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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172304
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20241205BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241205BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60T17/22 C
G01M99/00 Z
B60T13/74 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089924
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】谷本 学
【テーマコード(参考)】
2G024
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
2G024AD18
2G024BA27
2G024CA04
2G024CA11
2G024DA28
2G024EA11
2G024FA02
2G024FA06
2G024FA14
3D048BB09
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH70
3D048QQ12
3D048RR17
3D048RR25
3D049BB01
3D049CC07
3D049HH44
3D049HH47
3D049HH52
3D049RR08
3D049RR10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で、構成部材に過負荷が作用することを抑制可能な電動駆動装置を提供する。
【解決手段】前後方向に移動して操作対象100,100Aに荷重を出力することが可能なアクチュエータ機構120,120Aと、操作対象100,100Aに出力される荷重を検知する荷重センサ1,1Aと、アクチュエータ機構120,120Aのストロークを検知する回転検知用磁石75,75A及び回転検知用ホールIC76と、少なくとも荷重センサで検知される荷重が目標荷重に到達したことに基づいてアクチュエータ機構120,120Aを停止させることが可能な制御部17,17Aとを備える。制御部17,17Aは、荷重センサ1,1Aで検知される荷重が目標荷重に到達したにもかかわらず規定ストロークに到達していない場合、異常時処理を実行可能である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に移動して操作対象に荷重を出力することが可能なアクチュエータ機構と、
前記操作対象に出力される荷重を検知する荷重センサと、
前記アクチュエータ機構のストロークを検知するストローク検知部と、
少なくとも前記荷重センサで検知される荷重が規定荷重に到達したことに基づいて前記アクチュエータ機構を停止させることが可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記荷重センサで検知される荷重が規定荷重に到達したにもかかわらず前記ストローク検知部で検知されるストロークが規定ストロークに到達していない場合、異常時処理を実行可能である、
電動駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記アクチュエータ機構のストロークが前記規定ストロークに到達していなくとも前記操作対象に出力される荷重が前記規定荷重に到達した場合、前記アクチュエータ機構を、前記操作対象に出力されている荷重が解除される方向に、前記規定荷重に対応するストロークに到達するまで移動させる
請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記操作対象に出力される荷重が前記規定荷重に到達していなくとも、前記アクチュエータ機構のストロークが前記規定ストロークよりも大きい特定ストロークに到達した場合、前記異常時処理を実行可能である、
請求項1又は2に記載の電動駆動装置。
【請求項4】
前記荷重センサは、前記所定方向に弾性変形する弾性部材を含み、該弾性部材が変形することで前記荷重を検知可能に構成されており、
前記アクチュエータ機構が前記所定方向に移動すると前記弾性部材が弾性変形可能であるように、前記アクチュエータ機構と前記荷重センサとを接続する接続部材をさらに備える、
請求項1又は2に記載の電動駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動によって操作対象に荷重を出力する電動駆動装置には、例えば、荷重センサを備える電動パーキングブレーキがある。この種の電動パーキングブレーキでは、荷重センサが目標張力に到達した後、ストロークが所定の値よりも小さい場合には、ストロークが所定の値に到達するまでモータを駆動させる(例えば、特許文献1)。ところが、荷重センサが目標張力に到達した後もモータが駆動すると、電動パーキングブレーキを構成する部材に対して過負荷が作用し、正常な作動ができなくなってしまうおそれがある。
【0003】
そこで、電動駆動装置を構成する部材の移動(ナット部材とスピンドル部材との相対移動)を抑制する抑制部材を設けて、構成部材(荷重センサのバネ部材)に対して過負荷が生じないようにした電動駆動装置が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-093333号公報
【特許文献2】特開2019-011847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に開示された電動駆動装置によれば、抑制部材の取付位置の調整が難しく、作業性が悪いことに加え、抑制部材を設けると構造が複雑になるといった課題がある。
【0006】
本発明は、簡単な構成で、構成部材に過負荷が作用することを抑制可能な電動駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電動駆動装置は、所定方向に移動して操作対象に荷重を出力することが可能なアクチュエータ機構と、前記操作対象に出力される荷重を検知する荷重センサと、前記アクチュエータ機構のストロークを検知するストローク検知部と、少なくとも前記荷重センサで検知される荷重が規定荷重に到達したことに基づいて前記アクチュエータ機構を停止させることが可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記荷重センサで検知される荷重が規定荷重に到達したにもかかわらず前記ストローク検知部で検知されるストロークが規定ストロークに到達していない場合、異常時処理を実行可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で、構成部材に過負荷が作用することを抑制可能な電動駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動駆動装置の内部を示す概略図の一例である。
図2図1のA-A線の位置で切断した電動駆動装置の断面図の一例である。
図3図2に示される状態から、移動部材の全長が短くなるように移動部材が移動した場合の電動駆動装置の断面図の一例である。
図4図3に示される状態からさらに移動部材が移動して、荷重センサの従動部材が移動した状態を示す電動駆動装置の断面図の一例である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電動駆動装置の内部の一例を示す概略図である。
図6】(A)本発明の第2実施形態に係るアクチュエータ機構、荷重センサ、及び接続部材の一例を示す概略平面図、(B)同じくアクチュエータ機構、荷重センサ、及び接続部材の一例を示す概略側面図である。
図7】(A)、(B)本発明の第2実施形態に係るアクチュエータ機構、荷重センサ、及び接続部材の移動態様の一例を示す概略側面一部断面図、である。
図8】本発明の実施形態に係る電動駆動装置の制御構成の一例を示す模式図である。
図9】本発明の実施形態に係る電動駆動装置が備える制御部の構成の一例を示すブロック図である。
図10】本発明の実施形態に係る電動駆動装置が正常に作動しているか否かを判定するための荷重ストローク特性の一例を示すグラフである。
図11】電動駆動装置制御処理の一例を示すフローチャートである。
図12】電動駆動装置作動制御処理の一例を示すフローチャートである。
図13】電動駆動装置解除制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る電動駆動装置について説明する。以下では、先ずは電動駆動装置の構造の実施形態について説明し、次に電動駆動装置の制御の実施形態について説明する。
【0011】
なお、電動駆動装置の構造の実施形態については、第1実施形態及び第2実施形態を例に挙げて説明する。電動駆動装置の制御の実施形態は、電動駆動装置の構造の実施形態である第1実施形態及び第2実施形態のいずれにも適用することができる。ただし、電動駆動装置の構造の実施形態である第1実施形態及び第2実施形態はいずれもあくまで一例にすぎない。すなわち、電動駆動装置の制御の実施形態は、電動駆動装置の構造の実施形態である第1実施形態及び第2実施形態のいずれにも適用できることは勿論であるが、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる他の電動駆動装置に適用することもできる。
【0012】
[電動駆動装置の構造の実施形態]
(第1実施形態)
第1実施形態において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、第1実施形態において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、第1実施形態において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0013】
以下、第1実施形態に係る電動駆動装置10について、図1図4を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る電動駆動装置の内部を示す概略図の一例である。図2は、図1のA-A線の位置で切断した電動駆動装置の断面図の一例である。図3は、図2に示される状態から、後述する移動部材2の全長が短くなるように移動部材2が移動した場合の電動駆動装置10の断面図の一例である。図4は、図3に示される状態からさらに移動部材2が移動して、荷重センサ1の後述する従動部材11が移動した状態を示す電動駆動装置10の断面図の一例である。
【0014】
図1および図2に示されるように、第1実施形態の荷重センサ1は、基部3に対して前後方向に移動する移動部材2を備えた電動駆動装置10において、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことを検知する。
【0015】
第1実施形態に係る電動駆動装置10は、電力によって駆動する出力部からの出力によって駆動対象100(以下「操作対象100」と称する)に対して荷重を作用させる装置であり、例えば、出力部からの出力を、ケーブルを介して操作対象100に伝達することで荷重を作用させる装置である。電動駆動装置10は、移動部材2を前後方向に移動させる。移動部材2が前後方向に移動することで、所定の操作対象100(図1参照)が駆動される。電動駆動装置10の構成は、移動部材2を前後方向に移動させることで所定の操作対象100を駆動させることができれば、特に限定されない。
【0016】
図1に示されるように、電動駆動装置10は、荷重センサ1と、移動部材2と、この移動部材2を前後方向に移動可能に支持する基部3と、移動部材2を移動させる駆動力を発生させる駆動部4と、駆動部4の駆動力を移動部材2に伝達する伝動部5と、制御部17とを備える。駆動部4が動作すると、駆動部4の駆動力が伝動部5を介して移動部材2に伝達される。これにより、移動部材2が前後方向に移動し、後述の長尺部材7を介して所定の操作対象100が駆動される。
【0017】
上述の移動部材2、基部3、駆動部4、及び伝動部5は、アクチュエータ機構120を構成する。このアクチュエータ機構120は、駆動部4からの出力を伝動部5によって前後方向への運動力に変換する機能を有する。移動部材2が前後方向に移動することにより、長尺部材7を介して操作対象100に荷重を出力することができる。
【0018】
電動駆動装置10の用途は、移動部材2を前後方向に移動させることで所定の操作対象100を駆動させることができれば、特に限定されない。電動駆動装置10は、例えば、ブレーキシュー等のブレーキ機構(操作対象100)を駆動する、電動式パーキングブレーキ装置が相当する。第1実施形態の操作対象100は、例えばブレーキ機構が相当するが、電動駆動装置10によって直接または間接的に駆動される対象であれば特に限定されない。また、電動駆動装置10の構造は、移動部材2を前後方向に移動させることで所定の操作対象100を駆動させることができれば、特に限定されない。
【0019】
電動駆動装置10は、連結部材6を介して移動部材2に接続される長尺部材7をさらに備える。図1および図2に示されるように、長尺部材7は、一端が連結部材6に接続され、他端が操作対象100に接続されている。操作対象100は、移動部材2が前後方向に移動することによって、長尺部材7を介してブレーキの作動又は解除が行われる。長尺部材7は可撓性を有するケーブル(コントロールケーブル)であるが、これに限定されず、ロッド等、ケーブル以外の長尺の部材であってもよい。また、電動駆動装置10は、長尺部材7を備えずに、移動部材2と操作対象100とが直接接続されることで操作対象100を駆動させる構造を有していてもよい。
【0020】
上記の前後方向は、基部3に対する移動部材2の移動方向である。前後方向は、軸状に延びる移動部材2の軸X(図1および図2参照)方向と同じ方向(平行な方向)である。
【0021】
また、この第1実施形態において、後述する第1センサ要素12と第2センサ要素14とが対向する方向を上下方向と定義する。上下方向は、前後方向に対して垂直な方向(移動部材2の径方向)のうちの1の方向(移動部材2に近付く方向および離れる方向を含む方向)である。より具体的には、上下方向は、前後方向に対して垂直な方向(移動部材2の径方向)のうち、移動部材2の軸Xと後述する第1センサ要素12とが互いに離間している方向(図2における上下方向)である。また、前後方向および上下方向の両方に垂直な方向を左右方向と定義する。
【0022】
基部3は、荷重センサ1、移動部材2、駆動部4、伝動部5、連結部材6等、電動駆動装置10の構成部材の一部または全部を支持する。基部3の形状および構造は、電動駆動装置10の構成部材を支持することができれば、特に限定されない。基部3は、例えば、電動駆動装置10の構成部材(荷重センサ1、移動部材2、駆動部4、伝動部5、連結部材6)を内部に収容するケーシングである。基部3は、上下方向で一方側の半体である第1ケーシング(図2における下側のケーシング)と、上下方向で他方側の半体である第2ケーシング(図2における上側のケーシング)とを備えるが、基部3の構造は特に限定されない。
【0023】
基部3は、荷重センサ1が収容されるセンサ収容部31と、駆動部4が収容される駆動部収容部32と、連結部材6が案内され、移動部材2が移動する移動経路33と、基部3の外部へと長尺部材7が導出される導出部34とを備えている。この第1実施形態では、移動経路33において、移動部材2および連結部材6が基部3に対して前後方向に移動可能に収容されている。また、センサ収容部31において、荷重センサ1の後述する従動部材11が基部3に対して前後方向に移動可能に収容されている。
【0024】
駆動部4は、移動部材2を移動させる駆動力を発生させる。より具体的には、駆動部4は、操作対象100を駆動するために、移動部材2を移動させる駆動力を発生させる。駆動部4の駆動力によって第2移動部材22が回転することにより、第1移動部材21が第2移動部材22(および基部3)に対して後方向に相対移動する(図2図4参照)。第1移動部材21が第2移動部材22に対して前後方向に相対移動することによって、連結部材6が後方向に移動する。この連結部材6の後方向への移動によって、長尺部材7が後方向に操作されて操作対象100が駆動される。
【0025】
駆動部4は、モータ41を備えている。モータ41は、正逆回転可能に構成され、第2移動部材22を軸Xまわりで一方の回転方向と他方の回転方向に回転させることができる。モータ41は、減速機構を介して伝動部5に接続される。また、モータ41の出力側には、センサ要素として、モータ41の回転を検知する回転検知用磁石75及び回転検知用ホールIC76が設けられている(後述の図8参照)。回転検知用磁石75及び回転検知用ホールIC76は、アクチュエータ機構120(より詳しくは移動部材2)のストロークを検知するストローク検知部として機能する。ストローク検知部は、アクチュエータ機構120のストロークとして、第1移動部材21の移動量、第2移動部材22の移動量、又は長尺部材7の移動量等、荷重センサ1で検知される荷重と相関関係のあるストロークを検知できればよい。
【0026】
伝動部5は、移動部材2を前後方向に移動させる駆動部4の駆動力を移動部材2に伝達する。伝動部5の構造は、駆動部4の駆動力を移動部材2に伝達することができれば、特に限定されない。伝動部5は、例えば、1または複数の歯車などの駆動力伝達部材を備えている。
【0027】
図2に示されるように、駆動力伝達部材は、第2移動部材22に嵌合する嵌合部材51(以下「駆動力伝達ギヤ51」と称する)を備えている。駆動力伝達ギヤ51は、第2移動部材22を軸Xまわりに回転させるように、かつ、第2移動部材22が駆動力伝達ギヤ51に対して前後方向に移動することを許容するように第2移動部材22と嵌合している。具体的には、図2図4に示されるように、駆動力伝達ギヤ51は、第2移動部材22と同軸上に配置され、第2移動部材22の外周と軸Xまわりに係合している。これにより、駆動力伝達ギヤ51が軸Xまわりに回転したときに、第2移動部材22も回転し、かつ、第2移動部材22は駆動力伝達ギヤ51に対して前後方向に相対移動可能となる(図3および図4参照)。駆動力伝達ギヤ51の構造は特に限定されない。駆動力伝達ギヤ51は、例えば、基部3にベアリング37(図2参照)を介して回転可能に支持された歯車が相当する。複数の歯車等の駆動力伝達部材を経由して駆動部4の駆動力が駆動力伝達ギヤ51に伝達されると、駆動力伝達ギヤ51が第2移動部材22の軸Xまわりに回転し、第2移動部材22を軸Xまわりに回転させる。これにより、詳細は後述するが、軸Xまわりの回転が規制された第1移動部材21は、図2に示される状態から図3に示される状態までのように、第2移動部材22に対して後方向に相対移動する。
【0028】
連結部材6は、移動部材2と長尺部材7とを接続する。図1および図2に示されるように、連結部材6は、第1移動部材21の前方の端部に接続されている。また、連結部材6は、長尺部材7の後方の端部に接続されている。連結部材6は、第1移動部材21の軸Xまわりの回転を規制するように構成されている。具体的には、連結部材6は、基部3の移動経路33において、軸Xまわり方向で基部3と係合するように構成され、第1移動部材21は連結部材6に対して軸Xまわり方向で係合するように接続されている。これにより、後述するように、第2移動部材22に螺合する第1移動部材21は、第2移動部材22が軸Xまわりに回転したときに、軸Xまわりに回転することが抑制され、軸Xまわりに回転せずに、第2移動部材22に対して後方向に移動する。なお、第1移動部材21の前方の端部に連結部材6が一体に設けられていてもよい。
【0029】
移動部材2は、基部3に対して前後方向に移動する。図2に示されるように、移動部材2の後方側は、(後述する接続部材8を介して)荷重センサ1(従動部材11)に接続され、移動部材2の前方側は、(長尺部材7を介して)操作対象100に接続されている。移動部材2は、駆動部4の駆動力によって基部3に対して後方向に移動することで、操作対象100を駆動する。なお、「前後方向に移動する」という表現は、移動部材2の一部(例えば第1移動部材21)が移動部材2の他の部分(例えば第2移動部材22)に対して相対移動することで、基部3に対して前後方向に移動すること、および、移動部材2の全体が基部3に対して前後方向に移動することの両方を含む。
【0030】
この第1実施形態において説明する移動部材2の構成はあくまで一例であり、移動部材2の形状および構造は、基部3に対して前後方向に移動するように構成され、後述する荷重センサ1の検知原理を適用可能であれば、特に限定されない。移動部材2は、1つの部材によって構成されていてもよいし、複数の部材によって構成されていてもよい。移動部材2は、互いに対して前後方向に相対移動可能な、第1移動部材21および第2移動部材22を有している。詳細は後述するが、図2および図3に示されるように、第1移動部材21が所定量移動した後(第1移動部材21が移動限度まで移動した後(図3参照))、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されると、第2移動部材22は、荷重センサ1の付勢部材16の付勢力に抗して、前方向に従動部材11とともに移動する(図4参照)。
【0031】
第1移動部材21は、第2移動部材22に対して前後方向で相対移動するように、第2移動部材22に接続されている。第1移動部材21の後方側は、第2移動部材22に接続され、第1移動部材21の前方側は、連結部材6に接続されている。
【0032】
第1移動部材21は、図2に示されるように、ネジ部211を有し、第2移動部材22の第1ネジ部221と螺合している。第2移動部材22が駆動部4の駆動力によって軸Xまわりに回転駆動されることで、第1移動部材21が第2移動部材22に対して前後方向に相対移動する。第1移動部材21は、軸Xまわりの回転が規制されており、第2移動部材22が回転することによって、第2移動部材22に対して前後方向に移動する。
【0033】
第1移動部材21の形状および構造は、第2移動部材22が軸Xまわりに回転駆動されることで、第1移動部材21が第2移動部材22に対して前後方向に相対移動することができれば、特に限定されない。第1移動部材21は、前後方向に延びる軸部材によって構成されている。第1移動部材21のネジ部211は、第1実施形態では、第1移動部材21の外周の設けられた雄ネジによって構成されている。しかし、例えば、第2移動部材22の第1ネジ部が第2移動部材22の外周に設けられた雄ネジによって構成されている場合は、第1移動部材が筒状に形成され、第1移動部材のネジ部は、筒状の第1移動部材の内面に設けられた雌ネジによって構成されていてもよい。
【0034】
第2移動部材22は、軸Xまわりに回転することで第1移動部材21を第2移動部材22に対して前後方向に相対移動させる。第2移動部材22は、(伝動部5を介して)駆動部4に接続され、駆動部4の駆動力によって軸Xまわりに回転する。第2移動部材22は、伝動部5によって伝達された駆動部4の駆動力によって第2移動部材22が軸Xまわりに回転するように、伝動部5に接続されている。具体的には、第2移動部材22は、伝動部5(駆動力伝達ギヤ51)と軸Xまわりに係合する被係合部223(図1参照)を有している。第2移動部材22の被係合部223は、第2移動部材22の外面に設けられており、駆動力伝達ギヤ51の内周に設けられた係合部(図示せず)と係合することで、駆動力伝達ギヤ51の回転によって、第2移動部材22が軸Xまわりに回転する。
【0035】
この第1実施形態では、第2移動部材22の後方側が荷重センサ1に接続され、第2移動部材22の前方側が第1移動部材21に接続されている。第2移動部材22は、図2に示されるように、第1移動部材21のネジ部211と螺合する第1ネジ部221を有している。上述したように、第2移動部材22が軸Xまわりに回転することで、第1移動部材21が第2移動部材22に対して前後方向に相対移動する。
【0036】
第2移動部材22の形状および構造は、第2移動部材22が軸Xまわりに回転することで第1移動部材21を第2移動部材22に対して前後方向に相対移動させることができれば、特に限定されない。第2移動部材22は、前後方向に延びる筒状部材によって構成されている。第2移動部材22の第1ネジ部221は、第1実施形態では、筒状の第2移動部材22の内面に設けられた雌ネジによって構成されている。しかし、例えば、第1移動部材のネジ部が筒状の第1移動部材の内面に設けられた雌ネジによって構成されている場合、第2移動部材が軸部材によって構成され、軸部材である第2移動部材の第1ネジ部は、第2移動部材の外面に設けられた雄ネジによって構成されていてもよい。
【0037】
また、第2移動部材22は、図2に示されるように、接続部材8のネジ部81と螺合する第2ネジ部222を有している。第2ネジ部222は、第1ネジ部221と逆方向にネジ溝が切られている。また、第1移動部材21のネジ部211と、接続部材8のネジ部81とは、逆方向にネジ溝が切られている。これにより、図2および図3に示されるように、第2移動部材22が軸Xまわりに回転したときに、第1移動部材21が第2移動部材22に対して後方に相対移動し、接続部材8が第2移動部材22に対して前方に相対移動する。この第1実施形態では、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されるまでは、接続部材8は荷重センサ1に設けられた付勢部材16によって基部3に対して移動することが抑制されているので、第2移動部材22が接続部材8に対して後方に移動する。第2移動部材22の第2ネジ部222は、筒状の第2移動部材22の内面に設けられた雌ネジによって構成されている。しかし、例えば、接続部材8が筒状に形成され、接続部材8のネジ部81が筒状の接続部材8の内面に設けられた雌ネジによって構成されている場合、第2移動部材が軸部材によって構成され、軸部材である第2移動部材22の第2ネジ部222は、第2移動部材の外面に設けられた雄ネジによって構成されていてもよい。なお、移動部材2の構成は、図1図4に示されるものに限定されない。
【0038】
接続部材8は、アクチュエータ機構120(より詳しくは移動部材2)と荷重センサ1とを連結する。具体的には、接続部材8は、移動部材2に対して前後方向に加わる荷重を荷重センサ1(従動部材11)に伝達できるように、移動部材2と荷重センサ1とを連結している。接続部材8の形状および構造は、移動部材2に対して前後方向に加わる荷重を荷重センサ1(従動部材11)に伝達できるように、移動部材2と荷重センサ1とを連結することができれば、特に限定されない。接続部材8は、図2図4に示されるように、移動部材2(第2移動部材22)に加わった前後方向での荷重が従動部材11に伝達されるように、従動部材11と連結される連結部82を有している。第1実施形態では、連結部82は、従動部材11と前後方向で係合するように構成されている。
【0039】
接続部材8は、図2図4に示されるように、第2移動部材22に螺合する前後方向に延びる軸部材として構成されている。接続部材8は、第2移動部材22の第2ネジ部222と螺合するネジ部81を有している。なお、接続部材8はネジ部を有していなくてもよい。また、接続部材8は、第2移動部材22および従動部材11とは別体として設けられているが、第2移動部材22または従動部材11と一体に設けられていてもよい。
【0040】
次に、荷重センサ1について説明する。荷重センサ1は、図2図4に示されるように、移動部材2に接続され、移動部材2の前後方向への移動に伴って前後方向に沿って移動可能な従動部材11と、従動部材11とともに移動する第1センサ要素12と、従動部材11に第1センサ要素12を取り付けるための取付部材13と、電動駆動装置10の基部3に対して不動に取り付けられ、第1センサ要素12と相互作用する第2センサ要素14と、第1センサ要素12が、第2センサ要素14に対して所定の位置関係で移動するように第1センサ要素12を所定の経路に沿って案内する案内部15とを備えている。荷重センサ1は、さらに、従動部材11を前後方向に付勢する付勢部材16を備えている。
【0041】
<荷重センサの作動原理>
荷重センサ1は、詳細は後述するが、移動部材2に所定以上の荷重が負荷された際に、従動部材11が移動部材2とともに前後方向に所定量以上移動して、第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の位置関係が変化する。これにより、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことが検知される。したがって、操作対象100に所定以上の荷重が負荷されたことが検知される。より具体的には、移動部材2に所定以上の荷重が負荷された際に、従動部材11が付勢部材16の付勢力に抗して前後方向に所定量移動することで、従動部材11と共に前後方向に移動する第1センサ要素12と、基部3に対して不動な第2センサ要素14との間の位置関係が変化する。このときのセンサ出力の変化によって、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことが検知される。移動部材2に所定の荷重が負荷されるまでは、付勢部材16等により、従動部材11は移動しないか、移動量が所定範囲内となるように電動駆動装置10の各構成部材が設計されている。したがって、付勢部材16が弾性変形し、従動部材11が所定量以上移動したことが第1センサ要素12および第2センサ要素14からのセンサ出力によって検知されることで、移動部材2および操作対象100に所定以上の荷重が負荷されたことが検知される。なお、移動部材2に負荷される「所定以上の荷重」および従動部材11の移動量である「所定量」は、荷重センサ1が適用される電動駆動装置10や操作対象100に応じて適宜変更されるので、特に限定されない。
【0042】
従動部材11は、移動部材2に直接または間接的に接続されており、移動部材2の前後方向への移動に伴って前後方向に沿って移動する。従動部材11には、上述したように、取付部材13を介して第1センサ要素12が接続されている。したがって、従動部材11が前後方向に移動することによって、第1センサ要素12も前後方向に移動して、第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の位置関係が変化する。
【0043】
従動部材11は、従動部材11が連結された移動部材2に所定以上の荷重が負荷されるまでは従動部材11が前後方向に移動することが抑制されるように、付勢部材16によって付勢されている。より具体的には、操作対象100が移動部材2によって操作される際に、従動部材11は、第2移動部材22から(接続部材8を介して)前後方向のうち1つの方向(第1実施形態では前方向)に向かう力を受ける。一方、従動部材11は、付勢部材16によって、第2移動部材22から従動部材11に加わる力とは反対方向(図2における右方向)に付勢されている。したがって、従動部材11は、第2移動部材22に所定以上の荷重が負荷されるまで(第2移動部材22に加わる荷重が付勢部材16の付勢力を超えるまで)は、基部3に対する相対移動が抑制され、図2に示される所定の位置に保持される。第2移動部材22に、付勢部材16の付勢方向とは反対方向(図2における左方向)に、付勢部材16の付勢力を超える所定以上の荷重が負荷されると、従動部材11は、第2移動部材22とともに前後方向のうち、付勢部材16の付勢方向とは反対方向(図2における前方向)に移動する。
【0044】
従動部材11が設けられる位置は、従動部材11が移動部材2および第1センサ要素12とともに前後方向に移動可能であれば、特に限定されない。従動部材11は、移動部材2(第2移動部材22)に対して後方側に設けられているが、移動部材2(第2移動部材22)に対して前方側に設けられていてもよい。
【0045】
従動部材11は、図1および図2に示されるように、基部3のセンサ収容部31に前後方向に移動可能に設けられている。当接壁Wは、付勢部材16によって前後方向に付勢された従動部材11と当接して、従動部材11を所定の位置に保持する。当接壁Wは、第1実施形態では、図2に示されるように、基部3の後方向の端壁の内面によって構成されている。しかし、当接壁が設けられる位置は、付勢部材16によって付勢された従動部材11を、前後方向で所定の位置に保持できるように設けられていれば、特に限定されない。
【0046】
従動部材11の形状および構造は、従動部材11が移動部材2および第1センサ要素12とともに前後方向に移動可能であれば、特に限定されない。従動部材11は、移動部材2と同軸状に延びる筒状体である。具体的には、従動部材11は、前後方向に対して垂直に延びる底壁111と、底壁111に対して垂直な方向(前後方向)に延びる側壁112とを備えた、有底筒状体によって構成されている。底壁111には、接続部材8が接続されている。具体的には、接続部材8の後方側の端部が底壁111を貫通し、接続部材8の端部において拡径した頭部に設けられた連結部82が、底壁111の外面と前後方向で係合している。なお、接続部材8は、従動部材11に対する軸Xまわりの相対回転が規制されるように、従動部材11に取り付けられている。従動部材11も基部3に対する軸Xまわりの相対回転が規制されるように、基部3に設けられている。したがって、第2移動部材22が軸Xまわりに回転したときに、接続部材8が軸Xまわりに共回りすることが抑制される。
【0047】
また、図2に示されるように、底壁111および側壁112の内面によって画定された従動部材11の内部空間には、付勢部材16が収容されている。底壁111の内面は、コイルバネである付勢部材16の後方側の端部が当接するバネ座として機能している。なお、付勢部材16の前方側の端部は、基部3に設けられたバネ座に当接している。側壁112の外面のうち、上側には、取付部材13が取り付けられる被取付部112aが設けられている。被取付部112aの形状および構造は、取付部材13を取り付けることができれば、特に限定されない。
【0048】
付勢部材16は、従動部材11を前後方向に付勢する。具体的には、付勢部材16は、移動部材2に所定の荷重が負荷されるまでは、従動部材11が移動しないか、移動量が所定範囲内となるように、従動部材11を前後方向に付勢する。付勢部材16の形状および構造は、従動部材11を前後方向に付勢することができれば、特に限定されない。付勢部材16は、前後方向に延びる金属製のコイルバネであるが、付勢部材16は、空気バネやゴム等、他の付勢部材であってもよい。第1実施形態では、付勢部材16は、例えば、電動駆動装置10が駆動されていない状態など、移動部材2が無負荷の状態で、従動部材11が当接壁Wを前後方向に押圧するように設けられている。具体的には、コイルバネである付勢部材16は圧縮された状態で設けられており、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されるまでは、付勢部材16の付勢力によって、従動部材11が所定の位置に保持されるように構成されている。
【0049】
第1センサ要素12および第2センサ要素14は、相互作用することで、第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の位置関係の変化を検知して、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことを検知する。具体的には、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されると、第1センサ要素12は従動部材11とともに前後方向に移動する(図4参照)。これにより、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたときの第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の位置関係(図4参照)は、移動部材2に所定以上の荷重が負荷される前の第1センサ要素12と第2センサ要素14の間の位置関係(図2及び図3参照)に対して変化する。この第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の位置関係の変化に対応したセンサ出力により、荷重センサ1は、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことを検知する。
【0050】
第1センサ要素12および第2センサ要素14の構成は、相互作用することで、第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の位置関係の変化を検知して、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことを検知することができれば、特に限定されない。第1センサ要素12および第2センサ要素14は、回転検知用磁石75と回転検知用ホールIC76との位置関係の変動による磁界の変化を検出する磁界センサを構成している。第1センサ要素および第2センサ要素は、磁界センサではなく、発光部および受光部によってよって構成された光学センサ等、他のセンサであってもよい。第1センサ要素12は例えば磁石であり、第2センサ要素14は例えばホールICである。従動部材11とともに前後方向に移動する第1センサ要素12が磁石で、第2センサ要素14がホールICである場合、基部3に対して不動に取り付けられる第2センサ要素14側に配線が設けられ、移動する第1センサ要素12には配線が必要ない。したがって、第1センサ要素12を配置する際に配線を考慮する必要が無くなり、荷重センサ1の設計の自由度を高めることができる。
【0051】
第1センサ要素12は、図2に示されるように、取付部材13を介して従動部材11に接続されている。これにより、第1センサ要素12は、従動部材11と所定の位置関係を維持した状態で、従動部材11と共に移動する。
【0052】
第2センサ要素14は、基部3に対して不動に取り付けられる。第2センサ要素14は、図2に示されるように、基板48に支持され、基板48を介して基部3に対して取り付けられている。第2センサ要素14が基部3に不動に取り付けられる(固定される)ことによって、第2センサ要素14は、前後方向、上下方向および左右方向で基部3に対して移動しない。
【0053】
取付部材13は、従動部材11に第1センサ要素12を取り付ける。取付部材13によって第1センサ要素12が従動部材11に取り付けられることで、従動部材11が前後方向に移動したときに、第1センサ要素12は従動部材11と共に前後方向に移動する。取付部材13は、前後方向に対して垂直な方向に変位可能な変位部131を有している。変位部131は、後述するように、第1センサ要素12が、案内部15の所定の経路に沿って移動するように位置を矯正されたときに、従動部材11と第1センサ要素12との間の位置関係の変化に対応して変位する。
【0054】
取付部材13の形状および構造は、従動部材11に第1センサ要素12を取り付けることができ、変位部131を有していれば、特に限定されない。取付部材13は、従動部材11に片持ち支持された、前後方向に延びる細長い板状部材によって構成されている。板状部材によって構成された取付部材13は、所定の剛性を有するとともに所定の可撓性を有している。なお、取付部材13は、所定の剛性を有するとともに所定の可撓性を有するワイヤやロッド等の線状部材であってもよい。取付部材13は、取付部材13の一端側に設けられ、従動部材11の外周に取り付けられる取付部132と、取付部材13の他端側に設けられ、第1センサ要素を支持する第1センサ支持部133(図2参照)とを備えている。前後方向で取付部132と第1センサ支持部133との間には、変位部131が設けられている。変位部131の詳細については後述する。
【0055】
取付部132は、従動部材11の外周に所定の固定手段によって固定される。取付部132は、前後方向に延びる板状に形成され、ネジによって従動部材11の外周に固定されている。第1センサ支持部133は、取付部材13の、取付部132が設けられた端部とは反対側の端部に設けられており、第1センサ要素12を片持ち状に支持している。なお、第1センサ支持部133と第1センサ要素12との間の固定方法は特に限定されない。
【0056】
案内部15は、第1センサ要素12が第2センサ要素14に対して所定の位置関係で移動するように第1センサ要素12を所定の経路に沿って案内する。ここで、「所定の経路」とは、第1センサ要素12および第2センサ要素14によって、移動部材2に所定以上の荷重が負荷されたことを正確に検知が可能となるような、第1センサ要素12の移動経路をいう。具体的には、案内部15の所定の経路は、前後方向に沿って略線形に延びる経路であり、少なくとも上下方向での第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の距離が、所定値(例えば設計上の距離)と実質的に等しくなるように、第1センサ要素12を案内するように構成されている。案内部15の所定の経路は、上下方向での第1センサ要素12と第2センサ要素14との間の距離が所定値と実質的に等しくなり、左右方向での第1センサ要素12の中心と、左右方向での第2センサ要素14の中心とが実質的に一致する(例えば、左右方向での第1センサ要素12の中心と、第2センサ要素14の中心との間のズレが、左右方向での第1センサ要素12の長さの5%以下)ように、第1センサ要素12を案内するように構成されている。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電動駆動装置の全体構成について図5図7を用いて説明する。なお、第2実施形態では、各種部材の符号を「数字+A」で表記するものとする。また、第2実施形態において、第1実施形態の部材と機能が共通する部材については、「数字+A」のうちの数字の部分を、極力、第1実施形態と同じ符号を用いるものとする。例えば、第1実施形態と第2実施形態とで機能が共通する電力駆動装置を例に挙げて説明すると、第1実施形態では「電力駆動装置10」としたものを、第2実施形態では「電力駆動装置10A」とする。
【0058】
図5は、電動駆動装置10Aの内部の一例を示す概略図である。図6は、(A)アクチュエータ機構、荷重センサ、及び接続部材の一例を示す概略平面図、(B)同じくアクチュエータ機構、荷重センサ、及び接続部材の一例を示す概略側面図である。図7(A)、(B)は、アクチュエータ機構120A、荷重センサ1A、及び接続部材8Aの移動態様の一例を示す概略側面一部断面図、である。
【0059】
第2実施形態に係る電動駆動装置10Aは、電力によって駆動する出力部からの出力によって駆動対象100A(以下「操作対象100A」と称する)に対して荷重を作用させる装置であり、例えば、出力部からの出力を、後述する長尺部材7Aを介して操作対象に伝達することで荷重を作用させる装置である。出力部からの出力によって索状体である長尺部材7Aへ張力を発生させることで、操作対象に対して荷重を作用することにより、当該電動駆動装置は、操作対象を移動させたり、操作対象から他の対象に対して荷重を作用させたりすることができる。
【0060】
電動駆動装置10Aの用途は、第1実施形態と同様、図5に示される前後方向に移動させることで、所定の操作対象100Aを駆動させることができれば、特に限定されない。第2実施形態の電動駆動装置10Aは、例えば操作対象100Aであるブレーキシュー等のブレーキ機構を駆動する、電動式パーキングブレーキ装置である。第2実施形態の操作対象100Aは、例えばブレーキ機構であるが、電動駆動装置10Aによって直接または間接的に駆動される対象であれば特に限定されない。第2実施形態に係る電動駆動装置10Aは、アクチュエータ機構120Aと、荷重センサ1Aと、接続部材8Aと、制御部17Aとを有する。
【0061】
電動駆動装置10Aは、後述のスピンドル-ナット機構2A(以下「移動部材2A」と称する)を移動させる駆動力を発生させる駆動部4Aを備える。駆動部4Aは、モータ41Aを備えている。電動駆動装置10Aは、出力部であるモータ41Aからの出力によってパーキング用ケーブル7A(以下「長尺部材7A」と称する)を介して操作対象100Aに対して荷重を作用させる装置である。モータ41Aからの出力によって長尺部材7Aに対して前後方向の荷重がかかることで、操作対象100Aにかかる荷重を変更し、図示しないパーキングブレーキの作動または解除を切り替えるものである。第2実施形態では、長尺部材7Aは、可撓性を有するケーブルであるが、ロッド等、ケーブル以外の長尺の部材であってもよい。電動駆動装置10Aは、移動部材2Aに接続される長尺部材7Aを有さずに、移動部材2Aと操作対象100Aとが直接接続された構造を有していてもよい。
【0062】
長尺部材7Aは、インナーケーブル71Aとアウターケーシング72Aとからなるコントロールケーブルを用いているが、プルケーブルを用いたコントロールケーブルなど、従来公知のパーキングブレーキ用として用いられるケーブルのいずれをも用いることができる。長尺部材7Aが前進すると張力が緩められて操作対象100Aにかかる荷重が少なくなり、パーキングブレーキが解除される。また、長尺部材7Aが後退すると張力が増大し、操作対象100Aにかかる荷重が大きくなり、パーキングブレーキが掛けられる。
【0063】
アクチュエータ機構120Aは、モータ41Aからの出力を前後方向への運動力に変換して操作対象100Aに荷重を出力することが可能な機構である。前後方向に変換された運動力は、長尺部材7Aを備える場合にはこの長尺部材7Aに作用し、長尺部材7Aが前進または後退を行う。また、アクチュエータ機構120Aは、伝動部5Aと、スピンドル部材21A(以下「第1移動部材21A」と称する)とナット部材22A(以下「第2移動部材22A」と称する)とを含む移動部材2Aと、モータ41Aと、基部3A(以下「ハウジング3A」と称する)と、を有する。
【0064】
伝動部5Aは、モータ41Aからの出力を移動部材2Aに伝達する機構である。伝動部5Aの構造は、モータ41Aの出力を移動部材2Aに伝達することができれば、特に限定されない。第2実施形態において、伝動部5Aは、モータ41Aのモータ軸4Aaに取り付けられたモータギヤと、モータギヤに噛合し、移動部材2Aへ駆動力を伝達する駆動力伝達ギヤ51A(後述の図8参照)とを含む。モータギヤと駆動力伝達ギヤ51Aとは、第1移動部材21Aと第2移動部材22Aとが相対移動した際も、噛合した状態を保持するように構成されている。すなわち、モータギヤと駆動力伝達ギヤ51Aとの接触面の軸方向の長さが、第1移動部材21Aと第2移動部材22Aとの相対移動距離よりも長くなるように構成されている。
【0065】
移動部材2Aは、伝動部5Aによって伝達される回転方向の駆動力を、前後方向への運動力に変換する機能を有する。移動部材2Aは、第1移動部材21Aと、第2移動部材22Aと、可動部材であるパイプ23Aと、を有する。移動部材2Aはハウジング3A内に収容されている。モータ41Aは、出力部を構成する装置であり、正逆回転可能に構成されている。モータ41Aは、制御部17Aによって逆転回転制御するようにしている。また、モータ41Aの出力側には、センサ要素として、モータ41Aの回転を検知する回転検知用磁石75A及び回転検知用ホールIC76Aが設けられている(後述の図8参照)。上述の回転検知用磁石75A及び回転検知用ホールIC76Aは、アクチュエータ機構120A(より詳しくは移動部材2A)のストロークを検知するストローク検知部として機能する。ストローク検知部は、アクチュエータ機構120Aのストロークとして、第1移動部材21Aの移動量、第2移動部材22Aの移動量、又はインナーケーブル71Aの移動量等、荷重センサ1Aで検知される荷重と相関関係のあるストロークを検知できればよい。
【0066】
第2移動部材22Aは、パイプ23Aの前端に相対回転不能に固定されている。第2移動部材22Aは、パイプ23Aの回転に伴って、回転軸周りに回転する。第1移動部材21Aは、ハウジング3A(図5参照)に対して上下左右方向へ移動しないように、かつ、軸方向に回転自在に支持されている。より詳細には、第1移動部材21Aは、第1移動部材21Aの長手方向の移動を案内するためのスピンドルガイド24Aに収容される。スピンドルガイド24Aは、ハウジング3Aに固定されている。第1移動部材21Aの一端には、長尺部材7Aの一端が連結されている。第1移動部材21Aの他端側は、第2移動部材22Aに螺合される。
【0067】
パイプ23Aは、ハウジング3A内で回転軸回りに回転可能に設けられた可動部材である。より詳細には、円筒状に形成されたパイプ23Aの外周面が、ハウジング3Aに対してベアリング37Aによって回転自在に支持されており、パイプ23Aの外周面には、モータ41Aによって回転駆動される伝動部5Aの駆動力伝達ギヤ51Aが相対回転不能に設けられている。パイプ23Aの後端には、接続部材8Aの第一接続部84A(図6参照)が接続されている。より詳細には、第一接続部84Aは、パイプ23Aの内周面に設けられたスラスト軸受28A及びフランジブシュ29Aによって回転自在に支持されている。また、第一接続部84Aは、スラスト軸受28A及びスペーサ40Aを介してパイプ23Aの後端面に前後方向へ移動不能に固定されている。これにより、パイプ23Aの前後方向への運動力が、接続部材8Aを介して荷重センサ1Aへ伝達できるように構成されている。
【0068】
荷重センサ1Aは、後述のバネ部材16A(以下「付勢部材16A」と称する)が弾性変形することで、操作対象である操作対象100Aにかかる荷重を検知するセンサである。荷重センサ1Aは、付勢部材16Aと、付勢部材16Aを支持するバネ座111A(以下「底壁111A」と称する)と、作用部材82A(以下「連結部82A」と称する)と、連結部82Aに設けられたセンサ要素である磁石12A(以下「第1センサ要素12A」と称する)と、エンド部材52Aと底壁111Aの内面との間に設けられている不図示の補助バネ部材と、センサ部ハウジング11A(以下「従動部材11A」と称する)と、従動部材11Aに設けられたホールIC14A(以下「第2センサ要素14A」と称する)と、を有する。
【0069】
荷重センサ1Aにおいては、インナーケーブル71Aの移動に従って従動部材11Aが移動し、底壁111Aが連結部82Aに対して軸方向に相対移動する。この相対移動と共に、第2センサ要素14Aが第1センサ要素12Aに対して相対移動する。この第2センサ要素14Aの相対移動により第1センサ要素12Aが、インナーケーブル71Aの荷重に相当する移動部材2Aのストロークに応じた電圧をケーブル張力信号として制御部17Aへ出力するようになっている。
【0070】
付勢部材16Aは、底壁111Aに支持されており、底壁111Aの連結部82Aに対する相対移動に伴って弾性変形を行う部材である。付勢部材16Aの一端は、底壁111Aに上下左右方向へ移動不能に固定されている。また、付勢部材16Aの他端は、後述するエンド部材52Aの後面と当接している。付勢部材16Aは連結部82Aに加わる荷重によって変形する圧縮コイルスプリングである。付勢部材16Aは、底壁111Aとエンド部材52Aを介した連結部82Aとにより支持されて、底壁111Aが連結部82Aに対して相対移動して伸縮するように、荷重センサ1Aに設けられている。
【0071】
底壁111Aは、従動部材11Aの内周面後端に固定されている。底壁111Aは、筒状に形成されており、円板状の外周部を有する。付勢部材16Aの一端は、底壁111Aと同軸上に配置されており、円板状の外周部前面と当接している。
【0072】
連結部82Aは、円柱状の部材であり、前端には円板状のエンド部材52Aが設けられている。また、連結部82Aの後端部には、小径部が設けられており、小径部に後述する軸受取付部53Aが係合することにより、連結部82Aがハウジング3Aに対して相対回転不能に固定されており、第1センサ要素12Aに対向して配置されている。
【0073】
第1センサ要素12Aは、第2センサ要素14Aと共に、従動部材11Aの移動距離を検出する部材である。第1センサ要素12Aは、エンド部材52Aに固定されている。第2センサ要素14Aは、センサ基板48Aの下面に配置されており、センサ基板48Aは、従動部材11Aに固定されている。
【0074】
接続部材8Aは、荷重センサ1Aとアクチュエータ機構120Aとを接続する部材であり、アクチュエータ機構120Aは、接続部材8Aに相対回転可能に接続され、荷重センサ1Aは、接続部材8Aに相対回転不能に接続される。接続部材8Aは、円柱状の部材であり、アクチュエータ機構120Aの移動部材2Aに接続する第一接続部84Aと、荷重センサ1Aに接続する第二接続部85Aとを有する。
【0075】
第一接続部84Aは、接続部材8Aの前端部であり、アクチュエータ機構120Aを構成するパイプ23Aに回動自在に支持されている。より詳細には、第一接続部84Aは、パイプ23Aの内周面に設けられたスラスト軸受28A及びフランジブシュ29Aによって回転自在に支持されている。第一接続部84Aは、フランジ状に形成され、アクチュエータ機構120Aに対して荷重センサ1Aを相対移動によって離間させる力をスラスト軸受28A及びスペーサ40Aから受けることとなる。
【0076】
第二接続部85Aは、接続部材8Aの後端部であり、例えばロックナットにより荷重センサ1Aを構成する従動部材11Aに固定されている。
【0077】
次に、図6及び図7を用いて、電動駆動装置10Aにおいて、移動部材2Aを駆動した場合の、アクチュエータ機構120A、荷重センサ1A、及び接続部材8Aの移動の態様について説明する。
【0078】
まず、モータ41Aを駆動させて出力を行う。モータ41Aの駆動力は、モータギヤ及び駆動力伝達ギヤ51Aを介して移動部材2Aのパイプ23Aへ伝達される。パイプ23Aが回転することにより、パイプ23Aの前端に相対回転不能に固定されている第2移動部材22Aが軸回りに回転する。
【0079】
第2移動部材22Aが回転すると、第2移動部材22Aに螺合される第1移動部材21Aが第2移動部材22Aに対して軸方向と平行な方向へ相対移動する。ここでは、第1移動部材21Aが第2移動部材22Aに対して電動駆動装置10Aを作動させる方向(後方)へ移動する場合について説明する。
【0080】
第1移動部材21Aが第2移動部材22Aに対して後方へ移動すると、第1移動部材21Aの前端に固定されたインナーケーブル71Aは、ハウジング3A(図5参照)に対して後方へ移動を開始する。
【0081】
図7(B)に示すように、インナーケーブル71Aが、ハウジング3A(図5参照)に対して後方へ移動可能な場合には、第1移動部材21Aの後方への移動に伴って長尺部材7Aが、ハウジング3Aに対して後方へ移動する。すなわち、インナーケーブル71Aが後方へ引かれる。
【0082】
そして、インナーケーブル71Aが、ハウジング3Aに対して後方へ移動不能となった場合には、第1移動部材21A及びインナーケーブル71Aは、ハウジング3Aに対して移動を停止する。さらに、モータ41Aを駆動させて出力を行い、パイプ23Aの前端に相対回転不能に固定されている第2移動部材22Aを軸回りに回転させた場合、パイプ23A及び第2移動部材22Aがハウジング3Aに対して前方へ移動を開始する。また、パイプ23A及び第2移動部材22Aと接続される接続部材8A、及び荷重センサ1Aの従動部材11Aがハウジング3Aに対して前方へ移動を開始する。
【0083】
すなわち、付勢部材16Aの弾性力に抗して、付勢部材16Aが縮む方向へ従動部材11Aに設けられた底壁111Aが前方へ移動する。このとき、連結部82Aは、ハウジング3Aに対して相対移動しないため付勢部材16Aは縮む。付勢部材16Aの弾性変形に伴い弾性力は大きくなるが、弾性力よりもモータ41Aの出力の方が大きいため、第2移動部材22A、パイプ23A、接続部材8A、及び荷重センサ1Aは前方へ移動する。
【0084】
[電動駆動装置の制御の実施形態]
次に、電動駆動装置10,10Aの制御について説明する。
【0085】
図8は、本発明の実施形態に係る電動駆動装置10,10Aの制御構成の一例を示す模式図である。制御部17,17Aは、アクチュエータ機構120,120Aの駆動を制御する。制御部17,17Aは、本実施形態においては、ECU(電子制御ユニット)であり、マイクロコンピュータから構成される。制御部17,17Aは、アクチュエータ機構120,120Aの駆動の制御として、第1移動部材21,21Aと第2移動部材22,22Aとの相対移動についての移動距離を制御する。制御部17,17Aには、操作されたことに基づいて作動信号または解除信号を送信する操作スイッチ130,130Aと、第2センサ要素14,14Aと、モータ41,41Aの回転を検知する回転検知用ホールIC76,76Aと接続されている。また、制御部17,17Aとアクチュエータ機構120,120Aのモータ41,41Aとは、電気信号が送受信可能に接続されていて、第1移動部材21,21Aと第2移動部材22,22Aとが所定のストロークの相対移動をするように制御部17,17Aがアクチュエータ機構120,120Aを制御する。荷重センサ1,1A(より詳しくは第2センサ要素14,14A)からの移動部材2,2Aの移動距離に応じたケーブル張力信号を受けた制御部17,17Aが、モータ41,41Aを回転制御するようにしている。
【0086】
制御部17,17Aが、操作スイッチ130,130Aからの作動信号を受信して、電動駆動装置10,10Aを作動させる場合、モータ41,41Aの駆動力により、移動部材2,2Aの第2移動部材22,22Aが軸回りに回転し、第1移動部材21,21Aが後方向へ移動する。第1移動部材21,21Aの後方への移動に伴い、長尺部材7,7Aが後方へ移動するが、長尺部材7,7A(より詳しくはインナーケーブル71A)が後方へ移動不能となった場合には、荷重センサ1,1Aに荷重がかかる。荷重センサ1,1Aに荷重がかかると、荷重センサ1,1Aを構成する連結部82,82Aと従動部材11,11Aとが相対移動し、第1センサ要素12,12Aと第1センサ要素12,12Aに対応して配置される第2センサ要素14,14Aとが相対移動する。これにより、第2センサ要素14,14Aが、長尺部材7,7A(より詳しくはインナーケーブル71A)からの荷重に相当する移動部材2,2Aの移動距離に応じた電圧をケーブル張力信号として制御部17,17Aへ出力する。
【0087】
また、モータ41,41Aの駆動軸に接続された回転検知用磁石75,75Aの回転を検知した回転検知用ホールIC76,76Aからの回転パルスが制御部17,17Aへ送信される。制御部17,17Aは、移動部材2,2Aの第1移動部材21,21Aと第2移動部材22,22Aとの相対移動についての所定の移動量を移動させて、電動駆動装置10,10Aを作動させる。制御部17,17Aが、荷重センサ1,1Aによって、予め設定したケーブル張力を示す信号を検出し、移動部材2,2Aについて所定の移動量を移動させた場合、制御部17,17Aは、モータ41,41Aを停止させる。
【0088】
また、制御部17,17Aが、操作スイッチ130,130Aからの解除信号を受信して、電動駆動装置10,10Aを解除する場合、制御部17,17Aは、モータ41,41Aを逆転駆動して長尺部材7,7A(より詳しくはインナーケーブル71A)を解除方向に戻す。制御部17,17Aにおいて、予め設定した移動部材2,2Aの第1移動部材21,21Aと第2移動部材22,22Aとの相対移動の移動量を移動させて、電動駆動装置10,10Aの解除が終了したとして、制御部17,17Aは、モータ41,41Aを停止させる。このように、制御部17,17Aは、アクチュエータ機構120,120Aの駆動を、移動部材2,2Aの移動距離によって制御する。
【0089】
ここで、電動駆動装置10,10Aによっては、電源喪失などにより移動部材2,2Aが所定の駆動量だけ解除駆動しなかった場合には、本来の解除位置に戻らない状態で所定の移動量の駆動がなされてしまうことがある。また、操作対象100,100Aがパーキングブレーキ装置の場合、検査時等にパーキングブレーキ装置のブレーキシューの位置が誤って調整されてしまうおそれがある。このような場合には、次回の駆動時に過剰に駆動し、過剰な荷重が付勢部材16,16Aに作用してしまい、正常な作動ができなくなってしまうおそれがある。とくに、付勢部材16,16Aが金属製である場合には、付勢部材16,16Aに対して過剰な負荷が作用すると、付勢部材16,16Aが塑性変形してしまう虞がある。また、付勢部材16,16Aが空気バネやゴム等である場合には、付勢部材16,16Aに対して過剰な負荷が作用すると、付勢部材16,16Aが破断してしまう虞がある。そのため、移動部材2,2Aの移動(第1移動部材21,21Aと第2移動部材22,22Aとの相対移動)を抑制する抑制部材を設けた電動駆動装置も開示されているが、抑制部材の取付位置の位置調整は難しく、作業性が悪いだけでなく、構造が複雑になり、コストアップの要因にもなる。
【0090】
そこで、本実施形態では、制御部17,17Aにより実行される制御により、簡単な構成で、電動駆動装置を構成する部材(とくに付勢部材16,16A)に過剰な負荷が作用することを抑制するようにしている。
【0091】
図9は、本発明の実施形態に係る電動駆動装置10,10Aが備える制御部17,17Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0092】
制御部17,17Aは、主に、CPU170,170Aと記憶部180,180Aとを備える。CPU170,170Aは、主に、モータ駆動制御部172,172A、張力比較判定部174,174A、ストローク計測部176,176A、及びストローク値比較判定部178,178Aを含み、所定のプログラムの手順に沿って電動駆動装置10,10Aの全体を制御する。記憶部180,180Aは、各種プログラムを格納するROM、及び荷重センサ1,1Aやストローク計測部176,176Aからのデータを一時的に記憶するRAM等を含む。
【0093】
モータ駆動制御部172,172Aは、操作スイッチ130,130Aが操作されたことに基づいて、モータ41,41Aを正転駆動又は逆転駆動させるものであり、例えば、PWM制御にてモータ41,41Aを制御している。
【0094】
張力比較判定部174,174Aは、荷重ストローク特性が正常エリアの範囲(以下「正常範囲」と称する)であるか否かを判定するものである。荷重ストローク特性が正常範囲であるか否かは、荷重センサ1,1Aから入力される長尺部材7,7A(より詳しくはインナーケーブル)のケーブル張力(以下「計測荷重」と称する)と、後述のストローク計測部176,176Aで計測された今回の計測ストローク値(アクチュエータ機構120,120A(より詳しくは移動部材2,2A)の移動量)とに基づいて判定されるが、これについては後述する。
【0095】
ストローク計測部176,176Aは、回転検知用ホールIC76,76Aからのパルスをアップカウント又はダウンカウントすることで、引き作動又は解除において移動部材2,2Aが移動するストローク値を計測するものである。荷重ストローク特性が正常範囲である場合、今回の計測ストローク値が記憶部180,180Aに記憶される。
【0096】
ストローク値比較判定部178,178Aは、記憶部180,180Aに記憶された前回の計測ストローク値と、ストローク計測部176,176Aにより計測された今回の計測ストローク値とを比較判定するものである。
【0097】
次に、制御部17,17Aが備えるCPU170,170Aにより実行される電動駆動装置制御処理の一例を、図10図13を参照して説明する。
【0098】
図10は、電動駆動装置10,10Aが正常に作動しているか否かを判定するための荷重ストローク特性の一例を示すグラフである。図11は、電動駆動装置制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0099】
図11を参照し、電動駆動装置制御処理では、先ず、ステップS1において、作動指令があるか否か、すなわち操作スイッチ130,130Aから作動信号を受信したか否かが判定される。ステップS1において作動指令があると判定された場合(ステップS1がYES判定の場合)、制御部17,17Aは、処理を、ステップS2に移す。一方、ステップS1において作動指令がないと判定された場合(ステップS1がNO判定の場合)、制御部17,17Aは、処理を、ステップS3に移す。
【0100】
ステップS2では、電動駆動装置作動制御処理が行われる。この電動駆動装置作動制御処理については、後述の図12を参照して説明する。電動駆動装置作動制御処理が行われた後、制御部17,17Aは、電動駆動装置制御処理を終了する。
【0101】
ステップS3では、解除指令があるか否か、すなわち操作スイッチ130,130Aから解除信号を受信したか否かが判定される。ステップS3において解除指令があると判定された場(ステップS3がYES判定の場合)、制御部17,17Aは、処理を、ステップS4に移す。一方、ステップS3において解除指令がないと判定された場合(ステップS3がNO判定の場合)、制御部17,17Aは、電動駆動装置制御処理を終了する。
【0102】
ステップS4では、電動駆動装置解除制御処理が行われる。この電動駆動装置解除制御処理については、後述の図13を参照して説明する。電動駆動装置解除制御処理が行われた後、制御部17,17Aは、電動駆動装置制御処理を終了する。
【0103】
図12は、電動駆動装置作動制御処理(図11のステップS2参照)の一例を示すフローチャートである。
【0104】
電動駆動装置作動制御処理では、先ず、ステップS21において、モータ駆動制御部172,172Aによりモータ41,41Aの正転駆動が開始される。その後、制御部17,17Aは、処理を、ステップS22に移す。
【0105】
ステップS22では、計測荷重と今回の計測ストローク値とに基づいて、荷重ストローク特性が正常範囲(図10参照)であるか否かが判定される。荷重ストローク特性は、図10を参照して判定される。
【0106】
ここで、ステップS22で行われる処理の一例について説明する。ステップS22の処理では、例えば、計測荷重が予め設定した目標張力(以下「目標荷重」と称する)に到達したか否かを判定する。計測荷重が目標荷重に到達すると、今回の計測ストローク値が図10に示されるエリアBより下の位置であって且つエリアAより上の位置であるか否かを判定することにより行われる。今回の計測ストローク値がエリアBより下の位置であると判定されるのは、今回の計測ストローク値が、記憶部180,180Aに記憶された前回の計測ストローク値に係数Aを加算した値以下の場合である。また、今回の計測ストローク値がエリアAより上の位置であると判定されるのは、今回の計測ストローク値が、記憶部180,180Aに記憶された前回の計測ストローク値から係数Aを減算した値以上の場合である。すなわち、計測荷重が目標荷重に到達したときに、(前回の計測ストローク値-係数A)≦今回の計測ストローク値≦(前回の計測ストローク値+係数A)、の関係が成立する場合に、荷重ストローク特性が正常範囲であると判定される。一方、(前回の計測ストローク値-係数A)≦今回の計測ストローク値≦(前回の計測ストローク値+係数A)、の関係が成立しない場合には、正常範囲でないと判定される。例えば、操作対象100,100Aに出力される荷重が目標荷重に到達していなくとも、アクチュエータ機構120,120A(より詳しくは移動部材2,2A)のストロークが「前回の計測ストローク値+係数A」に到達した場合、すなわち荷重ストローク特性の位置がエリアBである場合には、荷重センサ1,1Aの異常である可能性が高いため、正常範囲でないと判定される。なお、荷重ストローク特性が正常範囲であると判定される下限値である「前回の計測ストローク値-係数A」は、本発明の「規定ストローク」に相当し、荷重ストローク特性が正常範囲であると判定される上限値である「前回の計測ストローク値+係数A」は、本発明の「特定ストローク」に相当する。なお、係数Aは、計測荷重に応じて規定された値であり、計測荷重が大きくなると係数Aの値も大きくなる。ステップS22で行われる処理の一例として説明した上述の処理は、あくまでも一例にすぎず、これに限定されるものない。よって、例えば、今回の計測ストローク値が目標ストローク値に到達したか否かを判定し、今回の計測ストローク値が目標ストローク値に到達した場合に、計測荷重が正常エリアの範囲であるか否かを判定するようにしてもよい。上記の「目標荷重」は本発明の「規定荷重」に相当する。
【0107】
ところで、荷重ストローク特性が正常範囲でない場合、例えば計測荷重が目標荷重に到達したにもかかわらず今回の計測ストローク値がエリアAより下の位置である場合、荷重センサ1,1Aに過剰な負荷が作用するおそれがある。この状態でモータ41,41Aの正転駆動を継続すると、例えば付勢部材16,16Aが塑性変形し、正常な荷重測定を行うことができなくなる虞がある。そこで、本実施形態では、荷重ストローク特性が正常範囲でない場合には、異常時処理として、ステップS25~ステップS27の処理を行うようにしている。ステップS25~ステップS27の処理については後述する。
【0108】
ステップS22がYES判定の場合、荷重ストローク特性が正常状態であるとして、制御部17,17Aは、処理を、ステップS23に移す。一方、ステップS22がNO判定の場合、荷重ストローク特性が異常状態であるとして、制御部17,17Aは、処理を、ステップS25に移す。
【0109】
ステップS23では、上述したように、今回の計測ストローク値が記憶部180,180Aに記憶される。記憶部180,180Aに記憶された今回の計測ストローク値は、次回の電動駆動装置作動制御処理において、前回の計測ストローク値として用いられる。その後、制御部17,17Aは、処理を、ステップS24に移す。
【0110】
ステップS24では、モータ41,41Aの駆動が停止される。ステップS24においてモータ41,41Aの駆動が停止されると、制御部17,17Aは、電動駆動装置作動制御処理を終了する。電動駆動装置作動制御処理が終了すると電動駆動装置制御処理も終了する。
【0111】
ステップS25では、モータ41,41Aの駆動が停止される。ステップS25においてモータ41,41Aの駆動が停止されると、制御部17,17Aは、処理を、ステップS26に移す。
【0112】
ステップS26では、異常警告が行われる。異常警告は、例えばウォーニングランプを点灯させたりする等である。ステップS26の処理は、異常状態であることを発見できる処理であれば特定の処理に限定されないが、荷重ストローク特性が正常範囲でないことを把握できる異常警告であることが好ましい。ステップS26の処理が行われると、制御部17,17Aは、処理を、ステップS27に移す。
【0113】
ステップS27では、電動駆動装置解除制御処理が行われる。このステップS27の電動駆動装置解除制御処理は、ステップS4の処理と同じ処理である。この電動駆動装置解除制御処理については後述するが、電動駆動装置解除制御処理が終了すると、制御部17,17Aは、電動駆動装置作動制御処理を終了する。
【0114】
なお、ステップS26の処理は、荷重ストローク特性が正常範囲でないと判定(ステップS22がNO判定)された以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。例えば、ステップS25の処理を行う前に行ってもよいし、ステップS27の処理を行った後に行ってもよいし、ステップS27の処理内で行ってもよい。
【0115】
図13は、電動駆動装置解除制御処理(図11のステップS4及び図12のステップS27参照)の一例を示すフローチャートである。
【0116】
電動駆動装置解除制御処理では、先ず、モータ駆動制御部172,172Aにより、モータ41,41Aの逆転駆動が開始される。ステップS41の処理を実行した後、制御部17,17Aは、処理を、ステップS42に移す。
【0117】
ステップS42では、今回の計測ストローク値が所定ストローク値であるか否かが判定される。所定ストローク値は、ステップS1においてモータ41,41Aの正転駆動が開始される前のストローク値であってもよいし、予め設定された値(目標ストローク値)であってもよい。ステップS42において今回の計測ストローク値が所定ストローク値であると判定された場合(ステップS42がYES判定の場合)、制御部17,17Aは、処理を、ステップS44に移す。一方、ステップS42において今回の計測ストローク値が所定定ストローク値でない判定された場合(ステップS42がNO判定の場合)、制御部17,17Aは、処理を、ステップS43に移す。
【0118】
ステップS43では、異常警告が行われる。異常警告は、例えばウォーニングランプを点灯させたりする等である。ステップS43の処理は、異常状態であることを発見できる処理であれば特定の処理に限定されないが、電動駆動装置の解除が適切に行われていないことを把握できるように、ステップS26と異なる処理(例えば点灯させるランプを異ならせる等)であることが好ましい。ステップS43の処理が行われた後、制御部17,17Aは、処理を、ステップS44に移す。
【0119】
ステップS44では、逆転駆動しているモータ41,41Aの駆動が停止される。ステップS44においてモータの逆転駆動が停止されると、制御部17,17Aは、電動駆動装置解除制御処理を終了する。電動駆動装置解除制御処理が終了すると、電動駆動装置制御処理も終了する。
【0120】
以上、本発明の一実施形態に係る電動駆動装置について説明したが、上述した実施形態の電動駆動装置は、主に以下の構成を備える。
【0121】
(1)所定方向(例えば、前後方向)に移動して操作対象100,100Aに荷重を出力することが可能なアクチュエータ機構120,120Aと、
前記操作対象100,100Aに出力される荷重を検知する荷重センサ1,1Aと、
前記アクチュエータ機構120,120Aのストロークを検知するストローク検知部(例えば、回転検知用磁石75及び回転検知用ホールIC76)と、
少なくとも前記荷重センサで検知される荷重が規定荷重(例えば、目標荷重)に到達したことに基づいて前記アクチュエータ機構120,120Aを停止させることが可能な制御部17,17Aと、
を備え、
前記制御部17,17Aは、
前記荷重センサで検知される荷重が前記規定荷重に到達したにもかかわらず前記ストローク検知部で検知されるストロークが規定ストローク(例えば、「前回の計測ストローク値-係数A」)に到達していない場合(例えば、荷重ストローク特性がエリアAである場合)、異常時処理(例えば、ステップS25~ステップS27のうち少なくともいずれか1つの処理)を実行可能である、
電動駆動装置10,10A。
【0122】
上記(1)の電動駆動装置10,10Aによれば、移動部材2,2Aの移動(第1移動部材21,21Aと第2移動部材22,22Aとの相対移動)を抑制するための抑制部材を設ける必要がない。そのため、簡単な構成で、例えば付勢部材16,16A等の電動駆動装置10,10Aを構成する部材に過負荷が作用することを抑制することが可能となる。
【0123】
(2)前記制御部17,17Aは、
前記アクチュエータ機構120,120Aのストロークが前記規定ストロークに到達していなくとも前記操作対象100,100Aに出力される荷重が前記規定荷重に到達した場合(例えば、ステップS22がNO判定の場合)、前記アクチュエータ機構120,120Aを、前記操作対象100,100Aに出力されている荷重が解除される方向に、前記規定荷重に対応するストロークに到達するまで移動させる
上記(1)に記載の電動駆動装置10,10A。
【0124】
上記(2)の電動駆動装置10,10Aによれば、操作対象100,100Aに出力されている荷重が解除される方向に、規定荷重に対応するストロークに到達するまでアクチュエータ機構120,120Aが戻る。そのため、アクチュエータ機構120,120Aの次回以降の作動において、アクチュエータ機構120,120Aを構成する部材に過剰な負荷が作用することを防止することが可能となる。
【0125】
(3)前記制御部17,17Aは、
前記操作対象100,100Aに出力される荷重が前記規定荷重に到達していなくとも、前記アクチュエータ機構120,120Aのストロークが前記規定ストローク(例えば、「前回の計測ストローク値-係数A」)よりも大きい特定ストローク(例えば、「前回の計測ストローク値+係数A」)に到達した場合、前記異常時処理(例えば、ステップS25~ステップS27のうち少なくともいずれか1つの処理)を実行可能である、
上記(1)又は(2)に記載の電動駆動装置10,10A。
【0126】
上記(3)の電動駆動装置10,10Aによれば、操作対象100,100Aに出力される荷重が規定荷重に到達していなくとも、アクチュエータ機構120,120Aのストロークが特定ストローク(例えば、「前回の計測ストローク値+係数A」)に到達した場合には、荷重センサの異常である可能性が高い。よって、この場合に異常時処理を実行することで、異常状態であることを把握することが可能となる。
【0127】
(4)前記荷重センサ1,1Aは、前記所定方向(例えば、前後方向)に弾性変形する弾性部材(例えば、付勢部材16,16A)を含み、該弾性部材が変形することで前記荷重を検知可能に構成されており、
前記アクチュエータ機構120,120Aが前記所定方向に移動すると前記弾性部材が弾性変形可能であるように、前記アクチュエータ機構と前記荷重センサとを接続する接続部材8,8Aをさらに備える、
上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の電動駆動装置10,10A。
【0128】
上記(4)の電動駆動装置10,10Aによれば、弾性部材(例えば、付勢部材16,16A)が弾性変形することで操作対象100,100Aに出力された荷重を検知することができるが、このような構成であっても、弾性部材の弾性機能が失われてしまうこと(例えば塑性変形すること等)を抑制することが可能となる。
【0129】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
1,1A 荷重センサ
8,8A 接続部材
10,10A 電動駆動装置
17,17A 制御部
75,75A 回転検知用磁石
76,76A 回転検知用ホールIC
100,100A 操作対象
120,120A アクチュエータ機構
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