(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172287
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】乗物シート用歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20241205BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20241205BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20241205BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20241205BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20241205BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H1/16 Z
F16C17/04 Z
B60N2/16
B60N2/90
A47C7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089895
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 将士
【テーマコード(参考)】
3B087
3J009
3J011
3J027
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BA16
3B087DE10
3J009DA17
3J009EA03
3J009EA19
3J009EB22
3J009EB24
3J009FA03
3J011AA01
3J011BA09
3J011KA03
3J011PA02
3J011RA03
3J027FA19
3J027FA36
3J027FB01
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD09
3J027GD13
3J027GE01
3J027GE05
3J027GE14
3J027GE25
3J027GE27
(57)【要約】
【課題】 歯車装置において、部品点数の削減及び小型化が可能な歯車装置の一例を開示する。
【解決手段】 歯車装置5は、歯車ケーシング7にウォームホィール12が回転中心軸線方向に変位することを規制する第1規制部71B及び第2規制部72Dが設けられ、当該第1規制部71B及び第2規制部72Dは、ウォームホィール12と滑り接触可能である。これにより、当該歯車装置5では、遊星歯車装置の保持器(「キャリア」ともいう。)に相当する部品が存在しない構成となる。したがって歯車装置5の部品点数削減及び小型化が可能となり得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートの可動部に回転力を伝達する歯車装置において、
第1歯車と一体的に回転する回転体であって、当該第1歯車と同軸線上に配置された回転体と、
前記第1歯車と噛み合って回転する第2歯車であって、当該第1歯車の回転中心軸線と平行な回転中心軸線を有する第2歯車と、
前記第2歯車と同軸線上に配置され、当該第2歯車と一体的に回転する第3歯車と、
前記第1歯車と同軸線上に配置され、前記第3歯車と噛み合って回転する第4歯車と、
前記回転体、前記第1~第4歯車を収納する歯車ケーシングと、
前記歯車ケーシングに設けられ、前記回転体が回転中心軸線方向に変位することを規制する規制部であって、当該回転体と滑り接触可能な規制部と
を備える乗物シート用歯車装置。
【請求項2】
前記歯車ケーシングは、前記回転体側を覆うケーシング本体、及び前記第4歯車側を覆うケーシングカバーを有して構成されており、
前記規制部は、前記ケーシング本体及び前記ケーシングカバーそれぞれに設けられていること特徴とする請求項1に記載の乗物シート用歯車装置。
【請求項3】
前記ケーシング本体には、前記ケーシングカバーが前記第1歯車の回転中心軸線を中心として回転することを規制する回転規制部が設けられている請求項2に記載の乗物シート用歯車装置。
【請求項4】
前記第2歯車と前記第3歯車との間に設けられ、凹凸の無い円周面を有する円柱部と、
前記歯車ケーシングに設けられ、前記円柱部を挟んで前記第1歯車と反対側から当該円柱部の円周面に滑り接触する滑り軸受部と
を備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載の乗物シート用歯車装置。
【請求項5】
前記第3歯車を挟んで前記円柱部と反対側に設けられたボス部と、
前記歯車ケーシングに設けられ、前記ボス部の円周面全域と滑り接触可能な第2の滑り軸受部と
を備える請求項4に記載の乗物シート用歯車装置。
【請求項6】
前記回転体は、ウォームと噛み合うウォームホィールであり、
当該ウォームホィールの側面には、当該ウォームホィールの歯幅方向に陥没した凹部が設けられており、
前記凹部の底部に前記規制部と滑り接触する被接触部が設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の乗物シート用歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートの可動部に回転力を伝達する歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の遊星歯車装置では、太陽歯車を有する回転体、ギヤ収容部に固定された内歯歯車、ギヤ収容部に収容され、太陽歯車と内歯歯車とに噛合され、太陽歯車の周りを自転しながら公転する遊星歯車、ギヤ収容部に略収容され、遊星歯車を支持する支持軸と前記支持筒部に回転可能に支持されて遊星歯車の公転と共に回転する出力軸とを有するキャリア部材、並びにギヤ収容部の開口部を閉塞するハウジングカバーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、乗物シート用歯車装置において、部品点数の削減及び小型化が可能な歯車装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物用シートの可動部に回転力を伝達する歯車装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、第1歯車(13)と一体的に回転する回転体(12)であって、当該第1歯車(13)と同軸線上に配置された回転体(12)と、第1歯車(13)と噛み合って回転する第2歯車(14)であって、当該第1歯車(13)の回転中心軸線(Lo)と平行な回転中心軸線(L1)を有する第2歯車(14)と、第2歯車(14)と同軸線上に配置され、当該第2歯車(14)と一体的に回転する第3歯車(15)と、第1歯車(13)と同軸線上に配置され、第3歯車(15)と噛み合って回転する第4歯車(16)と、回転体(12)、第1~第4歯車(13~16)を収納する歯車ケーシング(7)と、歯車ケーシング(7)に設けられ、回転体(12)が回転中心軸線方向に変位することを規制する規制部(71B、72D)であって、当該回転体(12)と滑り接触可能な規制部(71B、72D)とである。
【0006】
これにより、当該乗物シート用歯車装置では、遊星歯車装置の保持器(「キャリア」ともいう。)に相当する部品が存在しない構成となる。したがって、乗物シート用歯車装置の部品点数削減及び小型化が可能となり得る。
【0007】
なお、当該乗物シート用歯車装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、歯車ケーシング(7)は、回転体(12)側を覆うケーシング本体(71)、及び第4歯車(16)側を覆うケーシングカバー(72)を有して構成されており、規制部(71B、72D)は、ケーシング本体(71)及びケーシングカバー(72)それぞれに設けられていることが望ましい。
【0008】
ケーシング本体(71)には、ケーシングカバー(72)が第1歯車(13)の回転中心軸線(Lo)を中心として回転することを規制する回転規制部(71C)が設けられていることが望ましい。
【0009】
当該乗物シート用歯車装置は、第2歯車(14)と第3歯車(15)との間に設けられ、凹凸の無い円周面を有する円柱部(14C)と、歯車ケーシング(7)に設けられ、円柱部(14C)を挟んで第1歯車(13)と反対側から当該円柱部(14C)の円周面に滑り接触する滑り軸受部(72B)とを備えることが望ましい。これにより、第2歯車(14)及び第3歯車(15)の姿勢及び位置を適切な位置に保持でき得る。
【0010】
上記の構成においては、第3歯車(15)を挟んで円柱部(14C)と反対側に設けられたボス部(15A)と、歯車ケーシング(7)に設けられ、ボス部(15A)の円周面全域と滑り接触可能な第2の滑り軸受部(72C)とを備えることが望ましい。これにより、第2歯車(14)及び第3歯車(15)の姿勢及び位置を適切な位置に確実に保持でき得る。
【0011】
さらに、当該乗物シート用歯車装置に係る回転体は、ウォーム(11)と噛み合うウォームホィール(12)であり、当該ウォームホィール(12)の側面には、当該ウォームホィール(12)の歯幅方向に陥没した凹部(12A)が設けられており、凹部(12A)の底部に規制部(72D)と滑り接触する被接触部(12C)が設けられていることが望ましい。これにより、物シート用歯車装置の小型化が可能となり得る。
【0012】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電動アクチュエータを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る電動アクチュエータの分解図である。
【
図3】第1実施形態に係る歯車機構の分解図である。
【
図4】第1実施形態に係る歯車装置の構造を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る第1歯車及び第4歯車を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るケーシングカバーを示す図である。
【
図7】第1実施形態に係るウォームホィールを示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る第2歯車及び第3歯車を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る歯車装置の構造を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係るケーシング本体を示す図である。
【
図11】第1実施形態に係るウォームホィールを示す図である。
【
図12】第1実施形態に係るケーシング本体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0015】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る乗物シート用歯車装置(以下、歯車装置と記す。)が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0016】
したがって、当該歯車装置は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0017】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された歯車装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0018】
(第1実施形態)
<1.歯車装置の概要>
本実施形態に係る歯車装置は、
図1に示される電動アクチュエータ1に適用されたものである。当該電動アクチュエータ1は、電動モータ3と歯車装置5とが一体となったものである。電動モータ3は、回転力を発生する駆動源である。
【0019】
本実施形態に係る歯車装置5は、減速機を構成している。そして、歯車装置5は、乗物用シートの可動部に電動モータ3の回転力を減速して伝達する。なお、乗物用シートの可動部とは、例えば、シート本体を昇降変位させるリフターリンクやシートクッションの前端側を昇降させるチルトアーム等である。
【0020】
<2.歯車装置の概略構成>
歯車装置5は、
図2に示されるように、歯車ケーシング7及び歯車機構10等を備えて構成されている。歯車ケーシング7は、歯車機構10を収納するケーシングである。なお、電動モータ3は、ボルト(図示せず。)にて歯車ケーシング7に固定されている。
【0021】
歯車ケーシング7は、ケーシング本体71及びケーシングカバー72等を少なくとも有する。ケーシング本体71とケーシングカバー72とは、複数(本実施形態では、3本)のボルト(図示せず。)により互いに締結固定されている。
【0022】
<2.1 歯車機構の構成>
歯車機構10は、
図3に示されるように、ウォーム11、ウォームホィール12、第1歯車13、第2歯車14、第3歯車15及び第4歯車16等を少なくとも有して構成されている。
【0023】
ウォーム11は、電動モータ3の出力軸3A(
図2参照)に固定された雄ねじ状の歯車である。ウォームホィール12は、ウォーム11と噛み合って回転する回転体の一例である。なお、ウォームホィール12は、歯筋方向が回転中心軸線Loに対して傾いたヘリカル歯車にて構成されている。
【0024】
第1歯車13は、ウォームホィール12と同軸線上に配置され、当該ウォームホィール12と一体的に回転する歯車である。なお、第1歯車13とウォームホィール12とは、セレーション又はスプライン等の係合部13Aを介して連結されている。
【0025】
第2歯車14は、第1歯車13と噛み合って回転する歯車であって、当該第1歯車13の回転中心軸線Loと平行な回転中心軸線L1を有する。なお、本実施形態では、複数の第2歯車14が設けられ、かつ、それらの第2歯車14が軌道円So上に等しい間隔で配置されている。
【0026】
軌道円So(
図7参照)とは、第1歯車13の回転中心軸線Loと第2歯車14の回転中心軸線L1との距離R(
図4参照)を半径とし、第1歯車13の回転中心軸線Loを中心とする仮想円をいう。つまり、軌道円Soは、複数の第2歯車14の回転中心軸線L1を通る仮想円である。
【0027】
第3歯車15は、
図3に示されるように、第2歯車14と同軸線上に配置され、当該第2歯車14と一体的に回転する歯車である。このため、第3歯車15は、第2歯車14と同数個設けられている。なお、本実施形態では、第2歯車14と第3歯車15とは、樹脂製の一体品である。
【0028】
第4歯車16は、第1歯車13と同軸線上に配置され、各第3歯車15と噛み合って回転する歯車である。なお、第4歯車16には、当該第4歯車16と同軸線上に配置された出力歯車17が一体化されている。
【0029】
<2.2 各歯車の支持構造>
<第1歯車及び第4歯車等について>
図4に示されるように、ケーシング本体71は、ウォームホィール12側を覆う。ケーシングカバー72は、第4歯車16側を覆う。つまり、歯車機構10は、ケーシング本体71とケーシングカバー72とにより、回転中心軸線Lから挟み込まれている。
【0030】
第1歯車13と係合部13Aとは、
図5に示されるように、金属製の一体品である。当該一体品の回転中心軸線方向一端部には、円柱状に窪んだ凹部13Bが設けられている。当該凹部13Bには、
図4に示されるように、ボス部71Aが嵌り込んでいる。
【0031】
ボス部71Aは、ケーシング本体71に設けられ、ウォームホィール12側に突出した円柱又は円筒状の突起部である。そして、ボス部71Aの外周面と凹部13Bの内周面とが滑り接触することにより、ウォームホィール12及び第1歯車13が回転可能に支持される。
【0032】
つまり、ボス部71Aは、ウォームホィール12及び第1歯車13を回転可能に支持する滑りラジアル軸受部を構成する。なお、ラジアル軸受とは、回転中心軸線Loと直交する方向の変位を規制する軸受をいう。滑り軸受とは、転動体を有していない軸受である。
【0033】
図5に示されるように、第1歯車13と係合部13Aとの一体品の回転中心軸線方向他端部(
図5では、左端部)には、ボス部13Cが設けられている。ボス部13Cは、第4歯車16側に突出した円柱又は円筒状の突起部である。
【0034】
第4歯車16のうち第1歯車13側に位置する端部には、円柱状に窪んだ凹部16Aが設けられている。当該凹部16Aには、
図4に示されるように、ボス部13Cが嵌り込んでいる。
【0035】
そして、ボス部13Cの外周面と凹部16Aの内周面との間には、円筒部を有するブッシング16Cが配置されている。ブッシング16Cは滑りラジアル軸受を構成する。このため、第1歯車13と第4歯車16とは、互いに独立して回転することができる。
【0036】
ブッシング16Cに設けられた鍔状のフランジ部16Dは、第1歯車13と第4歯車16との間に位置して、滑りスラスト軸受部を構成する。このため、第4歯車16と第1歯車13及び複数の第2歯車14とが接触してしまうことが防止される。
【0037】
図5に示されるように、第4歯車16と出力歯車17との間には、円柱部16Bが設けられている。円柱部16Bは、凹凸の無い円周面を有する部位である。なお、円柱部16Bは、第4歯車16及び出力歯車17との一体品である。
【0038】
ケーシングカバー72には、
図6に示されるように、円柱部16Bが貫通可能な貫通穴72Aが設けられている。貫通穴72Aの内周面は、
図4に示されるように、円柱部16Bに滑り可能に接触している。つまり、貫通穴72Aの内周面は、第4歯車16及び出力歯車17との一体品を回転可能に支持する滑りラジアル軸受部を構成する。
【0039】
そして、第1歯車13と係合部13Aとの一体品と、第4歯車16と出力歯車17との一体品とは、ブッシング16Cを介して連結されている。このため、ウォームホィール12、第1歯車13、第4歯車16及び出力歯車17は、歯車ケーシング7に回転可能に支持された構成となる。
【0040】
<第2歯車及び第3歯車等について>
図4に示されるように、各第2歯車14のウォームホィール12側の端部には、ボス部14Aが設けられている。各ボス部14Aは、各第2歯車14の回転中心軸線方向端部からウォームホィール12側に突出した突起状の軸部である。
【0041】
各第2歯車14の軸端面14B(
図8参照)、つまり各ボス部14Aの先端面は、
図7に示されるスラスト軸受部18(二点鎖線の斜線部分)の外周側に滑り接触する。当該スラスト軸受部18は、各第2歯車14が回転中心軸線方向に変位することを規制する。
【0042】
すなわち、スラスト軸受部18は、ウォームホィール12との一体品としてウォームホィール12に設けられ、当該ウォームホィール12と共に回転する部分である。具体的には、ウォームホィール12の側面には、当該ウォームホィール12の歯幅方向に陥没した凹部12Aが設けられている。
【0043】
そして、スラスト軸受部18は、凹部12Aの底部に設けられている。当該スラスト軸受部18は、各軸端面14Bのうち予め決められた境界部(本実施形態では、軌道円So)に対して第1歯車13側の領域にて各軸端面14Bに滑り接触する。
【0044】
具体的には、スラスト軸受部18は、凹部12Aの底面から各第2歯車14側に突出した環状(ドーナッツ状)の隆起部により構成されている。このため、スラスト軸受部18は、各軸端面14Bのうち軌道円Soより第1歯車13側の領域、つまりスラスト軸受部18の円周外縁部より内側にて当該軸端面14Bに滑り接触する。
【0045】
図8に示されるように、各第2歯車14と各第3歯車15との間には、円柱部14Cが設けられている。円柱部14Cは、凹凸の無い円周面を有する円柱又は円筒状の部位である。第3歯車15を挟んで円柱部14Cと反対側には、ボス部15Aが設けられている。
【0046】
ボス部15Aは、凹凸の無い円周面を有する円柱又は円筒状の部位である。なお、本実施形態では、第2歯車14、第3歯車15、円柱部14C及びボス部15Aは、樹脂製にて一体成形された一体品である。
【0047】
そして、ケーシングカバー72には、
図6に示されるように、円柱部14Cと同数の第1滑りラジアル軸受部72Bが設けられている。各第1滑りラジアル軸受部72Bは、
図4及び
図9に示されるように、対応する円柱部14Cを挟んで第1歯車13と反対側から当該円柱部14Cの円周面に滑り接触する。
【0048】
つまり、各第1滑りラジアル軸受部72Bは、軌道円Soの直径方向外側から各円柱部14Cの円周面に滑り接触し、各円柱部14Cが当該直径方向外側に変位することを規制するラジアル軸受として機能する。
【0049】
さらに、ケーシングカバー72には、
図6に示されるように、ボス部15Aが嵌り込み可能な第2滑りラジアル軸受部72Cが当該ボス部15Aと同数設けられている。各第2滑りラジアル軸受部72Cは、対応するボス部15Aの円周面全域と滑り接触する。
【0050】
これにより、第2歯車14と第3歯車15との一体品は、ボス部15A及び円柱部14Cにより回転中心軸線L1と直交する方向が位置決めされる。さらに、当該一体品は、ボス部15Aの先端部が第2滑りラジアル軸受部72Cの底部に滑り接触し、かつ、ボス部14Aの軸端面14Bがスラスト軸受部18に滑り接触することにより、回転中心軸線L1方向が位置決めされる。
【0051】
<ウォームホィール等について>
歯車ケーシング7には、
図4に示されるように、第1規制部71B及び第2規制部72D設けられている。第1規制部71B及び第2規制部72Dは、ウォームホィール12が回転中心軸線方向に変位することを規制する滑りスラスト部を構成する。
【0052】
すなわち、第1規制部71Bは、
図10に示されるように、ケーシング本体71に設けられた環状の突条である。当該第1規制部71Bは、ケーシング本体71の内壁面からウォームホィール12側に突出している。そして、第1規制部71Bの先端がウォームホィール12の環状溝部12B(
図11参照)に滑り接触する。
【0053】
第2規制部72Dは、
図6に示されるように、ケーシングカバー72に設けられている。本実施形態に係る第2規制部72Dは、複数の円弧状の部分(
図6の斜線部)により構成されている。なお、複数の円弧状の部分、つまり複数の第2規制部72Dは、仮想円S1上に位置する。
【0054】
そして、第2規制部72Dは、
図7に示されるように、凹部12Aの底部に設けられた環状の被接触部12Cに滑り接触する。これにより、ウォームホィール12は、第1規制部71B及び第2規制部72Dにより挟まれた状態となるため、当該ウォームホィール12の回転中心軸線方向の変位が規制される。
【0055】
また、ケーシング本体71には、ケーシングカバー72に設けられた少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の凸部72E(
図9参照)が、嵌り込み可能な凹部71C(
図12参照)が凸部72Eと同数設けられている。
【0056】
各凹部71Cは、ケーシングカバー72が第1歯車13の回転中心軸線Loを中心として回転することを規制する回転規制部を構成する部位である。つまり、各凸部72Eが、対応する凹部71Cに嵌り込んだ状態では、ケーシングカバー72は、ケーシング本体71に対して回転不可な状態となる。
【0057】
<3.本実施形態に係る歯車装置の特徴>
本実施形態に係る歯車装置5では、
図9に示されるように、ウォームホィール12の回転の向きD1と第2歯車14の向きD2とが反対向きとなる。つまり、ウォームホィール12に設けられたスラスト軸受部18に対する第2歯車14の軸端面14Bの相対速度は、当該軸端面14Bの部位によって異なる。
【0058】
すなわち、巨視的に観察すると、第2歯車14の回転中心軸線L1より第1歯車13側の領域においては、上記相対速度が概ね小さくなるのに対して、第2歯車14の回転中心軸線より外方側の領域においては、上記相対速度が概ね大きくなる。
【0059】
したがって、当該歯車装置5のごとく、軸端面14Bのうち予め決められた境界部に対して第1歯車13側の領域にてスラスト軸受部18が当該軸端面14Bに滑り接触する構成であれば、軸端面14B全域でスラスト軸受部が滑り接触する構成に比べて回転抵抗が小さくなり得る。
【0060】
スラスト軸受部18は、軸端面14Bのうち軌道円Soより第1歯車13側の領域にて当該軸端面14Bに滑り接触する。つまり、当該歯車装置5では、上記境界部が軌道円Soと一致している。これにより、軸端面14B全域でスラスト軸受部が滑り接触する構成に比べて回転抵抗が確実に小さくなり得る。
【0061】
歯車ケーシング7には、円柱部14Cを挟んで第1歯車13と反対側から当該円柱部14Cの円周面に滑り接触する滑りラジアル軸受部72Bが設けられている。これにより、第2歯車14の傾きが抑制されながら、歯車装置5の大型化が抑制され得るとともに、第2歯車14及び第3歯車15の姿勢及び位置を適切な位置に保持でき得る。
【0062】
歯車ケーシング7には、ボス部15Aの円周面全域と滑り接触可能な第2滑りラジアル軸受部72Cが設けられている。これにより、確実に、第2歯車14の傾きが抑制されながら、歯車装置5の大型化が抑制され得るとともに、第2歯車14及び第3歯車15の姿勢及び位置を適切な位置に確実に保持でき得る。
【0063】
さらに、当該歯車装置5では、ウォームホィール12の側面に設けられた凹部12Aの底部にスラスト軸受部18が設けられている。これにより、歯車装置5の大型化が抑制され得る。
【0064】
当該歯車装置5では、歯車ケーシング7にウォームホィール12が回転中心軸線方向に変位することを規制する第1規制部71B及び第2規制部72Dが設けられ、当該第1規制部71B及び第2規制部72Dは、ウォームホィール12と滑り接触可能である。
【0065】
これにより、当該歯車装置5では、遊星歯車装置の保持器(「キャリア」ともいう。)に相当する部品が存在しない構成となる。したがって歯車装置5の部品点数削減及び小型化が可能となり得る。
【0066】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、スラスト軸受部18は、軸端面14Bのうち軌道円Soより第1歯車13側の領域にて当該軸端面14Bに滑り接触する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、境界部が軌道円Soの外周外縁部以外であってもよい。
【0067】
上述の実施形態に係るスラスト軸受部18は、円盤状であった(
図7参照)しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、リング状に構成されたスラスト軸受部18であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、複数の第2歯車14が軌道円So上に等間隔で配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2歯車14が1つの構成であってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、歯車ケーシング7に円柱部14Cを挟んで第1歯車13と反対側から当該円柱部14Cの円周面に滑り接触する滑りラジアル軸受部72Bが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0070】
上述の実施形態では、歯車ケーシング7にボス部15Aの円周面全域と滑り接触可能な第2滑りラジアル軸受部72Cが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2滑りラジアル軸受部72Cが廃止されて構成であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、ウォームホィール12の側面に設けられた凹部12Aの底部にスラスト軸受部18が設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、凹部12Aが廃止されたウォームホィール12であってもよい。
【0072】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0073】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1… 電動アクチュエータ 3…電動モータ 3A… 出力軸
5… 歯車装置 7…歯車ケーシング 10… 歯車機構
11… ウォーム 12…ウォームホィール 12A… 凹部
12B… 環状溝部 12C…被接触部 13… 第1歯車
13A… 係合部 13B…凹部 13C… ボス部 14… 第2歯車
14A… ボス部 14B…軸端面 14C… 円柱部 15… 第3歯車
15A… ボス部 16…第4歯車 16A… 凹部 16B…円柱部
16C… ブッシング 17…出力歯車 18… スラスト軸受部
71… ケーシング本体 71A…ボス部 71B… 第1規制部
71C… 凹部 72…ケーシングカバー 72A… 貫通穴
72B… ラジアル軸受部 72C…ラジアル軸受部 72D… 第2規制部
72E… 凸部