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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172246
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/365 20071001AFI20241205BHJP
   B60K 6/383 20071001ALI20241205BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241205BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241205BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241205BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
B60K6/365 ZHV
B60K6/383
B60K6/48
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089831
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】後田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】川崎 優太
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA00
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB11
3D202CC36
3D202CC37
3D202DD18
3D202DD26
3D202EE10
3D202EE15
(57)【要約】
【課題】エンジンと電動モータの合力により、油圧ポンプを作動する構成で、回転数の速い側を優先して利用し、選択されなかった側は停止を行う構造の作業車両。
【解決手段】
エンジンキャリア内に、エンジン出力軸から連結されているサンギヤがあり、その外周に遊星歯車機構を備え、遊星歯車機構のピニオンギヤにワンウェイクラッチを有し、遊星歯車機構のリングギヤ部で電動モータと合力する機構とすることで、エンジンか電動モータの回転数の速い方の動力を出力として利用する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源としてエンジン(101)、及び電動モータ(120)があり、
エンジンキャリア内に、エンジン出力軸(104)から連結されているサンギヤ(131)があり、その外周に遊星歯車機構(130)を備え、
遊星歯車機構(130)の外周部にあたるリングギヤー(136)に、前記電動モータの入力ギヤー(121)から動力が伝達される機構であり、
前記、遊星歯車機構(130)のピニオンギヤ(132)には、ワンウェイクラッチ(133)を有しており、
エンジン、及び電動モータにおいて、回転数の速い方の動力を油圧ポンプ(150)に出力する作業車両。
【請求項2】
エンジンキャリア出力軸(135)への動力出力において、入力動力を切断されたエンジン(101)又は電動モータ(120)の可動を所定時間後に停止する制御と、エンジンキャリア出力軸(135)の回転数の変更により、エンジン(101)又は、電動モータ(120)の動力の切換が必要とされた時、所定時間前に可動側のエンジン(101)又は、電動モータ(120)を作動させる制御を行う、請求項1の作業車両。
【請求項3】
駆動力源としてエンジン(101A)、及び電動モータ(120A)があり、
エンジンキャリア内に、エンジン出力軸(104A)から連結されているサンギヤ(131A)があり、その外周に遊星歯車機構(130A)を備え、
遊星歯車機構(130A)の外周部にあたるリングギヤー(136A)に、前記電動モータの入力ギヤー(121A)から動力が伝達される機構であり、
エンジン出力軸(104A)にはクラッチ(137)が配備されており、サンギヤ(131A)への動力伝達を入り切りが可能であり、
遊星歯車機構のピニオンギヤ(132A)には、ワンウェイクラッチを有しておらず、
クラッチ(137)を入れた場合は、エンジン(101A)と電動モータ(120A)の合算動力となり、クラッチ(137)を切ると、電動モータ(120A)のみの動力となる作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと電動モータを動力として油圧ポンプへ出力し、車両の走行と作業機の動作を行う作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプをエンジンまたは電動モータで駆動し、各ギヤーのかみ合いで伝動元を切り替える構成で、駆動軸にワンウェイクラッチを配備し、回転数の高い動力源を利用する。
(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-315059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、エンジン側、電動モータ側の主軸にそれぞれのワンウェイクラッチを有している。頻繁にエンジンと電動モータの動力の切換がある場合は、主軸にワンウェイクラッチを配備することは、効率の面では高い構成であるが、農業機械等では低回転と高回転に一定時間は固定されて、高回転時は高負荷で運転が継続されるため、高負荷時の耐久性に影響があると考えられる。
【0005】
本発明では、高負荷時の耐久性をさらに向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、次の技術手段により解決される。
【0007】
駆動力源としてエンジン、及び電動モータがあり、エンジンキャリア内に、エンジン出力軸から連結されているサンギヤがあり、その外周に遊星歯車機構を備え、遊星歯車機構の外周部にあたるリングギヤに、前記電動モータからの入力ギヤーから動力が伝達される機構であり、前記、遊星歯車機構のピニオンギヤには、ワンウェイクラッチを有しており、エンジン、及び電動モータにおいて、回転数の速い方の動力を油圧ポンプに出力する。
【0008】
第二の発明は、次の技術手段により解決される。
【0009】
エンジンキャリアの出力軸への動力が切断された側の可動を所定時間後に停止する制御と、エンジンキャリアの出力軸の回転数の変更により、エンジン又は、電動モータの動力の切換が必要とされた時、所定時間前に駆動側のエンジン又は、電動モータを作動させる制御を行う。
【0010】
第三の発明は、次の技術手段により解決される。
【0011】
駆動力源としてエンジン、及び電動モータがあり、エンジンキャリア内に、エンジン出力軸から連結されているサンギヤがあり、その外周に遊星歯車機構を備え、遊星歯車機構の外周部にあたるリングギヤに、前記電動モータからの入力ギヤーから動力が伝達される機構であり、エンジンからの入力軸にはクラッチが配備されており、サンギヤへの動力伝達を入り切りが可能であり、遊星歯車機構のピニオンギヤには、ワンウェイクラッチを有しておらず、クラッチを入れた場合は、エンジンと電動モータの合算動力となり、クラッチを切ると、電動モータのみの動力となる。
【発明の効果】
【0012】
第一の発明より、ピンオンギヤにワンウェイクラッチを設けたことで、高回転、高負荷時に、ワンウェイクラッチにかかる動力を分散させる構成である。作業車両であるため、突発的な高負荷が発生する場合があるが、こうした場合でも反発力を分散して受けるため耐久性を十分に保つことができる。
【0013】
第二の発明より、より高回転側から動力を受けたとしても、切り換え時のショックも少なく、滑らかに切り換えすることができる。また停止側の動力を自動で停止できるため動力の省力化にもなる。
【0014】
第三の発明より、動力源として、より大きいエンジン側の入力軸にクラッチを配備することで、手動による動力の入り切りを行うことで、作業車両の耐久性向上と、最低の動力を維持することで安全作業対応を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の作業車両の動力伝達機構の全体を示す実態図。
図2】本発明の作業車両のエンジンと電動モータ、遊星歯車機構の配置図。
図3】本発明の作業車両の油圧ポンプへの伝動機構の配置図。
図4】本発明のエンジンと電動モータ、遊星歯車機構の配置図。
図5】本発明のエンジン出力軸にクラッチを配備した場合の配置図。
図6】本発明の別形態の作業車両における動力伝達機構の全体を示す実態図。
図7】本発明の別形態の作業車両における、動力伝達機構の部分拡大図。
図8】本発明のエンジンから電動モータへ動力切換のフローチャート。
図9】本発明の電動モータからエンジンへ動力切換のフローチャート。
図10】本発明の電動モータに遊星歯車機構を備え、エンジンの動力を合力として取り込む機構でスタータモータを配備した断面図。
図11】本発明の電動モータに遊星歯車機構を備え、エンジンの動力を合力として取り込む機構でスタータモータを配備した模式図。
図12】本発明のエンジンに遊星歯車機構を備え、電動モータの動力を合力として取り込む機構でスタータモータを配備した断面図。
図13】本発明のエンジンに遊星歯車機構を備え、電動モータの動力を合力として取り込む機構でスタータモータを配備した模式図。
図14】本発明のエンジンに遊星歯車機構を備え、電動モータの動力を合力として取り込む機構の断面図。
図15】本発明のエンジンに遊星歯車機構を備え、電動モータの動力を合力として取り込む機構の模式図。
図16】本発明のエンジンに遊星歯車機構を備え、電動モータの動力を合力として取り込む機構でエンジン出力軸にクラッチを備えた断面図。
図17】本発明のエンジンに遊星歯車機構を備え、電動モータの動力を合力として取り込む機構でエンジン出力軸にクラッチを備えた模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を説明する。
【0017】
図1図17に示す作業車両は、本実施形態の一例を示すものである。
【0018】
本発明の背景を説明する。
【0019】
油圧ポンプにより走行、作業機を可動させる作業車両では、自動車と異なり、高回転、高負荷で連続して運転する場合や、最低限の動力で油圧ポンプをパイロット圧で待機させる作業機の制御がある。
【0020】
こういった使用方法では、高回転側に動力をスムーズに変更することや、また電動モータを利用した充電制御等、様々な切換が必要であり、ワンウェイクラッチを適所に備えることで、この仕様を満足させる機構が要求される。
【0021】
本発明は、農業作業、建設作業で要求のある制御であり、作業車両では、トラクタ、田植機、コンバイン、乗用管理機等が上げられるが、実施例では乗用管理機、コンバインを代表として説明を行う。
【0022】
本発明の実施形態として、乗用管理機をベースとした内容で、図1にて説明をする。図1では作業車両の外装部品を外した状態の図であり、図2と3は部分拡大図であるが、説明しやすいように、部分をカットや省略した形状で内部を表現しており、実態の完成段階の作業車両では、着脱できない部品の組付けを表記している部位もある。
【0023】
作業車両100の前方部で、ボンネットに入る領域に動力発生装置がまとめられている。バッテリ110は、電動モータ120の電力であり、また作業車両の操作装置180の作動電源として利用する。電動モータ120を充電器として利用する場合は、バッテリ110に蓄電される。
【0024】
電動モータ120の横にはエンジン101が配備される。電動モータ120とエンジン101の出力軸は、同方向で並行にある。エンジンの吸気部103と排気部102は、エンジン側にコンパクトにまとめられており、排気用のマフラは、外装のボンネット(非表示)を貫き外部に出ている。
【0025】
エンジンと電動モータの合力を行う動力伝動機構130について説明する。
【0026】
図3、4に記載のように、エンジン101の出力軸の先端にはサンギヤ131がある。このサンギヤ131を取り巻くように遊星歯車機構がある。遊星歯車機構では、遊星歯車にあたるピニオンギヤ132がサンギヤ131と外周のリングギヤ136の間に入る形で配備される。例えば、外周のリングギヤ136が固定であれば、サンギヤ131の直径とピンオンギヤ132の直径より、ピニオンギヤ132が回転数を増速するが、この増速の負荷による回転の差分が発生すると、遊星キャリア134が回転を始める。遊星キャリア134はエンジンキャリア出力軸135に連結されている。
【0027】
また外周のリングギヤ136は、前述では、固定した場合として説明したが、実施形態では回転を行う構成であり、電動モータ120の回転を電動モータギヤ121としてリングギヤ136に伝達する。リングギヤ136の外周に歯形が構成されており、電動モータギヤ121の歯形にかみ合う構成で、電動モータギヤ121の回転は、外周のリングギヤ136に合力することが可能である。
【0028】
例えば、外周のリングギヤ136を、サンギヤ131と反対回転になるように、電動モータ120の回転をさせると電動モータ120の駆動は合力となり、遊星キャリア134がより回転を増し、回転トルクも増加する。
【0029】
なお、本図では、平歯車の形状で簡易な記載をしているが、動力の大きい場合はヘリカルギヤー(ダブルヘリカルギヤも含む)が良い。また図4においては、電動モータギヤ121~外周のリングギヤ136までをむき出しで表現しているが、これらの部位は、エンジンキャリア内に収められてあり、潤滑油で保護された構成であり、エンジンキャリア出力軸135のみ、エンジンキャリアから外部に出ている形である。
【0030】
エンジンキャリア内の潤滑であるが、電動モータギヤ121~外周のリングギヤ136を別のケースとして個別の潤滑油で保護するも、エンジン101の潤滑油と合わせ、エンジンキャリア内を一括で管理できる構成でも良い。
【0031】
動力周辺部の熱ごもり対応では、エンジンの冷却として水冷のラジエータ140を備える。エンジン101とラジエータ140はラジエータホース141にて連結されて、冷却水を循環することでラジエータで放熱をする。ラジエータ140にはラジエータファンが内蔵され、車両の前方から吸引し、バッテリ110、電動モータ120、動力伝動機構130を冷却しながら、ラジエータ140の冷却を行う。吸熱した風は、作業車両の下方から排出され、操作席には直接、排気風が当たらない構成である。動力伝動機構130は、エンジンキャリアから外部に出す構成もあるが、エンジンのケース内に収め込む構成で、前述のようにエンジン101の潤滑油と合わせ、エンジンキャリア内を一括で管理できる構成にもなり、小型化ができる上に冷却も可能となる。
【0032】
前述のエンジン101のエンジンキャリア出力軸135は、後方に備える油圧ポンプ150へ動力が入力される。油圧ポンプ150はHST機構が連結してあり、出力される回転数は可変され、走行速度の変更、作業機の回転数変更、各位置に備える小型の油圧ポンプの作動速度の変更を行う。
【0033】
また図3では、エンジン101のエンジンキャリア出力軸135と、油圧ポンプ150の入力軸がずれている状態である。この場合は、Vベルト等を利用して伝動する方法がある。
【0034】
エンジン101と電動モータ120の動力の使い分けについて説明する。
【0035】
エンジン回転は、低速回転数で作動させると、回転にバラ付きが発生しトルクが安定しない場合もある。また負荷がかかるとノッキングしたり、回転が停止する場合もあり、低回転では、動力は電動モータの方が安定している。特に燃費という観点では、エンジンの低回転は効率が悪く、インバータ制御を利用した電動モータによる低回転運転の方が効率が良い。
【0036】
電動モータの低回転の利用では、油圧ポンプを基礎圧力となるパイロット圧に維持することで、油圧ポンプを作動させる時に瞬時に作動開始でき、尚且つ、ゆっくりとした微小な動きも対応することができる。パイロット圧を維持していない場合は、瞬時の作動をすることができず、また一気に高圧がかかると油圧ポンプが大きく動く場合もあり、作動開始時にゆっくり動くという作動ができない可能性が高い。
【0037】
駐車ブレーキの作動対応も可能である。エンジンをアイドリングストップさせる機能が作動した場合、作業機の格納動作により油圧アクチュエータの作動を行う必要が生じた場合は、電動モータが回転を開始し、作業機の格納が終了するまで電動モータが作動することで対応する。作業機の格納が終了すると電動モータは停止する。このような僅かな動力での対応は、エンジンから電動モータへの切換を行うことで省エネ運転も可能となる。
【0038】
作業車両の特徴は、高回転、高負荷で維持する作業が長いという点である。この高回転ではエンジンの回転の方が利用しやすく、負荷時も回転数の変動が少なく安定している。よって高出力、高回転ではエンジン回転のみとして、モータを停止させる制御を行う。
【0039】
さらにはモータアシストという手段がある。作業機の負荷によりエンジン回転数が低下してくる時の対応である。エンジンキャリア出力軸135にはトルクセンサや回転数センサを備えており、トルクや回転数が所定値以上、単位時間あたりの低下を検出した場合、電動モータ120を作動させる。
【0040】
前述に記載したように、外周のリングギヤ136を、サンギヤ131と反対回転になるように、電動モータ120の回転をさせると電動モータ120の駆動は合力となり、遊星キャリア134がより回転を増し、回転トルクも増加する。この構成により、エンジン回転が低下した場合、電動モータ120によるアシスト機能を作動させることで、出力を安定させることができる。
【0041】
エンジン101と電動モータ120の動力の切換は、あらかじめエンジンの出力回転数で切換する場合や、エンジンの出力トルクで切換する場合の設定が可能である。
【0042】
本発明の耐久性を向上させる構成で、ワンウェイクラッチの構成を説明する。
【0043】
ワンウェイクラッチの利用方法として、一方向のみ回転を受付し、逆回転は空回りするため、逆回転を禁止する部位では対応ができる。また回転数の速い方を利用する使い方も可能である。回転数が早くなると回転数の遅い側は必然的に逆回転したと同様となり、回転数の遅い側は動力が伝わらないようにすることが可能となる。
【0044】
この機能を利用することで、回転数の速い方の動力を取り入れることを機構的に可能とする。方策として、それぞれの動力伝達軸にワンウェイクラッチを配備することで要件を達成できる。この機構の場合、自動車のように車速が頻繁に変更される使用方法では、エンジンと電動モータの切換も頻繁に行われ、一方に偏った動力でないため、効率的な方法である。しかし、農業機械や建設機械では、走行系以外に作業機への動力が追加で必要となる。自動車と比較すると負荷変動は全く大きい。作業車両の待機状態でも、作業機の状態を保持するためパイロット圧を維持する必要があり、低回転で効果的に回転させる必要があり、エンジン回転よりも電動モータの回転がエネルギー効率的にも良い。また走行に限った運転においては、全体の動力からみると中間的な動力であり、電動モータでも対応が可能である。しかし作業機を作動させた走行では負荷は大きく、HSTの動力分配も行うことより、エンジンによる高回転運転が良い場合もあり、その切換の判断は出力動力の安定時を考慮して対応する必要がある。
【0045】
このように作業形態で回転数が異なる値で固定され、その状態で長時間維持される。そのため一方に動力が偏るため、主軸にワンウェイクラッチを配備すると一方の動力側に偏った現象となる場合もあり、耐久性に課題が出てくる。また効率的にも大きな主軸に備える場合は、その動力に適合したサイズのワンウェイクラッチが必要であり、効率面でも有効とは言えない。これらの課題も改善するための構成として、遊星歯車機構の複数あるピニオンギヤに、それぞれワンウェイクラッチを配備することで、負荷の分散だけではなく、ワンウェイクラッチ内で空回りする方向への落とし溝に落ち込む軸受け玉への負荷も低減される。これによって瞬時負荷が増大する時も、短い時間差であるが、順次、ワンウェイクラッチ内の軸受け玉が、必要な回転側を選択するため、一気に動力の選択先が変わることもなく、僅かながらも双方の動力の配分を変更しながらスムーズに対応することが可能であり、遊星歯車機構130のピニオンギヤ132に、ワンウェイクラッチ133を配備することで達成される。
【0046】
エンジン101と電動モータ120の回転数の速い側の動力をワンウェイクラッチで選択して取り込む構成であるが、動力の切れた側は、無駄な回転となるため停止をする必要がある。この場合、切り替わりの前後で、動力切断側を即時停止すると、再度、停止した側を利用する場合に対応ができない問題がある。
【0047】
この対応として、動力先の変更を受けた側が安定して動力を受け、動力先を変更しても問題ないと判断してから停止するようにする。この判断基準として、動力を変更する場合に切り替わりの時間で、所定時間はエンジンと電動モータの双方を作動させる時間を持つことである。
【0048】
図8は、エンジン101から電動モータ120への切換の流れのフローチャートを示している。エンジンキャリアの出力軸130の回転数を低下させる制御S8-1を行う。エンジン回転は、あらかじめ電動モータ130に切換する時の回転数が登録されており、所定回転数を下回ったことを検出するS8-2を行うと、電動モータ120の作動開始S8-4を行う。その後、電動モータ作動から所定時間を経過したどうかの判断であるS8-5を行う。
【0049】
しかし所定時間を経過した判断のみでは、再度、切換の元に動力を戻さなくてはならない時に、エンジン側が完全に停止してしまっていれば、即時に切換ができない場合も発生する。このためには、動力切換後に回転数が安定して安全範囲以上にあることを確認する必要がある。S8-7のごとく、電動モータ回転数が基準値β1を超え、エンジン回転数が基準値α1を下回り、それぞれの状態が安定していることを確認すれば、エンジンの回転を停止するS8-11を行うことができる。この一連の流れにて。電動モータへの動力変更が完了する。
【0050】
図9は、電動モータ120からエンジン101への切換の流れのフローチャートを示している。エンジンキャリアの出力軸130の回転数を上昇させる制御S9-1を行う。電動モータ回転は、あらかじめエンジン回転に切換する時の回転数が登録されており、所定回転数を上回ったことを検出するS9-2を行うと、エンジン101の作動開始S9-4を行う。その後、エンジン作動から所定時間を経過したどうかの判断であるS9-5を行う。
【0051】
しかし所定時間を経過した判断のみでは、再度、切換の元に動力を戻さなくてはならない時に、電動モータ側が完全に停止してしまっていれば、即時に切換ができない場合も発生する。このためには、動力切換後に回転数が安定して安全範囲以上にあることを確認する必要がある。S9-7のごとく、電動モータ回転数が基準値β2を下回り、エンジン回転数が基準値α2を上回り、それぞれの状態が安定していることを確認すれば、電動モータの回転を停止するS9-11を行うことができる。この一連の流れにて。エンジンへの動力変更が完了する。
【0052】
ワンウェイクラッチの位置を、遊星歯車機構のピニオンギヤに設けず、エンジン出力軸にクラッチが配備されており、サンギヤへの動力伝達を入り切りが可能な構成を説明する。
【0053】
図5による構成であるが、駆動力源としてエンジン101A、及び電動モータ120Aがある。互いの動力出力方向は同じ方向である。
【0054】
エンジンキャリア内に、エンジン出力軸104Aから連結されているサンギヤ131Aがあり、その外周に遊星歯車機構130Aを備えている。
【0055】
遊星歯車機構130Aの外周部にあたるリングギヤ136Aに、前記電動モータの入力ギヤー121Aから動力が伝達される機構である。
【0056】
エンジン出力軸104Aにはクラッチ137が配備されており、サンギヤ131Aへの動力伝達を入り切りが可能である。
【0057】
クラッチ137は、クラッチペダルに連結され、人の動作によって入り切りする機構であったり、または電動クラッチ機構で、電子制御による入り切りも可能な構成である。
【0058】
電子クラッチ機構では、エンジンが所定回転を下回るか、モータ回転数を下回る場合は自動で電子クラッチが切れるような制御を行う。これによって電動モータ120Aがエンジン101Aを逆回転をするようなことは防止できる。
【0059】
この構成は、モータ120Aの低速回転の利用と、電動モータ120Aとエンジン101Aを合力した高速回転数という、両極の回転数を利用する頻度が高い機種に適合できる。例えばトラクタで作業機が巨大な防除機で、作業動力が大きいものを牽引し作業を行うが、車両停止時は防除機ポンプのパイロット圧のみ確保のような使い方をする場合等が該当する。
【0060】
本発明の別形態の実施例について図6で説明する。
【0061】
エンジンキャリア出力軸135Bのプーリから、油圧ポンプ150Bのプーリへの動力の入力は、図中では記載をしていないが、互いをつなぐVベルトで伝達する方が、位置ずれ対応や、回転数の変更等で制御しやすいだけでなく、レイアウトの点でも有効である。
【0062】
図6は、コンバインへの搭載事例である。この形態では、エンジンキャリア出力軸135Bと油圧ポンプ150Bは向かい合う方向ではなく、並行状態に配置されたものである。
【0063】
エンジンキャリア出力軸135Bの動力は、先端に取り付けられた多段プーリ180にて動力分配され、走行系の油圧ケース190、油圧ポンプ150B、図には記載していないが、作業機への動力として伝動機構で伝達される構成である。
【0064】
図7は拡大図で、遊星歯車機構の保護ケースを省略した内部図の配備構成を示している。この形態においては、遊星歯車機構のピニオンギヤ132Bにワンウェイクラッチ133Bを備えており、エンジン101Bと電動モータ120Bの回転数の速い方を取り込む方法である。
【0065】
エンジンと電動モータと遊星歯車機構の組み合わせ構成の異なる実施例を以下、図面内容で説明する。
【0066】
図10図11は、電動モータ120Cに遊星歯車機構を備え、エンジン101Cの動力を合力として取り込む機構である。エンジンのスタータモータ122Cを、エンジンのフライホイール軸に連結させ始動する構成である。エンジンの出力軸104Cとは連動する構成である。この構成は、電動モータ120Cの出力を主体として、負荷の大きい時にエンジン101Cの動力を得るものである。環境に適合しやすく、ハウス内作業を主体とし、屋外作業も利用する場合もあるような環境に適合する。
【0067】
図12図13は、エンジン101Dに遊星歯車機構を備え、電動モータ120Dの動力を合力として取り込む機構である。エンジンのスタータモータ122Dを、エンジンのフライホイール軸に連結させ始動する構成である。エンジンの出力軸104Dとは連動する構成である。この構成は、エンジン101Dの出力を主体として、負荷の小さい時に電動モータ120Dの動力を得るものである。屋外の作業で出力の多い作業を主体とするが、屋内の作業にも利用する場合等、幅広い利用が可能である。
【0068】
図14図15は、第一の発明である図3図4を図式化したものである。エンジン101Eに遊星歯車機構を備え、電動モータ120Eの動力を合力として取り込む機構である。この機構では、電動モータ120Eの回転を利用することで、エンジン101Eのスタータモータとしての役目をなすものである。
【0069】
図16図17は、第三の発明である図5を図式化したものである。エンジン101Fに遊星歯車機構を備え、電動モータ120Fの動力を合力として取り込む機構である。この機構では、電動モータ120Fの回転を利用することで、エンジン101Eのスタータモータとしての役目をなすものである。またクラッチ137Fを備え、動力の入り切りを行う点が特長である。
【0070】
図14図17の図式化した内容は、図1~4の外観形状や図6図7の形態もとれるように、外観形態や仕様による変化は範囲内である。同様な内容で、図10図14の図式化された構成図による実態配置、形状は発明の範囲以内である。
【符号の説明】
【0071】
100 作業車両
101 エンジン
110 バッテリ
120 電動モータ
130 遊星歯車機構
131 サンギヤ
132 ピニオンギヤ
133 ワンウェイクラッチ
134 遊星キャリア
135 エンジンキャリア出力軸
136 リングギヤ
140 ラジエータ
150 油圧ポンプ
図1
図2
図3
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