(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001722
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】接合装置および接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100571
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522250666
【氏名又は名称】株式会社フォーテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宗高
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健彦
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 和生
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK05
5F044PP16
5F044PP17
5F044PP19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接合強度の低下を抑制することが可能な接合装置及び接合方法を提供する。
【解決手段】接合装置100は、半導体チップの表面に紫外線を照射する紫外線照射部16と、半導体チップを搬送するコレット26及び28(搬送部)と、を具備する。紫外線照射部16は、コレット28に保持された半導体チップに紫外線を照射する。コレット28は、紫外線の照射後の半導体チップをウェハの表面まで搬送し、半導体チップの表面とウェハの表面とを接触させることで、半導体チップとウェハとを接合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品の表面に紫外線を照射する照射部と、
前記第1部品を搬送する搬送部と、を具備し、
前記照射部は、前記搬送部に保持された前記第1部品に前記紫外線を照射し、
前記搬送部は、前記紫外線の照射後の前記第1部品を第2部品の表面まで搬送し、前記第1部品の前記表面と前記第2部品の表面とを接触させることで、前記第1部品と前記第2部品とを接合する接合装置。
【請求項2】
前記照射部は、複数の前記第1部品のうち1つの前記第1部品の表面に紫外線を照射し、
前記搬送部は、前記1つの第1部品と前記第2部品とを接合し、
前記1つの第1部品と前記第2部品とを接合した後、前記照射部は、前記複数の第1部品のうちもう1つの前記第1部品の表面に紫外線を照射し、
前記搬送部は、前記もう1つの第1部品と前記第2部品とを接合する請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記第1部品を載置する第1載置部と、
前記第2部品を載置する第2載置部と、
前記照射部、前記搬送部、前記第1載置部、前記第2載置部を内部に収容する筐体と、を具備する請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記照射部は、前記第1部品の表面および前記第2部品の表面に紫外線を照射する請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項5】
前記照射部は、第1照射部と第2照射部とを含み、
前記第1照射部は前記第1部品の表面に紫外線を照射し、
前記第2照射部は前記第2部品の表面に紫外線を照射する請求項4に記載の接合装置。
【請求項6】
前記照射部から出射される紫外線を分岐させる分岐部を具備し、
前記分岐部により分岐される紫外線が、前記第1部品の表面および前記第2部品の表面に照射される請求項4に記載の接合装置。
【請求項7】
内側に空洞を有するカバーを具備し、
前記カバー内の空洞には酸素を含むガスが導入され、
前記照射部は、前記カバー内の空洞に配置された前記第1部品の前記表面に紫外線を照射する請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項8】
前記カバー内の空洞には酸素および窒素を含むガスが導入され、
前記酸素の濃度および前記窒素の濃度を調整する調整部を具備する請求項7に記載の接合装置。
【請求項9】
内側に空洞を有するカバーを具備し、
前記カバー内の空洞には酸素を含むガスが導入され、
前記カバーのうち前記照射部に対向する第1の壁は前記紫外線を透過させ、
前記カバーは、前記第1の壁に対向する第2の壁に第1開口部を有し、
前記搬送部は前記第1部品を前記第1開口部に搬送する請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項10】
前記カバーは第1の内壁、第2の内壁、吸気口、および排気口を有し、
前記第1の内壁および前記第2の内壁は前記空洞に設けられ、
前記第1の内壁は、前記空洞を第1の空洞と第2の空洞とに分け、前記第1開口部と対向する位置に第2開口部を有し、
前記第1の空洞は前記第1の壁と前記第1の内壁との間に位置し、
前記第2の空洞は前記第1の内壁を挟んで前記第1の空洞とは反対に位置し、
前記第2の内壁は、前記第1の壁と前記第1の内壁との間に設けられ、前記カバーの外壁に沿って延伸し、前記第1の空洞を第3の空洞と第4の空洞とに分け、
前記第3の空洞は前記外壁と前記第2の内壁との間に位置し、
前記第4の空洞は前記第2の内壁の内側に位置し、かつ前記第3の空洞に連通し、
前記吸気口は、前記外壁のうち前記第3の空洞に面する部分に接続され、
前記排気口は、前記外壁のうち前記第2の空洞に面する部分に接続され、
請求項9に記載の接合装置。
【請求項11】
前記第1開口部の長さは、前記第1部品の長さより大きく、前記第1部品の長さの3倍より小さい請求項9に記載の接合装置。
【請求項12】
前記第1部品は化合物半導体で形成された半導体チップであり、
前記第2部品はシリコンを含む基板である請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の接合装置を用いて第1部品と第2部品とを接合する接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は接合装置および接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体同士を接合する技術がある。例えば、酸素プラズマを用いてシリコン(Si)ウェハの表面を親水化することで、ヒドロキシル基(‐OH)間の結合を利用して、ウェハを接合する技術がある(非特許文献1)。紫外線により酸素(O2)からオゾン(O3)を発生させ、オゾンによって表面を親水化することで、インジウムリン(InP)の半導体チップをSiウェハに接合する技術もある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】V.Masteika et al. “A Review of Hydrophilic Silicon Wafer Bonding” ECS Journal of Solid State Science and Technology,3(4)Q42-Q54,2014
【非特許文献2】A.Iawai et al. “Void-free direct bonding of InP to Si:Advantages of low H-content and ozone activation” J. Vac. Sci. Technol. B, Vol.32,No.2,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ活性化による接合では、真空中でプラズマを照射するプラズマ装置と、接合装置とを用いる。オゾンによる親水化を用いた接合では、オゾンを発生させるための紫外線の照射装置と、接合装置とを用いる。親水化後に接合装置へと搬送する際に、親水化した表面にゴミが付着する恐れがある。表面の親水化から接合までの時間で、表面の親水化性能が低下する。これらの結果、接合強度が低下する恐れがある。
【0005】
そこで、接合強度の低下を抑制することが可能な接合装置および接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る接合装置は、第1部品の表面に紫外線を照射する照射部と、前記第1部品を搬送する搬送部と、を具備し、前記照射部は、前記搬送部に保持された前記第1部品に前記紫外線を照射し、前記搬送部は、前記紫外線の照射後の前記第1部品を第2部品の表面まで搬送し、前記第1部品の前記表面と前記第2部品の表面とを接触させることで、前記第1部品と前記第2部品とを接合する。
【0007】
本開示に係る接合方法は、上記の接合装置を用いて第1部品と第2部品とを接合する接合方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば接合強度の低下およびばらつきを抑制することが可能な接合装置および接合方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は第1実施形態に係る接合装置を例示する模式図である。
【
図2A】
図2Aはグリップリング供給部を例示する平面図である。
【
図3】
図3は接合装置を用いた接合の工程を例示するフローチャートである。
【
図4】
図4は接合装置を用いた接合の工程を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5はグリップリング供給部を例示する平面図である。
【
図8A】
図8Aは比較例における接合用の設備を例示する模式図である。
【
図8B】
図8Bは比較例における接合の工程を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は第2実施形態に係る接合装置を例示する模式図である。
【
図11】
図11は第3実施形態に係る接合装置を例示する模式図である。
【
図13】
図13は第4実施形態に係る接合装置を例示する模式図である。
【
図14】
図14は紫外線の照射の工程を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
本開示の一形態は、(1)第1部品の表面に紫外線を照射する照射部と、前記第1部品を搬送する搬送部と、を具備し、前記照射部は、前記搬送部に保持された前記第1部品に前記紫外線を照射し、前記搬送部は、前記紫外線の照射後の前記第1部品を第2部品の表面まで搬送し、前記第1部品の前記表面と前記第2部品の表面とを接触させることで、前記第1部品と前記第2部品とを接合する接合装置である。1つの接合装置が、紫外線の照射による第1部品の表面の親水化、および第1部品と第2部品との接合を行う。親水化から接合までの時間が短くなるため、ゴミの付着、親水化性能の低下が抑制される。接合強度の低下が抑制される。
(2)上記(1)において、前記照射部は、複数の前記第1部品のうち1つの前記第1部品の表面に紫外線を照射し、前記搬送部は、前記1つの第1部品と前記第2部品とを接合し、前記1つの第1部品と前記第2部品とを接合した後、前記照射部は、前記複数の第1部品のうちもう1つの前記第1部品の表面に紫外線を照射し、前記搬送部は、前記もう1つの第1部品と前記第2部品とを接合してもよい。複数の第1部品のそれぞれについて、親水化の直後に接合を行う。接合強度のばらつきを抑制することができる。
(3)上記(1)または(2)において、前記第1部品を載置する第1載置部と、前記第2部品を載置する第2載置部と、前記照射部、前記搬送部、前記第1載置部、前記第2載置部を内部に収容する筐体と、を具備してもよい。紫外線の照射から接合までを接合装置で実行することができる。ゴミの付着が抑制され、時間の経過による親水化性能の低下が抑制される。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記照射部は、前記第1部品の表面および前記第2部品の表面に紫外線を照射してもよい。第1部品と第2部品の両方が親水化されるため、接合強度が高くなる。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記照射部は、第1照射部と第2照射部とを含み、前記第1照射部は前記第1部品の表面に紫外線を照射し、前記第2照射部は前記第2部品の表面に紫外線を照射してもよい。第1部品と第2部品の両方が親水化されるため、接合強度が高くなる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記照射部から出射される紫外線を分岐させる分岐部を具備し、前記分岐部により分岐される紫外線が、前記第1部品の表面および前記第2部品の表面に照射されてもよい。第1部品と第2部品の両方が親水化されるため、接合強度が高くなる。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、内側に空洞を有するカバーを具備し、前記カバー内の空洞には酸素を含むガスが導入され、前記照射部は、前記カバー内の空洞に配置された前記第1部品の前記表面に紫外線を照射してもよい。酸素を含むガス中に紫外線を照射することで、オゾンが発生する。オゾンにより表面が親水化される。
(8)上記(7)において、前記カバー内の空洞には酸素および窒素を含むガスが導入され、前記酸素の濃度および前記窒素の濃度を調整する調整部を具備してもよい。酸素の濃度を高くするとオゾンの濃度も高くなる。オゾン濃度を高くすることで、親水化を速やかに行い、紫外線の照射時間を短くすることができる。
(9)上記(1)から(6)において、内側に空洞を有するカバーを具備し、前記カバー内の空洞には酸素を含むガスが導入され、前記カバーのうち前記照射部に対向する第1の壁は前記紫外線を透過させ、前記カバーは、前記第1の壁に対向する第2の壁に第1開口部を有し、前記搬送部は前記第1部品を前記第1開口部に搬送してもよい。空洞への外気の混入が抑制され、空洞の内部におけるオゾンの発生が安定化される。
(10)上記(9)において、前記カバーは第1の内壁、第2の内壁、吸気口、および排気口を有し、前記第1の内壁および前記第2の内壁は前記空洞に設けられ、前記第1の内壁は、前記空洞を第1の空洞と第2の空洞とに分け、前記第1開口部と対向する位置に第2開口部を有し、前記第1の空洞は前記第1の壁と前記第1の内壁との間に位置し、前記第2の空洞は前記第1の内壁を挟んで前記第1の空洞とは反対に位置し、前記第2の内壁は、前記第1の壁と前記第1の内壁との間に設けられ、前記カバーの外壁に沿って延伸し、前記第1の空洞を第3の空洞と第4の空洞とに分け、前記第3の空洞は前記外壁と前記第2の内壁との間に位置し、前記第4の空洞は前記第2の内壁の内側に位置し、かつ前記第3の空洞に連通し、前記吸気口は、前記外壁のうち前記第3の空洞に面する部分に接続され、前記排気口は、前記外壁のうち前記第2の空洞に面する部分に接続されてもよい。安定した効率でオゾンを発生させることができる。
(11)上記(9)または(10)において、前記第1開口部の長さは、前記第1部品の長さより大きく、前記第1部品の長さの3倍より小さくてもよい。第1部品の表面に均等にオゾンを接触させることができる。オゾンが外に過剰に拡散することを抑制できる。
(12)上記(1)から(11)のいずれかにおいて、前記第1部品は化合物半導体で形成された半導体チップであり、前記第2部品はシリコンを含む基板でもよい。異なる材料の部品同士を接合することができる。
(13)上記(1)から(12)の接合装置を用いて第1部品と第2部品とを接合する接合方法である。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る接合装置および接合方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る接合装置100を例示する模式図であり、接合装置100をZ軸方向から見た状態の概略を示している。
図1に示すように、接合装置100は、筐体10、クリーンブースユニット11、グリップリング供給部19(第1載置部)、接合ステージ14(第2載置部)、チップステージ20、紫外線照射部16、カメラ18および24、ゲルパック供給部22(第1載置部)、可動部69、コレット26および28(搬送部)、制御部30を備える。
【0014】
筐体10の2つの辺はX軸方向に平行であり、もう2つの辺はY軸方向に平行である。筐体10の底面は、XY平面に平行である。筐体10の長さは例えば1mまたは2mなど数mでもよいし、数十cmなど1m以下でもよい。Z軸方向は、筐体10の底面の法線方向である。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、互いに直交する。
【0015】
筐体10は、筐体10内部の空間を筐体10の外部から分離する。筐体10の内部の空間に、グリップリング供給部19、接合ステージ14、チップステージ20、カメラ18および24、ゲルパック供給部22、コレット26および28が収容される。
【0016】
クリーンブースユニット11は、例えばフィルタなどを含み、筐体10内の空気中のダストを筐体10の外部の空気よりも減らす。
【0017】
グリップリング供給部19は例えばリング状の部材である。グリップリング供給部19には、後述の半導体チップ40(第1部品)が搭載される。ゲルパック供給部22には、ゲル状の物質が配置されている。ゲルパック供給部22のゲル上に半導体チップ40を配置してもよい。
【0018】
接合ステージ14およびチップステージ20は、凹面形状または板状の部材である。接合ステージ14には、後述のウェハ42(第2部品)が搭載される。接合ステージ14は、例えばヒータなどを含み、温度を変化させることが可能なヒータステージである。
【0019】
紫外線照射部16は例えばエキシマ光源、重水素光源などの光源を含み、Z軸方向に紫外光(紫外線)を出射する。紫外線は例えば波長が400nm以下の光を含む。
【0020】
コレット26および28は、可動部69により、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能である。コレット26および28は、半導体チップ40などの物体を吸引することで先端に当該物体を吸着させることができる。
【0021】
制御部30は例えばコンピュータなどを含み、接合装置100を制御する。制御部30は、カメラ18および24で撮像される画像を取得する。制御部30は、コレット26および28の吸引のオン・オフを切り替え、コレット26および28を移動させる。制御部30は、紫外線照射部16を制御し、紫外線をオン・オフする。
【0022】
図2Aはグリップリング供給部19を例示する平面図である。グリップリング供給部19のグリップリング12は、エキスパンドされた粘着テープ13を押さえる外枠である。粘着テープ13の上に複数の半導体チップ40が載置されている。
【0023】
半導体チップ40は、例えばインジウムリン(InP)などの化合物半導体で形成されている。半導体チップ40は光学利得を有し、電流の注入に応じて光を発生させる。半導体チップ40の形状は、例えば1辺の長さが2mmの矩形である。複数の半導体チップ40は、III-V族化合物半導体のウェハをダイシングすることで形成される。グリップリング供給部19に載置される半導体チップ40の個数は例えば数百個、数千個などである。
【0024】
図2Bは接合ステージ14を例示する平面図である。接合ステージ14の上面にウェハ42が載置されている。ウェハ42の直径は例えば50mm以上、300mm以下であり、半導体チップ40より大きい。ウェハ42は例えばシリコンウェハまたはSOI(Silicon on Insulator)基板などである。ウェハ42の面42aは、例えばシリコン(Si)で形成されている。面42aは、不図示の光導波路などの光学素子が形成されている。
図2B中の点線は領域42bを表す。領域42bは、面42aのうち半導体チップ40が接合される領域である。
【0025】
図3および
図4は接合装置100を用いた接合の工程を例示するフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、例えば作業者が、接合装置100の筐体10の内部に複数の半導体チップ40をセットし(ステップS10)、さらにウェハ42をセットする(ステップS12)。
図2Aに示すように、半導体チップ40はグリップリング供給部19に載置されている。
図2Bに示すように、ウェハ42は接合ステージ14に載置されている。接合装置100は1つの半導体チップ40をウェハ42に接合する(ステップS14)。制御部30は、ウェハ42上のすべての接合予定箇所に、半導体チップ40が接合された否か判定する(ステップS16)。否定判定(No)ならば、接合が再び行われる。肯定判定(Yes)ならば、処理は終了する。
【0027】
図4は1つの半導体チップ40をウェハ42に接合する工程を示しており、
図3のステップS14で行われる。カメラ24はウェハ42の面42aを観察する。制御部30は画像処理を行う。制御部30は、カメラ24が撮像した画像を取得し、例えばウェハ42内の接合予定箇所の周辺に設けられたアライメントマークの位置に応じて、領域42bの位置を検出する(ステップS20)。コレット26は、グリップリング供給部19上の複数の半導体チップ40のうち1つを吸引して保持する。コレット26は、吸引した1つの半導体チップ40をグリップリング供給部19からピックアップする(ステップS22)。コレット26は、ピックアップした半導体チップ40をチップステージ20の上方に搬送する。コレット26は吸引を停止し、半導体チップ40をチップステージ20の上に載置させる。
【0028】
コレット28はチップステージ20まで移動し、チップステージ20上の半導体チップ40をピックアップする(ステップS24)。そしてコレット28は、半導体チップ40を紫外線照射部16の上方に搬送する。紫外線照射部16は半導体チップ40の表面に紫外線を照射する(ステップS26)。ステップS26の後、コレット28は半導体チップ40をカメラ18の上方に搬送する。カメラ18は、コレット28に吸着された半導体チップ40を観察し、制御部30はカメラ18が撮像した画像を取得する(ステップS28)。制御部30は画像処理を行い、その後、例えばZ軸方向を回転軸としてコレット28を回転させ、また、半導体チップ40のXY平面内での位置を調整する。
【0029】
コレット28は、半導体チップ40を接合ステージ14まで搬送し、半導体チップ40をウェハ42の表面に接触させ、半導体チップ40に荷重を加える。半導体チップ40がウェハ42に接合される(ステップS29)。以上で
図4の処理は終了する。
【0030】
1つの半導体チップ40に
図4の処理が行われた後、別のもう1つの半導体チップ40に
図4の処理が行われる。接合装置100にセットされた複数の半導体チップ40のそれぞれについて
図4の処理が行われると、
図3の処理は終了する。接合装置100に別の複数の半導体チップ40および別のウェハ42がセットされ(ステップS10およびS12)、再び
図3および
図4の処理が繰り返される。
図3および
図4の工程の後に、半導体チップ40およびウェハ42を加熱し、かつ荷重を加えることで、さらに接合強度を高めてもよい。
【0031】
図5はグリップリング供給部19を例示する平面図であり、グリップリング供給部19から半導体チップ40がピックアップされる工程を示している(
図4のステップS22)。
図5に示すように、グリップリング供給部19の粘着テープ13上に複数の半導体チップ40が配列されている。半導体チップ40の面40aが粘着テープ13に貼りついている。コレット26は1つの半導体チップ40を吸引し、粘着テープ13から取り外し、グリップリング供給部19の外へと半導体チップ40を搬送する。
【0032】
図6Aおよび
図6Bはチップステージ20を例示する断面図であり、コレット28による半導体チップ40のピックアップを示している(ステップS24)。
図6Aに示すように、グリップリング12から搬送された半導体チップ40は、チップステージ20に載置される。半導体チップ40の面40aがチップステージ20に対向し、面40bは面40aとは反対側を向く(
図6Aでは上)。
【0033】
図6Bに示すように、コレット28が半導体チップ40を吸引することで、保持する。コレット28は、吸引した半導体チップ40をチップステージ20からピックアップする。半導体チップ40の面40bはコレット28に接触する。面40aはコレット28に接触せず、コレット28とは反対を向く。
【0034】
図7Aは紫外線の照射を例示する模式図である。紫外線照射部16の上側にカバー50が取り付けられている。カバー50の内側には空洞51が区画される。カバー50は例えばアルミニウム(Al)などで形成されている。カバー50は開口部52を有する開口部52はカバー50の上側の壁に設けられ、壁を貫通する。
【0035】
カバー50にはガス通路53、54および56が取り付けられている。ガス通路53および54は、例えば不図示のガスタンクなどに接続され、カバー50の内側に連通する。ガス通路56はカバー50の内側に連通する。ガス通路53にバルブ55が設けられている。ガス通路54にバルブ57が設けられている。ガス通路56にバルブ58が設けられている。バルブ57およびバルブ58は、カバー50内の酸素濃度および窒素濃度を調整する調整部として機能する。
【0036】
コレット28は開口部52から半導体チップ40を空洞51に配置する。半導体チップ40はコレット28に吸着され、保持されている。半導体チップ40の面40aは紫外線照射部16に対向する。バルブ55および57を開き、ガス通路53および54からカバー50の内部にガスを導入する。ガスは酸素(O
2)および窒素(N
2)を含み、空気などでもよい。紫外線照射部16は、Z軸方向に紫外線を出射する(
図4のステップS26)。照射の時間は例えば1秒から60秒である。紫外線によってガス中の酸素からオゾンが発生する。半導体チップ40の面40aがオゾンに曝露されることで、面40aが親水化し、面40a上にヒドロキシル基(‐OH)が発生する。面40aは粘着テープ13に接触していたため(
図2A参照)、有機汚れなどが付着していることがある。紫外線の照射は、面40aから有機汚れを除去する効果もある。バルブ58を開き、ガス通路56から空洞51内のガスを排出する。
【0037】
図7Bは接合の工程を例示する断面図である。
図7Bに示すように、接合ステージ14の上にウェハ42が載置されている。コレット28は、半導体チップ40をウェハ42の1つの領域42bの上方に搬送し、ウェハ42に向けて半導体チップ40下降させる。半導体チップ40の面40aとウェハ42の面42aとが接触する。コレット28が半導体チップ40に対して下向きの荷重を加えることで、半導体チップ40がウェハ42に接合される(
図4のステップS30)。
【0038】
図4のステップS30において、
図2Bの複数の領域42bのうち1つの上に1つの半導体チップ40が接合される。
図4の処理が繰り返されると、複数の領域42bのそれぞれの上に半導体チップ40が接合される。
【0039】
図8Aは比較例における接合用の設備を例示する模式図である。比較例では、親水化用の装置110と、接合用の装置111とを用いる。親水化用の装置は、例えばプラズマ照射装置または紫外線照射装置などであり、接合する機能は有さない。接合用の装置111は、例えばステージと加圧用の設備などを有する装置であり、親水化する機能は有さない。複数の半導体チップ40は親水化用の装置110にセットする。ウェハ42は接合用の装置111にセットする。
【0040】
図8Bは比較例における接合の工程を例示するフローチャートである。親水化用の装置110が、複数の半導体チップ40のすべてに親水化を行う(ステップS30)。例えば作業者が、複数の半導体チップ40を親水化用の装置110から接合用の装置111に搬送する(ステップS32)。接合用の装置111は、半導体チップ40を1つずつウェハ42に接合する(ステップS34)。ウェハ42上のすべての接合予定箇所に、半導体チップ40が接合されるまでステップS34が繰り返される(ステップS36)。
【0041】
半導体チップ40を親水化用の装置から取り出して接合用の装置に搬送する際、半導体チップ40にゴミが付着する恐れがある。親水化と接合とを別の装置で行うため、親水化から接合までに長い時間がかかる。親水化後に長い時間がたつことで、親水化性能が低下する。接合までに、例えば数十分、または数時間かかることもある。親水化性能が低下することで、接合強度も低下する。また、複数の半導体チップ40は同時に親水化されるが、接合は1つずつ行われる。複数の半導体チップ40の中で、親水化から接合までの時間に違いが生じる。接合強度にばらつきが生じる。
【0042】
第1実施形態によれば、接合装置100は、紫外線照射部16から半導体チップ40に紫外線を照射することで、半導体チップ40の面40aを親水化する。接合装置100のコレット28は、親水化後の半導体チップ40をウェハ42の上に搬送し、半導体チップ40の面40aをウェハ42の面42aに接触させる。親水化した面40aと面42aとが接触することで、半導体チップ40がウェハ42に接合される。1つの接合装置100によって半導体チップ40の親水化とウェハ42への接合とを行う。親水化から接合までの間に半導体チップ40が接合装置100から外に出されないため、半導体チップ40へのゴミの付着が抑制される。親水化から接合までの時間は、比較例に比べて短く、例えば5秒であり、10秒以下である。親水化からの時間の経過による親水化性能の低下が抑制される。半導体チップ40とウェハ42との接合強度の低下を抑制することができる。
【0043】
紫外線の照射によってオゾンを発生させ、オゾンにより面40aを親水化する。プラズマを使用しないため、面40aのダメージが抑制され、面40aの平坦度が向上する。平坦な面40aと面42aとを接合するため、接合強度が高くなる。プラズマを使用しないため、接合装置100内を真空環境としなくてよい。真空引きの設備を設けなくてよいため、接合装置100の小型化が可能である。
【0044】
図2Aおよび
図2Bに示すように、接合装置100には、複数の半導体チップ40と1つのウェハ42とがセットされる。接合装置100は、複数の半導体チップ40のうち1つの半導体チップ40の親水化とウェハ42への接合とを連続して行い(
図4参照)、その後もう1つの半導体チップ40の親水化と接合とを行う(
図3参照)。複数の半導体チップ40のそれぞれは、親水化の直後にウェハ42に接合される。複数の半導体チップ40において親水化性能の低下が抑制される。複数の半導体チップ40のそれぞれに対して、親水化から接合までの時間が例えば10秒以下であり、時間のばらつきが小さい。親水化性能のばらつきも小さくなり、複数の半導体チップ40のウェハ42への接合強度のばらつきが抑制される。
【0045】
接合装置100は、グリップリング供給部19と接合ステージ14とを有する。グリップリング供給部19に複数の半導体チップ40が載置される。接合ステージ14にウェハ42が載置される。コレット26は、グリップリング供給部19から1つの半導体チップ40をピックアップし、チップステージ20まで搬送する。コレット28は、チップステージ20から半導体チップ40をピックアップし、半導体チップ40を紫外線照射部16、カメラ18、さらに接合ステージ14まで搬送し、半導体チップ40をウェハ42に接合する。グリップリング供給部19から紫外線照射部16までの距離、および紫外線照射部16から接合ステージ14までの距離は、例えば1m以下であり、50cmなどである。半導体チップ40が搬送される距離が短く、親水化から接合までの工程が迅速に行われる。ゴミの付着が抑制され、かつ時間経過による親水化性能の低下が抑制されることで、接合強度が高くなる。
【0046】
筐体10の内部に、グリップリング供給部19、接合ステージ14、チップステージ20、カメラ18および24、ゲルパック供給部22、コレット26および28が収容される。複数の半導体チップ40およびウェハ42を1つの接合装置100内にセットし、紫外線の照射および接合までを1つの接合装置100で実行することができる。ゴミの付着が抑制され、かつ時間経過による親水化性能の低下が抑制されることで、接合強度が高くなる。
【0047】
クリーンブースユニット11により筐体10の内部のダスト数を低く保つことが好ましい。半導体チップ40の表面およびウェハ42の表面へのゴミや汚れの付着を抑制し、両者の表面が清浄な状態で接合することができる。
【0048】
図7Aに示すように、接合装置100はカバー50を有する。カバー50内の空洞51には酸素を含むガスが導入される。紫外線照射部16は、空洞51に配置された半導体チップ40に向けて紫外線を照射する。紫外線が空洞51内のガスと反応することで、オゾンが発生する。オゾンによって、半導体チップ40の面40aが親水化される。紫外線照射部16をカバー50で覆うことで、カバー50の内側でのオゾンの濃度は、外側のオゾンの濃度より高くなり、親水化を効果的に行うことができる。例えば数十秒程度の時間で親水化が可能である。カバー50はアルミニウムなど、紫外線によって劣化しにくい材料で形成されることが好ましい。
【0049】
制御部30は、
図7Aに示すバルブ55、57および58の開度を制御する。バルブ55を開くとカバー50内に酸素が供給される。バルブ57を開くとカバー50内に窒素が供給される。バルブ55の開度およびバルブ57の開度に応じてカバー50内の酸素濃度が変化し、オゾンの濃度も変化する。酸素濃度が高く路とオゾンの濃度も高くなる。カバー50の内部の紫外線の光量を観察することで、オゾンの濃度を知ることができる。オゾン濃度が高くなるように、バルブの開度を調整し、酸素濃度を調整する。オゾン濃度が高いほど親水化が促進され、オゾン濃度が低いほど親水化が進みにくい。オゾン濃度を高くすることで、親水化を速やかに行い、紫外線の照射時間を短くすることができる。
【0050】
半導体チップ40の面40aが粘着テープ13に接触している場合、半導体チップ40がチップステージ20の上に置かれたとき、面40bが上を向き、面40aが下を向く。コレット28は面40bの方から半導体チップ40を吸引し、半導体チップ40をピックアップする。面40aの反対の面40bが粘着テープ13に接触してもよい。その場合、コレット26は面40aを吸引して、半導体チップ40をピックアップする。例えばチップステージ20において、別のコレットを用いて半導体チップ40を反転させ、面40bを上に向け、面40aを下に向ける。コレット28は面40bを吸引し、半導体チップ40をピックアップする。
【0051】
半導体チップ40は化合物半導体で形成されており、面40aは例えばインジウムリン(InP)で形成されている。ウェハ42の面42aはシリコン(Si)で形成されている。異なる材料同士の接合は、同一の材料の接合よりも難しい。第1実施形態によれば、面40aの親水化の直後に接合を行うため、高い強度での接合が可能である。
【0052】
半導体チップ40はInPなどのIII-V族化合物半導体で形成されてもよいし、III-V族以外の化合物半導体で形成されてもよい。ウェハ42はSi以外で形成されてもよい。接合装置100は、半導体以外に例えば金属、プラスチックなどで形成された部品を接合してもよい。接合装置100を同一の材料の接合に用いてもよい。接合装置100は、例えば2つのシリコンウェハを接合することもでき、2つの化合物半導体を接合することもできる。
【0053】
<第2実施形態>
図9は第2実施形態に係る接合装置200を例示する模式図である。第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。第2実施形態においても
図3および
図4の処理が行われる。
図9に示すように、接合装置200は反射部60を有する。反射部60は紫外線照射部16に対向する位置に配置される。紫外線照射部16はX軸方向に紫外線を出射する。
【0054】
図10は紫外線の照射の工程を例示する図である。反射部60は、例えば石英などで形成されたブロック状の部材である。反射部60の外壁は反射防止(AR:Anti Reflection)膜で覆われている。反射部60は反射膜61を有する。反射膜61は全反射膜であり、例えばX軸方向およびZ軸方向に対して45°傾斜している。
図7Aと同様に、半導体チップ40および反射部60をカバーで覆い、カバー内に酸素を含むガスを供給してもよい。
【0055】
図10に示すように、コレット28は、反射部60の上方に半導体チップ40を搬送する。Z軸方向において、半導体チップ40の面40aは反射膜61に対向する。紫外線照射部16と反射部60とはX軸方向において対向する。紫外線照射部16は反射部60に紫外線を照射する。反射部60の反射膜61は紫外線をZ軸方向に反射させる。反射された紫外線は半導体チップ40の面40aに照射される(
図4のステップS26)。面40aが親水化される。親水化の後、
図7Bに示すように接合を行う。
【0056】
第2実施形態によれば、面40aへのゴミの付着、親水化性能の低下が抑制されることで、接合強度の低下を抑制することができる。プラズマを使用しないため、面40aのダメージが抑制され、面40aの平坦度が向上する。平坦な面40aと面42aとを接合するため、接合強度が高くなる。
【0057】
第1実施形態および第2実施形態に示したように、紫外線照射部16の配置を変更することができる。接合装置200の内部における各部品の配置の自由度が高くなる。
【0058】
<第3実施形態>
図11は第3実施形態に係る接合装置300を例示する模式図である。第1実施形態および第2実施形態と同じ構成については説明を省略する。第3実施形態においても
図3および
図4の処理が行われる。
【0059】
図11に示すように、接合装置300は、紫外線照射部16(第1照射部)および紫外線照射部62(第2照射部)、可動部63および64を有する。第3実施形態においては、半導体チップ40およびウェハ42の両方に紫外線を照射する(
図4のステップS26)。紫外線照射部16は、
図7Aの例と同様に半導体チップ40に紫外線を照射する。紫外線照射部62はウェハ42に紫外線を照射する。
【0060】
可動部63および64は、例えばレールであり、搭載された物体を移動させることができる。可動部63には接合ステージ14が搭載される。可動部63は、接合ステージ14およびウェハ42をY軸方向に移動させる。可動部64には紫外線照射部62が搭載される。可動部64は紫外線照射部62をX軸方向に移動させる。ウェハ42に紫外線を照射する際には、ウェハ42と紫外線照射部62とをZ軸方向で対向させる。
【0061】
図12は紫外線の照射を例示する模式図である。
図12に示すように、紫外線照射部62は、ウェハ42の上方に配置され、ウェハ42の面42aに対向する。紫外線照射部62は、ウェハ42の面42aのうち1つの領域42bに対応する部分に紫外線を照射する。紫外線によってオゾンが発生し、オゾンにより面42aのうち1つの領域42bに対応する範囲が親水化され、その範囲の表面上にヒドロキシル基(-OH)が発生する。
図7Aに示したように、紫外線照射部16が半導体チップ40に紫外線を照射することで、面40aが親水化され、ヒドロキシル基が発生する。2つの表面の親水化の後、
図7Bに示すように両者を互いに接合する。
【0062】
可動部63は接合ステージ14とともにウェハ42を紫外線照射部62の下方から移動させる。
図7Bに示すように、コレット28は半導体チップ40を搬送し、ウェハ42に接合する。
【0063】
第3実施形態によれば、半導体チップ40およびウェハ42に紫外線を照射し、両方の表面を親水化する。親水化された面40aと親水化された面42aとを接触させることで、半導体チップ40をウェハ42に接合させる。2つの面が親水化されているため、接合強度が向上する。
【0064】
1つの半導体チップ40を親水化し、かつウェハ42の複数の領域42bのうち1つを親水化した後、半導体チップ40を親水化した領域42bに接合する。親水化の直後に接合を行うため、ゴミの付着が抑制され、かつ時間経過による親水化性能の低下が抑制され、接合強度が高くなる。
【0065】
図3および
図4に示すように、複数の半導体チップ40の接合を行う。複数の半導体チップ40のすべてが、面40aおよび面42aの親水化の直後にウェハ42に接合される。複数の半導体チップ40において親水化性能の低下が抑制される。複数の半導体チップ40に対して、親水化から接合までの時間が例えば10秒以下であり、時間のばらつきが小さい。親水化性能のばらつきも小さくなり、複数の半導体チップ40のウェハ42への接合強度のばらつきが抑制される。
【0066】
<第4実施形態>
図13は第4実施形態に係る接合装置400を例示する模式図である。第1実施形態から第3実施形態と同じ構成については説明を省略する。第4実施形態においても
図3および
図4の処理が行われる。
【0067】
図13に示すように、接合装置400は紫外線照射部16、可動部65および分岐部66を有する。紫外線照射部16は可動部65に搭載されている。分岐部66は可動部65に連結されている。可動部65は例えばレールであり、紫外線照射部16および分岐部66を移動させることができる。
【0068】
図14は紫外線の照射の工程を例示する模式図である。分岐部66は、例えば石英などで形成されたブロック状の部材である。分岐部66の外壁は反射防止膜で覆われている。分岐部66は、ハーフミラー67および反射膜68を有する。ハーフミラー67はZ軸方向に対して傾斜している。反射膜68は全反射膜であり、Z軸方向に対してハーフミラー67とは反対側に傾斜している。Z軸に平行な面に関して、ハーフミラー67と反射膜68とは面対称である。
【0069】
紫外線照射部16および分岐部66は、Z軸方向において半導体チップ40とウェハ42との間に位置する。コレット28は半導体チップ40をハーフミラー67の上方に搬送する。ハーフミラー67は半導体チップ40の面40aに対向する。反射膜68はウェハ42の面42aに対向する。紫外線照射部16は紫外線を分岐部66に照射する。ハーフミラー67は、紫外線のうち約半分を面40aに向けて反射させ、約半分を透過させる。透過した紫外線は反射膜68で反射され、面42aに照射される。紫外線の照射によって、面40aおよび42aが親水化される(
図4のステップS26)。親水化の後、
図7Bに示すように接合を行う。
【0070】
第4実施形態によれば、分岐部66によって紫外線を分岐することで、半導体チップ40およびウェハ42に同時に紫外線を照射し、2つの表面を同時に親水化する。親水化された面40aと親水化された面42aとを接触させることで、半導体チップ40をウェハ42に接合させる。2つの面が親水化されているため、接合強度が向上する。
【0071】
1つの半導体チップ40を親水化し、かつウェハ42の複数の領域42bのうち1つを親水化した後、半導体チップ40を領域42bに接合する。親水化の直後に接合を行うため、ゴミの付着が抑制され、かつ時間経過による親水化性能の低下が抑制され、接合強度が高くなる。
【0072】
図3および
図4に示すように、複数の半導体チップ40の接合を行う。複数の半導体チップ40のすべてが、面40aおよび面42aの親水化の直後にウェハ42に接合される。複数の半導体チップ40について、親水化から接合までの時間のばらつきが小さい。親水化性能のばらつきも小さくなり、複数の半導体チップ40のウェハ42への接合強度のばらつきが抑制される。
【0073】
<第5実施形態>
図15Aは第5実施形態に係る紫外線の照射を例示する模式図である。第1実施形態から第4実施形態のいずれかと同じ構成については、説明を省略する。第5実施形態では、第1実施形態の接合装置100において、カバー50の代わりに、紫外線照射部16の上方に照射ポット80(カバー)が取り付けられている。照射ポット80の内側には空洞81が区画される。照射ポット80は、
図7Aに示した開口部52の代わりに、上壁83(第2の壁)に設けられた上面照射口82(第1開口部)を有する。上面照射口82は、開口部52よりも面積の小さい開口である。照射ポット80は例えば円筒の形状である。上壁83の材質は例えばアルミニウム(Al)である。照射ポット80の下壁84(第1の壁)は、紫外線照射部16に対向し、石英などの紫外線を透過する材料で形成される。下壁84と上面照射口82とは対向する。
【0074】
照射ポット80にはガス通路53、54および56が取り付けられている。ガス通路53、54および56には、それぞれバルブ55、57および58が設けられている。
【0075】
コレット28は半導体チップ40を上面照射口82の上方に配置する。半導体チップ40の面40aは、間に照射ポット80を挟んで、紫外線照射部16に対向する。バルブ55を開いて、ガス通路53から酸素を空洞81に供給する。バルブ57を開いて、ガス通路54から窒素を空洞81に供給する。紫外線照射部16は、Z軸方向に紫外線を出射する(
図4のステップS26)。紫外線によって空洞81の内部にオゾンが発生する。半導体チップ40の面40aが、上面照射口82から放出されるオゾンに曝露されることで、面40aが親水化される。親水化のあと、コレット28は半導体チップ40を接合ステージ14に向けて移動させる。
【0076】
第5実施形態では、半導体チップ40は、オゾンが発生する空洞81の内部に入ることなく、親水化される。半導体チップ40およびコレット28が空洞81の内部に入らない。下壁84の紫外線の透過率は上壁83よりも高い。紫外線照射部16は照射ポット80の外に位置し、紫外線は下壁84を透過する。空洞81への外気の混入が抑制され、空洞81の内部におけるオゾンの発生が安定化される。
【0077】
図15Bは上部照射口82の上面図である。上部照射口82は例えば円形である。上面照射口82の開口幅Wは、調整可能である。開口幅Wを小さくしすぎると、空気中の酸素がオゾン発生のために消費され、オゾンの発生効果が変動しやすい。開口幅Wを調整することで、オゾン発生効果の安定性と持続性が向上する。
【0078】
半導体チップ40は矩形である。上面照射口82の開口幅(直径)Wは、例えば10mmであり、半導体チップ40の一辺の長さC1より大きく、かつ半導体チップの対角線の長さC2より大きい。これにより半導体チップ40の面42aに均等にオゾンを接触させることができる。直径Wは対角線の長さC2の3倍よりも小さい。これにより、照射ポットで発生したオゾンが照射ポットの外に過剰に拡散することを抑制できる。
【0079】
<第6実施形態>
図16A、
図16Bおよび
図16Cは第6実施形態に係る照射ポット90を例示する模式図である。
図16Aは、照射ポット90の断面図である。
図16Bは、照射ポット90のガス導入部98を上方から見た図であり、ガス導入部98における内壁96の配置を示す図である。
図16Cは、照射ポット90の排気部97を上方から見た図である。照射ポット90は、上面照射口82、上壁83、および下壁84を有し、さらに内壁95(第1の内壁)および内壁96(第2の内壁)を有する。内壁95と内壁96とは一体の部材でもよいし、分離可能でもよい。
【0080】
図16Aに示すように、内壁95は開口部99(第2開口部)を有する。開口部99は、上面照射口82に対向する。照射ポット90においては、空洞91が内壁95によって排気部97(第1の空洞)とガス導入部98(第2の空洞)とに仕切られている。ガス導入部98にはガス通路53および54が取り付けられている。排気部97にはガス通路56が取り付けられている。ガス導入部98に導入された酸素および窒素、ならびにガス導入部98で発生したオゾンは、内壁95の開口部99を通って排気部97に流れることができる。
【0081】
図16Aおよび
図16Bに示すように、ガス導入部98の内部には内壁96が設けられている。内壁96は内壁95と下壁84との間を延伸する。
【0082】
図16Bに示すように、内壁96は、ガス導入部98の外壁(側面)に沿って延在する湾曲した板である。内壁96は、ガス導入部98を空洞92(第3の空洞)と空洞93(第4の空洞)とに分ける。空洞92は外壁と内壁96との間に位置する。空洞93は内壁96に囲まれた部分である。空洞92と空洞93とは連通する。空洞93は、
図16Aの開口部99を通じて排気部97に連通する。
【0083】
ガス通路53および54から導入されたガスは、内壁96とガス導入部98の外壁と内壁96との間(空洞92)を通り、ガス導入部98の中央部(空洞93)に至る。ガス導入部98の中央部で、ガスに紫外線が照射される。
図16Cに示すように、内壁95の中央に開口部99が設けられている。中央部に到達したガスおよび紫外線照射によって発生したオゾンは、内壁95の開口部99を通って排気部97に到達する。オゾンの一部が上面照射口82から出て、半導体チップ40の面40aがオゾンに曝露される。ガスおよびオゾンはガス通路56を通って照射ポット90の外に排気される。
【0084】
ガス通路53および54が照射ポットに取り付けられている位置をガス導入口と呼び、ガス通路56が照射ポットに取り付けられている位置をガス排気口と呼ぶ。ガス導入口とガス排気口との間に、空間を仕切るための内壁が存在しない場合、ガス通路53および54からそれぞれ導入される酸素と窒素との混合が不十分になり、オゾン発生効果が不安定になることがある。内壁96を設けることにより、酸素と窒素は、ガス導入部98の中央部に至る前に、十分に混合される。十分に混合された酸素と窒素にガス導入部98の中央部で紫外線を照射されることで、安定した効率でオゾンを発生させることができる。第6実施形態においても、上面照射口82の直径を第5実施形態と同様に調整することができる。
【0085】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 筐体
12 グリップリング
13 粘着テープ
14 接合ステージ
16、62 紫外線照射部
18、24 カメラ
19 グリップリング供給部
20 チップステージ
22 ゲルパック供給部
26、28 コレット
30 制御部
40 半導体チップ
40a、40b、42a 面
42 ウェハ
42b 領域
50 カバー
51 空洞
52 開口部
53、54、56 ガス通路
55、57、58 バルブ
60 反射部
61、68 反射膜
63、64、65、69 可動部
66 分岐部
67 ハーフミラー
80、90 照射ポット
81、91、92、93 空洞
82 上面照射口
83 上壁
84 下壁
95、96 内壁
97 排気部
98 ガス導入部
99 開口部
100、200、300、400 接合装置
110 親水化用の装置
111 接合用の装置