(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172200
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ドア駆動制御装置及びドア駆動システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20241205BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20241205BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/611
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089757
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 宏幸
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052EA01
2E052EC02
2E052GA06
2E052GB06
2E052GC02
(57)【要約】
【課題】ドアの動作を円滑にすることができるドア駆動制御装置を提供すること。
【解決手段】ドア駆動制御装置は、ドアの駆動を制御するドア駆動制御装置であって、ドアとドアの周辺に存在する物体との間の距離の情報を取得する取得部と、距離が第1の閾値よりも小さくなってドアが動作モードから停止モードに切り替えられ、その後、距離が大きくなる場合、第1の閾値よりも大きな第2の閾値に距離が達するまで、ドアを停止モードに維持する制御を行う制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの駆動を制御するドア駆動制御装置であって、
前記ドアと前記ドアの周辺に存在する物体との間の距離の情報を取得する取得部と、
前記距離が第1の閾値よりも小さくなって前記ドアが動作モードから停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値に前記距離が達するまで、前記ドアを前記停止モードに維持する制御を行う制御部と、
を備えるドア駆動制御装置。
【請求項2】
前記ドアは、上側ドアと前記上側ドアと回動可能に連結されている下側ドアを有し、前記制御部は、前記距離が前記第1の閾値よりも小さくなって前記下側ドアが前記動作モードから前記停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第2の閾値に前記距離が達するまで、前記下側ドアを前記停止モードに維持する制御を行う請求項1に記載のドア駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記距離が前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値未満になった場合、前記下側ドアを前記停止モードから前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がり角度を大きくする中折れモードに切り替える請求項2に記載のドア駆動制御装置。
【請求項4】
前記ドアは、上側ドアと前記上側ドアと回動可能に連結されている下側ドアを有し、前記制御部は、前記距離が前記第1の閾値よりも小さくなって前記上側ドアが前記動作モードから前記停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第2の閾値に前記距離が達するまで、前記上側ドアを前記停止モードに維持する制御を行う請求項1に記載のドア駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記距離が第4の閾値よりも小さくなって前記下側ドアが前記動作モードから前記停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第4の閾値よりも大きな第5の閾値に前記距離が達するまで、前記下側ドアを前記停止モードに維持する制御を行う請求項4に記載のドア駆動制御装置。
【請求項6】
前記第4の閾値は前記第1の閾値よりも大きく、前記第5の閾値は前記第2の閾値よりも大きい請求項5に記載のドア駆動制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記距離が前記第4の閾値よりも小さい第6の閾値未満になった場合、または、前記距離が前記第5の閾値よりも小さい第7の閾値未満になった場合、前記下側ドアを前記停止モードから前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がり角度を大きくする中折れモードに切り替える請求項5に記載のドア駆動制御装置。
【請求項8】
前記第7の閾値は、前記第6の閾値よりも大きい請求項7に記載のドア駆動制御装置。
【請求項9】
前記距離の情報は、前記ドアの複数の個所に設置された複数のセンサのうち、前記物体に最も近いセンサにより検出された情報である請求項1に記載のドア駆動制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第2の閾値に前記距離が達した後、前記ドアを前記動作モードに切り替える制御を行う請求項1に記載のドア駆動制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載のドア駆動制御装置と、
前記ドアと物体との間の距離を検出するセンサと、
前記ドアを駆動する駆動部と、
を備えるドア駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア駆動制御装置及びドア駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックドアをモータの力で開閉するパワーバックドア機能を備えた車両が開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、車両のバックドアに障害物を検知するセンサを設け、バックドアが障害物に接近したことをセンサが検知した場合にバックドアの開動作を停止させ、バックドアが障害物に接触することを防止する自動車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の制御では、バックドアが障害物に接近して開動作を停止した後、バックドアが揺動するなどしてバックドアが障害物から離れたことが検出された場合、バックドアが障害物に接触する危険性がなくなったものと判定され、障害物が依然存在するにもかかわらずバックドアの開動作が再開される可能性がある。
【0006】
そして、バックドアが開動作を再開し、障害物に接近すると、再度動作を停止し、その後の揺動により開動作を再開するなど、開動作と動作停止が繰り返されてバックドアの動作がぎこちないものとなる。
【0007】
このようなことから、バックドアの動作をより円滑にすることができる技術の開発が望まれる。このような課題は、バックドアだけでなく、開動作を行うドアに共通する課題である。
【0008】
本発明は、ドアの動作を円滑にすることができるドア駆動制御装置及びドア駆動システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のドア駆動制御装置は、ドアの駆動を制御するドア駆動制御装置であって、前記ドアと前記ドアの周辺に存在する物体との間の距離の情報を取得する取得部と、前記距離が第1の閾値よりも小さくなって前記ドアが動作モードから停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値に前記距離が達するまで、前記ドアを前記停止モードに維持する制御を行う制御部と、を備える。
【0010】
本発明のドア駆動システムは、上記のドア駆動制御装置と、前記ドアと物体との間の距離を検出するセンサと、前記ドアを駆動する駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドアの動作を円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るドア駆動制御システムが適用される車両の後部の一例を示す外観図
【
図3】ドアが動作を停止する停止モードにある場合に行われる閾値切替制御について説明する図
【
図4】ドアの動作制御に用いられるドアと物体との間の距離の閾値a~dについて説明する図
【
図5】ドアを開くときのドア駆動制御装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図6】ドアを開くときのドア駆動制御装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図7】ドアを開くときのドア駆動制御装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図10】ドア駆動制御装置の動作を説明するための図
【
図11】ドア駆動制御装置の動作を説明するための図
【
図12】ドア駆動制御装置の動作を説明するための図
【
図13】ドア駆動制御装置の動作を説明するための図
【
図14】ドアを閉じるときのドア駆動制御装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図15】ドアを閉じるときのドア駆動制御装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図16】上側ドアに対する下側ドアの折れ曲がりの限界角度について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るドア駆動システムが適用される車両100の後部の一例を示す外観図である。
図2は、ドア駆動制御システムの構成例を示す図である。
【0015】
車両100は、車両100の後部に形成されている開口部を開状態又は閉状態にするドア1と、ドア1を駆動する駆動部2と、ドア1の周囲に存在する物体を検出するセンサ群3と、駆動部2を制御するドア駆動制御装置4とを備えている。
【0016】
開状態とは、ドア1によって車両100の開口部が開放された状態であり、開口部を介して、荷物などを車両100に出し入れできる状態である。閉状態は、ドア1によって車両100の開口部が閉塞された状態である。駆動部2と、センサ群3と、ドア駆動制御装置4とは、ドア駆動システム200を構成する。
【0017】
(ドア1)
ドア1は、上側ドア1aと上側ドア1aにヒンジなどにより回動可能に連結されている下側ドア1bとを備えた中折れ式のテールゲートである。
【0018】
なお、本発明は、上側ドア1aと下側ドア1bとを備える中折れ式のテールゲートに限定されず、1枚のドアからなるテールゲートにも適用することができ、また、跳ね上げ式乗降用ドアなどにも適用することができる。
【0019】
上側ドア1aは、車両本体101に、不図示の上側ヒンジを介して、回動可能に取り付けられている。上側ドア1aには、不図示の下側ヒンジを介して、下側ドア1bが回動可能に連結されている。
【0020】
(駆動部2)
駆動部2は、モータの回転運動を直線運動に変換することにより上側ドア1aを駆動する複数の第1駆動部2aと、モータの回転運動を直線運動に変換することにより下側ドア1bを駆動する第2駆動部2bとを備えている。
【0021】
(第1駆動部2a)
複数の第1駆動部2aのそれぞれが動作することによって、上側ドア1aが閉位置から開位置まで移動する。閉位置は、車両本体101の開口部が閉塞される位置であり、開位置は、車両本体101の開口部が開放される位置である。
【0022】
なお、複数の第1駆動部2aのそれぞれは、上側ドア1aの開閉を可能とするものであればよく、その構造、形状などは特に限定されない。また、複数の第1駆動部2aそれぞれにモータを備えていてもよく、一つの第1駆動部2aのみにモータを備えていてもよい。
【0023】
(第2駆動部2b)
第2駆動部2bは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの角度を変化させる装置である。第2駆動部2bが動作することによって、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を大きくして上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がり度合いを大きくし、また上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を小さくして上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がり度合いを小さくすることができる。
【0024】
なお、第2駆動部2bは、下側ドア1bの開閉を可能とするものであればよく、その構造、形状などは特に限定されない。
【0025】
ドア1には、ドア1の周囲に存在する物体を検出するセンサ群3が設けられている。物体は、例えば、別の車両、壁、電柱、人、天井などである。センサ群3には、例えばセンサ31、センサ32、センサ33及びセンサ34が含まれている。
【0026】
センサ31、センサ32、センサ33及びセンサ34のそれぞれは、例えば、超音波を発するソナーである。なお、センサ31、センサ32、センサ33及びセンサ34のそれぞれは、超音波ソナー以外にも電波センサ、画像センサなど物体を検知することができるものであればよい。
【0027】
ソナーが、例えば一定周波数のパルス状の音波を発振すると、パルス状の音波が車両周辺の物体などに当たって反射し、パルス状の音波の一部がソナーに戻る。
【0028】
車両100から物体までの距離が長くなるほど、パルス状の音波が発振されてからその一部がソナーに戻るまでの時間が長くなる。ソナーは、パルス状の音波を発振してから、物体で反射したエコーがソナーに戻るまでの往復時間を測定し、上記関係性を利用することにより、物体までの距離を推定する。
【0029】
(センサ31)
センサ31は、上側ドア1aの左右方向における中央部付近において、上側ドア1aの下側縁部付近に設けられている。
【0030】
上側ドア1aの下側縁部付近にセンサ31を設けることによって、例えば、中折れモードで開動作中のドア1から物体(例えば天井)までの最短距離を精度良く検出し、ドア1が物体に接触することを防止できる。
【0031】
中折れモードは、上側ドア1aを動作させながら、又は、上側ドア1aの動作を止めた状態で、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を大きくすることによって、ドア1全体を折り曲げた状態にさせるモードである。
【0032】
なお、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度は、ドア1が車両本体101の開口部を閉じているときの角度と同じ角度で下側ドア1bが上側ドア1aに対して開いている状態から、下側ドア1bの車室側の面が上側ドア1aの車室側の面に近づく方向に下側ドア1bを駆動した状態になるまでに、下側ドア1bが上側ドア1aに対して回動した回動角度である。
【0033】
センサ31を上側ドア1aに配置することで、下側ドア1bの動きに依存することなく、上側ドア1aの上側に位置する物体(天井など)から上側ドア1aまでの距離を検知できる。このため、下側ドア1bが回動動作した場合でも、上側ドア1aの上側に位置する物体への上側ドア1aの接触を防止できる。
【0034】
(センサ32)
センサ32は、下側ドア1bの左右方向における中央部付近において、下側ドア1bの下側縁部付近に設けられている。
【0035】
下側ドア1bの下側縁部付近にセンサ32を設けることによって、例えば、通常モードで開動作中のドア1から物体までの最短距離を精度良く検出し、ドア1が物体に接触することを防止できる。
【0036】
通常モードは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの角度が、ドア1が車両本体101の開口部を閉じているときにおける角度と等しい状態で、ドア1を動作させるモードである。
【0037】
(センサ33)
センサ33は、下側ドア1bを車両100の後方から前方に向かって見た場合に、下側ドア1bの右側縁部付近に設けられている。
【0038】
下側ドア1bの右側縁部付近にセンサ33を設けることによって、例えば、下側ドア1bの右側に物体が存在する場合、中折れモード又は通常モードで開動作中のドア1から物体までの最短距離を精度良く検出し、ドア1が物体に接触することを防止できる。
【0039】
(センサ34)
センサ34は、下側ドア1bを車両100の後方から前方に向かって見た場合に、下側ドア1bの左側縁部付近に設けられている。
【0040】
下側ドア1bの左側縁部付近にセンサ34を設けることによって、例えば、下側ドア1bの左側に物体が存在する場合、中折れモード又は通常モードで開動作中のドア1から物体までの最短距離を精度良く検出し、ドア1が物体に接触することを防止できる。
【0041】
次に、
図2を参照して、ドア駆動システム200の構成例について説明する。ドア駆動システム200は、駆動部2、センサ群3、ドア駆動制御装置4、及び操作装置5を備えている。
【0042】
(ドア駆動制御装置4)
ドア駆動制御装置4は、ドア1を閉状態から開状態に遷移させ、又はドア1を開状態から閉状態に遷移させる装置である。ドア駆動制御装置4は、車両100の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)に組み込まれても良く、また駆動部2に搭載されていても良い。
【0043】
ドア駆動制御装置4は、取得部4a、検知部4b、及び制御部4cを備えている。
【0044】
(取得部4a)
取得部4aは、センサ群3による物体の検出状態を示す検出状態情報3aを取得する。検出状態情報3aは、例えば物体に反射してセンサ群3が受信したエコー信号などである。
【0045】
(検出部4b)
検出部4bは、操作装置5から送信される操作信号5aを受信することにより、待機モードにあるドア1を開動作モードに切り替える開操作信号、又は、待機モードあるいは開動作モードにあるドア1を閉動作モードに切り替える閉操作信号を検出する。
【0046】
(制御部4c)
制御部4cは、検出部4bにより開操作信号又は閉操作信号を検出した場合、検出状態情報3aに基づき、車両本体101に対する上側ドア1aの角度が変化可能に駆動部2を制御し、さらに、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が変化可能に駆動部2を制御する。
【0047】
具体的には、制御部4cは、検出状態情報3aに基づき、ドア1の付近に物体が存在するか否かを判定し、また、ドア1から物体までの距離を算出する。そして、制御部4cは、その結果に基づいて、車両本体101に対する上側ドア1aの角度を変更するか否か、また、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を変更するか否かをそれぞれ判定し、それらの判定の結果に応じて、ドア1を駆動する。
【0048】
(操作装置5)
操作装置5は、リモコンキー、車両100に搭載される操作スイッチなどである。操作装置5は、上側ドア1a及び下側ドア1bを開閉操作するための操作信号5aを制御部4cに送信する。操作信号5aは、ドア1を開く操作が実行されたときに送信される開操作信号、又は、ドア1を閉じる操作が実行されたときに送信される閉操作信号である。
【0049】
次に、ドア1が動作を停止する停止モードにある場合に行われる閾値切替制御について説明する。
図3は、ドア1が動作を停止する停止モードにある場合に行われる閾値切替制御について説明する図である。以下の説明において、ドア1は、上側ドア1aであってもよいし、下側ドア1bであってもよい。
【0050】
ドア駆動制御装置4の制御部4cは、開動作を行っているドア1が物体6に接近し、ドア1と物体6との間の距離が小さくなって閾値t1に達すると(
図3の位置Aに対応)、ドア1の動作を開動作モードから停止モードに遷移させる。
【0051】
この状態において、ドア1が揺動し、ドア1と物体6との間の距離が閾値t1よりも小さくなった場合(
図3の位置Bに対応)、制御部4cは、ドア1の動作を停止モードに維持するが、その距離が閾値t1よりも大きくなった場合(
図3の位置Cに対応)に停止モードを解除すると、物体6が依然存在するにもかかわらずドア1が開動作を再開することになる。
【0052】
そして、ドア1が開動作を再開し、物体6に接近すると、ドア1は再度動作を停止し、その後の揺動により開動作を再開するなど、開動作と動作停止が繰り返されて、ドア1の動作がぎこちないものとなる。
【0053】
そのため、制御部4cは、ドア1と物体6との間の距離が大きくなる場合、その距離が閾値t1よりも大きな閾値t2に達するまで、ドア1の動作を停止モードに維持する制御を行う。これにより、上述したようなドア1のばたつきを防止することができる。
【0054】
次に、
図4~
図13を参照して、ドア1を開くときのドア駆動制御装置4の動作を説明する。
図4は、ドア1の動作制御に用いられるドア1と物体6との間の距離の閾値a~dについて説明する図である。
図5~
図7は、ドア1を開くときのドア駆動制御装置4の動作を説明するためのフローチャートである。
図8~
図13は、ドア駆動制御装置4の動作を説明するための図である。
【0055】
図4において、「動作状態」は、ドア1が開動作を開始する前であるか、開動作中であるかを示している。「ドア部分」は、制御対象となるドアの部分(上側ドア1a及び下側ドア1b)を示している。「移動状況」は、ドア1と物体6との間の距離が小さくなりつつある状況(接近)か、ドア1と物体6との間の距離が大きくなりつつある状況(離隔)かを示している。
【0056】
「ドアと物体との間の距離の閾値」は、上側ドア1a及び下側ドア1bが行うべき動作を判定する際に用いられる閾値を示している。各閾値a~dの大小関係は、a<b<c<dとなっている。
【0057】
例えば、ドア1が開動作を開始する前であり、ドア1と物体6との間の距離が閾値a未満である場合、上側ドア1a及び下側ドア1bの作動は不許可とされ、上側ドア1a及び下側ドア1bの開動作は開始されないが、ドア1と物体6との間の距離が閾値a以上である場合、上側ドア1a及び下側ドア1bの作動は許可とされ、上側ドア1a及び下側ドア1bの開動作が開始される。
【0058】
ここで、下側ドア1bの開動作とは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を、ドア1が車両本体101の開口部を閉じているときにおける角度となるように小さくする動作である。
【0059】
また、ドア1が開動作中であり、ドア1が物体6に接近しつつあり、かつドア1と物体6との間の距離が閾値a未満である場合、上側ドア1aの動作は停止モードに設定され、上側ドア1aの動作は停止される。この場合、下側ドア1bの動作は中折れ動作モードに設定され、下側ドア1bの中折れ動作が実行される。
【0060】
一方、ドア1が開動作中であり、ドア1が物体6に接近しつつあり、かつドア1と物体6との間の距離が閾値a以上である場合、上側ドア1aの動作は開動作モードに設定され、上側ドア1aの開動作が実行される。
【0061】
そして、ドア1と物体6との間の距離が閾値a以上b未満である場合、下側ドア1bの動作は中折れ動作モードに設定され、下側ドア1bの中折れ動作が実行される。ドア1と物体6との間の距離が閾値b以上c未満である場合、下側ドア1bの動作は停止モードに設定され、下側ドア1bの動作は停止される。ドア1と物体6との間の距離が閾値c以上である場合、下側ドア1bの動作は開動作モードに設定され、下側ドア1bの開動作が実行される。
【0062】
また、ドア1が開動作中であり、ドア1が物体6から離隔しつつあり、かつドア1と物体6との間の距離が閾値b未満である場合、上側ドア1aの動作は停止モードに設定され、上側ドア1aの動作は停止される。この場合、下側ドア1bの動作は中折れ動作モードに設定され、下側ドア1bの中折れ動作が実行される。
【0063】
一方、ドア1が開動作中であり、ドア1が物体6から離隔しつつあり、かつドア1と物体6との間の距離が閾値b以上である場合、上側ドア1aの動作は開動作モードに設定され、上側ドア1aの開動作が実行される。
【0064】
そして、ドア1と物体6との間の距離が閾値b以上c未満である場合、下側ドア1bの動作は中折れ動作モードに設定され、下側ドア1bの中折れ動作が実行される。ドア1と物体6との間の距離が閾値c以上d未満である場合、下側ドア1bの動作は停止モードに設定され、下側ドア1bの動作は停止される。ドア1と物体6との間の距離が閾値d以上である場合、下側ドア1bの動作は開動作モードに設定され、下側ドア1bの開動作が実行される。
【0065】
ここで、開動作中の上側ドア1aに関して、ドア1が物体6に接近しつつある場合の閾値aよりも、ドア1が物体6から離隔しつつある場合の閾値bが大きいのは、前述のように、ドア1のばたつきを防止するためである。
【0066】
開動作中の下側ドア1bに関して、ドア1が物体6に接近しつつある場合の閾値cよりも、ドア1が物体6から離隔しつつある場合の閾値dが大きいのも同様に、ドア1のばたつきを防止するためである。
【0067】
また、ドア1が物体6に接近しつつある場合の上側ドア1aに対する閾値aよりも、ドア1が物体6に接近しつつある場合の下側ドア1bに対する閾値cが大きいのは、上側ドア1aよりも外側に飛び出す下側ドア1bが、物体6と接触することを防止するためである。
【0068】
ドア1が物体6から離隔しつつある場合の上側ドア1aに対する閾値bよりも、ドア1が物体6から離隔しつつある場合の下側ドア1bに対する閾値dが大きいのも同様に、上側ドア1aよりも外側に飛び出す下側ドア1bが、物体6と接触することを防止するためである。
【0069】
また、ドア1が物体6に接近しつつある場合に、ドア1と物体6との間の距離が、閾値cよりも小さい閾値b未満となった場合、下側ドア1bが中折れ動作モードとされるのは、上側ドア1aよりも外側に飛び出す下側ドア1bが、物体6と接触することを防止するためである。
【0070】
ドア1が物体6から離隔しつつある場合に、ドア1と物体6との間の距離が、閾値dよりも小さい閾値c未満となった場合、下側ドア1bが中折れ動作モードとされるのは、上側ドア1aよりも外側に飛び出す下側ドア1bが、物体6と接触することを防止するためである。
【0071】
また、ドア1が物体6に接近しつつある場合の下側ドア1bに対する閾値cよりも、ドア1が物体6から離隔しつつある場合の下側ドア1bに対する閾値dが大きいのは、ドア1が揺動した場合に、中折れ動作モードと停止モードの間で切り替えが頻発し、ドア1のばたつきが発生することを防止するためである。
【0072】
これらの閾値a~dを用いたドア駆動制御装置4の動作は以下のようになる。
図5に示すように、まず、ドア駆動制御装置4の制御部4cは、開操作信号を検出部4bが検出したか否かを判定する(ステップS1)。
【0073】
なお、ステップS1においては、車両100の状態は駐車中で、かつ、操作信号の受信を待機する待機状態とされ、センサ31~34の状態は電源がOFFとなるスリープ状態とされる。
【0074】
開操作信号を検出部4bが検出していない場合(ステップS1,NO)、制御部4cは、ステップS1の処理を繰り返し実行する。
【0075】
開操作信号を検出部4bが検出した場合(ステップS1,YES)、制御部4cは、センサ31~34の状態がスリープ状態である場合は、スリープ状態を解除し、ドア1から物体6までの距離が閾値a以上であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、本実施の形態では、センサ群3が検出した距離のうち、最も小さい距離が各閾値a~dと比較されるものとする。
【0076】
閾値aは、ドア1の開動作の開始前に、ドア1の開動作の開始を許容するか否かの判定に用いられる値である(
図4の閾値a及び
図8参照)。
【0077】
例えば、制御部4cは、閉位置にあるドア1が開動作を開始するときに、センサ群3で検出された距離が閾値a未満の場合、ドア1の周囲に存在する物体にドア1が接触する可能性が高いと判定する。
【0078】
そのため、ドア1から物体6までの距離が閾値a未満である場合(ステップS2,NO)、制御部4cは、ドア1の開動作を行うことなく、一連の処理を終了する。これにより、ドア1の開動作が中断されて、ドア1が物体6に接触することを防止できる。
【0079】
ドア1から物体6までの距離が閾値a以上の場合(ステップS2,YES)、制御部4cは、ドア1の開動作指令4c1を駆動部2に送信することによって、ドア1の開動作を開始させる(ステップS3)。
【0080】
次に、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が閾値d以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0081】
閾値dは、ドア1の開動作時に、ドア1が物体6に接近しつつある場合も、ドア1が物体6から離隔しつつある場合も、ドア1を中折れ状態にさせることなく開くことが可能か否かの判定に用いられる値である(
図4の閾値d及び
図9参照)。
【0082】
例えば、センサ群3で検出された距離が閾値d以上である場合、開動作中のドア1が物体6に接触する可能性がないため、ドア1を中折れ状態にさせることなく開くことが可能と判定される(
図10参照)。
【0083】
一方、上記距離が閾値d未満である場合、開動作中のドア1が物体6に接触する可能性があるため、その距離に応じて以下に説明するような適切な制御が行われる。
【0084】
ドア1から物体6までの距離が閾値d以上の場合(ステップS4,YES)、制御部4cは、通常モードによるドアの開動作を継続する(ステップS5)。
【0085】
すなわち、制御部4cは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの角度について、ドア1が閉位置にあるときの角度を保ちながら、ドア1が開くように駆動部2を制御する。
【0086】
これにより、車両100への荷物の搬入時、又は車両100内の荷物の搬出時において、荷物の搬出入作業を中断することなく進めることができる。またドア1を中折れ状態にするために下側ドア1bを駆動する処理が省略されるため、駆動部2の消費電力の増加を抑制することができる。また、中折れしたドア1を閉位置にあるときの角度に戻す時間を削減することができる。
【0087】
なお、後の通常モードにおいては、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が、ドア1が閉位置にあるときの角度よりも大きい場合、制御部4cが、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を、ドア1が閉位置にあるときの角度に戻しつつ、ドア1が開くように駆動部2を制御する処理も実行される。
【0088】
その後、制御部4cは、ドア1が全開の状態になったか否かを判定する(ステップS6)。全開の状態とは、上側ドア1aの開度が上限に達し、かつ、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が、ドア1が車両本体101の開口部を閉じているときにおける角度と等しい状態である。
【0089】
ドア1が全開になっていない場合(ステップS6,NO)、制御部4cは、ステップS4以降の処理を繰り返す。ドア1が全開になった場合(ステップS6,YES)、制御部4cは、一連の処理を終了する。
【0090】
ステップS4において、ドア1から物体6までの距離が閾値d未満の場合(ステップS4,NO)、制御部4cは、センサ群3がドア1から物体6までの距離を連続的に検出した結果に基づいて、上記距離が増加しつつあるのか否かを判定する(ステップS7)。
【0091】
ドア1から物体6までの距離が増加しつつある状態ではなく、減少しつつある場合(ステップS7,NO)、
図6に示す接近時動作が実行される(ステップS8)。接近時動作は、ドア1が物体6に近づきつつある場合に上側ドア1a及び下側ドア1bが実行する動作である。接近時動作については、後に
図6を用いて説明する。
【0092】
ドア1から物体6までの距離が増加しつつある場合(ステップS7,YES)、
図7に示す離隔時動作が実行される(ステップS9)。離隔時動作は、ドア1が物体6から離れつつある場合に上側ドア1a及び下側ドア1bが実行する動作である。離隔時動作については、後に
図7を用いて説明する。
【0093】
ステップS8又はステップS9の処理の後、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が閾値a以上であるか否かを判定する(ステップS10)。ステップS8又はステップS9の処理が行われた結果、ドア1から物体6までの距離が閾値a以上となっている場合(ステップS10,YES)、ステップS6以降の処理が継続される。
【0094】
ステップS8又はステップS9の処理が行われても、ドア1から物体6までの距離が依然として閾値a未満である場合(ステップS10,NO)、制御部4cは、ドア1の周囲に存在する物体にドア1が接触する可能性が高いと判定する。そのため、制御部4cは、ドア1の開動作を行うことなく、一連の処理を終了する。これにより、ドア1の開動作が中断されて、ドア1が物体6に接触することを防止できる。
【0095】
次に、
図5のステップS8に示した接近時動作について、
図6を用いて詳しく説明する。
図6に示すように、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が閾値a未満であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0096】
この閾値aは、ドア1が物体6に接近しつつある場合に、上側ドア1aの動作を停止モードにするのか、開動作モードにするのかの判定に用いられる値である(
図4の閾値a参照)。
【0097】
ここで、この判定に用いられる閾値aは、ドア1の開動作の開始を許容するか否かの判定に用いられる閾値と同じ値に設定されているが、その閾値と異なる値に設定されてもよい。
【0098】
ドア1から物体6までの距離が閾値a未満である場合(ステップS11,YES)、制御部4cは、上側ドア1aを停止する停止モードに設定する(ステップS12)。一方、ドア1から物体6までの距離が閾値a以上である場合(ステップS11,NO)、制御部4cは、上側ドア1aに開動作をさせる開動作モードに設定する(ステップS13)。
【0099】
ステップS12又はステップS13の処理の後、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が、閾値aよりも大きい閾値b未満であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0100】
この閾値bは、ドア1が物体6に接近しつつある場合に、下側ドア1bの動作を中折れモードにするのか、停止モードにするのかの判定に用いられる値である(
図4の閾値b及び
図12参照)。
【0101】
ドア1から物体6までの距離が閾値b未満である場合(ステップS14,YES)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を中折れモードに設定する(ステップS15)。これにより、下側ドア1bは、中折れ動作を開始し、下側ドア1bが物体6に接触することを防止できる(
図13参照)。ステップS14における閾値bは、特許請求の範囲における第3の閾値および第6の閾値に相当する。
【0102】
一方、ドア1から物体6までの距離が閾値b以上である場合(ステップS14,NO)、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が、閾値bよりも大きい閾値c未満であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0103】
この閾値cは、ドア1が物体6に接近しつつある場合に、下側ドア1bの動作を停止モードにするのか、開動作モードにするのかの判定に用いられる値である(
図4の閾値c参照)。
【0104】
上記距離が閾値c未満である場合(ステップS16,YES)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を停止モードに設定する(ステップS17)。上記距離が閾値c以上である場合(ステップS16,NO)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を開動作モードに設定する(ステップS18)。
【0105】
下側ドア1bにおける開動作モードとは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が、ドア1が車両本体101の開口部を閉じているときにおける角度となるよう下側ドア1bが回動するモードである。
【0106】
そして、ステップS15、ステップS17、又はステップS18の処理の後、
図5に示したステップS10以降の処理が継続される。
【0107】
次に、
図5のステップS9に示した離隔時動作について、
図7を用いて詳しく説明する。
図7に示すように、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が閾値b未満であるか否かを判定する(ステップS19)。
【0108】
この閾値bは、ドア1が物体6から離隔しつつある場合に、上側ドア1aの動作を停止モードにするのか、開動作モードにするのかの判定に用いられる値である(
図4の閾値b参照)。
【0109】
ここで、この判定に用いられる閾値bは、ドア1が物体6に接近しつつある場合に、下側ドア1bの動作を中折れ動作モードにするのか、停止モードにするのかの判定に用いられる閾値と同じ値に設定されているが、その閾値と異なる値に設定されてもよい。ただし、閾値bは、閾値aよりも大きい値に設定される。
【0110】
ここで、
図6のステップS11における閾値aは、特許請求の範囲における第1の閾値に相当し、
図7のステップS19における閾値bは、特許請求の範囲における第2の閾値に相当する。
【0111】
ドア1が物体6に接近しつつある場合の閾値aよりも、ドア1が物体6から離隔しつつある場合の閾値bを大きくすることにより、ドア1が揺動して物体6から離隔した場合であっても、すぐに上側ドア1aの開動作が開始されることがないので、開動作と動作停止が繰り返されてドア1の動作がぎこちなくなることを防止することができる。
【0112】
ドア1から物体6までの距離が閾値b未満である場合(ステップS19,YES)、制御部4cは、上側ドア1aを停止する停止モードに設定する(ステップS20)。一方、ドア1から物体6までの距離が閾値b以上である場合(ステップS19,NO)、制御部4cは、上側ドア1aに開動作させる開動作モードに設定する(ステップS21)。
【0113】
ステップS20又はステップS21の処理の後、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が、閾値bよりも大きい閾値c未満であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0114】
この閾値cは、ドア1が物体6から離隔しつつある場合に、下側ドア1bの動作を中折れモードにするのか、停止モードにするのかの判定に用いられる値である(
図4の閾値c参照)。
【0115】
ドア1から物体6までの距離が閾値c未満である場合(ステップS22,YES)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を中折れモードに設定する(ステップS23)。これにより、下側ドア1bは、中折れ動作を開始し、下側ドア1bが物体6に接触することを防止できる(
図13参照)。ステップS22における閾値cは、特許請求の範囲における第7の閾値に相当する。
【0116】
一方、ドア1から物体6までの距離が閾値c以上である場合(ステップS22,NO)、制御部4cは、ドア1から物体6までの距離が、閾値cよりも大きい閾値d未満であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0117】
この閾値dは、ドア1が物体6から離隔しつつある場合に、下側ドア1bの動作を停止モードにするのか、開動作モードにするのかの判定に用いられる値である(
図4の閾値d参照)。
【0118】
ここで、
図6のステップS16における閾値cは、特許請求の範囲における第1の閾値に相当し、
図7のステップS24における閾値dは、特許請求の範囲における第2の閾値に相当する。
【0119】
また、
図6のステップS16における閾値cは、特許請求の範囲における第4の閾値に相当し、
図7のステップS24における閾値dは、特許請求の範囲における第5の閾値に相当する。
【0120】
ドア1が物体6に接近しつつある場合の閾値cよりも、ドア1が物体6から離隔しつつある場合の閾値dを大きくすることにより、ドア1が揺動して物体6から離隔した場合であっても、すぐに下側ドア1bの開動作が開始されることがないので、開動作と動作停止が繰り返されてドア1の動作がぎこちなくなることを防止することができる。
【0121】
上記距離が閾値d未満である場合(ステップS24,YES)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を停止モードに設定する(ステップS25)。上記距離が閾値c以上である場合(ステップS24,NO)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を開動作モードに設定する(ステップS26)。
【0122】
そして、ステップS23、ステップS25、又はステップS26の処理の後、
図5に示したステップS10以降の処理が継続される。
【0123】
なお、制御部4cは、開動作時のドア1の動作情報(ドア1の折れ曲がりの有無、折れ曲がりの開始位置、折れ曲がり解除位置等)を記憶部に記憶する。
【0124】
次に、
図14~
図16を参照して、ドア1を閉じるときのドア駆動制御装置4の動作を説明する。
図14および
図15は、ドア1を閉じるときのドア駆動制御装置4の動作を説明するためのフローチャートである。
図16は、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの限界角度について説明する図である。
【0125】
まず、ドア駆動制御装置4の制御部4cは、閉操作信号を検出部4bが検出したか否かを判定する(ステップS30)。なお、ステップS30の処理では、制御部4cは、閉操作信号の検出に変えて、ドア1を手動により閉方向に移動させた際に発生する第1駆動部2aの信号(例えば、パルスなど)を検出することとしてもよい。
【0126】
閉操作信号を検出部4bが検出していない場合(ステップS30,NO)、制御部4cは、ステップS30の処理を繰り返し実行する。
【0127】
閉操作信号を検出部4bが検出した場合(ステップS30,YES)、制御部4cは、ドア1の開動作時に、下側ドア1bの中折れ動作が実行されたか否かを判定する(ステップS31)。
【0128】
ドア1の開動作時に下側ドア1bの中折れ動作が実行された場合(ステップS31,YES)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を中折れ動作モードに設定し、下側ドア1bに中折れ動作を実行させる(ステップS32)。
【0129】
そして、制御部4cは、ドア1の折れ曲がりの角度、すなわち上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が、ドア1が開動作を行った際の最大角度α(
図15の角度αに相当)まで達したか否かを判定する(ステップS33)。
【0130】
ドア1の折れ曲がりの角度が上記最大角度αまで達していない場合(ステップS33,NO)、制御部4cは、ステップS32以降の処理を繰り返し実行する。
【0131】
ドア1の折れ曲がりの角度が上記最大角度αまで達した場合(ステップS33,YES)、制御部4cは、上側ドア1aに閉動作を開始させる(ステップS34)。
【0132】
このように、制御部4cが、上側ドア1aに対して下側ドア1bを所定の角度まで回動させてドア1を折り曲げた状態とし、その後、上側ドア1aの閉動作を開始する制御を行うことにより、ドア1の閉動作時に、ドア1が物体6に接触することを簡易な制御で回避できる。
【0133】
また、制御部4cが、上側ドア1aに対して、ドア1が開動作を行った際の最大角度αまで下側ドア1bを回動させてドア1を折り曲げた状態とし、その後、上側ドア1aの閉動作を開始する制御を行うことにより、下側ドア1bの回動動作を物体6との接触の可能性が低い最小限の動作とすることができる。
【0134】
なお、ここでは、制御部4cが、ドア1が開動作を行った際の折れ曲がりの最大角度αとなるまで、下側ドア1bに中折れ動作をさせることとしたが、ドア1が物理的に折れ曲げ可能な最大角度β(
図16の限界角度βに相当)になるまで、下側ドア1bに中折れ動作をさせることとしてもよい。
【0135】
ステップS34の処理の後、制御部4cは、ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度D(
図16の一点鎖線を参照)以下であるか否かを判定する(ステップS35)。
【0136】
基準角度Dとは、上側ドア1aの開度に応じて予め設定された、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度である。
【0137】
上側ドア1aの開度が0以上からe未満の領域では、基準角度Dは0となる。上側ドア1aの開度がe以上f未満の領域では、基準角度Dは上側ドア1aの開度に応じて増加する。上側ドア1aの開度がf以上で上側ドア1aの最大開度であるg以下の領域では、基準角度Dは一定値となる。
【0138】
ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度D以下である場合(ステップS35,YES)、制御部4cは、ドア1が全閉の状態になったか否かを判定する(ステップS36)。全閉の状態とは、上側ドア1aの開度が下限に達し、かつ、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が最小角度に達した状態、すなわちドア1が車両本体101の開口部を閉じている状態である。
【0139】
なお、
図16の例では、最小角度が0の場合を示しているが、最小角度は0に限定されず、0より大きい角度であってもよい。
【0140】
ドア1が全閉になっていない場合(ステップS36,NO)、制御部4cは、ステップS35以降の処理を繰り返す。
【0141】
ドア1が全閉になった場合(ステップS36,YES)、制御部4cは、上側ドア1aの動作を停止モードに設定し(ステップS37)、一連の処理を終了する。
【0142】
ステップS31において、ドア1の開動作時に下側ドア1bの中折れ動作が実行されていない場合(ステップS31,NO)、制御部4cは、上側ドア1aに閉動作を開始させる(ステップS38)。
【0143】
その後、制御部4cは、ドア1が全閉の状態になったか否かを判定する(ステップS39)。ドア1が全閉になっていない場合(ステップS39,NO)、制御部4cは、ステップS39の処理を繰り返す。ドア1が全閉になった場合(ステップS39,YES)、ステップS37の処理が実行される。
【0144】
ステップS35において、ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度Dより大きい場合(ステップS35,NO)、制御部4cは、角度調整動作を実行する(ステップS40)。角度調整動作とは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を、限界角度E(
図16の実線Eを参照)と基準角度Dの間の角度に調整する動作である。
【0145】
限界角度Eとは、上側ドア1aの開度に応じて予め設定された、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度である。
【0146】
上側ドア1aの開度が0以上からh未満の領域では、限界角度Eは0となる。上側ドア1aの開度がh以上i未満の領域では、限界角度Eは上側ドア1aの開度に応じて増加する。上側ドア1aの開度がi以上で上側ドア1aの最大開度であるg以下の領域では、限界角度Eは一定値となる。
【0147】
ここで、上側ドア1aの開度がh以上f未満の領域では、限界角度Eは基準角度Dよりも大きく、上側ドア1aの開度がf以上の領域では、限界角度Eは基準角度Dと一致する。
【0148】
ステップS40の角度調整動作については、後に
図15を用いて説明する。
【0149】
角度調整動作により、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度が、限界角度Eと基準角度Dの間の角度に調整された後、制御部4cは、折れ曲がりの角度が最小角度に達したか否かを判定する(ステップS41)。
【0150】
折れ曲がりの角度が最小角度に達していない場合(ステップS41,NO)、ステップS35以降の処理が継続される。
【0151】
折れ曲がりの角度が最小角度に達した場合(ステップS41,YES)、制御部4cは、下側ドア1bの動作を停止モードに設定し、下側ドア1bの動作を停止させる(ステップS42)。その後、ステップS36以降の処理が継続される。
【0152】
次に、
図14のステップS40に示した角度調整動作について、
図15を用いて詳しく説明する。
図15に示すように、制御部4cは、
図14のステップS35の処理において、ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度Dより大きい場合(ステップS35,NO)、上側ドア1aを閉動作モードに維持したまま、下側ドア1bの動作を中折れ復帰モードに設定する(ステップS43)。
【0153】
中折れ復帰モードとは、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度を小さくするモードである。
【0154】
例えば、
図14に示したステップS32において、ドア1が物理的に折れ曲げ可能な最大角度βになるまで、下側ドア1bに中折れ動作をさせる場合、上側ドア1aの開度が
図16に示すi未満になるまで、ドア1の折れ曲がりの角度が最大角度βに維持される。これにより、ドア1が物体6に接触する可能性をさらに低めることができる。
【0155】
続いて、制御部4cは、ドア1の折れ曲がりの角度が限界角度E以上の角度になったか否かを判定する(ステップS44)。
【0156】
ドア1の折れ曲がりの角度が限界角度E以上の角度になっていない場合(ステップS44,NO)、
図14に示したステップS41以降の処理が継続される。
【0157】
ドア1の折れ曲がりの角度が限界角度E以上の角度になった場合(ステップS44,YES)、制御部4cは、上側ドア1aを停止モードに設定する(ステップS45)。これにより、上側ドア1aは閉動作を停止し、下側ドア1bは中折れ復帰動作を継続する。
【0158】
このような処理により、例えば
図16に示した二点鎖線Fの縦線部分のように、上側ドア1aの開度が変化せずに、ドア1の折れ曲がりの角度が小さくなるような制御がなされる。なお、
図16の例では、説明を分かりやすくするために、角度調整動作を2回繰り返す場合を示しているが、基準角度Dを調整することにより、ドア1をより円滑に閉状態とすることができる。
【0159】
その後、制御部4cは、ドア1の折れ曲がりの角度が限界角度Eよりも小さい基準角度Dに達したか否かを判定する(ステップS46)。
【0160】
ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度Dに達していない場合(ステップS46,NO)、制御部4cは、ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度Dに達するまで、ステップS46の処理を繰り返し実行する。
【0161】
ドア1の折れ曲がりの角度が基準角度Dに達した場合(ステップS46,YES)、制御部4cは、上側ドア1aを閉動作モードに設定する(ステップS47)。これにより、上側ドア1aが閉動作を開始する。その後、制御部4cは、
図14に示したステップS41以降の処理を実行する。
【0162】
このような処理により、例えば
図16の二点鎖線Fに示されるように、上側ドア1aの開度が小さくなるにつれて、ドア1の折れ曲がりの角度が小さくなるような制御がなされる。
【0163】
このように、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折り曲げ角度には、許容される限界角度Eが設定されている。これは、車両本体101および車内に積載された荷物とドア1との間の干渉を防止するためである。
【0164】
また、折り曲げ角度が限界角度Eを超える場合には、折り曲げ角度が限界角度Eを超えない角度となるまで、下側ドア1bを回動させる制御が行われる。
【0165】
このように、折り曲げ角度が限界角度Eを超えない基準角度Dとなるまで下側ドア1bを回動させることにより、折り曲げ角度が限界角度Eをすぐに超え、上側ドア1aの動作モードが停止モードと開動作モードとの間で頻繁に切り替えられることにより、ドア1の動作がばたつくことを防止できる。
【0166】
なお、基準角度Dはある程度の幅をもって設定することが可能である。例えば、基準角度Dの最大値は、ドア1の動作にばたつきが生じないような角度とすればよい。
【0167】
また、基準角度Dの最小値は、例えば、上側ドア1aと下側ドア1bとを連結するヒンジよりも、下側ドア1bの下端部が車両本体101側に位置する最小の角度としてもよい。これにより、下側ドア1bが物体6に接触することを防止することができる。
【0168】
例えば、基準角度Dは、上側ドア1aの開度がe以上i未満の範囲において、限界角度Eよりも5度から10度小さな値とすればよい。
【0169】
なお、ここでは、折り曲げ角度が限界角度Eを超える場合に折り曲げ角度を限界角度Eよりも小さくする例について説明したが、折り曲げ角度を限界角度Eと同じ角度に設定し、上側ドア1aが閉じるにつれて折り曲げ角度が徐々に小さくなるようにしてもよい。
【0170】
また、制御部4cは、上側ドア1aの開度が開度hよりも小さい場合、ドア1の折れ曲がりの角度を最小角度にする制御を行う。最小角度とは、ドア1が車両本体101の開口部を閉じている状態における上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの角度であり、
図16の例ではこの角度は0である。
【0171】
このように、ドア1が車両本体101の開口部を閉じる前に、ドア1の折れ曲がりの角度を最小角度にしておくことにより、ドア1が車両本体101の開口部を確実に閉じることができる。
【0172】
以上本発明の実施の形態について説明したが、例えば、以下のような態様も本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0173】
(1)ドアの駆動を制御するドア駆動制御装置は、前記ドアと前記ドアの周辺に存在する物体との間の距離の情報を取得する取得部と、前記距離が第1の閾値よりも小さくなって前記ドアが動作モードから停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値に前記距離が達するまで、前記ドアを前記停止モードに維持する制御を行う制御部と、を備える。
【0174】
(2)前記ドアは、上側ドアと前記上側ドアと回動可能に連結されている下側ドアを有し、前記制御部は、前記距離が前記第1の閾値よりも小さくなって前記下側ドアが前記動作モードから前記停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第2の閾値に前記距離が達するまで、前記下側ドアを前記停止モードに維持する制御を行う。
【0175】
(3)前記制御部は、前記距離が前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値未満になった場合、前記下側ドアを前記停止モードから前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がり角度を大きくする中折れモードに切り替える。
【0176】
(4)前記ドアは、上側ドアと前記上側ドアと回動可能に連結されている下側ドアを有し、前記制御部は、前記距離が前記第1の閾値よりも小さくなって前記上側ドアが前記動作モードから前記停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第2の閾値に前記距離が達するまで、前記上側ドアを前記停止モードに維持する制御を行う。
【0177】
(5)前記制御部は、前記距離が第4の閾値よりも小さくなって前記下側ドアが前記動作モードから前記停止モードに切り替えられ、その後、前記距離が大きくなる場合、前記第4の閾値よりも大きな第5の閾値に前記距離が達するまで、前記下側ドアを前記停止モードに維持する制御を行う。
【0178】
(6)前記第4の閾値は前記第1の閾値よりも大きく、前記第5の閾値は前記第2の閾値よりも大きい。
【0179】
(7)前記制御部は、前記距離が前記第4の閾値よりも小さい第6の閾値未満になった場合、または、前記距離が前記第5の閾値よりも小さい第7の閾値未満になった場合、前記下側ドアを前記停止モードから前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がり角度を大きくする中折れモードに切り替える。
【0180】
(8)前記第7の閾値は、前記第6の閾値よりも大きい。
【0181】
(9)前記距離の情報は、前記ドアの複数の個所に設置された複数のセンサのうち、前記物体に最も近いセンサにより検出された情報である。
【0182】
(10)前記制御部は、前記第2の閾値に前記距離が達した後、前記ドアを前記動作モードに切り替える制御を行う。
【0183】
(11)ドア駆動システムは、前記ドア駆動制御装置と、前記ドアと物体との間の距離を検出するセンサと、前記ドアを駆動する駆動部と、を備える。
【0184】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等などの意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0185】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明は、ドアの駆動を制御するドア駆動制御装置及びドア駆動システムに有用である。
【符号の説明】
【0187】
1 ドア
1a 上側ドア
1b 下側ドア
2 駆動部
2a 第1駆動部
2b 第2駆動部
3 センサ群
3a 検出状態情報
4 ドア駆動制御装置
4a 取得部
4b 検出部
4c 制御部
4c1 開動作指令
5 操作装置
5a 操作信号
6 物体
31 センサ
32 センサ
33 センサ
34 センサ
100 車両
101 車両本体
200 ドア駆動システム