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特開2024-172197インクジェットインクおよび画像形成方法
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  • 特開-インクジェットインクおよび画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172197
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】インクジェットインクおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20241205BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20241205BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20241205BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20241205BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/101
C09D11/30
C09D11/322
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089753
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 千代子
(72)【発明者】
【氏名】杉野 元昭
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄史
(72)【発明者】
【氏名】大久保 康
(72)【発明者】
【氏名】池田 征史
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC21
2C056EC29
2C056EC72
2C056FA10
2C056FA13
2C056FC02
2C056HA44
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB04
2H186FB29
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
4J039AD21
4J039BC20
4J039BD04
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE27
4J039CA02
4J039EA04
4J039EA43
4J039EA47
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】活性線により硬化するインクジェットインクであって、ゲル化剤のインクへの溶解性を高め、インクのゲル化性を十分に高めつつ、形成される画像のブルーミング発生を抑制できるインクジェットインク、およびこれを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】活性線により重合する重合性化合物と、一般式(1)で表される構造を有するゲル化剤と、を有する、活性線により硬化するインクジェットインク。

(一般式(1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、XはOC(=O)、C(=O)O、およびカルボニル基のいずれかを表し、*は炭素原子との結合位置を表す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性線により重合する重合性化合物と、
一般式(1)で表される構造を有するゲル化剤と、
を有する、活性線により硬化するインクジェットインク。
【化1】
(一般式(1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、XはOC(=O)、C(=O)O、およびカルボニル基のいずれかを表し、*は炭素原子との結合位置を表す。)
【請求項2】
前記ゲル化剤は、一般式(2-1)または一般式(2-2)で表される化合物である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【化2】
【化3】
(一般式(2-1)および一般式(2-2)において、RおよびXは独立して、それぞれ一般式(1)におけるRおよびXと同じ官能基または構造を示す。)
(一般式(2-1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状アルキル基を表す。)
(一般式(2-2)において、Yは以下の(a)~(d)のいずれかである。
(a)C(R)=CH(Rは水素原子またはメチル基を表す。)
(b)C≡CH
(c)炭素数が1以上27以下である直鎖状炭化水素基(構造中にエーテル結合を含んでもよい)
(d)価数が2以上6以下であり、炭素数が1以上27以下のアルコール残基(前記アルコールは、OH基の一部が(メタ)アクリル酸または炭素数1以上27以下の脂肪酸とエステル化されていてもよい)
また、aは整数であり、Yが(a)~(c)のいずれかであるとき、aは1であり、Yが(d)のとき、aは(前記アルコールの価数-前記エステル化したOH基数)である。)
【請求項3】
前記ゲル化剤は、一般式(3-1)~一般式(3-6)のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
(一般式(3-1)~一般式(3-6)において、Rは、それぞれ一般式(1)におけるRと同じ構造を表し、Raは炭素数1以上27以下の直鎖状炭化水素基を表し、Rbは水素原子またはメチル基を表す。)
(一般式(3-4)および一般式(3-5)において、nは1以上22以下の整数である。)
【請求項4】
前記ゲル化剤は、コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01)により算出される融点(MPt)が105℃以下である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記ゲル化剤は、前記融点(MPt)が89℃以下である、請求項4に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記ゲル化剤は、前記融点(MPt)が30℃以上である、請求項4に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記ゲル化剤は、コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01)により算出されるHSP値の水素結合成分dHが1.9(MPa)1/2以下である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記ゲル化剤は、分子内に重合性基を有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
前記重合性基は、(メタ)アクリロイル基である、請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記(メタ)アクリロイル基を有するゲル化剤は、一般式(3-2)で表される化合物である、請求項9に記載のインクジェットインク。
【化10】
(一般式(3-2)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、Rbは、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のインクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して記録媒体の表面に付与する工程と、
前記付与されたインクジェットインクに活性線を照射して、前記インクジェットインクを硬化させる工程と、
を有する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェット記録方式に用いるインクとして、活性線により重合する重合性化合物(以下、活性線重合性化合物と称する)を液体成分とする、活性線により硬化するインクジェットインク(以下、活性線硬化型インクジェットインクと称する)が知られている。活性線硬化型インクジェットインクは、活性線が照射されると、活性線重合性化合物の重合により硬化して、色材を記録媒体に強固に付着させる。この硬化膜の形成により、所望の画像を形成することができる。
【0003】
活性線硬化型インクジェットインクの一種として、ゲル化剤を含む活性線硬化型インクジェットインクが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、放射線硬化性化合物を含む担体組成物と、上記担体組成物を可逆的にゲル化させるためのゲル化剤と、を含む放射線硬化性ホットメルトインクジェットインクが開示されている。特許文献1では、インクのゲル化により、インク液滴の過剰な濡れ広がりを抑制できた(ピニング性を高めることができた)とされている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、アクリレートと、硬化性ワックス(融点25~40℃)とを含む硬化性転相インクが開示されている。特許文献2では、上記硬化性転相インクにより、高い光沢性を有する画像が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-510184号公報
【特許文献2】特開2012-184406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2のように、ゲル化剤を含む活性線硬化型インクジェットインクが知られている。
【0008】
ゲル化剤を含む活性線硬化型インクでは、吐出時のインクの加熱によりゲル化剤を溶解させてから、インク着弾時の液温の低下によりゲル化剤を結晶化させ、インクをゲル化させる。インクジェットヘッドからの吐出性を高めるため、ゲル化剤は、加熱時のインクへの溶解性が高いことが求められる。
【0009】
また、本発明者らの検討によれば、特許文献1および特許文献2に記載の活性線硬化型インクジェットインクでは、インクを十分にゲル化させることができなかった。インクのピニング性を十分に高めるためには、基材に着弾した後の冷却によりインクがより十分に増粘すること(インクのゲル化性を十分に高めること)が望ましい。
【0010】
また、ゲル化剤を含むインクにより形成された画像では、結晶化したゲル化剤が画像表面に析出する、いわゆるブルーミングが発生することがある。そして、本発明者らの検討によれば、特許文献1および特許文献2に記載の活性線硬化型インクジェットインクにより形成された画像には、ブルーミングが生じやすかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、活性線により硬化するインクジェットインクであって、ゲル化剤のインクへの溶解性を高め、インクのゲル化性を十分に高めつつ、形成される画像のブルーミング発生を抑制できるインクジェットインク、およびこれを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための、本発明の一態様は、下記[1]~[10]のインクジェットインクに関する。
[1]活性線により重合する重合性化合物と、一般式(1)で表される構造を有するゲル化剤と、を有する、活性線により硬化するインクジェットインク。
【化1】
(一般式(1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、XはOC(=O)、C(=O)O、およびカルボニル基のいずれかを表し、*は炭素原子との結合位置を表す。)
[2]前記ゲル化剤は、一般式(2-1)または一般式(2-2)で表される化合物である、[1]に記載のインクジェットインク。
【化2】
【化3】
(一般式(2-1)および一般式(2-2)において、RおよびXは独立して、それぞれ一般式(1)におけるRおよびXと同じ官能基または構造を示す。)
(一般式(2-1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状アルキル基を表す。)
(一般式(2-2)において、Yは以下の(a)~(d)のいずれかである。
(a)C(R)=CH(Rは水素原子またはメチル基を表す。)
(b)C≡CH
(c)炭素数が1以上27以下である直鎖状炭化水素基(構造中にエーテル結合を含んでもよい)
(d)価数が2以上6以下であり、炭素数が1以上27以下のアルコール残基(前記アルコールは、OH基の一部が(メタ)アクリル酸または炭素数1以上27以下の脂肪酸とエステル化されていてもよい)
また、aは整数であり、Yが(a)~(c)のいずれかであるとき、aは1であり、Yが(d)のとき、aは(前記アルコールの価数-前記エステル化したOH基数)である。)
[3]前記ゲル化剤は、一般式(3-1)~一般式(3-6)のいずれかで表される化合物である、[1]または[2]に記載のインクジェットインク。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
(一般式(3-1)~一般式(3-6)において、Rは、それぞれ一般式(1)におけるRと同じ構造を表し、Raは炭素数1以上27以下の直鎖状炭化水素基を表し、Rbは水素原子またはメチル基を表す。)
(一般式(3-4)および一般式(3-5)において、nは1以上22以下の整数である。)
[4]前記ゲル化剤は、コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01)により算出される融点(MPt)が105℃以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のインクジェットインク。
[5]前記ゲル化剤は、前記融点(MPt)が89℃以下である、[4]に記載のインクジェットインク。
[6]前記ゲル化剤は、前記融点(MPt)が30℃以上である、[4]または[5]に記載のインクジェットインク。
[7]前記ゲル化剤は、コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01)により算出されるHSP値の水素結合成分dHが1.9(MPa)1/2以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のインクジェットインク。
[8]前記ゲル化剤は、分子内に重合性基を有する、[1]~[7]のいずれかに記載のインクジェットインク。
[9]前記重合性基は、(メタ)アクリロイル基である、[8]に記載のインクジェットインク。
[10]前記(メタ)アクリロイル基を有するゲル化剤は、一般式(3-2)で表される化合物である、[9]に記載のインクジェットインク。
【化10】
(一般式(3-2)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、Rbは、水素原子またはメチル基を表す。)
【0013】
上記課題を解決するための、本発明の別態様は、下記[11]の画像形成方法に関する。
[11][1]~[10]のいずれかに記載のインクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して記録媒体の表面に付与する工程と、
前記付与されたインクジェットインクに活性線を照射して、前記インクジェットインクを硬化させる工程と、
を有する、画像形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、活性線により硬化するインクジェットインクであって、ゲル化剤のインクへの溶解性を高め、インクのゲル化性を十分に高めつつ、形成される画像のブルーミング発生を抑制できるインクジェットインク、およびこれを用いた画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る画像形成方法を示すフローチャートである。
図2図2は、本実施形態に係る画像形成方法を実施することができる画像形成装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0017】
1.活性線硬化型インクジェットインク
本実施形態における、活性線により硬化するインクジェットインク(以下、活性線硬化型インクジェットインクと称する)は、活性線により重合する重合性化合物(以下、活性線重合性化合物)と、一般式(1)で表される構造を含むゲル化剤と、を含む。
【0018】
【化11】
【0019】
一般式(1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、XはOC(=O)、C(=O)O、およびC(=O)のいずれかを表し、*は炭素原子との結合位置を表す。
【0020】
本発明者らは、上記ゲル化剤を用いることで、ゲル化剤のインクへの溶解性を高めつつ、インクのゲル化性を十分に高め、さらに形成される画像のブルーミングを抑制できることを見出した。
【0021】
上記ゲル化剤は、分子内にOC(=O)、C(=O)O、またはC(=O)が炭素原子に結合した構造を有するため、インクの加熱時に溶融しやすく、インクの液体成分である活性線重合性化合物と相溶しやすい。そのため、上記ゲル化剤は活性線重合性化合物への溶解性が高い。
【0022】
また、上記ゲル化剤は、上記高極性の構造に結合するアルキル基の炭素数が28以上であるため、結晶性が高く、ゲル化剤がより結晶化しやすい。これにより、インクのゲル化性を十分に促進させることができる。
【0023】
さらに、上記ゲル化剤に含まれるアルキル基の炭素数が28以上であることで、形成される画像のブルーミングを抑制できることがわかった。上述のように、炭素数28以上のアルキル基を有することで、ゲル化剤の結晶性が高い。そして、上記ゲル化剤は、板状に結晶化したゲル化剤によって形成された三次元空間にラジカル重合性化合物が内包される構造(カードハウス構造)を強固にして形成しやすいため、ゲル化剤の移動が抑制され、ブルーミングが抑制されると考えられる。
【0024】
以下、上記知見に基づく本発明の活性線硬化型インクジェットインクについて、より詳細に説明する。
【0025】
1-1.活性線重合性化合物
活性線重合性化合物は、活性線の照射により重合および架橋する化合物である。活性線重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0026】
上記活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのうち、紫外線および電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0027】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
【0029】
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、中でも、ゲル化剤をインクに溶解させやすくする観点から(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0030】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0031】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
【0032】
また、ゲル化剤との相溶性を高め、ゲル化剤の溶解性をより高める観点から、ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイド(EO)基またはプロピレンオキサイド(PO)基を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。これらの(メタ)アクリレートは、本実施形態におけるゲル化剤との極性がより近いため、ゲル化剤と相溶しやすい。
【0033】
EO基またはPO基を有する(メタ)アクリレートに含まれるEO基またはPO基の数は、3個以上14個以下であることが好ましく、4個以上12個以下であることがより好ましい。
【0034】
EO基またはPO基を有する(メタ)アクリレートの例には、ポリエチレングリコールジアクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレートなどが含まれる。
【0035】
ラジカル重合性化合物は、ウレタン変性アクリレート、エポキシ変性アクリレート、ポリエステルアクリレートなどの変性アクリレートを含んでもよい。また、ラジカル重合性化合物は、ポリエステルオリゴマーなどのオリゴマーを含んでもよい。
【0036】
活性線重合性化合物は、カチオン重合性化合物を含んでもよい。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0037】
活性線重合性化合物の含有量は、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して、1質量%以上97質量%以下とすることができ、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
1-2.ゲル化剤
本実施形態においてゲル化剤は、一般式(1)で表される構造を含む。
【0039】
【化12】
【0040】
一般式(1)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、XはOC(=O)、C(=O)O、およびC(=O)のいずれかを表し、*は炭素原子との結合位置を表す。
【0041】
ゲル化剤は、これを含むインクを加熱したとき(たとえば80℃)で、インクに含有される活性線重合性化合物に溶解し、かつ、常温付近(たとえば35℃)では、インク中で結晶化してインクをゲル化させる化合物である。
【0042】
ゲル化剤は、分子内に一般式(1)で表される構造を1つだけ含んでいてもよいし、2つ以上含んでいてもよい。ゲル化剤は、上記構造を1つ以上2つ以下含むことが好ましい。ゲル化剤が分子内に一般式(1)で表される構造を2つ以上含むとき、複数の一般式(1)で表される構造は、それぞれ同一の構造であってもよいし、異なる構造であっていてもよいが、同一の構造であることが好ましい。
【0043】
ゲル化剤は、たとえば下記一般式(2-1)または一般式(2-2)で表される化合物とすることができる。
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
一般式(2-1)および一般式(2-2)において、RおよびXは独立して、それぞれ一般式(1)におけるRおよびXと同じ官能基または構造を示す。
【0047】
一般式(2-1)において、Rは、炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表す。なお、一般式(2-1)におけるRおよびRは、それぞれ炭素数が同じアルキル基であってもよいし、炭素数が異なるアルキル基であってもよい。
【0048】
一般式(2-2)において、以下の(a)~(d)のいずれかである。
(a)HC=CH
(b)C≡CH
(c)炭素数が1以上27以下である直鎖状の炭化水素基
(d)価数が2以上6以下であり、炭素数が1以上27以下のアルコール残基(OH基の一部が(メタ)アクリル酸または炭素数1以上27以下の脂肪酸とエステル化されていてもよい)
aは整数であり、Yが(a)~(c)のいずれかのときは1であり、Yが(d)のとき、(上記アルコールの価数-上記エステル化したOH基数)である。
【0049】
一般式(1)、一般式(2-1)および一般式(2-2)において、RおよびRが表すアルキル基の炭素数は、28以上であり、28以上36以下であることが好ましく、28以上32以下であることがより好ましい。36以下であることで、ゲル化剤の融点が過度に上昇することを抑制することができる。これにより、ゲル化剤を含むインクのゾル化温度が高まり過ぎず、インクの加熱温度を低くして、インクを吐出させることができる。
【0050】
一般式(2-2)において、Yが(c)直鎖状の炭化水素基であるとき、上記炭化水素基の炭素数は1以上27以下であり、1以上22以下であることが好ましく、2以上18以下であることがより好ましく、2以上15以下であることがさらに好ましい。2以上であることで、ゲル化剤の結晶性をより高めて、インクのゲル化性をさらに高めることができる。22以下であることで、ゲル化剤の融点が過度に上昇することを抑制することができる。これにより、ゲル化剤を含むインクのゾル化温度が高まり過ぎず、インクの加熱温度を低くして、インクを吐出させることができる。なお、上記炭化水素基は、構造中にエーテル結合、エステル結合を有してもよい。
【0051】
Yが(d)アルコール残基のとき、価数は2以上6以下であり、2以上4以下であることが好ましい。また、アルコール残基の炭素数は1以上27以下であり、2以上22以下であることが好ましく、2以上18以下であることがより好ましく、2以上15以下であることがさらに好ましい。
【0052】
より具体的には、ゲル化剤は、たとえば一般式(3-1)~一般式(3-6)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0054】
一般式(3-1)~一般式(3-6)において、Rは、それぞれ一般式(1)におけるRと同じ構造を表し、Raは炭素数1以上27以下の直鎖状炭化水素基を表し、Rbは水素原子またはメチル基を表す。
【0055】
また、一般式(3-4)および一般式(3-5)において、nは1以上22以下の整数である。
【0056】
Raは炭素数1以上27以下の直鎖状炭化水素基であり、炭素数1以上22以下の直鎖状炭化水素基であることが好ましく、炭素数2以上18以下の直鎖状炭化水素基であることがより好ましく、炭素数2以上15以下の直鎖状炭化水素基であることがさらに好ましい。Rbは水素原子であることが好ましい。
【0057】
nは、1以上22以下の整数であり、2以上18以下の整数であることが好ましく、2以上15以下の整数であることがより好ましい。
【0058】
ゲル化剤の分子内における、炭素数28以上のアルキル基の総数は、1個以上2個以下であることが好ましい。
【0059】
また、ゲル化剤の分子内における、OC(=O)、C(=O)O、およびC(=O)の構造の総数は、1個以上4個以下であることが好ましく、1個以上2個以下であることがより好ましい。
【0060】
ゲル化剤の分子鎖に含まれる、炭素数28以上のアルキル基の数に対する、OC(=O)、C(=O)O、およびC(=O)の数の割合は、1/2以上2以下であることが好ましく、3/4以上3/2以下であることがより好ましい。上記割合が1/2以上であることで、インクが記録媒体に着弾したとき、ゲル化剤がより結晶化しやすくなり、インクのゲル化性をより高めることができる。また、上記割合が2以下であることで、分子内の高極性構造の割合をより高めて、ゲル化剤のインクへの溶解性をより高めることができる。
【0061】
ゲル化剤の分子内における炭素数は、30以上65以下であることが好ましく、31以上62以下であることがより好ましい。
【0062】
一般式(1)において、*は炭素原子との結合位置である。一般式(1)の*における、Xの結合先は、直鎖状の構造であってもよいし、分岐鎖状の構造であってもよいが、直鎖状の構造であることが好ましい。
【0063】
一般式(1)の*における、Xの結合先の例には、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、ビニル基、エチレングリコールまたはペンタエリスリトールに由来する構造などが含まれる。
【0064】
ゲル化剤は、コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01、テガラ株式会社製)により算出される融点(MPt)が105℃以下であることが好ましく、89℃以下であることがより好ましく、82℃以下であることがさらに好ましい。上記融点(MPt)は、活性線重合性化合物とゲル化剤との親和性を考慮して算出された融点であるため、上記融点(MPt)が105℃以下であることで、ゲル化剤は、インクの液体成分である活性線重合性化合物により溶解しやすくなる。これにより、インクへの溶解性がより高まる。また、上記融点(MPt)が89℃以下であることで、ゲル化剤の結晶化速度が緩やかになり、より強固なカードハウス構造が形成されやすくなる。そのため、ブルーミングをより抑制できる。
【0065】
また、上記融点(MPt)は30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。上記融点(MPt)が30℃以上であることで、ゲル化剤の結晶性をより高めてゲル化性をより高めることができる。
【0066】
ゲル化剤は、コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01、テガラ株式会社製)により算出されるHSP値の水素結合成分dHが1.9(MPa)1/2以下であることが好ましく、1.80(MPa)1/2以下であることがより好ましく、1.75(MPa)1/2以下であることがさらに好ましい。HSP値の水素結合成分dHが1.9(MPa)1/2以下であると、ゲル化剤の活性線重合性化合物に対する親和性がより高まり、ゲル化剤が活性線重合性化合物と相溶しやすくなる。この状態で、ゲル化剤が結晶化すると、ゲル化剤の結晶に活性線重合性化合物が内包されやすくなり、インクのゲル化性をより高めることができる。上記ゲル化剤のHSP値の水素結合成分dHの下限値は、特に限定されないが、例えば、0.6(MPa)1/2である。
【0067】
ゲル化剤は、分子内に重合性基を有することが好ましい。具体的には、ゲル化剤は活性線により重合可能であることが好ましい。これにより、活性線重合性化合物の重合鎖の中に、ゲル化剤の分子が組み込まれるため、ゲル化剤が移動しにくくなり、画像表面にゲル化剤の結晶が析出することによるブルーミングの発生をより抑制できる。また、活性線重合性化合物の重合鎖の中に、ゲル化剤の分子が組み込まれることで、活性線重合性化合物も移動しにくくなるため、インクのゲル化性をより十分に高めることができる。
【0068】
ゲル化剤の分子内に含まれる重合性基の数は、1個以上3個以下であることが好ましい。ゲル化剤の分子を直鎖状にしやすくして、ゲル化剤の結晶性をより高める観点からは、上記重合性基の数は、1個以上2個以下であることがより好ましい。
【0069】
ゲル化剤の分子内に含まれる重合性基の数と、一般式(1)で表される構造の数との合計は、2個以上6個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましい。
【0070】
ゲル化剤の分子内に含まれる、重合性基の数に対する、一般式(1)の構造の数の割合は、1/2以上2以下であることが好ましく、3/4以上3/2以下であることがより好ましい。
【0071】
上記重合性基の例には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エチニル基などが含まれる。これらのうち、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0072】
ゲル化剤が(メタ)アクリロイル基を有するとき、ゲル化剤は、一般式(3-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0073】
【化21】
【0074】
一般式(3-2)において、Rは炭素数28以上の直鎖状のアルキル基を表し、Rbは、水素原子またはメチル基を表す。
【0075】
ゲル化剤が、一般式(3-2)で表される化合物であることで、活性線の照射により、ゲル化剤がラジカル重合反応を起こしやすくなり、活性線重合性化合物の重合鎖の中に、ゲル化剤の分子がより組み込まれやすくなる。その結果、ゲル化剤の移動を抑制して、ブルーミングをより抑制できる。また、一般式(3-2)で表される化合物は、直鎖状または直鎖状に近い構造であるため、結晶性が高く、よりゲル化性を高めやすい。
【0076】
Rbは水素原子であることが好ましい。これにより、立体障害が生じにくくなり、重合性基(アクリロイル基)の反応性が向上し、活性線重合性化合物の重合鎖の中に、ゲル化剤の分子がより組み込まれやすくなる。その結果、ゲル化剤の移動を抑制して、ブルーミングをより抑制できる。
【0077】
ゲル化剤の重量平均分子量は、150以上1300以下であることが好ましく、450以上1000以下であることがより好ましい。上記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定できる。
【0078】
一般式(1)の構造を有するゲル化剤の具体例には、以下の化合物が含まれる。
【0079】
【化22】
【0080】
一般式(1)の構造を有するゲル化剤の含有量は、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。0.5質量%以上であると、インクのゲル化性をより高めることができ、10.0質量%以下であると、形成される画像におけるブルーミングの発生をより抑制できる。
【0081】
活性線硬化型インクジェットインクは、本発明の効果を奏する範囲内において、一般式(1)で表されるゲル化剤以外の、他のゲル化剤を含んでもよい。他のゲル化剤の例には、脂肪族ケトン(一般式(1)の構造を有するものを除く)、脂肪族エステル(一般式(1)の構造を有するものを除く)、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールが含まれる。
【0082】
インクのゲル化性をより十分に高め、ブルーミングをより抑制する観点から、他のゲル化剤の含有量は、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して、1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましい。
【0083】
1-3.その他の成分
1-3-1.着色剤
本実施形態において、活性線硬化型インクジェットインクは必要に応じて着色剤を含有してもよい。
【0084】
着色剤は、染料または顔料であるが、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ対候性に優れることから、顔料が好ましい。顔料は、形成すべき画像の色彩などに応じて、たとえば、黄(イエロー)顔料、赤またはマゼンタ顔料、青またはシアン顔料、黒顔料および白色顔料から選択することができる。
【0085】
黄顔料の例には、C.I.Pigment Yellow(以下、単に「PY」ともいう。)1、PY3、PY12、PY13、PY14、PY17、PY34、PY35、PY37、PY55、PY74、PY81、PY83、PY93、PY94,PY95、PY97、PY108、PY109、PY110、PY137、PY138、PY139、PY153、PY154、PY155、PY157、PY166、PY167、PY168、PY180、PY185、およびPY193などが含まれる。
【0086】
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、C.I.Pigment Red(以下、単に「PR」ともいう。)3、PR5、PR19、PR22、PR31、PR38、PR43、PR48:1、PR48:2、PR48:3、PR48:4、PR48:5、PR49:1、PR53:1、PR57:1、PR57:2、PR58:4、PR63:1、PR81、PR81:1、PR81:2、PR81:3、PR81:4、PR88、PR104、PR108、PR112、PR122、PR123、PR144、PR146、PR149、PR166、PR168、PR169、PR170、PR177、PR178、PR179、PR184、PR185、PR208、PR216、PR226、およびPR257、C.I.Pigment Violet(以下、単に「PV」ともいう。)3、PV19、PV23、PV29、PV30、PV37、PV50、およびPV88、ならびに、C.I.PigmentOrange(以下、単に「PO」ともいう。)13、PO16、PO20、およびPO36などが含まれる。
【0087】
青またはシアン顔料の例には、C.I.Pigment Blue(以下、単に「PB」ともいう。)1、PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:6、PB16、PB17-1、PB22、PB27、PB28、PB29、PB36、およびPB60などが含まれる。
【0088】
緑顔料の例には、C.I.Pigment Green(以下、単に「PG」ともいう。)7、PG26、PG36、およびPG50などが含まれる。
【0089】
黒顔料の例には、C.I.Pigment Black(以下、単に「PBk」ともい
う。)7、PBk26、およびPBk28などが含まれる。
【0090】
白色顔料は、白色インクが硬化してなる硬化膜に白色を呈させる顔料であればよい。白色顔料の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および水酸化アルミニウムなどの無機顔料が含まれる。これらのうち、酸化チタンが好ましい。
【0091】
上記酸化チタンの結晶形態は、ルチル型、アナターゼ型およびブルーカイト型のいずれでもよいが、白色顔料をより小粒径化しやすくする観点からは、比重が小さいアナターゼ型が好ましく、形成される画像の隠蔽性をより高める観点からは、可視光領域における屈折率が大きいルチル型が好ましい。
【0092】
着色剤の含有量は、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。白色顔料の含有量は、3質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0093】
1-3-2.顔料分散剤
上記活性線硬化型インクは、顔料を分散させるための顔料分散剤を含んでもよい。顔料分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートなどが含まれる。
【0094】
顔料分散剤の含有量は、顔料の全質量に対して10質量%以上200質量%以下であることが好ましく、20質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が顔料の全質量に対して10質量%以上であると、顔料の分散安定性が高まり、分散剤の含有量が顔料の全質量に対して200質量%以下であると、インクジェットヘッドからのインクの吐出性が安定しやすくなる。
【0095】
1-3-3.活性線重合開始剤
本実施の形態において、活性線硬化型インクジェットインクは、活性線重合開始剤(以下、単に「重合開始剤」と称する。)を含んでもよい。重合開始剤は、活性線の照射により、上述の活性線重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。例えば、活性線硬化型インクジェットインクがラジカル重合性化合物を有するときは、重合開始剤はラジカル重合開始剤とすることができ、上記活性線硬化型インクがカチオン重合性化合物を有するときは、重合開始剤はカチオン系の重合開始剤(光酸発生剤)とすることができる。なお、電子線の照射により活性線硬化型インクジェットインクを硬化させるときなど、重合開始剤がなくても活性線硬化型インクジェットインクが十分に硬化できるときは、重合開始剤は不要である。
【0096】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0097】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0098】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0099】
カチオン系の重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
【0100】
重合開始剤の含有量は、活性線(例えば紫外線)の照射によって活性線硬化型インクジェットインクが十分に硬化し、記録媒体の表面への塗布性を低下させない範囲であれば、特に限定されない。例えば、重合開始剤の含有量は、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0101】
1-3-4.重合禁止剤
本実施の形態において、活性線硬化型インクジェットインクは、重合禁止剤を含んでもよい。
【0102】
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチルアルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムなどが含まれる。
【0103】
上記重合禁止剤の含有量は、特に限定されないが、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0104】
1-3-5.界面活性剤
本実施の形態において、活性線硬化型インクジェットインクは、表面張力を調整するための界面活性剤を含んでもよい。
【0105】
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類を含むアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類を含むノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類を含むカチオン性界面活性剤、シリコーン系の界面活性剤、ならびにフッ素系の界面活性剤が含まれる。
【0106】
界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0107】
本実施形態において、活性線硬化型インクジェットインクは、上記成分以外に、必要に応じて、ゲル化剤、定着樹脂、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤などを含んでもよい。
【0108】
1-4.活性線硬化型インクジェットインクの物性
上記活性線硬化型インクの80℃における粘度は、3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、インクジェットヘッドにおいて、インクを加熱してインクを射出する際の射出性を高めることができる。
【0109】
上記粘度は、レオメータによって測定することができる。例えば、上記プレコート剤を100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。上記粘度は、得られた温度変化曲線から、80℃における粘度を読み取ることで、求めることができる。
【0110】
また、上記活性線硬化型インクの35℃における粘度は、10Pa・s以上であることが好ましく、30Pa・s以上であることがより好ましく、50Pa・s以上であることがさらに好ましい。上記粘度の上限値は、特に限定されないが、例えば、300Pa・sである。上記粘度は、上述の温度変化曲線から、35℃における粘度を読み取ることで、求めることができる。
【0111】
1-5.活性線硬化型インクジェットインクの調製方法
活性線硬化型インクジェットインクは、上述した活性線重合性化合物と、ゲル化剤と、任意のその他の成分とを、加熱下において混合することにより調製することができる。この際、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。なお、顔料を含有するインクを調製する際は、顔料、活性線重合性化合物を含む顔料分散液を調製し、その後、顔料分散液と他の成分とを混合することが好ましい。顔料分散液は、分散剤をさらに含んでもよい。
【0112】
上記顔料分散液は、活性線重合性化合物に顔料を分散して調製することができる。顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカーなどを用いて行えばよい。このとき、分散剤を添加してもよい。
【0113】
なお、複数種の活性線重合性化合物を用いる場合、活性線重合性化合物を先に混合して活性線重合性組成物を作製してから、活性線重合性組成物と、ゲル化剤と、任意のその他の成分とを、加熱下において混合してもよい。
【0114】
2.画像形成方法
図1は、本実施形態に係る画像形成方法を表すフローチャートである。本実施形態に係る画像形成方法は、上述の活性線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体の表面に付与する工程(工程S10)と、上記付与された前記活性線硬化型インクジェットインクの液滴に活性線を照射して硬化させる工程(工程S20)と、を有する。
【0115】
2-1.活性線硬化型インクジェットインクを記録媒体に付与する工程(工程S10)
本工程では、上述の活性線硬化型インクジェットインクを、インクジェットヘッドから吐出して記録媒体の表面(形成すべき画像に応じた位置)に付与する。
【0116】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型などの電気-熱変換方式などのいずれでもよい。また、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。
【0117】
上記活性線硬化型インクの液滴は、加熱されてゾル化した状態でインクジェットヘッドから吐出されるため、インクジェットヘッドに充填されたときのインクの温度を、インクのゲル化温度+10℃以上、ゲル化温度+30℃以下に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内の上記活性線硬化型インクの温度が、ゲル化温度+10℃以上であると、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化することによる吐出性の低下が生じにくい。一方、インクジェットヘッド内のインクの温度がゲル化温度+30℃以下であると、高温による成分の劣化が生じにくい。
【0118】
活性線硬化型インクジェットインクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンクなどのインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッドなどの少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水などによって加熱することができる。
【0119】
活性線硬化型インクジェットインクの吐出液滴量は、記録速度および画質をより高める観点から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
【0120】
記録媒体は、特に制限されず、通常の非コート紙、コート紙などの他、合成紙ユポ(「ユポ」は株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標)、軟包装に用いられる各種プラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムがある。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0121】
活性線硬化型インクジェットインクの記録媒体への付与は、吐出されたインクをそのまま記録媒体に着弾させて付与してもよいし、上記吐出されたインクを中間転写体に着弾させて中間画像を形成し、上記中間画像を中間転写体から記録媒体に転写して付与してもよい。
【0122】
2-2.活性線硬化型インクジェットインクを硬化させる工程(工程S20)
本工程では、工程S10で記録媒体に付与した活性線硬化型インクジェットインクの液滴に活性線を照射して上記液滴を硬化させる。これにより、上記活性線硬化型インクジェットインクの硬化膜からなる画像が形成される。
【0123】
活性線は、例えば、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などから選択することができるが、紫外線または電子線であることが好ましい。上記紫外線は、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光であることが好ましい。また、上記紫外線は、LED光源から照射されることが好ましい。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ない。したがって、LEDは、活性線照射時に、インクが溶け難く、光沢ムラなどを生じさせにくい。
【0124】
3.画像形成装置
以下、上述の画像形成方法を実施することができる画像形成装置100について説明する。
【0125】
図2は、本実施形態に関する画像形成装置100の構成を示す模式図である。図2に示されるように、画像形成装置100は、インクジェットヘッド110、搬送部120、および照射部130を有する。なお、図2において、矢印は記録媒体の搬送方向を示す。
【0126】
インクジェットヘッド110は、ノズル111の吐出口が設けられたノズル面113を、画像を形成する際に搬送部120に対向する面に有しており、搬送部120によって搬送される記録媒体200に対して活性線硬化型インクジェットインクを吐出する。活性線硬化型インクジェットインクの吐出性を高める観点から、インクジェットヘッド110は、インクの温度を調整してインクを低粘度に調整するための温度調整手段を有してもよい。温度調整手段の例には、パネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水による加熱手段が含まれる。
【0127】
インクジェットヘッド110は、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅が記録媒体200よりも小さいスキャン式のインクジェットヘッドでもよく、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅が記録媒体200よりも大きいライン式のインクジェットヘッドでもよい。
【0128】
ノズル111は、ノズル面113に吐出口を有する。ノズル111の数は、画像形成に使用するインクの数(例えば4つ)以上であればよい。
【0129】
搬送部120は、画像を形成する際に、インクジェットヘッド110の鉛直方向直下において、インクジェットヘッド110に対向する記録媒体200が移動するように、記録媒体200を搬送する。たとえば、搬送部120は、駆動ローラ121および従動ローラ122、ならびに搬送ベルト123を有する。
【0130】
照射部130は、搬送部120の上面に活性線を照射する。これにより、搬送される記録媒体200上に着弾した活性線硬化型インクジェットインクの液滴に活性線を照射して、液滴を硬化させることができる。照射部130は、インクジェットヘッド110よりも下流側で搬送部120の直上に配設することができる。
【0131】
画像形成装置100は、上記構成以外にも、吐出前の活性線硬化型インクを貯蔵するためのインクタンク(不図示)、インクタンクとインクジェットヘッド110とをインクが流通可能に連通するインク流路(不図示)、ならびに、インクジェットヘッド110、搬送部120、および照射部130の動作を制御する制御部(不図示)を有していてもよい。
【0132】
また、画像形成装置100は、中間転写体および転写部(いずれも不図示)を有してもよい。このとき、インクジェットヘッド110は、中間転写体に対して活性線硬化型インクジェットインクを吐出して中間転写体の表面に着弾させ、活性線硬化型インクジェットインクの液滴が集合してなる中間画像を中間転写体の表面に形成する。その後、転写部は、中間転写体の表面から記録媒体の表面へと、中間画像を転写する。そして、照射部130は、記録媒体の表面に転写された中間画像に活性線を照射して、活性線硬化型インクジェットインクの液滴を硬化させる。
【実施例0133】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0134】
1.材料の用意/合成
活性線硬化型インクジェットインクの調製に用いた材料を以下に示す。
【0135】
1-1.活性線重合性化合物
(重合性組成物1)
下記化合物を混合して活性線重合性化合物の混合物1(重合性組成物1と称する)を得た。
・PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(PO基数3) 30質量部
・ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(EO基数9) 40質量部
・PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(PO基数6) 30質量部
【0136】
(重合性組成物2)
下記化合物を混合して活性線重合性化合物の混合物2(重合性組成物2と称する)を得た。
・PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(PO基数3) 30質量部
・1,10-デカンジオールジメタクリレート 40質量部
・PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(PO基数6) 30質量部
【0137】
1-2.活性線重合開始剤
フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(東京化成工業株式会社製)
【0138】
1-3.ゲル化剤
(ゲル化剤1の合成)
4.53gのメリシン酸を15mLのトルエンに溶解させ、さらに1.8gの塩化チオニルを加えて、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を10mLの塩化メチレンに溶解させた後、この溶液を、0.31gのエチレングリコールおよび3.0gのトリエチルアミンを20mLの塩化メチレンに溶解させた溶液中に滴下し、室温で8時間撹拌した。この反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物を酢酸エチルで再結晶し、2.80gのゲル化剤1を得た。収率は60%であった。
【0139】
【化23】
【0140】
(ゲル化剤2の合成)
4.53gのノナコサン酸メチルをトルエンに溶解させ、0.8gの水素化ナトリウム(含有量60%)を加えて、60℃に加熱しながら4時間撹拌を行った。その後、反応液を10%酢酸水溶液100ml中に加え、激しく撹拌した。水層と分離させた有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、6.12gの化合物2-1を得た。収率は70%であった。
【0141】
6.0gの上記化合物2-1をエタノールに溶解させた後、0.4gの水酸化ナトリウム、および5mLの水を加え、60℃で2時間加熱しながら撹拌した。その後、2gの酢酸を添加し、60℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、析出した固体をろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.13gのゲル化剤2を得た。収率は75%であった。
【0142】
【化24】
【0143】
(ゲル化3の合成)
4.4gのメリシン酸を15mLのトルエンに溶解させた後、1.8gの塩化チオニルを加え、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を10mLの塩化メチレンに溶解させた後、この溶液を、4.11gのオクタコサノールおよび2.1gのトリエチルアミンを20mLの塩化メチレンに溶解させた溶液中に滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物を酢酸エチルで再結晶し、7.36gのゲル化剤3を得た。収率は87%であった。
【0144】
【化25】
【0145】
(ゲル化剤4の合成)
4.4gのメリシン酸を15mLのトルエンに溶解させた後、1.8gの塩化チオニルを加え、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を塩化メチレン10mlに溶解させた後、この溶液を、2.6gの1-オクタノールおよび2.1gのトリエチルアミンを溶解させた20mLの塩化メチレンの溶液中に滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物を酢酸エチルで再結晶し、5.1gのゲル化剤4を得た。収率は90%であった。
【0146】
【化26】
【0147】
(ゲル化剤5の合成)
4.7gヘントリアコンタン酸を15mLのトルエンに溶解させ、1.8gの塩化チオニルを加えて、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を10mLの塩化メチレンに溶解させた後、この溶液を、0.31gのエチレングリコールおよび3.0gのトリエチルアミンを20mLの塩化メチレンに溶解させた溶液中に滴下し、室温で8時間撹拌した。この反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物を酢酸エチルで再結晶し、3.36gのゲル化剤5を得た。収率は70%であった。
【0148】
【化27】
【0149】
(ゲル化剤6の合成)
4.1gのオクタコサノールを25mLのトルエンに溶解させ、1.8gの塩化チオニルを加えて、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を25mLのエタノールに溶解させ、0.73gのシアン化ナトリウムを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相を減圧下で濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.2gの化合物6-1を得た。収率は98%であった。
【0150】
4.0gの上記化合物6-1を40mLの脱水テトラヒドロフランに溶解させ、1mol/Lのn-プロピルマグネシウムブロマイド(テトラヒドロフラン溶液)10mlを加え、室温で6時間撹拌した。反応液を水で希釈後、塩化メチレンで抽出した。溶媒を減圧下で留去した後、得られた濃縮物を酢酸エチルで再結晶し、3.8gのゲル化剤6を得た。収率は86%であった。
【0151】
【化28】
【0152】
(ゲル化剤7の合成)
8.78gのノナコサン酸を30mLのトルエンに溶解させ、3.6gの塩化チオニルを加え、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を20mLの塩化メチレンに溶解させ、この溶液を、1.36gのペンタエリスリトールおよび3.5gのトリエチルアミンを溶解させた50mLの塩化メチレン溶液中に滴下し、室温で8時間撹拌した。この反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.40gの化合物7-1を得た。収率は45%であった。
【0153】
4.00gの上記化合物7-1を40mLの塩化メチレンに溶解させた後、2.0gのトリエチルアミンを加え、さらに室温で1.48gのアクリル酸クロライドを滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.04gのゲル化剤7を得た。収率は91%であった。
【0154】
【化29】
【0155】
(ゲル化剤8の合成)
4.7gのドトリアコンタノールを60mLのトルエンに溶解し、3.0gのトリエチルアミンを加え、さらに1.8gのアクリル酸クロライドを滴下した。滴下終了後、室温で5時間撹拌したのち、反応液に100mLの5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加え30分撹拌したのち水層を除去し、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル-メタノール混合溶媒で再結晶し、4.52gのゲル化剤8を得た。収率は87%であった
【0156】
【化30】
【0157】
(ゲル化剤9の合成)
ゲル化剤8の合成においてドトリアコンタノールの代わりに4.38gのトリアコンタノールを用いた以外はゲル化剤8の合成と同様の操作を行い、4.14gのゲル化剤9を得た。収率は84%であった。
【0158】
【化31】
【0159】
(ゲル化剤10の合成)
ゲル化剤8の合成においてドトリアコンタノールの代わりに4.11gのオクタコサノールを用いた以外はゲル化剤8の合成と同様の操作を行い、3.71gのゲル化剤10を得た。収率は80%であった。
【0160】
【化32】
【0161】
(ゲル化剤11の合成)
2.80gのステアリルアミンを100mlのテトラヒドロフランに溶解させた後、2.0gのトリエチルアミンを加え、3.14gのステアリン酸クロライドを滴下して2時間撹拌した。反応液を濾過、水洗し、得られた固体をメタノール中で加熱しながら撹拌、放冷後ろ過し、3.75gのゲル化剤11を得た。収率は70%であった。
【0162】
【化33】
【0163】
(ゲル化剤12の合成)
4.38gのオクタコサン酸メチルを90mLのトルエンに溶解させた後、0.8gの水素化ナトリウム(含有量60%)を加え、60℃に加熱しながら4時間撹拌を行った。この反応液を10%酢酸水溶液100mL中に加え、激しく撹拌した。水層と分離したのち有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、5.66gの化合物12-1を得た。収率は67%であった。
【0164】
5.66gの上記の化合物12-1を100mLエタノールに溶解させた後、0.4gの水酸化ナトリウム、および5mLの水を加え、60℃で2時間加熱しながら撹拌した。その後、2.0gの酢酸を添加し、60℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、析出した固体をろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3.74gのゲル化剤12を得た。収率は71%であった。
【0165】
【化34】
【0166】
(ゲル化剤13)
市販のゲル化剤(ステアロン、東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0167】
(ゲル化剤14)
ドトリアコンタノールの代わりに3.41gのドコサノールを用いた以外はゲル化剤8の合成と同様の操作を行い、2.92gのゲル化剤14を得た。収率は74%であった。
【0168】
【化35】
【0169】
(ゲル化剤15の合成)
4.25gのオクタコサン酸を15mLのトルエンに溶解させた後、1.8gの塩化チオニルを加え、70℃で3時間加熱した。その後、反応液を減圧下で濃縮した。上記濃縮物を10mLの塩化メチレンに溶解させた溶液を、6.81gのペンタエリスリトールおよび3.0gのトリエチルアミンを溶解させた40mLの塩化メチレンの溶液中に滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.61gの化合物15-1を得た。収率は85%であった。
【0170】
4.61gの化合物15-1を25mLの塩化メチレンに溶解させた後、2.6gのトリエチルアミンを加え、さらに1.54gのアクリル酸クロライドを滴下し、室温で6時間撹拌した。この反応液に水を加え、有機相を水洗後、減圧下で溶媒を留去した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.88gのゲル化剤15を得た。収率は82%であった。
【0171】
【化36】
【0172】
(ゲル化剤16の合成)
ドトリアコンタノールの代わりに3.97gのへプタコサノールを用いた以外は、ゲル化剤8の合成と同様の操作を行い、3.47gのゲル化剤16を得た。収率は77%であった。
【0173】
【化37】
【0174】
(各ゲル化剤の物性)
コンピュータソフトウェアHSPiP(バージョン5.4.01)を用いて、各ゲル化剤の分子構造に基づいて、各ゲル化剤のHSP値の水素結合成分(dH)および融点(Mpt)を算出した。
【0175】
2.活性線硬化型インクジェットインクの調製
100質量部の重合性組成物1と、5.0質量部の重合開始剤とをステンレスビーカーに入れ撹拌した後、さらに2.5質量部のゲル化剤1を加え、これを90℃で加熱撹拌した。その後、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過することにより活性線硬化型インクジェットインク1を得た。混合モノマーおよびゲル化剤の種類を表1、2に示したように変更した以外は同様にして、活性線硬化型インクジェットインク2~16を得た。
【0176】
3.評価
(ゲル化剤の溶解性)
各活性線硬化型インクジェットインク10mLを入れた容器を、90℃に加温したオーブン中に、10分間入れ、オーブンから取り出した直後の容器内のインクを観察した。そして、ゲル化剤の溶解性について、以下の評価基準に沿って評価した。
4:透明で不溶物がなく均一(オイルアウトがない)
3:不溶物がなく均一だが、やや濁りがある
2:透明で不溶物がないが、オイルアウト(分離)成分がある
1:一部あるいは全てのゲル化剤が溶解せずに残存している
【0177】
(ゲル化性)
ゲル化性は、粘度変化曲線から求められる35℃における各インクの粘度の値を指標として評価した。35℃における粘度は、モジューラーコンパクトレオメータ(MCR302e、アントンパール社製)を用いて、振動モードにて90℃から30℃まで温度を変化させながら測定した粘度変化曲線において、温度が35℃になったときの複素粘度から求めた。そして、ゲル化性について、以下の評価基準に沿って評価した。
5:50Pa・s以上
4:10Pa・s以上50Pa・s未満
3:5Pa・s以上10Pa・s未満
2:1Pa・s以上5Pa・s未満
1:1Pa・s未満
【0178】
(ブルーミング抑制)
まず、インクジェットプリンター(DMP-2850、FUJIFILM Dimatix社製、インク加熱温度80℃)を用いて、各インクの3cm×3cmのベタ膜を印刷用コート紙上に付与した。そして、波長365nmの紫外線高圧水銀ランプを用いて、コート紙上のインクに紫外線を照射することで(強度300mJ/cm)、ベタ画像を形成した。次いで、ベタ画像表面の接触角を、接触角計(LSE-B100W、株式会社ニック製)を用いて測定した。測定に用いた液体は、水、ジヨードメタン、ヘキサデカンの3液である。これらの接触角値および各液体の表面エネルギー値を用いて、ベタ画像の表面エネルギー(オーブン投入前)を算出した。
【0179】
続いて、上記ベタ画像が形成されたコート紙を40℃に加温したオーブン中に1週間投入した後、投入前と同様に3液の接触角から上記ベタ画像の表面エネルギー(オーブン投入後)を算出した。そして、投入前後の表面エネルギー値の変化率を下記式により求めた。求めた変化率に基づき、以下の評価基準に沿ってブルーミングを評価した。
表面エネルギー変化率(%)=((表面エネルギー(投入後)-表面エネルギー(投入前))/表面エネルギー(投入前))×100
5:表面エネルギー変化率が5%未満
4:表面エネルギー変化率が5%以上10%未満
3:表面エネルギー変化率が10%以上20%未満
2:表面エネルギー変化率が20%以上30%未満
1:表面エネルギー変化率が30%以上
【0180】
活性線硬化型インクジェットインク1~16について、各評価結果を表1、2にまとめた(表内「-」は評価不能であったことを示す)。また、ゲル化剤1~16の構造式も表1、2内に示した。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
実験1~10の結果から、一般式(1)で表される構造を有するゲル化剤を用いることで、インクへの溶解性およびゲル化性を十分に高めることができ、且つブルーミングを抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明のインクジェットインクは、ゲル化剤のインクへの溶解性およびインクのゲル化性を十分に高め、且つ形成される画像のブルーミングを抑制できる。そのため、本発明は画像形成分野において有用である。
【符号の説明】
【0185】
100 画像形成装置
110 インクジェットヘッド
120 搬送部
130 照射部
図1
図2