(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172330
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】調味液付き冷凍麺、調味液付き冷凍麺の製造方法。
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241205BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20241205BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20241205BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20241205BHJP
A23L 23/10 20160101ALI20241205BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L23/00
A23L3/36 A
A23L3/365 A
A23L23/10
A23D9/00 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089981
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】714004734
【氏名又は名称】テーブルマーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山田 顕
(72)【発明者】
【氏名】大石 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】筑紫 美帆
【テーマコード(参考)】
4B022
4B026
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB02
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4B046LP80
(57)【要約】
【課題】麺と調味液を加熱する間に調味液中の抽出スープ特有の風味を良好に維持することができる調味液付き冷凍麺を提供する。
【解決手段】調味液付き冷凍麺1は、冷凍麺2と、抽出スープ3aを有する調味液3と、を備え、抽出スープ3aは凍結され、冷凍麺2と接触する位置に配置されており、抽出スープ3aのBrix値が10以上40未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍麺と、
抽出スープを有する調味液と、を備え、
前記抽出スープは凍結され、前記冷凍麺と接触する位置に配置されており、
前記抽出スープのBrix値が10以上40未満である、調味液付き冷凍麺。
【請求項2】
前記抽出スープは、動物組織、植物組織、キノコ、海藻及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1つから抽出される、請求項1に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項3】
前記動物組織が骨である、請求項2に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項4】
さらに、
前記抽出スープと混合して前記調味液を構成する元ダレを備える、請求項1又は2に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項5】
前記元ダレは密封包装されている、請求項4に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項6】
前記元ダレがプレート状又はフレーク状をなす、請求項4に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項7】
前記元ダレが前記冷凍麺の上下一方又は両方に配置されている、請求項6に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項8】
前記元ダレが、醤油味、味噌味、塩味、植物組織抽出風味、魚介風味、及び動物組織抽出風味からなる群から選ばれる少なくとも1種の風味を呈する、請求項4に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項9】
さらに具材を備える、請求項2又は3に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項10】
さらに香味油を備える、請求項2又は3に記載の調味液付き冷凍麺。
【請求項11】
調味液を構成する抽出スープを麺と接触する位置に供給する工程と、
前記麺と前記抽出スープとを冷凍する工程と、を備え、
前記抽出スープのBrix値が10以上40未満である、調味液付き冷凍麺の製造方法。
【請求項12】
前記冷凍する工程の後に、
冷凍された前記麺及び前記抽出スープに、元ダレを付す工程を備えた、
請求項11に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【請求項13】
前記元ダレが密封包装されている、請求項12に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【請求項14】
前記元ダレがプレート状又はフレーク状をなす、請求項12に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【請求項15】
前記抽出スープを供給する工程において、供給される前記抽出スープの温度が20℃以上50℃以下である、請求項11から14のいずれか1項に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【請求項16】
前記抽出スープが、動物組織、植物組織、キノコ、海藻及び魚介類から選ばれる少なくとも1つから抽出される、請求項11から14のいずれか1項に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味液付き冷凍麺、調味液付き冷凍麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱し解凍することで調理可能な調味液付き冷凍麺が広く知られている。
【0003】
たとえば特許文献1には、麺や具の下に凍結した調味液を配置し、加熱することで麺が調味液に浸るようになっている包装冷凍麺が開示されている。
【0004】
麺に合わせる調味液は一般に、鶏や豚などの動物の骨から抽出されるガラスープや、野菜、肉類、魚介類等から抽出される出汁(以下、ガラスープや出汁をまとめて「抽出スープ」という。)、調味料等の混合物である元ダレを含んで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された包装冷凍麺では、調味液、麺及び具が解凍するまで加熱する間に、調味液中の抽出スープ特有の風味(たとえばコク、深み、香り)が大幅に減ってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、麺と調味液を加熱する間に調味液中の抽出スープ特有の風味を良好に維持することができる調味液付き冷凍麺、及び調味液付き冷凍麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0009】
[1] 冷凍麺と、抽出スープを有する調味液と、を備え、前記抽出スープは凍結され、前記冷凍麺と接触する位置に配置されており、前記抽出スープのBrix値が10以上40未満である、調味液付き冷凍麺。
【0010】
[2] 前記抽出スープは、動物組織、植物組織、キノコ、海藻及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1つから抽出される、[1]に記載の調味液付き冷凍麺。
【0011】
[3]前記動物組織が骨である、[2]に記載の調味液付き冷凍麺。
【0012】
[4] さらに、前記抽出スープと混合して前記調味液を構成する元ダレを備える、[1]から[3]のいずれかに記載の調味液付き冷凍麺。
【0013】
[5] 前記元ダレは密封包装されている、[4]に記載の調味液付き冷凍麺。
【0014】
[6] 前記元ダレがプレート状又はフレーク状をなす、[4]に記載の調味液付き冷凍麺。
【0015】
[7] 前記元ダレが前記冷凍麺の上下一方又は両方に配置されている、[4]又は[6]に記載の調味液付き冷凍麺。
【0016】
[8] 前記元ダレが、醤油味、味噌味、塩味、植物組織抽出風味、魚介風味、及び動物組織抽出風味からなる群から選ばれる少なくとも1種の風味を呈する、[4]から[7]のいずれか1つに記載の調味液付き冷凍麺。
【0017】
[9] さらに具材を備える、[1]から[8]のいずれか1つに記載の調味液付き冷凍麺。
【0018】
[10] さらに香味油を備える、[1]から[9]のいずれか1つに記載の調味液付き冷凍麺。
【0019】
[11] 調味液を構成する抽出スープを麺と接触する位置に供給する工程と、前記麺と前記抽出スープとを冷凍する工程と、を備え、前記抽出スープのBrix値が10以上40未満である、調味液付き冷凍麺の製造方法。
【0020】
[12] 前記冷凍する工程の後に、冷凍された前記麺及び前記抽出スープに、元ダレを付す工程を備えた、[11]に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【0021】
[13] 前記元ダレが密封包装されている、[12]に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【0022】
[14] 前記元ダレがプレート状又はフレーク状をなす、[12]に記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【0023】
[15] 前記抽出スープを供給する工程において、供給される前記抽出スープの温度が20℃以上50℃以下である、[11]から[14]のいずれか1つに記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【0024】
[16] 前記抽出スープが、動物組織、植物組織、キノコ、海藻及び魚介類から選ばれる少なくとも1つから抽出される、[11]から[15]のいずれか1つに記載の調味液付き冷凍麺の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、麺と調味液を加熱する間に調味液中の抽出スープ特有の風味を良好に維持することができる調味液付き冷凍麺を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の好ましい実施形態にかかる調味液付き冷凍麺の模式的側面図である。
【
図2】凍結した元ダレを冷凍麺の下方に配置した状態を示す模式的側面図である。
【
図3】凍結した元ダレを冷凍麺の上方に配置した状態を示す模式的側面図である。
【
図4】凍結した元ダレを冷凍麺の下方及び上方に配置した状態を示す模式的側面図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態にかかる調味液付き冷凍麺の製造工程を示すフローである。
【
図6】抽出スープを7℃に保温した状態を示す図である。
【
図7】抽出スープを15℃に保温した状態を示す図である。
【
図8】抽出スープを20℃に保温した状態を示す図である。
【
図9】抽出スープを25℃に保温した状態を示す図である。
【
図10】抽出スープを35℃に保温した状態を示す図である。
【
図11】抽出スープを50℃に保温した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(調味液付き冷凍麺)
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる調味液付き冷凍麺1の模式的側面図である。
【0029】
調味液付き冷凍麺1は、凍結した麺(冷凍麺)2と、調味液(いわゆるスープ、又はスープを濃縮したもの)3を備えている。
【0030】
調味液付き冷凍麺1には、具材が付されていてもよい。具材の種類としては肉や魚介類、野菜、キノコ、練り製品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。具材は冷凍麺2とともに一体的に凍結されていてもよく、冷凍麺2とは別体に凍結され冷凍麺2と共に包装されていてもよい。
【0031】
調味液付き冷凍麺1には、香味油等の油脂が付されていてもよい。油脂は、元ダレ3bとともに密封包装されていてもよく、単独で密封包装されていてもよく、冷凍麺2の内部(より詳細には冷凍麺2の麺同士の間に形成された空間)に収容されていてもよい。
【0032】
調味液付き冷凍麺1は、調味液3と冷凍麺2とがまとめて包装されていることが好ましい。また、調味液付き冷凍麺1は、電子レンジに対応したトレー等の容器にまとめて収容された状態で包装されていることが好ましいが、容器は必ずしも必要でない。
【0033】
冷凍麺2は、凍結された麺であればよく、その種類はとくに限定されるものではない。本実施形態にかかる調味液付き冷凍麺1はラーメンであるが、たとえばうどん、そば、ほうとう、ちゃんぽん、きしめん、スープパスタ、にゅう麺等であってもよい。
【0034】
調味液3は、冷凍麺2と接触する位置に配置された抽出スープ3aと、調理時に抽出スープ3aと混合されて調味液3を構成する元ダレ3bを有している。調味液3は凍結されているが、加熱調理後において、麺2とともに食される液状物である。
【0035】
抽出スープ3aの種類はとくに限定されるものではないが、たとえば、動物組織、植物組織、キノコ、海藻及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1つから抽出される抽出物が挙げられる。
【0036】
「動物組織」とは、動物の一部又は全部を指し、動物の肉や骨を挙げることができる。「植物組織」とは、植物の一部又は全部を指し、セロリ、ネギ、しょうが、にんにく等の香味野菜の他、玉ねぎ、にんじん等の根菜、ハーブ類などの一部又は全部を挙げることができる。キノコとしては、椎茸、マッシュルーム、しめじなどを挙げることができる。海藻としては、昆布を挙げることができる。魚介類としては、魚の肉や骨、節類、貝類、貝柱、海老、蟹等を挙げることができる。
【0037】
抽出スープ3aは、コクや深みなどの風味を出す面で、上記の中でも動物組織及び魚介類のいずれか一方又は両方から抽出された抽出物を含むものが好ましく、コラーゲンやゼラチン質を含有するものがとくに好ましい。コラーゲンやゼラチン質を含有する抽出スープ3aを用いることで、麺へのスープの絡みを良好にすることができる。抽出スープ3aは、これらの中でも動物の骨から抽出されたガラスープを含むものが好ましい。
【0038】
ガラスープとしては、たとえば鶏骨や鶏肉から抽出された鶏ガラスープや、豚骨や豚肉から抽出された豚ガラスープ、牛肉や牛の骨から抽出された牛ガラスープ(フォンドボー)、牛肉に香味野菜を加えて抽出されたコンソメ、魚介類から抽出されたガラスープが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
抽出スープ3aのBrix値は、10以上40未満の範囲内である。Brix値を40未満とすることで、動物の骨などから抽出された抽出スープ3aをエキス化するときなどに必要となる過度な加熱、減圧などによる濃縮を防ぐことができ、抽出スープ3aの風味(たとえばコク、深み、香り)を良好に維持することができる。また、抽出スープ3aのBrix値を10以上とすることで、抽出スープ3aの体積を抑えることができる。抽出スープ3aは、上記の抽出物に加え、油脂やゼラチン等の他の成分を含んでいてもよい。
【0040】
本明細書において「Brix値」とは、可溶性固形物含有量であり、糖度計の示度をいう。なお、糖度計によるBrix値の測定は、凍結している抽出スープ3aを解凍し、得られた液状の抽出スープ3aを用いて行う。糖度計により測定するBrix値は、試料の温度に応じて変化するため、測定は、抽出スープ3aの温度を20℃とした状態で行うことが望ましい。試料の温度に応じたBrix値の測定値のずれを把握できている場合、測定値が上記範囲内に含まれるか否かの判断が可能であるため、測定作業時の試料の温度はとくに限定されるものではない。
【0041】
抽出スープ3aの配置位置としては、冷凍麺2と接触する位置であればとくに限定されるものではないが、たとえば冷凍麺2の内部(より詳細には冷凍麺2の麺同士の間に形成された空間)や、冷凍麺2の上面又は下面が挙げられる。抽出スープ3aの配置位置は、これらの中でも冷凍麺2の内部に配置することがとくに好ましい。
【0042】
抽出スープ3aを冷凍麺2の内部に配置することで、たとえば流通過程において、調味液付き冷凍麺1の温度が上昇し、冷凍麺2が溶け始めたときでも、調味液3の解凍を抑制できる。加えて、抽出スープ3aを冷凍麺2の内部に配置することで、冷凍麺2を上記トレー等の容器から鍋に移す際に、抽出スープ3aに含まれる油脂で手が汚れてしまう事態を抑制できる。
【0043】
抽出スープ3aは、凍結した単一の塊の状態であってもよく、複数の塊に分かれていてもよく、凍結した塊を細かく砕いた状態であってもよい。
【0044】
抽出スープ3aは、冷凍麺2に付着した状態であることが好ましい。これにより、冷凍麺2とともに、凍結した抽出スープ3aを鍋に容易に運ぶことができる。また、体積としても冷凍麺2とほぼ同じ大きさで製造することができ、消費者が購入後、容易に家庭にまで持ち帰ることができる。
【0045】
調味液付き冷凍麺1の凍結状態において、底面視での冷凍麺2の塊の下面面積に占める冷凍麺2の下面に付着した抽出スープ3aの面積の割合(調味液付き冷凍麺1を下から見たときの抽出スープ3aが占める割合)は、0%以上70%以下が好ましく、0%以上50%以下がより好ましく、0%以上30%以下がさらに好ましく、0%以上10%以下が最も好ましい。冷凍麺2の下面に付着した抽出スープ3aの面積が小さいほど、冷凍麺1を持ち上げたときにトレーや包装材に残る抽出スープの量を抑えることができるとともに、流通時の抽出スープの漏れを防ぐことができる。
【0046】
抽出スープ3aの量はBrix値等に応じて適宜設定することができるが、たとえば10ml以上40ml以下の量としてもよく、10ml以上30ml以下の量としてもよい。抽出スープ3aの風味を維持すべくBrix値を抑えつつ、製造工程で抽出スープ3aと接触する麺が伸びてしまうことを抑制する面では、15ml以上25ml以下の量が好ましい。
【0047】
元ダレ3bは、調味液3の主たる呈味である、うま味、塩味、甘味などを主に示す。元ダレ3bの種類はとくに限定されるものではないが、たとえば、醤油味、味噌味、塩味、植物組織抽出風味、魚介風味、及び動物組織抽出風味からなる群から選ばれる少なくとも1種の風味を呈すものが挙げられる。動物組織抽出風味としては、たとえば豚骨風味、牛骨風味や鶏白湯、ブイヨン、コンソメなどが挙げられる。
【0048】
元ダレ3bに配合される原料はとくに限定されるものではないが、たとえば塩や砂糖、醤油、みりん、胡椒、酵母エキス、ケチャップ、マヨネーズ等の調味料や、魚介エキス、ポークエキス、粉砕された煮干し、香辛料、油分、水分などが挙げられる。
【0049】
元ダレ3bの状態はとくに限定されるものではなく、たとえば解凍したときにペースト状又は液状をなす元ダレ3bが凍結した状態であってもよく、粉末状であってもよい。
【0050】
元ダレ3bは、
図1に示すように、単独で、又は他の成分とともに、小袋等に密封包装された状態であることが好ましい。元ダレ3bを抽出スープ3aと混合されていない状態とすることで、冷凍麺2の加熱時間を抑え、麺の伸びを抑制できるとともに、抽出スープ3aの風味を良好に維持することができる。これに対し、例えば特許文献1に記載の冷凍麺では、ブロック状に凍結された調味液の全量が麺の下方に配置されており、調味液と麺を加熱する時間が長くなってしまう。また、ブロック状に凍結された調味液の場合には塩分濃度が高い場合には凍結しにくく、薄い濃度で凍結させる必要があり、そのためにも液量が増えることになる。その結果、麺に伸びが発生するとともに、抽出スープの風味が飛んでしまうという問題が生じる。
【0051】
元ダレ3bは、密封包装した場合には冷凍麺2若しくは抽出スープ3aの上に載置されているか、又はそれらの近傍に配置されていることが好ましいが、元ダレ3bの配置位置はとくに限定されるものではない。
【0052】
また、元ダレ3bを密封包装しない場合には、元ダレ3bの配置位置は、たとえば以下に説明を加えるように、冷凍麺2に直接接触する位置に配置することができる。
【0053】
図2から
図4は、凍結した元ダレ3bの配置位置を示す模式的側面図である。
詳細には、
図2は凍結した元ダレ3bを冷凍麺2の下方に配置した状態を示す模式的側面図であり、
図3は凍結した元ダレ3bを冷凍麺2の上方に配置した状態を示す模式的側面図であり、
図4は凍結した元ダレ3bを冷凍麺2の下方及び上方に配置した状態を示す模式的側面図である。
【0054】
解凍状態で液状又はペースト状をなす元ダレ3bの場合、その配置位置はとくに限定されるものではないが、たとえば、凍結状態での元ダレ3bを、冷凍麺2の下方(
図2参照)又は上方(
図3参照)に配置してもよく、冷凍麺2の下方及び上方にそれぞれ配置してもよい(
図4参照)。元ダレ3bを密封包装しない場合には、元ダレ3bを確実に凍結させるため、元ダレ3bの塩分濃度を抑える必要がある。
【0055】
元ダレ3bを冷凍麺2の上方に配置する場合で、冷凍麺2に具材を載置する場合には、元ダレ3bは具材の上に配置してもよく、冷凍麺2の上で且つ具材の下の位置に配置してもよい。
【0056】
図2から
図4に示すいずれの配置位置の場合にも、元ダレ3bの形状はとくに限定されるものではないが、たとえばプレート状やフレーク状であってもよい。
【0057】
プレート状の詳細な例としては、たとえば円盤状や円柱状、角柱状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
また、元ダレを密封包装しない場合には、プレート状の場合と比較してフレーク状として凍結した方が、熱に対して接する面が多くなり、解凍に要する時間を短くすることができ、結果として麺の茹でのび、スープの特有の風味の拡散を防ぐことができる。
【0059】
元ダレ3bをフレーク状とする場合、元ダレ3bは以下の特性のうちの1つ以上を具備することが好ましい。
(i)凍結濃縮が生じていない;
(ii)均一な塩分濃度を有する;または
(iii)一定の均一な厚さを有する。
【0060】
「凍結濃縮」とは、液状の食品の温度を下げて氷を作らせ、その氷を除去することにより成分を濃縮することを意味する。凍結濃縮が生じると、最終的に全ての成分を凍結させた際に、凍結品の箇所により成分の濃度差(ムラ)ができるため、元ダレ3bは徐々に凍結させるのではなく、瞬間的に凍結させることにより、凍結濃縮が生じないようにすることが可能である。
【0061】
「均一な塩分濃度」とは、フレーク状の元ダレ3bにおいて、塩分濃度差が実質的になく、均一な状態であることを意味する。元ダレ3bの塩分濃度差は0.2重量%以内が好ましく、0.15重量%以内がより好ましく、0.1重量%以内がさらに好ましく、0.08重量%以内がよりさらに好ましく、0.07重量%以内が最も好ましい。
【0062】
「一定の均一な厚さ」とは、元ダレ3bの最も厚い部分と最も薄い部分の厚さの差が、最も厚い部分の厚さの20%以下であることを意味し、上記厚さの差は、より好ましくは最も厚い部分の厚さの15%以下、10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下である。
【0063】
フレーク状の元ダレ3bの厚さは、5mm以下の厚さであることが好ましく、4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってもよい。
【0064】
フレーク状の元ダレ3bの最も長い箇所の長さは、20mm以下であることが好ましく、より好ましくは15mm以下、10mm以下、7mm以下、5mm以下、又はこれらの混合物である。フレーク状の元ダレ3bのサイズが小さくなるにつれて、添加量が同様でも、嵩高さが低くなり、トレー等の容器内にコンパクトに収納されうるという利点を有する。フレーク状の元ダレ3bの最も長い箇所の長さは0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上、3mm以上、又は5mm以上であってもよい。
【0065】
以上のように構成された調味液付き冷凍麺1は、たとえば以下のように鍋で加熱又は電子レンジで加熱し、解凍することで調理可能となっている。
【0066】
(鍋での加熱調理)
はじめに、元ダレ3bが密封包装されている場合について説明する。
まず、密封包装された元ダレ3bを小袋等から取り出して丼等の器に収容する。
次いで、鍋に所定の量のお湯を沸かし、凍結した状態の冷凍麺2及び抽出スープ3a(元ダレ3bを冷凍麺2に直接接触する位置に配置した場合には元ダレ3bも)を投入する。なお、元ダレ3bを冷凍麺2に直接接触する位置に配置した場合で、元ダレ3bに充分に水分が含まれる場合には、お湯の投入を省くことができる。
その後、鍋で所定の時間にわたり麺及び抽出スープ3aを加熱する。
最後に、麺及び抽出スープ3aを含むお湯を鍋から器に移し、抽出スープ3aを含むお湯と元ダレ3bとをよくかき混ぜることで、調理が完了する。
一方、元ダレ3bをプレート状やフレーク状に形成した場合などのように、元ダレ3bを冷凍麺2に直接接触する位置に配置した場合には、凍結した状態の冷凍麺2、抽出スープ3a及び元ダレ3bをまとめて鍋に投入し、所定の時間にわたり加熱することで調理が完了する。なお、元ダレ3b等に充分な水分が含まれていない場合には鍋に別途熱湯を投入してもよい。
【0067】
(電子レンジでの加熱調理)
はじめに、元ダレ3bが密封包装されている場合について説明する。
まず、凍結した抽出スープ3a及び冷凍麺2を、トレー等に収容した状態で、所定の時間にわたり加熱する。このとき、トレーにラップをかけてもよい。
次いで、密封包装された元ダレ3bを小袋等から取り出して丼等の器に入れ、所定の量の熱湯を注ぎ、よくかき混ぜる。
最後に、電子レンジで温めた麺と抽出スープ3aを器に移すことで調理が完了する。
一方、元ダレ3bを冷凍麺2に直接接触する位置に配置した場合には、冷凍麺2、抽出スープ3a及び元ダレ3bを、トレー等の容器に収容した状態で、電子レンジで所定の時間にわたり加熱することで、調理が完了する。なお、元ダレ3b等に充分な水分が含まれていない場合には、加熱前又は加熱後に容器に別途熱湯を投入してもよい。
【0068】
(調味液付き冷凍麺の製造方法)
図5は、本発明の好ましい実施形態にかかる調味液付き冷凍麺1の製造工程を示すフローである。
【0069】
以下に詳述する製造方法により製造される調味液付き冷凍麺1は、
図1に示された前記実施形態の味液付き冷凍麺1と同様のものである。したがって、以下においては、麺2、抽出スープ3a、元ダレ3b等についての詳細な説明は省略する。
【0070】
調味液付き冷凍麺1の製造方法は、麺1を準備する工程(麺準備工程S1)と、調味液3のうちの抽出スープ3aを麺2と接触する位置に供給する工程(抽出スープ供給工程S2)と、麺2と抽出スープ3aを冷凍する工程(冷凍工程S3)と、冷凍された麺1及び抽出スープ3aに、元ダレ3bを付す工程(元ダレ添付工程S4)を備えている。なお、麺準備工程S1と元ダレ添付工程S4を設けることは必ずしも必要でない。たとえば、すでに茹で戻し等の準備が完了した麺を入手し、抽出スープ供給工程S2に供してもよい。
【0071】
また、抽出スープ供給工程S2の前後、又は元ダレ添付工程S4の前後に、具材を加える工程を別途設けてもよい。抽出スープ供給工程S2の前後、又は元ダレ添付工程S4の前後に、香味油を添付する工程を別途設けてもよい。元ダレ添付工程S4の後に、麺1、抽出スープ3a、及び元ダレ3b(さらにあれば具材や香味油も)を包装する工程を別途設けてもよい。
【0072】
(麺準備工程S1)
麺準備工程S1においては、抽出スープ供給工程S2に供する麺1を準備する。麺1の準備方法はとくに限定されるものではない。たとえば小麦粉等を練って生地から用意してもよく、すでに練り上がり、切断された生麺を茹でてもよく、乾麺等から茹で戻ししてもよい。
【0073】
(抽出スープ供給工程S2)
抽出スープ供給工程S2においては、トレー等の容器に収容された麺1に接触する位置に抽出スープ3aを供給する。抽出スープ3aは、流通時の解凍を抑制する面から、麺1の上方から麺1の内部(麺同士の間)に供給されることが好ましいが、例えば容器内の麺1の周囲に供給され、麺1が抽出スープ3aに浸るようにしてもよい。
【0074】
容器に供給される抽出スープ3aとしては、上述のようにガラスープを含むものがとくに好ましい。また、鰹節、昆布、キノコ、植物組織などから抽出された出汁も使用することができる。
【0075】
容器に供給される抽出スープ3aのBrix値は、上述のように10以上40未満の範囲とする。これにより、抽出スープ3aの風味(たとえばコク、深み、香り)を良好に維持することができる。
【0076】
抽出スープ3aは、容器への供給に先立って、肉や骨等の動物組織、魚介類、キノコ、海藻、植物組織等から抽出してもよいが、すでに抽出されたものを入手して用いてもよい。
【0077】
容器に供給される抽出スープ3aの温度は、20℃以上50℃以下であることが好ましく、20℃以上40℃以下であることがとくに好ましく、20℃以上35℃以下であることが最も好ましい。
【0078】
抽出スープ3aの温度を以上の範囲内に収めることで、抽出スープ3aの供給による麺1の伸びを抑制しつつ、とくに麺1の上方から抽出スープ3aを麺1の内部に供給する場合に、適度な粘性により抽出スープ3aを麺1の内部に留めることができる。また、抽出スープ3aは、特に抽出時以外の過度な過熱を防ぐために、冷凍、または冷蔵で流通されたものを使用することが好ましい。
【0079】
(冷凍工程S3)
冷凍工程S3においては、上記トレー等の容器に収容された麺1及び抽出スープ3aを凍結させる。麺1が伸びてしまうことを防ぐため、急速凍結が好ましいが、凍結に要する時間や凍結方法はとくに限定されるものではない。
【0080】
抽出スープ供給工程S2において抽出スープ3aを冷凍麺2の内部に供給した場合、抽出スープ3aが冷凍麺2の下面まで通り抜けることがあり得る。冷凍工程S3を経た調味液付き冷凍麺1においては、上述のように、調味液付き冷凍麺1を下から見たときの抽出スープ3aが占める面積の割合は、0%以上70%以下が好ましく、0%以上50%以下がより好ましく、0%以上30%以下がさらに好ましく、0%以上10%以下が最も好ましい。
【0081】
(元ダレ添付工程S4)
元ダレ添付工程S4においては、麺1及び抽出スープ3aに、密封包装された元ダレ3b、又は密封包装されていない状態の元ダレ3bを添付する。
【0082】
元ダレ3bが密封包装されている場合の元ダレ3bの添付位置はとくに限定されるものではないが、たとえば
図1に示されたように冷凍麺2の上面に載置してもよく、冷凍麺2の周囲に配置してもよい。
【0083】
密封包装されていない状態の元ダレ3bを添付する場合、元ダレ3bには、たとえば上述のようにプレート状やフレーク状に形成してもよい。
【0084】
元ダレ3bをフレーク状に形成する場合、表面温度が-10℃以下の製氷面に調味液を吹き付け、そして、生成した凍結物を割氷および/または製氷面から剥離させる、工程を含む方法によって得られる方法で凍結することもできるし、凍結状態の元ダレ3bを、たとえばハンマーやミキサー、ニーダー等で破砕することでフレーク状に形成することができる。
【0085】
元ダレ3bをプレート状に形成する場合、たとえば元ダレ3bを金型内で凍結することでプレート状に形成することができる。
プレート状又はフレーク状に形成した元ダレ3bの添付位置はとくに限定されるものではないが、たとえば
図2から
図4に示したように、元ダレ3bを冷凍麺2の上下一方又は両方に添付(配置)してもよい。
【実施例0086】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
<調味液付き冷凍麺の製造>
(麺準備工程S1)
以下の表1に示す配合組成の中華麺を常法により作製した。
【0088】
【0089】
次いで、作製された麺を約4分間沸騰水中で茹で加工し、水洗冷却した。
【0090】
その後、茹でた麺をトレーに投入した。麺の重量は200gであった。
【0091】
(抽出スープ供給工程S2)
麺準備工程S1で準備した麺に、上方から、茹でてトレー上に広げた麺の中央部に抽出スープを約20g供給した。
【0092】
抽出スープには、鶏骨から加熱抽出し、ろ過、濃縮、殺菌した後、小袋に充填し凍結した鶏ガラスープを用いた。この鶏ガラスープのBrix値は30であった。
【0093】
抽出スープ供給工程S2の後、具材として白菜、ニラ、キクラゲ、及び鶏スライスをそれぞれ適量、麺の上に載置した。
【0094】
(冷凍工程S3)
トレーに収容された麺、抽出スープ、及び具材を急速凍結させた。
【0095】
(元ダレ添付工程S4)
以下の表2に示すBの配合の魚介ラーメンスープの濃縮物を小袋に無菌的に充填し、密封した元ダレを麺の上面に載置した。BのBrix値は34であった。
以上のサンプルの他に、抽出スープ供給工程S2で抽出スープを供給せず、且つ表2にAとして示す配合の魚介ラーメンスープの濃縮物を小袋に無菌的に充填し、密封したものを麺の上面に載置した比較例のサンプルも用意した。
Aの濃縮物には、上記の鶏ガラスープに相当する量のチキンエキスと、元ダレとを配合した。Bにはチキンエキスを配合しなかった。AのBrix値は36であった。
【0096】
【0097】
元ダレ添付工程S4の後、麺、抽出スープ、具材、及び元ダレをまとめて包装した。
【0098】
<調味液付き冷凍麺の調理1 鍋調理>
鍋での調理には、抽出スープを供給せずAのスープを用いたサンプルと、抽出スープを供給しBのスープを用いたサンプルの両方を供した。
【0099】
詳細には、まず、密封包装された元ダレを小袋から取り出して器に入れた。
次いで、鍋に約230mlのお湯を入れて沸騰させ、凍結した状態の具付き麺を投入した。抽出スープを供給したサンプルの麺には、凍結した鶏ガラスープが付着していた。
その後、具付き麺を箸で軽く揺り動かしながら約4分間加熱した。
最後に、鍋の内容物を上記の器に移してよくかき混ぜた。以下において、抽出スープを供給せずにAのスープを用い、鍋で調理したサンプルを「比較例1」といい、抽出スープを供給してBのスープを用い、鍋で調理したサンプルを「実施例1-1」という。
【0100】
<調味液付き冷凍麺の調理2 電子レンジ調理>
電子レンジでの調理には、抽出スープを供給してBのスープを用いたサンプルのみを供した。
【0101】
まず、凍結状態の具付き麺を、トレーに収容した状態のままで、ラップを掛けて電子レンジで温めた。凍結状態の麺には、凍結した鶏ガラスープが付着していた。
次いで、密封包装された元ダレを小袋から取り出して器に入れ、熱湯約210mlを注いでよくかき混ぜた。
最後に、電子レンジで温めた麺、具、及び鶏ガラスープを、器に移した。以下において、抽出スープを供給してBのスープを用い、電子レンジで調理したサンプルを「実施例1-2」という。
【0102】
(喫食評価)
表3には、鍋調理での比較例1及び実施例1-1の評価と、電子レンジ調理での実施例1-2の評価がそれぞれ記載されている。
【0103】
【0104】
評価は5名の訓練された社内パネラーが以下の基準を基に、各評価項目について5点満点の絶対評価で行い、その平均値を算出した。評価項目としては、スープの風味、麺の風味、及びラーメン全体の風味の計3項目について評価した。また、最終評価として、すべての項目が4点以上であるものを良判定、いずれかの項目に3点以下があるものを否判定とした。
(風味の評価基準)
5点:適正
4点:やや適正
3点:普通
2点:やや不適
1点:不適
【0105】
まず、比較例1について評価したところ、スープの塩味が強く、口に入れて初めに感じる先味主体であり、さらっとした深みのない味であった。また、麺にも塩味を感じ、全体として塩味が強く、単調な味であった。
【0106】
次いで、実施例1-1について評価したところ、スープにコクがあり、食べた後に残る後味に深みが感じられた。また、麺にまとわりつく油脂感、コク味を感じ、麺についても深みが感じられた。全体として、深みを強く感じ、バランスの良い風味を有していた。
【0107】
最後に、実施例1-2について評価したところ、塩味を感じるものの、コク、深みのある風味を有していた。また、麺については、サンプル2と同様の深みを有した麺が得られていた。全体として、少し塩味を強く感じるものの、深みを強く感じ、風味の良い麺が得られた。
【0108】
<煮干しラーメンスープにおけるガラスープの効果>
本実施例では、小袋に元ダレと抽出スープの両方を充填したスープを含む調味液付き冷凍麺の比較例2と、元ダレを小袋に充填し、抽出スープの一例としてガラスープを麺に加えて凍結した調味液付き冷凍麺の実施例2を用意した。
【0109】
以下の表4には、比較例2のスープの配合が配合Cとして示されており、実施例2の元ダレの配合が配合Dとして示されている。
【0110】
【0111】
(喫食評価)
表5には、上記の比較例2及び実施例2の評価が記載されている。
【0112】
【0113】
評価方法、評価基準等は実施例1及び比較例1の喫食評価と同様とした。
【0114】
小袋に元ダレと抽出スープの両方を充填した比較例2について評価したところ、スープは塩味を強く感じ、かつ味が薄く、単調に感じられた。また、麺にも塩味を感じ、全体的に塩味を強く感じ、深みが少なく感じられた。チキンエキスの製造工程は、濃縮工程、殺菌工程などを有しており、その際に過度な加圧、加熱を行ったことなどが影響したと考えられる。
【0115】
抽出スープであるガラスープを、元ダレと分けて麺に加えた実施例2について評価したところ、スープにコク味を感じ、濃厚感と深みを感じた。全体的にもまろやかさを感じた。さらに、ガラ特有の甘い鶏の香りを有していた。また、麺にも塩味を感じず、麺本来の小麦由来の味を感じることができた。全体として、味にコクがあり、深みを有し、味のバランスが良かった。
【0116】
<抽出スープの供給温度の検討>
本実施例では、抽出スープの一例としてBrix値30の鶏ガラスープを用い、抽出スープ供給工程S2での抽出スープの供給時の温度を7℃から60℃までの各温度に設定したときの抽出スープの流動性や配置状態等を確認した。
【0117】
図6は、ガラスープを7℃に保温した場合の状態を示す図であり、
図7は、ガラスープを15℃に保温した場合の状態を示す図であり、
図8は、ガラスープを20℃に保温した場合の状態を示す図である。
【0118】
また、
図9は、ガラスープを25℃に保温した場合の状態を示す図であり、
図10は、ガラスープを35℃に保温した場合の状態を示す図であり、
図11は、ガラスープを50℃に保温した場合の状態を示す図である。
【0119】
(7℃で供給)
上記のガラスープを冷蔵解凍し、7℃にしたところ、塊の状態であり、麺に供給することができなかった(
図6参照)。
【0120】
(15℃で供給)
ガラスープを15℃で保温したところ、流動性はあったものの、粘性がかなり高く、麺に供給することが困難であった(
図7参照)。
【0121】
(20℃で供給)
ガラスープに粘性があり、流動性は高くないものの、時間を掛けて20℃に保持することによって麺に供給可能であった(
図8参照)。20℃で供給されたガラスープの一部は麺の隙間を通じて麺の下面に出ていたものの、大部分は麺の内部に留まっていた。
【0122】
(25℃で供給)
ガラスープに若干の粘性はあるものの、充分な流動性があり、麺に問題なく供給することができた(
図9参照)。
【0123】
(35℃で供給)
ガラスープに適度な粘性があり、麺に問題なく供給することができた(
図10参照)。
【0124】
(50℃で供給)
ガラスープに適度な粘性があり、麺に問題なく供給することができた。しかしながら、気泡を抱きやすく、取り扱いに注意が必要であった(
図11参照)。
また、50℃では粘度が低いため、出汁ガラスープの全量が麺の間を抜けて麺の下面にまで到達し、底全体に拡がった。このため、ガラスープを麺に供給した際に、加熱により麺に伸びが発生し、食感が柔らかくなっていた。
【0125】
(60℃で供給)
図示はしていないが、60℃ではガラスープが水のように過度に粘りのない物性であり、50℃で供給した場合に比してより一層気泡を抱きやすかった。また、ガラスープを麺に供給した際に、50℃で供給した場合に比して麺により一層の伸びが発生し、食感がかなり柔らかくなっていた。
【0126】
以上の結果から、ガラスープなどの抽出スープ供給工程S2での抽出スープの供給時の温度は、流動性を確保する面で20℃以上が好ましく、麺の伸びを防ぐ面で50℃以下が好ましいことが明らかになった。
【0127】
<抽出スープの濃縮度の検討>
以下の5つのBrix値の異なるチキン風味調味料(鶏ガラスープ、チキンエキス)に対してそれぞれ、3倍量のお湯を加え、呈味を確認した。
【0128】
市販ガラスープA:「mz冷凍清湯チキンガラスープD1K」(丸善食品工業社製)、冷凍品、Brix値10
市販ガラスープB:「mzJ冷凍清湯チキンスープ20」(丸善食品工業社製)、冷凍品、Brix値20
市販ガラスープ C:「mzJ冷凍チキンガラスープJP30」(丸善食品工業社製)、冷凍品、Brix値30
チキンエキスD:チキンエキスなどにより独自に配合、ペースト品、Brix値45.5
市販チキンエキスE:「チキンエキスAF」(富士食品工業社製)、ペースト品、Brix値51.5
以下の表6に、各抽出スープの呈味の検討結果が示されている。
【0129】
【0130】
表6の中の〇はコク、深みを良好に有していることを示し、×はコク、深みが弱く、感じにくいことを示している。
【0131】
Brix値10の鶏ガラスープに対しお湯を加えた抽出スープでは、くせのない、ナチュラルな鶏の甘い香りが感じられた。
【0132】
Brix値20の鶏ガラスープに対しお湯を加えた抽出スープは、呈味が良く鶏皮のような甘み、旨味を有しており、少し遅れて香りが経ち、あと引く風味を有していた。
【0133】
Brix値30の鶏ガラスープに対しお湯を加えた抽出スープは、先味にインパクトのある鶏の風味を有しており、遅れてコク、深みを有していた。
【0134】
このように、Brix値が10、20、30の鶏ガラスープに対してお湯を加えた各抽出スープでは、コクや深み、鶏ガラ特有の甘い香りなどの風味が維持されていた。
【0135】
これに対し、Brix値45.5のチキンエキスに対してお湯を加えた抽出スープでは、先味は強く、優れた呈味を有していたが、コク、風味が弱く、旨味を強く感じた。さらに、Brix値51.5のチキンエキスに対してお湯を加えた抽出スープは、先味から後味まで優れた呈味を有しており、味全体でチキン特有の風味を再現されており、良好であったが、コク、深みは弱く、味の広がりという点では弱く感じた。Brix値40以上のチキンエキスにおいては、抽出時の加熱に加えて、濃縮工程、殺菌工程が必要となることから、ガラスープで残されているコク、深みは失われているものと推察された。
【0136】
以上の結果から、過度に濃縮されていない抽出スープを用いることで、抽出スープ(特にガラスープ)特有のコク、深みや、鶏などの香りを維持できることが明らかになった。
加えて、過度に濃縮されていない抽出スープを麺に充填供給し、凍結することで、解凍後も抽出スープ由来の強い風味を有する調味液付き冷凍麺を製造できることが明らかになった。
【0137】
<市販のラーメンスープへのガラスープの添加試験>
つぎに、本来あっさりとした味付けをされている、市販の醤油味のラーメンスープに鶏ガラスープをさらに添加することにより、鶏ガラスープの効果を検証した。
醤油味のラーメンスープの素「鉄人黒 中華そば チャーシュー増し」(富士食品工業社製、原材料:しょうゆ、植物油脂、食塩、煮干しエキス、砂糖、たん白質加水分解物、煮干粉末、香味油脂、がらスープ、チキンエキス、かつお節粉末)を熱湯約300mlで溶かした。
【0138】
その後、鶏骨から加熱抽出し、ろ過、濃縮、殺菌した後、小袋に充填し凍結したBrix値30の鶏ガラスープを20mL加えた。また、鶏ガラスープを加えていないサンプルも用意した。
【0139】
(喫食評価)
表7には、上記の鶏ガラスープを加えたサンプル、及び鶏ガラスープを加えていないサンプルに対する評価が記載されている。
【0140】
【0141】
表7の中の〇はコク、深みを良好に有していることを示し、×はコク、深みが弱く、感じにくいことを示している。
【0142】
まず、鶏ガラスープを加えていない、市販のラーメンスープに熱湯のみを加えたサンプルは、醤油ラーメンのスープとしてバランスが取れており、旨味などの呈味が感じられ、優れた呈味を有していた。醤油味のあっさりとした味付けであった。
【0143】
これに対し、さらにこれに、鶏ガラスープを加えたサンプルは、優れた呈味に加え、良好なコク、風味を有しており、本来醤油味のラーメンスープでは有してない、広がり、深さを有していた。
【0144】
<鶏ガラスープ以外の抽出スープの添加>
(豚ガラスープ)
豚骨から抽出したBrix30の豚骨ガラスープ20mlを、冷凍麺を茹で上げた麺に充填し、冷凍した。
次いで、豚骨ガラスープを内包する冷凍麺、豚骨スープの素、及びお湯を、液量が200mlになるように鍋に投入し、加熱することによって、豚骨ラーメンを調理した。
その結果、豚骨の深みとコクを有するラーメンが得られた。
【0145】
(煮干し出汁)
いりこの煮出しから抽出したBrix値20の出汁液10mlを、茹で上げたうどんの麺の内部に充填供給し、冷凍した調味液付き冷凍麺を製造した。
その後、醤油等を含むかえし(元ダレ)やお湯などで総液量が200mlとなるよう鍋に投入して加熱した。
その結果、出汁の香りや風味を残したうどんが得られた。
【0146】
以上の結果から、鶏ガラスープに限られず、他の種類のガラスープやガラスープ以外の抽出スープでも、過度に濃縮されていない状態で麺に接する位置に供給し、凍結することで、従来の調味液付き冷凍麺に比して、抽出スープ特有の香りや風味を有する調味液付き冷凍麺を製造できることが明らかになった。
【0147】
また、上記実施例1,2等のガラスープを添加したサンプルにおいては、ガラに含まれるゼラチン質によりスープにとろみが付き、麺へのスープの絡みが良くなることが確認された。