(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172302
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車載電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/502 20210101AFI20241205BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20241205BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/502
H05K7/06 C
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089922
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樹神 直也
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC20
5H040DD05
5H040JJ03
5H043AA02
5H043FA04
5H043FA08
5H043HA06F
5H043JA01F
5H043JA02F
(57)【要約】
【課題】車載電池モジュール内のバスバに対して効果的な振動対策を講じる技術を提供する。
【解決手段】車載電池モジュールは、ケースと、第1セルスタックと、第1セルスタックと隣り合う第2セルスタックと、第1セルスタックの端子と第2セルスタックの端子を接続するバスバと、バスバを保持している第1バスバホルダ及び第2バスバホルダと、を備え、バスバは、第1バスバ部材と、第2バスバ部材と、第1バスバ部材と第2バスバ部材とを互いに接続する第3バスバ部材とを有し、第3バスバ部材の第1端部は、第1バスバホルダに設けられた溝に挿入されて、第1延出部が第1バスバ部材とともに第1バスバホルダへ共締めされており、第3バスバ部材の第2端部は、第2バスバホルダに設けられた溝に挿入されて、第2延出部が第2バスバ部材とともに第2バスバホルダに共締めされており、各溝の断面は、開口から底部に向けて幅が縮小するテーパ形状を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に配置されており、第1方向に沿って複数の電池セルが配列された第1セルスタックと、
前記ケース内に配置されており、前記第1方向に沿って複数の電池セルが配列されているとともに、前記第1方向に垂直な第2方向において前記第1セルスタックと隣り合う第2セルスタックと、
前記第1セルスタックの前記第1方向の一方側の端部に位置する端子と、前記第2セルスタックの前記第1方向の他方側の端部に位置する端子とを互いに接続するバスバと、
前記ケースに固定されているとともに、前記バスバを保持している第1バスバホルダ及び第2バスバホルダと、
を備え、
前記バスバは、第1バスバ部材と、第2バスバ部材と、前記第1バスバ部材と前記第2バスバ部材とを互いに接続する第3バスバ部材とを有し、
前記第1バスバ部材は、前記第1セルスタックの前記端子に接続されているとともに、前記第1セルスタックの前記端子から前記第2セルスタックに向けて前記第2方向に沿って延びており、
前記第2バスバ部材は、前記第2セルスタックの前記端子に接続されているとともに、前記第2セルスタックの前記端子から前記第1セルスタックに向けて前記第2方向に沿って延びており、
前記第3バスバ部材は、前記第1バスバホルダにおいて前記第1バスバ部材に接続された第1端部から、前記第2バスバホルダにおいて前記第2バスバ部材に接続された第2端部まで、前記第1セルスタックと前記第2セルスタックとの間の隙間を前記第1方向に沿って延びており、
前記第3バスバ部材の前記第1端部は、前記第1バスバホルダに設けられた溝に挿入されているとともに、前記第1バスバホルダの表面に沿って前記溝の外部へ延出する第1延出部を有し、前記第1延出部が前記第1バスバ部材とともに前記第1バスバホルダへ共締めされており、
前記第3バスバ部材の前記第2端部は、前記第2バスバホルダに設けられた溝に挿入されているとともに、前記第2バスバホルダの表面に沿って前記溝の外部へ延出する第2延出部を有し、前記第2延出部が前記第2バスバ部材とともに前記第2バスバホルダに共締めされており、
前記第1バスバホルダ及び前記第2バスバホルダの各溝の断面は、開口から底部に向けて幅が縮小するテーパ形状を有する、
車載電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両に搭載される電池モジュールを開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されるインバータユニットが開示されている。インバータユニット内の回路部品はバスバにより電気的に接続される。バスバは、板状の導電部材で構成されており、車両の走行に起因する外力を受けて振動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バスバは、車載のインバータユニットに限らず、車載の電池モジュールにおいて、セルスタック同士を接続するためにも利用される。この種のバスバは、セルスタックの拡大に伴って長尺化が進んでおり、効果的な振動対策が求められている。本明細書では、車載電池モジュール内のバスバに対して効果的な振動対策を講じる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する車載電池モジュールは、ケースと、前記ケース内に配置されており、第1方向に沿って複数の電池セルが配列された第1セルスタックと、前記ケース内に配置されており、前記第1方向に沿って複数の電池セルが配列されているとともに、前記第1方向に垂直な第2方向において前記第1セルスタックと隣り合う第2セルスタックと、前記第1セルスタックの前記第1方向の一方側の端部に位置する端子と、前記第2セルスタックの前記第1方向の他方側の端部に位置する端子とを互いに接続するバスバと、前記ケースに固定されているとともに、前記バスバを保持している第1バスバホルダ及び第2バスバホルダと、を備え、前記バスバは、第1バスバ部材と、第2バスバ部材と、前記第1バスバ部材と前記第2バスバ部材とを互いに接続する第3バスバ部材とを有し、前記第1バスバ部材は、前記第1セルスタックの前記端子に接続されているとともに、前記第1セルスタックの前記端子から前記第2セルスタックに向けて前記第2方向に沿って延びており、前記第2バスバ部材は、前記第2セルスタックの前記端子に接続されているとともに、前記第2セルスタックの前記端子から前記第1セルスタックに向けて前記第2方向に沿って延びており、前記第3バスバ部材は、前記第1バスバホルダにおいて前記第1バスバ部材に接続された第1端部から、前記第2バスバホルダにおいて前記第2バスバ部材に接続された第2端部まで、前記第1セルスタックと前記第2セルスタックとの間の隙間を前記第1方向に沿って延びており、前記第3バスバ部材の前記第1端部は、前記第1バスバホルダに設けられた溝に挿入されているとともに、前記第1バスバホルダの表面に沿って前記溝の外部へ延出する第1延出部を有し、前記第1延出部が前記第1バスバ部材とともに前記第1バスバホルダへ共締めされており、前記第3バスバ部材の前記第2端部は、前記第2バスバホルダに設けられた溝に挿入されているとともに、前記第2バスバホルダの表面に沿って前記溝の外部へ延出する第2延出部を有し、前記第2延出部が前記第2バスバ部材とともに前記第2バスバホルダに共締めされており、前記第1バスバホルダ及び前記第2バスバホルダの各溝の断面は、開口から底部に向けて幅が縮小するテーパ形状を有する。
【0006】
上記した構成では、二つのセルスタックを互いに接続するバスバが、概して二つの屈曲部を形成しながら、ケース内を長尺に延びている。このような長尺なバスバには振動が生じやすいが、二つのバスバホルダが設けられていることで、バスバの振動が効果的に抑制される。特に、二つのバスバホルダは、それぞれバスバの屈曲部に配置されており、応力が集中しやすい屈曲部の振動を、効果的に抑制することができる。また、各バスバホルダの位置において、バスバが複数のバスバ部材に分割されていることで、それぞれのバスバ部材は簡素な構造となり、その組付作業も容易に行うことができる。加えて、バスバホルダは、テーパ形状の溝によってバスバ部材を隙間なく挟持することから、板厚にかかわらずバスバ部材の振動を抑制することができる。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1の範囲IIにおける拡大図とその断面図である。
【
図3】
図1の範囲IIIにおける拡大図とその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
車載電池モジュール2は、車両に搭載される電池モジュールである。
図1に示すように、車載電池モジュール2は、ケース4と、第1セルスタック10と、第2セルスタック20と、バスバ30と、第1バスバホルダ40と、第2バスバホルダ50と、を備える。なお、図面には、XYZ座標が定義されている。
【0010】
第1セルスタック10及び第2セルスタック20は、ケース4内に配置されている。第1セルスタック10は、X軸方向に沿って配列された複数個の電池セル12を積層したモジュールである。
図1では、複数個の電池セル12のうちの一つのセルに符号を付し、他の電池セルへ符号を付すことを省略している。第2セルスタック20は、Z軸方向において第1セルスタック10と隣り合う。第2セルスタック20は、第1セルスタック10と同様に、X軸方向に沿って配列された複数個の電池セル(図示省略)を積層したモジュールである。
【0011】
バスバ30は、第1セルスタック10のX軸正方向の端部に位置する端子14と、第2セルスタック20のX軸負方向の端部に位置する端子24と、を接続する。バスバ30は、導電性の板材から製造される。
【0012】
第1バスバホルダ40及び第2バスバホルダ50は、バスバ30を保持する。第1バスバホルダ40及び第2バスバホルダ50は、ケース4に固定されている。
【0013】
バスバ30は、第1バスバ部材32と、第2バスバ部材34と、第1バスバ部材32と第2バスバ部材34とを互いに接続する第3バスバ部材36と、を有する。第1バスバ部材32は、第1セルスタック10の端子14に接続されている。第1バスバ部材32は、端子14から第2セルスタック20に向けてZ軸方向に沿って延びている。第2バスバ部材34は、第2セルスタック20の端子24に接続されている。第2バスバ部材34は、端子24から第1セルスタック10に向けてZ軸方向に沿って延びている。ここで、第1バスバ部材32及び第2バスバ部材34の板厚方向は、Y軸方向と一致する。
【0014】
第3バスバ部材36は、X軸正方向における第1端部36aからX軸負方向における第2端部36bまで第1セルスタック10と第2セルスタック20の間の隙間をX軸方向に沿って延びている。第1端部36aは、第1バスバホルダ40において第1バスバ部材32のZ軸正方向の端部に接続されている。第2端部36bは、第2バスバホルダ50において第2バスバ部材34のZ軸負方向の端部に接続されている。
【0015】
図2(a)は、
図1の範囲IIにおける拡大図であり、
図2(b)は、
図2(a)中のb-b線における断面図である。
図2(b)に示すにように、第1端部36aは、第1バスバホルダ40に設けられた溝42に挿入されている。溝42の断面は、開口から底部に向けて幅W1が縮小するテーパ形状を有する。さらに、第1端部36aは、第1バスバホルダ40の表面40aに沿って溝42の外部へ延出する第1延出部36cを有する。第1延出部36cは、第1端部36aから第1バスバ部材32に向かって折れ曲がるように形成されている。第1延出部36cは、締結部材44によって第1バスバ部材32とともに第1バスバホルダ40へ共締めされている。
【0016】
図3(a)は、
図1の範囲IIIにおける拡大図であり、
図3(b)は、
図3(a)中のb-b線における断面図である。
図3(b)に示すにように、第2端部36bは、第2バスバホルダ50に設けられた溝52に挿入されている。溝52の断面は、開口から底部に向けて幅W2が縮小するテーパ形状を有する。さらに、第2端部36bは、第2バスバホルダ50の表面50aに沿って溝52の外部へ延出する第2延出部36dを有する。第2延出部36dは、第2端部36bから第2バスバ部材34に向かって折れ曲がるように形成されている。第2延出部36dは、締結部材54によって第2バスバ部材34とともに第2バスバホルダ50へ共締めされている。なお、締結部材44及び54は、例えば、ボルトである。
【0017】
図2及び
図3に示すように、第3バスバ部材36のうち、第1端部36a、第2端部36b、及び、第1端部36aと第2端部36bの間の区間の板厚方向は、Z軸方向と一致する。一方、第1延出部36c及び第2延出部36dの板厚方向は、Y軸方向と一致する。
【0018】
(本実施例の効果)
本実施例の構成では、バスバ30は、第1端部36aと第1延出部36cの間、及び、第2端部36bと第2延出部36dの間の双方において屈曲部を形成する。二つのセルスタック10及び20を互いに接続するバスバ30は、このような二つの屈曲部を形成しながらケース4内を長尺に延びている。このような長尺なバスバ30には振動が生じやすい。本実施例では、振動対策として、第1バスバホルダ40及び第2バスバホルダ50が設けられている。各端部36a及び36bが、テーパ形状の各溝42及び52に挿入される。そして、各溝42及び52によって各端部36a及び36bが隙間なく挟持される。これにより、バスバの板厚にかかわらずバスバ30の振動、特に、板厚方向(即ち幅W1及びW2の方向)の振動を抑制することができる。さらに、第1延出部36cが第1バスバホルダ40に締結され、第2延出部36dが第2バスバホルダ50に締結される。これより、第1延出部36c及び第2延出部36dに発生する振動が抑制される。第1バスバホルダ40及び第2バスバホルダ50により、バスバ30のうち、応力が集中しやすい屈曲部をZ軸方向及びY軸方向の二方向で拘束することができ、当該屈曲部に発生する振動を効果的に抑制することができる。
【0019】
また、第3バスバ部材36の第1端部36aの振動が第1バスバホルダ40によって抑制されることにより、第1バスバホルダ40に共締めされている第1バスバ部材32へ伝達する振動も抑制される。これにより、第1バスバ部材32と第1セルスタック10の端子14の接続箇所へ伝達する振動も抑制され、端子14で発生する応力を抑制することができる。第2バスバ部材34と第2セルスタック20の端子24の接続箇所で発生する応力も、第2バスバホルダ50によって、上記の端子14と同様に抑制することができる。
【0020】
また、本実施例の構成によれば、バスバ30は、第1バスバ部材32、第2バスバ部材34、及び、第3バスバ部材36に分割されている。これにより、各バスバ部材は簡素な構造となり、その組付け作業も容易に行うことができる。
【0021】
また、車両仕様の変更等に伴いバスバ30の板厚が変更される場合が想定される。本実施例では、各溝42及び53がテーパ形状を有しているので、バスバ30の板厚が変更されたとしても、第1バスバホルダ40及び第2バスバホルダ50の設計を変更しなくてもよい。
【0022】
(対応関係)
車載電池モジュール2、X軸方向、Z軸方向が、それぞれ、「車載電池モジュール」、「第1方向」、「第2方向」の一例である。ケース4、第1セルスタック10、第2セルスタック20が、それぞれ、「ケース」、「第1セルスタック」、「第2セルスタック」の一例である。バスバ30、第1バスバ部材32、第2バスバ部材34、第3バスバ部材36が、それぞれ、「バスバ」、「第1バスバ部材」、「第2バスバ部材」、「第3バスバ部材」の一例である。第1端部36a、第1延出部36cが、それぞれ、「第1端部」、「第1延出部」の一例である。第2端部36b、第2延出部36dが、それぞれ、「第2端部」、「第2延出部」の一例である。第1バスバホルダ40、溝42が、それぞれ、「第1バスバホルダ」、「前記第1バスバホルダに設けられた溝」の一例である。第2バスバホルダ50、溝52が、それぞれ、「第2バスバホルダ」、「前記第2バスバホルダに設けられた溝」の一例である。
【0023】
以下、実施例で示した技術に関する留意点を述べる。車載電池モジュール2は、少なくとも2個のセルスタックを備えていればよく、例えば、3個以上のセルスタックを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0024】
2:車載電池モジュール、4:ケース、10:第1セルスタック、12:電池セル、14:端子、20:第2セルスタック、24:端子、30:バスバ、32:第1バスバ部材、34:第2バスバ部材、36:第3バスバ部材、36a:第1端部、36b:第2端部、36c:第1延出部、36d:第2延出部、40:第1バスバホルダ、40a:表面、42:溝、44:締結部材、50:第2バスバホルダ、50a:表面、52:溝、54:締結部材、W1:幅、W2:幅