(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172244
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61K 9/04 20060101AFI20241205BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20241205BHJP
G08C 17/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B61K9/04
G08C17/00 A
G08C17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089829
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信之
(72)【発明者】
【氏名】笹内 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】内川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】吉信 皓章
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA31
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073AB07
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE06
2F073EE01
2F073EE11
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG07
2F073GG08
2F073GG09
(57)【要約】
【課題】車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部の故障に対する予兆を把握しやすいモニタリング装置を備えた鉄道車両を提供すること。
【解決手段】発熱部12における温度異常を監視するモニタリング装置2を備えた鉄道車両10である。モニタリング装置は、発熱部に装着した熱電発電部21と、熱電発電部が発電した電力を蓄電する蓄電部22と、蓄電部に蓄電した蓄電量が所定値に達したときに放電指令する放電制御部23と、放電された電力によって送信信号を送信する送信部24と、を有する子機2aと、送信部から送信された送信信号を受信する受信部25と、受信部が送信信号を一定時間内に受信した通信頻度に基づいて、発熱部の温度異常の有無を判定する演算・判定部26と、を備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を監視するモニタリング装置を備えた鉄道車両であって、
前記モニタリング装置は、
前記発熱部の外表面に装着した熱電変換素子からなる熱電発電部と、
前記熱電発電部が発電した電力を蓄電する蓄電部と、前記蓄電部に蓄電した蓄電量が所定値に達したときに放電指令する放電制御部と、前記放電制御部の放電指令に基づいて前記蓄電部から放電された電力によって送信信号を送信する送信部と、を有する子機と、
前記送信部から送信された前記送信信号を受信する受信部と、前記受信部が前記送信信号を一定時間内に受信した通信頻度に基づいて、前記発熱部の温度異常の有無を判定する演算・判定部と、を有する親機と、
を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記演算・判定部は、
前記通信頻度が高温側異常しきい値より大きいと認定した場合、前記発熱部の温度は高温側異常と判定することを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記演算・判定部は、
前記通信頻度が低温側異常しきい値より小さいと認定し、かつ車両速度が速度しきい値より大きいと認定した場合、前記発熱部の温度は低温側異常と判定することを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記親機は、前記演算・判定部が判定した判定結果を出力するモニタ・表示部を備え、前記モニタ・表示部は、期間又は走行距離に対する前記通信頻度の推移グラフと、前記発熱部の温度異常との相関図を表示することを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記子機には、前記送信部が送信する前記送信信号に対して、前記熱電発電部を装着した前記発熱部の所在地又は名称を付与するアドレス付与部を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、より詳しくは、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を監視するモニタリング装置を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両の走行時における安全性、安定性、快適性等をより高めるため、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を監視するモニタリング装置を備えた鉄道車両が、注目されている。例えば、特許文献1には、鉄道車両における輪軸の軸受温度を監視する軸受監視装置が開示されている。この軸受監視装置は、軸箱を通じて軸受の温度を検知する温度センサと、発信機能を含む制御回路と、を備えている。また、軸箱の外表面に装着された熱電交換素子及び蓄電池から成る電源装置を備え、当該電源装置から軸受監視装置に電力が供給され、温度センサによって得られた所要の検知信号が、制御回路から無線で運転台のモニタ等に伝送されるシステムになっている。
【0003】
この鉄道車両の軸受監視装置によれば、輪軸の回転に伴って発熱した軸箱の温度と、雰囲気の温度との温度差を利用して、熱電交換素子が発電した電力を蓄電池に蓄電し、その電力を利用して制御回路を作動させることができる。そして、温度センサによって得られた所要の検知信号が、制御回路から無線で運転台のモニタ等に伝送されるので、軸受の温度異常を運転台のモニタ等で監視でき、軸受監視装置に対して、わざわざ、他から電力を供給する必要がないという効果があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された軸受監視装置では、以下のような問題があった。すなわち、温度センサの検知信号は、温度センサが装着された部位における軸箱の外表面の温度であり、温度センサの装着部位や外気温等の影響を受けやすく、発熱部である軸受の温度異常を反映しにくいという問題があった。また、温度センサが検知した温度は、その時点での温度データを表し、時間経過に伴う温度推移が分からず、故障に対する予兆を把握しにくいという問題があった。さらに、上記軸受監視装置は、温度センサと熱電交換素子とを備えているので、広い設置スペースが必要となると共に、コストが嵩むという問題もあった。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部の故障に対する予兆を把握しやすいモニタリング装置を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を監視するモニタリング装置を備えた鉄道車両であって、
前記モニタリング装置は、
前記発熱部の外表面に装着した熱電変換素子からなる熱電発電部と、
前記熱電発電部が発電した電力を蓄電する蓄電部と、前記蓄電部に蓄電した蓄電量が所定値に達したときに放電指令する放電制御部と、前記放電制御部の放電指令に基づいて前記蓄電部から放電された電力によって送信信号を送信する送信部と、を有する子機と、
前記送信部から送信された前記送信信号を受信する受信部と、前記受信部が前記送信信号を一定時間内に受信した通信頻度に基づいて、前記発熱部の温度異常の有無を判定する演算・判定部と、を有する親機と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、モニタリング装置は、発熱部の外表面に装着した熱電変換素子からなる熱電発電部と、熱電発電部が発電した電力を蓄電する蓄電部と、を備えているので、熱電変換素子が装着された発熱部の外表面の温度と雰囲気の温度との温度差に略比例して、熱電発電部が発電して蓄電部に蓄電する蓄電量が、増加する。具体的には、熱電変換素子が装着された発熱部の外表面の温度と、雰囲気の温度との温度差が増大するほど、熱電発電部が発電して蓄電部に蓄電する蓄電量の増加スピードが速くなる。また、熱電変換素子が装着された発熱部の外表面の温度と、雰囲気の温度との温度差が減少するほど、熱電発電部が発電して蓄電部に蓄電する蓄電量の増加スピードが遅くなる。
【0009】
ところで、発熱部の外表面は、外気に接しているので、発熱部の外表面の温度自体は、雰囲気の温度の影響を受けて変動するが、発熱部の外表面の温度と雰囲気の温度との温度差は、雰囲気の温度の影響を受けにくい。したがって、熱電発電部が発電して蓄電部に蓄電する蓄電量の増加スピードは、雰囲気の温度の影響を受けにくく、発熱部の温度の変動を反映しやすい。
【0010】
そして、放電制御部は、蓄電部の蓄電量が所定値に達したときに放電指令し、送信部は、放電指令に基づいて蓄電部から放電された電力によって、送信信号を受信部に送信する。そのため、受信部が送信信号を一定時間内に受信する通信頻度は、発熱部の温度の変動を反映して、増減する。また、通信頻度は、発熱部の時間経過に伴う温度変化を表している。また、発熱部の温度異常を温度センサを用いることなく、推定することができ、コスト低減や設置スペースの低減に寄与できる。
【0011】
また、演算・判定部は、受信部が送信信号を一定時間内に受信した通信頻度に基づいて、発熱部の温度異常の有無を判定する。そのため、演算・判定部の判定結果によって、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部の故障に対する予兆を把握しやすい。
【0012】
よって、本発明によれば、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部の故障に対する予兆を把握しやすいモニタリング装置を備えた鉄道車両を提供することができる。
【0013】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記演算・判定部は、
前記通信頻度が高温側異常しきい値より大きいと認定した場合、前記発熱部の温度は高温側異常と判定することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、演算・判定部は、通信頻度が高温側異常しきい値より大きいと認定した場合、発熱部の温度は高温側異常と判定するので、通信頻度が高温側異常しきい値より大きい場合、発熱部の温度を、温度が過大となる高温側異常として判定でき、発熱部における高温側の温度異常の原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。そのため、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部の高温に伴う故障を未然に防止して、鉄道車両の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記演算・判定部は、
前記通信頻度が低温側異常しきい値より小さいと認定し、かつ車両速度が速度しきい値より大きいと認定した場合、前記発熱部の温度は低温側異常と判定することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、演算・判定部は、通信頻度が低温側異常しきい値より小さいと認定し、かつ車両速度が速度しきい値より大きいと認定した場合、発熱部の温度は低温側異常と判定するので、発熱部の温度を、温度が過少となる低温側異常として判定でき、発熱部における低温側の温度異常の原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。
【0017】
そのため、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部の低温に伴う故障を未然に防止して、鉄道車両の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。なお、通信頻度が低温側異常しきい値より小さいと認定し、かつ車両速度が速度しきい値より大きいと認定した場合、発熱部の温度は低温側異常と判定することによって、発熱部における潤滑油の油抜け等の不具合を推定できる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記親機は、前記演算・判定部が判定した判定結果を出力するモニタ・表示部を備え、前記モニタ・表示部は、期間又は走行距離に対する前記通信頻度の推移グラフと、前記発熱部の温度異常との相関図を表示することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、親機は、演算・判定部が判定した判定結果を出力するモニタ・表示部を備え、モニタ・表示部は、期間又は走行距離に対する通信頻度の推移グラフと、発熱部の温度異常との相関図を表示するので、通信頻度の推移グラフに反映される発熱部の温度状況の変化を、期間又は走行距離に対応して確認することができ、発熱部の故障の予兆をより一層正確に把握することができる。そのため、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部の故障を未然に防止して、鉄道車両の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0020】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記子機には、前記送信部が送信する前記送信信号に対して、前記熱電発電部を装着した前記発熱部の所在地又は名称を付与するアドレス付与部を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明においては、子機には、送信部が送信する送信信号に対して、熱電発電部を装着した発熱部の所在地又は名称を付与するアドレス付与部を備えたので、発熱部の所在地毎又は名称毎の温度異常を判定して、それぞれの発熱部におけるメンテナンスに対する優先度等を検討することができる。そのため、熱電発電部を装着した発熱部の所在地又は名称に対応した処置を計画的に進め、より効率的なメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部の故障に対する予兆を把握しやすいモニタリング装置を備えた鉄道車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略部分側面図である。
【
図2】
図1に示す鉄道車両における車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部をA矢視方向から見た概略正面図である。
【
図3】
図1に示す鉄道車両におけるモニタリング装置の回路構成の一例を表すブロック図である。
【
図4】
図1に示す鉄道車両におけるモニタリング装置の動作状況の概念図であって、(A)は車両速度の推移図を示し、(B)は熱電変換素子を装着した発熱部の温度の推移図を示し、(C)は蓄電部に蓄電した蓄電量の推移図と、受信部が送信信号を一定時間内に受信した通信頻度を示す。
【
図5】
図3に示す演算・判定部における判定手順の一例を表すフローチャート図である。
【
図6】
図3に示すモニタ・表示部にて表示する判定結果の一例であって、通信頻度の推移グラフと発熱部の温度異常との相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<本鉄道車両の構成>
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略部分側面図を示す。
図2に、
図1に示す鉄道車両における車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部をA矢視方向から見た概略正面図を示す。
図3に、
図1に示す鉄道車両におけるモニタリング装置の回路構成の一例を表すブロック図を示す。
図4に、
図1に示す鉄道車両におけるモニタリング装置の動作状況の概念図を示す。
図4(A)に、車両速度の推移図を示し、
図4(B)に、熱電変換素子を装着した発熱部の温度の推移図を示し、
図4(C)に、蓄電部に蓄電した蓄電量の推移図と、受信部が送信信号を一定時間内に受信した通信頻度を示す。
図5に、
図3に示す演算・判定部における判定手順の一例を表すフローチャート図を示す。
図6に、
図3に示すモニタ・表示部にて表示する判定結果の一例であって、通信頻度の推移グラフと発熱部の温度異常との相関図を示す。
【0025】
図1、
図2に示すように、本態様の鉄道車両10は、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12における温度異常を監視するモニタリング装置2を備えた鉄道車両10である。なお、発熱部12は、本鉄道車両10の台車DSに装着され、レールRL上を走行する車輪11の回転運動に関与して発熱する装置を意味し、例えば、左右の車輪11を連結する輪軸13の枕木方向端部131を回転可能に支持する軸箱121、122や、輪軸13の中間部132に装着され、主電動機(図示しない)の動力を伝達する歯車装置123や、主電動機等が該当する。軸箱121、122は、台車DSのフレームを構成する台車枠DSWに軸ばね14を介して連結されている。ここでは、左右の軸箱121、122のケース外表面と、歯車装置123のケース外表面に、後述するモニタリング装置2における熱電発電部21と送信機能を有する子機2aとが、それぞれ装着されているが、特定の発熱部12を選定して熱電発電部21と子機2aとを装着しても良い。なお、熱電発電部21と子機2aとは、有線で電気的に接続されている。
【0026】
また、本鉄道車両10は、台車DSに空気ばねKBを介して支持される台枠DWと、台枠DWの車両幅方向の両端部から上方に起立する側構体GKと、台枠DWの車両長手方向の両端部から上方に起立する妻構体TKと、側構体GK及び妻構体TKの上端部に接続された屋根構体YKと、を備えている。また、側構体GKには、乗客が乗降する乗客用側扉GT1と、乗務員が乗降する乗務員用側扉GT2と、各種大きさの側窓GMと、が形成されている。また、乗務員用側扉GT2は、運転室UT側の側構体GKに形成され、運転室UTには、後述するモニタリング装置2における受信機能を有する親機2bが配置されている。子機2aと親機2bとは、無線で電気的に接続されている。
【0027】
また、
図2、
図3、
図4に示すように、モニタリング装置2は、発熱部12の外表面に装着した熱電変換素子21Nからなる熱電発電部21と、熱電発電部21が発電した電力を蓄電する蓄電部22と、蓄電部22に蓄電した蓄電量Pが所定値P1に達したときに放電指令する放電制御部23と、放電制御部23の放電指令に基づいて蓄電部22から放電された電力によって送信信号SSGを送信する送信部24と、を有する子機2aと、送信部24から送信された送信信号SSGを受信する受信部25と、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rに基づいて、発熱部12の温度異常の有無を判定する演算・判定部26と、を有する親機2bと、を備えている。親機2bの受信部25は、複数の子機2aの送信部24から送信する送信信号SSGを受信することができる。
【0028】
すなわち、モニタリング装置2は、発熱部12の外表面に装着した熱電変換素子21Nからなる熱電発電部21を備えている。熱電変換素子21Nは、例えば、2種類の異なる半導体(n型半導体とp型半導体)を接合して高温部と低温部とを形成し、両者の間に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用する公知の熱電素子である。熱電発電部21は、熱電変換素子21Nの高温部を発熱部12の外表面に当接して装着し、発熱部12の温度Qと雰囲気の温度との温度差を利用して発電する。
【0029】
また、モニタリング装置2の子機2aは、熱電発電部21が発電した電力を蓄電する蓄電部22を有する。ここで、熱電発電部21が発電した電力は、微小であるため、DC-DCコンバータからなる昇圧部221を介して電圧を増幅して蓄電部22に蓄電すると良い。蓄電部22は、所定量の電力を蓄電し、かつ放電できるコンデンサや、電気二重層、二次電池等を用いることができる。
【0030】
上記熱電変換素子21Nからなる熱電発電部21と蓄電部22とを備えているので、熱電変換素子21Nが装着された発熱部12の外表面の温度と、雰囲気の温度との温度差が増大するほど、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pの増加スピードが速くなる。また、熱電変換素子21Nが装着された発熱部12の外表面の温度と、雰囲気の温度との温度差が減少するほど、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pの増加スピードが遅くなる。
【0031】
なお、発熱部12の外表面は、外気に接しているので、発熱部12の外表面の温度自体は、雰囲気の温度の影響を受けて変動するが、発熱部12の外表面の温度と雰囲気の温度との温度差は、雰囲気の温度の影響を受けにくい。したがって、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pの増加スピードは、雰囲気の温度の影響を受けにくく、発熱部12の温度Qの上昇・下降(即ち、発熱部12での摩擦等に伴う発熱量の増減)を反映しやすい。
【0032】
また、モニタリング装置2の子機2aは、蓄電部22に蓄電した蓄電量Pが所定値P1(例えば、所定の情報を送信できる電力が供給可能な蓄電量以上で予め設定された値)に達したときに放電指令する放電制御部23と、放電制御部23の放電指令に基づいて蓄電部22から放電された電力によって送信信号SSGを送信する送信部24と、を有する。なお、送信部24は、例えば、放電制御部23の放電指令に基づいて送信信号SSGを所定時間tだけ送信しても良いし、例えば、放電制御部23の放電指令に基づいて送信信号SSGの送信を開始し、蓄電部22に送信に必要な電力が無くなったら自動的に送信を停止しても良い。
【0033】
また、モニタリング装置2の親機2bは、送信部24から送信された送信信号SSGを受信する受信部25と、受信部25が受信した送信信号SSGを記憶部261に記憶するとともに、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rに基づいて、発熱部12の温度異常の有無を判定する演算・判定部26と、を有する。なお、通信頻度Rは、通信の頻繁さの程度を意味し、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した累積通信回数及び累積通信時間を含む概念であるが、ここでは、通信頻度Rを累積通信回数の意味で説明する。また、親機2bは、演算・判定部26が判定した判定結果を出力するモニタ・表示部27を備えていることが好ましい。モニタ・表示部27は、例えば、運転室UTの運転台に配置され、画像、文字、音声等、又はこれらの組み合わせを出力する。これによって、運転士が発熱部の温度異常を常に監視することができる。
【0034】
モニタリング装置2は、上記構成を有するので、発熱部12の温度Qが高く、蓄電部22に蓄電する蓄電量Pが所定値P1に達する時間が短くなると、一定時間ΔT内に、送信部24が送信信号SSGを送信する送信回数が増加する。そして、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rが増加する。これに対して、発熱部12の温度Qが低く、蓄電部22に蓄電する蓄電量Pが所定値P1に達する時間が長くなると、一定時間ΔT内に、送信部24が送信信号SSGを送信する送信回数が減少する。そして、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rが減少する。この通信頻度Rの増減に基づいて、発熱部12の温度異常の有無を判定することができる。
【0035】
例えば、
図4(A)に示すように、本鉄道車両10が時間T1~T2と時間T3~T4まで車両速度V2にて走行した場合、
図4(B)に示すように、車輪11の回転運動に伴って発熱する発熱部12の温度Qは、正常(SF)な温度Q2まで上昇する。この発熱部12の温度Q2への温度上昇に伴って、
図4(C)に示すように、蓄電部22に蓄電する蓄電量Pが所定値P1まで到達すると、放電制御部23の放電指令に基づいて蓄電部22から放電された電力によって、送信部24は送信信号SSGを、例えば、所定時間tだけ送信する。放電した蓄電部22には、再度同一のスピードで蓄電され、蓄電量Pが所定値P1まで到達すると放電し、この充放電を所定のピッチで連続的に繰り返す。そして、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rは、正常範囲(例えば、通信頻度R=3回)に維持される。この通信頻度Rが正常範囲にある場合、発熱部12の温度Qは正常(SF)であると判定する。
【0036】
これに対して、
図4(A)に示すように、本鉄道車両10が時間T4~T5まで車両速度V2にて走行した場合、
図4(B)に示すように、発熱部12の温度Qは、高温側異常(HN)の温度Q3まで上昇すると仮定する。この発熱部12の温度Q3への過大な温度上昇に伴って、
図4(C)に示すように、蓄電部22に蓄電する蓄電量Pが、発熱部12の温度Qが正常(SF)の場合より短時間で所定値P1まで到達する。蓄電量Pが所定値P1に到達すると放電し、この充放電を短時間で繰り返す。そして、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rは、過大範囲(例えば、通信頻度R=7回)に増加する。この通信頻度Rが過大範囲にある場合、発熱部12の温度Qは高温側異常(HN)であると判定する。
【0037】
さらに、
図4(A)に示すように、本鉄道車両10が時間T5~T6まで車両速度V2にて走行した場合、
図4(B)に示すように、発熱部12の温度Qは、低温側異常(LN)の温度Q1まで低下すると仮定する。この発熱部12の温度Q1への温度低下に伴って、
図4(C)に示すように、蓄電部22に蓄電する蓄電量Pが、発熱部12の温度Qが正常(SF)の場合より長時間かけて所定値P1まで到達する。蓄電量Pが所定値P1に到達すると放電し、この充放電を長時間かけて繰り返す。そして、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rは、過少範囲(例えば、通信頻度R=2回)に減少する。この通信頻度Rが過少範囲にある場合、発熱部12の温度Qは低温側異常(LN)であると判定する。なお、車両速度Vがゼロに近い速度しきい値V1以下で走行した場合、発熱部12の車輪11の回転運動に伴って発熱する熱量が低下するため、発熱部12の温度Qは、低温側異常(LN)の温度Q1まで低下するが、これは異常ではないと判定する。
【0038】
以上のように、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信する通信頻度Rは、発熱部12の温度Qの変動を反映して、増減する。また、通信頻度Rは、発熱部12の時間経過に伴う温度変化を表している。また、発熱部12の温度異常を温度センサを用いることなく、推定することができ、コスト低減や設置スペースの低減に寄与できる。したがって、演算・判定部26の判定結果によって、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部12の故障に対する予兆を把握しやすい。
【0039】
よって、本鉄道車両10によれば、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部12の故障に対する予兆を把握しやすいモニタリング装置2を備えた鉄道車両10を提供することができる。
【0040】
また、本鉄道車両10においては、
図4、
図5、
図6に示すように、演算・判定部26は、通信頻度Rが高温側異常しきい値R4より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q3は高温側異常(HN)と判定することが好ましい。
【0041】
この場合、通信頻度Rが過大となる高温側異常しきい値R4を発熱部12の発熱特性に応じて設定することによって、発熱部12の温度Qを、温度が過大となる高温側異常(HN)として判定でき、発熱部12における高温側の温度異常の原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。そのため、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12の高温に伴う故障を未然に防止して、本鉄道車両10の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0042】
また、本鉄道車両10においては、
図4、
図5、
図6に示すように、演算・判定部26は、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいと認定し、かつ車両速度Vが速度しきい値V1より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q1は低温側異常(LN)と判定することが好ましい。
【0043】
この場合、通信頻度Rが過小となる低温側異常しきい値R1を発熱部12の発熱特性に応じて設定することによって、発熱部12の温度Qを、温度が過小となる低温側異常(LN)として判定でき、発熱部12における低温側の温度異常の原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。そのため、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12の低温に伴う故障を未然に防止して、本鉄道車両10の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0044】
具体的には、
図5に示すように、演算・判定部26は、第1比較ステップS1と、第2比較ステップS2と、判定ステップS3とを備え、以下の手順に従って、発熱部12の温度異常の有無を判定する。
【0045】
まず、第1比較ステップS1にて、通信頻度Rが高温側異常しきい値R4より大きいか否かを認定する。通信頻度Rが高温側異常しきい値R4より大きいと認定した場合は、判定ステップS3の第1ステップS31にて、発熱部12の温度Qを、温度が過大となる高温側異常(HN)と判定する。
【0046】
次に、第1比較ステップS1にて、通信頻度Rが高温側異常しきい値R4以下であると認定した場合、第2比較ステップS2にて、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいか否かと、車両速度Vが速度しきい値V1より大きいか否かと、を認定する。通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいと認定し、かつ車両速度Vが速度しきい値V1より大きいと認定した場合は、判定ステップS3の第2ステップS32にて、発熱部12の温度Qを、温度が過小となる低温側異常(LN)と判定する。そして、判定ステップS3の第1ステップS31及び第2ステップS32にて発熱部12の温度Qを高温側異常(HN)及び低温側異常(LN)と判定しない場合、判定ステップS3の第3ステップS33にて発熱部12の温度Q2は正常(SF)と判定する。
【0047】
これによって、発熱部12の温度Qを、通信頻度Rの高温側異常しきい値R4及び低温側異常しきい値R1を基準にして、温度が過大となる高温側異常(HN)と、温度が過少となる低温側異常(LN)とに区別して判定でき、発熱部12における温度異常の程度や原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。そのため、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12の故障を未然に防止して、鉄道車両10の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0048】
なお、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいと認定し、かつ車両速度Vが速度しきい値V1より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q1は低温側異常(LN)と判定することによって、発熱部12における潤滑油の油抜け等の不具合を推定できる。また、発熱部12における潤滑油は、通常、発熱部12の下部に貯留されるため、熱電変換素子21Nからなる熱電発電部21を発熱部12の下部に装着することによって、発熱部12における潤滑油の油抜け不具合を監視しやすくなる。
【0049】
また、本鉄道車両10においては、
図6に示すように、モニタ・表示部27は、期間又は走行距離に対する通信頻度Rの推移グラフK1、K2、K3と、発熱部12の温度異常の有無との相関図を表示することが好ましい。期間又は走行距離は、任意に設定することができる。例えば、日毎又は月毎に通信頻度Rを集計して、その平均値HRを推移グラフK1、K2、K3として表示しても良い。ここでは、推移グラフK1、K2、K3は、発熱部12の所在地又は名称毎に作成されている。推移グラフK1は、車両左方の軸箱121に対応し、推移グラフK2は、車両右方の軸箱122に対応し、推移グラフK3は、歯車装置123に対応する。また、
図6に示す推移グラフK1、K2、K3は、折れ線グラフとして作成されているが、推移グラフの作成形態はこれに限る必要はない。
【0050】
この場合、通信頻度Rの推移グラフK1、K2、K3に反映される発熱部12の温度状況の変化を、期間又は走行距離に対応して確認することができ、発熱部12の故障の予兆をより一層正確に把握することができる。そのため、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12の故障を未然に防止して、鉄道車両10の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0051】
また、本鉄道車両10においては、
図3に示すように、子機2aには、送信部24が送信する送信信号SSGに対して、熱電発電部21を装着した発熱部12の所在地又は名称121、122、123を付与するアドレス付与部241を備えることが好ましい。所在地又は名称121、122、123は、熱電発電部21を装着した発熱部12を他の発熱部12と区別できれば、どのような形態で付与しても良い。
【0052】
この場合、発熱部12の所在地又は名称121、122、123毎の温度異常を判定して、それぞれの発熱部12におけるメンテナンスに対する優先度等を検討することができる。そのため、熱電発電部21を装着した発熱部12の所在地又は名称121、122、123に対応した処置を計画的に進め、より効率的なメンテナンスを行うことができる。また、同一種類の発熱部12の温度状況の変化を、時系列に沿って確認して、その特異性を把握することによって、特有の問題がないか検討することができる。
【0053】
<変形例>
なお、本鉄道車両10は、本発明の要旨を変更しない範囲で、各種形態に変更できることは言うまでもない。例えば、本鉄道車両10においては、演算・判定部26は、通信頻度Rが高温側異常しきい値R4より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q3は高温側異常(HN)と判定し、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいと認定し、かつ車両速度Vが速度しきい値V1より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q1は低温側異常(LN)と判定し、高温側異常(HN)及び低温側異常(LN)と判定しない場合、発熱部12の温度Q2は正常(SF)と判定する。しかし、演算・判定部26は、必ずしも上記構成に限定される必要はない。
【0054】
例えば、
図6に示すように、発熱部12の正常(SF)な温度範囲の下限に対応して、通信頻度Rの正常下限しきい値R2を、低温側異常しきい値R1より大きく設定し、また、発熱部12の正常(SF)な温度範囲の上限に対応して、通信頻度Rの正常上限しきい値R3を、高温側異常しきい値R4より小さく設定しても良い。
【0055】
そして、演算・判定部26は、通信頻度Rが正常下限しきい値R2と正常上限しきい値R3との間にあると認定した場合に、発熱部12の温度Qは、正常(SF)であると判定し、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1と正常下限しきい値R2との間にあると認定した場合に、発熱部12の温度Qは、下限側の要注意(AT2)であると判定し、通信頻度Rが高温側異常しきい値R4と正常上限しきい値R3との間にあると認定した場合に、発熱部12の温度Qは、上限側の要注意(AT1)であると判定しても良い。この場合、発熱部12の温度状況の変化を、要注意(AT1、AT2)の範囲において確認することができ、発熱部12の故障をより一層確実に防止することができる。
【0056】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10によれば、モニタリング装置2は、発熱部12の外表面に装着した熱電変換素子21Nからなる熱電発電部21と、熱電発電部21が発電した電力を蓄電する蓄電部22と、蓄電部22に蓄電した蓄電量Pが所定値P1に達したときに放電指令する放電制御部23と、放電制御部23の放電指令に基づいて蓄電部22から放電された電力によって送信信号SSGを送信する送信部24と、を有する子機2aと、送信部24から送信された送信信号SSGを受信する受信部25と、受信部25が送信信号SSGを一定時間内に受信した通信頻度Rに基づいて、発熱部12の温度異常の有無を判定する演算・判定部26と、を有する親機2bと、を備えている。
【0057】
すなわち、本鉄道車両10のモニタリング装置2は、発熱部12の外表面に装着した熱電変換素子21Nからなる熱電発電部21と、熱電発電部21が発電した電力を蓄電する蓄電部22と、を備えているので、熱電変換素子21Nが装着された発熱部12の外表面の温度と雰囲気の温度との温度差に略比例して、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pが、増加する。具体的には、熱電変換素子21Nが装着された発熱部12の外表面の温度と、雰囲気の温度との温度差が増大するほど、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pの増加スピードが速くなる。また、熱電変換素子21Nが装着された発熱部12の外表面の温度と、雰囲気の温度との温度差が減少するほど、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pの増加スピードが遅くなる。
【0058】
ところで、発熱部12の外表面は、外気に接しているので、発熱部12の外表面の温度自体は、雰囲気の温度の影響を受けて変動するが、発熱部12の外表面の温度と雰囲気の温度との温度差は、雰囲気の温度の影響を受けにくい。したがって、熱電発電部21が発電して蓄電部22に蓄電する蓄電量Pの増加スピードは、雰囲気の温度の影響を受けにくく、発熱部12の温度Qの上昇・下降(即ち、発熱部12での摩擦等に伴う発熱量の増減)を反映しやすい。
【0059】
そして、放電制御部23は、蓄電部22の蓄電量Pが所定値P1に達したときに放電指令し、送信部24は、放電指令に基づいて蓄電部22から放電された電力によって、送信信号SSGを、例えば、所定時間tだけ受信部25に送信する。そのため、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信する通信頻度Rは、発熱部12の温度Qの変動を反映して、増減する。また、通信頻度Rは、発熱部12の時間経過に伴う温度変化を表している。また、発熱部12の温度異常を温度センサを用いることなく、推定することができ、コスト低減や設置スペースの低減に寄与できる。
【0060】
また、演算・判定部26は、受信部25が送信信号SSGを一定時間ΔT内に受信した通信頻度Rに基づいて、発熱部12の温度異常の有無を判定する。そのため、演算・判定部26の判定結果によって、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部12の故障に対する予兆を把握しやすい。
【0061】
よって、本実施形態によれば、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12における温度異常を簡単且つ効率的に監視でき、発熱部12の故障に対する予兆を把握しやすいモニタリング装置2を備えた鉄道車両10を提供することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、演算・判定部26は、通信頻度Rが高温側異常しきい値R4より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q3は高温側異常(HN)と判定するので、通信頻度Rが過大となる高温側異常しきい値R4を発熱部12の発熱特性に応じて設定することによって、通信頻度が高温側異常しきい値より大きい場合、発熱部の温度を、温度が過大となる高温側異常として判定でき、発熱部における高温側の温度異常の原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。そのため、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部の高温に伴う故障を未然に防止して、鉄道車両の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、演算・判定部26は、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいと認定し、かつ車両速度Vが速度しきい値V1より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q1は低温側異常(LN)と判定するので、通信頻度Rが過小となる低温側異常しきい値R1を発熱部12の発熱特性に応じて設定することによって、発熱部12の温度Qを、温度が過小となる低温側異常(LN)として判定でき、発熱部12における低温側の温度異常の原因を、より迅速かつ正確に推定することができる。そのため、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12の低温に伴う故障を未然に防止して、本鉄道車両10の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。なお、通信頻度Rが低温側異常しきい値R1より小さいと認定し、かつ車両速度Vが速度しきい値V1より大きいと認定した場合、発熱部12の温度Q1は低温側異常(LN)と判定することによって、発熱部12における潤滑油の油抜け等の不具合を推定できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、モニタ・表示部27は、期間又は走行距離に対する通信頻度Rの推移グラフK1、K2、K3と、発熱部12の温度異常との相関図を表示するので、通信頻度Rの推移グラフK1、K2、K3に反映される発熱部12の温度状況の変化を、期間又は走行距離に対応して確認することができ、発熱部12の故障の予兆をより一層正確に把握することができる。そのため、車輪11の回転運動に関与して発熱する発熱部12の故障を未然に防止して、鉄道車両10の走行時における安全性、安定性、快適性等をより一層高めることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、子機2aには、送信部24が送信する送信信号SSGに対して、熱電発電部21を装着した発熱部12の所在地又は名称121、122、123を付与するアドレス付与部241を備えたので、発熱部12の所在地又は名称121、122、123毎の温度異常を判定して、それぞれの発熱部12におけるメンテナンスに対する優先度等を検討することができる。そのため、熱電発電部21を装着した発熱部12の所在地又は名称121、122、123に対応した処置を計画的に進め、より効率的なメンテナンスを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車輪の回転運動に関与して発熱する発熱部における温度異常を監視するモニタリング装置を備えた鉄道車両として利用できる。
【符号の説明】
【0067】
2 モニタリング装置
2a 子機
2b 親機
10 鉄道車両
11 車輪
12 発熱部
21 熱電発電部
21N 熱電変換素子
22 蓄電部
23 放電制御部
24 送信部
25 受信部
26 演算・判定部
27 モニタ・表示部
121、122 軸箱(所在地又は名称)
123 歯車装置(所在地又は名称)
241 アドレス付与部
HN 高温側異常
K1、K2、K3 推移グラフ
LN 低温側異常
P 蓄電量
P1 所定値
Q 温度
R 通信頻度
R1 低温側異常しきい値
R4 高温側異常しきい値
SF 正常
SSG 送信信号
t 所定時間
ΔT 一定時間
V 車両速度
V1 速度しきい値