(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172247
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B61D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089832
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(57)【要約】
【課題】押出形材を配置した側構体に形成した側出入口におけるスミ金の位置決め精度を向上しつつ、スミ金の補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】押出し方向が車両長手方向になる複数の押出形材11を配置した側構体GKに形成した側出入口12を補強する入口柱21とスミ金22とを有する入口枠2を備えた鉄道車両10である。入口柱とスミ金は、互いに別体として形成されている。スミ金は、コーナ部に接続されたスミ金本体部22Hと、スミ金本体部の側出入口側に形成された円弧部221と、車両長手方向へ延設された水平部222と、車両上下方向へ延設された垂直部223と、を備え、スミ金本体部と円弧部と水平部と垂直部とが、一体に形成されている。水平部は、側出入口の周端縁と直線状に繋がる境界部23で接続されている。垂直部は、入口柱の周縁部211と直線状に繋がる境界部24で接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に形成した側出入口を備え、前記側出入口の車両上下方向に沿って形成した側端部を補強する入口柱と、前記側出入口のコーナ部を補強するスミ金と、を有し、前記側出入口の周端縁に沿って装着された入口枠を備えた鉄道車両であって、
前記入口柱と前記スミ金は、互いに別体として形成され、
前記スミ金は、前記コーナ部に接続されたスミ金本体部と、前記スミ金本体部の側出入口側で円弧状に形成された円弧部と、前記円弧部の一方の先端側で車両長手方向へ延設された水平部と、前記円弧部の他方の先端側で車両上下方向へ延設された垂直部と、を備え、前記スミ金本体部と前記円弧部と前記水平部と前記垂直部とが、一体に形成され、
前記水平部は、前記側出入口の車両長手方向へ延設された前記周端縁と直線状に繋がる境界部で接続され、前記垂直部は、前記入口柱の側出入口側で車両上下方向へ延設された周縁部と直線状に繋がる境界部で接続されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記スミ金は、前記スミ金本体部と一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部を備え、
前記水平端部は、前記押出形材の外板と内板とを連結する連結板を水平状に切り欠いた切欠き部における前記外板と前記内板との間に挟まれた状態で挿入された挿入部を有し、前記挿入部は、前記連結板が切り欠かれた位置の前記外板及び前記内板と溶接されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記側出入口の鴨居部又は敷居部を構成する前記周端縁は、前記押出形材の外板と内板とを連結し、前記内板より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部を一体に有する連結板によって形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記スミ金は、前記スミ金本体部の車両外方側で車両上下方向へ延設された外垂直端部と、前記スミ金本体部の車両内方側で車両上下方向へ延設された内垂直端部と、を備え、
前記外垂直端部は、前記コーナ部及び前記側端部における同一の前記押出形材の外板に接続され、前記内垂直端部は、前記コーナ部及び前記側端部における同一の前記押出形材の内板に接続されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記入口柱は、前記側端部における前記押出形材の外板に接続された外板接続部と、前記側端部における前記押出形材の内板に接続された内板接続部と、を備えた中空形材として形成され、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記入口柱は、前記側端部における前記押出形材の外板に接続された外板接続部と、前記側出入口に装着されたヒンジ扉を閉じ位置で受け止める扉受け部とが、連結部によって連結され、車両幅方向で階段状断面に形成された入口柱本体部と、前記扉受け部に車両内方から接続された扉受け補強部と、を備え、
前記入口柱本体部は、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成され、前記扉受け補強部は、車両上下方向で分割して形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、より詳しくは、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に側出入口を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体質量の軽量化、車体剛性の向上、製作費用の低減等の観点から、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材(例えば、アルミニウム合金製のダブルスキン形材)を配置した側構体を備えた鉄道車両が、採用されている。このような鉄道車両では、乗客等が乗り降りする側出入口を、必要な強度及び剛性を確保しつつ側構体に形成するため、側出入口の周端縁に沿って装着する、以下のような入口枠が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、
図16に示すように、乗客等が乗り降りする側出入口202を側構体201に形成するため、押出し方向が車両長手方向になるように配置した複数の押出形材203を車両上下方向に沿って切断すると共に、側出入口202の上方のコーナ部202bを円弧状に切断し、切断した車両上下方向の側端部202aを補強する直線状の入口柱204Aと、側出入口202のコーナ部202bを補強する円弧状のスミ金204Bとが、一体に形成された入口枠204を、側出入口202の周端縁205に沿って装着した鉄道車両200が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記鉄道車両200では、以下のような問題があった。すなわち、上記鉄道車両200の入口枠204は、
図17に示すように、側出入口202側の周縁部204sと、当該周縁部204sの車両幅方向の両端部に直交する外フランジ部204aと、内フランジ部204bと、を備えたチャンネル形材として形成され、外フランジ部204aのフランジ長が内フランジ部204bのフランジ長より短く形成されている。そして、直線状の入口柱204Aにおいては、外フランジ部204aの先端部は、押出形材203の外板203aに室内側から当接し、内フランジ部204bの先端部は、押出形材203の内板203bに室内側から当接し、それぞれの当接部を溶接している。
【0006】
ところが、
図16、
図18に示すように、上記鉄道車両200の入口枠204は、直線状の入口柱204Aと円弧状のスミ金204Bとが、一体に形成されている。そのため、円弧状のスミ金204Bは、フランジ長の長い内フランジ部204bを切除して、直線状の入口柱204Aに対して曲げ加工して形成する必要があった。その結果、入口柱204Aに対するスミ金204Bのスプリングバックやねじれ等が生じやすく、スミ金204Bの位置決め精度を確保しにくいという問題があった。
【0007】
また、スミ金204Bは、フランジ長の長い内フランジ部204bを切除しているので、切除した内フランジ部204bの隙間を閉じる塞ぎ板206を溶接しているが、溶接部の信頼性から、側出入口202のコーナ部202bを補強する円弧状のスミ金204Bは、十分な補強効果を発揮しにくいという問題があった。さらに、スミ金204Bの内フランジ部204bを切除する作業と、塞ぎ板206を溶接する作業とが、増加するという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に形成した側出入口における、コーナ部に装着するスミ金の位置決め精度を向上しつつ、そのコーナ部に対するスミ金の補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に形成した側出入口を備え、前記側出入口の車両上下方向に沿って形成した側端部を補強する入口柱と、前記側出入口のコーナ部を補強するスミ金と、を有し、前記側出入口の周端縁に沿って装着された入口枠を備えた鉄道車両であって、
前記入口柱と前記スミ金は、互いに別体として形成され、
前記スミ金は、前記コーナ部に接続されたスミ金本体部と、前記スミ金本体部の側出入口側で円弧状に形成された円弧部と、前記円弧部の一方の先端側で車両長手方向へ延設された水平部と、前記円弧部の他方の先端側で車両上下方向へ延設された垂直部と、を備え、前記スミ金本体部と前記円弧部と前記水平部と前記垂直部とが、一体に形成され、
前記水平部は、前記側出入口の車両長手方向へ延設された前記周端縁と直線状に繋がる境界部で接続され、前記垂直部は、前記入口柱の側出入口側で車両上下方向へ延設された周縁部と直線状に繋がる境界部で接続されていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、入口柱とスミ金は、互いに別体として形成されているので、入口柱とスミ金とを、互いに独立した状態で、側出入口の周端縁における適正位置に装着することができる。そのため、側出入口の車両上下方向に沿って形成した側端部に対して、入口柱を精度良く装着でき、側出入口のコーナ部に対して、スミ金を精度良く装着できる。その結果、側出入口における側端部に装着する入口柱の位置決め精度を向上できると共に、側出入口におけるコーナ部に装着するスミ金の位置決め精度を向上できる。
【0011】
また、スミ金は、コーナ部に接続されたスミ金本体部と、スミ金本体部の側出入口側で円弧状に形成された円弧部と、円弧部の一方の先端側で車両長手方向へ延設された水平部と、円弧部の他方の先端側で車両上下方向へ延設された垂直部と、を備え、スミ金本体部と円弧部と水平部と垂直部とが、一体に形成されているので、側出入口のコーナ部に作用する負荷を、スミ金本体部から円弧部と水平部と垂直部とに分散できる。特に、円弧部のR止り部は、応力集中により高い応力が発生しやすいが、スミ金本体部と円弧部と水平部と垂直部とが一体に形成されたことによって、スミ金の母材強度によって円弧部のR止り部に発生する高い応力に対抗することができる。そのため、側出入口のコーナ部を補強するスミ金の補強効果を向上させることができる。
【0012】
また、水平部は、側出入口の車両長手方向へ延設された周端縁と直線状に繋がる境界部で接続され、垂直部は、入口柱の側出入口側で車両上下方向へ延設された周縁部と直線状に繋がる境界部で接続されているので、それら各境界部における溶接部は、円弧部のR止り部から離間しており、当該溶接部に作用する応力も低減できる。また、上記境界部で水平部と周端縁とを接続する溶接、及び上記境界部で垂直部と周縁部とを接続する溶接は、円弧状に繋がる境界部で接続する溶接に比較して、その溶接及び仕上げ作業も簡単にできる。
【0013】
よって、本発明によれば、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に形成した側出入口における、コーナ部に装着するスミ金の位置決め精度を向上しつつ、そのコーナ部に対するスミ金の補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両を提供することができる。
【0014】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記スミ金は、前記スミ金本体部と一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部を備え、
前記水平端部は、前記押出形材の外板と内板とを連結する連結板を水平状に切り欠いた切欠き部における前記外板と前記内板との間に挟まれた状態で挿入された挿入部を有し、前記挿入部は、前記連結板が切り欠かれた位置の前記外板及び前記内板と溶接されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、スミ金は、スミ金本体部と一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部を備え、水平端部は、押出形材の外板と内板とを連結する連結板を水平状に切り欠いた切欠き部における外板と内板との間に挟まれた状態で挿入された挿入部を有し、挿入部は、連結板が切り欠かれた位置の外板及び内板と溶接されているので、スミ金の水平端部を、押出形材の外板及び内板によって、車両幅方向でより確実に位置決めしながら、押出形材の外板及び内板と、より強固に連結することができる。そのため、側出入口のコーナ部に装着するスミ金の位置決め精度をより一層向上させつつ、そのコーナ部に対するスミ金の補強効果をより一層高めることができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記側出入口の鴨居部又は敷居部を構成する前記周端縁は、前記押出形材の外板と内板とを連結し、前記内板より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部を一体に有する連結板によって形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、側出入口の鴨居部又は敷居部を構成する周端縁は、押出形材の外板と内板とを連結し、内板より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部を一体に有する連結板によって形成されているので、連結板の車両幅方向寸法を鍔部によって拡張でき、側出入口の鴨居部又は敷居部における強度及び剛性を高めることができる。また、鴨居部又は敷居部における強度及び剛性を高めることによって、鴨居部又は敷居部と連接する側出入口のコーナ部に装着されたスミ金の補強効果をより一層高めることができる。また、鴨居部又は敷居部を構成する連結板は、鍔部を一体に有することによって、連結板に鍔部を溶接する等の作業を不要とすることができる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記スミ金は、前記スミ金本体部の車両外方側で車両上下方向へ延設された外垂直端部と、前記スミ金本体部の車両内方側で車両上下方向へ延設された内垂直端部と、を備え、
前記外垂直端部は、前記コーナ部及び前記側端部における同一の前記押出形材の外板に接続され、前記内垂直端部は、前記コーナ部及び前記側端部における同一の前記押出形材の内板に接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、スミ金は、スミ金本体部の車両外方側で車両上下方向へ延設された外垂直端部と、スミ金本体部の車両内方側で車両上下方向へ延設された内垂直端部と、を備え、外垂直端部は、コーナ部及び側端部における同一の押出形材の外板に接続され、内垂直端部は、コーナ部及び側端部における同一の押出形材の内板に接続されているので、スミ金は、側出入口の車両上下方向に沿って形成した側端部の一部を、同一の押出形材を介して連続状に補強することができる。そのため、側出入口のコーナ部に装着されたスミ金の補強効果をより一層拡張することができる。
【0020】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記入口柱は、前記側端部における前記押出形材の外板に接続された外板接続部と、前記側端部における前記押出形材の内板に接続された内板接続部と、を備えた中空形材として形成され、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、入口柱は、側端部における押出形材の外板に接続された外板接続部と、側端部における押出形材の内板に接続された内板接続部と、を備えた中空形材として形成され、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成されているので、側構体が車両幅方向へ折れ曲がっている場合には、その折れ曲がりに追従して入口柱を折り曲げ加工することができる。そのため、入口柱を車両上下方向で分割し、分割した入口柱を車両幅方向へ折り曲げた状態で溶接等によって接続する作業を省くことができる。
【0022】
(6)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記入口柱は、前記側端部における前記押出形材の外板に接続された外板接続部と、前記側出入口に装着されたヒンジ扉を閉じ位置で受け止める扉受け部とが、連結部によって連結され、車両幅方向で階段状断面に形成された入口柱本体部と、前記扉受け部に車両内方から接続された扉受け補強部と、を備え、
前記入口柱本体部は、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成され、前記扉受け補強部は、車両上下方向で分割して形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、入口柱は、側端部における押出形材の外板に接続された外板接続部と、側出入口に装着されたヒンジ扉を閉じ位置で受け止める扉受け部とが、連結部によって連結され、車両幅方向で階段状断面に形成された入口柱本体部と、扉受け部に車両内方から接続された扉受け補強部と、を備え、入口柱本体部は、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成され、扉受け補強部は、車両上下方向で分割して形成されているので、側構体が車両幅方向で折れ曲がっている場合には、その折れ曲がりに追従して入口柱本体部を車両幅方向へ折り曲げた状態で、分割した扉受け補強部を、折り曲げた入口柱本体部の扉受け部に接続することができる。そのため、入口柱本体部を車両上下方向で分割し、分割した入口柱本体部を折り曲げた状態で溶接等によって接続する作業を省くことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に形成した側出入口における、コーナ部に装着するスミ金の位置決め精度を向上しつつ、そのコーナ部に対するスミ金の補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図である。
【
図2】
図1に示すA部の側出入口に扉がない状態で車両外方から見た側面図である。
【
図3】
図2に示すB1部の車両外方から見た斜視図である。
【
図4】
図2に示すB1部の車両外方から見た拡大側面図である。
【
図5】
図4に示すD1-D1断面図であって、(a)は鴨居部を構成する押出形材の連結板を切り欠いた位置で外板と内板との間にスミ金の水平端部が挿入された状態の断面図を示し、(b)は鴨居部を構成する押出形材の連結板を切り欠いた状態の断面図を示す。
【
図9】
図2に示すC1部の車両外方から見た斜視図である。
【
図10】
図2に示すC1部の車両内方から見た側面図である。
【
図15】
図4に示すスミ金の比較例を車両外方から見た拡大側面図である。
【
図16】特許文献1に開示された鉄道車両の側構体に側出入口を形成した箇所を車両内方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<本鉄道車両の構成>
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図を示す。
図2に、
図1に示すA部の側出入口に扉がない状態で車両外方から見た側面図を示す。
図1、
図2に示すように、本態様の鉄道車両10は、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材11を配置した側構体GKに形成した側出入口12(12A、12B)を備えている。また、本鉄道車両10は、側出入口12(12A、12B)の車両上下方向に沿って形成した側端部121、121Bを補強する入口柱21(21、21B)と、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bを補強するスミ金22、22Bと、を有し、側出入口12(12A、12B)の周端縁123、123Bに沿って装着された入口枠2、2Bを備えている。
【0028】
具体的には、上記鉄道車両10は、レールRL上を走行する台車DSと、台車DSに空気ばね等を介して支持される台枠DWと、台枠DWの車両幅方向の両端部から上方に起立する側構体GKと、台枠DWの車両長手方向の両端部から上方に起立する妻構体TKと、側構体GK及び妻構体TKの上端部に接続された屋根構体YKと、を備えている。また、側構体GKは、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材11を配置し、各押出形材11の繋ぎ部が、車両長手方向に沿って、例えば、摩擦撹拌溶接等によって接続されている。押出形材11は、例えば、アルミ合金製のダブルスキン形材を用いることができる。
【0029】
上記側構体GKには、側窓GMと、側窓GMとは異なる位置に、乗客等が乗り降りする乗客用の側出入口12Aと、乗員が乗り降りする乗員用の側出入口12Bと、を備えている。乗客用の側出入口12Aは、左右2つのスライド扉GT1が車両長手方向へスライドして開閉するように、開口幅の広い矩形状に形成されている。この乗客用の側出入口12Aは、側構体GKの車両中央寄りに複数(例えば、3つ)形成されている。これに対して、乗員用の側出入口12Bは、1つのヒンジ扉GT2が車両外方へ回転して開閉するように、開口幅の狭い矩形状に形成されている。ここでは、乗員用の側出入口12Bは、側構体GKの妻構体TK寄りに各1つ形成されているが、一方の妻構体TK寄りのみに1つ形成されている場合や、全く形成されていない場合がある。
【0030】
そして、上記側出入口12(12A、12B)は、屋根構体YKに隣接する位置から台枠DW上方の床面の位置まで形成され、側構体GKの押出形材11を車両上下方向に沿って切断して形成した側端部121、121Bを補強する入口柱21(21、21B)と、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bを補強するスミ金22、22Bと、を有し、側出入口12(12A、12B)の周端縁123、123Bに沿って装着された入口枠2、2Bを備えている。ここでは、
図2のB1部、B2部、及びC1部、C2部に示すように、側出入口12(12A、12B)の上方のコーナ部122、122Bを補強するスミ金22、22Bの例で説明する。
【0031】
(乗客用の側出入口)
はじめに、乗客用の側出入口12Aの周端縁123に沿って装着された入口枠2について、
図3~
図8、
図15を参照しつつ説明する。なお、側出入口12Aの車両前方の入口枠2と車両後方の入口枠2は、側出入口12Aにおける車両上下方向の中心線に対して、対称に形成されているので、ここでは、車両後方の入口枠2を説明し、車両前方の入口枠2の説明は割愛する。
【0032】
図3に、
図2に示すB1部の車両外方から見た斜視図を示す。
図4に、
図2に示すB1部の車両外方から見た拡大側面図を示す。
図3、
図4に示すように、入口枠2を構成する入口柱21とスミ金22は、互いに別体として形成されている。したがって、入口柱21とスミ金22とを、互いに独立した状態で、側出入口12の周端縁123における適正位置に装着することができる。そのため、側出入口12の車両上下方向に沿って形成した側端部121に対して、入口柱21を精度良く装着でき、側出入口12のコーナ部122に対して、スミ金22を精度良く装着できる。その結果、側出入口12におけるコーナ部122に装着するスミ金22の位置決め精度を向上できる。なお、コーナ部122は、車両長手方向に形成された水平端縁122aと車両上下方向に形成された垂直端縁122bとを有し、水平端縁122aと垂直端縁122bとが直角状に交差し、垂直端縁122bは、側端部121と直線状に繋がっている。
【0033】
また、スミ金22は、コーナ部122に接続されたスミ金本体部22Hと、スミ金本体部22Hの側出入口12側で円弧状に形成された円弧部221と、円弧部221の一方の先端(R止り部221a)側で車両長手方向へ延設された水平部222と、円弧部221の他方の先端(R止り部221b)側で車両上下方向へ延設された垂直部223と、を備え、スミ金本体部22Hと円弧部221と水平部222と垂直部223とが、一体に形成されている。
【0034】
したがって、側出入口12のコーナ部122に作用する車体重量や乗客等の負荷を、スミ金本体部22Hから円弧部221と水平部222と垂直部223とに分散できる。特に、円弧部221のR止り部(221a、221b)は、上記負荷に基づく応力集中により高い応力が発生しやすいが、スミ金本体部22Hと円弧部221と水平部222と垂直部223とが一体に形成されたことによって、スミ金22の母材強度によって円弧部221のR止り部(221a、221b)に発生する高い応力に対抗することができる。そのため、側出入口12のコーナ部122を補強するスミ金22の補強効果を向上させることができる。なお、スミ金22は、スミ金本体部22Hと円弧部221と水平部222と垂直部223とが一体に形成されているので、例えば、アルミニウム合金製の金属塊を機械加工することによって製作することができる。
【0035】
また、水平部222は、側出入口12の車両長手方向へ延設された周端縁123と直線状に繋がる境界部23で接続され、垂直部223は、入口柱21の側出入口12側で車両上下方向へ延設された周縁部211と直線状に繋がる境界部24で接続されている。各境界部23、24は、開先が取られ、肉盛り溶接した後を、グラインダー等で仕上げている。したがって、それら各境界部23、24における溶接部は、円弧部221のR止り部(221a、221b)から離間しており、当該溶接部に作用する応力も低減できる。また、上記境界部23で水平部222と周端縁123とを接続する溶接、及び上記境界部24で垂直部223と周縁部211とを接続する溶接は、
図15に示す比較例のように円弧状に繋がる境界部で接続する溶接に比較して、その溶接及び仕上げ作業も簡単にできる。
【0036】
よって、本態様の鉄道車両10によれば、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材11を配置した側構体GKに形成した側出入口12Aにおける、コーナ部122に装着するスミ金22の位置決め精度を向上しつつ、そのコーナ部122に対するスミ金22の補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両10を提供することができる。
【0037】
なお、
図15に、
図4に示すスミ金の比較例を車両外方から見た拡大側面図を示す。
図15に示すように、比較例の鉄道車両100では、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材103を配置した側構体101に形成した側出入口102に、互いに別体として形成した入口柱104aと円弧部104bsを有するスミ金104bとで構成した入口枠104を、装着する点で、上述した本鉄道車両10と共通する。ところが、この比較例では、押出形材103の外板103aと内板103bとを連結する連結板103cによって、側出入口102の鴨居部105を構成し、スミ金104bは、鴨居部105を構成する連結板103cに対して、車両下方から突き当てた状態で溶接されている点が、本鉄道車両10と相違する。
【0038】
この比較例では、スミ金104bは、鴨居部105を構成する連結板103cに対して、車両下方から突き当てた状態で溶接されているので、円弧部104bsの先端部104btは、先細り形状となり、機械加工が困難なため、微小な平坦部が形成されている。そして、スミ金104bの先端部104btと鴨居部105とを接続するため、その交差部106に多くの肉盛り溶接をした上で、グラインダー等によって円弧状に仕上げる必要がある。その結果、比較例のスミ金104bでは、交差部106における肉盛り溶接、及びグラインダー仕上げ等の作業量が多くなるという問題があった。また、スミ金104bの円弧状の先端部104btと鴨居部105との交差部106は、円弧のR止り部となって、高い応力が発生しやすく、この交差部106が肉盛り溶接部となるため、強度的に不利となるという問題があった。さらに、スミ金104bは、鴨居部105を構成する連結板103cに対して当接する構造であるので、位置ずれが生じやすいという問題があった。これに対して、本態様の鉄道車両10によれば、上記比較例の諸問題を、上述したように効果的に解消できる。
【0039】
また、
図5に、
図4に示すD1-D1断面図であって、(a)は鴨居部を構成する押出形材の連結板を切り欠いた位置で外板と内板との間にスミ金の水平端部が挿入された状態の断面図を示し、(b)は鴨居部を構成する押出形材の連結板を切り欠いた状態の断面図を示す。
図4、
図5に示すように、本鉄道車両10において、スミ金22は、以下の構成を備えていることが好ましい。すなわち、スミ金22は、スミ金本体部22Hと一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部224を備えている。水平端部224は、スミ金本体部22Hの上端側で車両前端側から車両後端側まで連続状に形成されている。また、水平端部224は、押出形材11の外板111と内板112とを連結する連結板113を水平状に切り欠いた切欠き部114における外板111と内板112との間に挟まれた状態で挿入された挿入部224aを有している。また、挿入部224aは、連結板113が切り欠かれた位置の外板111及び内板112と溶接されている。
【0040】
上記構成によれば、スミ金22の水平端部224を、押出形材11の外板111及び内板112が挟持することによって、車両幅方向でより確実に位置決めしながら、押出形材11の外板111及び内板112と、より強固に連結することができる。そのため、側出入口12のコーナ部122に装着するスミ金22の位置決め精度をより一層向上させつつ、そのコーナ部122に対するスミ金22の補強効果をより一層高めることができる。
【0041】
また、
図6に、
図4に示すD2-D2断面図を示す。
図4、
図6に示すように、本鉄道車両10において、押出形材11は、以下の構成を備えていることが好ましい。すなわち、側出入口12の上端側の鴨居部123Kを構成する周端縁123は、押出形材11の外板111と内板112とを連結し、内板112より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部116を一体に有する連結板113によって形成されていることが好ましい。鍔部116は、連結板113と一体となって押出成形されている。
【0042】
上記構成によれば、連結板113の車両幅方向寸法d1を鍔部116によって拡張でき、側出入口12の上端側の鴨居部123Kにおける強度及び剛性を高めることができる。また、鴨居部123Kにおける強度及び剛性を高めることによって、鴨居部123Kと連接する側出入口12の上方のコーナ部122に装着されたスミ金22の補強効果を、より一層高めることができる。また、鴨居部123Kを構成する連結板113は、鍔部116を一体に有することによって、連結板113に鍔部116を溶接する等の作業を不要とすることができる。
【0043】
なお、鴨居部123Kを形成する連結板113の板厚は、外板111と内板112とをダブルスキン中空内で連結するウェブ板115の板厚より厚いことが好ましい。この場合、鴨居部123Kにおける強度及び剛性を、さらに高めることによって、鴨居部123Kと連接する側出入口12の上方のコーナ部122に装着されたスミ金22の補強効果を、さらに高めることができる。また、スミ金22の補強効果を高めるため、
図5(a)に示すように、スミ金22の水平端部224には、鴨居部123Kを構成する連結板113の鍔部116と略同一断面となる突出部225を設けることが好ましい。
【0044】
また、
図7に、
図4に示すE1-E1断面図を示す。
図4、
図7に示すように、本鉄道車両10において、スミ金22は、以下の構成を備えていることが好ましい。すなわち、スミ金22は、スミ金本体部22Hの車両外方側で車両上下方向へ延設された外垂直端部226と、スミ金本体部22Hの車両内方側で車両上下方向へ延設された内垂直端部227と、を備え、外垂直端部226は、コーナ部122及び側端部121における同一の押出形材11の外板111に接続され、内垂直端部227は、コーナ部122及び側端部121における同一の押出形材11の内板112に接続されていることが好ましい。
【0045】
上記構成によれば、スミ金22は、側出入口12の車両上下方向に沿って形成した側端部121の一部を、同一の押出形材11を介して連続状に補強することができる。そのため、側出入口12のコーナ部122に装着されたスミ金22の補強効果をより一層拡張させることができる。なお、スミ金本体部22Hの車両幅方向寸法d1は、鍔部116によって拡張した連結板113の車両幅方向寸法d1と同一に形成されていることが好ましい。これによっても、スミ金22の補強効果をより一層高めることができる。
【0046】
また、外垂直端部226は、押出形材11の外板111に車両内方から当接して接続され、内垂直端部227は、押出形材11の内板112に車両内方から当接して接続されている。そのため、押出形材11の内板112は、外板111より側出入口12の開口幅が広く形成されている。この開口幅の差に対応して、外垂直端部226は、スミ金本体部22Hの車両外方で、外板111の板厚分だけ凹んだ段差面として形成されている。また、内垂直端部227は、スミ金本体部22Hの車両内方で、スミ金本体部22H側の基端部の厚さを、内板112と接続する先端部の厚さより厚く形成されている。上記構成によって、スミ金22は、押出形材11と接続する箇所を切り欠く必要がなく、補強効果を高めることができる。
【0047】
また、
図8に、
図4に示すE2-E2断面図を示す。
図4、
図8に示すように、本鉄道車両10において、入口柱21は、側端部121における押出形材11の外板111に接続された外板接続部212aと、側端部121における押出形材11の内板112に接続された内板接続部213aと、を備えた中空形材21Tとして形成され、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成されていることが好ましい。ここで、中空形材21Tは、側出入口12側で車両上下方向へ延設された周縁部211と、車両外方側で車両上下方向へ延設された外壁部212と、車両内方側で車両上下方向へ延設された内壁部213と、反側出入口側で車両上下方向へ延設された横壁部214とが、略角筒状に連結されて形成されている。外板接続部212aは、横壁部214と連結する外壁部212の外面に、外板111の板厚分だけ凹んだ段差面として形成されている。また、内板接続部213aは、横壁部214と内壁部213との交差部から反側出入口側へ突出して形成されている。
【0048】
上記構成によれば、側構体GKが車両幅方向へ折れ曲がっている場合には、その折れ曲がりに追従して入口柱21を折り曲げ加工することができる。そのため、入口柱21を車両上下方向で分割し、分割した入口柱21を車両幅方向へ折り曲げた状態で溶接等によって接続するという無駄な作業を省くことができる。
【0049】
(乗員用の側出入口)
次に、乗員用の側出入口12Bの周端縁123Bに沿って装着された入口枠2Bについて、
図9~
図14を参照しつつ説明する。なお、
図2に示すように、側出入口12Bの車両前方の入口枠2Bと車両後方の入口枠2Bは、側出入口12Bにおける車両上下方向の中心線に対して、略対称に形成されているので、ここでは、車両後方の入口枠2Bを説明し、車両前方の入口枠2Bの説明は割愛する。なお、車両前方の入口枠2Bは、妻構体TKに車両上下方向に沿って形成した側端部121Bに対して装着しても良い。
【0050】
図9に、
図2に示すC1部の車両外方から見た斜視図を示す。
図10に、
図2に示すC1部の車両内方から見た拡大側面図を示す。
図9、
図10に示すように、入口枠2Bを構成する入口柱21Bとスミ金22Bは、互いに別体として形成されている。したがって、入口柱21Bとスミ金22Bとを、互いに独立した状態で、側出入口12Bの周端縁123Bにおける適正位置に装着することができる。そのため、側出入口12Bの車両上下方向に沿って形成した側端部121Bに対して、入口柱21Bを精度良く装着でき、側出入口12Bのコーナ部122Bに対して、スミ金22Bを精度良く装着できる。その結果、側出入口12Bにおけるコーナ部122Bに装着するスミ金22Bの位置決め精度を向上できる。なお、コーナ部122Bは、車両長手方向に形成された水平端縁122aBと車両上下方向に形成された垂直端縁122bBとを有し、水平端縁122aBと垂直端縁122bBとが直角状に交差し、垂直端縁122bBは、側端部121Bと直線状に繋がっている。
【0051】
また、スミ金22Bは、コーナ部122Bに接続されたスミ金本体部22HBと、スミ金本体部22HBの側出入口12B側で円弧状に形成された円弧部221Bと、円弧部221Bの一方の先端(R止り部221aB)側で車両長手方向へ延設された水平部222Bと、円弧部221Bの他方の先端(R止り部221bB)側で車両上下方向へ延設された垂直部223Bと、を備え、スミ金本体部22HBと円弧部221Bと水平部222Bと垂直部223Bとが、一体に形成されている。
【0052】
したがって、側出入口12Bのコーナ部122Bに作用する負荷を、スミ金本体部22HBから円弧部221Bと水平部222Bと垂直部223Bとに分散できる。特に、円弧部221BのR止り部(221aB、221bB)は、応力集中により高い応力が発生しやすいが、スミ金本体部22HBと円弧部221Bと水平部222Bと垂直部223Bとが一体に形成されたことによって、スミ金22Bの母材強度によって円弧部221BのR止り部(221aB、221bB)に発生する高い応力に対抗することができる。そのため、側出入口12Bのコーナ部122Bを補強するスミ金22Bの補強効果を向上させることができる。なお、スミ金22Bは、例えば、アルミニウム合金製の金属塊を機械加工して製作することができる。
【0053】
また、水平部222Bは、側出入口12Bの車両長手方向へ延設された周端縁123Bと直線状に繋がる境界部23Bで接続され、垂直部223Bは、入口柱21Bの側出入口12B側で車両上下方向へ延設された周縁部211Bと直線状に繋がる境界部24Bで接続されている。各境界部23B、24Bは、開先が取られ、肉盛り溶接した後を、グラインダー等で仕上げている。したがって、それら各境界部23B、24Bで接続する溶接部は、円弧部221BのR止り部(221aB、221bB)から離間しており、当該溶接部に作用する応力も低減できる。また、上記境界部23Bで水平部222Bと周端縁123Bとを接続する溶接、及び上記境界部24Bで垂直部223Bと周縁部211Bとを接続する溶接は、
図15に示す比較例のように円弧状に繋がる境界部で接続する溶接に比較して、その溶接及び仕上げ作業も簡単にできる。
【0054】
よって、本態様の鉄道車両10によれば、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材11を配置した側構体GKに形成した側出入口12Bにおける、コーナ部122Bに装着するスミ金22Bの位置決め精度を向上しつつ、そのコーナ部122Bに対するスミ金22Bの補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両10を提供することができる。
【0055】
また、
図11に、
図10に示すF-F断面図を示す。
図9、
図10、
図11に示すように、本鉄道車両10において、スミ金22Bは、以下の構成を備えていることが好ましい。すなわち、スミ金22Bは、スミ金本体部22HBと一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部224Bを備えている。水平端部224Bは、スミ金本体部22HBの上端側で車両前端側から車両後端側まで連続状に形成されている。また、水平端部224Bは、押出形材11の外板111と内板112とを連結する連結板113を水平状に切り欠いた切欠き部114Bにおける外板111と内板112との間に挟まれた状態で挿入された挿入部224aBを有している。また、挿入部224aBは、連結板113が切り欠かれた位置の外板111及び内板112と溶接されている。
【0056】
上記構成によれば、スミ金22Bの水平端部224Bを、押出形材11の外板111及び内板112によって挟持することにより、車両幅方向でより確実に位置決めしながら、押出形材11の外板111及び内板112と、より強固に連結することができる。そのため、側出入口12Bのコーナ部122Bに装着するスミ金22Bの位置決め精度をより一層向上させつつ、そのコーナ部122Bに対するスミ金22Bの補強効果をより一層高めることができる。
【0057】
また、
図6、
図9、
図10に示すように、側出入口12Bの上端側の鴨居部123KBを構成する周端縁123Bは、押出形材11の外板111と内板112とを連結し、内板112より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部116を一体に有する連結板113によって形成されていることが好ましい。
【0058】
上記構成によれば、連結板113の車両幅方向寸法d1を鍔部116によって拡張でき、側出入口12Bの上端側の鴨居部123KBにおける強度及び剛性を高めることができる。また、鴨居部123KBにおける強度及び剛性を高めることによって、鴨居部123KBと連接する側出入口12Bの上方のコーナ部122Bに装着されたスミ金22Bの補強効果を、より一層高めることができる。また、鴨居部123KBを構成する連結板113は、鍔部116を一体に有することによって、連結板113に鍔部116を溶接する等の作業を不要とすることができる。
【0059】
なお、鴨居部123KBを形成する連結板113の板厚は、外板111と内板112とを中空内で連結するウェブ板115の板厚より厚いことが好ましい。この場合、鴨居部123KBにおける強度及び剛性を、さらに高めることによって、鴨居部123KBと連接する側出入口12Bの上方のコーナ部122Bに装着されたスミ金22Bの補強効果を、さらに高めることができる。また、スミ金22Bの補強効果を高めるため、
図11に示すように、スミ金22Bの水平端部224Bには、鴨居部123KBを構成する連結板113の鍔部116と略同一断面となる突出部225Bを設けることが好ましい。
【0060】
また、
図12に、
図10に示すG-G断面図を示す。
図9、
図10、
図12に示すように、本鉄道車両10において、スミ金22Bは、以下の構成を備えていることが好ましい。すなわち、スミ金22Bは、スミ金本体部22HBの車両外方で車両上下方向へ延設された外垂直端部226Bと、スミ金本体部22HBの車両内方で車両上下方向へ延設された内垂直端部227Bと、を備え、外垂直端部226Bは、コーナ部122B及び側端部121Bにおける同一の押出形材11の外板111に接続され、内垂直端部227Bは、コーナ部122B及び側端部121Bにおける同一の押出形材11の内板112に接続されていることが好ましい。
【0061】
上記構成によれば、スミ金22Bは、側出入口12Bの車両上下方向に沿って形成した側端部121Bの一部を、同一の押出形材11を介して連続状に補強することができる。そのため、側出入口12Bのコーナ部122Bに装着されたスミ金22Bの補強効果をより一層拡張させることができる。
【0062】
また、外垂直端部226Bは、押出形材11の外板111に車両内方から当接して接続され、内垂直端部227Bは、押出形材11の内板112に車両内方から当接して接続されている。そのため、押出形材11の内板112は、外板111より側出入口12の開口幅が広く形成されている。この開口幅の差に対応して、外垂直端部226Bは、スミ金本体部22HBの車両外方で、外板111の板厚分だけ凹んだ段差面として形成されている。また、内垂直端部227Bは、L字状断面に形成され、スミ金本体部22HBにおける外垂直端部226Bの車両内方側に接続されている。なお、内垂直端部227Bは、スミ金本体部22HBと入口柱21Bとの両方に接続されている。
【0063】
また、
図13に、
図2に示すC3-C3断面図を示す。
図14に、
図13に示すH‐H断面図を示す。
図1、
図2、
図13、
図14に示すように、本鉄道車両10において、入口柱21Bは、側端部121Bにおける押出形材11の外板111に接続された外板接続部212Bと、側出入口12Bに装着されたヒンジ扉GT2を閉じ位置で受け止める扉受け部213Bとが、傾斜状の連結部214Bによって連結され、車両幅方向で階段状断面に形成された入口柱本体部21HBと、扉受け部213Bに車両内方から接続された扉受け補強部25Bと、を備え、入口柱本体部21HBは、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成され、扉受け補強部25Bは、車両上下方向で分割して形成されていることが好ましい。
【0064】
上記構成によれば、側構体GKが車両幅方向で折れ曲がっている場合には、その折れ曲がりに追従して入口柱本体部21HBを車両幅方向へ折り曲げた状態で、分割した扉受け補強部25Bを折り曲げた入口柱本体部21HBの扉受け部213Bに接続することができる。具体的には、扉受け補強部25Bを、入口柱本体部21Hの直線部21HB1、21HB2に接続する上下2つの扉受け直線部25B1、25B2と、入口柱本体部21Hの折り曲げ部21HB3に接続する1つの扉受け折り曲げ部25B3とに分割し、扉受け折り曲げ部25B3を入口柱本体部21Hの折り曲げ部21HB3に沿うように曲げ加工した上で、それぞれを溶接等によって接続することができる。そのため、入口柱本体部21HBを車両上下方向で分割し、分割した入口柱本体部21HBを折り曲げた状態で溶接等によって接続するという無駄な作業を省くことができる。よって、入口枠2Bにおける溶接等の作業を低減できる。
【0065】
なお、入口柱本体部21HBは、外板接続部212Bと扉受け部213Bとが、傾斜状の連結部214Bによって連結された階段状断面に形成されているので、アルミ合金製の押出形材として形成でき、コスト低減できる。また、扉受け補強部25Bは、L字状断面のアングル形材として形成でき、コスト低減できる。
【0066】
<変形例>
なお、本鉄道車両10は、本発明の要旨を変更しない範囲で、各種形態に変更できることは言うまでもない。例えば、本鉄道車両10においては、側出入口12(12A、12B)は、側構体GKの押出形材11を車両上下方向に沿って切断して形成した側端部121、121Bを補強する入口柱21(21、21B)と、側出入口12(12A、12B)の上方のコーナ部122、122Bを補強するスミ金22、22Bと、を有し、側出入口12(12A、12B)の周端縁123、123Bに沿って装着された入口枠2、2Bを説明したが、スミ金は、上方のコーナ部122、122Bを補強するスミ金22、22Bに限定する必要はない。例えば、側出入口12(12A、12B)の下方のコーナ部についても、上記スミ金22、22Bと同様の構造で形成したスミ金を装着しても良い。この場合、台枠DWの側バリを押出形材11で形成し、スミ金の水平部は、側出入口12(12A、12B)の車両長手方向へ延設された敷居部を構成する押出形材11の連結板113と直線状に繋がる境界部で接続すれば良い。
【0067】
また、この下方のコーナ部に装着するスミ金は、スミ金本体部と一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部を備え、水平端部は、押出形材11の外板111と内板112とを連結する連結板113を水平状に切り欠いた切欠き部における外板111と内板112との間に挟まれた状態で挿入された挿入部を有し、挿入部は、連結板113が切り欠かれた位置の外板111及び内板112と溶接されていても良い。また、敷居部を構成する周端縁123は、押出形材11の外板111と内板112とを連結し、内板112より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部を一体に有する連結板113によって形成されていても良い。
【0068】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10によれば、入口柱21、21Bとスミ金22、22Bは、互いに別体として形成されているので、入口柱21、21Bとスミ金22、22Bとを、互いに独立した状態で、側出入口12(12A、12B)の周端縁123、123Bにおける適正位置に装着することができる。そのため、側出入口12(12A、12B)の車両上下方向に沿って形成した側端部121、121Bに対して、入口柱21、21Bを精度良く装着でき、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bに対して、スミ金22、22Bを精度良く装着できる。その結果、側出入口12(12A、12B)におけるコーナ部122、122Bに装着するスミ金22、22Bの位置決め精度を向上できる。
【0069】
また、スミ金22、22Bは、コーナ部122、122Bに接続されたスミ金本体部22H、22HBと、スミ金本体部22H、22HBの側出入口12(12A、12B)側で円弧状に形成された円弧部221、221Bと、円弧部221、221Bの一方の先端(R止り部221a、221aB)側で車両長手方向へ延設された水平部222、222Bと、円弧部221、221Bの他方の先端(R止り部221b、221bB)側で車両上下方向へ延設された垂直部223、223Bと、を備え、スミ金本体部22H、22HBと円弧部221、221Bと水平部222、222Bと垂直部223、223Bとが、一体に形成されているので、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bに作用する負荷を、スミ金本体部22H、22HBから円弧部221、221Bと水平部222、222Bと垂直部223、223Bとに分散できる。特に、円弧部221、221BのR止り部(221a、221b、221aB、221bB)は、応力集中により高い応力が発生しやすいが、スミ金本体部22H、22HBと円弧部221、221Bと水平部222、222Bと垂直部223、223Bとが一体に形成されたことによって、スミ金22、22Bの母材強度によって円弧部221、221BのR止り部(221a、221b、221aB、221bB)に発生する高い応力に対抗することができる。そのため、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bを補強するスミ金22、22Bの補強効果を向上させることができる。
【0070】
また、水平部222、222Bは、側出入口12(12A、12B)の車両長手方向へ延設された周端縁123、123Bと直線状に繋がる境界部23、23Bで接続され、垂直部223、223Bは、入口柱21、21Bの側出入口12(12A、12B)側で車両上下方向へ延設された周縁部211、211Bと直線状に繋がる境界部24、24Bで接続されているので、それら各境界部23、24、23B、24Bにおける溶接部は、円弧部221、221BのR止り部(221a、221b、221aB、221bB)から離間しており、当該溶接部に作用する応力も低減できる。また、上記境界部23、23Bで水平部222、222Bと周端縁123、123Bとを接続する溶接、及び上記境界部24、24Bで垂直部223、223Bと周縁部211、211Bとを接続する溶接は、円弧状に繋がる境界部で接続する溶接に比較して、その溶接及び仕上げ作業も簡単にできる。
【0071】
よって、本実施形態によれば、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材11を配置した側構体GKに形成した側出入口12(12A、12B)における、コーナ部122、122Bに装着するスミ金22、22Bの位置決め精度を向上しつつ、そのコーナ部122、122Bに対するスミ金22、22Bの補強効果を高め、溶接等の作業量を低減できる鉄道車両10を提供することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、スミ金22、22Bは、スミ金本体部22H、22HBと一体に形成され、車両長手方向へ水平状に延設された水平端部224、224Bを備え、水平端部224、224Bは、押出形材11の外板111と内板112とを連結する連結板113を水平状に切り欠いた切欠き部114、114Bにおける外板111と内板112との間に挟まれた状態で挿入された挿入部224a、224aBを有し、挿入部224a、224aBは、連結板113が切り欠かれた位置の外板111及び内板112と溶接されているので、スミ金22、22Bの水平端部224、224Bを、押出形材11の外板111及び内板112によって、車両幅方向でより確実に位置決めしながら、押出形材11の外板111及び内板112と、強固に連結することができる。そのため、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bに装着するスミ金22、22Bの位置決め精度をより一層向上させつつ、そのコーナ部122、122Bに対するスミ金22、22Bの補強効果をより一層高めることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、側出入口12(12A、12B)の鴨居部(又は敷居部)123K、123KBを構成する周端縁123、123Bは、押出形材11の外板111と内板112とを連結し、内板112より車両内方へ突出して車両長手方向へ延設された鍔部116を一体に有する連結板113によって形成されているので、連結板113の車両幅方向寸法d1を鍔部116によって拡張でき、側出入口12(12A、12B)の鴨居部(又は敷居部)123K、123KBにおける強度及び剛性を高めることができる。また、鴨居部(又は敷居部)123K、123KBにおける強度及び剛性を高めることによって、鴨居部(又は敷居部)123K、123KBと連接する側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bに装着されたスミ金22、22Bの補強効果をより一層高めることができる。また、鴨居部(又は敷居部)123K、123KBを構成する連結板113は、鍔部116を一体に有することによって、連結板113に鍔部116を溶接する等の作業を不要とすることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、スミ金22、22Bは、スミ金本体部22H、22HBの車両外方側で車両上下方向へ延設された外垂直端部226、226Bと、スミ金本体部22Hの車両内方側で車両上下方向へ延設された内垂直端部227、227Bと、を備え、外垂直端部226、226Bは、コーナ部122、122B及び側端部121、121Bにおける同一の押出形材11の外板111に接続され、内垂直端部227、227Bは、コーナ部122、122B及び側端部121、121Bにおける同一の押出形材11の内板112に接続されているので、スミ金22、22Bは、側出入口12(12A、12B)の車両上下方向に沿って形成した側端部121、121Bの一部を、同一の押出形材11を介して連続状に補強することができる。そのため、側出入口12(12A、12B)のコーナ部122、122Bに装着されたスミ金22、22Bの補強効果をより一層拡張することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、入口柱21は、側端部121における押出形材11の外板111に接続された外板接続部212aと、側端部121における押出形材11の内板112に接続された内板接続部213aと、を備えた中空形材21Tとして形成され、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成されているので、側構体GKが車両幅方向へ折れ曲がっている場合には、その折れ曲がりに追従して入口柱21を折り曲げ加工することができる。そのため、入口柱21を車両上下方向で分割し、分割した入口柱21を車両幅方向へ折り曲げた状態で溶接等によって接続する作業を省くことができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、入口柱21Bは、側端部121Bにおける押出形材11の外板111に接続された外板接続部212Bと、側出入口12Bに装着されたヒンジ扉GT2を閉じ位置で受け止める扉受け部213Bとが、連結部214Bによって連結され、車両幅方向で階段状断面に形成された入口柱本体部21HBと、扉受け部213Bに車両内方から接続された扉受け補強部25Bと、を備え、入口柱本体部21HBは、車両幅方向へ折り曲げ可能に形成され、扉受け補強部25Bは、車両上下方向で分割して形成されているので、側構体GKが車両幅方向で折れ曲がっている場合には、その折れ曲がりに追従して入口柱本体部21HBを車両幅方向へ折り曲げた状態で、分割した扉受け補強部25B(25B1、25B2、25B3)を、折り曲げた入口柱本体部21HBの扉受け部213Bに接続することができる。そのため、入口柱本体部21HBを車両上下方向で分割し、分割した入口柱本体部21HBを折り曲げた状態で溶接等によって接続する作業を省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、押出し方向が車両長手方向になるように複数の押出形材を配置した側構体に側出入口を備えた鉄道車両として利用できる。
【符号の説明】
【0078】
2、2B 入口枠
10 鉄道車両
11 押出形材
12、12A、12B 側出入口
21、21B 入口柱
21H、21HB 入口柱本体部
21T 中空形材
22、22B スミ金
23、23B、24、24B 境界部
22H、22HB スミ金本体部
25B、25B1、25B2、25B3 扉受け補強部
111 外板
112 内板
113 連結板
114、114B 切欠き部
116、116B 鍔部
121、121B 側端部
123、123B 周端縁
123K、123KB 鴨居部(敷居部)
211、211B 周縁部
212a 外板接続部
212B 外板接続部
213a 内板接続部
213B 扉受け部
214B 連結部
221、221B 円弧部
222、222B 水平部
223、223B 垂直部
224、224B 水平端部
224a、224aB 挿入部
226 外垂直端部
227 内垂直端部
227B 内板接続部
GK 側構体
GT2 ヒンジ扉