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  • 特開-光沢性容器及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172276
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光沢性容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20241205BHJP
   B29C 49/30 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65D23/00 T
B29C49/30
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089874
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】阿部 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】會田 時大
【テーマコード(参考)】
3E062
4F208
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AC02
3E062AC08
3E062DA01
3E062DA02
4F208AA03
4F208AA04
4F208AG03
4F208AG07
4F208AH55
4F208AJ03
4F208AJ13
4F208LA01
4F208LA07
4F208LB01
4F208LD06
4F208LD09
4F208LG04
4F208LG22
4F208LJ09
4F208LW01
4F208LW26
(57)【要約】
【課題】 表面に部分的な光沢を有する光沢性容器及びその製造を容易とする光沢性容器の製造方法を創出することを課題とする。
【解決手段】 少なくとも最外層がオレフィン系樹脂から成る容器1の表面層に、光沢が付与された光沢部13と光沢を有しない非光沢部14とによって構成される表示部11、12が形成された構成とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも最外層がオレフィン系樹脂で構成された容器(1)の表面層に、光沢が付与された光沢部(13)と光沢を有しない非光沢部(14)とによって構成される表示部(11、12)が形成されていることを特徴とする光沢性容器。
【請求項2】
表面層がポリエチレン樹脂によって構成されている請求項1記載の光沢性容器。
【請求項3】
容器(1)がポリエチレン樹脂単層で構成されている請求項1記載の光沢性容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光沢性容器の製造方法であって、
溶融状態のパリソンを、内周面に所定の形状から成る断熱部材が部分的に配置された割金型内に挿入して型閉じ状態とした後、エアーを供給して前記パリソンを膨出させて所定の形状から成る容器(1)にブロー成形するブロー工程と、
前記ブロー工程と同時に、前記パリソンの外側面を前記断熱部材が配置された割金型の内周面に押し付けることにより、前記容器(1)の表面に、前記断熱部材の形状に応じた光沢部(13)と、前記断熱部材以外の部分の形状に応じた非光沢部(14)とを転写することにより表示部(11,12)を形成する表示部形成工程と、を有することを特徴とする光沢性容器の製造方法。
【請求項5】
断熱部材として、樹脂シート、紙材シート又は樹脂コーティング若しくはこれらの結合を用いる請求項4記載の光沢性容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に部分的な光沢を有する光沢性容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出しブロー成形したボトル表面に、高光沢が付与された高光沢性容器及びその製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-94916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の先行技術は、光沢を付与するにあたり、押出しブロー成形後の後加工において容器全体を加熱処理する必要があるため、容器表面の一部分に精度良く光沢を付与することは困難であった。
また、光沢の付与を後加工によって行うものであるため、工数増加や、容器に加熱が必要であり品質への影響が出る虞があるなど改善点があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、表面に部分的な光沢を有する光沢性容器及びその製造を容易とする光沢性容器の製造方法を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の手段は、
少なくとも最外層がオレフィン系樹脂で構成された容器の表面層に、光沢が付与された光沢部と光沢を有しない非光沢部とによって構成される表示部が形成されていることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第1の手段では、光沢部と非光沢部とによる表示部によって部分的な光沢を付与することにより、容器の付加価値を高めることができる。
【0007】
また本発明の第2の手段は、上記第1の手段に、表面層がポリエチレン樹脂によって構成されている、との手段を加えたものである。
あるいは、上記第1の手段に、容器がポリエチレン樹脂単層で構成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、光沢性容器を簡単且つ低コストでの製造を可能にできる。
【0008】
また本発明の第3の手段は、上記のいずれかに記載の光沢性容器の製造方法であって、
溶融状態のパリソンを、内周面に所定の形状から成る断熱部材が部分的に配置された割金型内に挿入して型閉じ状態とした後、エアーを供給して前記パリソンを膨出させて所定の形状から成る容器にブロー成形するブロー工程と、
前記ブロー工程と同時に、前記パリソンの外側面を前記断熱部材が配置された割金型の内周面に押し付けることにより、前記容器の表面に、前記断熱部材の形状に応じた光沢部と、前記断熱部材以外の部分の形状に応じた非光沢部とを転写することにより表示部を形成する表示部形成工程と、を有することを特徴とする、と云うものである。
上記手段では、容器自体の製造と同時に、容器の表面に光沢による表示部を同時に形成することで従来のような後加工を不要にできるため、容器の製造コストを低減することができる。
【0009】
また本発明の第4の手段は、第3の手段において、断熱部材として、樹脂シート、紙材シート又は樹脂コーティング若しくはこれらの結合を用いる、と云うものである。
上記手段では、割金型内に光沢部を形成するための断熱部材を容易に設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、光沢部と非光沢部とからなる表示部を有することで付加価値の高い光沢性容器とすることができる。
またブロー成形工程と表示部形成工程とを同時にできるため、光沢性容器を容易且つ低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例として光沢性容器を前面側から示す正面図である。
図2】後面側を示す光沢性容器の背面図である。
図3】容器の前面を部分的に拡大して示す写真である。
図4】容器の後面と断熱部材(紙材シート)の紙厚の違いによる光沢の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施例に示す光沢性容器1(以下、適宜「容器1」という)はオレフィン系樹脂製の楕円筒状の胴部2を有するブロー成形容器である。
容器1を形成するオレフィン系樹脂として、本実施例では単層のポリエチレン(PE)を使用している。尚、容器1は多層構造であってもよく、その場合には少なくとも最外層(表面層)がポリエチレン(PE)であることが好ましい。またより好ましい樹脂はHDPE(高密度ポリエチレン)樹脂である。
【0013】
図1及び図3に示すように容器1の表面の一方である前面A側には第1表示部11が形成され、他方の後面Bには図2に示すような第2表示部12が形成されている。第1表示部11及び第2表示部12は、ともに高い光沢が付与された光沢部13と、光沢部13よりも低光沢で形成されて成るマット調の非光沢部14とを有して構成されている。これら第1表示部11及び第2表示部12を利用して所定のデザインを付与することで容器1の付加価値が高められている。
尚、図1及び図2ではハッチングを付した部分が光沢部13を示し、空白部分が非光沢部14を示している。
【0014】
図1に示す前面A側の第1表示部11は、光沢部13が占める面積を非光沢部14が占める面積よりも少なくした構成である。これに対し、図2に示す後面B側の第2表示部12は、光沢部13が占める面積を非光沢部14が占める面積よりも多くした構成である。このような第1表示部11及び第2表示部12は、デザインに応じて配置する光沢部13と非光沢部14との割合を適宜調整することで任意に構成することが可能とされている。尚、本発明における表示部、すなわち第1表示部11及び第2表示部12は、文字、図形又は記号若しくはこれらの結合で形成することが可能であるが、表示部はこれらが配置される下地部分(本実施例では胴部2)をも含むものである。
【0015】
容器1を形成する樹脂表面の密度は光沢部13の方が非光沢部14よりも高い密度を有して形成されている。本実施例における密度は、非光沢部14は結晶化が進んでいないため0.948g/cmであるのに対し、光沢部13は結晶化が進んでいるため0.951~0.952g/cmであった。
【0016】
上記構成から成る光沢性容器1の製造方法について説明する。
光沢性容器1の製造は、主にブロー成形用の一対の割金型を備えるブロー成形装置(図示せず)と、第1表示部11に対応する平面形状からなる第1断熱部材(図示せず)、及び第2表示部12に対応する平面形状からなる第2断熱部材(図示せず)とを用いて行う。
ここで断熱部材は、熱伝導率が1W/mKよりも低いものが好ましく、例えば0.2~0.33W/mKの範囲にある紙材シート、後述する樹脂シート又は樹脂コーティングなどを用いることができる。
【0017】
本実施例では、断熱部材として紙材シートを採用した場合について説明する。この場合、一対の割金型の、一方の内周面の所定の位置に第1表示部11に対応する平面形状からなる紙材シートを両面テープで貼付し、同様に他方の内周面の所定の位置に第2表示部12に対応する平面形状からなる紙材シートを両面テープで貼付することにより、一対の割金型内に各断熱部材を夫々配置する。
【0018】
またその他の断熱部材として、例えばPETシートなどの樹脂シートや樹脂コーティングを使用することも可能である。尚、断熱部材の表面、すなわち樹脂シート及び紙材シートの表面及びウレタンコーティング表面はいずれも平滑面であることが好ましい。
【0019】
更には、樹脂シート又は紙材シートと樹脂コーティングとを組み合わせても良い。例えば紙材シートの上に、2液硬化型のアクリルウレタン塗料による塗膜を、塗装によって形成する構成にすると、塗装などによって紙材シートの表面をコーティングすることによって、成形時に容器1と接触することになる断熱部材表面の平滑性を向上させることが可能となる点で好ましい。
【0020】
次に、HDPE樹脂の単層構造から成る溶融状態にあるパリソン(図示せず)を、型開きの状態にある一対の割金型(図示せず)の間に挿入した後に型閉じ状態に設定し、このとき一対の割金型の底部に設けられて喰い切り刃(図示せず)でパリソンの下端を喰い切り、容器1の底面3にピンチオフ部4によるシールを行う(図1参照)。続いて一対の割金型の上部側から圧縮エアーをパリソン内部に供給し、パリソンを膨出変形させ、その外側面を一対の割金型の内周面に押し付けることにより、容器1にブロー成形する(ブロー成形工程)。
【0021】
この際、一対の割金型の内周面は、金属面が直接露出する部分と内周面内に配置された断熱部材が露出する部分とが存在しているため、パリソンの外側面は金属面と断熱部材の双方に押し付けられる。このとき、パリソンの外側面のうち、金属面との接触部分は樹脂が急激に冷却されて樹脂の硬化が早まり結晶化する前に固化するため、金属面が転写されにくく、樹脂の表面特性が顕著に現れてしまうことから接触部分の樹脂表面(非光沢部14)には光沢は付与されない。これに対し、断熱部材との接触部分(光沢部13)は、急激な冷却とは逆に、断熱部材によって接触部分が徐冷(ゆっくりと冷却)されるため、ブロー圧により金型表面に柔らかな樹脂状態で非光沢部14よりも長時間押し付けられ、金型表面がしっかりと転写された状態で結晶化が進行するため、表面が非光沢部14よりも平滑になり、密度も上昇することから光沢が生じる。
【0022】
ここで、断熱部材を構成する紙材シートの紙厚を変え、紙厚に対する光沢部13の光沢度との関係を調べたところ、図4に示すように、紙厚が0.15mm、0.30mmでは綺麗な光沢が現れるが、紙厚が0.13mm、0.09mmでは光沢が現れ難くなることを確認することができた。これらにより、紙材シートの紙厚は0.15mm以上が好ましいと言える。
【0023】
このようにパリソンが接触する割金型の内周面の部分的な温度管理を断熱部材の有無によって行うことにより、図1及び図3に示すように、容器1の胴部2の前面A側のうち、断熱部材との接触部分の樹脂表面には第1表示部11に対応する平面形状からなる光沢部13が転写され、それ以外の樹脂表面(金属面との接触部分)には光沢の無いマット調の非光沢部14が転写され、これらにより胴部2の前面Aに第1表示部11が形成される。
【0024】
同様に、図2に示すように、容器1の胴部2の後面Bには、断熱部材との接触部分樹脂表面には第2表示部12に対応する平面形状からなる光沢部13が転写され、それ以外の樹脂表面(金属面との接触部分)には光沢の無いマット調の非光沢部14が転写され、これらにより胴部2の後面Bに第2表示部12が形成される(表示部形成工程)。
【0025】
しかも胴部2への第1表示部11及び第2表示部12の形成する表示部形成工程は、光沢性容器1のブロー成形工程と同時に行うことができるため、光沢性容器1を容易且つ低コストで製造することが可能である。
【0026】
ここで割金型の内周面を段差の無い平滑面とした場合には、断熱部材は内周面から僅かに径方向内側に突出する状態で配置されるため、胴部2表面に段差の無いフラットな態様で形成された非光沢部14に対して光沢部13のみが凹状に陥没する態様で形成することができる。
【0027】
これに対し、割金型の内周面に予め第1表示部11及び第2表示部12を構成する光沢部13と同形状から成る陥没部(図示せず)を形成し、その陥没部内に断熱部材を夫々配置することにより割金型の内周面と断熱部材の表面とが段差の無い面一とした場合には、光沢部13及び非光沢部14を成形後の容器1の胴部2表面に段差の無いフラットな態様で形成することができる。
【0028】
更に割金型に形成した陥没部の陥没量を大きくし、断熱部材を陥没部内に完全に埋設する状態で配置した場合には、胴部2表面に段差の無いフラットな態様で形成された非光沢部14から光沢部13のみが凸状に突出する態様とすることができる。
【0029】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0030】
例えば、上記実施例ではパリソンと割金型の内周面と接触する部分の温度管理を断熱部材の有無によって行う場合を示して説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではなく、温調金型を用いて金型の一部を加熱して行う構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、光沢性容器の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 :光沢性容器(容器)
2 :胴部
3 :底面
4 :ピンチオフ部
11 :第1表示部
12 :第2表示部
13 :光沢部
14 :非光沢部
A :前面
B :後面
図1
図2
図3
図4