(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172283
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体製造装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20241205BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/268 J
H01L21/265 602C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089890
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 勝
(57)【要約】
【課題】複数のレーザー発振器を有し、半導体装置の製造用レーザー光のパワーを常時監視できる半導体製造装置を得る。
【解決手段】レーザー発振器1はレーザー光L1を照射し、レーザー発振器2はレーザー光L2を照射する。スプリッタ3はレーザー光L1及びL2を受け、計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPとに分離する。計測用レーザー光LMはレーザー計測部材4に照射され、製造用レーザー光LPに含まれる実照射レーザー光RLPが半導体装置の製造に用いられ、半導体ウエハ50に照射される。レーザー計測部材4は、計測用レーザー光LMを受け、計測用レーザー光LMのパワーである計測用レーザーパワーを計測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザー光を照射する第1のレーザー発振器と、
第2のレーザー光を照射する第2のレーザー発振器とを備え、前記第2のレーザー光は前記第1のレーザー光の照射から遅延時間の経過後に照射され、前記遅延時間は第1及び第2のレーザー光間で互いに影響を受けない長さに設定され、
前記第1及び第2のレーザー光を受け、前記第1及び第2のレーザー光間で光軸を重ねた中間レーザー光を生成し、前記中間レーザー光を計測用レーザー光と製造用レーザー光とに分離するスプリッタと、
前記計測用レーザー光を受け、前記計測用レーザー光のパワーである計測用レーザーパワーを計測するレーザー計測部材とをさらに備え、
前記計測用レーザー光と前記製造用レーザー光とは一定の比率で分離され、
前記製造用レーザー光は半導体装置の製造に用いられ、レーザー照射対象物に照射される、
半導体製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー計測部材は、
前記計測用レーザー光を受け、セラミックスを構成材料とする受光部と、
測温抵抗体を有し、前記計測用レーザー光を受光しないセンサー配置領域に設けられる温度センサーとを含み、
前記測温抵抗体は前記受光部の温度変化に伴い抵抗値が変化する、
半導体製造装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー計測部材は、
前記計測用レーザー光を受け、前記計測用レーザーパワーを直接計測する計測部を有するレーザー計測機器と、
前記レーザー計測機器を下方から支持する支持用治具とを含み、
前記支持用治具は前記計測部の配置高さを調整する高さ調整機能を有する、
半導体製造装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー計測部材は、
前記計測部による前記計測用レーザー光の受光を妨げることなく、前記レーザー計測機器及び前記支持用治具を収容する収容空間を有する金属製のカバー部材をさらに含む、
半導体製造装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体製造装置であって、
前記計測部は前記計測用レーザー光を受ける平面構造の受光面を有し、
前記支持用治具は、
前記計測用レーザー光の反射光が前記カバー部材の前記収容空間内に収まるように、前記計測用レーザー光の照射方向と前記受光面の法線方向との間に有意な傾きを設けて前記レーザー計測機器を支持する、
半導体製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー照射対象物を保持する対象物保持部材と、
前記製造用レーザー光を実照射レーザー光と補助計測用レーザー光とに分離する光分離部材とをさらに備え、
前記補助計測用レーザー光と前記実照射レーザー光とは一定の比率で分離され、
前記製造用レーザー光に含まれる前記実照射レーザー光が半導体装置の製造に用いられ、
前記レーザー照射対象物は前記実照射レーザー光を受光するように配置され、
前記半導体製造装置は、
前記補助計測用レーザー光を受け、前記補助計測用レーザー光のパワーである補助計測用レーザーパワーを計測する補助レーザー計測部材をさらに備える、
半導体製造装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記レーザー照射対象物は半導体ウエハを含み、
(a) 前記半導体ウエハに不純物イオンを注入するステップと、
(b) 前記半導体製造装置を用い、前記半導体ウエハに前記製造用レーザー光を照射して、前記半導体ウエハに注入された不純物イオンを活性化するステップと、
(c) 前記ステップ(b)と並行して実行され、前記半導体製造装置を用い、前記レーザー計測部材によって計測された前記計測用レーザーパワーをモニタするステップとを備える、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のレーザー発振器を有する半導体製造装置及び当該半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
レーザー光照射機能を有する半導体製造装置として例えば特許文献1に開示されたレーザー加工装置が挙げられる。このレーザー加工装置では、レーザー光であるパルスレーザービームのパワーを測定するために、吸光部材に温度センサーを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のレーザー加工装置は、パルスレーザービームが半導体ウエハに入射してアニールする加工状態と、アニールさせずに待機して吸光部材にパルスレーザービームを入射させ、ビームのパワーをモニタするモニタ状態とを切り替える必要があった。
【0005】
このように、従来のレーザー加工装置では、加工状態とモニタ状態とを同時に行うことができないことから、連続的にアニール処理を実行し、かつビームパワーをモニタすることができないという問題点があった。この問題点を補うべく半導体ウエハへの処理期間にビームパワーをPD(Photo Detector)にて監視する改良構成が考えられる。
【0006】
しかしながら、上記改良構成では、PDの物理的な制約から微量のレーザー光しか受光できないため誤検出する第1の不具合と、レーザー発振器を複数使用する場合に検出間隔が短いことに起因して複数のレーザー光のパルス間隔を読み取れない第2の不具合が生じる可能性があった。なお、微量なレーザー光として例えばパワーが1W未満のレーザー光が考えられる。
【0007】
さらに、上述した第1及び第2の不具合が生じると、レーザー加工装置に動作停止が発生してしまうという問題点も有していた。
【0008】
このように、レーザー光照射機能を有する従来の半導体製造装置は、半導体装置の製造に用いるレーザー光を連続的に監視できないという問題点を有しており、上述した改良構成でも解消することができなかった。特に従来の半導体製造装置が複数のレーザー発振器を有する場合は上述した第2の不具合が生じる可能性があり上記問題点は顕著になる。
【0009】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、複数のレーザー発振器を有し、半導体装置の製造用レーザー光のパワーを常時監視できる半導体製造装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る半導体製造装置は、第1のレーザー光を照射する第1のレーザー発振器と、第2のレーザー光を照射する第2のレーザー発振器とを備え、前記第2のレーザー光は前記第1のレーザー光の照射から遅延時間の経過後に照射され、前記遅延時間は第1及び第2のレーザー光間で互いに影響を受けない長さに設定され、前記第1及び第2のレーザー光を受け、前記第1及び第2のレーザー光間で光軸を重ねた中間レーザー光を生成し、前記中間レーザー光を計測用レーザー光と製造用レーザー光とに分離するスプリッタと、前記計測用レーザー光を受け、前記計測用レーザー光のパワーである計測用レーザーパワーを計測するレーザー計測部材とをさらに備え、前記計測用レーザー光と前記製造用レーザー光とは一定の比率で分離され、前記製造用レーザー光は半導体装置の製造に用いられ、レーザー照射対象物に照射される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の半導体製造装置は、第1及び第2のレーザー発振器を有し、計測用レーザー光を受けるレーザー計測部材によって、計測用レーザーパワーを常時計測することができる。
【0012】
計測用レーザー光と製造用レーザー光とは一定の比率で分離されているため、計測用レーザーパワーに基づき製造用レーザーパワーを求めることができる。
【0013】
したがって、本開示の半導体製造装置は第1及び第2のレーザー発振器を有し、第1及び第2のレーザー光に基づく製造用レーザー光による半導体装置の製造期間において、製造用レーザーパワーを常時監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の基本技術となる半導体製造装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】2つのレーザー光の時間変化を示すグラフである。
【
図3】実施の形態1である半導体製造装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図3で示したダンパーの全体構成を示す説明図である。
【
図5】
図4で示した温度センサーの構成を示す説明図である。
【
図6】実施の形態2である半導体製造装置の基本構成を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図6で示したパワーメータ計測部品群の全体構成を示す説明図(その1)である。
【
図8】
図6で示したパワーメータ計測部品群の全体構成を示す説明図(その2)である。
【
図9】レーザーパワーメータの全体構成を示す説明図(その1)である。
【
図10】レーザーパワーメータの全体構成を示す説明図(その2)である。
【
図11】実施の形態2の変形例を示す説明図(その1)である。
【
図12】実施の形態2の変形例を示す説明図(その2)である。
【
図13】実施の形態3である半導体装置の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<基本技術>
図1は本開示の基本技術となる半導体製造装置100の構成を模式的に示す説明図である。同図に示すように、基本技術となる半導体製造装置100はレーザー発振器1及び2を有し、レーザーアニール装置として機能する。基本技術では複数のレーザー発振器として2つのレーザー発振器1及び2を示している。
【0016】
第1のレーザー発振器であるレーザー発振器1は第1のレーザー光となるレーザー光L1を照射する。第2のレーザー発振器であるレーザー発振器2は第2のレーザー光となるレーザー光L2を照射する。
【0017】
図2はレーザー光L1及びL2の時間変化を示すグラフである。同図において、横軸が時間変化、縦軸が強度(パワー)と示している。同図に示すように、後述する中間レーザー光Lbに含まれるレーザー光L1及びL2間には遅延時間ΔTが存在する。すなわち、第2のレーザー光であるレーザー光L2は第1のレーザー光であるレーザー光L1の照射から遅延時間ΔT経過後に照射されている。遅延時間ΔTはレーザー光L1及びL2間で互いに影響を受けない長さに設定されている。
【0018】
レーザー光L1及びL2として、例えば波長300~600nmのパルスレーザービームが考えられ、具体的には、Nd:YLFレーザーの第2高調波(波長527nm)が考えられる。なお、「Nd:YLFレーザー」とは、NdをドープしたYLFレーザーを意味する。
【0019】
第1のレーザー発振器であるレーザー発振器1から照射されたレーザー光L1はミラー11及びミラー12で反射された後、スプリッタ3に入射する。第2のレーザー発振器であるレーザー発振器2から照射されたレーザー光L2はミラー13及びミラー14で反射された後、スプリッタ3に入射する。スプリッタ3においてレーザー光L1の入射面とレーザー光L2の入射面は異なる面に設定される。なお、ミラー11~14は入射光を全て反射する全反射ミラーとして機能している。
【0020】
スプリッタ3はレーザー光L1及びL2を受け、レーザー光L1及びL2間で光軸を重ねて中間レーザー光Lbを一時的に生成し、中間レーザー光Lbを計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPとに分離する。計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPとは一定の比率で分離される。
【0021】
図2で示したように、中間レーザー光Lbに含まれるレーザー光L1及びL2間に遅延時間ΔTが設けられることにより、互いに影響を受けないタイミングでレーザー光L1及びL2はそれぞれスプリッタ3に照射される。例えば、レーザー光L1及びL2それぞれのパルス幅DPが基準幅以上になるように遅延時間ΔTが設定される。
【0022】
このため、
図2に示すように、レーザー光L1のパワーが最大となる時刻t1では、レーザー光L1が中間レーザー光Lbとなり、中間レーザー光Lbが計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPに分離される。
【0023】
同様に、
図2に示すように、レーザー光L2のパワーが最大となる時刻t2では、レーザー光L2が中間レーザー光Lbとなり、中間レーザー光Lbが計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPに分離される。
【0024】
計測用レーザー光LMはレーザー計測部材4に照射され、製造用レーザー光LPはミラー15に向けて照射される。製造用レーザー光LPのうち後述する実照射レーザー光RLPが半導体装置の製造に用いられる。
【0025】
レーザー計測部材4は、計測用レーザー光LMを受け、計測用レーザー光LMのパワーである計測用レーザーパワーを計測する。
【0026】
光分離部材に含まれるミラー15は製造用レーザー光LPの大部分を反射し一部を透過する。製造用レーザー光LPがミラー15を反射することにより得られる実照射レーザー光RLPがチャンバー5に向けて照射される。
【0027】
対象物保持部材であるチャンバー5は例えば図示しないウエハ載置台上に半導体ウエハ50を載置している。半導体ウエハ50は第1及び第2の主面を有し、第1の主面がレーザー受光面となり、第2の主面がウエハ載置台との接触面となる。このように、対象物保持部材であるチャンバー5は内部に半導体ウエハ50を保持している。
【0028】
光分離部材に含まれるミラー15は製造用レーザー光LPの一部を透過させる。製造用レーザー光LPがミラー15を透過することにより得られる観測用レーザー光L15がミラー16に向けて照射される。
【0029】
このように、ミラー15によって、製造用レーザー光LPは実照射レーザー光RLPと観測用レーザー光L15とに分離される。観測用レーザー光L15と実照射レーザー光RLPとは一定の比率で分離される。
【0030】
実照射レーザー光RLPはチャンバー5内部の半導体ウエハ50の第1の主面に向けて照射される。半導体ウエハ50の第1の主面に実照射レーザー光RLPを照射する工程がアニール工程となり、半導体装置の製造方法における一工程となる。このように、製造用レーザー光LPに含まれる実照射レーザー光RLPが半導体装置の製造に用いられ、半導体ウエハ50の第1の主面に照射される。
【0031】
ハーフミラーとして機能し光分離部材に含まれるミラー16は観測用レーザー光L15の一部を反射する。観測用レーザー光L15がミラー16を反射することにより得られる補助計測用レーザー光LSMがPD(Photo Detector)6に向けて照射される。
【0032】
光分離部材に含まれるミラー16は観測用レーザー光L15の一部を透過する。観測用レーザー光L15がミラー16を透過することにより得られるフロファイル用レーザー光LFがプロファイラー7に向けて照射される。
【0033】
このように、ミラー16によって、観測用レーザー光L15は補助計測用レーザー光LSMとフロファイル用レーザー光LFとに分離される。補助計測用レーザー光LSMとフロファイル用レーザー光LFとは一定の比率で分離される。
【0034】
前述したように、ミラー15は製造用レーザー光LPを実照射レーザー光RLPと観測用レーザー光L15とに分離し、観測用レーザー光L15と実照射レーザー光RLPとは一定の比率で分離される。また、ミラー16は観測用レーザー光L15を補助計測用レーザー光LSMとフロファイル用レーザー光LFとに分離し、補助計測用レーザー光LSMとフロファイル用レーザー光LFとは一定の比率で分離される。
【0035】
したがって、ミラー15及びミラー16を含む光分離部材によって、製造用レーザー光LPを基準として、補助計測用レーザー光LSMと実照射レーザー光RLPとは一定の比率で分離されることになる。
【0036】
補助レーザー計測部材であるPD6は、補助計測用レーザー光LSMを受け、補助計測用レーザー光LSMのパワーである補助計測用レーザーパワーを計測し、計測した補助計測用レーザーパワーを電気信号に変換している。PD6によって、レーザー光L1及びL2それぞれの波形や、遅延時間ΔT等を監視することができ、例えば、PD6は2秒間隔で補助計測用レーザーパワーを計測することができる。
【0037】
プロファイラー7はフロファイル用レーザー光LFから実照射レーザー光RLPのビーム径や空間的な強度分布を測定する。
【0038】
上述した本開示の基本技術である半導体製造装置100は、レーザー光L1及びL2を照射する2つのレーザー発振器1及び2を有しており、レーザー光L1及びL2に基づく計測用レーザー光LMを受けるレーザー計測部材4によって、計測用レーザーパワーを常時計測することができる。
【0039】
計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPとは一定の比率で分離されているため、レーザー計測部材4によって計測した計測用レーザー光LMの計測用レーザーパワーに基づき製造用レーザー光LPの製造用レーザーパワーを求めることができる。
【0040】
製造用レーザー光LPの大部分が実照射レーザー光RLPとされているため、製造用レーザーパワーを実照射レーザー光RLPの実照射レーザーパワーとしても実用上問題ない。また、製造用レーザー光LPに対する実照射レーザー光RLPの比率も一定であるため、計測用レーザーパワーに基づき実照射レーザー光RLPの実照射レーザーパワーを求めることもできる。
【0041】
したがって、本開示の基本技術である半導体製造装置100は、レーザー発振器1及び2を有しており、レーザー計測部材4により計測用レーザーパワーを計測することにより、製造用レーザー光LPに含まれる実照射レーザー光RLPによる半導体装置の製造期間において、製造用レーザーパワー(実照射レーザーパワー)を常時監視することができる。
【0042】
本開示の基本技術である半導体製造装置100は、補助計測用レーザー光LSMを受ける補助レーザー計測部材であるPD6によって、補助計測用レーザーパワーを常時計測することができる。
【0043】
実照射レーザー光RLPと補助計測用レーザー光LSMは一定の比率で分離されているため、PD6によって計測した補助計測用レーザーパワーに基づき製造用レーザーパワー(実照射レーザーパワー)を求めることができる。このように、レーザー計測部材4に加え、PD6によっても製造用レーザーパワーを常時監視することができる。
【0044】
その結果、本開示の基本技術である半導体製造装置100は、実照射レーザー光RLPによる半導体装置の製造期間において、レーザー計測部材4によって計測用レーザーパワーの計測が行えない場合においても、補助レーザー計測部材であるPD6による補助計測用レーザーパワーの計測によって、製造用レーザーパワーを常時監視することができる。
【0045】
また、レーザー光L1及びL2間におけるレーザーパルスの重なり状況に応じてレーザー計測部材4でレーザー光L1及びL2間の遅延時間ΔTを正確に計測できない場合でも、PD6によって補助計測用レーザーパワーを常時監視することにより、遅延時間ΔTを正確に計測することができる。
【0046】
このように、半導体製造装置100は、レーザー計測部材4に加え、補助レーザー計測部材であるPD6を設けることにより、レーザー計測部材4のみではエラーとなって不要な装置停止が発生する状況でも、PD6を設けることにより上述した装置停止等のエラー現象を回避し生産性を向上させることができる。例えば、レーザー計測部材4は製造用レーザーパワーの表示用に用い、PD6をインターロック用に用いる等の使い分けが行える。
【0047】
図1で示した半導体製造装置100を基本技術として、レーザー計測部材4を具体化した装置が、以下で述べる実施の形態1の半導体製造装置101及び実施の形態2の半導体製造装置102となる。
【0048】
<実施の形態1>
図3は本開示の実施の形態1である半導体製造装置101の構成を模式的に示す説明図である。同図に示すように、レーザー計測部材4としてダンパー40を用いたのが実施の形態1である。ダンパー40は高出力のレーザー光を安全に一時遮蔽するための「ビームダンパー」と称される器具に相当するレーザー計測部材である。
【0049】
以下、
図1及び
図2で示した基本技術と同じ構成要素は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態1の半導体製造装置101における特徴部分を中心に説明する。
【0050】
図4はダンパー40の全体構成を示す説明図である。
図4にXYZ直交座標系を記している。同図において、カッコ内に示す数値は寸法を示しており、単位はmmである。ダンパー40は本体部48を有し、本体部48の上方の中央に開口部40aが設けられ、開口部40aは計測用レーザー光LMに対向する位置に配置されている。
図4において、計測用レーザー光LMは+Y方向に照射される場合を想定している。
【0051】
また、本体部48は底部48bと底部48b上に配置される主要部48aとを有し、底部48bは主要部48aより幅広な構造を呈している。底部48bのX方向に沿った形成幅は66mmである。
【0052】
また、本体部48の-X方向側の側面に2つのワンタッチ管継手46が設けられる。2つのワンタッチ管継手46は図示しない配管チューブを接続することにより、本体部48内に冷却水を循環させることができる。
【0053】
そして、本体部48の内部にセラミック受光部45を配置し、開口部40aを介して計測用レーザー光LMをセラミック受光部45にて受光するようにしている。この際、計測用レーザー光LMはセラミック受光部45の中心位置C45またはその付近に照射される。
【0054】
セラミック受光部45は複数のセラミック受光部材を含み、複数のセラミック受光部材は平面視して8角形状を呈し、開口部40aから+Y方向に沿った奥行き方向にかけて重ねて配置される。複数のセラミック受光部材それぞれの構成材料となるセラミックスは耐熱性、摩耗性、腐食性の観点から、セラミック受光部45は高出力の計測用レーザー光LMを安全に一時遮蔽する、レーザー受止機能を有している。
【0055】
図4に示すように、底部48bの底面から下方のワンタッチ管継手46の中心までのZ方向に沿った高さが62.5mmであり、2つのワンタッチ管継手46,46間の高さ方向における距離が45mmである。また、底部48bの底面からセラミック受光部45の中心位置C45までの高さが85mmであり、底部48bの底面から主要部48aの上面までの高さが120mmとなる。
【0056】
このように、ダンパー40におけるセラミック受光部45は、計測用レーザー光LMを受け、セラミックスを構成材料とした受光部として、レーザー受止機能を有している。
【0057】
さらに、本体部48の主要部48aにおける底部48bとの付け根領域を巻回する態様で温度センサー41が設けられる。温度センサー41の底部48bへの取り付けに例えば耐熱テープが用いられる。
【0058】
温度センサー41は開口部40aから比較的離れたセンサー配置領域に設けられる。計測用レーザー光LMはセラミック受光部45の中心位置C45またはその周辺に照射されるため、センサー配置領域は計測用レーザー光LMを受光することはない。
【0059】
図5は温度センサー41の構成を示す説明図である。同図に示すように、温度センサー41はアルミブロック42、リード43、アルミブロック44及び3つのアルミブロック47を主要構成要素として含んでいる。同図において、カッコ内に示す数値は寸法を示しており、単位はmmである。
【0060】
リード43は太い幹線部分と3つに分岐した支線部分とを有し、幹線部分の一方端にアルミブロック42が設けられ、幹線部分の他方端にアルミブロック44が設けられ、また、3つの支線部分の先端にはそれぞれアルミブロック47が設けられる。なお、3つの支線部分は例えば図示しない表示器や温度調節器等のネジ端子に接続される。
【0061】
アルミブロック42、アルミブロック44及び3つのアルミブロック47はリード43を保護するために設けられる。リード43は例えば導電性を有するリード線とリード線を被覆するフッ素樹脂被膜とから構成される。
【0062】
図5に示すように、アルミブロック42は長辺が20mm、短辺が8mmの平面視して矩形状に構成され、リード43の一端を保護し、かつリード43のリード線に電気的に接続される。また、リード43の全長は3000mm程度に設定される。
【0063】
ダンパー40は、本体部48における主要部48aの下方領域にリード43を巻回させる態様で本体部48に温度センサー41を取り付けている。
【0064】
リード43を構成するリード線が温度抵抗体として機能し、前述したように、温度センサー41は開口部40aから十分離れ、計測用レーザー光LMを受光しないセンサー配置領域に設けられる。以下、説明の都合上、リード43が温度抵抗体として機能するとして説明する場合がある。
【0065】
一方、セラミック受光部45の温度変化は本体部48にも伝達され、本体部48の主要部48aを介して温度センサー41のリード43にも伝達される。したがって、測温抵抗体であるリード43はセラミック受光部45の温度変化に伴い抵抗値が変化する。アルミブロック42等に電気的に接続される図示しない温度計測機器によって、リード43(リード線)の抵抗値が計測され、計測した抵抗値に基づきセラミック受光部45の温度である受光部温度が求められる。なお、温度計測機器は温度センサー41に内蔵しても、温度センサー41外に設けても良い。
【0066】
実施の形態1の半導体製造装置101は、基本技術の半導体製造装置100による効果に加え、以下の効果を奏する。
【0067】
実施の形態1の半導体製造装置101のダンパー40において、セラミックスを構成材料とするセラミック受光部45はレーザー受止機能を有するため、セラミック受光部45によって高出力の計測用レーザー光LMを安全に一時遮蔽することができる。
【0068】
加えて、ダンパー40が有する温度センサー41は、セラミック受光部45の温度変化に伴い抵抗値が変化するリード43を有しているため、温度抵抗体であるリード43(リード線)の抵抗値に基づきセラミック受光部45の温度である受光部温度を精度良く求めることができる。温度センサー41は、計測用レーザー光LMを受光しないセンサー配置領域に設けられるため、計測用レーザー光LMの照射の影響を受けることはない。
【0069】
このため、計測用レーザー光LMによって温度センサー41を焼損させることなく、温度センサー41を用いて継続的に1W以上の高出力の計測用レーザー光LMに関連する受光部温度を測定することができる。
【0070】
したがって、実施の形態1の半導体製造装置101、レーザー計測部材4として機能するダンパー40の温度センサー41を用いて計測される、セラミック受光部45の受光部温度に基づき計測用レーザー光LMの計測用レーザーパワーを精度良く計測することができる。
【0071】
また、アニール条件によって製造用レーザー光LP(実照射レーザー光RLP)のパワーを変更した場合でも、製造用レーザーパワーの変化をダンパー40の受光部温度から精度良く管理することができる。
【0072】
例えば、ビームスプリッタであるスプリッタ3によって計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPとのエネルギー比率を調整することにより、ダンパー40の受光部温度を変化させることができ、以下のような製造条件1~製造条件3でアニール処理を監視することができる。
【0073】
製造条件1は、製造用レーザー光LPのエネルギー(パワー)を比較的大きくし、計測用レーザー光LMのエネルギーを比較的小さくする条件である。この製造条件1では、受光部温度の温度変化範囲を比較的低い第1の温度帯に設定することができる。
【0074】
製造条件2は、製造用レーザー光LPのエネルギー(パワー)を比較的小さくし、計測用レーザー光LMのエネルギーを比較的大きくする条件である。この製造条件2では、受光部温度の温度変化範囲を比較的高い第2の温度帯に設定することができる。
【0075】
製造条件3は、製造用レーザー光LPのエネルギー(パワー)と計測用レーザー光LMのエネルギーとを同程度にする条件である。この製造条件3では、受光部温度の温度変化範囲を第1及び第2の温度帯間の中間的な温度帯に設定することができる。
【0076】
製造条件1~製造条件3のうち、リード43の抵抗値の変化が生じ易い温度変化範囲になる条件を選択することができる。例えば、セラミック受光部45の受光部温度が40~50℃で変化するように設定すれば、比較的低温な場合に適した温度抵抗体であるリード43を有する温度センサー41を用いて受光部温度を精度良く求めることができる。
【0077】
なお、上述した製造条件1~製造条件3は、一例でありエネルギー(パワー)の振り分けの組み合わせは製造条件によって適宜調整することができる。
【0078】
<実施の形態2>
図6は本開示の実施の形態2である半導体製造装置102の基本構成を模式的に示す説明図である。同図に示すように、レーザー計測部材4としてパワーメータ計測部品群8を用いたのが実施の形態2である。
【0079】
以下、
図1及び
図2で示した基本技術と同じ構成要素は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態2の半導体製造装置102の特徴部分を中心に説明する。
【0080】
図7及び
図8はそれぞれパワーメータ計測部品群8の全体構成を示す説明図である。
図9及び
図10はそれぞれパワーメータ計測部品群8の主要部品となるレーザーパワーメータ60の全体構成を示す説明図である。
図7~
図10において、カッコ内に示す数値は寸法を示しており、単位はmmである。
図7~
図10それぞれにXYZ直交座標系を記している。
図7~
図10において、計測用レーザー光LMは+Y方向に照射される場合を想定している。
【0081】
図7及び
図8に示すように、パワーメータ計測部品群8はレーザーパワーメータ60、支持用治具62及びアルミカバー65を含んで構成される。アルミカバー65は収容空間S65を有しており、レーザーパワーメータ60及び支持用治具62を収容空間S65内に収容している。
【0082】
具体的には、アルミカバー65は-Y方向側以外の+Y方向側、+X方向側及び-X方向側それぞれに側面を有し、+Z方向側に上面を有している。したがって、アルミカバー65は3つの側面と1つの上面によって形成される収容空間S65内にレーザーパワーメータ60及び支持用治具62を収容している。
【0083】
このように、アルミカバー65はアルミニウムを構成材料とした金属製のカバー部材として機能する。また、アルミカバー65の厚みは2mm以上に設定される。また、
図7に示すように、アルミカバー65のX方向に沿った形成幅は130mm、Z方向に沿った高さは250mmに設定され、
図8に示すように、アルミカバー65の+Y方向の奥行き長さは十分長い150mmに設定される。
【0084】
レーザー計測機器であるレーザーパワーメータ60は支持用治具62によって下方から支持されており、支持用治具62は支持台620、本体部621、高さ調整つまみ622及び接続軸623を主要構成要素として含んでいる。
【0085】
図9及び
図10に示すように、支持台620上に本体部621が固定して設けられ、本体部621は接続軸623を伸縮可能に保持している。接続軸623をZ方向に沿って伸縮させることにより、本体部621の上面から突出する接続軸623の長さを調整することができる。接続軸623の伸縮は高さ調整つまみ622を用いて行われる。
図9に示すように、支持台620のX方向における形成幅は100mmに設定され、
図10に示すように、支持台620のY方向における形成幅は75mmに設定される。
【0086】
レーザー計測機器であるレーザーパワーメータ60は接続軸623の上部に固定されている。したがって、支持用治具62は、本体部621で保持される接続軸623をZ方向に沿って伸縮させることによって、レーザーパワーメータ60の形成高さを変更する高さ調整機能を有している。
図9で示す例では、112~158mmの範囲でレーザーパワーメータ60の配置高さH60を調整できる。配置高さH60は支持台620の底面から計測部60aの中心位置C60までのZ方向に沿った長さである。
【0087】
レーザー計測機器であるレーザーパワーメータ60はXZ平面で平面視して角が丸められた矩形状を呈している。
図9で示す例では、一辺が100mmの正方形状を呈している。レーザーパワーメータ60のXZ平面で平面視して中央に計測部60aを有している。計測部60aはXZ平面で平面視して中心位置C60から半径φ50の円状を呈している。計測部60aは計測用レーザー光LM用の受光面F60を有し、受光面F60はXZ平面に平行な平面構造を呈している。このように、計測部60aは計測用レーザー光LMを受ける平面構造の受光面F60を有している。
【0088】
接続軸623がZ方向に沿って伸縮する際、レーザーパワーメータ60の計測部60aもZ方向に沿って移動する。したがって、計測部60aがZ方向に沿って移動しても、受光面F60は常にXZ平面に平行な平面となる。
【0089】
複数の筐体部材60cの組合せよって一体的筐体構造を構成している。複数の筐体部材60c間はねじ穴60bでねじ止めすることによって固定される。ねじ穴60bは複数の計測部60aの上方及び下方に設けられる。上記一体的筐体構造によって計測部60aを囲んでいる。
図10では複数の筐体部材60cとして7つの筐体部材60cが示されている。
【0090】
図10に示すように、7つの筐体部材60cそれぞれの膜厚は2.5mmであり、7つの筐体部材60cのうち隣接する6対の筐体部材60c,60c間それぞれの間隔は3.5mmである。したがって、一体的筐体構造のY方向に沿った厚みは38.5mmとなる。また、接続軸623の中心から、一体的筐体構造における最も+Y方向側に位置する筐体部材60cまでの長さは16mmに設定される。
【0091】
計測部60aは計測用レーザー光LMに対向する位置に配置されている。レーザーパワーメータ60は計測部60aで受ける計測用レーザー光LMのパワーを電気信号に変換することにより、計測用レーザー光LMの計測用レーザーパワーを直接測定している。前述したように、
図7~
図10において計測用レーザー光LMは+Y方向に向けて照射される場合を示している。
【0092】
このように、実施の形態2の半導体製造装置102は、レーザー計測部材4として、実施の形態1のダンパー40に替えて、レーザーパワーメータ60を有するパワーメータ計測部品群8を設けることにより、1Wを超える高い計測用レーザーパワーを直接計測することができる。
【0093】
すなわち、レーザーパワーメータ60の計測部60aは計測用レーザー光LMを受け、計測用レーザーパワーを直接計測する。例えば、レーザーパワーメータ60の計測部60aによって、ある時間幅におけるパルスレーザービームとなる計測用レーザー光LMの平均パワーを測定することができる。
【0094】
アルミカバー65は、レーザーパワーメータ60の計測部60aによる計測用レーザー光LMの受光を妨げることなく、収容空間S65内にアルミカバー65及び支持用治具62を収容している。このように、アルミカバー65は、計測部60aによる計測用レーザー光LMの受光を妨げることなく、計測部60aを収容する収容空間S65を有する金属製のカバー部材として機能する。
【0095】
実施の形態2の半導体製造装置102は、基本技術の半導体製造装置100による効果に加え、以下の効果を奏する。
【0096】
実施の形態2の半導体製造装置102はレーザー計測部材4としてパワーメータ計測部品群8を採用している。パワーメータ計測部品群8は、レーザーパワーメータ60の配置高さH60を調整する高さ調整機能を有する支持用治具62を含むため、計測部60aによる計測用レーザー光LMの受光高さを適切な高さに設定することができる。
【0097】
その結果、実施の形態2の半導体製造装置102は、レーザーパワーメータ60の計測部60aによって計測用レーザー光LMの計測用レーザーパワーを精度良く計測することができる。
【0098】
さらに、実施の形態2の半導体製造装置102は、金属製のカバー部材であるアルミカバー65の収容空間S65内にレーザーパワーメータ60を収容している。このため、アルミカバー65によって計測部60aから計測用レーザー光LMの散乱光がパワーメータ計測部品群8の外に漏れることを抑制することができる。
【0099】
その結果、実施の形態2の半導体製造装置102において、計測用レーザー光LMの散乱光によって製造用レーザー光LPに影響が生じることはない。
【0100】
(変形例)
図11及び
図12は実施の形態2の変形例を示す説明図である。
図11及び
図12それぞれにXYZ直交座標系を記している。
図7~
図10で示した基本構成では、水平線LHに対する支持台620の底面の角度は“0”であった。なお、水平線LHはY方向に平行な基準線である。
【0101】
図11に示すように、変形例では水平線LHに対し支持台620に角度αの傾きを持たせている。すなわち、
図11及び
図12で示した変形例は、支持台620の底面は水平線LHに対し、+Z方向に向けて“0”でない有意な角度αの傾きを有している。なお、基本構成と同様、変形例においても計測用レーザー光LMは+Y方向に沿った方向を照射方向DLとしている。なお、角度αの傾きを安定性良く維持させるため支持台620を固定する支持台固定部品を別途設けることが望ましい。
【0102】
したがって、
図12に示すように、受光面F60の法線方向V60は計測用レーザー光LMの照射方向DLに対し下方(-Z方向)に向けて角度αを有することになる。このため、+Y方向に沿った照射方向DLで照射される計測用レーザー光LMが計測部60aの受光面F60で反射して得られる計測用レーザー反射光LM2は下方に向かう。角度αは計測用レーザー反射光LM2が収容空間S65内に収まるように設定される。なお、角度αとして例えば30度が考えられる。
【0103】
すなわち、実施の形態2の変形例は、計測用レーザー光LMの反射光となる計測用レーザー反射光LM2がアルミカバー65の収容空間S65内に収まるように、計測用レーザー光LMの照射方向DLと受光面F60の法線方向V60との間に有意な傾きである角度αを設けたことを特徴としている。
【0104】
このように、実施の形態2の変形例における支持用治具62は、計測用レーザー反射光LM2がアルミカバー65の収容空間S65内に収まるように、計測用レーザー光LMの照射方向DLと受光面F60の法線方向V60との間に有意な角度αを設けてレーザーパワーメータ60を支持している。
【0105】
したがって、実施の形態2の変形例では、計測用レーザー反射光LM2の方向を強制的に下方に向け、計測用レーザー反射光LM2がアルミカバー65の収容空間S65外に漏れないようにしている。
【0106】
実施の形態2の半導体製造装置102の変形例における支持用治具62は上記特徴を有するため、計測用レーザー光LMの反射光(計測用レーザー反射光LM2)及び散乱光を、アルミカバー65の収容空間S65に留めることができる。
【0107】
その結果、実施の形態2の変形例は、計測用レーザー光LMによる製造用レーザー光LPへの影響をより小さくすることができる。
【0108】
<実施の形態3>
実施の形態3は半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法である。半導体製造装置として、
図1及び
図2で示した基本技術の半導体製造装置100、
図3~
図5で示した実施の形態1の半導体製造装置101、
図6~
図12で示した実施の形態2の半導体製造装置102のうち、いずれかを用いる。なお、実施の形態2の半導体製造装置102は
図11及び
図12で示した変形例を含んでいる。
【0109】
図13は本開示の実施の形態3である半導体装置の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。以下、半導体製造装置100を用いた場合を例にして、実施の形態3の半導体装置の製造方法の処理の流れを説明する。
【0110】
実施の形態3において、レーザー照射対象物は第1及び第2の主面を有する半導体ウエハ50となり、半導体ウエハ50は対象物保持部材であるチャンバー5によって保持されている。
【0111】
まず、ステップST11において、半導体ウエハ50対し、第1の主面側から不純物イオンを注入する。
【0112】
ステップST11のイオン注入工程によって半導体ウエハ50に形成される半導体素子として、パワー半導体素子が考えられ、パワー半導体素子として、例えば、ダイオード素子、スイッチング素子等が考えられる。
【0113】
また、半導体ウエハ50の構成材料は、例えば珪素(シリコン)、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、酸化ガリウム系材料、ダイヤモンド等が考えられる。また、シリコンだけではなく、シリコンに比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体を構成材料としても良い。
【0114】
ステップST11の実行後、ステップST12において、半導体製造装置100を用いて、製造用レーザー光LPに含まれる実照射レーザー光RLPを半導体ウエハ50の第1の主面側から照射して、半導体ウエハ50に注入された不純物イオンを活性化する。その結果、半導体ウエハ50に注入された不純物が拡散する。
【0115】
このように、ステップST12の処理は、ステップST11の実行時にイオン注入された不純物を活性化させるための熱処理を伴うアニール工程となる。ステップST12のアニール工程時において、製造用レーザー光LPに含まれる実照射レーザー光RLPが半導体ウエハ50に照射される。
【0116】
実照射レーザー光RLPの照射によるアニール工程では不純物イオンを活性化させるべく、例えば1W以上の高いパワーで行う必要があり、この点において、実照射レーザー光RLPを照射する半導体製造装置100は有用な製造装置となる。なぜなら、2つのレーザー光L1及びL2によって生成される熱量は、単一のレーザー光によって生成される熱量より大きくなるからである。
【0117】
特に、半導体ウエハ50が8インチや12インチといった大口径ウエハとなる場合、生産性を向上させることができる。また、炭化珪素(SiC)などのワイドバンドギャップ半導体を構成材料とした半導体ウエハ50をアニールする場合、シリコンを構成材料とした半導体ウエハ50よりも高い温度でアニール工程を行う必要がある。この点においても、比較的高い出力の実照射レーザー光RLPを照射する半導体製造装置100は有用な製造装置となる。
【0118】
ステップST11の実行後、上述したステップST12と並行して実行されるステップST13において、半導体製造装置100を用い、レーザー計測部材4によって計測された計測用レーザー光LMの計測用レーザーパワーをモニタする。
【0119】
この際、PD6によって補助計測用レーザー光LSMの補助計測用レーザーパワーも併せてモニタされる。
【0120】
実施の形態3の半導体装置の製造方法は、ステップST12及びST13の処理を半導体製造装置100、半導体製造装置101及び半導体製造装置102のいずれかを用いて行っている。
【0121】
このため、実施の形態3の半導体装置の製造方法は、ステップST13において計測用レーザーパワーをモニタして製造用レーザーパワー(実照射レーザーパワー)を検証することにより、ステップST12のアニール工程が適切に行われているか否かを常時監視することができる。
【0122】
<その他>
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0123】
例えば、上述した基本技術、実施の形態では、半導体製造装置100~102が2つのレーザー発振器1及び2で構成される場合を示したが、3以上の複数のレーザー発振器で構成しても良い。この場合、3以上の複数のレーザー発振器から照射させる複数のレーザー光間で光軸を重ねて中間レーザー光を一時的に生成し、中間レーザー光を計測用レーザー光LMと製造用レーザー光LPとに分離する光分離技術を用いることになる。
【0124】
3以上の複数のレーザー光を照射することにより、2つのレーザー光の照射以上の熱量が生成できるため、3以上の複数のレーザー発振器を有する半導体製造装置はアニール効果をより高めることができる。
【0125】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0126】
(付記1)
第1のレーザー光を照射する第1のレーザー発振器と、
第2のレーザー光を照射する第2のレーザー発振器とを備え、前記第2のレーザー光は前記第1のレーザー光の照射から遅延時間の経過後に照射され、前記遅延時間は第1及び第2のレーザー光間で互いに影響を受けない長さに設定され、
前記第1及び第2のレーザー光を受け、前記第1及び第2のレーザー光間で光軸を重ねた中間レーザー光を生成し、前記中間レーザー光を計測用レーザー光と製造用レーザー光とに分離するスプリッタと、
前記計測用レーザー光を受け、前記計測用レーザー光のパワーである計測用レーザーパワーを計測するレーザー計測部材とをさらに備え、
前記計測用レーザー光と前記製造用レーザー光とは一定の比率で分離され、
前記製造用レーザー光は半導体装置の製造に用いられ、レーザー照射対象物に照射される、
半導体製造装置。
【0127】
(付記2)
付記1記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー計測部材は、
前記計測用レーザー光を受け、セラミックスを構成材料とする受光部と、
測温抵抗体を有し、前記計測用レーザー光を受光しないセンサー配置領域に設けられる温度センサーとを含み、
前記測温抵抗体は前記受光部の温度変化に伴い抵抗値が変化する、
半導体製造装置。
【0128】
(付記3)
付記1記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー計測部材は、
前記計測用レーザー光を受け、前記計測用レーザーパワーを直接計測する計測部を有するレーザー計測機器と、
前記レーザー計測機器を下方から支持する支持用治具とを含み、
前記支持用治具は前記計測部の配置高さを調整する高さ調整機能を有する、
半導体製造装置。
【0129】
(付記4)
付記3記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー計測部材は、
前記計測部による前記計測用レーザー光の受光を妨げることなく、前記レーザー計測機器及び前記支持用治具を収容する収容空間を有する金属製のカバー部材をさらに含む、
半導体製造装置。
【0130】
(付記5)
付記4記載の半導体製造装置であって、
前記計測部は前記計測用レーザー光を受ける平面構造の受光面を有し、
前記支持用治具は、
前記計測用レーザー光の反射光が前記カバー部材の前記収容空間内に収まるように、前記計測用レーザー光の照射方向と前記受光面の法線方向との間に有意な傾きを設けて前記レーザー計測機器を支持する、
半導体製造装置。
【0131】
(付記6)
付記1から付記5のいずれかに記載の半導体製造装置であって、
前記レーザー照射対象物を保持する対象物保持部材と、
前記製造用レーザー光を実照射レーザー光と補助計測用レーザー光とに分離する光分離部材とをさらに備え、
前記補助計測用レーザー光と前記実照射レーザー光とは一定の比率で分離され、
前記製造用レーザー光に含まれる前記実照射レーザー光が半導体装置の製造に用いられ、
前記レーザー照射対象物は前記実照射レーザー光を受光するように配置され、
前記半導体製造装置は、
前記補助計測用レーザー光を受け、前記補助計測用レーザー光のパワーである補助計測用レーザーパワーを計測する補助レーザー計測部材をさらに備える、
半導体製造装置。
【0132】
(付記7)
付記1から付記6のいずれかに記載の半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記レーザー照射対象物は半導体ウエハを含み、
(a) 前記半導体ウエハに不純物イオンを注入するステップと、
(b) 前記半導体製造装置を用い、前記半導体ウエハに前記製造用レーザー光を照射して、前記半導体ウエハに注入された不純物イオンを活性化するステップと、
(c) 前記ステップ(b)と並行して実行され、前記半導体製造装置を用い、前記レーザー計測部材によって計測された前記計測用レーザーパワーをモニタするステップとを備える、
半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0133】
1,2 レーザー発振器、3 スプリッタ、4 レーザー計測部材、5 チャンバー、6 PD、7 プロファイラー、8 パワーメータ計測部品群、11~16 ミラー、40 ダンパー、41 温度センサー、45 セラミック受光部、50 半導体ウエハ、60 レーザーパワーメータ、60a 計測部、62 支持用治具、65 アルミカバー、620 支持台、621 本体部、622 高さ調整つまみ、623 接続軸、LM 計測用レーザー光、LM2 計測用レーザー反射光、LP 製造用レーザー光、LSM 補助計測用レーザー光、RLP 実照射レーザー光。