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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172250
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】鉄道車両及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B61F 1/00 20060101AFI20241205BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20241205BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B61F1/00
B61D17/00 C
F16B37/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089835
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 健太郎
(57)【要約】
【課題】車両構体を構成する閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材を締結するネジ座本体部を、閉断面部材の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部の内側面に備え、ネジ座本体部を有するネジ座を介して被取付部材を簡単に締結できる鉄道車両及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】車両構体SKを構成する閉断面部材1と、閉断面部材の外壁部11の外側面11aに被取付部材2をネジ部材3によって締結するネジ座4と、を備えた鉄道車両10である。ネジ座は、外壁部の内側面11bに当接しネジ部材と係合するタップ孔41を有するネジ座本体部42と、ネジ座本体部と段差部43を介して連結され外側面に当接したネジ座頭部44と、を備えた。外壁部は、ネジ部材を挿通可能に形成されたネジ挿通孔111と、ネジ座本体部及び段差部を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔112と、を備えた。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構体を構成する閉断面部材と、前記閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材をネジ部材によって締結するネジ座と、を備えた鉄道車両であって、
前記ネジ座は、前記外壁部の内側面に当接し前記ネジ部材と係合するタップ孔を有するネジ座本体部と、前記ネジ座本体部と段差部を介して連結され前記外側面に当接したネジ座頭部と、を備え、
前記外壁部は、前記ネジ部材を挿通可能に形成されたネジ挿通孔と、前記ネジ座本体部及び前記段差部を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔と、を備えていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記ネジ座挿通孔は、前記ネジ座頭部を挿通不能に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記ネジ座は、前記ネジ座本体部と前記ネジ座頭部とが、前記段差部を介して、平面視でT字状に交差するように形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記タップ孔は、前記ネジ座本体部に固定されたナット部に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記段差部又はネジ座頭部は、前記ネジ座挿通孔の内周面と当接する位置決め部を有することを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記ネジ座頭部は、前記段差部より前記ネジ座本体部側へ突出した突出部を備え、前記突出部と前記ネジ座本体部とが、前記外壁部を内外方向から挟持するように形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載された鉄道車両の製造方法において、
前記ネジ座を形成するネジ座形成工程と、
前記外壁部に前記ネジ挿通孔と前記ネジ座挿通孔とを形成する挿通孔形成工程と、
前記ネジ座を前記外壁部にセットするネジ座セット工程と、
前記被取付部材を前記外側面に載置して、前記ネジ部材を前記タップ孔に係合するネジ係合工程と、を備えたことを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両及びその製造方法に関し、より詳しくは、車両構体を構成する閉断面部材と、閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材をネジ部材によって締結するネジ座と、を備えた鉄道車両及びその鉄道車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両の構体(例えば、台枠等)には、骨格部材として押出成形された閉断面部材を用いる場合がある。この閉断面部材の外側面に被取付部材(例えば、配管等の艤装部品)を締結するため、タップ孔を有するネジ座を閉断面部材の内側面に備えた鉄道車両が、知られている。このネジ座を用いて閉断面部材の外側面に被取付部材を締結する方法は、一般に、以下のような方法で行われている。
【0003】
例えば、図14図15に示すように、矩形状の板材に複数のタップ孔102、103を設けたネジ座101を予め形成する。また、被取付部材105を取り付ける閉断面部材104の外壁部104Tには、ネジ座101を外壁部104Tの内側面に固定するネジ部材106用の挿通孔106Sと、被取付部材105を締結するブラケット108を固定するネジ部材107用の挿通孔107Sと、を予め形成する。そして、閉断面部材104の一方の開口端104Kから、ネジ座101を閉断面内部104Nに挿入した状態で、外壁部104Tの外方からネジ座101用のネジ部材106を挿通孔106Sに挿入し、ネジ座101のタップ孔102にネジ部材106を係合する。これによって、閉断面部材104の外壁部104Tの内側面に、ネジ座101を固定する。
【0004】
その後、被取付部材105を締結するブラケット108を、閉断面部材104の外壁部104Tの外側面に載置した状態で、ブラケット108用のネジ部材107を挿通孔107Sに挿入し、ネジ座101のタップ孔103に係合する。これによって、閉断面部材104の外壁部104Tの外側面に当該ブラケット108を締結する。そして、閉断面部材104の外壁部104Tに締結したブラケット108に図示しないボルト、ナット等を用いて被取付部材105を締結する。
【0005】
上記方法によれば、鉄道車両の構体の骨格部材として、相当程度の質量と大きさを有する閉断面部材104に対して、一々、タップ孔を形成するという煩雑な作業を回避できるという利点がある。しかし、閉断面部材104の一方の開口端104Kが、他の閉断面部材104B等と接合されて閉塞されている場合、又は、被取付部材105を締結する位置が、開口端104Kから離間して、ネジ座101を挿入困難な位置にある場合には、上記方法を用いることができない。
【0006】
このような場合には、図16に示すように、閉断面部材104に対して、被取付部材105を取り付ける外壁部104Tと隣接する他の外壁部104Sに作業孔104SNを形成し、この作業孔104SNからネジ座101を閉断面内部104Nに挿入して、上述のようにネジ座101を閉断面部材104の取付け用の外壁部104Tの内側面に固定する方法がある。しかし、この方法では、閉断面部材104に対して、取付け用の外壁部104Tと隣接する他の外壁部104Sに作業孔104SNを形成したことによって、閉断面部材104の強度が低下する可能性があるという問題があった。
【0007】
この点、例えば、特許文献1には、閉断面部材における上記強度低下を低減する構成が開示されている。すなわち、図17に示すように、閉断面構造のアルミ押出材から成るサイドフレーム(閉断面部材)201の上壁(取付用の外壁部)202に、サイドメンバー(被取付部材)200を取り付けるボルト203の挿通孔204を設ける。この上壁202に隣接する一方の側壁に開口部205を設け、他方の側壁に係止孔206を設ける。そして、ネジ座207を構成するベースプレート207Bには、中央部の四角い穴208に、ワッシャ209にカシメられたナット210が、移動可能に取り付けられている。また、ベースプレート207Bの一端には、係止孔206に係止する突起部207B1が形成され、他端には開口部205を塞ぐ閉塞部207B2が形成されている。そして、ベースプレート207Bを開口部205から挿入してネジ座207をサイドフレーム201にセットし、開口部205に閉塞部207B2を溶接する。この場合、サイドフレーム(閉断面部材)201の開口部205にネジ座207の閉塞部207B2を溶接することによって、サイドフレーム(閉断面部材)201の強度低下を低減又は回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-190035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された上記構成では、以下のような問題があった。すなわち、サイドフレーム(閉断面部材)201の上壁(取付用の外壁部)202にボルト203の挿通孔204を設け、サイドフレーム(閉断面部材)201の上壁(取付用の外壁部)202に隣接する一方の側壁に開口部205を設け、他方の側壁に係止孔206を設けるため、サイドフレーム(閉断面部材)201に対して、3方向から孔加工を行う必要があった。そのため、サイドフレーム(閉断面部材)201を孔加工装置に複数回(3回)セットしなければならず、段取り作業等の工数が多くかかるという問題があった。特に、サイドフレーム(閉断面部材)201を他の構造部材と組付けた後では、加工設備上の制約が大きく、一方の側壁に開口部205を設け、他方の側壁に係止孔206を設けることは、一層難しいという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、車両構体を構成する閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材を締結するネジ座本体部を、閉断面部材の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部の内側面に備え、ネジ座本体部を有するネジ座を介して被取付部材を簡単に締結できる鉄道車両及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両及びその製造方法は、以下の構成を備えている。
(1)車両構体を構成する閉断面部材と、前記閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材をネジ部材によって締結するネジ座と、を備えた鉄道車両であって、
前記ネジ座は、前記外壁部の内側面に当接し前記ネジ部材と係合するタップ孔を有するネジ座本体部と、前記ネジ座本体部と段差部を介して連結され前記外側面に当接したネジ座頭部と、を備え、
前記外壁部は、前記ネジ部材を挿通可能に形成されたネジ挿通孔と、前記ネジ座本体部及び前記段差部を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、ネジ座は、外壁部の内側面に当接しネジ部材と係合するタップ孔を有するネジ座本体部と、ネジ座本体部と段差部を介して連結され外側面に当接したネジ座頭部と、を備えているので、ネジ座頭部を外壁部の外側面に当接させた状態で、外壁部の内側面に当接したネジ座本体部のタップ孔にネジ部材を係合することによって、被取付部材を閉断面部材の外壁部の外側面に簡単に締結することができる。
【0013】
また、外壁部は、ネジ部材を挿通可能に形成されたネジ挿通孔と、ネジ座本体部及び段差部を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔と、を備えているので、ネジ座本体部は、被取付部材を締結する閉断面部材の外壁部に形成したネジ座挿通孔を介して閉断面内部に簡単に挿入できる。そのため、閉断面部材の開口端が、他の部材等と接合されて閉塞されている場合や、被取付部材を締結する位置が、閉断面部材の開口端から大きく離間している場合でも、外壁部に隣接する他の外壁部に作業孔を形成する必要がない。したがって、閉断面部材の強度低下を低減できる。
【0014】
また、ネジ挿通孔とネジ座挿通孔は、被取付部材を締結する同じ外壁部に形成されているので、ネジ挿通孔とネジ座挿通孔とを、同一の方向から簡単に孔加工することができる。そのため、閉断面部材を孔加工装置にセットする段取り作業等の工数を低減できると共に、閉断面部材を他の部材に組付けた後でも容易に孔加工することができる。
【0015】
よって、本発明によれば、車両構体を構成する閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材を締結するネジ座本体部を、閉断面部材の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部の内側面に備え、ネジ座本体部を有するネジ座を介して被取付部材を簡単に締結できる鉄道車両を提供することができる。
【0016】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記ネジ座挿通孔は、前記ネジ座頭部を挿通不能に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、ネジ座挿通孔は、ネジ座頭部を挿通不能に形成されているので、ネジ座挿通孔は、ネジ座本体部及び段差部を挿通できる最小限の大きさに形成すれば良い。そのため、ネジ座挿通孔による閉断面部材の強度低下を、必要最小限に抑えることができる。
【0018】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記ネジ座は、前記ネジ座本体部と前記ネジ座頭部とが、前記段差部を介して、平面視でT字状に交差するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、ネジ座は、ネジ座本体部とネジ座頭部とが、段差部を介して、平面視でT字状に交差するように形成されているので、幅寸法の大きいネジ座頭部を外壁部の外側面に当接させることによって、幅寸法の小さいネジ座本体部を外壁部の内側面に対して、より平行に当接させることができる。そのため、ネジ座本体部のタップ孔に、ネジ部材をより精度良く係合することができ、被取付部材を、閉断面部材の外壁部の外側面に、より一層簡単に締結することができる。
【0020】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記タップ孔は、前記ネジ座本体部に固定されたナット部に形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、タップ孔は、ネジ座本体部に固定されたナット部に形成されているので、ネジ座本体部に、タップ孔のネジ溝を加工する必要がなく、タップ孔加工の作業工数を低減できる。また、ネジ座本体部に、タップ孔のネジ溝を加工する必要がないので、ネジ座の板厚を、より一層薄くできる。そのため、ネジ座の段差部の曲げ加工を簡単にでき、ネジ座の製作に掛かる作業工数を低減できる。
【0022】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記段差部又はネジ座頭部は、前記ネジ座挿通孔の内周面と当接する位置決め部を有することを特徴とする。
【0023】
本発明においては、段差部又はネジ座頭部は、ネジ座挿通孔の内周面と当接する位置決め部を有するので、ネジ座本体部及び段差部をネジ座挿通孔に挿入すると同時に、位置決め部をネジ座挿通孔の内周面に当接させることによって、閉断面部材の外壁部に対して、ネジ座を、より一層正確かつ迅速にセットすることができる。そのため、被取付部材を、閉断面部材の外壁部の外側面に、より一層精度良くかつ簡単に締結することができる。
【0024】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記ネジ座頭部は、前記段差部より前記ネジ座本体部側へ突出した突出部を備え、前記突出部と前記ネジ座本体部とが、前記外壁部を内外方向から挟持するように形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、ネジ座頭部は、段差部よりネジ座本体部側へ突出した突出部を備え、突出部とネジ座本体部とが、外壁部を内外方向から挟持するように形成されているので、ネジ座本体部をネジ座挿通孔から閉断面内部に挿入し、ネジ座本体部が外壁部の内側面に当接する位置にネジ座を回転させることによって、突出部が外壁部の外側面に当接し、突出部とネジ座本体部とが、外壁部を内外方向から挟持し、ネジ座を外壁部にセットさせることができる。そのため、例えば、指等で押圧してネジ座頭部を外壁部の外側面に当接させた状態を保持しなくても、外壁部の内側面に当接したネジ座本体部のタップ孔にネジ部材を簡単に係合することができ、被取付部材を閉断面部材の外壁部の外側面に簡単に締結することができる。
【0026】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載された鉄道車両の製造方法において、
前記ネジ座を形成するネジ座形成工程と、
前記外壁部に前記ネジ挿通孔と前記ネジ座挿通孔とを形成する挿通孔形成工程と、
前記ネジ座を前記外壁部にセットするネジ座セット工程と、
前記被取付部材を前記外側面に載置して、前記ネジ部材を前記タップ孔に係合するネジ係合工程と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明においては、ネジ座を形成するネジ座形成工程を備えたので、外壁部の内側面に当接しネジ部材と係合するタップ孔を有するネジ座本体部と、ネジ座本体部と段差部を介して連結され外壁部の外側面に当接するネジ座頭部と、を備えたネジ座を、予め形成することができる。そのため、閉断面部材の外壁部に、直接タップ孔を形成する煩雑な作業を回避できる。
【0028】
また、外壁部にネジ挿通孔とネジ座挿通孔とを形成する挿通孔形成工程を備えたので、ネジ部材を挿通可能に形成されたネジ挿通孔と、ネジ座本体部及び段差部を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔と、を予め外壁部に形成することができる。また、ネジ挿通孔とネジ座挿通孔は、同一の方向から簡単に孔加工することができる。そのため、閉断面部材を孔加工装置にセットする段取り作業等の工数を低減できると共に、閉断面部材を他の部材に組付けた後でも容易に孔加工することができる。
【0029】
また、ネジ座を外壁部にセットするネジ座セット工程を備えたので、ネジ座本体部及び段差部をネジ座挿通孔に挿通して、タップ孔を有するネジ座本体部を外壁部の内側面に当接させ、ネジ座頭部を外壁部の外側面に当接させることができる。また、ネジ座本体部は、被取付部材を締結する閉断面部材の外壁部に形成したネジ座挿通孔を介して閉断面内部に簡単に挿入できる。そのため、閉断面部材の開口端が、他の部材等と接合されて閉塞されている場合や、被取付部材を締結する位置が、閉断面部材の開口端から大きく離間している場合でも、外壁部に隣接する他の外壁部に作業孔を形成する必要がない。また、作業孔を形成する必要がないので、閉断面部材の強度低下を低減できる。
【0030】
また、被取付部材を外側面に載置して、ネジ部材をタップ孔に係合するネジ係合工程を備えたので、被取付部材を閉断面部材の外壁部の外側面に載置した状態で、外壁部の内側面に当接したネジ座本体部のタップ孔にネジ部材を係合することによって、閉断面部材の外壁部の外側面に、被取付部材を簡単に締結することができる。
【0031】
よって、本発明によれば、車両構体を構成する閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材を締結するネジ座本体部を、閉断面部材の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部の内側面に備え、ネジ座本体部を有するネジ座を介して被取付部材を簡単に締結できる鉄道車両の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、車両構体を構成する閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材を締結するネジ座本体部を、閉断面部材の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部の内側面に備え、ネジ座本体部を有するネジ座を介して被取付部材を簡単に締結できる鉄道車両及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略部分側面図である。
図2図1に示すA矢視方向から見た台枠の概略底面図である。
図3図2に示すB-B断面図である。
図4図3に示すネジ座の図面であって、(A)はネジ座の平面図を示し、(B)は(A)に示すC-C断面図を示す。
図5図3に示す閉断面部材にネジ座をセットした状態の部分平面図である。
図6図5に示すD矢視図であって、被取付部材のブラケットを外壁部の外側面に締結した状態を示す。
図7図6に示すE-E断面図である。
図8図2に示すB-B断面図であって、被取付部材をブラケットを介さずに直接締結する事例の断面図である。
図9】本鉄道車両の製造方法を表すフローチャート図である。
図10図3に示す閉断面部材に変形例1のネジ座をセットした状態の部分断面図である。
図11図3に示す閉断面部材に変形例2のネジ座をセットした状態の部分断面図である。
図12図3に示すネジ座の変形例3の図面であって、(A)はネジ座の平面図を示し、(B)は(A)に示すF矢視図を示す。
図13図3に示す閉断面部材に図12に示す変形例3のネジ座をセットした状態の部分断面図である。
図14】閉断面部材に従来のネジ座をセットした状態の部分平面図である。
図15図14に示すG-G断面図である。
図16図15に示す閉断面部材の他の外壁部に作業孔を形成した場合の断面図である。
図17】特許文献1に記載された閉断面部材に被取付部材を締結するネジ座の分解組付け斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<本鉄道車両の構成>
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略部分側面図を示す。図2に、図1に示すA矢視方向から見た台枠の概略底面図を示す。図3に、図2に示すB-B断面図を示す。
【0035】
図1図3に示すように、本態様の鉄道車両10は、車両構体SKを構成する閉断面部材1と、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに被取付部材2をネジ部材3によって締結するネジ座4と、を備えた鉄道車両10である。なお、鉄道車両10は、軌道に沿って走行できる車両を意味し、図1に示すような通勤用の鉄道車両以外にも、例えば、特急車両、新幹線車両、モノレール車両、磁気浮上車両等を含む。
【0036】
また、車両構体SKは、車体の構造部材を意味し、例えば、台枠DW、側構体GK、妻構体TK、屋根構体YK等を含む。また、閉断面部材1は、外壁部11によって中空断面が形成された部材であって、アルミ合金製の中空押出形材が代表例であるが、溶接構造の閉断面部材でも良い。また、被取付部材2は、配管等の艤装部品が代表例であるが、電気機器、空調機器等でも良い。
【0037】
ここでは、台枠DW(車両構体SK)を構成する中バリNB(閉断面部材1)と、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに配管部品(被取付部材2)をネジ部材3によって締結するネジ座4と、を備えた鉄道車両10の例で説明するが、これに限定する意味ではない。
【0038】
本鉄道車両10は、図1に示すように、レールRL上を走行する車輪SRを有する台車DSと、台車DSに空気ばねKB等を介して支持された台枠DWと、台枠DWの車両幅方向の両端部に起立する側構体GKと、台枠DWの車両長手方向の両端部に起立する妻構体TKと、側構体GKと妻構体TKの上端部に接合された屋根構体YKと、を備えている。側構体GKは、複数の側窓GMと、乗客が乗り降りする乗客用側扉GT1と、乗員が乗り降りする乗員用側扉GT2と、を備えている。
【0039】
また、台枠DWは、図2に示すように、車両幅方向の両端部で車両長手方向に延設された側バリGBと、車両長手方向の両端部で車両幅方向に延設された端バリTBと、左右の側バリGBに連結され空気ばね受け座KBZを有する枕バリMBと、枕バリMBの車両中央寄りで左右の側バリGBを連結する横バリYBと、端バリTBの中央部と枕バリMBと横バリYBとを連結する中バリNB(閉断面部材1)と、を備えている。中バリNBは、閉断面部材1として四角筒状に形成されている。
【0040】
また、図4に、図3に示すネジ座の図面であって、(A)はネジ座の平面図を示し、(B)は(A)に示すC-C断面図を示す。図5に、図3に示す閉断面部材にネジ座をセットした状態の部分平面図を示す。図6に、図5に示すD矢視図であって、被取付部材のブラケットを外壁部の外側面に締結した状態を示す。図7に、図6に示すE-E断面図を示す。
【0041】
図3図4に示すように、本鉄道車両10は、車両構体SKを構成する閉断面部材1と、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに被取付部材2をネジ部材3によって締結するネジ座4と、を備えている。この閉断面部材1は、例えば、アルミ合金製の中空押出形材であって、四角筒状に形成されている。また、被取付部材2は、L字状断面のブラケット21と、押え板22と、押え板22によってブラケット21にボルト24で固定された2つの円筒配管23と、を備えている。ボルト24のネジ部241は、ブラケット21の挿通孔211に挿入し、押え板22に固定したナット部242に係合されている。
【0042】
また、ネジ座4は、外壁部11の内側面11bに当接しネジ部材3と係合するタップ孔41を有するネジ座本体部42と、ネジ座本体部42と段差部43を介して連結され外壁部11の外側面11aに当接したネジ座頭部44と、を備えている。ネジ座4は、所定の板厚d3の板体4Pからなり、段差部43で屈曲して形成されている。ネジ座本体部42とネジ座頭部44との段差寸法d4は、ネジ座4の板厚d3と外壁部11の板厚d0とを加算した値となっている。また、ネジ座本体部42とネジ座頭部44とは、互いに平行に形成され、段差部43は、ネジ座本体部42及びネジ座頭部44に対して鈍角(例えば、120~140度)で傾斜している。ネジ座頭部44の幅寸法d2は、ネジ座本体部42及び段差部43の幅寸法d1より大きく形成されている。なお、タップ孔41は、2つ形成され、ネジ溝がネジ座本体部42に直接形成されている。
【0043】
上記構成を有するので、図6図7に示すように、被取付部材2(ブラケット21)を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに載置し、例えば、ネジ座頭部44を指等で押圧して、ネジ座頭部44を外壁部11の外側面11aに当接させた状態で、外壁部11の内側面11bに当接したネジ座本体部42のタップ孔41にネジ部材3を、簡単に係合することができる。これによって、被取付部材2を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに簡単に締結することができる。ここでは、ブラケット21を外壁部11の外側面11aに締結した後に、ブラケット21に対して押え板22によって円筒配管23を固定する。
【0044】
また、図3図5に示すように、外壁部11は、ネジ部材3を挿通可能に形成されたネジ挿通孔111と、ネジ座本体部42及び段差部43を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔112と、を備えている。なお、ネジ挿通孔111は、ネジ座4のタップ孔41と同一の位置で、タップ孔41より大きい直径の真円に形成されている。また、ネジ座挿通孔112は、例えば、長円形状に形成され、その長径d5は、ネジ座本体部42及び段差部43の幅寸法d1より大きく形成されている。ネジ座挿通孔112の短径d6は、段差部43の長手寸法d7より僅かに大きく形成されている。なお、ネジ座挿通孔112は、長円形状に限らず、例えば、長方形状でも良い。
【0045】
これによって、ネジ座本体部42は、被取付部材2を締結する閉断面部材1の外壁部11に形成したネジ座挿通孔112を介して閉断面内部1Nに簡単に挿入できる。したがって、閉断面部材1の開口端が、他の部材等と接合されて閉塞されている場合や、被取付部材2を締結する位置が、開口端から大きく離間している場合でも、外壁部11に隣接する他の外壁部に作業孔を形成する必要がない。その結果、閉断面部材1の強度低下を低減できる。
【0046】
また、ネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112は、被取付部材2を締結する同じ外壁部11に形成されているので、ネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112とを、同一の方向から簡単に孔加工することができる。そのため、閉断面部材1を孔加工装置にセットする段取り作業等の工数を低減できると共に、閉断面部材1を他の部材に組付けた後でも容易に孔加工することができる。
【0047】
また、図8に、図2に示すB-B断面図であって、被取付部材をブラケットを介さずに直接締結する事例の断面図を示す。この事例では、押え板22によって円筒配管23を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに直接締結した事例である。押え板22を挿通したネジ部材3のネジ部31が、ネジ座本体部42のタップ孔41と係合している。この場合、被取付部材2を外壁部11に締結する構造を、より一層簡単化できる。
【0048】
なお、図8に示すように、外壁部11に皿ビス421用の皿孔113を形成し、ネジ座本体部42に皿ビス421と係合するタップ孔45を形成して、ネジ座4を、事前に外壁部11に固定しても良い。この場合、ネジ座頭部44を指等で押圧することなく、ネジ座本体部42のタップ孔41にネジ部材3を、簡単に係合することができる。ネジ座4を、事前に外壁部11に固定する方法は、皿ビス421に限らず、例えば、接着テープによって固定しても良い。
【0049】
以上、詳細に説明したように、本鉄道車両10によれば、車両構体SKを構成する閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに被取付部材2を締結するネジ座本体部42を、閉断面部材1の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部11の内側面11bに備え、ネジ座本体部42を有するネジ座4を介して被取付部材2を簡単に締結できる鉄道車両10を提供することができる。
【0050】
また、本鉄道車両10においては、図5に示すように、ネジ座挿通孔112は、ネジ座頭部44を挿通不能に形成されていることが好ましい。この場合、ネジ座挿通孔112は、ネジ座本体部42及び段差部43を挿通できる最小限の大きさに形成すれば良い。そのため、ネジ座挿通孔112による閉断面部材1の強度低下を、必要最小限に抑えることができる。
【0051】
また、本鉄道車両10においては、図4図5に示すように、ネジ座4は、ネジ座本体部42とネジ座頭部44とが、段差部43を介して、平面視でT字状に交差する板体4Pに形成されていることが好ましい。この場合、幅寸法d2の大きいネジ座頭部44を外壁部11の外側面11aに当接させることによって、幅寸法d1の狭いネジ座本体部42を外壁部11の内側面11bに対して、より平行に当接させることができる。そのため、ネジ座本体部42のタップ孔41に、ネジ部材3をより精度良く係合することができ、被取付部材2を、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに、より一層簡単に締結することができる。
【0052】
<鉄道車両の製造方法>
次に、本鉄道車両の製造方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。図9に、本鉄道車両の製造方法を表すフローチャート図を示す。本鉄道車両10の製造方法は、図9に示すように、ネジ座4を形成するネジ座形成工程S1と、外壁部11にネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112とを形成する挿通孔形成工程S2と、ネジ座4を外壁部11にセットするネジ座セット工程S3と、被取付部材2を外壁部11の外側面11aに載置して、ネジ部材3をネジ座4のタップ孔41に係合するネジ係合工程S4と、を備えている。
【0053】
本鉄道車両10の製造方法は、ネジ座4を形成するネジ座形成工程S1を備えたので、外壁部11の内側面11bに当接しネジ部材3と係合するタップ孔41を有するネジ座本体部42と、ネジ座本体部42と段差部43を介して連結され外壁部11の外側面11aに当接するネジ座頭部44と、を備えたネジ座4を、予め形成することができる。そのため、閉断面部材1の外壁部11に、直接タップ孔を形成する煩雑な作業を回避できる。
【0054】
また、本鉄道車両10の製造方法は、外壁部11にネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112とを形成する挿通孔形成工程S2を備えたので、ネジ部材3を挿通可能に形成されたネジ挿通孔111と、ネジ座本体部42及び段差部43を挿通可能に形成されたネジ座挿通孔112と、を予め外壁部11に形成することができる。また、ネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112は、同一の方向から簡単に孔加工することができる。そのため、閉断面部材1を孔加工装置にセットする段取り作業等の工数を低減できると共に、閉断面部材1を他の部材に組付けた後でも容易に孔加工することができる。
【0055】
また、本鉄道車両10の製造方法は、ネジ座4を外壁部11にセットするネジ座セット工程S3を備えたので、ネジ座本体部42及び段差部43をネジ座挿通孔112に挿通して、タップ孔41を有するネジ座本体部42を外壁部11の内側面11bに当接させ、ネジ座頭部44を外壁部11の外側面11aに当接させることができる。ここで、ネジ座本体部42は、被取付部材2を締結する閉断面部材1の外壁部11に形成したネジ座挿通孔112を介して閉断面内部1Nに簡単に挿入できる。そのため、閉断面部材1の開口端が、他の部材等と接合されて閉塞されている場合や、被取付部材2を締結する位置が、閉断面部材1の開口端から大きく離間している場合でも、外壁部11に隣接する他の外壁部に作業孔を形成する必要がない。また、作業孔を形成する必要がないので、閉断面部材1の強度低下を低減できる。
【0056】
また、本鉄道車両10の製造方法は、被取付部材2を外側面11aに載置して、ネジ部材3をタップ孔41に係合するネジ係合工程S4を備えたので、被取付部材2を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに載置した状態で、外壁部11の内側面11bに当接したネジ座本体部42のタップ孔41にネジ部材3を係合することによって、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに、被取付部材2を簡単に締結することができる。
【0057】
以上、詳細に説明したように、本鉄道車両10の製造方法によれば、車両構体SKを構成する閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに被取付部材2を締結するネジ座本体部42を、閉断面部材1の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部11の内側面11bに備え、ネジ座本体部42を有するネジ座4を介して被取付部材2を簡単に締結できる鉄道車両10の製造方法を提供することができる。
【0058】
<変形例>
なお、本鉄道車両10は、本発明の要旨を変更しない範囲で、各種形態に変更できることは言うまでもない。例えば、本鉄道車両10においては、ネジ座4は、外壁部11の内側面11bに当接しネジ部材3と係合するタップ孔41を有するネジ座本体部42と、ネジ座本体部42と段差部43を介して連結され外側面11aに当接したネジ座頭部44と、を備えている。ここで、タップ孔41は、ネジ溝がネジ座本体部42に直接形成されているが、これに限定する必要はない。図10に、図3に示す閉断面部材に変形例1のネジ座をセットした状態の部分断面図を示す。また、図11に、図3に示す閉断面部材に変形例2のネジ座をセットした状態の部分断面図を示す。また、図12に、図3に示すネジ座の変形例3の図面であって、(A)はネジ座の平面図を示し、(B)は(A)に示すF矢視図を示す。また、図13に、図3に示す閉断面部材に図12に示す変形例3のネジ座をセットした状態の部分断面図を示す。
【0059】
例えば、図10に示すように、変形例1のネジ座4Bを備えた鉄道車両10Bにおいて、又は、図12図13に示すように、変形例3のネジ座4Dを備えた鉄道車両10Dにおいて、タップ孔41B、41Dは、ネジ座本体部42B、42Dに固定されたナット部NTに形成されていても良い。この場合、ネジ座本体部42B、42Dに、タップ孔のネジ溝を加工する必要がなく、タップ孔加工の作業工数を低減できる。また、ネジ座本体部42B、42Dに、タップ孔のネジ溝を加工する必要がないので、ネジ座4B、4Dの板厚d3を、より一層薄くできる。そのため、ネジ座4B、4Dの段差部43B、43Dの曲げ加工を簡単にでき、ネジ座4B、4Dの製作に掛かる作業工数を低減できる。
【0060】
例えば、図10に示すように、変形例1のネジ座4Bを備えた鉄道車両10Bにおいて、又は、図11に示すように、変形例2のネジ座4Cを備えた鉄道車両10Cにおいて、段差部43B又はネジ座頭部44Cは、ネジ座挿通孔112B、112Cの内周面と当接する位置決め部431B、442Cを有するように形成しても良い。図10に示すように、変形例1のネジ座4Bの段差部43Bは、傾斜部432Bと垂直部431Bとを有するように形成され、垂直部431Bが位置決め部431Bを兼ねている。また、図11に示すように、変形例2のネジ座4Cのネジ座頭部44Cは、ネジ座挿通孔112Cに嵌合する嵌合部442Cを備えている。嵌合部442Cは、段差部43Cと溶接等で接合され、位置決め部442Cを兼ねている。なお、ネジ座頭部44Cの嵌合部442Cの外周には、ゴム系のシール部443Cを嵌装しても良い。
【0061】
この場合、ネジ座本体部42B、42C及び段差部43B、43Cをネジ座挿通孔112B、112Cに挿入すると同時に、位置決め部431B、442Cをネジ座挿通孔112B、112Cの内周面に当接させることによって、閉断面部材1の外壁部11に対して、ネジ座4B、4Cを、より一層正確かつ迅速にセットすることができる。そのため、被取付部材2を、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに、より一層精度良くかつ簡単に締結することができる。また、ネジ座頭部44Cの嵌合部442Cの外周にゴム系のシール部443Cを嵌装することによって、閉断面部材1の閉断面内部1Nに水等が侵入することを回避できる。
【0062】
例えば、図11に示すように、変形例2のネジ座4Cを備えた鉄道車両10Cにおいて、又は、図12図13に示すように、変形例3のネジ座4Dを備えた鉄道車両10Dにおいて、ネジ座頭部44C、44Dは、段差部43C、43Dよりネジ座本体部42C、42D側へ突出した突出部441C、441Dを備え、突出部441C、441Dとネジ座本体部42C、42Dとが、外壁部11を内外方向から挟持するように形成されていても良い。ここで、図11に示すように、変形例2のネジ座4Cは、突出部441Cがネジ座挿通孔112の外周側へ孔全周に亘って突出している。また、図12図13に示すように、変形例3のネジ座4Dは、所定の板厚d3の板体4DPからなり、長円形のネジ座頭部44Dが段差部43Dまで切り欠かれ、突出部441Dが、段差部43Dを除いて、ネジ座挿通孔112の外周側へ突出している。
【0063】
この場合、ネジ座本体部42C、42Dをネジ座挿通孔112C、112Dから閉断面内部1Nに挿入し、ネジ座本体部42C、42Dが外壁部11の内側面11bに当接する位置にネジ座4C、4Dを回転させることによって、突出部441C、441Dが外壁部11の外側面11aに当接し、突出部441C、441Dとネジ座本体部42C、42Dとが、外壁部11を内外方向から挟持し、ネジ座4C、4Dを外壁部11に簡単にセットさせることができる。そのため、例えば、指等で押圧してネジ座頭部44C、44Dを外壁部11の外側面11aに当接させた状態を保持しなくても、外壁部11の内側面11bに当接したネジ座本体部42C、42Dのタップ孔41C、41Dにネジ部材3を簡単に係合することができ、被取付部材2を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに簡単に締結することができる。なお、上記ネジ座4C、4Dは、ネジ座挿通孔112C、112Dに対する蓋機能を有している。
【0064】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10、10B、10C、10Dによれば、ネジ座4、4B、4C、4Dは、外壁部11の内側面11bに当接しネジ部材3と係合するタップ孔41、41B、41C、41Dを有するネジ座本体部42、42B、42C、42Dと、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dと段差部43、43B、43C、43Dを介して連結され外側面11aに当接したネジ座頭部44、44B、44C、44Dと、を備えているので、ネジ座頭部44、44B、44C、44Dを外壁部11の外側面11aに当接させた状態で、外壁部11の内側面11bに当接したネジ座本体部42、42B、42C、42Dのタップ孔41、41B、41C、41Dにネジ部材3を係合することによって、被取付部材2を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに簡単に締結することができる。
【0065】
また、外壁部11は、ネジ部材3を挿通可能に形成されたネジ挿通孔111と、ネジ座本体部42、42B、42C、42D及び段差部43、43B、43C、43Dを挿通可能に形成されたネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dと、を備えているので、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dは、被取付部材2を締結する閉断面部材1の外壁部11に形成したネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dを介して閉断面内部1Nに簡単に挿入できる。そのため、閉断面部材1の開口端が、他の部材等と接合されて閉塞されている場合や、被取付部材2を締結する位置が、閉断面部材1の開口端から大きく離間している場合でも、外壁部11に隣接する他の外壁部に作業孔を形成する必要がない。したがって、閉断面部材1の強度低下を低減できる。
【0066】
また、ネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dは、被取付部材2を締結する同じ外壁部11に形成されているので、ネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dとを、同一の方向から簡単に孔加工することができる。そのため、閉断面部材1を孔加工装置にセットする段取り作業等の工数を低減できると共に、閉断面部材1を他の部材に組付けた後でも容易に孔加工することができる。
【0067】
よって、本実施形態によれば、車両構体SKを構成する閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに被取付部材2を締結するネジ座本体部42、42B、42C、42Dを、閉断面部材1の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部11の内側面11bに備え、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dを有するネジ座4、4B、4C、4Dを介して被取付部材2を簡単に締結できる鉄道車両10、10B、10C、10Dを提供することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、ネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dは、ネジ座頭部44、44B、44C、44Dを挿通不能に形成されているので、ネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dは、ネジ座本体部42、42B、42C、42D及び段差部43、43B、43C、43Dを挿通できる最小限の大きさに形成することができる。そのため、ネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dによる閉断面部材1の強度低下を、必要最小限に抑えることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、ネジ座4、4B、4C、4Dは、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dとネジ座頭部44、44B、44C、44Dとが、段差部43、43B、43C、43Dを介して、平面視でT字状に交差するように形成されているので、幅寸法d2の大きいネジ座頭部44、44B、44C、44Dを外壁部11の外側面11aに当接させることによって、幅寸法d1の小さいネジ座本体部42、42B、42C、42Dを外壁部11の内側面11bに対して、より平行に当接させることができる。そのため、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dのタップ孔41、41B、41C、41Dに、ネジ部材3をより精度良く係合することができ、被取付部材2を、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに、より一層簡単に締結することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、タップ孔41B、41Dは、ネジ座本体部42B、42Dに固定されたナット部NTに形成されているので、ネジ座本体部42B、42Dに、タップ孔のネジ溝を加工する必要がなく、タップ孔加工の作業工数を低減できる。また、ネジ座本体部42B、42Dに、タップ孔のネジ溝を加工する必要がないので、ネジ座4B、4Dの板厚d3を、より一層薄くできる。そのため、ネジ座4B、4Dの段差部43B、43Dの曲げ加工を簡単にでき、ネジ座4B、4Dの製作に掛かる作業工数を低減できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、段差部43B又はネジ座頭部44Cは、ネジ座挿通孔112B、112Cの内周面と当接する位置決め部431B、442Cを有するので、ネジ座本体部42B、42C及び段差部43B、43Cをネジ座挿通孔112B、112Cに挿入すると同時に、位置決め部431B、442Cをネジ座挿通孔112B、112Cの内周面に当接させることによって、閉断面部材1の外壁部11に対して、ネジ座4B、4Cを、より一層正確かつ迅速にセットすることができる。そのため、被取付部材2を、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに、より一層精度良くかつ簡単に締結することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、ネジ座頭部44C、44Dは、段差部43C、43Dよりネジ座本体部42C、42D側へ突出した突出部441C、441Dを備え、突出部441C、441Dとネジ座本体部42C、42Dとが、外壁部11を内外方向から挟持するように形成されているので、ネジ座本体部42C、42Dをネジ座挿通孔112C、112Dから閉断面内部1Nに挿入し、ネジ座本体部42C、42Dが外壁部11の内側面11bに当接する位置にネジ座4C、4Dを回転させることによって、突出部441C、441Dが外壁部11の外側面11aに当接し、突出部441C、441Dとネジ座本体部42C、42Dとが、外壁部11を内外方向から挟持し、ネジ座4C、4Dを外壁部11にセットさせることができる。そのため、例えば、指等で押圧してネジ座頭部44C、44Dを外壁部11の外側面11aに当接させた状態を保持しなくても、外壁部11の内側面11bに当接したネジ座本体部42C、42Dのタップ孔41C、41Dにネジ部材3を係合することができ、被取付部材2を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに簡単に締結することができる。
【0073】
また、他の実施形態に係る本鉄道車両の製造方法によれば、ネジ座4、4B、4C、4Dを形成するネジ座形成工程S1を備えたので、外壁部11の内側面11bに当接しネジ部材3と係合するタップ孔41、41B、41C、41Dを有するネジ座本体部42、42B、42C、42Dと、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dと段差部43、43B、43C、43Dを介して連結され外壁部11の外側面11aに当接するネジ座頭部44、44B、44C、44Dと、を備えたネジ座4、4B、4C、4Dを、予め形成することができる。そのため、閉断面部材1の外壁部11に、直接タップ孔を形成する煩雑な作業を回避できる。
【0074】
また、外壁部11にネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dとを形成する挿通孔形成工程S2を備えたので、ネジ部材3を挿通可能に形成されたネジ挿通孔111と、ネジ座本体部42、42B、42C、42D及び段差部43、43B、43C、43Dを挿通可能に形成されたネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dと、を予め外壁部11に形成することができる。また、ネジ挿通孔111とネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dは、同一の方向から簡単に孔加工することができる。そのため、閉断面部材1を孔加工装置にセットする段取り作業等の工数を低減できると共に、閉断面部材1を他の部材に組付けた後でも容易に孔加工することができる。
【0075】
また、ネジ座4、4B、4C、4Dを外壁部11にセットするネジ座セット工程S3を備えたので、ネジ座本体部42、42B、42C、42D及び段差部43、43B、43C、43Dをネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dに挿通して、タップ孔41、41B、41C、41Dを有するネジ座本体部42、42B、42C、42Dを外壁部11の内側面11bに当接させ、ネジ座頭部44、44B、44C、44Dを外壁部11の外側面11aに当接させることができる。ここで、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dは、被取付部材2を締結する閉断面部材1の外壁部11に形成したネジ座挿通孔112、112B、112C、112Dを介して閉断面内部1Nに簡単に挿入できる。そのため、閉断面部材1の開口端が、他の部材等と接合されて閉塞されている場合や、被取付部材2を締結する位置が、開口端から大きく離間している場合でも、外壁部11に隣接する他の外壁部に作業孔を形成する必要がない。また、作業孔を形成する必要がないので、閉断面部材1の強度低下を低減できる。
【0076】
また、被取付部材2を外側面11aに載置して、ネジ部材3をタップ孔41、41B、41C、41Dに係合するネジ係合工程S4を備えたので、被取付部材2を閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに載置した状態で、外壁部11の内側面11bに当接したネジ座本体部42、42B、42C、42Dのタップ孔41、41B、41C、41Dにネジ部材3を係合することによって、閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに、被取付部材2を簡単に締結することができる。
【0077】
よって、本他の実施形態によれば、車両構体SKを構成する閉断面部材1の外壁部11の外側面11aに被取付部材2を締結するネジ座本体部42、42B、42C、42Dを、閉断面部材1の強度低下を低減しつつ、簡単な加工及び作業で外壁部11の内側面11bに備え、ネジ座本体部42、42B、42C、42Dを有するネジ座4、4B、4C、4Dを介して被取付部材2を簡単に締結できる鉄道車両10、10B、10C、10Dの製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、車両構体を構成する閉断面部材と、前記閉断面部材の外壁部の外側面に被取付部材をネジ部材によって締結するネジ座と、を備えた鉄道車両及びその鉄道車両の製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 閉断面部材
2 被取付部材
3 ネジ部材
4、4B、4C、4D ネジ座
10、10B、10C、10D 鉄道車両
11 外壁部
11a 外側面
11b 内側面
41、41B、41C、41D タップ孔
42、42B、42C、42D ネジ座本体部
43、43B、43C、43D 段差部
44、44B、44C、44D ネジ座頭部
111 ネジ挿通孔
112、112B、112C ネジ座挿通孔
112D ネジ座挿通孔
431B、442C 位置決め部
441C、441D 突出部
NT ナット部
SK 車両構体
S1 ネジ座形成工程
S2 挿通孔形成工程
S3 ネジ座セット工程
S4 ネジ係合工程
図1
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