(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172299
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20241205BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20241205BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/58
A61K8/891
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089917
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】為行 舞斗
(72)【発明者】
【氏名】石川 和宏
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB362
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD162
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりがない化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油、
(B)成分(A)以外の25℃で液状のエステル油、
(C)シリコーン系被膜形成剤、
(D)25℃で液状の不揮発性シリコーン油
を含有し、
成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(C)の質量割合(C)/((A)+(B))が、1.5以上である化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油、
(B)成分(A)以外の25℃で液状のエステル油、
(C)シリコーン系被膜形成剤、
(D)25℃で液状の不揮発性シリコーン油
を含有し、
成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(C)の質量割合(C)/((A)+(B))が、1.5以上である化粧料。
【請求項2】
成分(A)の含有量が0.01~8質量%、成分(B)の含有量が0.01~8質量%、成分(C)の含有量が0.1~24質量%、成分(D)の含有量が0.5~15質量%である請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
成分(B)が、ジエステル及びトリエステルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
油中水型乳化化粧料である請求項1~3のいずれか1項記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧持続性に優れ、均一な仕上がりが得られる化粧料が検討されている。
例えば、特許文献1には、アミノ酸又はN-アシル化アミノ酸で表面処理された着色顔料、特定のエステル油、皮膜形成剤を含有する油中水型乳化化粧料が、塗布し始めの筋ムラが抑制され、落屑が肌にあっても均一に仕上げることができ、経時でもよれが生じないことが記載されている。
特許文献2には、不揮発性のフェニル変性シリコーン、特定のエステル油、皮膜形成剤、疎水化処理された着色顔料を含有する油中水型乳化化粧料が、ツヤのある均一な仕上がりが得られ、塗布後の肌に、つっぱり感や粉感がなく、時間が経過しても、しわが目立たないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-147773号公報
【特許文献2】特開2020-186217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、従来の化粧料は、乾き際に塗膜感があるためにべたつきを感じ、その上に塗布するベースメイクが均一に塗布できないという課題があることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定のエステル油と、その他の液状エステル油、シリコーン系被膜形成剤、不揮発性シリコーン油を組合わせて用いることにより、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりがない化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油、
(B)成分(A)以外の25℃で液状のエステル油、
(C)シリコーン系被膜形成剤、
(D)25℃で液状の不揮発性シリコーン油
を含有し、
成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(C)の質量割合(C)/((A)+(B))が、1.5以上である化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料は、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりがないものである。また、リキッドファンデーションを重ね塗りしても、ムラ付きがない。
なお、塗布中の液膜感を感じることで、化粧料が肌に付着していることの実感につながり、この液膜感があることで、肌を直接擦る感覚が抑制され、塗布中の肌負担感を少なくすることができる。
また、乾き際に塗膜感を感じないことで、化粧料が肌に密着したことの実感につながり、この塗膜感がなくなることで、過度に肌を擦ることが抑制され、塗布後の肌負担感を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(A)のエステル油は、25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるものである。
25℃で液状とは、25℃において、流動性を有するもので、クリーム状やペースト状のものも含まれる。また、成分(A)の融点は、20℃以下が好ましい。
【0009】
成分(A)を構成する脂肪酸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれでも良く、塗布中に液膜感があり、乾き際には塗膜感を抑制する観点から、飽和脂肪酸が好ましく、直鎖脂肪酸又は分岐鎖脂肪酸がより好ましく、分岐鎖脂肪酸やヒドロキシ基を有する脂肪酸がさらに好ましい。
このような脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。また、上記飽和脂肪酸の中でも、炭素数16~28の飽和脂肪酸が好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられる。また、炭素数16~22の飽和脂肪酸がより好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0010】
成分(A)を構成するアルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールであり、なかでも、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、ジペンタエリスリトールが好ましい。
成分(A)としては、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして、例えば、(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル等が挙げられ、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして、例えば、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
成分(A)としては、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルがさらに好ましい。
【0011】
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては、サラコスWO-6(日清オイリオ社製)、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては、サラコスDP-518N(日清オイリオ社製)等の市販品を用いることができる。
また、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ペンタエリスリチルは、公知の方法に従って製造することができる。
さらに、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチルとしては、KAK PTI(高級アルコール工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0012】
成分(A)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、全組成中に0.01質量%以上であるのが好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.04質量%以上がさらに好ましく、8質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に0.01~8質量%であるのが好ましく、0.02~3質量%がより好ましく、0.04~1質量%がさらに好ましい。
【0013】
成分(B)は、成分(A)以外の25℃で液状のエステル油である。
成分(B)のエステル油としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油が挙げられる。
モノエステル油としては、炭素数2~24の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸のモノエステルが挙げられ、具体例としては、2-エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-ヘキシルデシルステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、イソデシルベンゾエート、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、安息香酸アルキル(C12~C15)、12-ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0014】
ジエステル油としては、炭素数3~18のジカルボン酸のジエステル、多価アルコールのジ脂肪酸エステル等が挙げられ、具体例としては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0015】
トリエステル油としては、3価以上の多価アルコールのトリ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、トリミリスチン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、オリーブ油、ホホバ油等が挙げられる。
【0016】
これらのうち、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、ジエステル油及びトリエステル油から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、トリエステル油がより好ましく、グリセリンとのトリ脂肪酸エステルがさらに好ましく、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルがよりさらに好ましい。
【0017】
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、全組成中に0.01質量%以上であるのが好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.04質量%以上がさらに好ましく、8質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、全組成中に0.01~8質量%であるのが好ましく、0.02~3質量%がより好ましく、0.04~1質量%がさらに好ましい。
【0018】
成分(C)のシリコーン系被膜形成剤としては、通常の化粧料に用いられるもので、トリメチルシロキシケイ酸、アクリルシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0019】
トリメチルシロキシケイ酸としては、シロキサン構造を主骨格とした架橋構造を持つ化合物で、[(CH3)3SiO1/2]S[SiO2]Tで表されるもの(Sは1~3、Tは0.5~8)が好ましい。
また、トリメチルシロキシケイ酸は、肌に化粧塗膜を形成する観点から、質量平均分子量が1000~10000のものが好ましく、2000~9000のものがより好ましく、3000~6000のものがさらに好ましい。
【0020】
また、その性状は、肌に化粧塗膜を形成する観点から、固体状であるのが好ましい。
トリメチルシロキシケイ酸は、固体の状態で配合することができるが、溶剤に溶解して使用することもできる。溶剤としては、シリコーン油、炭化水素油が挙げられ、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン(2cs)、ジメチルポリシロキサン(6cs)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカンから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
トリメチルシロキシケイ酸としては、化粧品表示名称「トリメチルシロキシケイ酸」(INCI名称「Trimethylsiloxysilicate」)が好ましく、SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BELSIL TMS 803 SILICONE RESIN(旭化成ワッカーシリコーン社製);予め溶剤に溶解させたKF-7312T(60質量%メチルトリメチコン溶液)、KF-7312L(50質量%ジメチルポリシロキサン(2cs)溶液)、KF-7312J(50質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KF-7312K(50質量%ジメチルポリシロキサン(6cs)溶液)(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0022】
アクリルシリコーン樹脂としては、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体、アクリル-シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。
カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体としては、シリコーンデンドリマー・アクリル共重合体等が挙げられ、例えば、特開平11―1530号公報、特開2000-63225号公報等に記載された製造方法に従って製造することができる。
本発明で用いられるカルボシロキサンデンドリマー構造を有するビニル系重合体の数平均分子量は、肌に化粧塗膜を形成する観点から、好ましくは、3,000~2,000,000であり、さらに好ましくは、5,000~800,000である。
また、その性状は、肌に化粧塗膜を形成する観点から、固体状であるのが好ましい。また、カルボシロキサンデンドリマー構造を有するビニル系重合体は、固体の状態で配合することができるが、溶剤に溶解して使用することもできる。溶剤としては、シリコーン油、炭化水素油が挙げられ、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカンから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体としては、シリコーンデンドリマー・アクリル共重合体が好ましく、化粧品表示名称「(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー」(INCI名称「Acrylates/Polytrimethylsiloxymethacrylate Copolymer」)が好ましく、予め溶剤に溶解させたFA4001CM(30質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、FA4002ID(40質量%イソドデカン溶液)(以上、東レ・ダウコーニング社製)等の市販品を用いることができる。
【0024】
アクリル-シリコーン系グラフト共重合体は、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物とアクリレート及び/又はメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマーとのラジカル重合体である。これは、例えば、特開平2-25411号公報、特開平2-132141号公報等に記載されているものや、特開平3-162442号公報、特開2003-104825号公報等に記載のアクリル-シリコーン系グラフト共重合体を使用することができる。
【0025】
アクリル-シリコーン系グラフト共重合体としては、化粧品表示名称「(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー」(INCI名称「Acrylates/Dimethicone Copolymer」)が好ましく、予め溶剤に溶解させたKP545(30質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KP549(40質量%メチルトリメチコン溶液)、KP550(40質量%イソドデカン溶液)(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0026】
成分(C)の被膜形成剤としては、肌に化粧塗膜を形成する観点から、トリメチルシロキシケイ酸から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましい。
【0027】
成分(C)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、肌に化粧塗膜を形成する観点から、全組成中に0.1質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、24質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に0.1~24質量%であるのが好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~4質量%がさらに好ましい。
【0028】
本発明において、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制し、リキッドファンデーションを重ね塗りしても、ムラ付きを抑制する観点から、成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(C)の質量割合(C)/((A)+(B))は、1.5以上であり、1.8以上が好ましく、2以上がより好ましく、50以下が好ましく、35以下がより好ましく、25以下がさらに好ましい。また、成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(C)の質量割合(C)/((A)+(B))は、1.5~50であるのが好ましく、1.8~35がより好ましく、2~25がさらに好ましい。
【0029】
成分(D)の不揮発性シリコーン油において、不揮発性とは、引火点を有さない、もしくは、89℃以上の引火点を有するものである。
25℃で液状については、成分(A)、(B)と同様である。
成分(D)の不揮発性のシリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルシクロポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のメチルフェニルポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
これらのうち、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0030】
成分(D)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布中に液膜感があり、乾き際には、塗膜感がなく、乾いた後の肌触りに引っ掛かりを抑制する観点から、全組成中に0.5質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。また、成分(D)の含有量は、全組成中に0.5~15質量%であるのが好ましく、1~10質量%がより好ましく、3~7質量%がさらに好ましい。
【0031】
本発明の化粧料は、さらに、揮発性油を含有することができる。
揮発性とは、35~88℃の引火点を有するものである。
揮発性油としては、揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油が挙げられる。
揮発性シリコーン油としては、例えば、オクタメチルトリシロキサン(1cs)、デカメチルテトラシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0032】
揮発性炭化水素油としては、例えば、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等のパラフィン系炭化水素油;イソデカン、イソドデカン、水添ポリイソブテン等のイソパラフィン系炭化水素油;シクロデカン、シクロドデカン等の環状パラフィン炭化水素油が挙げられる。これらのうち、炭素数8~16の炭化水素油が好ましく、炭素数10~16の炭化水素油がより好ましく、炭素数12の炭化水素油がさらに好ましい。
【0033】
揮発性油としては、成分(C)シリコーン系被膜形成剤の分散・溶解性に優れ、乾き際の塗膜感を抑制する観点から、揮発性シリコーン油が好ましく、ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
【0034】
揮発性油は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、成分(C)シリコーン系被膜形成剤の分散・溶解性に優れ、乾き際の塗膜感を抑制する観点から、全組成中に5質量%以上であるのが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。また、揮発性油の含有量は、全組成中に5~50質量%であるのが好ましく、15~45質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。
【0035】
本発明の化粧料は、さらに、粉体を含有することができる。
粉体としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を用いることができる。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、さらに、カーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられ、これらの着色顔料の複合体、これらの着色顔料とパール顔料とを組み合わせた複合顔料などが挙げられる。処理されるパール顔料としては、例えば、雲母、金雲母、タルク、シリカ、セリサイト、ガラス、カオリン、オキシ塩化ビスマス、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、板状アルミナ粉末等の天然又は合成の無機粉体が挙げられる。複合顔料の具体例としては、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆合成金雲母、酸化クロム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン内包ガラス末、酸化鉄内包ガラス末等が挙げられる。
これらのうち、金属酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましい。
【0036】
体質顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、セリサイト、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、ガラス末、金雲母、窒化ホウ素、カオリン、クレー、ベントナイト、ヘクトライト、ゼオライト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機体質顔料及びこれらの複合粉体などが挙げられる。
【0037】
光輝性顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、タルク、ガラス、シリカ、アルミナ等の板状粉体等の表面を、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、酸化スズ、水酸化クロム、金、銀、カルミン、有機顔料等の着色剤で被覆したものなど、及びポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミ蒸着末、ポリエチレンテレフタレート・金蒸着積層末などの、フィルム原反を任意形状に断裁したものなどを用いることができる。
さらに、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、ナイロンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、シリコーンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、セルロースパウダー、デンプン粉末、ポリフッ化エチレン等の有機粉体;シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機粉体;ラウロイルリジン等のアシル化リジン粉体;高級脂肪酸金属塩である金属石鹸粉体などを用いることができる。
【0038】
粉体は、そのまま用いられるほか、通常の方法により、疎水化処理したものを用いることもできる。
疎水化処理としては、例えば、ジメチコン等のシリコーン処理、アルキル処理、トリエトキシカプリリルシラン等のアルキルシラン処理、金属石鹸処理、水溶性高分子処理、アミノ酸処理、アシル化アミノ酸処理、レシチン処理、有機チタネート処理、ポリオール処理、アクリル樹脂処理、メタクリ樹脂処理、ウレタン樹脂処理等の表面処理が挙げられる。中でも、シリコーン処理、アルキルシラン処理が好ましい。
【0039】
粉体は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、肌を綺麗に見せる化粧感を維持しつつ、リキッドファンデーションを重ね塗りしても、ムラ付きを抑制する観点から、全組成中に0.1質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。また、粉体の含有量は、全組成中に0.1~30質量%であるのが好ましく、1~25質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明の化粧料は、さらに、非イオン性界面活性剤を含有することができる。
非イオン性界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば良く、例えば、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンや、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等のポリエーテル変性シリコーン;ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル変性ポリエーテル変性シリコーン、アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
これらのうち、乳化安定性に優れ、塗布中に液膜感のある使用感が得られる観点から、ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましい。
【0041】
また、非イオン性界面活性剤は、乳化安定性に優れ、塗布中に液膜感のある使用感が得られる観点から、HLB2以上7以下であるのが好ましく、HLB3以上6以下がより好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lipophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。また、2種以上の非イオン性界面活性剤から構成される場合、混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各非イオン性界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、非イオン性界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン性界面活性剤Xの質量(g)を示す。
【0042】
非イオン性界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、モノイソステアリン酸ソルビタンとしては、スパン120-LQ(HLB4.7)(クローダ社製)等;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体としては、KF-6015(HLB4.5)、KF-6017(HLB4.5)、KF-6028(HLB4)(以上、信越化学工業社製)、SH3775M(HLB5)(東レ・ダウコーニング社製)等;ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体としては、KF-6012(HLB7)(信越化学工業社製)、DOWSIL BY 22-008 M(HLB2)、DOWSIL BY 25-337(HLB3)、DOWSIL ES-5226(HLB2)、DOWSIL ES-5227(HLB2)(以上、東レ・ダウコーニング社製)等;アルキル変性ポリエーテル変性シリコーンとしては、KF-6038(HLB3)(信越化学工業社製)、ABIL EM 90(HLB5)(エボニック社製)等が挙げられる。
【0043】
非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、使用性に優れ、塗布中に液膜感のある使用感が得られる観点から、全組成中に0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、非イオン性界面活性剤の含有量は、全組成中に0.01~5質量%であるのが好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.3~2質量%がさらに好ましい。
【0044】
本発明の化化粧料において、水の含有量は、使用性に優れ、塗布中に液膜感のある使用感が得られる観点から、全組成中に10質量%以上であるのが好ましく、20質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、52質量%以下がさらに好ましい。また、水の含有量は、全組成中に10~60質量%であるのが好ましく、20~55質量%がより好ましく、35~52質量%がさらに好ましい。
【0045】
本発明の化粧料は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油成分、前記以外の高分子化合物、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤、エタノール等を含有することができる。
【0046】
本発明の化粧料は、油中水型乳化化粧料として適用するのが好ましく、通常の方法に従って製造することができる。
本発明の化粧料は、例えば、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料などとして適用することができる。なかでも、メイクアップ化粧料、さらに、化粧下地、ファンデーションとして好適である。
【実施例0047】
実施例1~7及び比較例1~4
表1に示す組成の油中水型乳化化粧料(下地化粧料)を製造し、塗布中の液膜感、乾き際の塗膜感のなさ、乾いた後の肌触りの引っ掛かりのなさ、重ね塗りしたリキッドファンデーションのムラ付きのなさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0048】
(製法)
粉体成分を混合粉砕し、別途混合した成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含む油相成分に添加してディスパーで分散した。その後、水相成分を添加し、ディスパーで分散後、ホモミキサーで撹拌することにより、油中水型乳化化粧料(下地化粧料)を得た。
【0049】
(評価方法)
(1)塗布中の液膜感:
各油中水型乳化化粧料を指先に取り、顔に塗布している最中に感じる液膜感を、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
4;塗布中に、液膜感を感じる。
3:塗布中に、液膜感をやや感じる。
2:塗布中に、液膜感をあまり感じない。
1;塗布中に、液膜感を感じない。
【0050】
(2)乾き際の塗膜感のなさ:
各油中水型乳化化粧料を指先に取り、顔に塗布している時の乾き際に感じる塗膜感のなさを、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
4;乾き際に、塗膜感を感じない。
3;乾き際に、塗膜感をあまり感じない。
2;乾き際に、塗膜感をやや感じる。
1;乾き際に、塗膜感を感じる。
【0051】
(3)乾いた後の肌触りの引っ掛かりのなさ:
各油中水型乳化化粧料を指先に取り、顔に塗布して1分経過後に指で肌表面を撫でたときの感触を、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
4;摩擦の変化がなく、引っ掛かりを感じない。
3;摩擦の変化がほとんどなく、引っ掛かりをあまり感じない。
2;摩擦の変化がややあり、引っ掛かりをやや感じる。
1;摩擦の変化があり、引っ掛かりを感じる。
【0052】
(4)重ね塗りしたリキッドファンデーションのムラ付きのなさ:
各油中水型乳化化粧料を塗布した後、リキッドファンデーション(花王社製、ソフィーナ ファインフィット ベースファンデーション ロングキープリキッドSP)を指で塗布し、塗布直後のムラの状態について以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
4;肌表面の全体がファンデーションで覆われていて、指で伸ばした線状の跡が見えない。
3;肌表面のほとんどがファンデーションで覆われていて、指で伸ばした線状の跡があまり見えない。
2;肌表面が部分的にファンデーションで覆われておらず、指で伸ばした線状の跡がやや目立つ。
1;肌表面のほとんどがファンデーションで覆われておらず、指で伸ばした線状の跡が目立つ。
【0053】