(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172296
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、電子部品の製造方法および積層体
(51)【国際特許分類】
C01B 21/064 20060101AFI20241205BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20241205BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20241205BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20241205BHJP
【FI】
C01B21/064 M
B32B7/06
B32B3/14
C01B32/194
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089911
(22)【出願日】2023-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月9日にKyoto-Zhejiang-Ajou Joint Symposium on Energy Scienceにて発表 〔刊行物等〕 令和4年12月9日にKyoto-Zhejiang-Ajou Joint Symposium on Energy Science Abstract第30頁にて公開 〔刊行物等〕 令和5年3月1日に第64回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウムにて発表 〔刊行物等〕 令和5年3月1日に第64回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム講演要旨集、第52頁にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】523205061
【氏名又は名称】村瀬 大騎
(74)【代理人】
【識別番号】100219069
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋岡 浩明
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 大騎
【テーマコード(参考)】
4F100
4G146
【Fターム(参考)】
4F100AA37
4F100AA37B
4F100AB11
4F100AB11C
4F100AB15
4F100AB15A
4F100AB16
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4F100AK15
4F100AK15C
4F100AR00A
4F100AR00B
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4F100BA02
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4F100DC21A
4F100EC04
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4F100EC04B
4F100EH46
4F100EJ15
4F100EJ17
4F100EJ52
4F100JK06
4F100JL14
4F100JL14A
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD28
4G146CB01
4G146CB11
(57)【要約】
【課題】 大面積で高品質な二次元材料同士の積層体を安定して製造する。
【解決手段】 本開示の積層体の製造方法は、表面に結合部および非結合部を有する剥離部材と、原子膜を含むバルク材と、を準備する工程と、前記剥離部材の前記結合部及び前記非結合部と、前記バルク材と、を接触させる工程と、前記バルク材から前記原子膜を剥離する工程と、前記原子膜のうち前記非結合部上に位置する部分を、二次元材料基体に直接転写する工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に結合部および非結合部を有する剥離部材と、原子膜を含むバルク材と、を準備する工程と、
前記剥離部材の前記結合部及び前記非結合部と、前記バルク材と、を接触させる工程と、
前記バルク材から前記原子膜を剥離する工程と、
前記原子膜のうち前記非結合部上に位置する部分を、二次元材料基体に直接転写する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記剥離部材は、前記表面に複数の孔部または凹部を有するメッシュ状の部材である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記孔部または前記凹部は、内側に支持体を有する、請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記原子膜のうち前記非結合部上に位置する部分は、前記二次元材料基体との間の結合力よりも、前記支持体との間の結合力の方が小さい、請求項3に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記剥離部材は、金、銀、プラチナ、銅コバルトまたはニッケルからなる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記転写する工程において、前記原子膜のうち前記非結合部上に位置する部分は、前記二次元材料基体に転写されない、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記二次元材料基体は、転写部材上に樹脂材料で固定されている、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料は、ポリ塩化ビニルからなる、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記二次元材料基体と前記樹脂材料との結合力よりも、前記二次元材料基体と前記剥離部材との結合力の方が小さい、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記転写する工程において、前記原子膜のうち前記非結合部上に位置する部分は、前記樹脂材料に接触しない、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記転写する工程において、エッチングを使用しない、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記剥離する工程の後に、電子線またはフォトリソグラフィにより原子膜を加工する工程を含まない、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記転写する工程において転写された前記原子膜は、表面粗さが1000ピコメートル以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法
【請求項14】
前記転写部分の面積は250平方マイクロメートルより大きい、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
前記原子膜は、遷移金属ダイカルコゲナイドまたはグラフェンからなる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
前記二次元材料基体は、六方晶窒化ホウ素からなる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
前記剥離部材は、複数の前記非結合部を有し、
前記転写する工程において、前記原子膜は、複数の前記非結合部上に位置する部分を有し、
前記複数の前記非結合部上に位置する部分が、一つの前記二次元材料基体に転写される、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
前記複数の転写部分が転写された前記二次元材料基体を分割する工程を更に含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項19】
前記転写する工程において、前記転写部分は、前記二次元材料基体の表面に対して垂直に押圧され、垂直に引きはがされる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項20】
前記転写する工程の後、前記原子膜とは異なる第2の原子膜を、前記二次元材料基体上に転写された前記原子膜の表面に直接転写する工程と、を更に含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項21】
前記転写する工程の後、前記二次元材料基体とは異なる第2の二次元材料基体を用意し、前記第2の二次元材料基体に、前記二次元材料基体上に転写された前記原子膜を直接転写する工程と、を更に含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の製造方法により製造された前記積層体上に電極を形成する工程と、を更に含む、電子部品の製造方法
【請求項23】
二次元材料基体と、前記二次元材料基体の表面に直接的に位置する原子膜と、を備えており、前記原子膜は、250平方マイクロメートルより大きい積層体。
【請求項24】
前記原子膜は、クラックを有しない、請求項23に記載の積層体。
【請求項25】
前記原子膜は、レジストが付着していない、請求項23または請求項24に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェンシート、六方晶窒化ホウ素(hBN)または遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)等の二次元材料の積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子膜の積層体の製造方法として、例えば、化学気相成長法(CVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、液相エピタキシー法(LPE)等が知られている。一方、これらの製法は、成長条件によって原子が規則的に配列しないおそれがあり、二次元材料そのものの品質に課題があった。また、ケミカルエッチングやウェット転写などの転写工程から、二次元材料の品質が低下し、高品質化が困難である等のデメリットがあった。
【0003】
これらの課題を解決する別の手法として、例えば特許文献1(特開2022-137690)には、ジメチルポリシロキサン等の剥離基材を用いて対象材料の高品質な層状バルク体(単結晶層状バルク材)から二次元材料からなる原子膜を剥離し、転写基板に転写する方法(以下、SAP法ともいう)が開示されている。しかしながら、ジメチルポリシロキサンを用いた原子膜の剥離方法には原子膜の吸着力に課題があり、また、その吸着力に起因した、得られる原子膜の面積が小さいといった課題があり、近年、高品質でより大面積、かつ安定した収率で原子膜を剥離する方法が求められている。更に、剥離した原子膜を、ダメージを与えることなく二次元材料基体に転写する方法が求められていた。そして、産業応用などの社会実装を見据えた際には、これまでの製造方法では、原子膜を得た後に、得られた原子膜リソグラフィ技術等により形状をデザインするため、その工程から原子膜表面にレジストなどの有機不純物やウェット工程から水などのコンタミネーションを起因とした電気特性や発行特性の低下に繋がっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、二次元材料の積層体の製造方法として、高品質で大面積な原子膜を安定してバルクから剥離し、異なる二次元材料基体に転写する方法が求められていた。また、得られた原子膜の形状をデザインする際に、表面にレジストなどの付着を起因とした材料特性の低下を抑制する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層体の製造方法は、
表面に結合部および非結合部を有する剥離部材と、原子膜を含むバルク材と、を準備する工程と、
前記剥離部材の前記結合部及び前記非結合部と、前記バルク材と、を接触させる工程と、
前記バルク材から原子膜を剥離する工程と、
前記原子膜のうち前記非結合部上に位置する部分を、二次元材料基体に直接転写する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の積層体の製造方法によれば、高品質で大面積な原子膜を安定してバルクから剥離し、二次元材料基体に転写することができ、高品質な二次元材料の積層体を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態における積層体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本開示の一実施形態における積層体の製造方法のうちの工程の一例を示す断面図である。
【
図14】
図14(A)は、本開示の一実施形態における剥離部材の一例を示す断面図である。
図14(B)は、本開示の一実施形態における剥離部材の他の例を示す断面図である。
図14(C)は、本開示の一実施形態における剥離部材の他の例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、本開示の一実施形態における製造方法を用いて製造された電子部品を示す断面図である。
【
図16】
図16(A)は、実施例1の剥離工程において剥離された原子層を示すPLマッピング像である。
図16(B)は、実施例1により得られた積層体の光学顕微鏡像である。
図16(C)は、実施例1により得られた積層体のラマンスペクトルである。
図16(D)は、実施例1により得られた積層体のPLスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(積層体の製造方法)
本開示の積層体100の製造方法は、
図1に示すように、表面に結合部11および非結合部12を有する剥離部材1と、原子膜3を含むバルク材2と、を準備する工程(準備工程S10)と、前記剥離部材1の前記結合部11及び前記非結合部12と、前記バルク材2と、を接触させる工程(接触工程S20)と、前記バルク材2から原子膜3を剥離する工程(剥離工程S30)と、前記原子膜3のうち前記非結合部12上に位置する部分(転写部31)を、二次元材料基体4に直接、転写する工程(転写工程S40)と、を含む。更に任意でその他の工程を含んでいてもよい。
【0010】
<準備工程S10>
準備工程S10は、
図2および
図8に示すように、表面に結合部11および非結合部12を有する剥離部材1と、バルク材2と、を準備する工程である。なお、
図2から
図7に対応する断面図が
図8から
図13である。分かりやすさのためにx方向、y方向、z方向を規定しているが、本開示の発明の実施態様を限定するものではない。
【0011】
-剥離部材1-
剥離部材1は、バルク材2から原子膜3を剥離するための部材である。剥離部材1の形状は、例えば板状または膜状である。剥離部材1の材質は、バルク材2から原子膜3を物理的に剥離できる基材を適宜選択することができる。剥離部材1の材質は、例えば、金属基材、絶縁性基材または樹脂基材であってもよいし、これらを組み合わせてもよい。剥離部材1の材質は、例えば、金、銀、プラチナ、銅、コバルトまたはニッケルであってもよい。剥離部材1の平均厚みは、例えば50nmから1mmであるが、その厚みは適宜選択することができる。
【0012】
-結合部11、非結合部12-
剥離部材1は、表面に結合部11および非結合部12を有する。結合部11は、原子膜3に対する結合力が非結合部12よりも大きい部分である。つまり、結合部11と原子膜3との結合力は、非結合部12と原子膜3との結合力よりも大きい。剥離部材1が結合部11を有することにより、後述する剥離工程S30において、バルク材2から原子膜3を剥離することができる。また、剥離部材1が非結合部12を有することにより、後述する転写工程S40において、原子膜3のうち非結合部12上に位置する部分(転写部31)を、二次元材料基体4に転写することができる。剥離部材1は、結合部11および非結合部12を、それぞれ複数有していてもよい。結合部11は、例えば面積が2500平方マイクロメートルから30000平方ミリメートルであってもよい。非結合部12は、例えば面積が1平方ナノメートルから10000平方マイクロメートルであってもよい。剥離部材1は、表面に複数の非結合部12を有していてもよい。
【0013】
-複数の孔部または凹部-
剥離部材1は、
図14に示すように、表面に複数の孔部または凹部を有するメッシュ状の部材であってもよい。
図14(A)は、複数の孔部を有する剥離部材1を示しており、
図14(B)は、複数の凹部を有する剥離部材1を示している。この場合、複数の孔部または凹部が非結合部12であり、複数の孔部または凹部以外の部位が結合部11である。1つの非結合部12の寸法は、例えば面積が700平方マイクロメートルであってもよい。また、複数の非結合部12は、例えば酸化処理等によって剥離部材1の表面が化学的に改質された部位であってもよい。また、剥離部材1は、結合部11と非結合部12とが別の材質であってもよい。
【0014】
剥離部材1は、パターニングによって、表面に複数の孔部または凹部が形成されていてもよい。このとき、表面に開口した孔部または凹部を、表面に位置する非結合部12とみなすことができる。具体的にはシリコン等の基板上にレジスト塗布後、電子線リソグラフィやフォトリソグラフィ技術を用いて、メッシュを作製し、剥離部材1とすることができる。ここで、表面に複数の孔部または凹部を形成することができればよく、リソグラフィ技術に制限されるものではない。例えば、ドライエッチング(RIE, Reactive ion etching)技術やメタルマスクを用いて金属を蒸着(スパッタリング)する技術等により、表面に複数の孔部または凹部を有するメッシュ状の剥離部材1を作製してもよい。
【0015】
-支持体7-
剥離部材1は、非結合部12に支持体7が埋まっていてもよい。これにより、剥離部材1のハンドリング性の向上や、原子膜3のクラック等の抑制が期待される。剥離部材1は、
図14(C)に示すように、凹部または孔部に支持体7が充填されていてもよい。このとき、表面に開口した孔部または凹部に充填された支持体7を、剥離部材1の表面に位置する非結合部12とみなすことができる。支持体7は、例えばポリプロピレンカーボネートまたはポリカーボネート等の樹脂からなる材料であってもよい。支持体7は、薄膜状または板状の部材であってもよい。支持体7は、結合部11と後述の二次元材料基体4との間の結合力よりも、支持体7と二次元材料基体4の間の結合力の方が小さければよい。剥離部材1は、凹部または孔部に支持体7が埋まった部位と、埋まっていない部位を有していてもよい。
【0016】
-バルク材2-
バルク材2は、二次元材料である原子膜3を含む部材である。バルク材2は、複数の原子膜3が積層された多層原層であってもよい。バルク材2は、層状のバルク結晶であってもよい。バルク材2は、例えば、グラフェン、MoS2(二硫化モリブデン)、MoSe2(セレン化モリブデン)、WS2(二硫化タングステン)、WSe2(セレン化タングステン)等の遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)または六方晶窒化ホウ素(hBN)であってもよい。バルク材2の面積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100平方マイクロメートル以上であってもよい。バルク材2は、たとえば複数の原子膜3を含んでいてもよい。バルク材2は、例えば2層以上100層以下の原子膜3を含んでいてもよい。
【0017】
-原子膜3-
原子膜3は、バルク材2から剥離される二次元材料である。原子膜3は、例えば原子1つ分の厚みを持つ膜状の部材である。原子膜3は、バルク材2から剥離される部材であり、バルク材2と同じ材料からなる。原子膜3は、例えば、グラフェン、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)、六方晶窒化ホウ素(hBN)であってもよい。
【0018】
原子膜3は、例えば1層から20層の二次元材料であってもよい。また、原子膜3は、例えば1層から5層の二次元材料であってもよい。また、原子膜3は、例えば1層(単層、単原子層)の二次元材料であってもよい。原子膜3における二次元(平行)方向に対する層数の分布としては、均一な化学特性および光学特性を得る事ことができる点から、特定の層数が均一に分布することが好ましいが、層数の幅を持って分布していてもよい。特に、光学基礎学術研究分野では、直接遷移型のバンド構造を持つ、単層の遷移金属ダイカルコゲナイドが求められ、エレクトロニクス分野では、キャリア密度の観点から1から5層の遷移金属ダイカルコゲナイドが求められる。そのほかにも、グラフェンでいえば、特許文献1のようにインターカラントを二層のグラフェンに挿入することで、2.5次元材料と呼ばれる分野での研究も進展しており、その目的に応じて、原子膜3の層数を適宜選択してもよい。原子膜3の層数は、例えば、内部圧力や剥離スピード、加熱温度、加熱時間等を調整することによって、制御される。原子膜3の層数同定方法としては、例えば、光学顕微鏡像よりバックグラウンドの物質とのコントラストの差に基づいて測定する方法、原子間力顕微鏡像により原子膜3の厚み(例えば、単層(1層)あたりの厚み約0.34ナノメートル)から算出する方法、ラマン分光法により算出する方法、フォトルミネッセンス(PL)測定によりそのピーク位置や発光強度から同定する方法等がある。
【0019】
<接触工程S20>
接触工程S20は、
図3および
図9に示すように、剥離部材1の結合部11及び非結合部12と、バルク材2と、を接触させる工程である。剥離部材1が複数の結合部11を有する場合は、複数の結合部11とバルク材2とが接触されてもよい。剥離部材1とバルク材2とが接触する際に、外力を加えることで剥離部材1とバルク材2とが押圧されてもよい。剥離部材1とバルク材2とが接触する際に、温度条件を変化させることにより、熱応力を加えることで剥離部材1とバルク材2とが押圧されてもよい。この時の温度は、例えば0℃から250℃の間であってもよく、100℃から150℃であってもよい。
【0020】
<剥離工程S30>
剥離工程S30は、
図4および
図10に示すように、バルク材2から原子膜3を剥離する工程である。剥離工程S30は、接触工程S20により接触した状態の剥離部材1とバルク材2とを、例えば物理的に引き離すことにより行われてもよい。剥離工程S30により、バルク材2から原子膜3が剥離され、剥離部材1の表面の結合部11と非結合部12とに原子膜3を付着させることができる。剥離工程S30は、剥離部材1と原子膜3との間の相関力(例えば吸着や結合等)により、剥離部材1の表面の結合部11と非結合部12とに原子膜3を付着させることができる。
【0021】
ここで、原子膜3のうち非結合部12上に位置する部分を転写部31ともいう。また、原子膜3のうち結合部11上に位置する部分を非転写部32ともいう。転写部31の形状、寸法は、非結合部12の形状、寸法によって制御することができる。転写部31の面積は、例えば250平方マイクロメートル以上であってもよし、例えば700平方マイクロメートル以上であってもよい。
【0022】
<転写工程S40>
転写工程S40は、
図5から
図7および
図11から
図13に示すように、原子膜3のうち非結合部12上に位置する部分(転写部31)を、二次元材料基体4に直接、転写する工程である。転写工程S40は、例えば、剥離工程S30によりバルク材2から剥離された原子膜3を二次元材料基体4に接触させ、その後に剥離部材1を二次元材料基体4から引き離す工程を含んでいてもよい。このときに、二次元材料基体4と原子膜3との間の相関力(吸着や結合等)により、転写部31が直接的に二次元材料基体4に転写される。言い換えると、転写部31は、樹脂製接着材またはその他の中間層を介することなく、二次元材料基体4に転写される。その結果、二次元材料基体4と転写部31との積層体100(二次元材料同士の積層体100)を製造することができる。
【0023】
-二次元材料基体4-
二次元材料基体4は、二次元材料からなる基体である。二次元材料基体4は、原子膜3とは異なる二次元材料を含んでいてもよい。二次元材料基体4は、例えばグラフェン、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)または六方晶窒化ホウ素(hBN)であってもよい。二次元材料基体4は、例えば1層から20層の二次元材料であってもよい。また、二次元材料基体4は、例えば1層から5層の二次元材料であってもよい。また、二次元材料基体4は、例えば1層(単層、単原子層)の二次元材料であってもよい。
【0024】
-載置台5-
二次元材料基体4は、載置台5上に樹脂材料6を介して載置されていてもよい。載置台5は、例えばガラス板材または両面接着材等の部材である。樹脂材料6は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのアクリル樹脂を有していてもよい。樹脂材料6は、二次元材料基体4と樹脂材料6との結合力よりも、二次元材料基体4と剥離部材1との結合力の方が小さくなるような材料であってもよい。これにより、転写工程S40において、二次元材料基体4が樹脂材料6から剥がれてしまい、剥離部材1に転写されてしまうおそれを低減することができる。樹脂材料6は、載置台5上において、例えばフラット状またはドーム状に載置されていてもよい。また、樹脂材料6は例えば50℃から150℃に加熱した状態で用いられていてもよい。
【0025】
転写工程S40は、原子膜3を二次元材料基体4に転写しやすくするために、載置台5を加熱または冷却する工程を更に含んでいてもよい。この場合の加熱温度は、実施例に限定されるものではなく、二次元材料基体4の載置台5上への固定を維持もしくは解除するための適切な温度において、部材に応じて適宜選択することができる。転写工程S40において、非転写部32は、二次元材料基体4に転写されてなくてもよい。つまり、転写工程S40において、転写部31だけが二次元材料基体4に転写されていてもよい。
【0026】
転写工程S40において、転写部31は樹脂材料6に接触していなくてもよい。これにより、原子膜3に樹脂材料6との接触に起因する不純物が付着するおそれを低減することができる。積層体100に欠陥等が生じるおそれを低減できる。
【0027】
この転写工程S40で、載置台5に配置された二次元材料基体4の表面に対して、原子膜3の転写部31が垂直に押圧され、垂直に引きはがされてもよい。これにより、転写工程S40において原子膜3に対する歪みを抑制することができ、より高品質な状態で転写が可能となる。
【0028】
<効果>
本開示の製造方法により、二次元材料基体4と、前記二次元材料基体4の表面に直接的に位置する原子膜3と、を備えた積層体100を製造することができる。原子膜3は、剥離部材1の非結合部12の大きさによってコントロールすることができ、例えば、250平方マイクロメートルより大きくすることができる。SAP法などのトップダウン型の作製手法により所望な形状にデザインされたこのような二次元材料同士の積層体は、発明者の知り得た限りは存在していない。更に、本開示の方法により製造された積層体100は、CVD等の手法により製造された積層体100のように成長条件によって原子が規則的に配列しないおそれがなく、品質が安定している。加えて、原子膜3を剥離した後に電子線またはフォトリソグラフィにより加工する工程を含まないため、レジストなどの有機不純物に起因する不純物が原子膜3に付着していない。加えて、転写工程S40において、ケミカルエッチングまたはウェット転写などの転写工程S40を含まないため、レジスト等の有機不純物が付着しにくく、欠陥、クラック等が生じにくい。また、工程中に水やアセトン等の有機溶媒による洗浄を必要としない(ドライ転写である)ため、表面に水などの不純物の少ない原子膜3を得ることができる。このように、本開示の製造方法によれば、高品質で大面積な原子膜3を安定してバルクから剥離し、二次元材料基体4に転写することができる。
【0029】
<他の実施形態>
転写する工程の後、二次元材料基体4に転写した原子膜3とは異なる第2の原子膜を、二次元材料基体4上に転写された原子膜3の表面に直接転写する工程を更に含んでいてもよい。例えば、異種または同種の別の原子膜を用意し、この第2の原子膜に先ほどの二次元材料基体4を再び、二次元材料基体4の表面に対して垂直に押圧後、引き剥がす工程を繰り返すことで、原子膜の積層数を増やしてもよい。これにより、3以上の異なる二次元材料を含む積層体を製造することができる。
【0030】
また、転写する工程の後、原子膜3を転写した二次元材料基体4とは異なる、第2の二次元材料基体を用意し、二次元材料基体4上に転写された原子膜3を第2の二次元材料基体に直接転写する工程を更に含んでいてもよい。ここで、第2の二次元材料基体は、元の二次元材料基体4と同じ材料でもよく、異なる材料であってもよい。これにより、二次元材料基体4と第2の二次元材料基体とに原子膜3が挟まれた積層体100を製造することができる。
【0031】
また、剥離部材1は複数の非結合部12を有し、原子膜3は複数の非結合部12上に位置する部分(複数の転写部31)を有しており、転写工程S40において、複数の転写部31が、一つの二次元材料基体4に転写されていてもよい。これにより、複数の積層された部分を有する積層体100を製造することができる。またこの時に、複数の転写部31が転写された二次元材料基体4を分割する工程を更に含んでいてもよい。これにより、複数の高品質な積層体100を安定して得ることができる。
【0032】
また、
図15に示すように、本開示の製造方法により製造された積層体100上に電極8を形成することで、高品質な二次元材料の積層体100を用いた集積デバイスまたはトランジスタ等の電子部品200を製造することができる。
【0033】
(実施例1)
以下に、実施例に基づいて開示の積層体100の製造方法、及び積層体100をより具体的に説明する。但し、本開示の発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0034】
準備工程S10において、剥離部材1は、厚みが100ナノメートル、一辺が500マイクロメートル、面積が250,000平方マイクロメートルの金薄膜を使用した。剥離部材1の準備工程S10として、1センチメートル角の酸化膜シリコン基板に、スピンコートにより、レジスト塗布後、電子線リソグラフィ技術を用いて、金をパターニングして、100平方マイクロメートルの複数の非結合部12となる孔部を作成し、金メッシュとした。
【0035】
バルク材2は、TMDの一種であるMoSe2とし、Chemical vapor transport technique(CVT法)により形成された単結晶層状バルク材2を使用した。バルク材2は、厚みが2ミリメートル、面積が30平方ミリメートルのものを使用した。その後、ポリカーボネートをスピンコートし、100℃で2分間加熱した。その後、ポリイミドテープをその上から被せ、剥がすことで、金メッシュとした。この時に、非結合部12にはスピンコートによりポリカーボネートが塗布され、孔部には支持体7が充填された。
【0036】
次に、剥離部材1とバルク材2とを接触させた。この時に、剥離部材1の表面の結合部11および非結合部12の両方にバルク材2の表面が接触させた。更に、剥離部材1とバルク材2とを接触させた状態で、ホットプレートにて130℃で2分間加熱した。剥離部材1とバルク材2とを室温に戻した後、剥離部材1とバルク材2とを引き離すことで、バルク材2から単層の原子膜3Aを剥離することができた。
【0037】
次に、剥離した単層の原子膜3Aを、二次元材料基体4に転写した。二次元材料基体4として六方晶窒化ホウ素(hBN)を使用した。また、載置台5は樹脂材料6を有しており、その樹脂材料6はポリ塩化ビニル(PVC)を用いた。70℃の樹脂材料6に固定された二次元材料基体4を、剥離工程S30で作製した金メッシュ上の原子膜3Aに、二次元材料基体4に対して垂直に押圧し、その後引き剥がすことで、転写部31に位置していた原子膜3Aが二次元材料基体4に転写された。
【0038】
その後、別の二次元材料基体の六方晶窒化ホウ素に対して130℃で押圧後、ゆっくりと引き剥がすことで、樹脂材料6に固定されていた六方晶窒化ホウ素(hBN)および転写された原子膜3Aが、新たに用意した六方晶窒化ホウ素(hBN)に固定され、樹脂材料6から引き離された。以上のプロセスにより、二次元材料同士の積層体100Aを得た。
【0039】
(実施例2)
準備工程S10において、剥離部材1は、厚みが100ナノメートル、一辺が500マイクロメートル、面積が250000平方マイクロメートルの金薄膜を使用した。剥離部材1の準備工程S10として、1センチメートル角の酸化膜シリコン基板に、スピンコートにより、レジスト塗布後、電子線リソグラフィ技術を用いて、金をパターニングして、直径30マイクロメートルの円上の複数の非結合部12となる孔部を作成した。
その後、ポリカーボネートをスピンコートし、100℃2分間加熱した。その後、ポリイミドテープをその上から被せ、剥がすことで、金メッシュとした。
【0040】
準備工程S10において、バルク材2は、TMDの一種であるMoS2とし、Chemical vapor transport technique(CVT法)により形成された単結晶層状バルク材2を使用した。バルク材2は、厚みが1ミリメートル、面積が20平方ミリメートルのものを使用した。
【0041】
次に、剥離部材1とバルク材2とを接触させた。この時に、剥離部材1の表面の結合部11および非結合部12の両方にバルク材2の表面が接触させた。更に、剥離部材1とバルク材2とを接触させた状態で、ホットプレートにて130℃で2分間加熱した。剥離部材1とバルク材2とを室温に戻した後、剥離部材1とバルク材2とを引き離すことで、バルク材2から単層の原子膜3Bを剥離することができた。
【0042】
次に、剥離した単層の原子膜3Bを、二次元材料基体4に転写した。二次元材料基体4として六方晶窒化ホウ素(hBN)を使用した。また、載置台5は樹脂材料6を有しており、その樹脂材料6はポリ塩化ビニル(PVC)を用いた。70℃の樹脂材料6に固定された二次元材料基体4を、剥離工程S30で作製した金メッシュ上の原子膜3Bに、二次元材料基体4に対して垂直に押圧し、その後引き剥がすことで、転写部31に位置していた原子膜3Bが二次元材料基体4に転写された。以上のプロセスにより、二次元材料同士の積層体100Bを得た。
【0043】
上記の実施例1により製造した積層体100A、積層体100Aに含まれる原子膜3A、実施例2により製造した積層体100B、および積層体100Bに含まれる原子膜3Bを以下の手法により評価した。
【0044】
<フォトルミネッセンス測定>
積層前の原子膜3Aおよび原子膜3Bは、室温でMoSe2およびMoS2からの発光が観察された。これは、特許文献1のSAP法で転写された単層MoSe2およびMoS2と同程度のそれぞれの発光強度および同位置のピーク位置であった。また、発光ピークの半値全幅(FWHM:Full width half maximum)も積層体100と特許文献1のSAP法で作製された単層MoSe2およびMoS2で同程度であった。
図16(A)は、積層前の原子膜3Aのフォトルミネッセンス(PL)マッピング像を示している。これにより、剥離部材1の表面に剥離された単層MoSe2からの発光を確認することができた。
【0045】
また、積層体100Aおよび積層体100Bは、室温環境下でそれぞれ含有する原子膜3Aおよび原子膜3Bに由来するMoSe2およびMoS2からの発光が観察された。これは、特許文献1のSAP法で転写された単層MoSe2およびMoS2と室温環境下で同程度のそれぞれの発光強度および同位置ピーク位置であった。また、発光ピークの半値全幅(FWHM:Full width half maximum)も、積層体100Aおよび積層体100Bに含まれる原子膜3Aおよび原子膜3Bと特許文献1のSAP法で作製された単層MoSe2およびMoS2とで同程度であった。
図16(D)は、積層体100Aのフォトルミネッセンススペクトルを示している。これにより、積層体100Aに含まれる原子膜3Aの、単層MoSe2に由来するスペクトルを確認することができた。
【0046】
また、積層体100Aおよび積層体100Bは、低温環境化(5K)でそれぞれ含有する原子膜3Aおよび原子膜3Bに由来するMoSe2およびMoS2からの発光が観察された。これは、特許文献1のSAP法で転写されたで単層MoSe2およびMoS2と低温環境化(5K)で同程度の発光強度および同位置のピーク位置であった。また、発光ピークの半値全幅(FWHM:Full width half maximum)も積層体100と特許文献1のSAP法で作製された単層MoSe2およびMoS2で同程度であった。
【0047】
<ラマン分光測定>
積層前の原子膜3Aおよび原子膜3Bは、室温環境下でMoSe2およびMoS2からのラマン信号が得られた。これは、特許文献1のSAP法で転写された単層MoSe2およびMoS2と同程度のラマン強度およびピーク位置であった。また、積層体100Aおよび積層体100Bも、室温環境下で原子膜3Aおよび原子膜Bに由来するMoSe2およびMoS2からのラマン信号が得られた。これは、特許文献1のSAP法で転写された単層MoSe2およびMoS2と同程度のラマン強度およびピーク位置であった。
図16(C)は、積層体100Aのラマンススペクトルを示している。これにより、積層体100Aに含まれる原子膜3Aの、単層MoSe2に由来するラマン信号を確認することができた。
【0048】
<光学顕微鏡像測定>
積層前の原子膜3Aおよび原子膜3Bを、室温環境で光学顕微鏡を用いて観察した。これは、特許文献1のSAP法で転写された単層MoSe2およびMoS2と同程度の、バックグラウンドの物質とのコントラストの差であった。また、積層体100Aおよび積層体100Bも、室温環境で光学顕微鏡を用いて観察した。これは、特許文献1のSAP法で転写された単層MoSe2およびMoS2と同程度の、バックグラウンドの物質とのコントラストの差であった。
図16(B)は、積層体100Aの光学顕微鏡像を示している。これにより、約10マイクロメートル角の単層MoSe2と六方晶窒化ホウ素(hBN)とを含む積層体100Aを確認することができた。また、当該顕微鏡像によると、単層MoSe2に明らかなクラックが存在しておらず、本開示の製造方法により、クラックを有しない二次元材料同士の積層体100Aを確認することができた。
【0049】
<AFM測定>
積層前の原子膜3Aおよび原子膜3Bの厚みを室温環境下で測定した。今回作製した原子膜3Aおよび原子膜3Bは単層であることが分かった。評価の結果、六方晶窒化ホウ素(hBN)に積層された原子膜3Aおよび原子膜3Bは、積層前の原子膜3Aおよび原子膜3BのAFM測定より、表面粗さが1000ピコメートル以下であり、積層後の積層体100においてクラックを有していなかった。
【0050】
上記の製法は、ケミカルエッチング工程を含まないため、原子膜3に付着する不純物や表面の凹凸を低減することができた。また、上記の製法は、原子膜3を剥離した後に電子線またはフォトリソグラフィにより加工する工程を含まないため、レジストなどの有機不純物に起因する不純物が原子膜3に付着していない。また、上記の製法は、水などを必要としない転写工程S40のため、これまでの製法でしばしば問題となっていた、水などの不純物が原子膜3に比較的付着していない。この比較的という表現は、ウェット転写工程S40と比較すると大きく差があるものの、空気中の水分量によって原子膜3表面への付着量が定まらないことを考慮すると、これは、大気中ではなく、グローブボックス中などにおいて環境下の水分量コントロールすることで、原子膜3表面の水分付着量も抑制できる。
【0051】
上記の実施例1により、100平方マイクロメートルで形状がデザインされた原子膜3Aが等間隔で複数並んだ積層体100Aを得るに至った。さらに、上記の実施例2により、700平方マイクロメートル以上で、かつクラックのない高品質な原子膜3Bの積層体100Bを得るに至った。
【0052】
本製法により、大面積で高品質な積層体100を安定して得られるに至ったが、原子膜3表面にレジストが付着せずに、自由なデザインの原子膜3が得られるという本製法の特徴を考えると、産業応用上の社会実装の際には、ナノメートルレベルでの金メッシュの加工も考えられ、それにより、ナノやマイクロメートルレベルでデザインされた原子膜3が作製されることも予想される。また、本製法により作製した積層体100の二次元材料基体4の一部をリソグラフィ技術とドライエッチング(RIE)などによって選択エッチングし、そこに金属スパッタリングや金属蒸着により、電極8を取り付けてもよいし、あらかじめ作製された電極8を積層体100へ更に転写することで電極8を取り付けてもよい。これにより、論理集積回路などの、電子部品200を作製することができる。ここで、電極8作製方法は適宜自由に選択し、二次元材料基体4などによって適した電極8作製方法を選択してもよい。
【0053】
(附記事項)
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0054】
1:剥離部材
11:結合部
12:非結合部
2:バルク材
3:原子膜
31:転写部
32:非転写部
4:二次元材料基体
5:載置台
6:樹脂材料
7:支持体
8:電極
100:積層体
200:電子部品
S10:準備工程
S20:接触工程
S30:剥離工程
S40:転写工程