(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017226
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】携帯端末、撮影方法、プログラム、及び表示制御システム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240201BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20240201BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20240201BHJP
【FI】
H04N5/232 220
H04N5/225 600
H04N5/232 945
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119733
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本杉 友佳里
(72)【発明者】
【氏名】藤原 桃子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢
(72)【発明者】
【氏名】京嶋 仁樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 穣
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA09
5C122EA48
5C122FH14
5C122FK12
5C122FK28
5C122FK37
5C122FK42
5C122GG07
5C122HA65
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】予め定めた光源部とカメラ部と照合領域との相対的位置姿勢で照合領域を撮影した画像を端末の機種毎に用意することなく、複数の機種で前記予め定めた相対的位置姿勢を再現することを可能とし得る技術を提供する。
【解決手段】照合画像撮影機22としての携帯端末は、光源部22aと、カメラ部22bと、表示部と、プロセッサとを備える。プロセッサは、対象物10の照合領域を撮影する際に、光源部22aとカメラ部22bと照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で照合領域を撮影するためのガイド画像を、カメラ部22bと光源部22aとの位置関係に関する情報に応じた回転角度で表示部に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
カメラ部と、
表示部と、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示する、
携帯端末。
【請求項2】
前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との距離に関する情報に応じた位置で前記表示部に表示する、
請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記位置は、前記表示部の中心と前記ガイド画像中に示される前記照合領域の中心との間の距離で設定される、
請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、カメラ部の性能に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示する、
請求項2に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記カメラ部の性能に関する情報は、前記カメラ部の画角および前記カメラ部の画像ピクセルサイズに関する情報である、
請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、予め定められた対象物とカメラ部の距離におけるカメラ部の撮影解像度に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示する、
請求項2に記載の携帯端末。
【請求項7】
光源部とカメラ部と表示部を備える携帯端末における照合領域の撮影方法であって、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示する、
撮影方法。
【請求項8】
光源部とカメラ部と表示部を備える携帯端末のプロセッサに、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示させる、
プログラム。
【請求項9】
前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との距離に関する情報に応じた位置で前記表示部に表示させる、
請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記位置は、前記表示部の中心と前記ガイド画像中に示される前記照合領域の中心との間の距離で設定される
請求項8に記載のプログラム。
【請求項11】
前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、カメラ部の性能に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示させる、
請求項8に記載のプログラム。
【請求項12】
前記カメラ部の性能に関する情報は、前記カメラ部の画角および前記カメラ部の画像ピクセルサイズに関する情報である、
請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
携帯端末と、サーバとを備える表示制御システムであって、
前記サーバは、
前記携帯端末の機種ごとに前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報を記憶する記憶部と、
前記携帯端末の機種情報を受け付ける受付部と、
受付けた前記機種情報に対応する、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報を送信する送信部と、
を備え、
前記携帯端末は、
光源部と、
カメラと、
表示部と、
自端末の機種情報を前記サーバに送信する送信部と、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記サーバから受信した自端末に対応する前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で表示部に表示する、
表示制御システム。
【請求項14】
前記サーバは、
予め対象物の照合領域を、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で撮影した正解画像を記憶し、
前記携帯端末から撮影画像を受付け、
前記正解画像と前記撮影画像を照合した結果を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末のプロセッサは、
前記照合した結果をサーバから受信し、
前記表示部に前記照合した結果を前記表示部に表示する、
請求項13に記載の表示制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、撮影方法、プログラム、及び表示制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源部とカメラ部と表示部と対象物の梨地模様が施された照合領域を撮影する際に、光源部とカメラ部と照合領域の相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で照合領域を撮影するための基準画像を表示部に表示されるスルー画像に重畳表示する制御部を備え、制御部は、異なる機種の携帯端末間において同一の撮影条件で対象物の照合領域を撮影できるように携帯端末の位置姿勢を制御するための携帯端末ごとの基準画像のうち、自端末に対応する基準画像を用いる携帯端末の発明が記載されている。照明の配置やカメラの視野角が異なる携帯端末間で同一の撮影条件(照射方向及び撮影画像サイズが同一)で対象物の照合領域を撮影したときの画像を、携帯端末の機種ごとに予め取得しておく。制御部は、予め取得された画像のうち、その携帯端末に対応する画像を取得し、撮影時に基準画像としてスルー画像に重畳表示する。ユーザは撮影画面上で撮影対象の照合領域と基準画像について、向きと位置と大きさが合うように操作することで、携帯端末の光源とカメラと照合領域の相対位置姿勢が、基準画像が撮影されたときと同じ関係となる。これにより、カメラの照明の配置や視野角が異なる携帯端末間でも同一の撮影条件で対象物の照合領域を撮影できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、予め定めた光源部とカメラ部と照合領域との相対的位置姿勢で照合領域を撮影した画像を端末の機種毎に用意することなく、複数の機種で前記予め定めた相対的位置姿勢を再現することを可能とし得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、光源部と、カメラ部と、表示部と、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示する、携帯端末である。
【0006】
第2の態様は、前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との距離に関する情報に応じた位置で前記表示部に表示する、第1の態様に係る携帯端末である。
【0007】
第3の態様は、前記位置は、前記表示部の中心と前記ガイド画像中に示される前記照合領域の中心との間の距離で設定される、第2の態様に係る携帯端末である。
【0008】
第4の態様は、前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、カメラ部の性能に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示する、第2の態様に係る携帯端末である。
【0009】
第5の態様は、前記カメラ部の性能に関する情報は、前記カメラ部の画角および前記カメラ部の画像ピクセルサイズに関する情報である、第4の態様に係る携帯端末である。
【0010】
第6の態様は、前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、予め定められた対象物とカメラ部の距離におけるカメラ部の撮影解像度に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示する、第2の態様に係る携帯端末である。
【0011】
第7の態様は、光源部とカメラ部と表示部を備える携帯端末における照合領域の撮影方法であって、対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示する、撮影方法である。
【0012】
第8の態様は、光源部とカメラ部と表示部を備える携帯端末のプロセッサに、対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示させる、プログラムである。
【0013】
第9の態様は、前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との距離に関する情報に応じた位置で前記表示部に表示させる、第6の態様に係るプログラムである。
【0014】
第10の態様は、前記位置は、前記表示部の中心と前記ガイド画像中に示される前記照合領域の中心との間の距離で設定される、第6の態様に係るプログラムである。
【0015】
第11の態様は、前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部の性能に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示させる、第8の態様に係るプログラムである。
【0016】
第12の態様は、前記カメラ部の性能に関する情報は、前記カメラ部の画角および前記カメラ部の画像ピクセルサイズに関する情報である、第11の態様に係るプログラムである。
【0017】
第13の態様は、携帯端末と、サーバとを備える表示制御システムであって、前記サーバは、前記携帯端末の機種ごとに前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報を記憶する記憶部と、前記携帯端末の機種情報を受け付ける受付部と、受付けた前記機種情報に対応する、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報を送信する送信部と、を備え、前記携帯端末は、光源部と、カメラと、表示部と、自端末の機種情報を前記サーバに送信する送信部と、プロセッサとを備え、前記プロセッサは、対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記サーバから受信した自端末に対応する前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で表示部に表示する、表示制御システムである。
【0018】
第14の態様は、前記サーバは、予め対象物の照合領域を、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で撮影した正解画像を記憶し、前記携帯端末から撮影画像を受付け、前記正解画像と前記撮影画像を照合した結果を前記携帯端末に送信し、前記携帯端末のプロセッサは、前記照合した結果をサーバから受信し、前記表示部に前記照合した結果を前記表示部に表示する、第13の態様に係る表示制御システムである。
【発明の効果】
【0019】
第1~第14態様によれば、予め定めた光源部とカメラ部と照合領域との相対的位置姿勢で照合領域を撮影した画像を端末の機種毎に用意することなく、複数の機種で当該予め定めた相対的位置姿勢を再現することを可能とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】実施形態1の照合画像撮影機の構成ブロック図である。
【
図3】実施形態1のホログラム部を含む対象物と紙の対象物の平面図である。
【
図4】実施形態1のカメラ部から見た光源部の向きを示す回転角度説明図である。
【
図5】実施形態1の登録時の光源部とカメラ部とインク部との位置関係を示す説明図である。
【
図6】実施形態1の照合時の光源部とカメラ部とインク部との位置関係を示す説明図である。
【
図7】実施形態1の携帯端末のガイド画像表示説明図である。
【
図8】実施形態1の回転前のガイド画像説明図である。
【
図9】実施形態1の機種毎のガイド画像表示説明図である。
【
図11】実施形態2の距離X、距離L、距離D、及び反射面角度θの関係を示す説明図である。
【
図12】実施形態2の機種毎のガイド画像表示説明図である。
【
図13】実施形態3の機種毎のガイド画像表示説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。対象物の表面画像を撮影し、登録画像と照合画像とを画像照合することで当該対象物を一意に識別する個体識別システムを例にとり説明する。
【0022】
個体識別システムは、物体表面の一部、具体的には0.1~数mm程度の画像をその物体固有の情報として予め登録しておき、照合する物体が登録されている物体と同じであること、すなわち本物であることを一意に識別する技術であり、物体固有の情報とは、例えば微細な模様によるランダムパターンである。微細な模様によるランダムパターンの具体例として梨地模様があげられる。この梨地模様は、すりガラス状のような表面加工に限らず、金属や合成樹脂(プラスチック等)等への加工処理によって施された梨地模様のみならず、シボ加工することにより得られたシワ模様やランダムに編み込まれた繊維模様、印刷によるランダムな微細ドットパターンや光輝体粒子が含まれたインクによる印刷によるランダムな粒子分布も含む概念である。更に、意図しない偶然に形成された梨地模様のみならず、識別または照合のために意図的に梨地模様を形成した場合も含む。要するに、制御して形成することが困難なランダムパターンである。このようなランダムパターンを光学的に読み取って情報として利用する「人工物メトリクス」の一種といえる。
【0023】
ここで、印刷基材としてホログラムや紙等の凹凸のある印刷基材を用い、このような凹凸のある印刷基材上に金属粒子を分散させたインク部を印刷してランダムパターンとする場合を想定する。
【0024】
図1は、本実施形態のシステム構成例を示す。システムは、表示制御システム及び個体識別システムとして機能し、登録画像撮影機20、照合画像撮影機22、及びサーバコンピュータ50を備えて構成される。登録画像撮影機20とサーバコンピュータ50、照合画像撮影機22とサーバコンピュータ50は、それぞれ通信ネットワークで接続される。通信ネットワークは、有線/無線、公衆/専用のいずれでもよく、その一例はインターネットであるがこれに限定されない。
【0025】
LED等の光源部21は登録画像撮影機20の近傍に配置され、光源部21からの光で対象物10を照射し、対象物10から反射した光を登録画像撮影機20で撮影して登録画像を取得する。登録画像撮影機20及び光源部21は、登録用の専用機材、例えば工場に設置された専用カメラ及び専用ライトで構成され得る。
【0026】
光源部21からの照射光の照射角φは、ある一定の角度に設定される。取得された登録画像は、サーバコンピュータ50に送信され、サーバコンピュータ50内の登録画像DB50bに格納される。
【0027】
他方、システムの利用者が把持するスマートフォン等の携帯端末を照合画像撮影機22として対象物10を撮影する。スマートフォン等に搭載されるLED等の光源部22aで対象物10を照射し、対象物10から反射した光をスマートフォン等に搭載されるカメラ部22bで撮影する。
【0028】
照合画像撮影機22のプロセッサは、撮影画像に対して一連の処理を施して撮影画像から照合に利用するインク部を抽出し、さらには当該インク部から照合領域として照合画像を切り出し、通信ネットワークを介してサーバコンピュータ50に送信する。
【0029】
サーバコンピュータ50は、照合部50a及び登録画像DB50bを備える。
【0030】
登録画像DB50bは、ハードディスクやSSD(ソリッドステートドライブ)等の記憶装置で構成され、対象物10を一意に特定するための識別子IDと登録画像とを関連付けて格納する。
【0031】
照合部50aはプロセッサで構成され、登録画像撮影機20から受信した登録画像を対象物10のIDと関連付けて登録画像DB50bに格納する。また、照合画像撮影機22から受信した照合画像と、登録画像DB50bに格納された登録画像との画像照合を行い、照合結果を照合画像撮影機22に出力する。
【0032】
具体的には、照合部50aは、登録画像を登録画像DB50bから読み出して照合画像と照合計算を行い、両画像の類似度を算出する。類似度は、公知のアルゴリズムを用いることができる。算出した類似度を閾値と比較し、閾値を超えていれば両者は一致すると判定し、閾値を超えなければ両者は一致しないと判定する。照合部50aは、照合結果を通信ネットワークを介して照合画像撮影機22に送信する。
【0033】
ここで、画像照合には、登録画像撮影機20あるいは照合画像撮影機22のイメージセンサの入力における変動や量子化誤差等に起因する誤り率が存在する。誤り率は、真であるにもかかわらず偽と判定してしまう確率である誤拒否率と、偽であるにもかかわらず真と判定してしまう確率である誤受理率の2つで構成される。両者はトレードオフの関係にあり、一方が減少すれば他方は増大する。従って、照合判定の適用対象における損失が最も小さくなるように閾値を設定する。
【0034】
なお、光の照射方向を変えて複数の登録画像を取得してサーバコンピュータ50の登録画像DB50bに登録しておき、これら複数の登録画像と照合画像とを画像照合してもよい。その際、照合画像から検出した輝点又は照合画像の輝度分布から、光の照射方向を特定し、複数の登録画像のうち、照合画像から特定した光の照射方向と同じ照射方向で撮影された登録画像を用いるようにしてもよい。また、照合画像から輝点を検出できない場合に、照合画像の輝度分布を用いて光の照射方向を特定するようにしてもよい。
【0035】
本実施形態では、登録画像撮影機20及び光源部21を登録用の専用機材で構成する場合を例示するが、登録画像撮影機20及び光源部21を非専用機材、例えば照合画像撮影機22として用いられるスマートフォンのような携帯端末を用いてもよい。すなわち、本発明における携帯端末は、照合画像撮影機22のみならず、登録画像撮影機20としても使用され得る。これについてはさらに後述する。
【0036】
図2は、スマートフォン等の照合画像撮影機22の主要構成ブロック図を示す。照合画像撮影機22は、既述した光源部22a及びカメラ部22bに加え、プロセッサ22c、ROM22d、RAM22e、入力部22f、出力部22g、及び通信インターフェイス22hを備える。
【0037】
プロセッサ22cは、ROM22dあるいは図示しないSSD等のメモリに記憶されたアプリケーションプログラムを読み出し、RAM22eをワーキングメモリとして用いて一連の処理を実行し、カメラ部22bで撮影した撮影画像からインク部を抽出し、さらに照合画像を切り出す。プロセッサ22cは、切り出した照合画像を通信I/F22hを介してサーバコンピュータ50に送信する。また、プロセッサ22cは、サーバコンピュータ50からの照合結果を通信I/F22hを介して受信する。アプリケーションプログラムは、サーバコンピュータ50その他のWebサーバからダウンロードしてインストールされ得る。
【0038】
入力部22fは、キーボードやタッチスイッチ等で構成され、利用者が操作することでアプリケーションプログラムを起動する。
【0039】
出力部22gは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されて表示部として機能し、対象物10を撮影する際のプレビュー画像を表示する。また、出力部22gは、プロセッサ22cからの制御指令により対象物10を撮影する際のガイド画像を表示する。さらに、出力部22gは、プロセッサ22cからの制御指令によりサーバコンピュータ50から受信した照合結果を表示する。照合結果は、「一致」、「不一致」のいずれかであるが、照合に関連するその他のメッセージを表示してもよい。
【0040】
次に、撮影対象である対象物10について説明する。
【0041】
図3は、本実施形態における対象物10の平面図を示す。
図3(a)は、対象物10としてホログラムラベルシールを用いる場合である。ホログラムラベルシールは、ホログラム部12a,12bと、QRコード(登録商標)13と、インク部14を含む。
【0042】
ホログラム部12aはラベルシールの略左半分に形成され、ホログラム模様をなす。
【0043】
ホログラム部12bは、ラベルシールの略右半分に形成され、梨地処理が施されており仰角に応じて虹色の発色が変化する。ここで、「仰角」とは、
図1におけるLED光源部22aと対象物10とカメラ部22bとのなす角度をいう。
【0044】
QRコード(登録商標)13は、梨地処理されたホログラム部12b上に形成される。QRコード(登録商標)13は、ラベルシールについての各種情報が印刷される。なお、本実施形態において、QRコード(登録商標)13は必須ではなく、形成されていなくてもよい。
【0045】
インク部14は、梨地処理されたホログラム部12b上に銀粒子を含むグラビアインクでグラビア印刷され、多角形の形状をなす。図では、インク部14は、QRコード(登録商標)13の下部に一定の間隔をあけて正方形に印刷される。このインク部14はランダムパターン領域であり、照合画像撮影機22で撮影して抽出すべき照合領域である。インク部14の形状は、多角形以外にも楕円(円を含む)形状でもよい。
【0046】
図3(b)は、他の対象物10として紙ラベルシールを用いる場合である。紙ラベルシールは、紙部11と、QRコード(登録商標)13と、インク部14を含む。
【0047】
インク部14は、紙部11上に銀粒子を含むトナーインクでトナー印刷され、多角形の形状をなす。図では、インク部14は、QRコード(登録商標)13の下部に一定の間隔をあけて正方形に印刷される。このインク部14はランダムパターン領域であり、照合画像撮影機22で撮影して抽出すべき照合領域である。
【0048】
既述したように、インク部14のランダムパターンは光の照射方向によって変化するので、光源部22aからの照射光の照射角φ及び平面上の角度は、登録画像を取得したときの条件である角度と実質的に同一に設定する必要がある。実質的に同一とは、照合精度を確保するために必要な所望の角度からのずれを含む許容角度範囲を意味する。利用者がスマートフォン等の携帯端末を照合画像撮影機22として用いる場合、手動操作であることに起因して仰角及び平面上の角度を所望角度に設定することは相対的に困難となる。撮影を自動的に繰り返して良い条件の時の画像を採用する方法も考えられるが、これらの角度が適切であるか否かを撮影者が知る方法がないと、短時間で良い条件の画像を取得することはできない。
【0049】
特に、照合画像撮影機22としてスマートフォン等の携帯端末を用いる場合には、市場に多種多様なスマートフォンが存在し、光源部22aとカメラ部22bの配置も多種多様であるので、光源部22aに対するカメラ部22bの配置が異なることに起因して照合時に撮影されるインク部14の反射光も異なるため照合精度低下の一因となる。従って、市場に多種多様に存在するスマートフォン等を照合画像撮影機22として用いたとしても、一定の照合精度を担保する必要がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、予め定めた相対的位置に配置された専用の登録画像撮影機20と光源部21で対象物10を撮影して登録画像を取得し、照合画像撮影機22としてスマートフォン等の携帯端末を用いて照合画像を撮影する際に、予め定めた光源部とカメラ部と照合領域との相対的位置姿勢で照合領域を撮影した画像を携帯端末の機種毎に用意することなく、複数の機種で当該予め定めた相対的位置姿勢を再現することを可能とすべく、照合画像撮影機22としてのスマートフォン等の携帯端末の表示部に当該機種毎の固有の情報に応じてガイド画像を変化させて表示する。
【0051】
利用者は機種毎に変化する当該ガイド画像を視認し、ガイド画像に従って携帯端末の撮影姿勢を調整する、あるいは対象物10の姿勢を調整することで当該予め定めた相対的位置姿勢を再現する。
【0052】
より具体的には、プロセッサ22cは、照合画像撮影機22としてのスマートフォン等の携帯端末の撮影平面と、インク部14の平面を略平行とし、対象物10のインク部14を撮影する際に、携帯端末の光源部22aとカメラ部22bとインク部14との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態でインク部14を撮影するためのガイド画像を、カメラ部22bと光源部22aとの相対的位置関係に関する情報に応じた回転角度で表示部に回転表示する。
【0053】
カメラ部22bと光源部22aとの相対的位置関係に関する情報とは、
(1)撮影平面上におけるカメラ部22bから見た光源部22aの向きを示す回転角度
(2)インク部14の反射面角度
(3)カメラ部22bと光源部22aとの距離
(4)インク部14の面方向におけるインク部14とカメラ部22bとの距離
(5)携帯端末の撮影面とインク部14の面との間の距離
等である。
【0054】
これらの情報のうち、最も基本的な情報は、
(1)撮影平面上におけるカメラ部22bから見た光源部22aの向きを示す回転角度
である。当該回転角度が登録時の回転角度と異なる、より正確には、両者の角度差が許容角度範囲内(例えば±15°以内)になければ、照合不能となるからであり、かつ、当該回転角度は、利用者が携帯端末あるいは対象物10を回転操作することによって容易に調整可能だからである。
【0055】
次に、回転角度について説明する。
【0056】
図4は、撮影平面上における光源部22aとカメラ部22bの位置関係を示す平面図である。なお、カメラ部22bは、二眼カメラとして携帯端末の長手方向に沿って所定間隔で2つ設けられており(
図4では長手方向を上下方向として示す)、説明の都合上、上下2つのカメラ部22bのうち上側のカメラ部22bでインク部14を撮影するものとする。携帯端末の長手方向を基準とし、上側のカメラ部22bから見た光源部22aの向きとして回転角度が定義される。
【0057】
この回転角度は、携帯端末の機種毎に異なる値となる。そこで、登録時における、撮影平面上の回転角度、すなわち光源部21と登録画像撮影機20との回転角度を再現させるべく、表示部に表示するガイド画像の表示時の回転角度をその機種の回転角度に応じて調整する。
【0058】
図5は、登録時の光源部21とカメラ部20とインク部14の位置関係の一例を示す。光源部21とカメラ部20とインク部14は、一直線上、例えば直線50上に一列に位置しているものとする。このとき、カメラ部20から見た光源部21の向き、すなわち回転角度は0°である。このとき、予め定めた光源部21とカメラ部20とインク部14の相対的位置姿勢を、照合画像撮影時において再現するためには、照合画像撮影時における回転角度も0°、あるいは所定の許容角度範囲内(例えば±15°以内)に設定する必要がある。
【0059】
図6は、照合画像撮影機22としてのスマートフォン等の携帯端末の光源部22aとカメラ部22bとインク部14の位置関係の一例を示す。光源部22aとカメラ部22bの位置関係は携帯端末の機種によって異なり、一定の回転角度を有するものとすると、このままでは登録時の回転角度(=0°)と異なってしまう。
【0060】
勿論、利用者が登録時の回転角度に関する知識を有していればその知識を利用して撮影することも可能であろうが、通常、このような知識を有することはなく、回転角度を調整するための何らかの指針、ガイドが必要である。
【0061】
そこで、
図7に示すように、登録時の回転角度(=0°)に許容角度範囲内で一致するように照合画像撮影機22あるいは対象物10を回転させることを利用者に促すべく、照合画像撮影機22の表示部にプレビュー画像を表示する際に、当該プレビュー画像に対象物10を模したガイド画像50重畳表示するとともに、ガイド画像50を回転表示するのである。
【0062】
プロセッサ22cは、自端末のカメラ部22bから見た光源部22aの回転角度の情報を用いてガイド画像を表示部に表示するが、自端末の回転角度の情報は、照合画像の撮影に先立ってサーバコンピュータ50から取得すればよい。サーバコンピュータ50には、予め照合画像撮影機22として使用され得るスマートフォン等の携帯端末の機種毎に回転角度情報を記憶しておき、照合画像撮影機22からの要求に応じ、照合画像撮影機22の機種に対応した回転角度情報をプロセッサ22cに返信する。照合画像撮影機22にアプリケーションプログラムをインストールする際に、サーバコンピュータ50から自端末あるいは全ての機種の回転角度情報をダウンロードしてもよい。全ての機種の回転角度情報をダウンロードした場合、プロセッサ22cは、自端末の機種に応じた回転角度情報を選択してガイド画像を表示する。
【0063】
プロセッサ22cは、サーバコンピュータ50から自端末の機種に対応する回転角度情報を取得する場合、自端末の機種名(モデル名)をROM22dから取得してもよく、あるいは照合プログラムをインストールする際に利用者が自端末の機種名を手動で入力、設定してもよい。
【0064】
次に、ガイド画像50の表示態様について、具体的に説明する。
【0065】
図8は、回転角度を考慮しない場合、つまり回転前の照合画像撮影機22の表示部に表示されるプレビュー画像上のガイド画像50の幾つかの例を示す。
【0066】
ガイド画像50は、対象物10の外形、及び対象物10に形成されたQRコード(登録商標)13やインク部14の形状を模した画像である(
図3を参照)。対象物10に文字(LOGO)が存在する場合には、
図8(a)のようにガイド画像50に文字52を表示してもよく、文字52の向きによって天地を規定し得る。
【0067】
また、
図8(b)に示すように、ガイド画像50にQRコード(登録商標)13とインク部14をそれぞれ示す四角形54,56を表示することによって天地を規定してもよい。さらに、ガイド画像50の所定位置、例えばその中央に十字の図形58を表示し、携帯端末とラベルの平行度に応じて動き、携帯端末の姿勢の状態を示す状態ガイドとして機能するように図形59を表示しても良い。図形59は携帯端末とラベルが平行のときに図形58と重なるようにすることで、撮影面とインク部14の面との平行度を示すガイドとして機能する。さらに平行度以外の状態ガイド表示も入れても良い。例えば、ラベル外形・ロゴ・インク部の矩形・QRコード(登録商標)の形状画像を表示し、ラベル外形・ロゴ・インク部の矩形・QRコード(登録商標)が撮影画面中で認識された位置に応じて、形状画像を状態ガイドとして機能させてもよい。また、所定の位置で正しく認識された状態であること、または正しい位置でないことを、ガイドの色を変えたりメッセージを表示したりすることで状態ガイドとして機能させてもよい。インク部の画像ボケ・汚れ・明るさ・外光写り込みの状態をメッセージで表示し、状態ガイドとして機能させてもよい。状態ガイドを表示させるタイミングは特に限定されないが、例えばプレビュー画像を取得し解析が終わったとき、もしくは撮影画像を取得し解析が終わったときに表示し得る。状態ガイドを表示することで、現在の携帯端末の姿勢の状態を操作者が知ることができ、状態ガイドを、所定位置に表示された理想の姿勢を示す固定のガイドに合わせるように姿勢を調整することで、調整操作を効率よく実施できる。状態ガイドの表示態様をまとめると、以下の通りである。
・形状で表す(動的なガイドがあり大きさが実物に合わせて変化する等)
・色で表す(適切な状態になった時に色が変わる)
・文字で表す(「大きさが一致していません」等と表示する)
・図形で表す(矢印で移動方向を示す)
【0068】
これらのガイド画像50は、回転前の状態では携帯端末の表示部に正立状態で表示される。
【0069】
図9は、携帯端末の機種毎にそれぞれの表示部のプレビュー画像に重畳表示されるガイド画像50を示す。
図9(a)は機種A、
図9(b)は機種B,
図9(c)は機種Cのガイド画像50である。
【0070】
機種A、機種B、機種Cのそれぞれの回転角度、距離L、撮影解像度(距離D=100mm)、及び表示部のプレビュー画像/撮影画像のサイズ比の値は、以下の通りである。
機種A:
回転角度=0°
距離L=30mm
撮影解像度=850dpi
サイズ比=0.36
機種B:
回転角度=45°
距離L=10mm
撮影解像度=850dpi
サイズ比=0.36
機種C:
回転角度=0°
距離L=30mm
撮影解像度=850dpi
サイズ比=0.45
回転角度及び距離Lは、機種毎に異なっている点に留意されたい。また、撮影解像度も機種毎に異なり得るが、ここでは850dpiに統一している。
【0071】
このとき、機種A,機種B、及び機種Cの回転角度の相違に応じ、
図9(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すように、ガイド画像50の回転角度が変化する。機種Aについては、回転角度=0°であるため、正立状態がそのまま維持されたガイド画像50が表示される。
【0072】
機種Bについては、回転角度=45°であるから、正立状態から45°回転したガイド画像50が表示される。
【0073】
機種Cについては、回転角度=0°であるから、正立状態がそのまま維持されたガイド画像50が表示される。
【0074】
距離Xについては、全ての機種で最適値のX=7mmに固定される。ここで、距離Xは、表示部のプレビュー画像の中心と、インク部14の中心との間の距離に対応する。
【0075】
なお、ガイド画像50のガイド幅は、対象物10の実際の幅W/25.4×所望の撮影解像度×サイズ比で算出される。機種A及び機種Bではサイズ比は0.36と同一であるためガイド画像のガイド幅は同一であるが、機種Cはサイズ比が0.45と大きいため、これに応じてガイド画像50のガイド幅も大きく表示されている。
【0076】
利用者は、機種Aを用いて対象物10を撮影する場合、ガイド画像50に合わせるように正立状態で対象物10を撮影する。他方で、機種Bを用いて対象物10を撮影する場合、プレビュー画像にガイド画像50が回転した状態で表示されているため、これに合わせて機種Bを回転させた姿勢で、あるいは逆に対象物10を回転させた姿勢で対象物10を撮影する。
【0077】
図9では、ガイド画像50自体をその機種の回転角度に応じて回転させて表示しているが、正立状態のガイド画像50を表示するとともに、その機種の回転角度に応じた回転方向及び角度の大きさを文字等で表示してもよい。例えば、「対象画像を正立状態から時計回りに30度回転させるように操作して下さい」等である。要するに、ガイド画像50は図形に限定されず、図形と文字、あるいは文字のみであってもよい。図形には、回転方向を表す矢印が含まれ得る。
【0078】
次に、本実施形態の全体処理について説明する。全体処理には、照合画像撮影機22で照合画像を撮影する処理に加え、当該照合画像と登録画像とを照合する処理が含まれる。
【0079】
図10は、プロセッサ22cの処理フローチャートを示す。ROM22d等に記憶されたアプリケーションプログラムを読み出して実行することで実現される処理である。
【0080】
まず、プロセッサ22cは、サーバコンピュータ50にアクセスして自端末の情報を取得する(S11)。例えば、プロセッサ22cは、自端末の機種名をサーバコンピュータ50に送信して自端末の情報を要求し、サーバコンピュータ50は、当該機種名に対応する情報、具体的には、
・カメラ部22bから見た光源部22aの回転角度の情報
・光源部22aとカメラ部22bとの距離Lの情報
・撮影解像度の情報
を返信する。
【0081】
例えば、自端末が機種Bであるとすると、サーバコンピュータ50は、機種Aに対応する情報として、
・回転角度=45度
・距離L=10mm
・撮影解像度=900dpi
等と返信する。
【0082】
次に、プロセッサ50は、取得した回転角度の情報を用いて、ガイド画像50を作成し、プレビュー画像に重畳して表示部に表示する(S12)。例えば、プロセッサ22cは、表示部と同一サイズの透明なオブジェクトにガイド画像50を描いてこれを表示部に表示する際に、成立状態のガイド画像を回転角度に応じて回転させた透明なオブジェクトに描画し、これを表示部に表示する。
【0083】
なお、ガイド画像50を作成する際に必要な対象物10のデザインに関する情報は、予め携帯端末のメモリに記憶してもよく、アプリケーションプログラムに基本パラメータとして埋め込まれていてもよく、あるいはサーバコンピュータ50から別途取得してもよい。対象物10のデザインに関する情報は、具体的には、
・インク部14の一辺長(mm)
・QRコード(登録商標)13の一辺長
・対象物10の幅(mm)
・対象物10の高さ(mm)
等である。ガイド画像50の位置は、例えばガイド画像50の左上の位置を中心原点として規定される。
【0084】
次に、必要に応じ、光源部22aとカメラ部22bが設けられた撮影平面とインク部14の面が実質的に平行であるか否かを判定してもよい。この判定は、ジャイロセンサからのセンサ信号に基づいて行ってもよく、画像における輝点部分の位置、あるいはホログラム部12bの発色パターンを用いてもよい。光源部22aとカメラ部22bが設けられた撮影平面と対象物10が実質的に平行でない場合、プロセッサ22cは、適宜メッセージを表示部に表示する等して利用者に対して平行になるように操作を促す。
【0085】
平行であるか否かの判定処理は省略することが可能であり、平行であるか否かの判定に代えて、予め設定しておいたラベル矩形やロゴデザイン、インクパッチ矩形、QRコード(登録商標)のいずれかが撮影画像に含まれることを認識したか否かの判定を行ってもよい。また、平行であるか否かの判定処理を行わない場合でも、例えば携帯端末とラベルの平行度に応じて動く図形59(
図8を参照)の表示位置を随時(例えば100ms毎)更新したり、平行度の判定結果を判定が終わった時に表示したりすることで、現在の平行度の状態を利用者が知ることができ、調整操作を効率よく実施できる。
【0086】
次に、プロセッサ22cは、ガイド画像50により誘導された姿勢において、カメラ部22bで得られた撮影画像を取得する(S13)。
【0087】
以上のようして表示部にガイド画像50が表示され、照合時の撮影姿勢が決定され、カメラ部22bでインク部14の画像を撮影すると、次に、得られた撮影画像からインク部14の形状(この場合には正方形)を抽出する(S15)。インク部14の形状は、例えばインク部14の正方形を形成する4つの頂点の座標を取得することで抽出され得る。4つの頂点の座標の取得方法は任意であるが、例えば二値化画像生成処理、矩形エッジ抽出処理、及び頂点座標推定処理の3つの処理を経て取得される。
【0088】
インク部14の4つの頂点の座標を取得することで形状を抽出すると(S15でYES)、プロセッサ22cは、これら4つの頂点の座標を基準として照合画像を切り出すことでランダムパターン画像を取得する(S16)。そして、得られたランダムパターン画像の画質評価、すなわちランダムパターン画像の画質が良好であるか否かを判定する(S17)。
【0089】
画質が良好であるか否かは、具体的には以下の指標値を評価し、これらの指標値が閾値を超えるか否かにより判定し得る。
(1)正方形の位置、大きさ、角度が適切であるか否か
(2)ぼけの度合い(ラプラシアンフィルタ値の標準偏差)
(3)ぶれの度合い(4方向のSobelフィルタ値の標準偏差の最大最小差)
(4)明るさ(輝度平均値)
(5)ランダム性(画像の中心1/4サイズの部分を切り出し、画像の各座標と起点とする同サイズの画像との相関値を求め、その相関値群の最大値から平均値を減算して標準偏差で除した値)
(6)光源のずれ度合い(画像の輝度の傾きの縦横比=同一行の輝度平均値を列方向に直線近似したときの傾き/同一列の輝度平均値を行方向に直線近似したときの傾き)
【0090】
これらの指標値のいずれか、あるいは複数を任意に組み合わせて画質が良好か否かを判定し得る。例えば、(1)と(6)を用いる、あるいは(1)と(5)と(6)を用いる等である。
【0091】
S11~S17の処理を、予め定めた上限枚数Nだけ取得するまで、あるいはタイムアウトまで、あるいは利用者が撮影操作を中断するまで自動的に繰り返す(S18)。そして、上限N枚だけ得られたランダムパターン画像、あるいはタイムアウトや撮影中断までに得られた複数枚数のランダムパターン画像を用いて照合処理を実行する(S19)。
【0092】
照合処理では、取得した上限N枚あるいは複数枚のランダムパターン画像を添付してサーバコンピュータ50に照合リクエストを送信する。サーバコンピュータ50の照合部50aは、受信したランダムパターン画像を登録画像と照合し、照合結果を照合画像撮影機22に返信する。プロセッサ22cは、サーバコンピュータ50からの照合結果を受信して出力部22gに表示する。
【0093】
以上のように、本実施形態では、照合画像撮影機22としてのスマートフォン等の携帯端末の機種毎に種々の値をとり得る回転角度に応じてガイド画像50を回転して表示部に表示することで、予め定めた相対的位置姿勢を再現し得る。
【0094】
本実施形態におけるプロセッサ22cとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば CPU Central Processing Unit等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU Graphics Processing Unit、ASIC Application Specific Integrated Circuit 、FPGA Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。また、プロセッサ22cの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサ22cの各動作の順序は実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0095】
<実施形態2>
実施形態1では、カメラ部22bから見た光源部22aの向きである回転角度を登録時の回転角度と一致させるべくガイド画像50を回転させて表示部に表示しているが、プロセッサ22cは、さらに、回転角度に加えて、既述したインク部14の面方向におけるインク部14とカメラ部22bとの距離Xを用いてガイド画像の位置を調整して表示してもよい。
【0096】
図11は、光源部22a、カメラ部22b、及びインク部14の位置関係を示す側面図を示す。
【0097】
照合画像撮影機22としての携帯端末の撮影平面とインク部14の面とが平行であるとし、
θ:インク部14の反射面角度
L:光源部22aとカメラ部22bとの間の距離
X:インク部14とカメラ部22bとの間の距離
D:撮影平面とインク部14の面との間の距離
とする。ここで、反射面角度は、光源部22a、インク部14、カメラ部22bとのなす角度の中間の法線角度と定義する。これらのパラメータの間には、以下の関係が成り立つ。
【0098】
【数1】
また、上式を変形すると、
【数2】
が得られる。
【0099】
インク部14の反射面角度θは、登録時の反射面角度と一致(許容角度範囲内で一致)する必要があるところ、上式によれば、反射面角度θは、インク部14とカメラ部22bとの間の距離Xと、撮影平面とインク部14の面との間の距離Dと、光源部22aとカメラ部22bとの間の距離Lで決定される。
【0100】
本願発明者等は、現在市場に流通しているスマートフォン等の携帯端末の距離Lのばらつきの範囲内では、距離Dの変動よりも距離Xの変動の方が反射面角度θに与える影響が大きいことを見出している。
【0101】
表1に、照合画像撮影機22としてのスマートフォン等の携帯端末の機種毎の距離D(mm)を、所望の撮影解像度(dpi)との関係で示す。機種は、機種A,B,C,Dの4種類であり、所望の撮影解像度を700dpi、750dpi、800dpi、850dpi、900dpiとしている。
【0102】
【0103】
撮影解像度を例えば800dpiに固定した場合、機種毎に画角が異なることに起因して、距離Dは99mm~117mmの範囲でばらついている。すなわち、距離Dは20mm程度の誤差が生じる(ΔD=20mm)。
【0104】
また、表2に、距離X、距離L、及び距離Dとインク部14の反射面角度θとの関係を示す。
【0105】
距離X(mm)は2,7,12,距離L(mm)は10,25,40、距離D(mm)は80,90,100,110,120,130の値としている。
【0106】
【0107】
例えば、距離X=7mm、距離L=40mmの機種の場合、
D=80mmでは反射面角度θ=17.7°
D=90mmでは反射面角度θ=16.0°
D=100mmでは反射面角度θ=14.6°
D=110mmでは反射面角度θ=13.4°
D=120mmでは反射面角度θ=12.4°
D=130mmでは反射面角度θ=11.5°
となる。
【0108】
すなわち、距離L=40mmと固定した場合、
D=100mmでは反射面角度θ=14.6°
D=120mmでは反射面角度θ=12.4°
となり、距離Dを固定(但し、Dの変動として20mm程度を設定)した場合には、距離Dの変動分に応じて反射面角度θに3°程度のばらつきが生じてしまう。
【0109】
他方、距離Xを固定した場合、例えば距離Xを7mmに固定した場合、
L=10mmでは反射面角度θ=6.8°
L=40mmでは反射面角度θ=14.6°
となり、Lの変動分に応じて反射面角度θに8°程度のばらつきが生じる。
【0110】
従って、距離Xの方が距離Dに比べて反射面角度θに与える影響が大きく、種々の機種に対して距離Xを最適化した方が、距離Dを最適化するよりも反射面角度θの誤差を抑制し得る。
【0111】
そこで、プロセッサ22cは、所望の反射面角度θが得られるように距離Xを最適化し、最適化した距離Xが得られるようにガイド画像50の位置を調整して表示部に表示する。
【0112】
図12は、回転角度に加え、距離Xを考慮した場合の、照合画像撮影機22の表示部に表示されるガイド画像50の一例を示す。
図12(a)は機種A、
図12(b)は機種B,
図12(c)は機種Cのガイド画像50である。
【0113】
機種毎の回転角度、距離L、撮影解像度(距離D=100mm)、及び表示部のプレビュー画像/撮影画像のサイズ比の値は、実施形態1と同様である。
【0114】
機種毎の距離Lの相違に起因し、最適な距離Xが相違する。すなわち、機種毎に、
機種A:
距離X=4.7mm
機種B:
距離X=9.7mm
機種C:
距離X=4.7mm
となり、これらがガイド画像50の位置の相違として表示部に表示される。ガイド画像の位置は、表示部の中心(プレビュー画像の中心)とインク部14の中心との間の距離で示される。
【0115】
実施形態1では、機種A、機種B、機種Cの全ての機種において、距離Xは
X=7mm
に統一されている。
【0116】
これに対し、実施形態2では、機種Aについては
距離X=4.7mm
であるため、実施形態1の場合と比べてガイド画像50はプレビュー画像の中心により近い位置に表示される。
【0117】
また、機種Bについては、
距離X=9.7mm
であるため、実施形態1の場合と比べてガイド画像50はプレビュー画像の中心からより遠い位置に表示される。
【0118】
さらに、機種Cについては、
距離X=4.7mm
であるため、実施形態1の場合と比べてガイド画像50はプレビュー画像の中心により近い位置に表示される。
【0119】
<実施形態3>
実施形態1ではカメラ部22bから見た光源部22aの回転角度に応じてガイド画像50を回転表示し、実施形態2ではこれに加えてさらに距離Xに応じた位置でガイド画像50を表示しているが、これらに加えてさらに距離Dにおける機種毎の撮影解像度に応じてガイド画像50の大きさを調整して表示してもよい。
【0120】
図13は、回転角度及び距離Xに加え、さらに距離Dにおける機種毎の撮影解像度、または機種毎のカメラの画角と撮影画像のピクセルサイズの相違を考慮した場合の、照合画像撮影機22の表示部に表示されるガイド画像50の一例を示す。
図13(a)は機種A、
図13(b)は機種B,
図13(c)は機種Cのガイド画像50である。
【0121】
機種毎の回転角度、距離L、及び表示部のプレビュー画像/撮影画像のサイズ比の値は、実施形態1、2と同様である。
【0122】
これに加え、距離Dにおける撮影解像度はカメラ部の性能に依存し
機種A:
撮影解像度=800dpi
機種B:
撮影解像度=900dpi
機種C:
撮影解像度=800dpi
であるとする
【0123】
撮影解像度の相違に起因し、プレビュー画像上の撮影対象のサイズも相違する。すなわち、機種毎に、ガイド画像50の大きさが変動する。
【0124】
なお、距離Dにおける撮影解像度は、距離Dによらないカメラの性能の情報である、カメラ部の画角および撮影画像のピクセルサイズ(デジタルデータとして3000x4000pxなど)から求めることができる。このカメラ性能の情報から、距離Dにおける撮影解像度は例えば下記のように求めることができる。
【0125】
距離Dにおける撮影解像度[dpi]=撮影された画像のピクセルサイズ[px]÷距離Dで撮影された画像の実体のサイズ[inch]=撮影された画像のピクセルサイズ[px]÷(2*D[mm]*tan(画角[rad]÷2) ÷25.4[mm/inch])
【0126】
実施形態1(実施形態2も同様)におけるガイド画像50のガイド幅は、撮影解像度を850dpiに固定したことにより、
機種A及び機種Bの場合:
W×850/25.4×0.36
機種Cの場合:
W×850/25.4×0.45
であるが、実施形態3では撮影解像度が機種毎に異なるため、機種毎のガイド幅は、
機種A:
W×800/25.4×0.36
機種B:
W×900/25.4×0.36
機種C:
W×800/25.4×0.45
となる。
【0127】
従って、
図13(a)に示す実施形態3の機種Aのガイド画像50の大きさは、
図12(a)に示す実施形態2のガイド画像50よりも800/850だけ小さくなる。
【0128】
また、
図13(b)に示す実施形態3の機種Bのガイド画像50の大きさは、
図12(b)に示す実施形態2のガイド画像50よりも900/850だけ大きくなる。
【0129】
さらに、
図13(c)に示す実施形態3の機種Cのガイド画像50の大きさは、
図12(c)に示す実施形態2のガイド画像50よりも800/850だけ小さくなる。
【0130】
<変形例>
実施形態1~3では、登録画像撮影機20及び光源部21として専用機材を用いる場合について説明したが、既述したように、登録画像撮影機20及び光源部21を、照合画像撮影機22で用いたスマートフォン等の携帯端末としてもよい。
【0131】
図14は、変形例のシステム構成図を示す。
図1と異なる点は、登録画像撮影機20及び光源部21が、照合画像撮影機22としてのスマートフォン等の携帯端末と同様の携帯端末23で構成されている点である。
【0132】
この場合、登録画像を撮影した携帯端末23と、照合画像撮影機22としての携帯端末の機種は同一であっても異なっていてもよい。両携帯端末の機種が異なる場合、登録画像を撮影する携帯端末23におけるカメラ部20から見た光源部21の回転角度と、照合画像を撮影する携帯端末におけるカメラ部222bから見た光源部22aの回転角度を一致させるように、ガイド画像50を表示すればよい。
【0133】
具体的には、予め基準となる基準回転角度を決定してき、登録画像を撮影する携帯端末23の表示部に、その携帯端末の回転角度に応じて当該基準回転角度に一致するようにガイド画像50を表示し、このガイド画像50に従って登録画像を撮影する。なお、この登録画像は、照合時の「正解画像」として機能する。
【0134】
他方、照合画像を撮影する携帯端末の表示部に、その携帯端末の回転角度に応じて当該基準回転角度に一致するようにガイド画像50を表示し、このガイド画像50に従って照合画像を撮影すればよい。サーバコンピュータ50は、登録画像(正解画像)と照合画像とを照合し、照合結果を照合画像撮影機22としての携帯端末に返信する。
【0135】
(付記)
(((1)))
光源部と、
カメラ部と、
表示部と、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示する、
携帯端末。
(((2)))
前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との距離に関する情報に応じた位置で前記表示部に表示する、
(((1)))に記載の携帯端末。
(((3)))
前記位置は、前記表示部の中心と前記ガイド画像中に示される前記照合領域の中心との間の距離で設定される、
(((2)))に記載の携帯端末。
(((4)))
前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、カメラ部の性能に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示する、
請求項(((1)))~(((3)))のいずれかに記載の携帯端末。
(((5)))
前記カメラ部の性能に関する情報は、前記カメラ部の画角および前記カメラ部の画像ピクセルサイズに関する情報である、
(((4)))に記載の携帯端末。
(((6)))
前記プロセッサは、さらに、前記ガイド画像を、予め定められた対象物とカメラ部の距離におけるカメラ部の撮影解像度に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示する、
(((1)~(((5)))のいずれかに記載の携帯端末。
(((7)))
光源部とカメラ部と表示部を備える携帯端末における照合領域の撮影方法であって、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示する、
撮影方法。
(((8)))
光源部とカメラ部と表示部を備える携帯端末のプロセッサに、
対象物の照合領域を撮影する際に、前記光源部と前記カメラ部と前記照合領域との相対位置姿勢が所定関係を満たした状態で前記照合領域を撮影するためのガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との位置関係に関する情報に応じた回転角度で前記表示部に表示させる、
プログラム。
(((9)))
前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、前記カメラ部と前記光源部との距離に関する情報に応じた位置で前記表示部に表示させる、
(((8)))に記載のプログラム。
(((10)))
前記位置は、前記表示部の中心と前記ガイド画像中に示される前記照合領域の中心との間の距離で設定される
(((8)))に記載のプログラム。
(((11)))
前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、カメラ部の性能に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示させる、
(((8)))~(((10)))のいずれかに記載のプログラム。
(((12)))
前記カメラ部の性能に関する情報は、前記カメラ部の画角および前記カメラ部の画像ピクセルサイズに関する情報である、
(((11)))に記載のプログラム。
(((13)))
前記プロセッサに、さらに、前記ガイド画像を、予め定められた対象物とカメラ部の距離におけるカメラ部の撮影解像度に関する情報に応じた大きさで前記表示部に表示させる、
(((8)~(((12)))のいずれかに記載のプログラム。
【符号の説明】
【0136】
10 対象物、11 紙部、12a,12b ホログラム部、14 インク部、20 登録画像撮影機、22 照合画像撮影機、50 ガイド画像。