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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172235
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
F16K1/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089815
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今枝 博秀
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA02
3H052CA33
3H052CD02
(57)【要約】
【課題】弁体の環状弁座に対する片当たりが発生することを防止可能な流体制御弁を提供すること。
【解決手段】金属製の環状弁座317と、環状弁座317に対して当接離間をする樹脂製の弁体34と、弁体34の環状弁座317とは反対側で当接離間の方向に沿って延在し、かつ、弁体34を保持する駆動ロッド24と、駆動ロッド24を当接離間の方向に沿って駆動することで、当接離間を行うための駆動部2と、を備える流体制御弁1において、弁体34は、環状弁座317に当接する当接面341の反対側の端面が、駆動ロッド24の側に膨出する凸球面342であること、駆動ロッド24は、凸球面342に対向して、凸球面342とはめ合い可能であるとともに駆動ロッド24の軸心上に中心C11を有する凹球面333を備えること、弁体34を、当接離間の方向および当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持していること。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の環状弁座と、
前記環状弁座に対して当接離間をする樹脂製の弁体と、
前記弁体の前記環状弁座とは反対側で前記当接離間の方向に沿って延在し、かつ、前記弁体を保持する駆動ロッドと、
前記駆動ロッドを前記当接離間の方向に沿って駆動することで、前記当接離間を行うための駆動部と、
を備える流体制御弁において、
前記弁体は、
前記環状弁座に当接する当接面の反対側の端面が、前記駆動ロッドの側に膨出する凸球面であること、
前記駆動ロッドは、
前記凸球面に対向して、前記凸球面とはめ合い可能であるとともに前記駆動ロッドの軸心上に中心を有する凹球面を備えること、
前記弁体を、前記当接離間の方向および前記当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持していること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御弁において、
前記凸球面と前記凹球面は、半径が略同一であること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体制御弁において、
前記当接面上に、前記凸球面の中心が位置すること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項4】
請求項1または2に記載の流体制御弁において、
前記当接面は、前記当接離間の方向に垂直な平面であること、
前記環状弁座の、前記当接面に当接する第2当接面は、前記当接面と平行な平面であること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項5】
請求項1または2に記載の流体制御弁において、
前記凸球面と前記凹球面とは、前記環状弁座の前記当接面に当接する第2当接面の直径よりも広い範囲で対向していること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項6】
請求項1または2に記載の流体制御弁において、
前記駆動ロッドは 前記当接離間の方向において、前記駆動部から延伸する第1ロッドと、前記弁体の側の第2ロッドと、に分割されていること、
前記第2ロッドの前記第1ロッド側の端部は、第1ロッドに対して連結されない自由端であること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項7】
請求項1または2に記載の流体制御弁において、
前記駆動ロッドの当接離間の方向に沿った駆動をガイドする摺動部材を備えること、
前記摺動部材は、前記駆動部の外部に位置すること、
を特徴とする流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用アンチロックブレーキシステムや、油圧機器の気密性検査には、高圧エア(5MPa以上)が用いられており、この高圧エアの制御を行うために、高圧エアの供給管路上に設けられた流体制御弁が用いられている。流体制御弁としては、例えば、図4に示すシリンダバルブ50や、特許文献1に開示されるシリンダバルブが知られている。
【0003】
図4に示すシリンダバルブ50は、駆動部51と弁部52とが、後述する弁体65と環状弁座64との当接離間が行われる方向(上下方向)に沿って、積み重なって構成されている。
【0004】
駆動部51は、操作エアの供給を受けて動作するエアシリンダであり、内部空間にピストン53が装填されている。ピストン53は、内部空間を、離間方向の側の第1室54と、当接方向の側の第2室55と、に区画している。第1室54には、ピストン53を当接方向に付勢する圧縮コイルばね57が収納されている。第2室55には、供給ポート58から、後述する駆動ロッド56に設けられた通気路59を介して、操作エアを供給可能となっている。操作エアが供給されることにより、第2室55の圧力が高くなると、圧縮コイルばね57の付勢力に抗して、ピストン53が離間方向に摺動される。
【0005】
ピストンには、弁部52側に延伸する駆動ロッド56が連結されている。よって、駆動ロッド56は、ピストン53の当接離間方向の摺動に伴い、当接離間方向に駆動される。駆動ロッド56は、すべり軸受け60により、当接離間方向の駆動がガイドされている。
【0006】
弁部52は、制御流体をシリンダバルブ50に流入するための入力ポート61と、制御流体をシリンダバルブ50から出力するための出力ポート62と、入力ポート61と出力ポート62とを連通する弁室63と、を備えている。また、弁室の底面には環状弁座64が設けられている。
【0007】
弁室63内には、環状弁座64に対して当接離間をする弁体65が収納されている。弁体65は、樹脂製(例えばポリイミド)であり、駆動ロッド56の弁部52側の先端に固定されている。また、弁体65は先細り形状となっており、環状弁座64に当接する面は傾斜面である。駆動部51が駆動ロッド56を当接離間の方向に沿って駆動することで、弁体65と環状弁座64の当接離間が行われ、流体の制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-144903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
駆動ロッド56が当接離間方向に駆動されるとき、駆動ロッド56の軸心は、当接離間の方向に平行であることが望ましい。しかし、製造誤差や、弁室63に流入する制御流体が弁体65に圧力を与えることにより、駆動ロッド56の軸心がぶれて駆動ロッド56が当接離間方向に対して傾斜することがある。
【0010】
駆動ロッド56が、当接方向に駆動されるときに、上記のように傾斜したとすると、弁体65は、環状弁座64の全周に当接せず、一部が当接する状態になるおそれがある(全周で当接せず、一部が当接する状態のことを、片当たりと言う)。片当たりが生じる状態では、弁閉時でも、入力ポート61から入力された流体が弁室63に漏れ(内部漏れ)が発生する。また、弁体65が先細り形状であるために、弁体65が環状弁座64と当接したときに、面同士の接触とならず、線接触になりやすい。線接触では、弁体65が環状弁座64に当接する際に荷重が集中するため、弁体65が塑性変形しやすい。弁体65が塑性変形すると、弁体65と環状弁座64との接触面積が変化するため、弁閉時のシール性が不安定になるおそれがある。このため、特許文献1に開示される流体制御弁のように、当接離間方向に垂直な当接面を備える弁体により、環状弁座と面接触させることが考えられるが、単に面接触としただけでは、片当たりが発生したとき、片当たり状態から環状弁座の全周を弁体に接触させるために、より強い力で弁体を環状弁座に押し付けなければ内部漏れを防ぐことができない。これは、駆動部の負荷が大きくなるため好ましくない。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、弁体の環状弁座に対する片当たりが発生することを防止可能な流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における流体制御弁は、次のような構成を有している。
【0013】
(1)金属製の環状弁座と、前記環状弁座に対して当接離間をする樹脂製の弁体と、前記弁体の前記環状弁座とは反対側で前記当接離間の方向に沿って延在し、かつ、前記弁体を保持する駆動ロッドと、前記駆動ロッドを前記当接離間の方向に沿って駆動することで、前記当接離間を行うための駆動部と、を備える流体制御弁において、前記弁体は、前記環状弁座に当接する当接面の反対側の端面が、前記駆動ロッドの側に膨出する凸球面であること、前記駆動ロッドは、前記凸球面に対向して、前記凸球面とはめ合い可能であるとともに前記駆動ロッドの軸心上に中心を有する凹球面を備えること、前記弁体を、前記当接離間の方向および前記当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持していること、を特徴とする。
【0014】
(1)に記載の流体制御弁によれば、前記弁体は、前記環状弁座に当接する当接面の反対側の端面が、前記駆動ロッドの側に膨出する凸球面であること、前記駆動ロッドは、前記凸球面に対向して、前記凸球面とはめ合い可能であるとともに前記駆動ロッドの軸心上に中心を有する凹球面を備えること、前記弁体を、前記当接離間の方向および前記当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持していること、を特徴とするため、弁体の凸球面が駆動ロッドの凹球面が接触した状態で、凸球面が凹球面に沿って摺動することができる。つまり、弁体が駆動ロッドの軸心に対して傾斜することができる。
【0015】
弁体を環状弁座に当接させようと駆動部が駆動ロッドを駆動したときに、駆動ロッドの軸心がぶれ、駆動ロッドが当接離間方向に対して傾いたとすると、弁体は、まず環状弁座の全周の内の一部と当接する。ここからさらに駆動部の駆動力が弁体に加わると、上記したように凸球面が凹球面に沿って摺動し、弁体が駆動ロッドの軸心に対して傾斜する。この弁体の傾きにより、駆動ロッドの傾きが吸収されるため、弁体の環状弁座に対する片当たりを防止することが可能である。また、弁体が傾くことで片当たりを防止するため、内部漏れの発生を防止するために強い力で弁体を環状弁座に押し付ける必要がなく、駆動部の負荷も小さく抑えることができる。
【0016】
ここで、凸球面が凹球面に沿って円滑に摺動するためには、(2)(1)に記載の流体制御弁において、前記凸球面と前記凹球面は、半径が略同一であること、が好ましい。
【0017】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御弁において、前記当接面上に、前記凸球面の中心が位置すること、が好ましい。
【0018】
凸球面の摺動は、弁体が環状弁座に当接して力を受けることで行われる。このとき、より小さい力で効率的に摺動させるためには、凸球面の摺動の中心の、当接離間の方向における位置は、弁体に力を加える環状弁座に対して可能な限り近いことが望ましい。(3)に記載の流体制御弁によれば、凸球面の中心が当接面上に位置しているため、凸球面の摺動の中心の、当接離間の方向における位置は、環状弁座に対して近くなる。よって、凸球面をより小さい力で効率的に摺動させることが可能である。
【0019】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の流体制御弁において、前記当接面は、前記当接離間の方向に垂直な平面であること、前記環状弁座の、前記当接面に当接する第2当接面は、前記当接面と平行な平面であること、が好ましい。
【0020】
線接触による弁体と環状弁座の当接が繰り返されると、弁体が塑性変形し、弁閉時のシール性が低下するおそれがある。(4)に記載の流体制御弁によれば、弁体と環状弁座とが当接したとき、面同士で接触するため、線接触による弁体の塑性変形を防止し、安定した弁閉時のシール性を維持することができる。
【0021】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の流体制御弁において、前記凸球面と前記凹球面とは、前記環状弁座の前記当接面に当接する第2当接面の直径よりも広い範囲で対向していること、が好ましい。
【0022】
凸球面と凹球面が、第2当接面の直径よりも狭い範囲で対向、つまり、第2当接面の内周側で対向していると、弁体が環状弁座から力を受けたときに、凸球面の摺動が円滑に行われない。(5)に記載の流体制御弁によれば、前記凸球面と前記凹球面とは、前記環状弁座の前記当接面に当接する第2当接面の直径よりも広い範囲で対向しているため、凸球面の摺動が円滑に行われる。
【0023】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体制御弁において、前記駆動ロッドは 前記当接離間の方向において、前記駆動部から延伸する第1ロッドと、前記弁体の側の第2ロッドと、に分割されていること、前記第2ロッドの前記第1ロッド側の端部は、第1ロッドに対して連結されない自由端であること、が好ましい。
【0024】
従来技術に係る流体制御弁(シリンダバルブ50)においては、駆動部51の動作のしかたにより、片当たりが発生するおそれがあった。具体的には、ピストン53が動作する際に傾くことで、駆動ロッド56を傾かせ、片当たりが発生するおそれがあった。
【0025】
(6)に記載の流体制御弁によれば、駆動ロッドは 当接離間の方向において、駆動部から延伸する第1ロッドと、弁体の側の第2ロッドと、に分割され、さらに、第2ロッドの第1ロッド側の端部は、第1ロッドに対して連結されない自由端であるため、第2ロッドは、駆動部の動作のしかたに影響を受けにくい。つまり、例えば駆動部がピストンを備えるものとしたとき、ピストンが傾いたとしても、第2ロッドはその影響を受けにくく、傾きにくい。よって、片当たりの発生を防止することができる。
【0026】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の流体制御弁において、前記駆動ロッドの当接離間の方向に沿った駆動をガイドする摺動部材を備えること、前記摺動部材は、前記駆動部の外部に位置すること、が好ましい。
【0027】
従来技術に係る流体制御弁(シリンダバルブ50)においては、駆動ロッド56の当接離間の方向に沿った駆動を、駆動部51内に設けられた摺動部材(例えば、すべり軸受け60)がガイドしている。このような構成では、摺動部材(すべり軸受け60)と弁体65の距離が遠いため、弁体65が制御流体の圧力を受けたときに、駆動ロッド56の軸心がぶれやすく、片当たりが発生するおそれがある。
【0028】
(7)に記載の流体制御弁によれば、摺動部材は、前記駆動部の外部に位置するため、摺動部材を弁体に近づけることができ、弁体が制御流体の圧力を受けたときの、駆動ロッドの軸心のぶれを最小限に抑えることが可能である。これにより、片当たりの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の流体制御弁によれば、弁体の環状弁座に対する片当たりが発生することを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
図2】弁体が環状弁座に対して当接を開始した状態における、図1の部分Aの部分拡大図である。
図3】弁閉状態における、図1の部分Aの部分拡大図である。
図4】従来技術に係る流体制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る流体制御弁の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る流体制御弁1の断面図である。なお、図1中の上下方向は、弁体34が環状弁座317に対して当接離間をする方向(当接離間方向)であり、図中上側を離間方向と言い、図中下側を当接方向と言う。図2は、弁体34が環状弁座317に対して当接を開始した状態における、図1の部分Aの部分拡大図である。図3は、弁閉状態における、図1の部分Aの部分拡大図である。
【0032】
(流体制御弁の構成について)
本実施形態に係る流体制御弁1は、例えば、自動車用アンチロックブレーキシステムや、油圧機器の気密性検査に用いられる高圧エア等の高圧(5MPa以上)な流体を制御流体とするシリンダバルブである。ただし、用途は、自動車用アンチロックブレーキシステムや、油圧機器の気密性検査に限定されるものでない。さらに、制御流体も、高圧エアに限定されるものではなく、高圧エア以外の気体や、飲料等の液体であっても良い。
【0033】
流体制御弁1は、駆動部2および弁部3を備えており、弁部3の離間方向の側に駆動部2を積み重ねて構成されている。以下に、駆動部2および弁部3について説明する。
【0034】
(駆動部について)
まず駆動部2について説明する。駆動部2は、操作エアの供給を受けて動作するエアシリンダであり、ケース体21と、ピストン23と、ガイド部材25と、を主な構成要素としている。また、ケース体21は、上カバー部材211と、胴部212と、下カバー部材213と、を主な構成要素としている。
【0035】
胴部212は、材質を例えばアルミニウム合金とし、円筒状に形成されている。胴部212の軸方向は、当接離間方向と平行である。胴部212の軸方向の上側(離間方向の側)および軸方向の下側(当接方向の側)は開口されている。そして、胴部212の上側の開口を上カバー部材211により閉塞し、胴部212の下側の開口を下カバー部材213により閉塞することで、略円柱状のケース体21が形成されている。なお、上カバー部材211および下カバー部材213は、材質を例えばアルミニウム合金としている。
【0036】
上カバー部材211は、当接方向の側に開口した断面略コの字状に形成されており、その開口にガイド部材25が圧入固定されている。ガイド部材25は、円柱状のケース体21と同軸上に、筒状部251を備えている。また、下カバー部材213には、ケース体21と同軸上で当接離間方向に貫通した挿通孔213aが設けられている。この筒状部251と挿通孔213aは、ピストン23の当接離間方向に沿った摺動をガイドする部分である。
【0037】
ケース体21内部は、円柱状の空間となっており、この空間がピストン室22である。ピストン室22には、ピストン23が、当接離間方向に沿って摺動可能に装填されている。
【0038】
ピストン23は、円盤状のピストン部231を備えている。ピストン部231の軸方向は当接離間方向と平行であり、かつ、ピストン部231は、円柱状の空間であるピストン室22と同軸上に位置している。このようなピストン部231により、ピストン室22は、離間方向の側の第1室221と、当接方向の側の第2室222と、に区画されている。そして、ピストン部231の外周面には、Oリング238が取り付けられており、このOリング238は、ピストン部231の外周面と、ピストン室22の内周面に圧縮されることで、第1室221と第2室222との間の気密を保っている。
【0039】
さらに、ピストン23は、ピストン部231から離間方向の側に向かって突設される円柱状の軸部232と、ピストン部231から当接方向の側に向かって突設される円柱状の第1ロッド233と、を備えている。なお、ピストン部231と、軸部232と、第1ロッド233とは、全て同軸上に位置している。
【0040】
軸部232は、ガイド部材25の筒状部251に挿入されている。軸部232の外周面には、Oリング237が取り付けられており、このOリング237は、軸部232の外周面と、筒状部251の内周面に圧縮されている。これにより、上カバー部材211と筒状部251とピストン23の軸部232とに囲まれた空間(第3室27)の気密を保っている。なお、第3室27の気密は、上カバー部材211とガイド部材25との間に設けられるOリング236によっても保たれている。
【0041】
第1ロッド233は、下カバー部材213の挿通孔213aに挿入されている。ここで、第1ロッド233の先端部は、駆動部2から突出し、弁部3に入り込んでいる。また、第1ロッド233の外周面には、Oリング235が取り付けられており、このOリング235は、第1ロッド233の外周面と、挿通孔213aの内周面に圧縮されている。これにより、第2室222の気密を保っている。
【0042】
以上のように、軸部232が筒状部251に挿入されるとともに、第1ロッド233が挿通孔213aに挿入されることで、筒状部251および挿通孔213aが、ピストン23を両持ち状態で保持するとともに、ピストン23の当接離間方向の摺動をガイドしている。
【0043】
ピストン23の当接離間方向の摺動について詳しく説明する。当接離間方向の摺動は、当接方向への摺動と、離間方向への摺動と、に分けられる。
【0044】
まず、ピストン23の当接方向への摺動について説明する。当接方向への摺動は、圧縮コイルばね26A,26Bにより行われる。圧縮コイルばね26A,26Bは、第1室221に、ピストン部231の離間方向の側の端面(図中の上端面)と、ガイド部材25の当接方向の側の端面(図中の下端面)とにより圧縮された状態で収納されている。これにより、圧縮コイルばね26A,26Bは、常にピストン23を当接方向(図中の下側)に付勢力を与えている。この圧縮コイルばね26A,26Bの付勢力により、ピストン23の当接方向への摺動が行われる。
【0045】
次に、ピストン23の離間方向への摺動について説明する。離間方向への摺動は、駆動部2の第2室222に供給される操作エアにより行われる。操作エアの第2室222への供給は、供給ポート211aと、第3室27と、通気路234と、を用いて行われる。
【0046】
供給ポート211aは、上カバー部材211の軸心上において、上カバー部材211を当接離間方向に貫通して設けられている。供給ポート211aにより、第3室27が駆動部2の外部と連通している。また、供給ポート211aには、操作エアの供給源(不図示)が接続される。
【0047】
通気路234は、ピストン23の軸部232の先端に開口して設けられている。この通気路234は、ピストン23の中心軸上を、第1ロッド233の側に延伸している。さらに、通気路234は、第1ロッド233の根本(第1ロッド233とピストン部231の接続部)の近傍で、ピストン23の中心軸に対して垂直方向に分岐し、第1ロッド233の外周面の、Oリング235よりも離間方向の側(図中の上側)で開口している。以上のような通気路234は、第3室27と第2室222とを連通している。
【0048】
以上のような構成により、操作エアは、以下のようにして第2室222に供給される。まず供給源から操作エアが駆動部2に供給されると、操作エアは、供給ポート211aから第3室27に流入する。そして、第3室27はOリング236,237により気密が保たれているため、第3室27に流入した操作エアは、第1室221に漏れることなく通気路234を通り、第2室222に流入される。
【0049】
以上のように操作エアが第2室222に流入されると、第2室222内の圧力が高まる。そうすると、ピストン部231が離間方向に圧力を受けるため、ピストン23が、圧縮コイルばね26A,26Bの付勢力に抗して、離間方向に摺動するのである。
【0050】
(弁部について)
次に弁部3について説明する。弁部3は、バルブボディ31と、アダプタ32と、第2ロッド33と、弁体34と、を主な構成要素としている。
【0051】
アダプタ32は、円筒状に形成されており、駆動部2と同軸上に位置している。また、アダプタ32の外周面のうち、当接方向の側の端部(バルブボディ31側の端部)には、雄ねじ部322が設けられており、この雄ねじ部322は、バルブボディ31の離間方向の側の端部(アダプタ32側の端部)に設けられた雌ねじ部315に螺合されている。さらに、アダプタ32の外周面のうち、離間方向の側の端部(駆動部2側の端部)には、雄ねじ部321が設けられており、この雄ねじ部321は、駆動部2(下カバー部材213)の当接方向の側の端部(アダプタ32側の端部)に設けられた雌ねじ部28に螺合されている。これにより、弁部3が駆動部2と結合している。
【0052】
バルブボディ31は、例えばステンレス鋼等の金属製で、制御流体を流体制御弁1に流入するための入力流路311と、制御流体を流体制御弁1から出力するための出力流路312と、を備えている。さらに、バルブボディ31は、駆動部2およびアダプタ32と同軸上において、離間方向の側(図中の上側)に向かって突設される筒状部313を備えている。この筒状部313は、駆動部2およびアダプタ32と同軸上に位置している。筒状部313の先端部の内周面は、先述の雌ねじ部315である。そして、筒状部313の内周側の空間のうち、雌ねじ部315よりも当接方向の側が、入力流路311と出力流路312とを連通する弁室314とされている。
【0053】
弁室314と入力流路311は、筒状部313と同軸上に設けられた弁孔316により連通している。また、弁室314の底面には、弁孔316の外周側に、弁孔316と同軸に環状弁座317が離間方向の側に向かって突設されている。環状弁座317は、バルブボディ31と一体的に形成されているため、バルブボディ31と同じく、ステンレス鋼等の金属製である。また、環状弁座317は、先端側の外周面にテーパ317aが設けられることで、先端に向かって縮径されている。環状弁座317の離間方向の側の先端面は、後述する弁体34が当接離間をする当接面317b(第2当接面)である。この当接面317bは、当接離間方向に対して垂直な平面である。
【0054】
弁室314には、環状弁座317に対して当接離間をする弁体34が収納されている。弁体34は、アダプタ32の中空部から弁室314にかけて延在する第2ロッド33の、当接方向の側の端部に保持されている。
【0055】
ここで、第2ロッド33および弁体34の構成について、より詳しく説明する。第2ロッド33は、ステンレス鋼等の金属製で、略円柱状に形成されている。第2ロッド33は、第1ロッド233とともに、弁体34の環状弁座317に対する当接離間を行うための駆動ロッド24として機能する。第2ロッド33の離間方向の側の端面(先端面334a)は、第1ロッド233の先端面233aに接触されているため、ピストン23が当接方向に駆動されると、第1ロッド233の先端面233aにより、第2ロッド33の先端面334aが押圧され、第2ロッド33が当接方向に駆動される。ただし、第2ロッド33の離間方向の側の端部(上端部334)は、先端面334aが第1ロッド233の先端面233aに接触されているのみで、第1ロッド233に対して連結されない自由端である。
【0056】
また、第2ロッド33の上端部334には、円環状の摺動部材36が、第2ロッド33と同軸上に位置した状態で固定されている。また、摺動部材36は、外周面にすべり軸受け37を備えている。このすべり軸受け37は、アダプタ32の内周面に摺接しており、これによって、摺動部材36は、第2ロッド33の、当接離間方向の駆動をガイドすることができる。
【0057】
摺動部材36の当接方向の側の端面には、圧縮コイルばね38が当接されている。圧縮コイルばね38は、摺動部材36と、摺動部材36の当接方向の側に対向して位置するストッパ39とにより圧縮されている。これにより、圧縮コイルばね38は、摺動部材36に対し、離間方向の側に付勢力を与えている。つまり、摺動部材36は第2ロッド33に固定されているため、第2ロッド33が離間方向の側に付勢されている。よって、ピストン23が離間方向に駆動されると、圧縮コイルばね38の付勢力により、ピストン23(第1ロッド233)に追従して、第2ロッド33が離間方向に駆動される。
【0058】
第2ロッド33の当接方向の側の端部は その他の部分よりも直径の大きい拡径部331である。拡径部331には、当接方向の側の端面(下端面)から離間方向に向かって、弁体34を保持するための円柱状の保持溝332が穿設されている。この保持溝332は 第2ロッド33と同軸上に位置している。また、保持溝332の離間方向の側の面は、凹球面333である。この凹球面333の中心C11は、第2ロッド33の軸心上に位置している。
【0059】
弁体34は、略円柱形状に形成されており、軸方向のおおよそ中央部分を境として、離間方向の側(第2ロッド331側)の大径部34aと、当接方向の側(環状弁座317側)の小径部34bと、に分けられる。また、弁体34の材質は、例えばポリイミド等の樹脂製で、圧縮強さが125MPa以上であることが望ましい。弁体34の当接方向の側の端面は、環状弁座317に対して当接離間をする当接面341である。この当接面341は、当接離間方向に対し垂直な平面である。また、弁体34の当接面341と反対側の端面は、第2ロッド33の側(離間方向の側)に向かって膨出して形成される凸球面342である。この凸球面342の中心C12は、当接面341上に位置している。加えて、凸球面342の半径と凹球面333の半径は同一とされている。このため、凸球面342が凹球面333に接した状態では、凸球面342の中心C12は、凹球面333の中心C11に一致されている。
【0060】
凹球面333と凸球面342が対向するようにして、保持溝332に収納されている。また、大径部34aと小径部34bとの径の違いにより、環状段差部343が形成されている。第2ロッド33の拡径部331に螺合された円環状の固定部材35が、弁体34の環状段差部343に引っ掛かることで、弁体34が保持溝332から抜け落ちないようになっている。
【0061】
弁体34は、保持溝332に、当接離間の方向および当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持されている。具体的には、環状段差部343と、固定部材35との間には所定量の間隙G11が設けられている。この間隙G11により、当接離間の方向における遊びが確保されている。また、弁体34の直径は、保持溝332の直径よりも小さくされており、弁体34の外周面と保持溝332との内周面との間には、所定量の間隙G12が設けられている。この間隙G12により、上記した当接離間の方向に対して垂直な方向における遊びが確保されている。なお、この間隙G12の大きさは、保持溝332の直径から弁体34の直径を引いた値を2で割った値である。
【0062】
(流体制御弁の作用および効果)
以上のような構成を備える流体制御弁1は、以下のように作用する。まず、流体制御弁1の開弁動作、すなわち、弁体34が環状弁座317から離間する離間動作について説明する。駆動部2が操作エアの供給を受けていない状態では、図1に示すように、弁体34が環状弁座317に当接された状態である。すなわち、流体制御弁1は閉弁状態にある。
【0063】
この状態において、駆動部2に操作エアが供給されると、以下のように流体制御弁1の開弁動作が行われる。操作エアが駆動部2に供給されると、操作エアは、供給ポート211aから第3室27に流入する。そして、第3室27に流入した操作エアは通気路234を通り、第2室222に流入される。操作エアが第2室222に流入されると、第2室222内の圧力が高まる。そうすると、ピストン部231が離間方向に圧力を受けるため、ピストン23が、圧縮コイルばね26A,26Bの付勢力に抗して、離間方向に摺動する。
【0064】
駆動部2のピストン23が、操作エアにより離間方向に摺動すると、第1ロッド233の先端面233aは、第2ロッド33の先端面334aから離れる方向に動くため、第2ロッド33は、圧縮コイルばね38の付勢力により、離間方向に駆動される。第2ロッド33が離間方向に駆動されることで、第2ロッド33に保持されている弁体34が環状弁座317から離間し、流体制御弁1は開弁状態になる。
【0065】
次に、流体制御弁1の閉弁動作、すなわち、弁体34が環状弁座317に当接する当接動作について説明する。
【0066】
流体制御弁1が開弁状態にあるとき、すなわち、弁体34が環状弁座317から離間している状態にあるときに、駆動部2の第2室222から操作エアが排出されると、駆動部2のピストン23が、圧縮コイルばね26A,26Bの付勢力により当接方向に摺動する。
【0067】
ピストン23が当接方向に摺動すると、第1ロッド233の先端面233aが、第2ロッド33の先端面334aを当接方向に押圧するため、第2ロッド33は、圧縮コイルばね38の付勢力に抗して、当接方向に駆動される。このように、第2ロッド33が当接方向に駆動されることで、第2ロッド33に保持されている弁体34が環状弁座317に当接し、流体制御弁1は閉弁状態になる。なお、圧縮コイルばね26A,26Bの付勢力により、圧縮コイルばね38の付勢力に抗して第2ロッド33を駆動するのであるから、圧縮コイルばね38のばね荷重は、圧縮コイルばね26A,26Bのばね荷重よりも弱いものでなければならないことを付言する。また、流体制御弁1は、高圧エア等の高圧(5MPa以上)な流体を制御流体とするところ、圧縮コイルばね26A,26Bのばね荷重は、流体圧に抗して閉弁可能な程度に、十分なばね荷重を備えるものでなければならない。
【0068】
弁体34の当接面341および環状弁座317の当接面317bは、ともに当接離間方向に対して垂直な平面であるため、弁体34が環状弁座317に当接したとき、面同士が接触することになる。よって、弁体と環状弁座を線接触させる従来技術に係る流体制御弁(例えばシリンダバルブ50)に比べ、弁体34への当接動作の繰り返しによる応力の負荷が緩和され、弁体34の塑性変形を防止することができる。
【0069】
また、ピストン23が当接方向に駆動される際、ピストン23の軸心がぶれて、ピストン23が傾くおそれがある。しかし、第2ロッド33の上端部334は自由端であり、ピストン23から延伸する第1ロッド233には連結されていないため(すなわち、駆動ロッド24が 当接離間の方向において、第1ロッド233と第2ロッド33とに分割されているため)、ピストン23が傾いたとしても、第2ロッド33はその影響を受けにくく、傾きにくい。よって、片当たりの発生を防止することができる。
【0070】
また、弁体34が制御流体により圧力を受けることで、第2ロッド33(駆動ロッド24)の軸心がぶれるおそれがある。第2ロッド33(駆動ロッド24)の当接離間方向の駆動は、摺動部材36によりガイドされるものであるところ、摺動部材36は駆動部2の外部(具体的にはアダプタ32の内部)に位置しているため、従来技術に係る流体制御弁(例えばシリンダバルブ50)に比べて、弁体34により近い位置で第2ロッド33(駆動ロッド24)がガイドされる。よって、第2ロッド33(駆動ロッド24)の軸心のぶれを最小限に抑えることが可能である。これにより、片当たりの発生を防止することができる。
【0071】
また、製造誤差により第2ロッド33(駆動ロッド24)の軸心のぶれを完全に無くすことができないため、片当たりが発生するおそれがある。しかし、流体制御弁1によれば、第2ロッド33(駆動ロッド24)の軸心がぶれたとしても、片当たりの発生を防止することができる。具体的には、第2ロッド33が当接方向に摺動しようとしたときに、第2ロッド33の軸心がぶれた場合を、図2および図3を用いて説明する。
【0072】
図2中には、第2ロッド33の軸心が全くぶれなかったとした場合の理想の軸心を理想軸心CL11として表している。そして、第2ロッド33の軸心がぶれてしまい、理想軸心CL11に対して図中の右側に傾斜した軸心を軸心CL21として表している。理想軸心CL11に対する軸心CL21の角度は、角度A11である。このとき、弁体34の軸心CL31は、第2ロッド33の軸心CL21に一致しているものとする。
【0073】
このように、第2ロッド33が当接方向に摺動する際に、軸心CL21が図中の右側に傾斜した場合、弁体34が環状弁座317に対して当接しようとするとき、弁体34は、まず環状弁座317の全周の内の一部と当接する。具体的には、例えば、図2に示すように、弁体34の当接面341が、環状弁座317の当接面317bの全周の内、図中の右側では当接し、図中の左側では当接していない状態である。
【0074】
しかし、弁体34の凸球面342が第2ロッド33の凹球面333に嵌め合わされていること(すなわち、弁体34と第2ロッド33が球面同士で当接していること)に加え、弁体34は、間隙G11による当接離間の方向の遊びと、間隙G12による当接離間の方向に対して垂直方向の遊びと、をもって第2ロッド33に保持されているため、図2に示すような片当たり状態から、駆動部2の駆動力が弁体34に加わると、凸球面342が凹球面333に沿って摺動し、弁体34が第2ロッド33の軸心CL21に対して傾斜することができる。つまり、図3に示すように、弁体34は、中心C12を中心に、図2中の反時計回りに回転し、弁体34の軸心CL31が、理想軸心CL11と平行になる。この弁体34の回転により、第2ロッド33の傾きが吸収され、弁体34が環状弁座317の全周と当接するため、弁体34の環状弁座317に対する片当たりを防止することが可能である。
【0075】
なお、間隙G11と、間隙G12の大きさは、製造誤差による第2ロッド33の軸心CL21の傾き量(角度A11の大きさ)を考慮し、当該傾きを吸収可能な程度に、弁体34が傾くことができるような大きさに設定される。例えば、本実施形態においては、角度A11は1.6度であり、弁体34の軸心CL31は、第2ロッド331の軸心CL21に対して、1.6度傾斜することが可能なように、間隙G11と、間隙G12の大きさが設定されている。
【0076】
また、本実施形態に係る流体制御弁1では、弁体34の大径部34aの直径D11が、環状弁座317の当接面317bの直径D21よりも大きく設定されているため、凸球面342と凹球面333とは、環状弁座317の当接面317bの直径D21よりも広い範囲で対向している。これにより、凸球面342の摺動が円滑に行われる。凸球面342と凹球面333が、当接面317bの直径D21よりも狭い範囲で対向、つまり、当接面317bの内周側で対向していると、弁体34が環状弁座317から力を受けたときに、凸球面342の摺動が円滑に行われないため、これを防止している。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る流体制御弁1は、
(1)金属製の環状弁座317と、環状弁座317に対して当接離間をする樹脂製の弁体34と、弁体34の環状弁座317とは反対側で当接離間の方向に沿って延在し、かつ、弁体34を保持する駆動ロッド24と、駆動ロッド24を当接離間の方向に沿って駆動することで、当接離間を行うための駆動部2と、を備える流体制御弁1において、弁体34は、環状弁座317に当接する当接面341の反対側の端面が、駆動ロッド24の側に膨出する凸球面342であること、駆動ロッド24は、凸球面342に対向して、凸球面342とはめ合い可能であるとともに駆動ロッド24の軸心上に中心C11を有する凹球面333を備えること、弁体34を、当接離間の方向および当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持していること、を特徴とする。
【0078】
(1)に記載の流体制御弁1によれば、弁体34は、環状弁座317に当接する当接面341の反対側の端面が、駆動ロッド24の側に膨出する凸球面342であること、駆動ロッド24は、凸球面342に対向して、凸球面342とはめ合い可能であるとともに駆動ロッド24の軸心上に中心C11を有する凹球面333を備えること、弁体34を、当接離間の方向および当接離間の方向に対して垂直な方向に遊びをもって保持していること、を特徴とするため、弁体34の凸球面342が駆動ロッド24の凹球面333が接触した状態で、凸球面342が凹球面333に沿って摺動することができる。つまり、弁体34が駆動ロッド24の軸心に対して傾斜することができる。
【0079】
弁体34を環状弁座317に当接させようと駆動部2が駆動ロッド24を駆動したときに、駆動ロッド24の軸心がぶれ、駆動ロッド24が当接離間方向に対して傾いたとすると、弁体34は、まず環状弁座317の全周の内の一部と当接する。ここからさらに駆動部2の駆動力が弁体34に加わると、上記したように凸球面342が凹球面333に沿って摺動し、弁体34が駆動ロッド24の軸心に対して傾斜する。この弁体34の傾きにより、駆動ロッド24の傾きが吸収されるため、弁体34の環状弁座317に対する片当たりを防止することが可能である。また、弁体34が傾くことで片当たりを防止するため、片当たりを防止するために強い力で弁体34を環状弁座317に押し付ける必要がなく、駆動部2の負荷も小さく抑えることができる。
【0080】
ここで、凸球面342が凹球面333に沿って円滑に摺動するためには、(2)(1)に記載の流体制御弁1において、凸球面342と凹球面333は、半径が略同一であること、が好ましい。
【0081】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御弁1において、当接面341上に、凸球面342の中心C12が位置すること、が好ましい。
【0082】
凸球面342の摺動は、弁体34が環状弁座317に当接して力を受けることで行われる。このとき、より小さい力で効率的に摺動させるためには、凸球面342の摺動の中心の、当接離間の方向における位置は、弁体34に力を加える環状弁座317に対して可能な限り近いことが望ましい。(3)に記載の流体制御弁1によれば、凸球面342の中心C12が当接面341上に位置しているため、凸球面342の摺動の中心の、当接離間の方向における位置は、環状弁座317に対して近くなる。よって、凸球面342をより小さい力で効率的に摺動させることが可能である。
【0083】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の流体制御弁1において、当接面341は、当接離間の方向に垂直な平面であること、環状弁座317の、当接面341に当接する第2当接面(当接面317b)は、当接面341と平行な平面であること、が好ましい。
【0084】
線接触による弁体34と環状弁座317の当接が繰り返されると、弁体34が塑性変形し、弁閉時のシール性が低下するおそれがある。(4)に記載の流体制御弁1によれば、弁体34と環状弁座317とが当接したとき、面同士で接触するため、線接触による弁体34の塑性変形を防止し、安定した弁閉時のシール性を維持することができる。
【0085】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の流体制御弁1において、凸球面342と凹球面333とは、環状弁座317の当接面341に当接する第2当接面(当接面317b)の直径D21よりも広い範囲で対向していること、が好ましい。
【0086】
凸球面342と凹球面333が、第2当接面(当接面317b)の直径D21よりも狭い範囲で対向、つまり、第2当接面(当接面317b)の内周側で対向していると、弁体34が環状弁座317から力を受けたときに、凸球面342の摺動が円滑に行われない。(5)に記載の流体制御弁1によれば、凸球面342と凹球面333とは、環状弁座317の当接面317bに当接する第2当接面(当接面317b)の直径D21よりも広い範囲で対向しているため、凸球面342の摺動が円滑に行われる。
【0087】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体制御弁1において、駆動ロッド24は 当接離間の方向において、駆動部2から延伸する第1ロッド233と、弁体34の側の第2ロッド33と、に分割されていること、第2ロッド33の第1ロッド233側の端部(上端部334)は、第1ロッド233に対して連結されない自由端であること、が好ましい。
【0088】
従来技術に係る流体制御弁(シリンダバルブ50)においては、駆動部51の動作のしかたにより、片当たりが発生するおそれがあった。具体的には、ピストン53が動作する際に傾くことで、駆動ロッド56を傾かせ、片当たりが発生するおそれがあった。
【0089】
(6)に記載の流体制御弁1によれば、駆動ロッド24は 当接離間の方向において、駆動部2から延伸する第1ロッド233と、弁体34の側の第2ロッド33と、に分割され、さらに、第2ロッド33の第1ロッド233側の端部(上端部334)は、第1ロッド233に対して連結されない自由端であるため、第2ロッド33は、駆動部2の動作のしかたに影響を受けにくい。つまり、例えば駆動部2がピストン23を備えるものとしたとき、ピストン23が傾いたとしても、第2ロッド33はその影響を受けにくく、傾きにくい。よって、片当たりの発生を防止することができる。
【0090】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の流体制御弁1において、駆動ロッド24(第2ロッド33)の当接離間の方向に沿った駆動をガイドする摺動部材36を備えること、摺動部材36は、前記駆動部の外部に位置すること、が好ましい。
【0091】
従来技術に係る流体制御弁(シリンダバルブ50)においては、駆動ロッド56の当接離間の方向に沿った駆動を、駆動部51内に設けられた摺動部材(例えば、すべり軸受け60)がガイドしている。このような構成では、摺動部材(すべり軸受け60)と弁体65の距離が遠いため、弁体65が制御流体の圧力を受けたときに、駆動ロッド56の軸心がぶれやすく、片当たりが発生するおそれがある。
【0092】
(7)に記載の流体制御弁1によれば、摺動部材36は、駆動部2の外部に位置するため、摺動部材36を弁体34に近づけることができ、弁体34が制御流体の圧力を受けたときの、駆動ロッド24(第2ロッド33)の軸心のぶれを最小限に抑えることが可能である。これにより、片当たりの発生を防止することができる。
【0093】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態に係る流体制御弁1は、操作エアの供給を受けた場合に開弁動作を行うノーマルクローズタイプとして説明しているが、操作エアの供給を受けた場合に閉弁動作を行うノーマルオープンタイプであっても良い。
【符号の説明】
【0094】
1 流体制御弁
2 駆動部
24 駆動ロッド
34 弁体
317 環状弁座
333 凹球面
341 当接面
342 凸球面
図1
図2
図3
図4