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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172249
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089834
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】町田 修
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740AA05
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
5H740JA01
5H740JB02
5H740KK01
5H740LL01
(57)【要約】
【課題】短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子のゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】ゲート駆動回路10は、第1スイッチS1と、第2スイッチS2と、を備える。また、ゲート駆動回路10は、パワー半導体素子Q0を駆動する第1半導体素子Q1及び第2半導体素子Q2を備える。さらに、ゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1、第2半導体素子Q2、第1スイッチS1、及び第2スイッチS2のオンオフを制御する制御部100を備える。制御部100は、第1スイッチS1がオン、及び第2スイッチS2がオフの状態で、第2半導体素子Q2をオンからオフに制御した後、第1半導体素子Q1をオンさせることで、パワー半導体素子Q0をターンオンさせる。また制御部100は、ターンオンした後、所定の期間経過後に、第2スイッチS2をオンにし、その後、第1スイッチS1をオフにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子が第1外部端子に接続され、第2の端子が第2外部端子に接続されたパワー半導体素子を駆動するための駆動回路であって、
第1の電圧を供給する第1補助電源と、
第2の電圧を供給する第2補助電源と、
前記第1補助電源及び前記第2補助電源に挟まれたゼロ電位である第1ノードと、
前記第2の端子と、前記第1ノードとの間に設けられた、第1スイッチと、
前記第2外部端子と、前記第1ノードとの間に設けられた、第2スイッチと、
第4の端子が前記第1補助電源の正極側に接続され、第5の端子が前記パワー半導体素子の第3の端子に接続された第1半導体素子と、
第6の端子が前記第2補助電源の負極側に接続され、第7の端子が前記パワー半導体素子の前記第3の端子に接続された第2半導体素子と、
前記第1半導体素子、前記第2半導体素子、前記第1スイッチ、及び前記第2スイッチのオンオフを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1スイッチがオン、及び前記第2スイッチがオフの状態で、前記第2半導体素子をオンからオフに制御した後、前記第1半導体素子をオンさせることで、前記パワー半導体素子をターンオンさせ、
前記制御部は、前記パワー半導体素子がターンオンした後、所定の期間経過後に、前記第2スイッチをオンにし、その後、前記第1スイッチをオフにする、ゲート駆動回路。
【請求項2】
第1の端子が第1外部端子に接続され、第2の端子が第2外部端子に接続されたパワー半導体素子を駆動するための駆動回路であって、
負極側が前記第2外部端子に接続され、正極側から第1の電圧を供給する第1補助電源と、
正極側が前記第2外部端子に接続され、負極側から第2の電圧を供給する第2補助電源と、
負極側が前記第2の端子に接続され、正極側から第3の電圧を供給する補助電圧供給源と、
前記第2外部端子に接続され、前記第1補助電源の負極側及び前記第2補助電源の正極側に位置し、ゼロ電位である第1ノードと、
第4の端子が前記第1補助電源の正極側に接続され、第5の端子が前記パワー半導体素子の第3の端子に接続された第1半導体素子と、
第6の端子が前記第2補助電源の負極側に接続され、第7の端子が前記パワー半導体素子の前記第3の端子に接続された第2半導体素子と、
第8の端子が前記補助電圧供給源に接続され、第9の端子が前記パワー半導体素子の前記第3の端子に接続された第3半導体素子と、
前記第1半導体素子、前記第2半導体素子、及び前記第3半導体素子のオンオフを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2半導体素子をオンからオフにした後、前記第3半導体素子をオフから所定の期間オンにし、前記第3半導体素子がオンの状態である期間に前記第1半導体素子をオンさせることで、前記第3半導体素子をオフさせた後も前記パワー半導体素子のオン状態を維持する、ゲート駆動回路。
【請求項3】
前記補助電圧供給源は、前記第1補助電源とは異なる電源であって、負極側が前記パワー半導体素子の前記第2の端子に接続された第3補助電源である、請求項2に記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
前記補助電圧供給源は、コンデンサで構成され、
アノードが前記第1補助電源の正極側に接続され、カソードが前記コンデンサ及び前記第3半導体素子の前記第8の端子に接続された補助ダイオードをさらに備える、請求項2に記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
前記補助ダイオードと直列に接続された補助抵抗をさらに備える、請求項4に記載のゲート駆動回路。
【請求項6】
前記第1半導体素子の前記第5の端子と、前記パワー半導体素子の前記第3の端子との間に設けられた第1ゲート抵抗をさらに備える、請求項2に記載のゲート駆動回路。
【請求項7】
前記第1半導体素子の前記第5の端子と、前記パワー半導体素子の前記第3の端子との間に設けられ、アノード側が前記第5の端子と電気的に接続され、前記第1ゲート抵抗と直列に接続された第1ダイオードをさらに備える、請求項6に記載のゲート駆動回路。
【請求項8】
前記第2半導体素子の前記第7の端子と、前記パワー半導体素子の前記第3の端子との間に設けられた第2ゲート抵抗、及び/又は、
前記第3半導体素子の前記第9の端子と、前記パワー半導体素子の前記第3の端子との間に設けられた第3ゲート抵抗、をさらに備える、請求項6又は7に記載のゲート駆動回路。
【請求項9】
第1の端子が第1外部端子に接続され、第2の端子が第2外部端子に接続されたパワー半導体素子を駆動するための駆動回路であって、
負極側が前記第2外部端子に接続され、正極側から第1の電圧を供給する第1補助電源と、
正極側が前記第2外部端子に接続され、負極側から第2の電圧を供給する第2補助電源と、
前記第1補助電源及び前記第2補助電源に挟まれたゼロ電位である第1ノードと、
前記第1補助電源の正極側に接続された補助抵抗と、
前記補助抵抗と直列に接続された補助ダイオードと、
前記補助ダイオードのカソードと、前記パワー半導体素子の前記第2の端子の間に設けられたコンデンサと、
第4の端子が前記補助ダイオードのカソードに接続され、第5の端子が前記パワー半導体素子の第3の端子に接続された第1半導体素子と、
第6の端子が前記第2補助電源の負極側に接続され、第7の端子が前記パワー半導体素子の前記第3の端子に接続された第2半導体素子と、
前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子のオンオフを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2半導体素子をオンからオフにした後、前記第1半導体素子をオンさせることで、前記パワー半導体素子をターンオンさせる、ゲート駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワー半導体素子を使用し、モータ等の負荷を駆動するための駆動装置に関する技術が開示されている。特許文献1には、半導体素子を用いた制御回路が開示されている。特許文献1に開示された制御回路は、半導体素子のエミッタとゲート・ドライバのゼロ電位との間に接続した抵抗結合と、半導体素子のコレクタと、ゼロ電位に接続した抵抗結合の端部の間に接続したフィードバックキャパシタを含んで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-89838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された制御回路においては、半導体素子のターンオン時の速いスイッチスピードを維持しつつ、大電流経路となるチップ外のインピーダンス(ソースインダクタンス)を利用して短絡発生時の短絡耐量の効果を有する構造となる。しかしながら、特許文献1に開示された制御回路においては、このソースインダクタンスによる、短絡耐量改善の効果が十分に生かせていない。そのため、駆動装置においては、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化を効果的に実現できる回路が必要とされる。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子のゲート駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るゲート駆動回路は、第1の端子が第1外部端子に接続され、第2の端子が第2外部端子に接続されたパワー半導体素子を駆動するための駆動回路であって、第1の電圧を供給する第1補助電源と、第2の電圧を供給する第2補助電源と、第1補助電源及び第2補助電源に挟まれたゼロ電位である第1ノードと、パワー半導体素子の第2の端子と、第1ノードとの間に設けられた、第1スイッチと、第2外部端子と、第1ノードとの間に設けられた、第2スイッチと、第4の端子が第1補助電源の正極側に接続され、第5の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第1半導体素子と、第6の端子が第2補助電源の負極側に接続され、第7の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第2半導体素子と、第1半導体素子、第2半導体素子、第1スイッチ、及び第2スイッチのオンオフを制御する制御部と、を備え、制御部は、第1スイッチがオン、及び第2スイッチがオフの状態で、第2半導体素子をオンからオフに制御した後、第1半導体素子をオンさせることで、パワー半導体素子をターンオンさせ、制御部は、パワー半導体素子がターンオンした後、所定の期間経過後に、第2スイッチをオンにし、その後、第1スイッチをオフにする。
【0007】
本発明の他の態様に係るゲート駆動回路は、第1の端子が第1外部端子に接続され、第2の端子が第2外部端子に接続されたパワー半導体素子を駆動するための駆動回路であって、負極側が第2外部端子に接続され、正極側から第1の電圧を供給する第1補助電源と、正極側が第2外部端子に接続され、負極側から第2の電圧を供給する第2補助電源と、負極側が第2の端子に接続され、正極側から第3の電圧を供給する補助電圧供給源と、第2外部端子に接続され、第1補助電源の負極側及び第2補助電源の正極側に位置し、ゼロ電位である第1ノードと、第4の端子が第1補助電源の正極側に接続され、第5の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第1半導体素子と、第6の端子が第2補助電源の負極側に接続され、第7の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第2半導体素子と、第8の端子が補助電圧供給源に接続され、第9の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第3半導体素子と、第1半導体素子、第2半導体素子、及び第3半導体素子のオンオフを制御する制御部と、を備え、制御部は、第2半導体素子をオンからオフにした後、第3半導体素子をオフから所定の期間オンにし、第3半導体素子がオンの状態である期間に第1半導体素子をオンさせることで、前記第3半導体素子をオフさせた後も前記パワー半導体素子のオン状態を維持する。
【0008】
本発明の他の態様に係るゲート駆動回路は、第1の端子が第1外部端子に接続され、第2の端子が第2外部端子に接続されたパワー半導体素子を駆動するための駆動回路であって、負極側が第2外部端子に接続され、正極側から第1の電圧を供給する第1補助電源と、正極側が第2外部端子に接続され、負極側から第2の電圧を供給する第2補助電源と、第1補助電源及び第2補助電源に挟まれたゼロ電位である第1ノードと、第1補助電源の正極側に接続された補助抵抗と、補助抵抗と直列に接続された補助ダイオードと、補助ダイオードのカソードと、パワー半導体素子の第2の端子の間に設けられたコンデンサと、第4の端子が補助ダイオードのカソードに接続され、第5の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第1半導体素子と、第6の端子が第2補助電源の負極側に接続され、第7の端子がパワー半導体素子の第3の端子に接続された第2半導体素子と、第1半導体素子及び第2半導体素子のオンオフを制御する制御部と、を備え、制御部は、第2半導体素子をオンからオフにした後、第1半導体素子をオンさせることで、パワー半導体素子をターンオンさせる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子のゲート駆動回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の第1の実施形態に係るゲート駆動回路の構成を示す図である。
図2図2は本発明の第1の実施形態に係るゲート駆動回路の動作について説明するためのタイミングチャートである。
図3A図3Aは本発明の第2の実施形態に係るゲート駆動回路の構成を示す図である。
図3B図3Bは本発明の第2の実施形態に係るゲート駆動回路の他の構成例を示す図である。
図4図4は本発明の第2の実施形態に係るゲート駆動回路の動作について説明するための図である。
図5図5は本発明の第3の実施形態に係るゲート駆動回路の構成を示す図である。
図6図6は本発明の第4の実施形態に係るゲート駆動回路の構成を示す図である。
図7図7は本発明の第5の実施形態に係るゲート駆動回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態に係るゲート駆動回路10を、図面を参照しながら詳細に説明する。各実施形態に係る駆動回路の図中の同一又は相当部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成を示す図である。本実施形態に係るゲート駆動回路10は、インバータ、モータ駆動装置、又はスイッチング電源等に使用されるパワー半導体素子Q0を駆動するための回路である。
【0013】
本実施形態においては、パワー半導体素子Q0がNチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成される場合の例について示す。図1に示すように、パワー半導体素子Q0は、ドレインDが第1外部端子TDと接続され、ソースSが第2外部端子TS及び内部端子TSSと接続され、ゲートGが内部端子TGに接続されている。また、パワー半導体素子Q0と、第1外部端子TD、第2外部端子TS、内部端子TSS、及び内部端子TGとの間の経路には、それぞれ浮遊インダクタンスLd、Ls、Lss、Lgが形成される。なお、第1の実施形態において、パワー半導体素子Q0のドレインDは、第1の端子に相当する。また、第1の実施形態において、パワー半導体素子Q0のソースSは、第2の端子に相当する。さらに、第1の実施形態において、パワー半導体素子Q0のゲートGは、第3の端子に相当する。
【0014】
なお、パワー半導体素子Q0にNチャネルMOSFETを適用させる構成は、実施形態の構成を限定するものではない。例えば、本実施形態に係るゲート駆動回路10は、パワー半導体素子Q0として、絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(IGBT)やワイドギャップ半導体(SiC、GaN)を適用した構成であってもよい。
【0015】
第1の実施形態に係るゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1、第2半導体素子Q2、第1スイッチS1、第2スイッチS2、及び制御部100を含んで構成される。
【0016】
第1半導体素子Q1及び第2半導体素子Q2は、パワー半導体素子Q0を駆動させるための駆動素子であり、本実施形態において、第1半導体素子Q1は、PチャネルMOSFETで構成され、第2半導体素子Q2がNチャネルMOSFETで構成させる。
【0017】
第1半導体素子Q1は、パワー半導体素子Q0のターンオン用の素子であり、ソースが第1補助電源Vpの正極側に接続される。また、第2半導体素子Q2は、パワー半導体素子Q0のターンオフ用の素子であり、ソースが第2補助電源Vnの負極側に接続される。また、第1半導体素子Q1のドレインは、第1ゲート抵抗R1を介して、パワー半導体素子Q0のゲートGに接続される。同様に、第2半導体素子Q2のドレインは、第2ゲート抵抗R2を介して、パワー半導体素子Q0のゲートGに接続される。なお、第1の実施形態において、第1半導体素子Q1のソースは、第4の端子に相当する。また、第1の実施形態において、第1半導体素子Q1のドレインは、第5の端子に相当する。また、第1の実施形態において、第2半導体素子Q2のソースは、第6の端子に相当する。また、第1の実施形態において、第2半導体素子Q2のドレインは、第7の端子に相当する。
【0018】
第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、パワー半導体素子Q0のソースSと、後述の基準電位Comに相当する第1ノードN1と、の経路に設けられたスイッチである。すなわち、本実施形態においては、ソースSから浮遊インダクタンスLssを経由して基準電位Comに接続される経路に第1スイッチS1が接続される。また、同じくパワー半導体素子Q0のソースSから浮遊インダクタンスLs、及び第2外部端子TSを経由して基準電位Comに接続される経路に第2スイッチS2が接続される。第1スイッチS1及び第2スイッチS2の詳細については後述する。
【0019】
制御部100は、第1半導体素子Q1、第2半導体素子Q2、第1スイッチS1及び第2スイッチS2のオンオフ(ON/OFF)を制御するための機能を備える。この制御部100の機能の詳細については後述する。
【0020】
また、ゲート駆動回路10は、動作用補助電源の供給源として第1補助電源Vp及び第2補助電源Vnを備える。第1補助電源Vp及び第2補助電源Vnの間に位置する第1ノードN1は、第1補助電源Vp及び第2補助電源Vnの中間の基準電位(以下、基準電位Comと称する)となる。また、本実施形態において、第1ノードN1における基準電位はゼロ電位である。なお、本実施形態において、第1ノードN1は、第1補助電源Vp及び第2補助電源Vnに挟まれたノードに相当する。また、本明細書において、第1補助電源Vpから供給される電圧を、正の電圧Vpと表記する。なお、正の電圧Vpは、第1の電圧に相当する。また、正の電圧Vpには、電圧値が0の場合が含まれてもよい。同様に、明細書において、第2補助電源Vnから供給される電圧を、負の電圧Vnと表記する。なお、負の電圧Vnは、第2の電圧に相当する。
【0021】
この第1補助電源Vp、第2補助電源Vn及び基準電位Comは、パワー半導体素子Q0に対するゲート・ドライバのロジック・レベル制御信号のON/OFF(オン/オフ)を、パワー半導体素子Q0の制御が可能となる大きさまで増幅することができる。
【0022】
パワー半導体素子Q0は、ゲートGに対し、ゲートしきい値電圧以上の電圧を印加することにより導通状態にすることができる。ゲート駆動回路10の基準電位Comは、パワー半導体素子Q0のソースSに接続される。また、ゲート駆動回路10の基準電位Comは、ゲート・ドライバが、第1補助電源Vp、及び第2補助電源Vnを用いてターンオン及びターンオフのために必要な正の電圧Vp及び負の電圧Vnを、ゲートGに供給できるようにする。
【0023】
また、パワー半導体素子Q0のソースSは、第2外部端子TSとボンディングワイヤ、クリップリード、基板上の配線等で接続されるが、このボンディングワイヤ等は、上述の通り、浮遊インダクタンスLsを持つ。
【0024】
(短絡耐量について)
例えば、公知技術においては、パワー半導体素子Q0及び駆動回路で構成されるパワーモジュールにおいても、高速ターンオン及び短絡耐量向上を両立させることが求められている。
【0025】
以下、図1に示す構成の一部を用いて、高速ターンオン及び短絡耐量向上について説明する。
【0026】
高速ターンオン及び短絡耐量向上を両立させるための構成として、図1の基準電位Comである第1ノードN1と第2外部端子TSとの間に、抵抗器(図示なし)と、抵抗器にアノードが接続されるようにダイオード(図示なし)とが直列接続される。この構成は、例えば、特許文献1においては、図1又は図2に示される抵抗器(R2)及びダイオード(V2)に相当する。
【0027】
一方、パワー半導体素子Q0のソースSと基準電位Comと、の経路に抵抗器(図示なし)と、抵抗器にカソードが接続されるようにダイオード(図示なし)が直列接続される。また、ダイオードのアノードとパワー半導体素子Q0のソースSは別のボンディングワイヤ等で接続される。この構成は、例えば、特許文献1においては、図1又は図2に示される抵抗器(R1)及びダイオード(V1)に相当する。
【0028】
この公知技術の回路構成で短絡が発生すると、パワー半導体素子Q0に流れる電流は急激に増加するが、それによりパワー半導体素子Q0のソースSと第2外部端子TS間のワイヤボンディング等にも急激に電流が流れる。この急激な電流の流れにより、浮遊インダクタンスLsに大きな起電力が働く。これによりパワー半導体素子Q0のソースSと第2外部端子TSの間に電圧降下が発生し、第2外部端子TSの電位がソースSよりもより低電位となる。また、基準電位Comも、ソースSよりもより低電位となる。これにより、パワー半導体素子Q0のゲート電圧に対する基準を与えることができる。
【0029】
さらに、パワー半導体素子Q0のゲートGに印加される電圧が、ソースSの電位に対し相対的に減少する傾向となる。ゲートGの電圧の減少は、パワー半導体素子Q0を流れる電流が抑制されることを意味し、これは、短絡状況においては望ましい結果となる。
【0030】
(ターンオン動作について)
一方で、この公知技術の回路構成において、パワー半導体素子Q0をターンオンさせる場合、駆動回路のPチャネルMOSFETからパワー半導体素子Q0のゲートGに電流が流れ、パワー半導体素子Q0のゲートGのゲート容量を充電していく。なお、駆動回路のPチャネルMOSFETは、本実施形態においては、図1に示す第1半導体素子Q1に相当する。
【0031】
ゲートGのゲート容量の充電が進み、パワー半導体素子Q0のドレイン-ソース間に電流が流れ始めると、パワー半導体素子Q0のソースSと第2外部端子TSの間の浮遊インダクタンスLsに電流が流れ、起電力が発生する。一方で、第2外部端子TSの電位はゲート・ドライバの基準電位Comより低くなるため、ゲート・ドライバの基準電位Comの経路には影響を与えない。これにより、ゲート電位の一時的な電位低下は起こさず、高速にターンオンができる。
【0032】
本実施形態におけるゲート駆動回路10は、上記公知技術の回路構成おけるゲート駆動回路に比べ、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を、より効果的に実現することが可能とする。
【0033】
(ゲート駆動回路10の動作例)
図2は、第1の実施形態に係るゲート駆動回路10の動作について説明するためのタイミングチャートである。制御部100は、パワー半導体素子Q0のターンオン時には第1スイッチS1をオン、第2スイッチS2をオフにした状態に制御する。また、制御部100は、第2半導体素子Q2をオフ(タイミングt1)にした後、デッドタイム(DT)経過後に、第1半導体素子Q1をオン(タイミングt2)にする。これにより、パワー半導体素子Q0がターンオンさせる。これにより、ゲート駆動回路10は、パワー半導体素子Q0のターンオンが高速に行える。
【0034】
また、ゲート駆動回路10は、第1スイッチS1に適切なON抵抗値のMOSFETを使用することで、上述の従来技術で使用されるようなダイオードと比較して、素子による電圧降下(Vds<Vf)が小さくなり、より高速にスイッチングが可能となる。
【0035】
パワー半導体素子Q0がオンした後は、所定の期間経過後に、第2スイッチS2をオンし(タイミングt3)、第1スイッチS1をオフにする(タイミングt4)。これにより、ゲート駆動回路10のパワー半導体素子Q0を含む経路に短絡が発生した場合も、浮遊インダクタンスLsに発生する起電力により、パワー半導体素子Q0のソースSと第1ノードN1との間に電圧降下が発生する。なお、図2に示す例において、タイミングt3からタイミングt4までの時間は、例えば、数ns(ナノ秒)から数十nsである。
【0036】
すなわち、図2に示す期間P12において、制御部100は、第1スイッチS1をオン、第2スイッチS2をオフの状態で維持させる。また、期間P34において、制御部100は、第2スイッチS2をオンにして、その後、所定の期間(数ns~数十ns)経過後に第1スイッチS1をオフにする。
【0037】
その結果、短絡が発生した場合に、ゲートGに印加される電圧が、ソースSの電位に対し相対的に減少し、パワー半導体素子Q0を流れる電流は抑制され、タイミングt4以降、上述の先行技術と同様、短絡状況においては望ましい結果となる。例えば、上述の公知技術においては、短絡時に抵抗やダイオードで電圧降下が生じるため、その分、パワー半導体素子Q0のゲートGの電圧降下分が減り、パワー半導体素子Q0の電流制限効果が弱まる。一方で、第1の実施形態に係るゲート駆動回路10は、短絡時に抵抗やダイオードによる電圧降下は生じないため、先行技術と比較して、短絡耐量の向上の効果が得られる。
【0038】
これにより、第1の実施形態に係るゲート駆動回路10は、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子Q0のゲート駆動回路10及びパワーモジュールを実現することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
以上の通り、具体的な実施形態を一つ説明したが、上述した実施形態は例示であって実施形態を限定するものではない。例えば、上述の実施形態では、第1スイッチS1及び第2スイッチS2を用いて、効果的に高速ターンオン及び短絡耐性を実現する形態を例示した。ここではさらに、ゲート駆動回路10において、第3半導体素子Q3を用いてゲート駆動を行う第2の実施形態に係るゲート駆動回路10について、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0040】
図3Aは、第2の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成を示す図である。また、図3Bは、第2の実施形態に係るゲート駆動回路10の他の構成を示す図である。図3Bの構成の詳細については後述する。なお、第2の実施形態において、パワー半導体素子Q0のドレインDは、第1の端子に相当する。また、第2の実施形態において、パワー半導体素子Q0のソースSは、第2の端子に相当する。さらに、第2の実施形態において、パワー半導体素子Q0のゲートGは、第3の端子に相当する。また、第2の実施形態において、第1半導体素子Q1のソースは、第4の端子に相当する。また、第2の実施形態において、第1半導体素子Q1のドレインは、第5の端子に相当する。また、第2の実施形態において、第2半導体素子Q2のソースは、第6の端子に相当する。また、第2の実施形態において、第2半導体素子Q2のドレインは、第7の端子に相当する。また、第2の実施形態において、第3半導体素子Q3のソースは、第8の端子に相当する。また、第2の実施形態において、第3半導体素子Q3のドレインは、第9の端子に相当する。
【0041】
図3Aに示すように、パワー半導体素子Q0のゲート駆動回路10は、第1の実施形態のゲート駆動回路10と同様に第1半導体素子Q1及び第2半導体素子Q2がパワー半導体素子Q0のゲートGに接続される。
【0042】
また、ゲート駆動回路10において、ターンオフ用の第2半導体素子Q2のソースは第2補助電源Vnの負極側に接続される。また、パワー半導体素子Q0のソースSは、浮遊インダクタンスLsを持つボンディングワイヤ等を経由して第2外部端子TSから基準電位Comである第1ノードN1に接続され、第1補助電源Vpの負極側及び第2補助電源Vnの正極側に接続される。
【0043】
さらに、第2の実施形態において、ゲート駆動回路10は、ゲート駆動用の素子として、PチャネルMOSFETの第3半導体素子Q3を備える。第3半導体素子Q3のドレインは、第3ゲート抵抗R3を経由してパワー半導体素子Q0のゲートGに接続される。また、第3半導体素子Q3のソースは第3補助電源Vpssの正極側と接続される。この第3補助電源Vpssの負極側とパワー半導体素子Q0のソースSは、浮遊インダクタンスLssを有する別のボンディングワイヤ等で接続される。なお、第2の実施形態において、第3補助電源Vpssは、補助電圧供給源に相当する。また、第3補助電源Vpssから供給される電圧は、第3の電圧に相当する。
【0044】
図4を参照して、第2の実施形態におけるターンオン時の素子動作について説明する。制御部100は、ターンオン時に、パワー半導体素子Q0のゲート信号を負の電圧Vnに固定するためにオンにしていた第2半導体素子Q2をオフにする(タイミングt5)。また、制御部100は、タイミングt5からデッドタイムDT経過後、ターンオン用のMOSFETのうち、第3半導体素子Q3をオンにして(タイミングt6)、ゲートGまでの電流経路を浮遊インダクタンスLss経由にする。これにより、第2の実施形態に係るゲート駆動回路10は、第1の実施形態と同様に、パワー半導体素子Q0のターンオンが高速に行える。
【0045】
また、パワー半導体素子Q0がターンオンした後に、制御部100は、第1半導体素子Q1をオンにする(タイミングt7)。また、制御部100は、所定の時間経過後に、第3半導体素子Q3をオフにし、ゲートGまでの電流経路を浮遊インダクタンスLs経由にする。すなわち、第2の実施形態においては、制御部100は、第2半導体素子Q2をオンからオフにした後、第3半導体素子Q3をオフから所定の期間オンにする。また、制御部100は、第3半導体素子Q3がオンの状態である期間に第1半導体素子Q1をオンさせることで、第3半導体素子Q3をオフさせた後もパワー半導体素子Q0のオン状態を維持する。
【0046】
なお、図4に示す例において、所定の期間であるタイミングt7からタイミングt8までの期間は、例えば、数ns(ナノ秒)から数十nsである。また、図4に示す例において、第3半導体素子Q3がオンであるタイミングt6からタイミングt8までの期間は、例えば、数nsから数百nsである。
【0047】
すなわち、第2の実施形態においては、図4に示す期間P56において、制御部100は、第2半導体素子Q2をオフにし、第3半導体素子Q3をオンにすることで、パワー半導体素子Q0をターンオンさせる。また、図4に示す期間P78において、制御部100は、第1半導体素子Q1をオンにし、第3半導体素子Q3をオフにすることで、短絡耐性を持たせる。
【0048】
これにより、第2の実施形態に係るゲート駆動回路10は、パワー半導体素子Q0を含む経路に短絡が発生した場合も、浮遊インダクタンスLsに発生する起電力により、パワー半導体素子Q0のソースSと第2外部端子TSの間に電圧降下が発生する。その結果、パワー半導体素子Q0のゲートGに印加される電圧が、ソースSの電位に対し相対的に減少し、パワー半導体素子Q0を流れる電流は抑制され、第1の実施形態のゲート駆動回路10と同様に、短絡状況においても望ましい結果が得られる。例えば、上述の公知技術においては、短絡時に抵抗やダイオードで電圧降下が生じるため、その分、パワー半導体素子Q0のゲートGの電圧降下分が減り、パワー半導体素子Q0の電流制限効果が弱まる。一方で、第1の実施形態に係るゲート駆動回路10は、短絡時に抵抗やダイオードによる電圧降下は生じないため、先行技術と比較して、短絡耐量の向上の効果が得られる。
【0049】
また、第2の実施形態においては、第1ゲート抵抗R1及び第3ゲート抵抗R3の抵抗値に対して、第1ゲート抵抗R1の方が、抵抗値が大きいことが好ましい。これにより、第3半導体素子Q3がオンの時に、第3ゲート抵抗R3から第1ゲート抵抗R1を介して逆流し、スイッチスピードの高速化が不十分となるのを防ぐことが可能となる。また、第1ゲート抵抗R1の抵抗値を大きくすることで、短絡時の電流抑制効果が得られる。例えば、第1ゲート抵抗R1の抵抗値が第3ゲート抵抗R3の抵抗値の、100倍程度の大きさであってもよい。より具体的には、第1ゲート抵抗R1が1kΩであり、第3ゲート抵抗R3が10Ωとある構成であってもよい。
【0050】
また、第2の実施形態においては、図3Bに示すように、アノードが第1半導体素子Q1のドレインと接続され、カソードが第1ゲート抵抗R1と接続された第1ダイオードD1をさらに備えてもよい。これにより、第3半導体素子Q3がオンの際の第1ゲート抵抗R1への逆流を防ぐことが可能となる。なお、第1ダイオードD1は、第1ゲート抵抗R1と直列に接続されていれば、第1ゲート抵抗R1との位置関係は本実施形態の構成を限定するものではない。例えば、第1ダイオードD1は、アノードが第1ゲート抵抗R1と接続される構成であってもよい。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1及び/又は第2の実施形態と同じ符号を用いる場合、第1及び/又は第2の実施形態と同一の構成を示し、特に説明がない限り先行する説明を参照する。ここでは、第3半導体素子Q3用の電源としてのコンデンサCssを備える第3の実施形態に係るゲート駆動回路10について、第1及び/又は第2の実施形態と異なる構成について説明する。
【0052】
図5は、第3の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成を示す図である。図5に示す構成において、上述の第2の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成と異なる点は、第3補助電源VpssがコンデンサCssに置き換えられた点である。また、第3の実施形態に係るゲート駆動回路10は、アノードが第1補助電源Vpの正極側に接続され、カソードがコンデンサCss及び第3半導体素子Q3のソースに接続された補助ダイオードDpをさらに備える。
【0053】
第3の実施形態に係るゲート駆動回路10は、このコンデンサCssの容量値を十分大きな値にすることで第3補助電源Vpssのような電源回路を追加することなく、上述の第1及び第2の実施形態に係るゲート駆動回路10の効果を実現することができる。なお、第3の実施形態において、コンデンサCssは、補助電圧供給源に相当する。また、コンデンサCssの正極側から供給される電圧は、第3の電圧に相当する。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図6は、第4の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成を示す図である。図6に示す構成において、第4の実施形態に係るゲート駆動回路10は、補助抵抗Rpを備える点で、第3の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成と異なる。なお、第4の実施形態において、コンデンサCssは、補助電圧供給源に相当する。補助抵抗Rpは、第1補助電源Vpの正極側及び補助ダイオードDpのアノードに接続される。なお、補助抵抗Rpと、補助ダイオードDpとは、直列に接続されるものであれば、図6に接続される構成に限定されない。例えば、補助抵抗Rpは、補助ダイオードDpのカソードに接続されてもよい。
【0055】
第4の実施形態に係るゲート駆動回路10は、コンデンサCssの容量を必要以上に大きな値にしないことで、ターンオン動作が完了する付近のタイミングにおいて、ゲートチャージが第1補助電源Vpによる補助ダイオードDp経由のゲートチャージに移行される。これにより、第4の実施形態に係るゲート駆動回路10は、ターンオン動作が完了する付近のタイミングにおいて、補助抵抗Rpにより、スイッチスピードを落とすことができる。
【0056】
すなわち、第4の実施形態に係るゲート駆動回路10は、スイッチの前半では速いスイッチを維持しながら、スイッチの終盤でスイッチスピードを落とすことにより、サージやリンギングノイズを抑えることが可能となる。
【0057】
また、第4の実施形態に係るゲート駆動回路10において、第3半導体素子Q3から第1半導体素子Q1への切り替えシーケンスは、第3の実施形態に係るゲート駆動回路10と同様に、第1半導体素子Q1の経路で短絡電流抑制の効果を持たせることが可能となる。
【0058】
(第5の実施形態)
次に第5の実施形態について説明する。図7は、第5の実施形態に係るゲート駆動回路10の構成を示す図である。図7に示す構成において、ゲート駆動回路10は、第3半導体素子Q3を含まない。また、図7に示す構成において、ゲート駆動回路10のコンデンサCss及び補助ダイオードDpのカソードは、第1半導体素子Q1のソースに接続される。
【0059】
すなわち、第5の実施形態に係るゲート駆動回路10は、ターンオン用の第3半導体素子Q3を追加することなく、第4の実施形態に係るゲート駆動回路10と同等の効果を得ることができる。この場合、第1半導体素子Q1は通常のCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)で構成される駆動回路のようにパワー半導体素子Q0をオンさせる期間は常にオン状態となる。また、コンデンサCssの容量を意図的に小さくすることで、ターンオン動作が終わった後は、パワー半導体素子Q0は、補助抵抗Rp、浮遊インダクタンスLsを経由した第1補助電源Vpでドライブされ、短絡電流抑制の効果を持たせることが可能となる。
【0060】
(他の実施形態)
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0061】
以下に、ゲート駆動回路10の特徴について記載する。
【0062】
第1の態様に係るゲート駆動回路10は、第1の端子が第1外部端子TDに接続され、第2の端子が第2外部端子TSに接続されたパワー半導体素子Q0を駆動するための駆動回路である。ゲート駆動回路10は、第1の電圧を供給する第1補助電源Vpと、第2の電圧を供給する第2補助電源Vnと、第1補助電源Vp及び第2補助電源Vnに挟まれたゼロ電位である第1ノードN1と、を備える。また、ゲート駆動回路10は、パワー半導体素子Q0の第2の端子と、第1ノードN1との間に設けられた、第1スイッチS1と、第2外部端子TSと、第1ノードN1との間に設けられた、第2スイッチS2と、を備える。また、ゲート駆動回路10は、第4の端子が第1補助電源Vpの正極側に接続され、第5の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第1半導体素子Q1を備える。また、ゲート駆動回路10は、第6の端子が第2補助電源Vnの負極側に接続され、第7の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第2半導体素子Q2を備える。さらに、ゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1、第2半導体素子Q2、第1スイッチS1、及び第2スイッチS2のオンオフを制御する制御部100を備える。制御部100は、第1スイッチS1がオン、及び第2スイッチS2がオフの状態で、第2半導体素子Q2をオンからオフに制御した後、第1半導体素子Q1をオンさせることで、パワー半導体素子Q0をターンオンさせる。また、制御部100は、パワー半導体素子Q0がターンオンした後、所定の期間経過後に、第2スイッチS2をオンにし、その後、第1スイッチS1をオフにする。
【0063】
この構成により、ゲート駆動回路10は、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子Q0のゲート駆動回路10及びパワーモジュールを実現することができる。
【0064】
第2の態様に係るゲート駆動回路10は、第1の端子が第1外部端子TDに接続され、第2の端子が第2外部端子TSに接続されたパワー半導体素子Q0を駆動するための駆動回路である。ゲート駆動回路10は、負極側が前記第2外部端子に接続され、正極側から第1の電圧を供給する第1補助電源Vpと、正極側が第2外部端子に接続され、負極側から第2の電圧を供給する第2補助電源と、を備える。また、ゲート駆動回路10は、負極側が第2の端子に接続され、正極側から第3の電圧を供給する補助電圧供給源と、第2外部端子に接続され、第1補助電源の負極側及び第2補助電源の正極側に位置し、ゼロ電位である第1ノードと、を備える。また、ゲート駆動回路10は、第4の端子が第1補助電源Vpの正極側に接続され、第5の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第1半導体素子Q1を備える。また、ゲート駆動回路10は、第6の端子が第2補助電源Vnの負極側に接続され、第7の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第2半導体素子Q2を備える。また、ゲート駆動回路10は、第8の端子が補助電圧供給源に接続され、第9の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第3半導体素子Q3を備える。さらに、ゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1、第2半導体素子Q2、及び第3半導体素子Q3のオンオフを制御する制御部100を備える。制御部100は、第2半導体素子Q2をオンからオフにした後、第3半導体素子Q3をオフから所定の期間オンにし、第3半導体素子Q3がオンの状態である期間に第1半導体素子Q1をオンさせることで、第3半導体素子Q3をオフさせた後もパワー半導体素子Q0のオン状態を維持する。
【0065】
この構成により、ゲート駆動回路10は、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子Q0のゲート駆動回路10及びパワーモジュールを実現することができる。
【0066】
第3の態様に係るゲート駆動回路10の補助電圧供給源は、第1補助電源Vpとは異なる電源であって、負極側がパワー半導体素子Q0の第2の端子に接続された第3補助電源Vpssであってもよい。
【0067】
この構成により、ゲート駆動回路10は、パワー半導体素子Q0を含む経路に短絡が発生した場合も、浮遊インダクタンスLsに発生する起電力により、パワー半導体素子Q0のソースSと第2外部端子TSの間に電圧降下が発生する。その結果、パワー半導体素子Q0のゲートGに印加される電圧が、ソースSの電位に対し相対的に減少し、パワー半導体素子Q0を流れる電流は抑制され、短絡状況においても望ましい結果が得られる。すなわち、ゲート駆動回路10は、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子Q0のゲート駆動回路10及びパワーモジュールを実現することができる。
【0068】
第4の態様に係るゲート駆動回路10の補助電圧供給源は、コンデンサCssで構成されてもよい。また、ゲート駆動回路10は、アノードが第1補助電源Vpの正極側に接続され、カソードがコンデンサCss及び第3半導体素子Q3の第8の端子に接続された補助ダイオードDpをさらに備えてもよい。
【0069】
この構成により、ゲート駆動回路10は、このコンデンサCssの容量値を十分大きな値にすることで電源回路を追加することなく、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能となる。
【0070】
第5の態様に係るゲート駆動回路10は、補助ダイオードDpと直列に接続された補助抵抗Rpをさらに備えてもよい。
【0071】
この構成により、ゲート駆動回路10は、コンデンサCssの容量を意図的に小さくすることで、ターンオン動作が完了する付近のタイミングにおいて、ゲートチャージが第1補助電源Vpによる補助ダイオードDp経由のゲートチャージに移行させることができる。これにより、ゲート駆動回路10は、ターンオン動作が完了する付近のタイミングにおいて、補助抵抗Rpにより、スイッチスピードを落とすことができる。すなわち、ゲート駆動回路10は、スイッチの前半では速いスイッチを維持しながら、スイッチの終盤でスイッチスピードを落とすことにより、サージやリンギングノイズを抑えることが可能となる。
【0072】
第6の態様に係るゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1の第5の端子と、パワー半導体素子Q0の第3の端子との間に設けられた第1ゲート抵抗R1をさらに備えてもよい。
【0073】
この構成により、ゲート駆動回路10は、第3半導体素子Q3がオンの際の第1ゲート抵抗R1への逆流を防ぎ、スイッチスピードの高速化が不十分となるのを防ぐことが可能となる。
【0074】
第7の態様に係るゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1の第5の端子と、パワー半導体素子Q0の第3の端子との間に設けられ、アノード側が第5の端子と電気的に接続され、第1ゲート抵抗R1と直列に接続された第1ダイオードD1をさらに備えてもよい。
【0075】
この構成により、ゲート駆動回路10は、第3半導体素子Q3がオンの際の第1半導体素子Q1への逆流を防ぎ、スイッチスピードの高速化が不十分となるのを防ぐことが可能となる。
【0076】
第8の態様に係るゲート駆動回路10は、第2半導体素子Q2の第7の端子と、パワー半導体素子Q0の第3の端子との間に設けられた第2ゲート抵抗R2、及び/又は、第3半導体素子Q3の第9の端子と、パワー半導体素子Q0の第3の端子との間に設けられた第3ゲート抵抗R3、をさらに備えてもよい。
【0077】
この構成により、ゲート駆動回路10は、第3半導体素子Q3がオンの際の第1半導体素子Q1への逆流を防ぎ、スイッチスピードの高速化が不十分となるのを防ぐことが可能となる。
【0078】
第9の態様に係るゲート駆動回路10は、第1の端子が第1外部端子TDに接続され、第2の端子が第2外部端子TSに接続されたパワー半導体素子Q0を駆動するための駆動回路である。ゲート駆動回路10は、負極側が前記第2外部端子に接続され、正極側から第1の電圧を供給する第1補助電源Vpと、正極側が前記第2外部端子に接続され、負極側から第2の電圧を供給する第2補助電源Vnと、第1補助電源Vp及び第2補助電源Vnに挟まれたゼロ電位である第1ノードN1と、を備える。ゲート駆動回路10は、第1補助電源Vpの正極側に接続された補助抵抗Rpと、補助抵抗Rpと直列に接続された補助ダイオードDpと、補助ダイオードDpのカソードと、パワー半導体素子Q0の第2の端子の間に設けられたコンデンサCssと、を備える。また、ゲート駆動回路10は、第4の端子が補助ダイオードDpのカソードに接続され、第5の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第1半導体素子Q1を備える。また、ゲート駆動回路10は、第6の端子が第2補助電源Vnの負極側に接続され、第7の端子がパワー半導体素子Q0の第3の端子に接続された第2半導体素子Q2を備える。さらに、ゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1及び第2半導体素子Q2のオンオフを制御する制御部100を備える。制御部100は、第2半導体素子Q2をオンからオフにした後、第1半導体素子Q1をオンさせることで、パワー半導体素子Q0をターンオンさせる。
【0079】
この構成により、ゲート駆動回路10は、ターンオン用の半導体素子を追加することなく、短絡耐性及びターンオンスイッチの高速化の両立を効果的に実現することが可能なパワー半導体素子Q0のゲート駆動回路10及びパワーモジュールを実現することができる。また、ゲート駆動回路10は、第1半導体素子Q1に対して、通常のCMOSで構成される駆動回路のようにパワー半導体素子Q0をオンさせる期間は常にオン状態にする。また、ゲート駆動回路10は、コンデンサCssの容量を意図的に小さくすることで、ターンオン動作が終わった後は、パワー半導体素子Q0は、補助抵抗Rp、浮遊インダクタンスLsを経由した第1補助電源Vpでドライブされる。これにより、ゲート駆動回路10は、短絡電流抑制の効果を、より効果的に持たせることが可能となる。
【符号の説明】
【0080】
10 ゲート駆動回路
100 制御部
Css コンデンサ
D1 第1ダイオード
Dp 補助ダイオード
Ld、Lg、Ls、Lss 浮遊インダクタンス
N1 第1ノード
Q0 パワー半導体素子
Q1 第1半導体素子
Q2 第2半導体素子
Q3 第3半導体素子
R1 第1ゲート抵抗
R2 第2ゲート抵抗
R3 第3ゲート抵抗
Rp 補助抵抗
S1 第1スイッチ
S2 第2スイッチ
TD 第1外部端子
TS 第2外部端子
TG、TSS 内部端子
Vp 第1補助電源
Vn 第2補助電源
Vpss 第3補助電源
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7