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特開2024-172198環状シロキサン化合物の製造方法、中空粒子及びその製造方法、並びにシリカ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172198
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】環状シロキサン化合物の製造方法、中空粒子及びその製造方法、並びにシリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20241205BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08F20/36
C01B33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089754
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋平
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 佳之
(72)【発明者】
【氏名】南 秀人
【テーマコード(参考)】
4G072
4J100
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB16
4G072DD04
4G072DD05
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ38
4G072JJ47
4G072MM22
4G072MM23
4G072MM31
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT30
4J100AL67P
4J100BA81P
4J100CA01
4J100EA09
4J100EA12
4J100FA02
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA27
4J100FA28
4J100GC29
4J100JA00
4J100JA24
4J100JA32
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】耐熱性の良好な中空の粒子及びその製造方法を提供するとともに、中空粒子の原料となる化合物を簡便に得る方法を提供する
【解決手段】本発明は、環状シロキサン化合物に由来する構造を含む中空粒子であって、前記環状シロキサン化合物はシロキサン結合からなる環状骨格を有し、前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している、中空粒子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状シロキサン化合物に由来する構造を含む中空粒子であって、
前記環状シロキサン化合物はシロキサン結合からなる環状骨格を有し、
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、
前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している、中空粒子。
【請求項2】
ケイ素比率が10~40質量%である請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
中空率が10~60%である請求項1に記載の中空粒子。
【請求項4】
前記環状シロキサン化合物は、1分子内に2以上の重合性不飽和基を有する環状シロキサン化合物である請求項1に記載の中空粒子。
【請求項5】
平均粒子径が0.1~100μmである請求項1に記載の中空粒子。
【請求項6】
熱分解開始温度が200℃以上である請求項1~5のいずれかに記載の中空粒子。
【請求項7】
シロキサン結合からなる環状骨格を有し、
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、
前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している環状シロキサン化合物の製造方法であって、
シラン系単量体を、水を含む溶媒中で加水分解及び縮合して、前記環状シロキサン化合物を含む分散液を調製する工程と、
前記分散液から水を除去する工程とを含む、
環状シロキサン化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法によって前記環状シロキサン化合物を製造し、得られた環状シロキサン化合物と炭化水素系溶媒とから、溶媒-環状シロキサン化合物混合物を得る工程、
前記溶媒-環状シロキサン化合物混合物を、水を含む溶媒中で撹拌し、前記環状シロキサン化合物をラジカル重合する工程とを含む中空粒子の製造方法。
【請求項9】
環状シロキサン化合物と炭化水素系溶媒とから溶媒-環状シロキサン化合物混合物を得る工程と、
前記溶媒-環状シロキサン化合物混合物を、水を含む溶媒中で撹拌し、前記環状シロキサン化合物をラジカル重合する工程とを含む中空粒子の製造方法であって、
前記環状シロキサン化合物は、シロキサン結合からなる環状骨格を有し、
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、
前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している、中空粒子の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカル重合の工程前に、前記溶媒-環状シロキサン化合物混合物を乳化させる工程を更に実施する請求項8または9に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項11】
前記環状シロキサン化合物100質量部に対する前記炭化水素系溶媒の量が10~200質量部である請求項8または9に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項12】
前記環状シロキサン化合物中のケイ素比率が10~40質量%である請求項8または9に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項8または9に記載の製造方法によって中空粒子を製造し、
前記中空粒子を焼成するシリカ粒子の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の製造方法によって中空粒子を製造し、
前記中空粒子を焼成するシリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状シロキサン化合物の製造方法、中空粒子及びその製造方法、並びにシリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空の樹脂粒子は、中空の構造を生かして断熱材、低反射材、低屈折率化材、低誘電材、マイクロカプセルなどへの利用が期待される。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有する中空粒子であり、前記中空粒子が、10~200nmの平均粒子径を有し、前記少なくとも一つ以上の層が、ケイ素含有ビニル系樹脂からなることを特徴とする有機-無機ハイブリッド中空粒子が開示される。特許文献1では、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製し、非反応性溶媒を予め前記反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより重合体粒子中に含有させ、次いで両官能基の残存する他方の官能基による重合により、重合体と非反応性溶媒とが相分離し、この後、非反応性溶媒を除去することで中空粒子を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-61664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上述の通り、2段階の重合を経て重合体と非反応性溶媒とを相分離させて中空粒子を作製しているが、より簡便な方法が望まれる。また、中空粒子については、用途によっては耐熱性が要求される場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、耐熱性の良好な中空の粒子及びその製造方法を提供するとともに、中空粒子の原料となる化合物を簡便に得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]環状シロキサン化合物に由来する構造を含む中空粒子であって、
前記環状シロキサン化合物はシロキサン結合からなる環状骨格を有し、
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、
前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している、中空粒子。
[2]ケイ素比率が10~40質量%である[1]に記載の中空粒子。
[3]中空率が10~60%である[1]または[2]に記載の中空粒子。
[4]前記環状シロキサン化合物は、1分子内に2以上の重合性不飽和基を有する環状シロキサン化合物である[1]~[3]のいずれかに記載の中空粒子。
[5]平均粒子径が0.1~100μmである[1]~[4]のいずれかに記載の中空粒子。
[6]熱分解開始温度が200℃以上である[1]~[5]のいずれかに記載の中空粒子。
[7]シロキサン結合からなる環状骨格を有し、
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、
前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している環状シロキサン化合物の製造方法であって、
シラン系単量体を、水を含む溶媒中で加水分解及び縮合して、前記環状シロキサン化合物を含む分散液を調製する工程と、
前記分散液から水を除去する工程とを含む、
環状シロキサン化合物の製造方法。
[8][7]に記載の製造方法によって前記環状シロキサン化合物を製造し、得られた環状シロキサン化合物と炭化水素系溶媒とから、溶媒-環状シロキサン化合物混合物を得る工程、
前記溶媒-環状シロキサン化合物混合物を、水を含む溶媒中で撹拌し、前記環状シロキサン化合物をラジカル重合する工程とを含む中空粒子の製造方法。
[9]環状シロキサン化合物と炭化水素系溶媒とから溶媒-環状シロキサン化合物混合物を得る工程と、
前記溶媒-環状シロキサン化合物混合物を、水を含む溶媒中で撹拌し、前記環状シロキサン化合物をラジカル重合する工程とを含む中空粒子の製造方法であって、
前記環状シロキサン化合物は、シロキサン結合からなる環状骨格を有し、
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、
前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している、中空粒子の製造方法。
[10]前記ラジカル重合の工程前に、前記溶媒-環状シロキサン化合物混合物を乳化させる工程を更に実施する[8]または[9]に記載の中空粒子の製造方法。
[11]前記環状シロキサン化合物100質量部に対する前記炭化水素系溶媒の量が10~200質量部である[8]~[10]のいずれかに記載の中空粒子の製造方法。
[12]前記環状シロキサン化合物中のケイ素比率が10~40質量%である[8]~[11]のいずれかに記載の中空粒子の製造方法。
[13][8]または[9]のいずれかに記載の製造方法によって中空粒子を製造し、
前記中空粒子を焼成するシリカ粒子の製造方法。
[14][10]~[12]のいずれかに記載の製造方法によって中空粒子を製造し、
前記中空粒子を焼成するシリカ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便な方法で耐熱性に優れた中空粒子を得ることができるとともに、このような中空粒子の原料となる化合物も簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、中空粒子及びその製造方法を含む他、前記中空粒子の原料となる環状シロキサン化合物の製造方法、及び前記中空粒子を焼成するシリカ粒子の製造方法を含む。
【0010】
1.環状シロキサン化合物
本発明の中空粒子の原料となる環状シロキサン化合物は、シロキサン結合からなる環状骨格を有し、前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれには、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が結合しており、前記環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している。
【0011】
シロキサン結合からなる環状骨格は、すなわち、-Si-O-単位が2以上連続して環状に結合しており、シロキサン結合のみからなる環状骨格であることが好ましい。環状シロキサン化合物における-Si-O-単位の数は2以上であり、上限は例えば8であってもよく、好ましくは3~6であり、より好ましくは3~4である。
【0012】
シロキサン結合からなる環状骨格を形成するケイ素原子のそれぞれには、O原子が2つと、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基が2つ結合しており、環状骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つには、重合性不飽和基が結合している。それぞれのケイ素原子に結合する2つの有機基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、またケイ素原子に結合する2つの有機基の組み合わせは、ケイ素原子ごとに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0013】
前記有機基における重合性不飽和基としては、末端にビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する基が挙げられ、下記式(1)で表される基が好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
式(1)中、R11は水素、炭素数が1~10のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を表し、R12は炭素数1~10のアルキレン基又は炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基を表し、mは0又は1であり、nは0又は1であり、式(1)で表される基は*でケイ素原子と結合する。
【0016】
11における炭素数が1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基;等が挙げられる。このうち直鎖状アルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基の炭素数が、1~7が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましく、1が更により好ましい。
【0017】
11における炭素数が6~10のアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、o-イソプロピルフェニル基、m-イソプロピルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0018】
このうちR11は、水素又は炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、水素又は炭素数が1~7の直鎖状アルキル基であることがより好ましく、水素又は炭素数が1~2のアルキル基(メチル基又はエチル基)であることが更に好ましく、水素またはメチル基であることが特に好ましい。
【0019】
12における炭素数が1~10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、ジメチルエチレン基、メチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基等の分岐鎖状アルキレン基;等が挙げられる。このうち直鎖状アルキレン基が好ましい。当該アルキル基の炭素数は、1~7が好ましく、1~5がより好ましく、2~4が更に好ましく、3が更により好ましい。
【0020】
12における炭素数が6~10の芳香族炭化水素基は、炭素数6~8の芳香族炭化水素基であることが好ましく、具体的には、フェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、エチルフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
【0021】
上記式(1)で表される基としては、具体的にはビニル基;(メタ)アクリロイルオキシ基;(メタ)アクリル酸メチル基、(メタ)アクリル酸エチル基、(メタ)アクリル酸プロピル基、(メタ)アクリル酸n-ブチル基、(メタ)アクリル酸イソブチル基、(メタ)アクリル酸t-ブチル基、(メタ)アクリル酸n-ペンチル基、(メタ)アクリル酸イソペンチル基、(メタ)アクリル酸t-ペンチル基、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル基、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル基等の(メタ)アクリル酸アルキル基;スチリル基等が好ましく挙げられ、ビニル基または(メタ)アクリル酸C1-7アルキル基であることがより好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリル酸C1-5アルキル基が更に好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリル酸C2-4アルキル基が一層好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリル酸プロピル基であることが特に好ましい。
【0022】
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれに結合する有機基のうち、炭素数が1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基;等が挙げられる。このうち直鎖状アルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基の炭素数は、1~7が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましく、1が更により好ましい。
【0023】
前記環状骨格を構成するケイ素原子のそれぞれに結合する有機基のうち、炭素数が6~10のアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、o-イソプロピルフェニル基、m-イソプロピルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0024】
前記環状骨格を構成する少なくとも一つのケイ素原子に、前記有機基として、重合性不飽和基と、炭素数1~10のアルキル基が結合していることが好ましく、前記環状骨格を構成する全てのケイ素原子に、前記有機基として、重合性不飽和基(ビニル基又は(メタ)アクリル酸C1-5アルキル基が好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリル酸C2-4アルキル基がより好ましい)と、炭素数1~2のアルキル基が結合していることがより好ましい。
【0025】
環状シロキサン化合物中のケイ素比率は、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上が更に好ましく、上限は例えば40質量%以下であり、30質量%以下がより好ましい。
【0026】
環状シロキサン化合物の重量平均分子量は、例えば300~1000であり、350~800であることが好ましく、より好ましくは400~700である。
【0027】
このような環状シロキサン化合物の製造方法としては、シラン系単量体を、水を含む溶媒中で加水分解及び縮合して、前記環状シロキサン化合物を含む分散液を調製する工程(以下、工程S1)と、前記分散液から水を除去する工程(以下、工程S2)とを含む方法が挙げられる。
【0028】
シラン系単量体は、重合性不飽和基、炭素数が1~10のアルキル基および炭素数が6~10のアリール基から選択される有機基の2つと、2つの加水分解性基とが、ケイ素原子に結合した化合物を、1種または2種以上組み合わせて用いることができ、シラン系単量体の少なくとも1種は、ケイ素原子に結合する2つの有機基のうち、少なくとも1つが重合性不飽和基であることが好ましい。
【0029】
シラン系単量体における有機基は、前述の環状シロキサン化合物における有機基と同義であり、好ましい範囲も含めて全て参照できる。
【0030】
シラン系単量体1分子中のケイ素に結合する2つの有機基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。シラン系単量体の少なくとも1種が、ケイ素に結合する有機基のうち、一方が重合性不飽和基(ビニル基又は(メタ)アクリロイルC1-5アルキル基が好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリル酸C2-4アルキル基がより好ましい)であり、他方が炭素数1~10のアルキル基(特に炭素数1~2のアルキル基)であるシラン系単量体であることが好ましく、用いるシラン系単量体全てにおいて、ケイ素に結合する有機基のうち、一方が重合性不飽和基(ビニル基又は(メタ)アクリロイルC1-5アルキル基が好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリル酸C2-4アルキル基がより好ましい)であり、他方が炭素数1~2のアルキル基であることがより好ましい。
【0031】
またシラン系単量体のケイ素原子に結合する2つの加水分解性基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、-ORa1(Ra1は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基又は炭素数が2~10のアシル基を表す)で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられ、-ORa1で表される基がより好ましく、Ra1が炭素数1~4のアルキル基である-ORa1であることが更に好ましい。
【0032】
工程S1における前記シラン系単量体の加水分解及び縮合は、水を含む溶媒で行われ、該溶媒には水以外に有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよい。前記有機溶媒のうち、アルコール類がより好ましく、メタノールまたはエタノールが更に好ましい。有機溶媒と水の合計量100質量部に対して、有機溶媒の量は0~50質量部であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることが更に好ましい。
【0033】
水100質量部に対する前記シラン系単量体の仕込み量は3~30質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。
【0034】
前記シラン系単量体の加水分解及び縮合は、触媒の存在下に行われることが好ましい。触媒としては、酸触媒又は塩基性触媒を用いることができ、塩基性触媒の存在下に行われることが好ましい。
【0035】
塩基性触媒としては、アンモニア類、アミン類、第4級アンモニウム化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。塩基性触媒はアンモニア類が好ましく、アンモニア;尿素等のアンモニア発生剤;等が挙げられアンモニアが特に好ましい。
【0036】
触媒の量(複数種用いる場合には、その合計量)は、前記シラン系単量体100質量部に対して、0.005~0.2質量部であることが好ましく、0.01~0.1質量部であることがより好ましい。
【0037】
前記シラン系単量体の加水分解と縮合は、例えば水を含む溶媒と、シラン系単量体を混合し、必要に応じて触媒を更に混合し、好ましくは10分~100時間、より好ましくは30分~50時間、更に好ましくは1~10時間、更により好ましくは1~2時間の間、攪拌することによって行うことができる。当該攪拌時の温度は、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~70℃、更に好ましくは20~50℃である。水、必要に応じて用いられる水以外の溶媒、シラン系単量体、必要に応じて用いられる触媒の添加順序は特に限定されないが、水と触媒を先に混合し、そこへシラン系単量体(特に滴下)及び水以外の溶媒を加えることが好ましい。
【0038】
前記工程S1で、前記シラン系単量体の加水分解及び縮合により前記環状シロキサン化合物を含む分散液を得た後は、前記分散液から水を除去する工程S2を行う。前記分散液を、所定時間静置または遠心分離するなどして油相と水相に分離して、水相を除去すればよく、水相を除去することで油状の環状シロキサン化合物粒子を得ることができる。
【0039】
2.中空粒子
本発明の中空粒子は、前記した環状シロキサン化合物を後述の方法で重合させることによって得られる中空の樹脂粒子であり、すなわち上述の環状シロキサン化合物由来の構造を有している。
【0040】
上記環状シロキサン化合物は、ケイ素と、上記有機基の両方を含んでおり、これを後述の方法で重合させて得られる中空粒子は、有機成分と無機成分(ケイ素)が複合した粒子であり、また本発明の中空粒子はケイ素比率を高めることができる。中空粒子中のケイ素比率は、後記する実施例で示す通り、酸化性雰囲気で焼成した時のケイ素原子に相当する質量を算出し、これを中空粒子の質量で除することによって求めることができる。本発明の中空粒子において、ケイ素比率は、10質量%以上とすることができ、好ましくは11質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、上限は例えば40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0041】
本発明の中空粒子は、有機成分と共にケイ素成分を含んでいるため、耐熱性が良好であり、具体的には熱分解開始温度を高くすることができる。熱分解開始温度は例えば、200℃以上であり、220℃以上がより好ましく、上限は特に限定されないが、例えば300℃以下であってもよい。熱分解開始温度は、後記する実施例で示した方法により測定することができ、本発明の中空粒子を室温から昇温していき、単位時間当たりの重量減少率(ΔTg/min)が0.2%/minを超えた時の温度を熱分解開始温度とする。
【0042】
中空粒子の中空率は、特に後述の製造方法を採用することで、自在にコントロールすることができ、例えば10%~60%の幅広い範囲での調整が可能である。中空率は、15%以上であってもよいし、20%以上であってもよいし、また50%以下であってもよいし、40%以下であってもよい。
【0043】
中空粒子は、前記環状シロキサン化合物が、1分子内に2以上の重合性不飽和基を有する環状シロキサン化合物であることも好ましく、この場合中空粒子が1分子内に2以上の重合性不飽和基を有する環状シロキサン化合物由来の架橋構造を有するため、耐熱性や耐溶剤性に優れる。このような架橋構造は、例えば13C-NMRなどによって確認することができる。
【0044】
中空粒子の平均粒子径は、例えば0.1~100μmである。平均粒子径は、0.2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また90μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。なお、平均粒子径とは、後記する実施例で示す要領で測定することができ、SEM観察で測定される粒子の長径の体積基準の累積50%相当径を意味する。
【0045】
本発明の中空粒子は、上記環状シロキサン化合物と、炭化水素系溶媒とを混合して、炭化水素系溶媒-環状シロキサン化合物混合物(以下、混合物M)を得る工程(以下、工程S3)、混合物Mを、水を含む溶媒中で撹拌して、前記環状シロキサン化合物をラジカル重合する工程(以下、工程S4)を含む方法によって製造できる。このような製造方法によれば、中空粒子の中空率を幅広く制御することができる。なお、本発明の中空粒子を製造する際に用いる環状シロキサン化合物は、上述したシラン系単量体の加水分解及び縮合により製造されたものでもよいし、他の方法で製造されたものであってもよい。
【0046】
混合物Mを得る工程S3において、環状のシロキサン化合物を用いて炭化水素系溶媒と混合することで、混合物Mでは環状シロキサン化合物が炭化水素系溶媒と均一に混合され、次の工程S4でこのような混合物Mを、水を含む溶媒中で撹拌してラジカル重合を進行させることで、極性の差により環状シロキサン化合物を重合した樹脂成分と炭化水素系溶媒を、工程S4の一工程で相分離していきながら、同時に樹脂成分がより極性の大きい水を含む溶媒側(外側)に集まっていきながらシェルを形成し、炭化水素系溶媒を内包した樹脂粒子、つまり中空の樹脂粒子を形成することができる。
【0047】
炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素系溶媒であってもよいし、芳香族炭化水素系溶媒であってもよく、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、脂肪族炭化水素系溶媒の1種以上と、芳香族炭化水素系溶媒の1種以上を併用する態様、または脂肪族炭化水素系溶媒の1種以上のみ用いる(芳香族炭化水素系溶媒は用いない)態様が好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒は、直鎖状飽和炭化水素系溶媒であることが好ましく、炭素数が5~20の直鎖状飽和炭化水素系溶媒であることがより好ましく、オクタンまたはヘキサデカンが特に好ましい。芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等が挙げられ、トルエンが好ましい。
【0048】
環状シロキサン化合物100質量部に対する、炭化水素系溶媒の割合は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、また200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下が更に好ましい。環状シロキサン化合物100質量部に対する、炭化水素系溶媒の割合を調整することで、得られる中空粒子の中空率を制御することができる。
【0049】
工程S4では、水を含む溶媒中で前記混合物Mを撹拌し、環状シロキサン化合物をラジカル重合する。より具体的には、混合物Mと、水と、ラジカル重合開始剤を混合して撹拌すればよい。ラジカル重合方法は特に限定されるものではないが、懸濁重合が好ましい。ラジカル重合開始剤は、混合物Mを調製する際に混合してもよいし、工程S4における水を含む溶媒に混合していてもよいし、後述の乳化工程時に混合してもよいが、混合物Mに混合されていることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、熱重合開始剤が好ましく、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ化合物系重合開始剤が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、オルトクロロベンゾイルペルオキシド、オルトメトキシベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド等が挙げられる。また、アゾ化合物系重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、過酸化物系重合開始剤が好ましい。重合開始剤の仕込み量は、特に限定されないが、環状シロキサン化合物の仕込み量100質量部に対して、0.1~6質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。
【0050】
工程S4において、環状シロキサン化合物をラジカル重合させる際の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって適宜選択可能であるが、反応の制御のしやすさから30~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。ラジカル重合の反応時間は0.5~40時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。ラジカル重合は、窒素等の不活性ガス雰囲気化で行われることも好ましい。
【0051】
環状シロキサン化合物をラジカル重合する工程S4の前に、混合物Mを乳化させる工程を更に実施することも好ましい。具体的には、混合物Mと、水を含む溶媒と、分散安定化剤とを混合し、撹拌すればよい。乳化工程は、20~40℃程度で、3~60分程度行われることが好ましい。前記分散安定化剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子系分散剤、アルカリ金属アルキルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート、ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホリシノエート、アルキルスルホネート、脂肪酸塩、アルキルアリールスルホネート、高アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等のアニオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン性界面活性剤などを用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分散安定化剤の使用量は、環状シロキサン化合物の仕込み量100質量部に対して0.1質量部~10質量部が好ましい。
【0052】
工程S4で形成した中空粒子は、濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いて乳濁液より単離すればよい。次いで、必要に応じて中空粒子を分級し、通常、洗浄及び乾燥する。洗浄は、イオン交換水、メタノール等のアルコールを用いればよい。
【0053】
3.シリカ粒子の製造方法
前記した中空粒子の製造方法によって中空粒子を製造し、この中空粒子を焼成することでシリカ粒子を得ることができる。焼成条件は、一般的に樹脂が灰化する温度と時間から適宜調整すればよい。
【0054】
本発明の中空粒子は、ケイ素分を有しており、強度および耐熱性に優れた中空粒子を提供することが可能である。該中空粒子及び該中空粒子を含む樹脂組成物は、断熱材、低反射材、低屈折率化材、低誘電材等に用いることができる。
【実施例0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0056】
下記の製造例、実施例及び比較例について、以下に示す方法で評価した。
【0057】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いたポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定
装置:東ソー株式会社HLC-8420GPC EcoSEC Elite-WS
検出器:RI
カラム:東ソー株式会社TSKgel GMHHR-H
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
検量線:東ソー株式会社TSKstandard POLYSTYRENE(ピークトップ分子量(Mp)5480000、2890000、190000、37900、5970、1110)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定サンプル溶液の作製方法:サンプル0.1gをTHF1.2gに溶解させた。
【0058】
(2)中空形状の確認
樹脂粒子およびシリカ粒子の形状は、イオンミリング(日本電子株式会社製 IB-19530CP(加速電圧:6kV、加工時間5時間))を用いて粒子を切断したのち、SEM(日本電子株式会社製JSM-6510、加速電圧20kV、倍率×30000、コーティング:プラチナスパッタ)にて粒子形状を観察することで確認することができる。
【0059】
(3)平均粒子径、中空率の測定
樹脂粒子の平均粒子径および中空率は、SEM(日本電子株式会社製JSM-7600F、透過測定、加速電圧20kV)にて求めることができる。水又は溶剤に分散させた粒子分散液を採取し、1視野に含まれる粒子の数が100~300個となる測定倍率で観察し、得られた5視野の電子顕微鏡画像において、含まれる任意の100個の粒子径(一次粒子径)の粒子について、各粒子の長径(長軸方向の長さ)を測定し、体積基準の算術平均値として求められる外径ODを平均粒子径とした。中空部分の径を内径IDとし、外径ODと同様の方法で算術平均値を求めた。
中空率は、前記した外径ODと内径IDを用いて、下記式に基づいて算出した。
中空率(%)=(内径ID)/(外径OD)×100
【0060】
(4)樹脂粒子のケイ素比率の測定
樹脂粒子のケイ素比率は、粒子を空気などの酸化性雰囲気中、900℃で焼成したときの灰分質量(これをSiO量とする)からケイ素原子に相当する質量を算出し、該ケイ素原子量を焼成処理に供した樹脂粒子の質量で除した。なお、灰分質量からケイ素原子量に相当する質量を算出するため、灰分質量に0.4672(ケイ素原子量/SiO式量)を乗じることで求めることができる。
【0061】
(5)樹脂粒子の熱分解開始温度
樹脂粒子の熱分解開始温度は示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス製、STA7200RV)を用いて測定することができる。具体的には、試料量20mg、昇温速度10℃/min(最高到達温度900℃)、大気中(流量200mL/min)の条件で測定し、重量減少率の時間変化(ΔTg/min)が0.2%/minを超えた時の温度を熱分解開始温度とした。
【0062】
(6)シリカの生成確認
シリカ粒子の生成は、IRスペクトル(日本分光製 FT/IR6200、KBr法)での、有機官能基(2900/cm、1400/cm:C-H、1700/cm:C=O、1200/cm:C-O)のピーク消失によって確認することができる。
【0063】
<環状シロキサン化合物の作製>
製造例1
ガラス容器に、イオン交換水44.8部(質量部を意味する。特に断りのない限り、以下同様)、28質量%アンモニア水0.094部を添加し撹拌子を入れ300rpmで撹拌した。その中へシラン系単量体である3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(以下、MPDSと表す)4.6部およびメタノール10.8部を加え、30℃にて90分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解、縮合反応を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子(環状シロキサン化合物粒子)の乳濁液を作製した(工程S1)。
【0064】
次いで得られた乳濁液を遠心分離機にて油相と水相を分離することにより油状粒子を得た(工程S2)。前記油状粒子を、質量分析計(JEOL社製、「JEOL JMS-T100LP AccuTOF LC-Plus(JEOL MS-5414DARTイオン源)」)を用いて測定したところ、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン3量体(以下、3MPDSと表す)である環状シロキサン化合物を検出した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、得られた油状粒子の分子量を測定したところ、重量平均分子量が528であった。
【0065】
製造例2
MPDS4.6部の代わりに、MPDS1.7部とジメトキシビニルメチルシラン(以下、DMVSと表す)2.9部を用いたこと以外は製造例1と同様の製造方法で油状粒子を得た。前記油状粒子を製造例1と同様に質量分析計で測定したところ、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1分子とジメトキシビニルメチルシラン2分子の共縮合体(MPDS-2DMVS)である環状シロキサン化合物を検出した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、得られた環状シロキサン化合物の粒子中の分子量を測定したところ、重量平均分子量が417であった。
【0066】
<樹脂粒子の作製>
実施例1-1
容器に、環状シロキサン化合物として、製造例1で得られた3MPDS1.32部と重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.05部、ヘキサデカン0.54部、トルエン0.8部を仕込み、炭化水素系溶媒と、環状シロキサン化合物の混合物を調製した(工程S3)。別途シュレンク管に0.1質量%ポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製、「ゴーセノールGH-17R」)水溶液20部を仕込み30℃に保持した。その中に調製した炭化水素系溶媒と、環状シロキサン化合物の混合物を入れ30℃で超音波ホモジナイザー(日本精機製 バイオミキサー)にて4000rpmにて15分間分散したのち、300rpmで撹拌し窒素雰囲気下で70℃に昇温させて、70℃で24時間保持することにより3MPDSの重合反応を行った。得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水で洗浄、乾燥することで、中空の樹脂粒子1を得た。得られた粒子1の平均粒子径は、20.4μmであった。
【0067】
実施例1-2
3MPDSの代わりに、製造例2で得られたMPDS-2DMVS1.32部を用い、ヘキサデカンとトルエンの代わりにオクタン0.66部を用いたこと以外は実施例1-1と同様の製造方法で中空の樹脂粒子2を得た。得られた粒子2の平均粒子径は19.5μmであった。
【0068】
比較例1-1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、ポリビニルアルコール(クラレ社製「ポバールPVA-205」)の10%水溶液666.7部を仕込み、25℃に保持した。200rpmで攪拌下、滴下口から、単量体成分としてメチルメタクリレート60.0部と、エチレングリコールジメタクリレート40.0部と2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V-65」)2.0部とを溶解した溶液を添加し、2時間保持することにより懸濁液を作製した。この懸濁液を、撹拌継続下、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させることにより、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水で洗浄、乾燥することで、中実の樹脂粒子3を得た。得られた樹脂粒子3の平均粒子径は29.8μmであった。
【0069】
比較例1-2
メチルメタクリレート60.0部と、エチレングリコールジメタクリレート40.0部に変えて、3MPDS100部を用いたこと以外は比較例1-1と同様の製造方法で中実の樹脂粒子4を得た。得られた樹脂粒子4の平均粒子径は41.7μmであった。
【0070】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<シリカ粒子の作製>
実施例2-1
樹脂粒子1を焼成することでシリカ粒子5を得た。上記の方法でシリカ粒子5の形状を確認したところ、中空形状であった。
【0073】
実施例2-2
樹脂粒子1に変えて樹脂粒子2を用いたこと以外は実施例2-1と同様の製造方法でシリカ粒子6を得た。上記の方法でシリカ粒子6の形状を確認したところ、中空形状であった。