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  • 特開-乗物用シート 図1
  • 特開-乗物用シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172288
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20241205BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
B60N2/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089896
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】隈部 明信
(72)【発明者】
【氏名】水野 健一
【テーマコード(参考)】
3B087
3K058
【Fターム(参考)】
3B087DE08
3K058AA42
3K058BA01
3K058CA04
3K058CA32
(57)【要約】
【課題】 正確な断線判断を行うことが可能な乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 制御部は、電流値の変化率の絶対値が第1閾値以下となった状態、つまり電流値が安定した状態になったときに第2判断機能が実行される。したがって、必要にして十分な時間が経過したときに、断線判断が実行され得る。延いては、断線判断に要する時間が過度に長くなることが抑制されるとともに、安価な電流検出部3Bであっても断線判断の正確性が過度に低下することが抑制され得る。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
シート本体に設けられた複数の電気ヒータであって、電源に対して電気的に並列接続された複数の電気ヒータと、
前記複数の電気ヒータに供給される電流の合計値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された検出値の変化率の絶対値が予め決められた第1閾値以下であるか否かを判断する第1判断部と、
前記第1判断部により前記検出値の変化率の絶対値が前記第1閾値以下であると判断され、かつ、前記検出値が予め決められた第2閾値以下である場合に、前記複数の電気ヒータのうち少なくとも1つが断線した判断する第2判断部と
を備える乗物用シート。
【請求項2】
前記第1判断部及び前記第2判断部の判断作動は、前記複数の電気ヒータへの通電開始後、予め決められたタイミングで実行され、
さらに、前記第1判断部及び前記第2判断部の判断作動は、前記複数の電気ヒータへの通電が終了したときに停止する
請求項1に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の電気ヒータを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、複数の電気ヒータへの通電が開始された時から所定時間が経過した時の通電電流値(以下、比較値という。)と閾値とを比較することにより、いずれかの電気ヒータが断線したか否かを判断(以下、断線判断という。)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-8415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正確な断線判断を行うには、上記の所定時間を十分に長い時間とした場合の通電電流値を比較値とすることが望ましい。
つまり、上記の所定時間が短い場合には、電気ヒータの温度特性バラツキ、通電時の雰囲気温度や通電開始時の電気ヒータの温度等の影響が大きく反映されるため、正確な断線判断を行うことが難しい。本開示は、当該点に鑑みた乗物用シートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物に搭載される乗物用シートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、シート本体に設けられた複数の電気ヒータ(2A、2B)であって、電源に対して電気的に並列接続された複数の電気ヒータ(2A、2B)と、複数の電気ヒータ(2A、2B)に供給される電流の合計値を検出する電流検出部(3B)と、電流検出部(3B)により検出された検出値の変化率の絶対値が予め決められた第1閾値以下であるか否かを判断する第1判断部と、第1判断部により検出値の変化率の絶対値が第1閾値以下であると判断され、かつ、検出値が予め決められた第2閾値以下である場合に、複数の電気ヒータ(2A、2B)のうち少なくとも1つが断線した判断する第2判断部とである。
【0006】
これにより、当該乗物用シートでは、必要にして十分な時間が経過したときに、断線判断が実行され得る。したがって、断線判断に要する時間が過度に長くなることが抑制されるとともに、安価な電流検出部(3B)であっても断線判断の正確性が過度に低下することが抑制され得る。
【0007】
なお、当該乗物用シートは、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、第1判断部及び第2判断部の判断作動は、複数の電気ヒータ(2A、2B)への通電開始後、予め決められたタイミングで実行され、さらに、第1判断部及び第2判断部の判断作動は、複数の電気ヒータ(2A、2B)への通電が終了したときに停止することが望ましい。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電気ヒータを含むブロック図である。
図2】電気ヒータの通電電流値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシートに本開示に係る乗物用シートが適用された例である。少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。さらに、本開示に係る乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された構成要素、並びに図示された構成要素のうち少なくとも1つを備える。
【0012】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
乗物用シート1は、図1に示されるように、複数(本実施形態では、2つ)の電気ヒータ2A、2B、及び制御装置3等を少なくとも備えて構成されている。2つの電気ヒータ2A、2Bは、電源に対して電気的に並列接続された発熱負荷である。
【0013】
電気ヒータ2A、2Bは、シート本体(図示せず。)に設けられている。シート本体とは、少なくともシートクッションを有する。シートクッションは、着席者の臀部を支持する部位である。なお、本実施形態に乗物用シート1は、シートバックも有する。
【0014】
シートバックは、着席者の背部を支持する部位である。つまり、電気ヒータ2A、2Bは、シートクッション及びシートバックのうち少なくとも一方に埋設されたヒータ線により構成されている。
【0015】
制御装置3は、電気ヒータ2A、2Bへの通電制御機能及び断線判断機能を実行可能なコントローラである。当該制御装置3は、スイッチング素子3A、電流検出部3B及び制御部3C等を有して構成されている。
【0016】
スイッチング素子3Aは、電気ヒータ2A、2Bへの通電回路を開閉する。なお、本実施形態に係るスイッチング素子3Aは、FETにて構成されている。なお、スイッチング素子3Aのオン・オフは、制御部3Cにより制御される。つまり、制御装置3は、スイッチング素子3Aをオン又はオフとすることにより、通電制御機能を実行する。
【0017】
電流検出部3Bは、複数の電気ヒータ2A、2Bに供給される電流の合計値を検出する。つまり、電流検出部3Bは、上記通電回路のうち通電電流の分岐部より電源側、又は上記通電回路のうち通電電流の合流部より接地側にて電流値を検出する。
【0018】
制御部3Cは、CPU、ROM及びRAM等の有するマイクロコンピュータ式の制御部である。そして、制御部3Cは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されたソフトウェアに従って通電制御機能及び断線判断機能を実行する。
【0019】
<2.断線判断機能の詳細>
断線判断機能は、電気ヒータ2A、2Bのいずれかが断線したか否かを検知するための機能である。当該断線判断機能は、第1判断機能を実行する第1判断部、及び第2判断機能を実行する第2判断部により実現される。
【0020】
なお、本実施形態では、制御部3C、つまりCPUにてソフトウェアが実行されることにより第1判断部及び第2判断部が実現されている。つまり、第1判断機能及び第2判断機能は、ソフトウェアが、制御部3Cにて実行されることにより実現される。
【0021】
<第1判断機能>
第1判断機能は、電流検出部3Bにより検出された検出値(以下、電流値という。)の変化率の絶対値が予め決められた第1閾値以下であるか否かを判断する機能である。
【0022】
つまり、スイッチング素子3Aがオンされると、図2に示されるように、電流値は、急激に上昇した後、次第に低下していく。その後、電流値の変化率の絶対値が小さくなり、電流値が特定の値で安定する。
【0023】
そこで、本実施形態では、第1閾値として、電流値が安定したみなすことが可能な状態時における電流値の変化率の絶対値が選択されている。つまり、電流値の変化率の絶対値が第1閾値以下となった状態とは、電流値が安定したとみなすことが可能な状態である。
【0024】
<第2判断機能>
第2判断機能とは、第1判断機能により電流値の変化率の絶対値が第1閾値以下であると判断され、かつ、電流値が予め決められた第2閾値以下である場合に、電気ヒータ2A、2Bのうち少なくとも1つが断線した判断する機能である。
【0025】
第2閾値は、いずれの電気ヒータ2A、2Bも断線していない場合において、電流値が安定したときの電流値より小さい値である。したがって、電流値が安定したときの電流値が第2閾値以下である場合には、電気ヒータ2A、2Bのうちいずれかの電気ヒータが断線したとみなすことができる。
【0026】
そして、第1判断機能及び第2判断機能、つまり断線判断機能は、電気ヒータ2A、2Bへの通電開始後、予め決められたタイミングで実行される。そして、断線判断機能は、電気ヒータ2A、2Bへの通電が終了したときに停止する。
【0027】
なお、電気ヒータ2A、2Bのうちいずれかの電気ヒータが断線したと判断された場合には、制御部3Cは、スイッチング素子3Aをオフとして、電気ヒータ2A、2Bへの通電を停止する。
【0028】
<3.本実施形態に係る乗物用シート(特に、断線判断機能)の特徴>
本実施形態に係る乗物用シート1では、電流値の変化率の絶対値が第1閾値以下となった状態、つまり電流値が安定したとみなすことが可能な状態となったときに第2判断機能が実行される。
【0029】
したがって、必要にして十分な時間が経過したときに、断線判断が実行され得る。延いては、断線判断に要する時間が過度に長くなることが抑制されるとともに、安価な電流検出部3Bであっても断線判断の正確性が過度に低下することが抑制され得る。
【0030】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、予め決められたタイミング毎に、第1判断機能及び第2判断機能が実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、本開示は、例えば、電気ヒータ2A、2Bへの通電開始後、電流値の変化率の絶対値が第1閾値以下であると判断された以降は、第2判断機能のみが実行される構成であってもよい。
【0031】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0032】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1… 乗物用シート
2A… 電気ヒータ
3… 制御装置
3A… スイッチング素子
3B… 電流検出部
3C… 制御部
図1
図2