(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172220
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】接続システム、コネクタ、および、配線構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20241205BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R43/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089786
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕司
【テーマコード(参考)】
5E021
5E051
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC38
5E021JA05
5E051BA02
5E051BA04
5E051BB04
(57)【要約】
【課題】コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が増加することを抑制できる技術の提供。
【解決手段】接続システム100は、オスコネクタ101と、第1メスコネクタ102aと、第2メスコネクタ102bとを備える。オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態において、第1メス端子40aが、オス端子20における第1接触領域に接触し、オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bが接続された状態において、第2メス端子40bが、オス端子20における、第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に接触する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス端子と前記オス端子が収容されるオスハウジングとを備えるオスコネクタと、
第1メス端子と前記第1メス端子が収容される第1メスハウジングとを備える第1メスコネクタと、
第2メス端子と前記第2メス端子が収容される第2メスハウジングとを備える第2メスコネクタと、
を備え、
前記オスコネクタに前記第1メスコネクタが接続された状態において、前記第1メス端子が、前記オス端子における第1接触領域に接触し、
前記オスコネクタに前記第2メスコネクタが接続された状態において、前記第2メス端子が、前記オス端子における、前記第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に接触する、
接続システム。
【請求項2】
請求項1に記載の接続システムであって、
前記第2接触領域の少なくとも一部が、前記第1接触領域よりも前記オス端子の基端側にある、
接続システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接続システムであって、
前記第2接触領域が、前記第1接触領域と全体的に重ならない領域である、
接続システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の接続システムであって、
前記第1メスハウジングが、
前記オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記第1メスハウジングの接続位置を、前記オスハウジングに対する前記第2メスハウジングの接続位置からずれた位置に規制する規制面、
を備える、接続システム。
【請求項5】
請求項4に記載の接続システムであって、
前記第1メス端子と前記第2メス端子とが同じ形状である、
接続システム。
【請求項6】
請求項4に記載の接続システムであって、
前記第1メスハウジングが、前記規制面を有する突起部を備える、
接続システム。
【請求項7】
請求項6に記載の接続システムであって、
前記規制面が、前記オスハウジングにおける前記第1メスハウジングが差し込まれる側の端面と接触する、
接続システム。
【請求項8】
請求項6に記載の接続システムであって、
前記オスハウジングが溝を備え、
前記突起部が前記溝に収容されるとともに、前記規制面が前記溝の延在方向の端面と接触する、
接続システム。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の接続システムであって、
前記第1メスハウジングが、
前記オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記第1メスハウジングの接続位置を第1位置に規制する第1規制面、
を備え、
前記第2メスハウジングが、
前記オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記第2メスハウジングの接続位置を、前記第1位置からずれた第2位置に規制する第2規制面、
を備える、接続システム。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の接続システムであって、
前記オスハウジングの凹部に前記第1メスハウジングが差し込まれて、前記オスコネクタに前記第1メスコネクタが接続された状態において、前記凹部の奥の面とこれと対向する前記第1メスハウジングの端面との間に、隙間が設けられる、
接続システム。
【請求項11】
メス端子と前記メス端子が収容されるメスハウジングとを備えるコネクタであって、
前記メスハウジングが、
オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記メスハウジングの接続位置を規制する規制面、
を備え、
前記規制面で前記接続位置が規制されることによって、前記オスハウジングに収容されるオス端子における前記メス端子が接触する領域が、前記規制面で前記接続位置が規制されない場合に前記メス端子が接触する領域からずれた位置となる、
コネクタ。
【請求項12】
オス端子と前記オス端子が収容されるオスハウジングとを備えるオスコネクタから、第1メス端子と前記第1メス端子が収容される第1メスハウジングとを備える第1メスコネクタを取り外す取り外し工程と、
前記第1メスコネクタが取り外された前記オスコネクタに、第2メス端子と前記第2メス端子が収容される第2メスハウジングとを備える第2メスコネクタを接続して、前記オス端子における、前記第1メス端子が接触していた第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に、前記第2メス端子を接触させる接続工程と、
を備える、配線構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接続システム、コネクタ、および、配線構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、電線の端部に設けられた端子(端子金具)が、コネクタハウジングに設けられたキャビティに収容された構成を備える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自動車などの車両において、車両に搭載される各種の機器が、車体側の機器に対して、コネクタを介して接続されることがある。この場合、例えば、車載側の機器が交換される際に(例えば、車両購入後の機器機能追加などに伴って新バージョンの機器がリリースされ、旧バージョンの機器から新バージョンの機器に交換される際に)、コネクタの差し替えが行われる。コネクタが差し替えられた場合に、差し替え後の状態においても、端子間の接触抵抗が増加することなく低い状態に保たれることが求められる。
【0005】
そこで、本開示は、コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が増加することを抑制できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の接続システムは、オス端子と前記オス端子が収容されるオスハウジングとを備えるオスコネクタと、第1メス端子と前記第1メス端子が収容される第1メスハウジングとを備える第1メスコネクタと、第2メス端子と前記第2メス端子が収容される第2メスハウジングとを備える第2メスコネクタと、を備え、前記オスコネクタに前記第1メスコネクタが接続された状態において、前記第1メス端子が、前記オス端子における第1接触領域に接触し、前記オスコネクタに前記第2メスコネクタが接続された状態において、前記第2メス端子が、前記オス端子における、前記第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に接触する、接続システムである。
【0007】
本開示のコネクタは、メス端子と前記メス端子が収容されるメスハウジングとを備えるコネクタであって、前記メスハウジングが、オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記メスハウジングの接続位置を規制する規制面、を備え、前記規制面で前記接続位置が規制されることによって、前記オスハウジングに収容されるオス端子における前記メス端子が接触する領域が、前記規制面で前記接続位置が規制されない場合に前記メス端子が接触する領域からずれた位置となる、コネクタである。
【0008】
本開示の配線構造の製造方法は、オス端子と前記オス端子が収容されるオスハウジングとを備えるオスコネクタから、第1メス端子と前記第1メス端子が収容される第1メスハウジングとを備える第1メスコネクタを取り外す取り外し工程と、前記第1メスコネクタが取り外された前記オスコネクタに、第2メス端子と前記第2メス端子が収容される第2メスハウジングとを備える第2メスコネクタを接続して、前記オス端子における、前記第1メス端子が接触していた第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に、前記第2メス端子を接触させる接続工程と、を備える、配線構造の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コネクタが差し替えられた場合に端子間の接触抵抗が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は実施形態1に係る接続システムを示す斜視図である。
【
図3】
図3はオスコネクタに第1メスコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4はオスコネクタに第1メスコネクタが接続された状態を示す側断面図である。
【
図5】
図5はオスコネクタに第2メスコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6はオスコネクタに第2メスコネクタが接続された状態を示す側断面図である。
【
図7】
図7は実施形態2に係る接続システムを示す斜視図である。
【
図8】
図8はオスコネクタに第1メスコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9はオスコネクタに第2メスコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は変形例に係る接続システムを示す斜視図である。
【
図11】
図11は変形例に係る接続システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本開示の接続システムは、次の通りである。
【0013】
(1)オス端子と前記オス端子が収容されるオスハウジングとを備えるオスコネクタと、第1メス端子と前記第1メス端子が収容される第1メスハウジングとを備える第1メスコネクタと、第2メス端子と前記第2メス端子が収容される第2メスハウジングとを備える第2メスコネクタと、を備え、前記オスコネクタに前記第1メスコネクタが接続された状態において、前記第1メス端子が、前記オス端子における第1接触領域に接触し、前記オスコネクタに前記第2メスコネクタが接続された状態において、前記第2メス端子が、前記オス端子における、前記第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に接触する、接続システムである。
【0014】
オスコネクタと接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタから第2メスコネクタに差し替えられる際に、第1接触領域のメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子がメッキの剥がれていない領域でオス端子に接触できる可能性が高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0015】
(2)(1)の接続システムにおいて、前記第2接触領域の少なくとも一部が、前記第1接触領域よりも前記オス端子の基端側にあってもよい。この場合、オスコネクタと接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタから第2メスコネクタに差し替えられる際に、第1接触領域よりもオス端子の先端側の領域のメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子がメッキの剥がれていない領域でオス端子に接触できる可能性が高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が特に増加しにくい。
【0016】
(3)(1)または(2)の接続システムにおいて、前記第2接触領域が、前記第1接触領域と全体的に重ならない領域であってもよい。この場合、オスコネクタと接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタから第2メスコネクタに差し替えられる際に、第1接触領域のメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子がメッキの剥がれていない領域でオス端子に接触できる可能性が十分に高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が特に増加しにくい。
【0017】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの接続システムにおいて、前記第1メスハウジングが、前記オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記第1メスハウジングの接続位置を、前記オスハウジングに対する前記第2メスハウジングの接続位置からずれた位置に規制する規制面、を備えてもよい。この場合、簡易な構成で、第1接触領域と第2接触領域とをずらすことができる。
【0018】
(5)(4)の接続システムにおいて、前記第1メス端子と前記第2メス端子とが同じ形状であってもよい。この場合、第1メス端子と第2メス端子とを共通の部品で形成することができるので、接続システムの全体で使用する部品の種類を少なく抑えることができる。
【0019】
(6)(4)または(5)の接続システムにおいて、前記第1メスハウジングが、前記規制面を有する突起部を備えてもよい。この場合、第1メスハウジングの形状を複雑にすることなく、オスハウジングに対する第1メスハウジングの接続位置を規制することができる。
【0020】
(7)(4)から(6)のいずれか1つの接続システムにおいて、前記規制面が、前記オスハウジングにおける前記第1メスハウジングが差し込まれる側の端面と接触してもよい。この場合、オスハウジングの形状を複雑にすることなく、オスハウジングに対する第1メスハウジングの接続位置を規制することができる。
【0021】
(8)(6)または(7)の接続システムにおいて、前記オスハウジングが溝を備え、前記突起部が前記溝に収容されるとともに、前記規制面が前記溝の延在方向の端面と接触してもよい。溝の位置と突起部の位置が対応する場合に限ってオスハウジングと第1メスハウジングとの接続が許容されるので、接続間違いなどが生じにくい。
【0022】
(9)(1)から(3)のいずれか1つの接続システムにおいて、前記第1メスハウジングが、前記オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記第1メスハウジングの接続位置を第1位置に規制する第1規制面、を備え、前記第2メスハウジングが、前記オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記第2メスハウジングの接続位置を、前記第1位置からずれた第2位置に規制する第2規制面、を備えてもよい。この場合、第1接触領域および第2接触領域の各位置を独立して規定することができる。
【0023】
(10)(1)から(9)のいずれか1つの接続システムにおいて、前記オスハウジングの凹部に前記第1メスハウジングが差し込まれて、前記オスコネクタに前記第1メスコネクタが接続された状態において、前記凹部の奥の面とこれと対向する前記第1メスハウジングの端面との間に、隙間が設けられてもよい。このような隙間が設けられることで、隙間の大きさ分だけ、第1接触領域をオス端子の先端側にずらすことができる。
【0024】
(11)また、本開示のコネクタは、メス端子と前記メス端子が収容されるメスハウジングとを備えるコネクタであって、前記メスハウジングが、オスハウジングと接触して、前記オスハウジングに対する前記メスハウジングの接続位置を規制する規制面、を備え、前記規制面で前記接続位置が規制されることによって、前記オスハウジングに収容されるオス端子における前記メス端子が接触する領域が、前記規制面で前記接続位置が規制されない場合に前記メス端子が接触する領域からずれた位置となる、コネクタである。
【0025】
オスコネクタと接続されるコネクタが、例えば、規制面で接続位置が規制されるコネクタから、規制面で接続位置が規制されることがないコネクタに差し替えられる際に、差し替え前のコネクタのメス端子が接触していた領域のメッキが剥がれていたとしても、差し替え後のコネクタのメス端子がメッキの剥がれていない領域でオス端子に接触できる可能性が高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0026】
(12)また、本開示の配線構造の製造方法は、オス端子と前記オス端子が収容されるオスハウジングとを備えるオスコネクタから、第1メス端子と前記第1メス端子が収容される第1メスハウジングとを備える第1メスコネクタを取り外す取り外し工程と、前記第1メスコネクタが取り外された前記オスコネクタに、第2メス端子と前記第2メス端子が収容される第2メスハウジングとを備える第2メスコネクタを接続して、前記オス端子における、前記第1メス端子が接触していた第1接触領域からずれた位置にある第2接触領域に、前記第2メス端子を接触させる接続工程と、を備える、配線構造の製造方法である。
【0027】
オスコネクタに第2メスコネクタが接続される際に、第1接触領域のメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子がメッキの剥がれていない領域でオス端子に接触できる可能性が高まる。したがって、コネクタが差し替えられて製造される配線構造において、端子間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の接続システム、コネクタ、および、配線構造の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
[実施形態1]
<1.接続システムの構成>
実施形態1に係る接続システム100の構成について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
図1は、接続システム100を模式的に示す斜視図である。
図2は、接続システム100を模式的に示す側断面である。
【0030】
接続システム100は、各種の機器間を電気的に接続するシステムであり、オスコネクタ101と、第1メスコネクタ102aと、第2メスコネクタ102bとを備える。以下において、第1メスコネクタ102aと第2メスコネクタ102bとを区別しない場合は、単に「メスコネクタ102」と呼ぶ。
【0031】
(i)基本構成
オスコネクタ101は、電線10の端部に設けられた端子(オス端子)20と、オス端子20が収容されるコネクタハウジング(オスハウジング)30とを備える。メスコネクタ102は、電線10の端部に設けられた端子(メス端子)40と、メス端子40が収容されるコネクタハウジング(メスハウジング)50とを備える。電線10およびその端部に設けられた端子20,40が、端子付電線と呼ばれることもある。また、端子付電線およびその端子20,40が収容されるコネクタハウジング30,50が、コネクタ付電線、ワイヤーハーネス、などと呼ばれることもある。
【0032】
(電線)
電線10は、例えば絶縁電線であり、芯線11とその周囲を囲む絶縁被覆12とを含んで構成される。芯線11は、導電性の部材(導体)であり、各種の導電性材料(例えば、銅、銅合金、アルミニウム、あるいは、アルミニウム合金、など)で形成される。絶縁被覆12は、非導電性の柔軟な被覆であり、各種の合成樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、あるいは、架橋ポリエチレン(XLPE)、など)で形成される。
【0033】
(端子)
オス端子(オス端子金具)20およびメス端子(メス端子金具)40は、いずれも、導電性部材であり、基体部と、これを覆うメッキ(メッキ層)とを含んで構成される。基体部は、例えば、銅、黄銅、銅合金、などにより形成される。メッキは、例えば、錫(Sn)、錫合金(例えば、錫に、銀、銅、ビスマス、などが添加された錫合金)、貴金属(例えば、金、銀)、などにより形成される。メッキが設けられることによって、端子間の接触抵抗の増大が抑制される。すなわち、メッキが設けられることによって、例えば、基体部の表面に酸化皮膜などが形成されにくくなるため、皮膜抵抗(ひいては、接触抵抗)の増大が抑制される。
【0034】
オス端子20の一端側(基端側)には、被覆接続部21と芯線接続部22とが設けられる。同様に、メス端子40の一端側(基端側)にも、被覆接続部41と芯線接続部42とが設けられる。被覆接続部21,41は、絶縁被覆12の端部に機械的に接続される。被覆接続部21,41と絶縁被覆12との間の接続は、適宜の方法(例えば、圧着など)によって実現される。また、絶縁被覆12の端部からは、一定の長さ分だけ芯線11が延び出た状態(つまり、一定の長さ分だけ芯線11の周囲から絶縁被覆12が剥がされて芯線11が露出した状態)とされており、芯線接続部22,42は、この延び出た芯線11に機械的および電気的に接続される。芯線接続部22,42と芯線11との間の接続は、適宜の方法(例えば、圧着、超音波溶接、抵抗溶接、半田付け、など)によって実現される。
【0035】
オス端子20の他端側(先端側)には、相手方の端子と電気的に接続される接点部23が設けられる。オス端子20の接点部23は、細長い形状(例えば、棒状、タブ状、ピン状、など)である。同様に、メス端子40の他端側(先端側)にも、相手方の端子と電気的に接続される接点部43が設けられる。メス端子40の接点部43は、例えば、筒型形状の筒部分431と、その内部に形成されたバネ構造を有するバネ片432とを備える。バネ片432の下面には、例えば凸部433が設けられる。
【0036】
(オスハウジング)
オスハウジング30は、樹脂などの絶縁材料で形成された筐体であり、例えば、金型成形によって形成される。オスハウジング30は、例えば、直方体状の外形を備え、一方の端面(被差し込み面)301に凹部31が設けられる。また、オスハウジング30には、他方の端面(背面)302から凹部31の奥の面303に貫通する端子収容室(キャビティ)32が、1以上(図の例では6つ)、設けられる。各端子収容室32には、オス端子20が個別に収容される。オス端子20は、例えば、背面302から端子収容室32に挿入され、被覆接続部21および芯線接続部22が端子収容室32に収容されるとともに接点部23が凹部31内に延出した状態で、端子収容室32に対して固定(例えば係止によって固定)される。背面302から延出した各電線10は、粘着テープ、結束バンド、などによって形成される結束具13で結束されてもよい。
【0037】
(メスハウジング)
メスハウジング50は、オスハウジング30と同様、樹脂などの絶縁材料で形成された筐体であり、例えば、金型成形によって形成される。メスハウジング50は、例えば、直方体状の外形を備え、一方の端面(差し込み面)501から他方の端面(背面)502に貫通する端子収容室(キャビティ)51が、1以上(図の例では6つ)、設けられる。各端子収容室51には、メス端子40が個別に収容される。メス端子40は、例えば、背面502から端子収容室51に挿入され、全体が端子収容室51に収容された状態で、端子収容室51に対して固定(例えば係止によって固定)される。背面502から延出した各電線10は、粘着テープ、結束バンド、などによって形成される結束具13で結束されてもよい。
【0038】
(ii)第1メスコネクタおよび第2メスコネクタ
上記のとおり、接続システム100は、2つのメスコネクタ102(すなわち、第1メスコネクタ102aおよび第2メスコネクタ102b)を備える。第1メスコネクタ102aと第2メスコネクタ102bとは、突起部52の有無において相違する。すなわち、第1メスコネクタ102aのメスハウジング50(以下「第1メスハウジング50a」とも呼ぶ)における、差し込み面501と交差する面(側面)503には、突起部52が設けられる。一方、第2メスコネクタ102bのメスハウジング50(以下「第2メスハウジング50b」とも呼ぶ)の側面503には、突起部52は設けられない。
【0039】
第1メスコネクタ102aと第2メスコネクタ102bとは、突起部52の有無を除いて、同じである。すなわち、第1メスコネクタ102aのメス端子40(以下「第1メス端子40a」とも呼ぶ)と、第2メスコネクタ102bのメス端子40(以下「第2メス端子40b」とも呼ぶ)とは、同じ形状である。また、第1メスハウジング50aと第2メスハウジング50bとは、突起部52の有無を除いて、同じ形状である。さらに、第1メスハウジング50aに対する第1メス端子40aの位置(収容位置)と、第2メスハウジング50bに対する第2メス端子40bの位置とは、互いに同じである。
【0040】
<2.コネクタの接続>
(第1メスコネクタ102aの接続)
オスコネクタ101と第1メスコネクタ102aとの接続について、
図3、
図4を参照しながら説明する。
図3は、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態を模式的に示す斜視図である。
図4は、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態を模式的に示す側断面図である。
【0041】
オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aを接続するにあたっては、まず、オスハウジング30の被差し込み面301と、第1メスハウジング50aの差し込み面501とが対向するように配置される。そして、第1メスハウジング50aがオスハウジング30に近づくように相対移動されて、第1メスハウジング50aが、オスハウジング30の被差し込み面301の側から、凹部31内に差し込まれる(押し込まれる)。第1メスハウジング50aが凹部31内に第1差し込み量Daだけ差し込まれた段階で、突起部52(具体的には、突起部52における差し込み面501の側にある側面(規制面)521)が、オスハウジング30の被差し込み面301に当接(接触)し、第1メスハウジング50aはそれ以上深く差し込まれない。この段階で、オスコネクタ101と第1メスコネクタ102aとの接続が完了する。
【0042】
オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態において、オスハウジング30の凹部31の奥の面303と、これと対向する第1メスハウジング50aの差し込み面501とは、未だ当接しておらず、2つの面303,501の間には隙間Gが設けられている。また、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態において、第1メス端子40aは、オス端子20の第1接触領域Qaに接触する。具体的には、第1メス端子40aのバネ片432が下方に弾性付勢されることによって、バネ片432の下面に設けられている凸部433の突出側の端部が、接点部23の第1接触領域Qaに接触する。これによって、オス端子20と第1メス端子40aとが電気的に接続される。
【0043】
(第2メスコネクタ102bの接続)
次に、オスコネクタ101と第2メスコネクタ102bとの接続について、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図5は、オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bが接続された状態を模式的に示す斜視図である。
図6は、オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bが接続された状態を模式的に示す側断面図である。
【0044】
オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bを接続するにあたっては、まず、オスハウジング30の被差し込み面301と、第2メスハウジング50bの差し込み面501とが対向するように配置される。そして、第2メスハウジング50bがオスハウジング30に近づくように相対移動されて、第2メスハウジング50bが、オスハウジング30の被差し込み面301の側から、凹部31内に差し込まれる。第2メスハウジング50bには突起部52が設けられていないので、第2メスハウジング50bは、凹部31内に、第1差し込み量Daを超えて(より深く)、差し込まれる。第2メスハウジング50bが凹部31内に第2差し込み量Db(すなわち、第1差し込み量Daよりも大きな第2差し込み量Db)だけ差し込まれた段階で、差し込み面501が凹部31の奥の面303に当接(接触)し、第2メスハウジング50bはそれ以上深く差し込まれない。この段階で、オスコネクタ101と第2メスコネクタ102bとの接続が完了する。
【0045】
オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bが接続された状態において、第2メス端子40bは、オス端子20の第2接触領域Qbに接触する。具体的には、第2メス端子40bのバネ片432が下方に弾性付勢されることによって、バネ片432の下面に設けられている凸部433の突出側の端部が、接点部23の第2接触領域Qbに接触する。これによって、オス端子20と第2メス端子40bとが電気的に接続される。ただし、第2接触領域Qbは、第1接触領域Qaからずれた位置となる。すなわち、上記のとおり、ここでは、第1メスハウジング50aに設けられた規制面521が差し込み面301に接触することによって、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置が、オスハウジング30に対する第2メスハウジング50bの接続位置からずれた位置(具体的には、相対的に差し込み量が小さい(浅い)位置)に規制される。このため、第2接触領域Qbは、第1接触領域Qaからずれた位置となる。具体的には、第2接触領域Qbは、その少なくとも一部が、第1接触領域Qaよりもオス端子20の基端側(接点部23における芯線接続部22に連なる端部の側)にある。
【0046】
<3.コネクタの差し替え>
次に、接続システム100の使用の態様について説明する。接続システム100は、例えば、自動車などの車両において、車両に搭載される機器(車載側の機器)と車体側の機器との接続に用いられる。この場合、例えば、車体側の機器のコネクタ(すなわち、車体側の機器から延びる電線10の端部に設けられるコネクタ)として、オスコネクタ101が用いられ、車載側の機器のコネクタ(すなわち、車載側の機器から延びる電線10の端部に設けられるコネクタ)として、メスコネクタ102が用いられる。
【0047】
車載側の機器は、交換されることがある。例えば、車両購入後の機器機能追加などに伴って新バージョンの機器がリリースされた場合、車両の出荷時から組み付けられている機器(旧バージョンの機器)が、新バージョンの機器に交換される。また例えば、メンテナンスの際に、古い機器が新しい機器に交換されることもある。ここでは、例えば、交換前の機器のコネクタとして、第1メスコネクタ102aが用いられ、交換後の機器のコネクタとして、第2メスコネクタ102bが用いられる。つまり、将来的に新たな機器と交換されることが想定される機器のコネクタとして第1メスコネクタ102aが用いられ、既存の機器と交換される新たな機器のコネクタとして、第2メスコネクタ102bが用いられる。
【0048】
例えば、車両の出荷時などでは、交換前の機器が車両に組み付けられている。この状態においては、第1メスコネクタ102aがオスコネクタ101と接続されることで、交換前の機器と車体側の機器とが電気的に接続されている。つまり、第1メスコネクタ102aとこれに接続されたオスコネクタ101とを含む配線構造が形成されている(
図3、
図4)。その後、新バージョンの機器がリリースされるなどした場合、車載側の機器が、新たな機器に交換される。このとき、オスコネクタ101に接続されるコネクタが、第1メスコネクタ102aから第2メスコネクタ102bに差し替えられる。具体的には、まず、オスコネクタ101から第1メスコネクタ102aが取り外される(取り外し工程)。そして、第1メスコネクタ102aが取り外されたオスコネクタ101に、第2メスコネクタ102bが接続される(接続工程)。これにより、交換後の機器と車体側の機器とが電気的に接続される。つまり、第2メスコネクタ102bとこれに接続されたオスコネクタ101とを含む配線構造(機器交換後の配線構造)が形成される(
図5、
図6)。
【0049】
上記のとおり、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続されている状態において、第1メス端子40aは、オス端子20の第1接触領域Qaに接触している(
図4)。オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続されたままで比較的長い時間(例えば数年程度)が経過すると、オス端子20と第1メス端子40aとが固着することがある。オスコネクタ101から第1メスコネクタ102aが取り外される際に、固着している端子20,40a同士が無理に引き剥がされると、第1接触領域Qaのメッキが剥がれてしまう可能性がある。また、オスコネクタ101から第1メスコネクタ102aが取り外される際には、第1メス端子40aのバネ片432がオス端子20に弾性付勢されつつオス端子20の先端側に移動する。このため、第1接触領域Qaおよびこれよりも先端側の領域が、摩擦(凝着摩擦力、掘り起こし摩擦力)を受け、該領域のメッキが剥がれる(摩耗により消失する)可能性もある。また、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続されている間、車両走行時の振動、外部からの衝撃、温度変化に伴う熱伸縮、などに起因して、第1メス端子40aがオス端子20に対して微小な摺動を繰り返すことで、第1接触領域Qaのメッキが剥がれる(摩耗により消失する)可能性もある。
【0050】
オスコネクタ101から第1メスコネクタ102aが取り外された状態において、第1接触領域Qaのメッキが剥がれている場合、該オスコネクタ101に新たなコネクタが接続されたときに(すなわち、アップデート後の配線構造において)、該新たなコネクタの端子が、オス端子20におけるメッキが剥がれている領域に接触すると、端子間の接触抵抗が増加するおそれがある。すなわち、たとえ新たなコネクタの端子の側にメッキ剥がれが生じていなくとも、オス端子20の側でメッキ剥がれが生じていると、例えば、その箇所に酸化皮膜などが形成されて、端子間の接触抵抗が増加するおそれがある。
【0051】
第1メスコネクタ102aが取り外された後のオスコネクタ101に接続される新たなコネクタが第2メスコネクタ102bであれば、このような事態は生じにくい。すなわち、オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bが接続される場合、第2メス端子40bは、オス端子20における、第1接触領域Qaからずれた位置にある第2接触領域Qbに接触する(
図6)。このため、第1接触領域Qaのメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子40bはメッキの剥がれていない領域でオス端子20に接触できる可能性が高い。特に、第2接触領域Qbが、その少なくとも一部が、第1接触領域Qaよりもオス端子20の基端側にあれば、第1接触領域Qaよりも先端側の領域のメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子40bはメッキの剥がれていない領域でオス端子20に接触できる可能性が高い。第2メス端子40bが、メッキの剥がれていない領域でオス端子20に接触することで、端子20,40b間の接触抵抗が増加することが回避される。
【0052】
<4.効果等>
以上のように構成された接続システム100は、オスコネクタ101と、第1メスコネクタ102aと、第2メスコネクタ102bとを備え、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態において、第1メス端子40aが、オス端子20における第1接触領域Qaに接触し、オスコネクタ101に第2メスコネクタ102bが接続された状態において、第2メス端子40bが、オス端子20における、第1接触領域Qaからずれた位置にある第2接触領域Qbに接触する。したがって、オスコネクタ101と接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタ102aから第2メスコネクタ102bに差し替えられる際に、第1接触領域Qaのメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子40bがメッキの剥がれていない領域でオス端子20に接触できる可能性が高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子20,40b間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0053】
また、接続システム100においては、第2接触領域Qbの少なくとも一部が、第1接触領域Qaよりもオス端子20の基端側にある。この場合、オスコネクタ101と接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタ102aから第2メスコネクタ102bに差し替えられる際に、第1接触領域Qaよりもオス端子20の先端側の領域のメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子40bがメッキの剥がれていない領域でオス端子20に接触できる可能性が高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子20,40b間の接触抵抗が特に増加しにくい。
【0054】
また、接続システム100において、第2接触領域Qbは、第1接触領域Qaと全体的に重ならない領域であってもよいし、第1接触領域Qaと部分的に重ならない領域(すなわち、一部分において第1接触領域Qaと重なりつつ、残りの部分において第1接触領域Qaと重ならない領域)であってもよい。もっとも、第2接触領域Qbが、第1接触領域Qaと全体的に重ならない領域であれば、オスコネクタ101と接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタ102aから第2メスコネクタ102bに差し替えられる際に、第1接触領域Qaのメッキが剥がれていたとしても、第2メス端子40bがメッキの剥がれていない領域でオス端子20に接触できる可能性が十分に高まる。したがって、コネクタが差し替えられた場合に、端子20,40b間の接触抵抗が特に増加しにくい。
【0055】
また、接続システム100は、第1メスハウジング50aが、オスハウジング30と接触して、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置を、オスハウジング30に対する第2メスハウジング50bの接続位置からずれた位置に規制する規制面521を備える。この場合、簡易な構成で、第1接触領域Qaと第2接触領域Qbとをずらすことができる。また、第1接触領域Qaと第2接触領域Qbとのずれ量を、規制面521の位置によって容易に調整することができる。
【0056】
また、接続システム100は、第1メス端子40aと第2メス端子40bとが同じ形状である。この場合、第1メス端子40aと第2メス端子40bとを共通の部品で形成することができるので、接続システム100の全体で使用する部品の種類を少なく抑えることができる。これによって、接続システム100の製造工程が効率化されるとともに、接続システム100の製造コストが低減される。
【0057】
また、接続システム100は、第1メスハウジング50aが、規制面521を有する突起部52を備える。この場合、第1メスハウジング50aの形状を複雑にすることなく、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置を規制することができる。また、この場合、突起部52の有無を除いて、第1メスハウジング50aと第2メスハウジング50bとを同じ形状とすることができる。形状の大部分が共通化されることで、一方のメスハウジング50aの設計の大部分を他方のメスハウジング50bの設計に流用することができる。これによって、接続システム100の製造工程が効率化されるとともに、接続システム100の製造コストが低減される。
【0058】
また、接続システム100においては、規制面521が、オスハウジング30における第1メスハウジング50aが差し込まれる側の端面(差し込み面)501と接触する。この場合、オスハウジング30の形状を複雑にすることなく、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置を規制することができる。
【0059】
また、接続システム100においては、オスハウジング30の凹部31に第1メスハウジング50aが差し込まれて、オスコネクタ101に第1メスコネクタ102aが接続された状態において、凹部31の奥の面303とこれと対向する第1メスハウジング50aの端面(差し込み面)501との間に、隙間Gが設けられる。このような隙間Gが設けられることで、隙間Gの大きさ分だけ、第1接触領域Qaをオス端子20の先端側にずらすことができる。
【0060】
また、第1メスコネクタ102aに着目すると、第1メスコネクタ102aは、これが備える第1メスハウジング50aが、オスハウジング30と接触して、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置を規制する規制面521、を備え、規制面521で接続位置が規制されることによって、オスハウジング30に収容されるオス端子20における第1メス端子40aが接触する領域(第1領域)Qaが、規制面521で接続位置が規制されない場合に第1メス端子40aが接触する領域(第2領域)Qbからずれた位置となる。したがって、オスコネクタ101と接続されるコネクタが、例えば、規制面521で接続位置が規制される第1メスコネクタ102aから、規制面521で接続位置が規制されることがないコネクタ(例えば、第2メスコネクタ102b)に差し替えられた場合に、端子20,40b間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0061】
また、接続システム100を用いて配線構造を製造する方法は、オスコネクタ101から第1メスコネクタ102aを取り外す取り外し工程と、第1メスコネクタ102aが取り外されたオスコネクタ101に第2メスコネクタ102bを接続して、オス端子20における、第1メス端子40aが接触していた第1接触領域Qaからずれた位置にある第2接触領域Qbに、第2メス端子40bを接触させる接続工程とを備える。したがって、コネクタが差し替えられて製造される配線構造(例えば、アップデート後の配線構造)において、端子20,40b間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0062】
[実施形態2]
<1.接続システムの構成>
実施形態2に係る接続システム200の構成について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、接続システム200を模式的に示す斜視図である。以下においては、実施形態1において説明した要素については、同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0063】
接続システム200は、各種の機器間を電気的に接続するシステムであり、オスコネクタ201と、第1メスコネクタ202aと、第2メスコネクタ202bとを備える。
【0064】
オスコネクタ201は、電線10の端部に設けられたオス端子20と、オス端子20が収容されるオスハウジング30とを備える。オスハウジング30の凹部31の内壁面には、被差し込み面301から凹部31の奥に向かって延在する溝33が設けられる。
【0065】
第1メスコネクタ202aは、電線10の端部に設けられた第1メス端子40aと、第1メス端子40aが収容される第1メスハウジング50aとを備える。第1メスハウジング50aの側面503には、溝33と対応する位置に、背面502から差し込み面501に向かって延在するリブ状の突起部(第1突起部)53aが設けられる。一方、第2メスコネクタ202bは、電線10の端部に設けられた第2メス端子40bと、第2メス端子40bが収容される第2メスハウジング50bとを備える。第2メスハウジング50bの側面503には、溝33と対応する位置に、背面502から差し込み面501に向かって延在するリブ状の突起部(第2突起部)53bが設けられる。
【0066】
第1メスコネクタ202aと第2メスコネクタ202bとは、突起部53a,53bの長さにおいて相違する。例えば、第2突起部53bは、延在方向について第1突起部53aよりも短い。つまり、第2メスハウジング50bの差し込み面501から第2突起部53bの延在方向の先端面(差し込み面501側の端面)531bまでの離間距離Lbは、第1メスハウジング50aの差し込み面501から第1突起部53aの延在方向の先端面531aまでの離間距離Laよりも大きい。
【0067】
第1メスコネクタ202aと第2メスコネクタ202bとは、突起部53a,53bの長さ(つまりは、先端面531a,531bの位置)を除いて、同じである。すなわち、第1メス端子40aと第2メス端子40bとは同じ形状である。また、第1メスハウジング50aと第2メスハウジング50bとは、突起部53a,53bを除いて、同じ形状である。さらに、第1メスハウジング50aに対する第1メス端子40aの位置と、第2メスハウジング50bに対する第2メス端子40bの位置とは、互いに同じである。
【0068】
<2.コネクタの接続>
(第1メスコネクタ202aの接続)
オスコネクタ201と第1メスコネクタ202aとの接続について、
図8、
図4を参照しながら説明する。
図8は、オスコネクタ201に第1メスコネクタ202aが接続された状態を模式的に示す斜視図である。
図4は、オスコネクタ201に第1メスコネクタ202aが接続された状態を模式的に示す側断面図である。
【0069】
オスコネクタ201に第1メスコネクタ202aを接続するにあたっては、まず、オスハウジング30の被差し込み面301と、第1メスハウジング50aの差し込み面501とが対向するように配置される。そして、第1メスハウジング50aがオスハウジング30に近づくように相対移動されて、第1メスハウジング50aが、オスハウジング30の被差し込み面301の側から、凹部31内に差し込まれる。この際に、第1メスハウジング50aの側面503に設けられた第1突起部53aの延在方向の一端側が、凹部31の内壁面に設けられた溝33内に収容されつつ、その延在方向に移動する。第1メスハウジング50aが凹部31内に第1差し込み量Daだけ差し込まれた段階で、第1突起部53aの延在方向の先端面(第1規制面)531aが、溝33の延在方向の端面(溝33の奥側の面)331に当接(接触)し、第1メスハウジング50aはそれ以上深く差し込まれない。この段階で、オスコネクタ201と第1メスコネクタ202aとの接続が完了する。
【0070】
オスコネクタ201に第1メスコネクタ202aが接続された状態において、オスハウジング30の凹部31の奥の面303と、これと対向する第1メスハウジング50aの差し込み面501とは、未だ当接しておらず、2つの面303,501の間には隙間Gが設けられている。また、オスコネクタ101に第1メスコネクタ202aが接続された状態において、第1メス端子40aは、オス端子20の第1接触領域Qaに接触する。これによって、オス端子20と第1メス端子40aとが電気的に接続される。
【0071】
(第2メスコネクタ202bの接続)
オスコネクタ201と第2メスコネクタ202bとの接続について、
図9、
図6を参照しながら説明する。
図9は、オスコネクタ201に第2メスコネクタ202bが接続された状態を模式的に示す斜視図である。
図6は、オスコネクタ201に第2メスコネクタ202bが接続された状態を模式的に示す側断面図である。
【0072】
オスコネクタ201に第2メスコネクタ202bを接続するにあたっては、まず、オスハウジング30の被差し込み面301と、第2メスハウジング50bの差し込み面501とが対向するように配置される。そして、第2メスハウジング50bがオスハウジング30に近づくように相対移動されて、第2メスハウジング50bが、オスハウジング30の被差し込み面301の側から、凹部31内に差し込まれる。この際に、第2メスハウジング50bの側面503に設けられた第2突起部53bの延在方向の一端側が、凹部31の内壁面に設けられた溝33内に収容されつつ、その延在方向に移動する。第2メスハウジング50bが凹部31内に第2差し込み量Dbだけ差し込まれた段階で、第2突起部53bの延在方向の先端面(第2規制面)531bが、溝33の延在方向の端面(溝33の奥側の面)331に当接(接触)し、第2メスハウジング50bはそれ以上深く差し込まれない。この段階で、オスコネクタ201と第1メスコネクタ202aとの接続が完了する。なお、この状態において、オスハウジング30の凹部31の奥の面303と、これと対向する第2メスハウジング50bの差し込み面501とは、当接していてもよいし、当接していなくともよい。
【0073】
オスコネクタ201に第2メスコネクタ202bが接続された状態において、第2メス端子40bは、オス端子20の第2接触領域Qbに接触する。これによって、オス端子20と第2メス端子40bとが電気的に接続される。ただし、第2接触領域Qbは、第1接触領域Qaからずれた位置となる。すなわち、上記のとおり、ここでは、第1メスハウジング50aに設けられた第1規制面531aが、オスハウジング30に設けられた溝33の端面331に接触することによって、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置が第1位置P1に規制される(
図8)。また、第2メスハウジング50bに設けられた第2規制面531bが、オスハウジング30に設けられた溝33の端面331に接触することによって、オスハウジング30に対する第2メスハウジング50bの接続位置が第2位置P2に規制される(
図9)。差し込み面501から第1規制面531aまでの離間距離Laが、差し込み面501から第2規制面531bまでの離間距離Lbよりも小さいため、第1位置P1は第2位置P2からずれた位置(具体的には、相対的に差し込み量が小さい(浅い)位置)となる。このため、第2接触領域Qbは、第1接触領域Qaからずれた位置となる。具体的には、第2接触領域Qbは、その少なくとも一部が、第1接触領域Qaよりもオス端子20の基端側にある。
【0074】
<3.効果等>
以上のように構成された接続システム200でも、実施形態1に係る接続システム100と同様、オスコネクタ201と接続されるコネクタが、例えば、第1メスコネクタ202aから第2メスコネクタ202bに差し替えられた場合に、端子20,40b間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0075】
また、接続システム200においては、オスハウジング30が溝33を備え、第1突起部53aが溝33に収容されるとともに、第1規制面531aが溝33の延在方向の端面331と接触する。溝33の位置と第1突起部53aの位置が対応する場合に限ってオスハウジング30と第1メスハウジング50aとの接続が許容されるので、接続間違いなどが生じにくい。
【0076】
また、接続システム200では、第1メスハウジング50aが、オスハウジング30と接触して、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置を第1位置P1に規制する第1規制面531aを備え、第2メスハウジング50bが、オスハウジング30と接触して、オスハウジング30に対する第2メスハウジング50bの接続位置を、第1位置P1からずれた第2位置P2に規制する第2規制面531bを備える。この場合、第1接触領域Qaおよび第2接触領域Qbの各位置を独立して規定することができる。
【0077】
[変形例]
上記の各実施形態1,2に係る接続システム100,200において、第1接触領域Qaと第2接触領域Qbとを互いにずれた位置とする態様は、上記に例示されたものに限られない。
【0078】
例えば、実施形態1に係る接続システム100では、第1メスハウジング50aの側面503に突起部52が設けられていたが、
図10に例示される接続システム300のように、第1メスハウジング50aの差し込み面501に突起部54が設けられてもよい。この場合、第1メスハウジング50aが凹部31内に第1差し込み量Daだけ差し込まれた段階で、突起部54(具体的には、突起部54における突出側の端面(規制面)541)が、オスハウジング30の凹部31の奥の面303に当接し、第1メスハウジング50aはそれ以上深く差し込まれない。この段階で、オスコネクタ101と第1メスコネクタ102aとの接続が完了する。つまり、この場合は、規制面541が凹部31の奥の面303と接触することによって、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置が規制されることになる。
【0079】
また、実施形態2に係る接続システム200において、オスハウジング30に2つの溝が設けられてもよい。そして、第1メスハウジング50aの第1突起部53aが、一方の溝に対応する位置に設けられ、第2メスハウジング50bの第2突起部53bが、他方の溝に対応する位置に設けられてもよい。この場合、各突起部53a,53bの長さ(つまりは、各規制面531a,531bの位置)と、2つの溝の長さ(つまりは、各溝の端面の位置)とのうちの少なくとも一方が、互いに異なるものとされることによって、オスハウジング30に対する第1メスハウジング50aの接続位置と、オスハウジング30に対する第2メスハウジング50bの接続位置とが、互いにずれた位置となる。ひいては、第1接触領域Qaと第2接触領域Qbとが、互いにずれた位置となる。
【0080】
また、実施形態2に係る接続システム200においては、各メスハウジング50a,50bに凸構造(リブ状の突起部53a,53b)が、オスハウジング30に凹構造(溝33)が、それぞれ設けられるものとしたが、各メスハウジング50a,50bに凹構造が、オスハウジング30に凸構造が、それぞれ設けられてもよい。すなわち、各メスハウジング50a,50bの側面503に設けられた凹構造(例えば溝)内に、オスハウジング30の凹部31の内壁面に設けられた凸構造(例えばリブ状の突起部)が収容され、これらの端面同士が接触することによって、接続位置が規制されてもよい。
【0081】
また、
図11に例示される接続システム400のように、第1メスハウジング50aに対する第1メス端子40aの位置(収容位置)と、第2メスハウジング50bに対する第2メス端子40bの位置とが互いに異なるものとされることによって、第1接触領域Qaと第2接触領域Qbとが互いにずれた位置とされてもよい。具体的には例えば、第2メスハウジング50bに対する第2メス端子40bの先端位置が、第1メスハウジング50aに対する第1メス端子40aの先端位置よりも、差し込み面501に近い位置とされてもよい。この場合、第2接触領域Qbが、第1接触領域Qaよりもオス端子20の基端側にずれた位置となる。
【0082】
また例えば、第1メス端子40aと第2メス端子40bの形状が互いに異なるものとされることで、第1接触領域Qaと第2接触領域Qbとが互いにずれた位置とされてもよい。具体的には例えば、第1メス端子40aの接点部43の延在方向の長さが、第2メス端子40bの接点部43の延在方向の長さよりも短くされてもよい。あるいは、第1メス端子40aにおけるバネ片432に対する凸部433の形成位置が、第2メス端子40bにおけるバネ片432に対する凸部433の形成位置よりも、接点部43の基端側にずれた位置とされてもよい。いずれの態様によっても、第2接触領域Qbが、第1接触領域Qaよりもオス端子20の基端側にずれた位置となる。
【0083】
上記の各実施形態1,2に係る接続システム100,200において、第2接触領域Qbは、第1接触領域Qaに対していずれの方向にずれた位置にあってもよい。例えば、第2接触領域Qbは、その少なくとも一部が、第1接触領域Qaよりもオス端子20の先端側にあってもよい。
【0084】
上記の各実施形態1,2に係る接続システム100,200において、オスコネクタ101と最初に接続されるコネクタは、第1メスコネクタ102a,202aであってもよいし、第2メスコネクタ102b,202bであってもよい。すなわち、オスコネクタ101に接続されるコネクタが、第1メスコネクタ102a,202aから第2メスコネクタ102b,202bに差し替えられてもよいし、第2メスコネクタ102b,202bから第1メスコネクタ102a,202aに差し替えられてもよい。いずれの場合であっても、コネクタが差し替えられた場合に、端子間の接触抵抗が増加することが抑制される。
【0085】
上記の各実施形態1,2に係る接続システム100,200は、車両に搭載される機器間の接続に用いられてもよいし、それ以外の各種の機器間の接続に用いられてもよい。
【0086】
なお、上記の各実施形態1,2および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 電線
11 芯線
12 絶縁被覆
13 結束具
20 オス端子
21 被覆接続部
22 芯線接続部
23 接点部
Qa 第1接触領域
Qb 第2接触領域
30 オスハウジング
31 凹部
32 端子収容室
33 溝
301 被差し込み面
302 背面
303 凹部の奥の面
331 溝の端面
40a 第1メス端子
40b 第2メス端子
41 被覆接続部
42 芯線接続部
43 接点部
431 筒部分
432 バネ片
433 凸部
50a 第1メスハウジング
50b 第2メスハウジング
51 端子収容室
52,54 突起部
53a 第1突起部
53b 第2突起部
501 差し込み面
502 背面
503 側面
521,541,531a,531b 規制面
101,201 オスコネクタ
102a,202a 第1メスコネクタ
102b,202b 第2メスコネクタ
100,200,300,400 接続システム
Da 第1差し込み量
Db 第2差し込み量
G 隙間
P1 第1位置
P2 第2位置