(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172215
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガスサンプリング装置、ガス検出システム、およびガスサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20241205BHJP
G01M 3/38 20060101ALI20241205BHJP
G01N 21/61 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N1/22 B
G01M3/38 J
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089780
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】原 毅
(72)【発明者】
【氏名】内谷 繁生
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 朗
(72)【発明者】
【氏名】長浜 義博
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 優介
【テーマコード(参考)】
2G052
2G059
2G067
【Fターム(参考)】
2G052AC03
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA17
2G052DA14
2G052GA12
2G052JA04
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC13
2G059DD12
2G059EE01
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG06
2G059HH01
2G059JJ13
2G059LL01
2G067BB17
2G067CC04
2G067DD10
2G067DD11
(57)【要約】
【課題】ガスのサンプリングを容易にする。
【解決手段】ガスをサンプリングするガスサンプリング装置110は、サンプリングするガスが収容される容器部111と、一端側に開口部112aを有し、他端側が上記容器部111に接続されて、上記開口部112a付近のガスを拡散により上記容器部111に導く管路部112とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスをサンプリングするガスサンプリング装置であって、
サンプリングするガスが収容される容器部と、
一端側に開口部を有し、他端側が上記容器部に接続されて、上記開口部付近のガスを拡散により上記容器部に導く管路部と、
を有することを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項2】
請求項1のガスサンプリング装置であって、
上記容器部は、サンプリングされたガスを検出する検出光が透過する透明部を有することを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項3】
請求項1のガスサンプリング装置であって、
上記容器部は、サンプリングされたガスを外部から吸引可能にするバルブを備えたことを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項4】
請求項1のガスサンプリング装置であって、
上記管路部は、上記一端側の端部が閉塞され、上記端部付近の管路壁に上記開口部が形成されていることを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項5】
請求項1のガスサンプリング装置を用いたガスサンプリング方法であって、
上記管路部の開口部をサンプリングするガスが存在する領域に配置し、上記開口部から拡散により上記容器部に導かれるガスをサンプリングすることを特徴とするガスサンプリング方法。
【請求項6】
検出対象ガスを検出するガス検出システムであって、
複数の請求項2のサンプリング装置と、
上記複数のサンプリング装置の容器部におけるそれぞれの透明部に検出光を照射し、上記検出対象ガスを検出する検出装置と、
を備えたことを特徴とするガス検出システム。
【請求項7】
検出対象ガスを検出するガス検出システムであって、
請求項3のサンプリング装置と、
上記容器部に収容されたガスを上記バルブを介して吸引し、上記検出対象ガスを検出する検出装置と、
を備えたことを特徴とするガス検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの漏洩を検出するためなどに用いられるガスサンプリング装置、ガス検出システム、およびガスサンプリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの漏洩等を検出する技術としては、ポンプにより周囲の空気を吸引し、ガスセンサに向けて送気するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、レーザ光などの検出光を物体に照射して反射光を受光し、被検出ガスのコラム密度を測定するとともに、上記コラム密度および光路長に基づいて被検出ガスの濃度を計算する技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3235844号公報
【特許文献2】特開2014-55858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスを吸引して検出する手法では、検知しようとするガスが広い空間に広がっている場合にはガスをわずかに吸引しても測定する空間のガス濃度はほとんど変化しないので、比較的容易にガスを検知することができる。しかし、例えば漏洩ガス量の総量が比較的少ない場合には、十分にガスを吸引できないことや、吸引によってガス濃度が低下してしまうことがあり、適切な検知を行えないことがある。
【0006】
また、レーザー光などの検出光を用いる手法では、ガスを吸引しないので上記のような問題は生じないが、閉所のガス漏洩など検出光を照射することができない場合には、計測を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ガス量が比較的少ない場合や、ガスが存在する領域に直接検出光を照射できない場合などでも、ガスをサンプリングしてガス濃度を計測することなどが容易にできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
ガスをサンプリングするガスサンプリング装置であって、
サンプリングするガスが収容される容器部と、
一端側に開口部を有し、他端側が上記容器部に接続されて、上記開口部付近のガスを拡散により上記容器部に導く管路部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
これにより、開口部付近のガスが管路部を介した拡散により容器部に導かれるので、検出対象ガスを容易にサンプリングすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ガス量が比較的少ない場合や、ガスが存在する領域に直接検出光を照射できない場合などでも、ガスをサンプリングしてガス濃度を計測することなどが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1のガス検出システムの例を示す模式図。
【
図3】実施形態2のガス検出システムの例を示す模式図。
【
図4】実施形態3のガス検出システムの例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、他の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。また、各実施形態等で説明する内容は、論理的に可能な限り種々組み合わせ可能である。
【0013】
(実施形態1)
本発明の実施形態1として、
図1に示すように、サンプリングするガスが存在する領域を模したガスセル210に充填された都市ガスをサンプリングし、検出するガス検出システム100の例を説明する。
【0014】
上記ガス検出システム100は、サンプリングするガスが収容される容器部111に管路部112が接続されて成るガスサンプリング装置110と、サンプリングされたガスにレーザ光(検出光)を照射して、検出対象ガスである都市ガスを検出する検出装置130とを備えている。
【0015】
上記容器部111は、簡易には、例えば150mm×250mmの大きさのテドラーバッグを用いることができる。このような容器部111は、例えば自重で潰れるなどの形状変化を防ぐとともにレーザ光による検出を容易にするために画用紙等の反射板120に粘着テープで保持されるようにするなどしてもよい。容器部111は、例えば、一旦空気を入れてから潰して過去の残りガス等をパージした後、ガスセル210に接続する前に軽く空気で膨らませて形状が落ち着いた状態にされる。上記のように膨らませることによって、拡散による検出対象ガスの流入が可能になるとともに、レーザ光の光路長を確保することが容易にできる。
【0016】
管路部112は、一端側に開口部112aを有し、ガスセル210に設けられたバルブ211に接続されるとともに、他端側が上記容器部111に接続されて、ガスセル210内のガスを拡散により容器部111に導くようになっている。なお、上記のようなバルブ211は必ずしも設けられなくてもよく、また、管路部112の途中に設けられるなどしてもよい。
【0017】
ガスセル210は、例えば、サンプリングするガスが存在する領域としてLNG導管周囲の鞘管に見立てて、都市ガスが充てんされるとともに、バルブ212が一瞬開閉されて大気圧に調整されている。
【0018】
検出装置130では、例えば、検出対象ガスの吸収波長の光が所定の周波数で変調されて照射され、サンプリングされたガスを通過した後受光される光における上記周波数の成分と、その2倍の周波数の成分の強度に基づいて、検出対象ガスのコラム密度や、これが光路長で除算されて濃度が検出されるようになっている。
【0019】
上記のようなガス検出システム100で、バルブ211を開けて、容器部111内のガス濃度を検出装置130によって計測すると、
図2に示すように変化した。すなわち、この例では、例えばバルブ211を開けてから、6分程度経過すると、ガスセル210内の都市ガスが拡散により容器部111に到達して濃度が上昇し始め、約1時間後に300ppm・m、約2時間に550ppm・mとなった。上記濃度の上昇は拡散によるものと考えられるので、管路部112の長さや内径等に応じた時間が経過すれば、ガスセル210内の濃度のサンプリングが可能と考えられる。
【0020】
すなわち、検出対象ガスの濃度が定常的である場合や濃度変化が比較的ゆっくりでほぼ定常的である場合などには、被測定空間に存在するガス分子が拡散によって徐々に管路部112内を進行して、容器部111内に至り、やがて被測定空間のガス濃度と同一の濃度になって平衡状態になるので、結果的に内部のガス濃度雰囲気を外部に取り出すことができる。なお、検出の応答性を改善するためには可能な範囲で管路部112をより短くしたり、より太くしたり、また、容器部111の容積をより小さくするようにしてもよい。また、予め容器部111内に水素やヘリウムガスなど分子量が小さい気体を充填して拡散速度を速め得るようにしてもよい。
【0021】
(実施形態2)
本発明の実施形態2として、
図3に示すように、鞘管230によって覆われたLNG配管220(液化天然ガスの配管)における漏洩検査が行われるガス検出システム100の例を説明する。
【0022】
上記のようなLNG配管220では、ガスの漏洩は、鞘管230の内部で生じる。そこで、ガスサンプリング装置110は、管路部112の開口部112aが鞘管230の内部に開口するように設けられている。ガスサンプリング装置110の容器部111は、検出装置130から照射されるレーザ光に対して透明な樹脂などから成るか、または部分的に透明な窓が設けられるなど、検出光が透過する透明部を有するように形成されている。
【0023】
上記のようなガス検出システム100では、鞘管230の内部で漏洩したガスでも、管路部112を介した拡散によって容器部111にサンプリングされるので、レーザ光を用いた検出装置130による検出が可能となり、遠隔で検出することも可能になる。そこで、検出装置130から発せられるレーザ光を走査させれば、LNG配管220における複数箇所での漏洩を検出することも容易に可能となる。それゆえ、例えば漏洩検出箇所が数多くある場合などに、それぞれの箇所ごとに鞘管230の内部にチューブを挿入し外部から吸引式のガス検知器で漏洩を監視する場合などに比べて、検査の手間やコストを大幅に低減することなどもできる。
【0024】
(実施形態3)
本発明の実施形態3として、
図4に示すように、土壌240中のガスをサンプリングし、検出するガス検出システム100の例を説明する。
【0025】
この例では、例えば、土壌240に挿入される管路部112の端部は閉塞され、上記端部付近の管路壁に開口部112aが形成されている。このような開口部112aが形成されている場合には、管路部112を土壌240に挿入する際に目詰まりしにくいようにできる。
【0026】
容器部111は、例えば透明なボトル状の容器から成り、内部に反射板120が設けられている。なお、反射板120は実施形態1と同様に容器部111の外部に設けられてもよく、容器部111の内面または外面に塗料などを塗布したりしてもよい。また、周辺環境などに応じて十分な反射光や散乱光が得られる場合には必ずしも反射板120を設けなくてもよい。
【0027】
上記のようなガス検出システム100で、例えばメタンガスの発生源として肉塊を埋めて、地下10cmの深さの領域におけるメタン濃度(コラム密度)を計測したところ、
図5に示すように、地中のメタンガスの濃度変化として妥当と思われる測定結果を得ることができた。
【0028】
上記のようなガス検出システム100では、吸引式のガス検出のように、十分にガスを吸引するために必要な広い空間に亘ってガスが存在する必要はなく、地中にチューブを挿入するだけで、実質的にサンプリングガスが存在する領域を拡張し、濃度の検出感度を増大させるようなサンプリングを可能にすることができる。それゆえ、地表に漏れたガスをモニターするのに比べて、比較的深い土壌中のガス濃度を計測することもでき、いち早く異常を検知することなどもできる。また、掘削を行ってサンプリングするなどの手間をかける必要もない。
【0029】
(その他の事項)
上記の例ではレーザ光の照射によってガスの濃度等を検出する検出装置130が用いられる例を示したが、これに限らず、いわゆる吸引式の検出装置が用いられてもよい。その場合は、例えばガスサンプリング装置110の入口(112との接続部)などにバルブを設け、検出対象ガスの拡散が十分に行われたタイミングなどでバルブを閉じ、別途吸引式の検出装置を接続して検出や測定をするようにしてもよい。また、容器部111等に別途サンプリングガスの取り出しチューブやバルブを設け、そこからガスを吸引してガス濃度を計測するなどしてもよい。
【0030】
上記のように、管路部112を介した拡散によって検出対象ガスが容器部111にサンプリングされることにより、ガス量が比較的少ない場合や、ガスが存在する領域に直接検出光を照射できない場合などでも、ガスをサンプリングしてガス濃度を計測することなどが容易にできる。また、定期的にガス濃度を計測することによって地中の目的ガスの濃度変化を追跡することなども容易にできる。しかもガスを吸引するための電力や動力を必要としないようにすることもできる。
【符号の説明】
【0031】
100 ガス検出システム
110 ガスサンプリング装置
111 容器部
112 管路部
112a 開口部
120 反射板
130 検出装置
210 ガスセル
211 バルブ
212 バルブ
220 LNG配管
230 鞘管
240 土壌