(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172257
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20241205BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F28D20/00 B
H01L23/36 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089846
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 玄人
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰高
(72)【発明者】
【氏名】平沢 優好
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC05
5F136FA23
(57)【要約】
【課題】より効率よく放熱・冷却を行うことが可能な蓄熱装置を提供する。
【解決手段】蓄熱装置は、熱源からの熱が伝達される熱交換部と、熱交換部に熱的に接続されるとともに、熱交換部から離間する方向である延在方向に延びるとともに互いに間隔をあけて配列された、グラフェンからなる複数の伝熱体と、複数の伝熱体を覆う蓄熱体と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源からの熱が伝達される熱交換部と、
該熱交換部に熱的に接続されるとともに、該熱交換部から離間する方向である延在方向に延びるとともに互いに間隔をあけて配列された、グラフェンからなる複数の伝熱体と、
該複数の伝熱体を覆う蓄熱体と、
を備える蓄熱装置。
【請求項2】
前記伝熱体は、前記延在方向に広がる板状をなすとともに、該延在方向に交差する第一方向に間隔をあけて配列され、各前記伝熱体は、前記グラフェンの配向方向が互いに直交している一対の半体を有する請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記蓄熱体は、固体の金属材料で一体に形成され、前記複数の伝熱体の表面に接合されている請求項1又は2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記蓄熱体は、液体材料で形成され、前記複数の伝熱体は該液体材料に浸漬されている請求項1又は2に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記伝熱体には、該伝熱体を貫通する複数の開口部が形成されている請求項4に記載の蓄熱装置。
【請求項6】
前記伝熱体は、前記延在方向に延びる棒状をなすとともに、該延在方向に交差する面内で互いに間隔をあけて格子状に配列されている請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項7】
互いに隣り合う一対の前記伝熱体同士では、前記延在方向から見た前記グラフェンの配向方向が互いに異なっている請求項6に記載の蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載用のバッテリー等の発熱源を冷却するための装置として蓄熱装置が用いられる場合がある。この種の装置の具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1には、相変化蓄熱材を収容するケーシングの外面に熱源が取り付けられている。ケーシング内には、銅などの熱伝導性の高い金属材料で形成されたバネが収容されている。ケーシングを通じて発熱源の熱は蓄熱材、及びバネに伝達される。これにより、発熱源は冷却されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにバネを用いた構成では、バネとケーシングとの間の接触熱抵抗が大きくなってしまい、発熱源に対する冷却効果が限定的となってしまう。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より効率よく放熱・冷却を行うことが可能な蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る蓄熱装置は、熱源からの熱が伝達される熱交換部と、該熱交換部に熱的に接続されるとともに、該熱交換部から離間する方向である延在方向に延びるとともに互いに間隔をあけて配列された、グラフェンからなる複数の伝熱体と、該複数の伝熱体を覆う蓄熱体と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より効率よく放熱・冷却を行うことが可能な蓄熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る蓄熱装置の構成を示す縦断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る伝熱体のグラフェンの配向方向を示す模式図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係る蓄熱装置の構成を示す縦断面図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係る伝熱体の構成を示す平面図である。
【
図5】本開示の第三実施形態に係る蓄熱装置の構成を示す側面図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係る伝熱体のグラフェンの配向方向を示す模式図である。
【
図7】本開示の第四実施形態に係る蓄熱装置の構成を示す縦断面図である。
【
図8】本開示の第四実施形態に係る蓄熱装置の構成を示す上面図である。
【
図9】本開示の第四実施形態に係る蓄熱装置の変形例を示す上面図である。
【
図10】本開示の第四実施形態に係る伝熱体の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(蓄熱装置1の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る蓄熱装置1について、
図1と
図2を参照して説明する。この蓄熱装置1は、例えば車両等の移動体に搭載されて、バッテリー等の熱源を冷却するために用いられる。
【0010】
図1に示すように、蓄熱装置1は、熱交換部10と、ヘッダ部20と、伝熱体30と、蓄熱体40と、を備えている。熱交換部10には、熱源からの熱が伝達される。熱交換部10は、ケーシング21と、冷媒配管22と、を有する。ケーシング21は板状をなしており、冷媒配管22はケーシング21の内部で当該ケーシング21の面に沿う方向にジグザグ状に延びている。冷媒配管22の内部には、熱源から伝達された熱を帯びた冷媒が流通している。冷媒としては、水や油脂の他、有機溶媒等が用いられる。
【0011】
熱交換部10のケースの下面にはヘッダ部20が設けられている。ヘッダ部20は、熱交換部10の熱を伝熱体30に伝えるための部材である。ヘッダ部20は、ケーシング21と同様に板状をなし、当該ケーシング21の下面に積層されている。ヘッダ部20は、例えば銅等の熱伝導率の高い金属材料で形成されていることが望ましい。
【0012】
伝熱体30は、ヘッダ部20に伝わった熱を、後述する蓄熱体40に伝えるための部材である。伝熱体30は、熱交換部10、及びヘッダ部20の広がる面に直交する方向(上下方向)に延びている。この伝熱体30が延びる方向を「延在方向D」と呼ぶ。伝熱体30は、この延在方向D、及び延在方向Dに直交する方向がなす面内に広がる板状をなしている。伝熱体30は、当該伝熱体30の厚さ方向に間隔をあけて複数配列されている。伝熱体30の上側の端部はヘッダ部20に結合されている。つまり、伝熱体30はヘッダ部20に対して物理的にも熱的にも接続されている。伝熱体30の延在方向Dにおける寸法は、熱交換部10、及びヘッダ部20の延在方向Dにおける寸法よりも大きく確保されている。
【0013】
伝熱体30は、グラフェンによって形成されている。ここで、
図2に示すように、伝熱体30は、厚さ方向に積層された一対の半体31を有する。これら半体31同士の間では、グラフェンの配向方向が互いに異なっている。具体的には、一方側の半体31では、グラフェンの配向方向が延在方向Dに直交する水平方向である。他方側の半体31では、この水平方向に直交する方向、つまり延在方向Dにグラフェンが配向されている。つまり、これら半体31同士では、グラフェンの配向方向が互いに直交している。
【0014】
より具体的には、グラフェンは配向方向に広がる薄い層が当該配向方向に直交する方向に複数積層された構造をなしている。熱伝導率は同一の層内では高いが、隣接する層同士の間では低いことが知られている。つまり、グラフェン単体では熱伝導率に異方性が生じる。しかし、本実施形態に係る伝熱体30は、上記のように配向方向が異なる一対の半体31を有することから、熱伝導率の異方性が解消され、疑似的な等方性が確保されている。
【0015】
蓄熱体40は、上記の複数の伝熱体30を隙間なく覆っている。蓄熱体40は、伝熱体30に対して拡散接合によって接合されていることが望ましい。蓄熱体40は、アルミニウム等の固体金属材料で一体に形成されている。蓄熱体40は、直方体状の外形をなしている。
【0016】
(作用効果)
ここで、従来、熱を移送するための部材(伝熱体30)に銅やアルミニウムを用いることは一般的であった。しかしながら、これら金属材料の熱伝導率は一般にグラフェンに比べて低いことから当該伝熱体30のフィン効率が低下すること、また当該伝熱体30と蓄熱体40との接触熱抵抗が原因となり、熱移送量が限定されてしまう、という課題があった。結果として、熱源の冷却に支障を来たしてしまう虞があった。そこで、本実施形態では、上述の各構成を採用している。
【0017】
上記構成によれば、熱交換部10に伝わった熱源からの熱は、グラフェンからなる伝熱体30を介して蓄熱体40に移送される。特に、伝熱体30が熱伝導率の高いグラフェンによって形成されているため、熱交換部10と蓄熱体40との間の熱の移送をより効率的かつ短時間で進めさせることが可能となる。これにより、熱源の熱を直ちに取り去り、当該熱源を効率的に冷却することができる。つまり、蓄熱装置1の熱的な性能を大きく向上させることが可能となる。
【0018】
ここで、グラフェンは配向方向に広がる薄い層が当該配向方向に直交する方向に複数積層された構造をなしている。熱伝導率は同一の層内では高いが、隣接する層同士の間では低いことが知られている。上記構成によれば、各伝熱体30の半体31同士では、グラフェンの配向方向が互いに直交している。このため、一方の半体31で任意の一の方向の熱伝導率を確保しつつ、他方の半体31ではその一の方向に直交する他の方向における熱伝導率を確保することができる。その結果、蓄熱体40の全体にわたってムラなく熱を移送させることができる。言い換えれば、従来よりも必要となる蓄熱体40の体積を小さく抑えることができる。これにより、蓄熱装置1の製造コストやメンテナンスコストを削減することができるとともに、当該蓄熱装置1の寸法体格を小さく抑えることもできる。
【0019】
また、上記構成によれば、蓄熱体40として固体の金属材料が用いられることから、外部からの衝撃や振動による影響を受けることなく、蓄熱体40の熱性能を発揮させることができる。これにより、例えば車両等の移動体に蓄熱装置1を搭載する際の安定性を確保することができる。また、固体ではなく液体材料を蓄熱体40として用いる場合には漏洩を防ぐためのシール性能の確保等が必要となるため、コスト増加につながりやすい。上記構成によれば、このような可能性を低減し、蓄熱装置1の製造コストやメンテナンスコストをさらに削減することができる。
【0020】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0021】
例えば、
図1で示した伝熱体30の数は一例であって、設計や仕様に応じて適宜変更されてよい。また、蓄熱装置1が配置される姿勢・方向も上記実施形態によっては限定されず、延在方向Dが水平方向や、水平方向に対して傾斜した方向であってもよい。いずれの場合でも上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図3と
図4を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0023】
本実施形態に係る蓄熱装置1では、蓄熱体40の態様が上記第一実施形態とは異なっている。本実施形態に係る蓄熱体40は、固体金属ではなく、目的の温度域で相変化可能な材料で形成されている。より具体的には、蓄熱体40としてパラフィンが好適に用いられる。この蓄熱体40が、伝熱体30を外側から覆う蓄熱体容器60内に隙間なく充填されている。熱交換部10、及びヘッダ部20の構成は上記第一実施形態と同様である。
【0024】
さらに、
図4に示すように、本実施形態では、伝熱体30に当該伝熱体30を貫通する複数の開口部32が形成されている。これら開口部32は、蓄熱体40が液相状態となった際の対流を妨げないために設けられている。つまり、液相状態の蓄熱体40は、開口部32を通じて複数の伝熱体30の間を流通することが可能である。開口部32としては、
図4に示す長孔33や、一端が開放されたスリット34が適宜組み合わせて用いられることが望ましい。
【0025】
(作用効果)
上記構成によれば、蓄熱体40が液体材料であることから、蓄熱体40への入熱や放熱に伴って当該蓄熱体40が相変化する。これにより、固体の金属材料を用いた場合に比べて、蓄熱体40の蓄熱量を大幅に増大させることが可能となる。言い換えれば、必要となる蓄熱体40の体積を、固体金属を用いた構成よりも小さく抑えることができる。これにより、蓄熱装置1の製造コストやメンテナンスコストを削減できるとともに、蓄熱装置1の占有スペースを小さくすることができる。したがって、蓄熱装置1の汎用性をさらに高めることができる。
【0026】
上記構成によれば、液体材料で形成された蓄熱体40は、伝熱体30の開口部32を通じて蓄熱装置1の内部で対流する。これにより、蓄熱体40内部における温度のムラが解消され、蓄熱体40の蓄熱性能を余すことなく発揮させることが可能となる。
【0027】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0028】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図5と
図6を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0029】
図5に示すように、本実施形態では、熱交換部10に対する蓄熱体40の姿勢と角度が第一実施形態とは異なっている。具体的には、熱交換部10の冷媒配管22は、上下方向に広がる面に沿って延びている。これと同様に、蓄熱体40も上下方向を長手方向とする直方体状をなしている。
【0030】
これら熱交換部10と蓄熱体40とを接続するため、伝熱体30の態様も第一実施形態とは異なっている。この伝熱体30は、伝熱体本体51と、突出部52とを有する。伝熱体本体51は蓄熱体40の内部に挿入されている。伝熱体30の上端部は蓄熱体40の上面から上方に突出することで突出部52を形成している。さらに、この突出部52の水平方向における一方側の端部が、熱交換部10に接続されている。つまり、突出部52は外部に露出している。
【0031】
図6に示すように、伝熱体30は、上述した一対の半体31に加えて、さらに別の接続体131を有する。接続体131は、突出部52の一方側の面から熱交換部10に向かって水平方向に延びている。また、接続体131におけるグラフェンの配向方向は水平方向である。したがって、熱交換部10と突出部52との間の熱伝導率がこの接続体131の配向方向に基づいて高く維持されている。
【0032】
(作用効果)
上記構成によれば、熱交換部10の姿勢や角度を問わず、熱交換部10と蓄熱体40とを熱的に接続することができる。これにより、蓄熱装置1の汎用性をさらに向上させることが可能となる。特に、接続体131のグラフェンの配向方向が熱交換部10と突出部52とを結ぶ方向であるため、当該方向における熱伝導率を大きく確保することができる。したがって、熱交換部10から伝熱体30にかけての熱の授受を円滑に、かつ効率的に進めることが可能となる。
【0033】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第三実施形態における一対の半体31のうち、一方を省略した構成を採用することも可能である。この構成では、グラフェンの使用量が低減されるため、第三実施形態の構成に比べて、小型化やコスト削減といったメリットがある。
【0034】
<第四実施形態>
次に、本開示の第四実施形態について、
図7と
図8を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、伝熱体30の形状が上記の各実施形態とは異なっている。具体的には、
図7と
図8に示すように、伝熱体30は、延在方向Dに延びる棒状をなしている。伝熱体30の断面形状は矩形である。なお、この断面形状は円形や楕円形、多角形であってもよい。この伝熱体30が、延在方向Dに直交する面内で互いに間隔をあけて格子状に配列されている。
【0036】
(作用効果)
上記構成によれば、伝熱体30が棒状をなすとともに、格子状に配列されていることから、当該伝熱体30が板状等である場合に比べて、伝熱体30の体積を小さく抑えることが可能となる。したがって、グラフェンの使用量が削減されるため、装置の製造コストやメンテナンスコストを大きく低減することができる。
【0037】
以上、本開示の第四実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0038】
例えば、
図9に変形例として示すように、熱交換部10としてのヘッダ流路に冷媒を流通させ、当該冷媒の流れに伝熱体30の上端部が露出している構成を採ることも可能である。具体的には、ヘッダ流路は、冷媒が供給される供給部121と、流路本体122と、冷媒を排出する排出部123と、を有する。供給部121から流路本体122に流れ込んだ冷媒は、当該流路本体122内で伝熱体30の上端部に接触する。これにより、冷媒の熱が伝熱体30に伝達される。熱を伝達し終えた冷媒は、排出部123から外部に導かれる。この構成によれば、冷媒と伝熱体30とが直接的に接触することから、熱交換部10の熱伝導抵抗の影響を最小限にすることができる。これにより、蓄熱装置1としての熱性能をさらに高めることが可能となる。
【0039】
また、上記の第四実施形態では、伝熱体30ごとのグラフェンの配向方向は任意であるが、
図10に変形例として示す構成を採ることが可能である。具体的には、格子状に配列された複数の伝熱体30のうち、互いに隣り合う一対の伝熱体30同士でグラフェンの配向方向が異なっている構成を採ることが可能である。つまり、隣り合う伝熱体30同士で、グラフェンの配向方向が互いに直交している。なお、この構成は、伝熱体30同士の間で、熱伝導率の異方向性があることを前提としている。言い換えると、各伝熱体30のグラフェンの配向方向は単一の方向である。この構成によれば、互いに隣り合う一対の伝熱体30同士の間でグラフェンの配向方向が異なっていることから、当該伝熱体30から発散される熱の移動方向が均一化される。したがって、蓄熱体40内部における温度のムラの発生を回避することができる。これにより、蓄熱体40の蓄熱性能を余すことなく発揮させることができる。一方で、伝熱体30の全てでグラフェンの配向方向が同一である場合、この配向方向に基づく熱伝導率の影響によって熱の授受が大きい領域と小さい領域が生じてしまう。その結果として、蓄熱体40に温度のムラが生じ、蓄熱性能が限定的となってしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このような可能性を大きく低減することができる。
【0040】
(その他の実施形態)
以上、本開示の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0041】
例えば、蓄熱装置1の適用対象は上述した車両等の移動体に限られず、船舶や航空機、半導体チップ、その他の産業機械等、熱の除去を必要とする装置であればいかなるものにも蓄熱装置1を適用することが可能である。
【0042】
また、液体材料の蓄熱体40を用いる場合には、伝熱体30の表面を保護するために、クラッド等の金属膜を形成することが望ましい。これにより、蓄熱体40とグラフェンとの化学反応が抑制され、伝熱体30を長期にわたって安定的に使用することが可能となる。加えて、この金属膜によって伝熱体30の強度も高めることができる。金属膜は、伝熱体30の表面にクラッドされる(貼り付けられる)ことが望ましい。
【0043】
さらに、上述した熱交換部10の流路の形状は一例であって、熱源とされる装置の寸法体格や特性に応じて適宜変更されてよい。いずれの態様であっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
また、上記の各実施形態で説明した伝熱体30は、一対の半体31を必ずしも有している必要はなく、グラフェンの配向方向が単一の方向である一つのみの半体31を用いて伝熱体31を構成することも可能である。この構成によれば、グラフェンの使用量が削減されるため、装置の製造コストやメンテナンスコストを大幅に圧縮することができる。
【0045】
<付記>
各実施形態に記載の蓄熱装置1は、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係る蓄熱装置1は、熱源からの熱が伝達される熱交換部10と、該熱交換部10に熱的に接続されるとともに、該熱交換部10から離間する方向である延在方向Dに延びるとともに互いに間隔をあけて配列された、グラフェンからなる複数の伝熱体30と、該複数の伝熱体30を覆う蓄熱体40と、を備える。
【0047】
上記構成によれば、熱交換部10に伝わった熱源からの熱は、グラフェンからなる伝熱体30を介して蓄熱体40に伝達される。特に、伝熱体30が熱伝導率の高いグラフェンによって形成されているため、熱交換部10と蓄熱体40との間の熱の移送をより効率的かつ短時間で進めさせることが可能となる。これにより、熱源の熱を直ちに取り去り、当該熱源を効率的に冷却することができる。
【0048】
(2)第2の態様に係る蓄熱装置1は、(1)の蓄熱装置1であって、前記伝熱体30は、前記延在方向Dに広がる板状をなすとともに、該延在方向Dに交差する第一方向に間隔をあけて配列され、各前記伝熱体30は、前記グラフェンの配向方向が互いに直交している一対の半体31を有する。
【0049】
ここで、グラフェンは配向方向に広がる薄い層が当該配向方向に直交する方向に複数積層された構造をなしている。熱伝導率は同一の層内では高いが、隣接する層同士の間では低いことが知られている。上記構成によれば、各伝熱体30の半体31同士では、グラフェンの配向方向が互いに直交している。このため、一方の半体31で任意の一の方向の熱伝導率を確保しつつ、他方の半体31ではその一の方向に直交する他の方向における熱伝導率を確保することができる。その結果、蓄熱体40の全体にわたってムラなく熱を伝達させることができる。
【0050】
(3)第3の態様に係る蓄熱装置1は、(1)又は(2)の蓄熱装置1であって、前記蓄熱体40は、固体の金属材料で一体に形成され、前記複数の伝熱体30の表面に接合されている。
【0051】
上記構成によれば、蓄熱体40として固体の金属材料が用いられることから、外部からの衝撃や振動による影響を受けることなく、蓄熱体40の熱性能を発揮させることができる。これにより、例えば車両等の移動体に蓄熱装置1を搭載する際の安定性を確保することができる。
【0052】
(4)第4の態様に係る蓄熱装置1は、(1)又は(2)の蓄熱装置1であって、前記蓄熱体40は、液体材料で形成され、前記複数の伝熱体30は該液体材料に浸漬されている。
【0053】
上記構成によれば、蓄熱体40が液体材料であることから、蓄熱体40への入熱や放熱に伴って当該蓄熱体40が相変化する。これにより、固体の金属材料を用いた場合に比べて、蓄熱体40の蓄熱量を大幅に増大させることが可能となる。
【0054】
(5)第5の態様に係る蓄熱装置1は、(4)の蓄熱装置1であって、前記伝熱体30には、該伝熱体30を貫通する複数の開口部32が形成されている。
【0055】
上記構成によれば、液体材料で形成された蓄熱体40は、伝熱体30の開口部32を通じて蓄熱装置1の内部で対流する。これにより、蓄熱体40内部における温度のムラが解消され、蓄熱体40の蓄熱性能を余すことなく発揮させることが可能となる。
【0056】
(6)第6の態様に係る蓄熱装置1は、(1)の蓄熱装置1であって、前記伝熱体30は、前記延在方向Dに延びる棒状をなすとともに、該延在方向Dに交差する面内で互いに間隔をあけて格子状に配列されている。
【0057】
上記構成によれば、伝熱体30が棒状をなすとともに、格子状に配列されていることから、当該伝熱体30の体積を小さく抑えることが可能となる。したがって、グラフェンの使用量が削減されるため、装置の製造コストやメンテナンスコストを大きく低減することができる。
【0058】
(7)第7の態様に係る蓄熱装置1は、(6)の蓄熱装置1であって、互いに隣り合う一対の前記伝熱体30同士では、前記延在方向Dから見た前記グラフェンの配向方向が互いに異なっている。
【0059】
上記構成によれば、互いに隣り合う一対の伝熱体30同士の間でグラフェンの配向方向が異なっていることから、当該伝熱体30から発散される熱の移動方向が均一化される。したがって、蓄熱体40内部における温度のムラの発生を回避することができる。これにより、蓄熱体40の蓄熱性能を余すことなく発揮させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…蓄熱装置 10…熱交換部 20…ヘッダ部 21…ケーシング 22…冷媒配管 30…伝熱体 31…半体 32…開口部 33…長孔 34…スリット 40…蓄熱体 51…伝熱体本体 52…突出部 60…蓄熱体容器 120…ヘッダ部流路 121…供給部 122…流路本体 123…排出部 131…接続体 D…延在方向