定される。このため、カテーテル先端の位置を確認する際に、X線照射の線量を低下させたとしても、確認期間中の被爆量を必ずしも低減できるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、被検体にデバイスを挿入する操作時のX線照射による被曝を低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るX線診断装置は、被検体にデバイスを挿入し、被検体内でデバイスを移動させることができるカテーテルロボットを操作する操作部と通信可能なX線診断装置であって、受信部と、撮影部と、X線制御部と、表示部と、表示制御部とを備える。受信部は、操作部からカテーテルロボットの操作の内容を示す制御信号を受信する。撮影部は、X線を被検体に照射することによって被検体の透視画像を取得する。X線制御部は、被検体に対するX線照射を制御する。表示部は、透視画像を表示可能である。表示制御部は、X線照射が行われている場合、逐次取得している透視画像を表示部に表示させ、X線照射が停止している場合、X線照射の停止前に取得した透視画像に基づいて再生画像を作成し、再生画像を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るX線診断システムの構成例を示すブロック図。
【
図2】
図2(A)は、第1実施形態に係るX線診断装置の外観例を示す斜視図。
図2(B)は、第1実施形態に係る支援ロボット装置の操作卓の外観例を示す斜視図。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る医用画像処理装置の処理を示すフローチャート。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る医用画像処理装置またはX線診断装置の動作を複数の期間毎に示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置、及び、X線診断システムの実施形態について詳細に説明する。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置200を有するX線診断システム1の構成例を示すブロック図である。
図2(A)は、第1実施形態に係るX線診断装置200の外観例を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、X線診断システム1は、医用画像処理装置100と、X線診断装置200と、支援ロボット装置6とを備える。各装置は、ネットワーク2を介して相互に通信可能に接続される。
【0012】
X線診断装置200は、架台装置210、寝台220、コントローラ230、及び、画像処理装置240を備えている。架台装置210、寝台220、及び、コントローラ230は、一般的には、手技室(検査・治療室)に設置される一方、画像処理装置240は、手技室に隣接する制御室に設置される。
【0013】
架台装置210は、X線高電圧発生装置211、X線照射装置212、天板(カテーテルテーブル)221、Cアーム214、X線検出装置215、Cアーム駆動制御機構231、及び、寝台駆動制御機構232を有している。
【0014】
X線照射装置212は、Cアーム214の一端に設けられる。X線照射装置212は、コントローラ230の制御によって、回転及び円弧動可能に設けられる。X線照射装置212は、X線源216(例えば、X線管)及び可動絞り装置217を有している。X線源216は、X線高電圧発生装置211から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じてX線を発生させる。可動絞り装置217は、X線源216のX線照射口において、X線を遮蔽する物質から構成された絞り羽根を移動可能に支持する。
【0015】
X線検出装置215は、Cアーム214の他端において、X線照射装置212に対向するように設けられる。X線検出装置215は、コントローラ230の制御によって、回転及び円弧動が可能に設けられる。X線検出装置215は、FPD(平面検出器:Flat Panel Detector)218及びADC(Analog to Digital Converter)219を備える。
【0016】
FPD218は、二次元に配列された複数の検出素子を有する。FPD218の各検出素子間は、走査線と信号線とが直交するように配設される。なお、FPD218の前面に、グリッドが備えられてもよい。
【0017】
ADC219は、FPD218から出力される時系列的なアナログ信号(ビデオ信号)の投影データをデジタル信号に変換し、画像処理装置240に出力する。
【0018】
図2(A)に示すように、Cアーム214は、X線照射装置212とX線検出装置215とを、被検体Pを中心に対向配置させる。
図1に示すように、Cアーム214は、コントローラ230の制御の下、Cアーム駆動制御機構231によって、X線照射装置212及びX線検出装置215を一体として回転させると共に、Cアーム214の円弧方向に円弧動させる。以下、X線診断装置200がCアーム214を備え、Cアーム214がX線照射装置212及びX線検出装置215を一体として動作させる構成を例にとって説明する。
【0019】
寝台220は、床面に支持され、天板221を支持する。寝台220は、コントローラ230の制御の下、寝台駆動制御機構232によって、天板221をスライド(X、Z軸方向)動、上下(Y軸方向)動及びローリングさせることができる。なお、架台装置210は、X線照射装置212が天板221下方に位置するアンダーチューブタイプである場合を説明するが、X線照射装置212が天板221の上方に位置するオーバーチューブタイプである場合であってもよい。
【0020】
コントローラ230は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びメモリを含む。コントローラ230は、画像処理装置240の制御に従って、位置合わせのために、架台装置210のX線照射装置212、X線検出装置215、及び、Cアーム214の駆動と、寝台220の駆動とを制御する。また、コントローラ230は、画像処理装置240の制御に従って、X線撮影やX線透視のために、X線照射装置212、X線検出装置215、及び、Cアーム駆動制御機構231の動作を制御する。
【0021】
画像処理装置240は、コンピュータをベースとして構成されており、処理回路241、記憶回路242、入力インターフェース243、ネットワークインターフェース244、及び、ディスプレイ250を有する。
【0022】
処理回路241は、X線診断装置200全体の動作制御をする回路であり、入力インターフェース243を介した操作者Uからの入力や、記憶回路242から読み込んだ各種データに基づいて、記憶回路242から読み込んだ各種プログラムを実行することにより、コントローラ230を制御する。また、処理回路241は、架台装置210によって取得された信号に基づいて、被検体PのX線画像(透視画像や撮影画像)を生成し、記憶回路242が記憶する表示用のX線画像をディスプレイ250等に表示させるように制御する。なお、操作者Uは、ユーザの一例である。
【0023】
記憶回路242は、コントローラ230の制御、画像処理、表示処理等を行うための各種プログラム、診断情報、診断プロトコル等の各種データ、画像データ等を記憶する。記憶回路242は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0024】
ネットワークインターフェース244は、有線又は無線で、ネットワーク2に接続された各種の装置と通信を行うためのインターフェースである。例えば、X線診断装置200は、ネットワークインターフェース244によって、医用画像処理装置100及び支援ロボット装置6との間で各種データや画像のやり取りを行うことができる。
【0025】
入力インターフェース243は、操作者Uによって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。
【0026】
ディスプレイ250は、入力インターフェース243を用いた操作者Uの指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像処理装置240において生成されたX線画像等を表示する。また、ディスプレイ250は、X線診断装置200の処理状況や処理結果を操作者Uに通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ250は、スピーカーを有し、音声を出力してもよい。また、ディスプレイ250は、ネットワーク2に接続された各種装置から受信したデータや画像等、医用画像処理装置100で生成される、カテーテル4の操作を支援するための各種の支援画像や支援情報等を表示することもできる。
【0027】
図1には、カテーテル4及び医用デバイス40が図示されている。本明細書では、主に、被検体Pの体腔内や血管等の管状組織等に挿入し、治療又は診断を行う細い医療器具をカテーテル4と呼ぶものとする。カテーテル4は、例えば、カテーテルと呼ばれる細いチューブ、カテーテルを治療対象部位へ誘導するためのガイドワイヤ、及び、カテーテルの先端部に取り付けられた医用デバイス40を備えて構成されている。
【0028】
医用デバイス40は、カテーテル4が被検体Pの体内に挿入された後、所定の対象部位における治療で用いられる部分である。医用デバイス40としては、例えば、閉塞デバイス、バルーン、ステント等のデバイスがある。なお、治療の対象となる部位は、心臓及びその周辺とする。
【0029】
医用画像処理装置100は、支援ロボット装置6を制御する機能を有している。ここで、支援ロボット装置6は、被検体Pに対してカテーテル4を挿入し、当該カテーテル4を被検体Pの治療対象部位まで移動させる操作を、X線診断装置200から離れて設置された操作卓60に対するユーザ操作に基づいて行うことが可能な装置である。支援ロボット装置6の操作卓60は、手技室とは異なる遠隔地に配置されてもよいし、手技室内に配置されてもよい。支援ロボット装置6は、カテーテルロボットの一例である。
【0030】
図2(B)は、支援ロボット装置6の操作卓60の外観例を示す斜視図である。
図1及び
図2(B)に示すように、支援ロボット装置6は、操作卓60と、ロボット本体67とを有している。ロボット本体67は、寝台220の近くに配設され、被検体Pにカテーテル4を挿入し、被検体P内で当該カテーテル4を治療対象部位まで移動させることができる。
【0031】
操作卓60は、ディスプレイ61と、コントローラ62と、テーブル63と、フットスイッチ64とを備えている。ディスプレイ61及びコントローラ62は、例えばテーブル63の上に配置されている。フットスイッチ64は、例えばテーブル63の下に配置されている。
【0032】
ディスプレイ61は、操作卓60に位置しているユーザに情報又は患者固有データを表示する。例えば、ディスプレイ61は、X線画像、CT画像、血行力学データ(例えば、血圧、心拍等)、及び、患者記録情報(例えば、病歴、年齢、体重等)を表示する。さらに、ディスプレイ61は、処置固有情報(例えば、処置の持続時間、カテーテル又はガイドワイヤ位置、搬送された薬剤又は造影剤の容量等)を表示する。ディスプレイ61は、カテーテル4の位置に関する情報を表示する。
【0033】
ディスプレイ61は、X線診断装置200のディスプレイ250に表示される画像(例えば、後述する透視画像及び再生画像)と同じ画像を表示してもよい。ディスプレイ61は、表示部の一例である。
【0034】
コントローラ62は、被検体Pにカテーテル4を挿入し、被検体P内でカテーテル4を移動させることができる支援ロボット装置6を操作するための機器である。コントローラ62は、例えば、カテーテル4を前進、後退又は回転させ、カテーテル4上に設置されたバルーンを膨張又は収縮させ、ステントを配置、展開し、カテーテル4に造影剤を注入し、カテーテル4に薬剤を注入するように構成することができる。また、コントローラ62は、カテーテル4に基づく医療処置の一部として行われ得る他の種々の機能を行うために、ロボット本体67に装備され得る様々な経皮インターベンションデバイスを使用して様々なタスクをロボット本体67に行わせるように構成されてもよい。コントローラ62は、操作部の一例である。
【0035】
コントローラ62は、タッチスクリーン621、ジョイスティック622、ボタン623及び624を備えている。タッチスクリーン621は、コントローラ62の各部分に関連する1つ以上のアイコン(図示せず)を表示する。ジョイスティック622は、例えば、カテーテル4を含む様々なコンポーネント及び経皮デバイスを前進、後退又は回転させるように構成される。例えば、操作者Uがジョイスティック622を操作する方向及び量(角度)に応じて、コンポーネント及び経皮デバイスが動作する。ボタン623及び624は、例えば、再生画像の速度を選択するボタン等を含んでもよい。
【0036】
フットスイッチ64は、操作者Uの操作によってX線照射のオンとオフを行うためのスイッチである。フットスイッチ64は、操作スイッチの一例である。フットスイッチ64は、寝台220の近くに配置されてもよい。この場合、フットスイッチ64を用いたX線照射のオン、オフ操作は、操作卓60の操作者Uとは別の操作者によって行われてもよい。
【0037】
図3は、第1実施形態に係る医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、医用画像処理装置100は、X線診断装置200、及び、支援ロボット装置6とネットワーク2を介して通信可能に構成される。医用画像処理装置100は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等のコンピュータとして構成される。医用画像処理装置100は、操作者Uに対して、ロボット操作を支援するための画像や情報を提供する。
【0038】
医用画像処理装置100は、処理回路110、記憶回路120、入力インターフェース130、ネットワークインターフェース140、及び、ディスプレイ150を備える。なお、これらの構成要素を、X線診断装置200の画像処理装置240が備えていてもよい。換言すれば、第1実施形態に係るX線診断装置200が、医用画像処理装置100の上記の構成要素を有し、これらの構成要素が以下に示す各機能を実現するように構成されてもよい。この場合、X線診断装置200は、コントローラ62と通信可能である。
【0039】
処理回路110は、専用又は汎用のプロセッサを有し、記憶回路120に記憶させるプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって、後述する各種の機能を実現する。処理回路110は、ASIC(Application Specific Integration Circuit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブル論理デバイス等のハードウェアを備えて構成されてもよい。これらを用いたハードウェア処理によっても、後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路110は、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組みわせて、後述する各種の機能を実現してもよい。
【0040】
処理回路110は、信号受信機能F01、画像取得機能F02、X線制御機能F03、表示制御機能F04、心信号取得機能F05、及び、呼吸信号取得機能F06の各機能を実現する。
【0041】
信号受信機能F01は、コントローラ62からロボット本体67の操作の内容を示す制御信号を受信する機能を含む。
画像取得機能F02は、X線を被検体Pに照射することによって被検体Pの透視画像を取得する機能を含む。
X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を制御する。X線制御機能F03は、カテーテル4が被検体P内を移動していることを制御信号が示す場合、上記X線照射を行い、カテーテル4が被検体P内で停止していることを制御信号が示す場合、当該X線照射を停止する機能を含む。カテーテル4は、デバイスの一例である。
【0042】
表示制御機能F04は、X線照射が行われている場合、逐次取得している透視画像をディスプレイ250に表示させる機能を含む。一方、表示制御機能F04は、X線照射が停止している場合、X線照射の停止前に取得した透視画像に基づいて再生画像を作成し、当該再生画像をディスプレイ250に表示させる機能を含む。ディスプレイ250は、表示部の一例である。
心信号取得機能F05は、被検体Pに装着された心電計(図示せず)から当該被検体Pの心信号(心電波形)を取得する機能を含む。心信号は、心電情報の一例である。
呼吸信号取得機能F06は、マイクロ波ドップラーセンサ等の呼吸センサ(図示せず)から被検体Pの呼吸信号を取得する機能を含む。呼吸信号は、呼吸情報の一例である。
【0043】
記憶回路120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。記憶回路120は、処理回路110において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、記憶回路120は、入力インターフェース130やネットワークインターフェース140を介して入力した画像データ等の各種データを記憶することができる。
【0044】
入力インターフェース130は、操作者Uによって操作が可能な入力デバイスと、当該入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。
【0045】
ネットワークインターフェース140は、有線又は無線で、ネットワーク2に接続された各種の装置と通信を行うためのインターフェースである。例えば、医用画像処理装置100は、ネットワークインターフェース140によって、X線診断装置200、支援ロボット装置6等との間で各種データのやり取りを行うことができる。
【0046】
ディスプレイ150は、医用画像処理装置100で生成されるカテーテル4の移動支援情報を操作者Uに提供する。ディスプレイ150は、例えば、操作者Uに見えやすい位置に配置される大型のディスプレイ装置であってもよく、スピーカーを有し、移動支援情報を音声で出力できてもよい。また、ディスプレイ150は、処理回路110によって生成された移動支援情報等のデータの他に、医用画像処理装置100で生成された、ロボット操作を支援するための画像等の各種画像や、ネットワーク2で接続された各種装置から受信したデータ、画像等を表示することもできる。
【0047】
図4は、第1実施形態に係る医用画像処理装置100の処理を示すフローチャートである。本処理は、各スイッチの状態に応じて、X線透視による透視画像、又は、再生画像を操作者U向けに表示する処理である。以下では、X線診断装置200の画像処理装置240のディスプレイ250に表示させる処理を示すが、医用画像処理装置100のディスプレイ150に表示させてよいし、支援ロボット装置6の操作卓60に配置されたディスプレイ61に表示させてもよい。
【0048】
図5は、第1実施形態に係る医用画像処理装置100またはX線診断装置200の動作を、複数の期間Tn(n=1~6)毎に示すタイミングチャートである。
図5に示すタイミングチャートのうち、Highの期間が、検体に対するX線照射をオンにしてX線透視を行っている期間であり、Lowの期間が、被検体に対するX線照射をオフにしてX線透視を行っていない期間である。
X線透視を行っている期間では、X線照射によりリアルの透視画像が表示される。一方、X線透視を行っていない期間では、後述するように、記憶した透視画像から再生画像(即ち、再生された動画像)又は静止画像が作成され、当該作成された画像が表示される。
以下、
図4及び
図5を参照しながら、透視画像、再生画像、及び静止画像を表示する処理を説明する。
【0049】
ステップS1で、医用画像処理装置100の表示制御機能F04は、静止画像をX線診断装置200のディスプレイ250に表示させる。この静止画像の表示は、LIH(Last Image Hold)と呼ばれるものである。表示制御機能F04は、直近のX線照射による透視画像の、最後のフレーム画像を表示させる。なお、ステップS1の時点で、操作者UはX線透視スイッチであるフットスイッチ64をオン操作しておらず、X線照射は行われていないものとする。また、操作者Uは操作卓60のコントローラ62を操作しておらず、カテーテル4は停止しているものとする。
【0050】
ステップS2で、処理回路110は、X線透視スイッチであるフットスイッチ64がオンであるか否かを判定する。操作者Uがフットスイッチ64をオン操作することにより、フットスイッチ64がオンになる。フットスイッチ64がオンである場合(ステップS2のYES)、処理回路110は、ステップS3に進む。フットスイッチ64がオンでない場合(ステップS2のNO)、処理回路110は、ステップS2を繰り返す。
図5における期間T1は、ステップS1における静止画像の表示開始からステップS2におけるフットスイッチ64のオン判定までの期間である。
【0051】
ステップS3で、処理回路110は、カテーテル4が移動しているか否かを判定する。具体的には、信号受信機能F01は、操作卓60から支援ロボット装置6の操作の内容を示す制御信号を受信する。処理回路110は、カテーテル4が被検体P内を移動していることを制御信号が示すか否かを判定する。カテーテル4が移動している場合(ステップS3のYES)、処理回路110は、ステップS4に進む。カテーテル4が移動していない場合(ステップS3のNO)、処理回路110は、ステップS3を繰り返す。
【0052】
なお、
図4のフローチャートによれば、ステップS3を繰り返す間、ステップS1による静止画像の表示が続くことになるが、それとは異なる処理を行ってもよい。例えば、
図5に示すように、フットスイッチ64がオンになった時に、被検体Pの1心拍分だけX線透視を行い(期間T2)、当該X線透視が終了してからカテーテル4の操作スイッチがオンになる(すなわち、カテーテル4が移動する)まで、1心拍分の透視画像から作成した再生画像を表示してもよい(期間T3)。
【0053】
ステップS4で、X線透視スイッチであるフットスイッチ64がオンで(ステップS2のYES)、かつ、カテーテル4が被検体P内を移動していることを制御信号が示す(ステップS3のYES)場合には、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を開始又は再開する。X線照射が行われているので、表示制御機能F04は、画像取得機能F02が逐次取得している透視画像をディスプレイ250に表示させる。
【0054】
ステップS5で、処理回路110は、カテーテル4が停止しているか否かを判定する。詳細には、信号受信機能F01は、操作卓60から支援ロボット装置6の操作の内容を示す制御信号を受信する。処理回路110は、カテーテル4が被検体P内を停止していることを当該制御信号が示すか否かを判定する。カテーテル4が停止している場合(ステップS5のYES)、処理回路110は、ステップS6に進む。カテーテル4が停止していない場合(ステップS5のNO)、処理回路110は、ステップS5を繰り返す。
【0055】
ステップS6で、処理回路110は、カテーテル4が停止した後、少なくとも1心拍分の期間(例えば、1心拍分の期間)はX線透視を継続し、当該期間中の透視画像を記憶した後、X線透視を停止する。例えば、X線制御機能F03は、心信号に同期させたタイミングに基づいて、被検体Pの少なくとも1心拍に相当する時間だけ、被検体Pに対するX線照射を継続する一方、画像取得機能F02は、この期間中に取得した透視画像のデータを記憶回路120に記憶させる。その後、X線制御機能F03はX線照射を停止する。換言すれば、X線制御機能F03は、カテーテル4が被検体P内で停止していることを制御信号が示す場合、フットスイッチ64がオンであっても、X線照射を停止する。
【0056】
図5における期間T4は、カテーテル4の操作スイッチがオンになった(すなわち、カテーテル4が移動した)ことによってX線照射が開始又は再開された時から、カテーテル4の操作スイッチがオフになった(すなわち、カテーテル4が停止した)後、さらに、少なくとも1心拍分のX線透視を継続し、その後、X線照射が停止されるまでの期間である。
【0057】
ステップS7で、表示制御機能F04は、X線照射が停止される直前に記憶した上記少なくとも1心拍分の透視画像を記憶回路120から読み出し、当該透視画像から再生画像を作成し、当該再生画像をディスプレイ250に繰り返し表示させる。
【0058】
表示制御機能F04は、X線照射が停止している期間中、記憶した少なくとも1心拍分の透視画像(例えば、1心拍分の透視画像)を繰り返し再生して、ディスプレイ250に表示させる。そのとき、表示制御機能F04は、心信号取得機能F05が取得した心信号に基づく心拍周期(被検体の実際のリアルタイムの心拍周期)に応じて、再生画像の再生周期(1周期分の心画像の再生時間)を微調整してもよい。例えば、表示制御機能F04は、再生画像の再生周期が心信号に基づく心拍周期に合致するように、再生画像の再生周期を微調整してもよい。
【0059】
なお、X線透視による透視画像の取得時と、再生画像の表示時とでは、被検体Pの心拍周期は変動しうる。そこで、表示制御機能F04は、実際の心電波形に合わせて、再生画像の時間を伸ばしたり、縮めたりすることにより、再生画像の心拍周期を、被検体Pの実際のリアルタイムの心拍周期に合致させることができる。例えば、表示制御機能F04は、再生する透視画像のフレーム周期を短縮したり、逆に、延伸したりして、再生する透視画像の心周期を調整することができる。
なお、表示制御機能F04は、ディスプレイ250に表示された画像が、記憶された透視画像の再生画像か、リアルタイムで取得されている透視画像かを示すマークを当該画像上に表示させてもよい。このようなマークの表示により、ユーザが両者を混同することを回避できる。
【0060】
ステップS6及びS7によれば、X線照射を行うことなく、操作者Uは、カテーテル4の位置を確認することができる。換言すれば、ステップS6及びS7の処理によれば、被検体Pに対するX線被曝を避けた状態にした上で、現在のカテーテル4の位置が適正な位置にあるのか否を判断する期間を十分に確保することができる。また、再生画像の表示を心信号に同期させることで、再生画像と、実際の心臓の動きとの間の時間軸のずれを抑制することができる。
【0061】
操作者Uは、再生画像を見てカテーテル4の位置を確認した後、コントローラ62のジョイスティック622等を操作して、被検体Pの血管内のカテーテル4を移動させる。このとき、操作卓60からの制御信号に連動して、瞬時にX線透視が再開され、透視画像が表示される。換言すれば、X線制御機能F03は、カテーテル4が被検体P内で停止したことによってX線照射を停止した後、カテーテル4が被検体P内で移動を開始した場合、X線照射を直ちに(瞬時に)再開する。これは、X線照射を再開する場合のステップS4に対応する。
【0062】
ステップS8で、処理回路110は、X線透視スイッチであるフットスイッチ64がオフであるか否かを判定する。操作者Uがフットスイッチ64をオフ操作することにより、フットスイッチ64がオフになる。フットスイッチ64がオフである場合(ステップS8のYES)、処理回路110は、ステップS9に進む。フットスイッチ64がオフでない場合(ステップS8のNO)、処理回路110は、ステップS3に進む。
【0063】
操作者Uが、ステップS2でX線透視スイッチをオンにしてから、ステップS8でX線透視スイッチをオフにするまでの間には、マニュアルによるX線透視のオンオフ制御はなく、支援ロボット装置6と連動したX線透視のオンオフ制御になる。なお、
図5における期間T5は、カテーテル4の停止によりX線透視がオフになってから、X線透視スイッチであるフットスイッチ64をオフにするまでの期間である。期間T5では、例えば1心拍分の再生画像が、繰り返しディスプレイ250(又はディスプレイ61)に表示される。
【0064】
ステップS9で、操作者Uがフットスイッチ64をオフ操作したので、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を終了する。表示制御機能F04は、再生画像の表示を停止し、静止画像の表示に切り替える。この静止画像の表示は、LIH(Last Image Hold)と呼ばれるものである。表示制御機能F04は、終了直前のX線照射による透視画像の、最後のフレーム画像を表示させる。期間T6は、X線透視スイッチであるフットスイッチ64をオフにしてからの期間であり、静止画像が表示される期間である。
【0065】
第1実施形態によれば、操作者Uが特別な操作を行うことなく、被検体PへのX線照射を最低限のレベルに抑制することができる。そして、心電同期再生により、被検体PにX線を照射しなくても自然な再生画像を表示することができる。これにより、被検体Pの被曝量の低減を図ることができる。
【0066】
医師である操作者Uは、コントローラ62を操作してカテーテル4を止めた状態で、カテーテル4がどこにあるのかを確認したり、次に行うべき操作を検討したりするのに時間が要する。マニュアル操作(手技)よりもロボット操作の方が、当該時間が長くなることが想定される。第1実施形態によれば、当該時間において、被検体PへのX線の曝射を止めることができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る医用画像処理装置100(又はX線診断装置200)は、透視画像の収集時間が、第1の実施形態と異なる。第1実施形態では、再生画像を作成する際に、被検体Pの少なくとも1心拍分のX線透視を行うように説明したが、カテーテル4を用いた被検体の治療部位又は検査部位が心臓以外の場合には、透視画像の収集時間はこれに限定されない。透視画像の収集時間は、例えば、所定の時間であってもよいし、1フレーム分の画像に対応する収集時間であってもよいし、被検体Pの1呼吸分の時間であってもよい。
【0068】
透視画像の収集時間が所定時間である場合、心臓以外の部位として、例えば、動かない部位である脳、下肢の透視画像を取得してもよい。
【0069】
透視画像の収集時間が1呼吸分の時間である場合、
図4のステップS7において、再生画像は、X線照射の停止前に取得した、被検体Pの1呼吸分の透視画像である。表示制御機能F04は、X線照射が停止している期間中、1呼吸分の透視画像を繰り返し再生して、ディスプレイ250に表示させる。これによれば、心臓以外の部位、例えば、肝臓や腹部に適した時間分の透視画像を記憶することができ、肝臓や腹部に適した再生画像を作成し、表示することができる。
【0070】
また、表示制御機能F04は、呼吸信号取得機能F06が取得した呼吸信号に基づく呼吸周期に応じて、再生画像の再生周期を調整してもよい。表示制御機能F04は、例えば、再生画像の再生周期が呼吸信号に基づく呼吸周期に合致するように、再生画像の再生周期を調整してもよい。
【0071】
さらに、画像取得機能F02は、検査の術式及び観察部位に応じて、透視画像を取得する時間を調整してもよい。検査の術式は、操作の術式の一例である。観察部位は、被検体の対象部位の一例である。
【0072】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る医用画像処理装置100(又はX線診断装置200)は、再生画像の再生速度が、上述した第1実施形態または第2実施形態と異なる。表示制御機能F04は、画像の再生を記録時の速度又はスローに切り替えてもよい。換言すれば、表示制御機能F04は、再生画像の再生速度を任意に調整可能としてもよい。
第3実施形態によれば、操作者Uは、自分の目に合う再生速度や必要に応じて抑制された再生速度により、再生画像を見ることができる。また、操作者Uの、被検体Pの再生画像をじっくり観察したい等のニーズに応えることができる。
【0073】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る医用画像処理装置100(又はX線診断装置200)は、LIH表示における静止画像の内容が、上述した第1実施形態~第3実施形態と異なる。
図4のステップS9において、表示制御機能F04は、操作者Uによるフットスイッチ64のオフ操作によってX線照射を終了した場合、録画された1サイクルの心周期分のフレーム画像から1フレームの画像を選択して、選択した画像を静止画像としてディスプレイ250に表示させてもよい。表示制御機能F04は、例えば、画像取得機能F02が直近に取得した透視画像、X線照射が終了したときにディスプレイ250に表示されていた再生画像、及び、任意の心拍位相の再生画像の何れか1つを選択してもよい。任意の心拍位相は、操作者Uがコントローラ62により指定してもよい。
【0074】
〔第5実施形態〕
第5実施形態に係る医用画像処理装置100(又はX線診断装置200)は、カテーテル4の移動、停止とは別のイベントに連動してX線照射を実施、停止する点において、上述した第1実施形態~第4実施形態と異なる。X線診断装置200は、操作卓60以外の周辺機器、又は、当該X線診断装置200以外の医療装置の駆動を行う駆動部とさらに通信可能であってもよい。この場合、医用画像処理装置100の信号受信機能F01は、駆動部から駆動の内容を示す駆動信号を受信する。そして、X線制御機能F03は、周辺機器、又は、医療装置の駆動が行われていることを駆動信号が示す場合、被検体Pに対するX線照射を行う。X線制御機能F03は、周辺機器、又は、医療装置の駆動が行われていないことを駆動信号が示す場合、当該X線照射を停止する。
【0075】
例えば、他の周辺機器として、被検体P内に造影剤を注入するインジェクタの適用が考えられる。造影剤を注入している場合、造影剤により被検体Pの透視画像は逐次変化するので、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を行う。一方、造影剤を注入していない場合、被検体Pの透視画像は変化しないので、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を停止する。
【0076】
また、他の周辺機器としてCアーム214及び寝台220の適用が考えられる。Cアーム214が回転、若しくは、円弧動し、又は、寝台220がスライド動、上下動、若しくは、ローリングしている場合、X線照射の方向又は対象位置の変更により被検体Pの透視画像は逐次変化する。従って、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を行う。一方、Cアーム214及び寝台220が停止している場合、被検体Pの透視画像は変化しないので、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を停止する。
【0077】
さらに、他の医療装置として、超音波診断装置の適用が考えられる。超音波診断装置が駆動している場合、被検体Pの透視画像は逐次変化するので、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を行う。一方、超音波診断装置が駆動していない場合、被検体Pの透視画像は変化しないので、X線制御機能F03は、被検体Pに対するX線照射を停止する。
【0078】
〔第6実施形態〕
第6実施形態に係る医用画像処理装置100(又はX線診断装置200)は、X線操作スイッチであるフットスイッチ64の機能または構成が、上述した第1実施形態~第5実施形態と異なる。例えば、第1実施形態等では、フットスイッチ64がオンのとき、カテーテル4が移動していればX線照射をオンにし、カテーテル4が停止するとX線照射をオフにしている。すなわち、フットスイッチ64単独で、X線照射のオン、オンを制御するのではなく、フットスイッチ64のオン、オン状態と、カテーテル4の移動と停止の状態とが互いに関連して、X線照射のオン、オンを制御している。
【0079】
これに対して、第6実施形態では、フットスイッチ64単独でX線照射のオン、オンを制御する機能と、フットスイッチ64のオン、オン状態と、カテーテル4の移動と停止の状態とが互いに関連してX線照射のオン、オンを制御する機能とが選択できるように構成されており、この選択のための選択スイッチがさらに設けられている。
【0080】
また、X線診断装置200は、ユーザの操作によってX線照射のオンとオフを行う2個の操作スイッチ(操作スイッチA、B)をさらに備えてもよい。この場合、操作スイッチAは、カテーテル4の移動と停止にかかわらず、X線照射のオン、オフを、独立して切り替えることができる。一方、操作スイッチBは、第1実施形態等の操作スイッチと同様に、カテーテル4の移動と停止の状態と、操作スイッチのオン、オフの状態とが互いに関連して、X線照射のオン、オフを切り替えるように構成されている。なお、カテーテル4の移動と停止に基づいたX線照射のオン、オフは、X線制御機能F03が行う。操作スイッチAは、第1の操作スイッチの一例である。操作スイッチBは、第2の操作スイッチの一例である。
【0081】
さらに、X線診断装置200は、上記の操作スイッチとは別に、再生画像の表示停止及びX線透視の再開を強制的に行うためのスイッチを備えていてもよい。これによれば、カテーテル4の操作とは関係なく、例えば、操作者Uは、カテーテル4を操作する前に、被検体Pの実際の透視画像を見ることができる。
【0082】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体にデバイスを挿入する操作時のX線照射による被曝を低減することができる。
【0083】
なお、信号受信機能F01は、受信部の一例である。画像取得機能F02は、撮影部の一例である。X線制御機能F03は、X線制御部の一例である。表示制御機能F04は、表示制御部の一例である。心信号取得機能F05は、心電情報取得部の一例である。呼吸信号取得機能F06は、呼吸情報取得部の一例である。
【0084】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0085】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0086】
(付記1)
被検体にデバイスを挿入し、前記被検体内で前記デバイスを移動させることができるカテーテルロボットを操作する操作部と通信可能なX線診断装置であって、
前記操作部から前記カテーテルロボットの操作の内容を示す制御信号を受信する受信部と、
X線を前記被検体に照射することによって前記被検体の透視画像を取得する撮影部と、
前記被検体に対するX線照射を制御するX線制御部と、
前記透視画像を表示可能な表示部と、
前記X線照射が行われている場合、逐次取得している前記透視画像を前記表示部に表示させ、前記X線照射が停止している場合、当該X線照射の停止前に取得した前記透視画像に基づいて再生画像を作成し、当該再生画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備えるX線診断装置。
【0087】
(付記2)
前記X線制御部は、
前記デバイスが前記被検体内を移動していることを前記制御信号が示す場合、前記X線照射を行い、前記デバイスが前記被検体内で停止していることを前記制御信号が示す場合、当該X線照射を停止する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【0088】
(付記3)
ユーザの操作によって前記X線照射のオンとオフを行う操作スイッチをさらに備え、
前記X線制御部は、
前記操作スイッチがオンで、かつ、前記デバイスが前記被検体内を移動していることを前記制御信号が示す場合、前記被検体に対する前記X線照射を行い、
前記デバイスが前記被検体内で停止していることを前記制御信号が示す場合、前記操作スイッチがオンであっても、前記X線照射を停止する、
(付記1)に記載のX線診断装置。
【0089】
(付記4)
前記X線制御部は、
前記デバイスが前記被検体内で停止したことによって前記X線照射を停止した後、前記デバイスが前記被検体内で移動を開始した場合、前記X線照射を再開する、
(付記1)~(付記3)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0090】
(付記5)
前記再生画像は、前記X線照射の停止前に取得した、前記被検体の少なくとも1心拍分の前記透視画像であり、
前記表示制御部は、前記X線照射が停止している期間中、前記少なくとも1心拍分の前記透視画像を繰り返し再生して、前記表示部に表示させる、
(付記1)~(付記4)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0091】
(付記6)
前記被検体の心電情報を取得する心電情報取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、取得した前記心電情報に基づく心拍周期に応じて、前記再生画像の再生周期を調整する、
(付記5)に記載のX線診断装置。
【0092】
(付記7)
前記表示制御部は、前記再生画像の再生周期が前記心電情報に基づく心拍周期に合致するように、前記再生画像の再生周期を調整する、
(付記6)に記載のX線診断装置。
【0093】
(付記8)
前記再生画像は、前記X線照射の停止前に取得した、前記被検体の少なくとも1呼吸分の前記透視画像であり、
前記表示制御部は、前記X線照射が停止している期間中、前記少なくとも1呼吸分の前記透視画像を繰り返し再生して、前記表示部に表示させる、
(付記1)~(付記4)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0094】
(付記9)
前記被検体の呼吸情報を取得する呼吸情報取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、取得した前記呼吸情報に基づく呼吸周期に応じて、前記再生画像の再生周期を調整する、
(付記8)に記載のX線診断装置。
【0095】
(付記10)
前記表示制御部は、前記再生画像の再生周期が前記呼吸情報に基づく呼吸周期に合致するように、前記再生画像の再生周期を調整する、
(付記9)に記載のX線診断装置。
【0096】
(付記11)
前記撮影部は、前記操作の術式及び前記被検体の対象部位に応じて、前記透視画像を取得する時間を調整する、
(付記1)~(付記4)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0097】
(付記12)
前記表示制御部は、前記再生画像の再生速度を調整可能とする、
(付記1)~(付記11)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0098】
(付記13)
ユーザの操作によって前記X線照射のオンとオフを行う操作スイッチをさらに備え、
前記表示制御部は、前記ユーザによる前記操作スイッチの操作によって前記X線照射を終了した場合、前記撮影部が直近に取得した前記透視画像、前記X線照射が終了したときに前記表示部に表示されていた前記再生画像、又は、所定の心拍位相の前記再生画像を静止画像として前記表示部に表示させる、
(付記1)~(付記12)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0099】
(付記14)
当該X線診断装置は、前記操作部以外の周辺機器、又は、当該X線診断装置以外の医療装置の駆動を行う駆動部とさらに通信可能であり、
前記受信部は、前記駆動部から前記駆動の内容を示す駆動信号を受信し、
前記X線制御部は、前記駆動が行われていることを前記駆動信号が示す場合、前記被検体に対する前記X線照射を行い、前記駆動が行われていないことを前記駆動信号が示す場合、当該X線照射を停止する
(付記1)~(付記13)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0100】
(付記15)
ユーザの操作によって前記X線照射のオンとオフを行う操作スイッチと、
前記操作スイッチのオンとオフの状態と、による前記X線照射のオン、オフと、前記デバイスの移動と停止の状態とを互いに関連させて前記X線照射のオン、オフを制御するか否かを選択する選択スイッチと、
をさらに備える、(付記1)~(付記14)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0101】
(付記16)
ユーザの操作によってX線照射のオンとオフを行う第1の操作スイッチと、
ユーザの操作によってX線照射のオンとオフを行う第2の操作スイッチと、
をさらに備え、
前記第1の操作スイッチによる前記X線照射のオンとオフは、前記デバイスの移動と停止に基づいた前記X線制御部による前記X線照射のオン、オフと独立して切り替え可能であり、
前記第2の操作スイッチは、当該第2の操作スイッチのオン、オフ状態と、前記デバイスの移動と停止の状態とを互いに関連させて前記X線照射のオン、オフを制御する、
(付記1)~(付記14)の何れか1つに記載のX線診断装置。
【0102】
(付記17)
カテーテルロボットと、X線診断装置とを備えるX線診断システムであって、
前記カテーテルロボットは、
被検体にデバイスを挿入し、前記被検体内で前記デバイスを移動させることができるロボット本体と、
前記ロボット本体を操作することができる操作部と、
を備え、
前記X線診断装置は、
前記操作部から前記カテーテルロボットの操作の内容を示す制御信号を受信する受信部と、
X線を前記被検体に照射することによって前記被検体の透視画像を取得する撮影部と、
前記被検体に対するX線照射を制御するX線制御部と、
前記透視画像を表示可能な表示部と、
前記X線照射が行われている場合、逐次取得している前記透視画像を前記表示部に表示させ、前記X線照射が停止している場合、当該X線照射の停止前に取得した前記透視画像に基づいて再生画像を作成し、当該再生画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、
X線診断システム。
【0103】
(付記18)
前記X線制御部は、
前記デバイスが前記被検体内を移動していることを前記制御信号が示す場合、前記X線照射を行い、前記デバイスが前記被検体内で停止していることを前記制御信号が示す場合、当該X線照射を停止する、
(付記17)に記載のX線診断システム。
【符号の説明】
【0104】
1…X線診断システム
4…カテーテル
6…支援ロボット装置
62…コントローラ
64…フットスイッチ
67…ロボット本体
200…X線診断装置
250…ディスプレイ
F01…信号受信機能
F02…画像取得機能
F03…X線制御機能
F04…表示制御機能
F05…心信号取得機能
F06…呼吸信号取得機能
P…被検体
U…操作者