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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172331
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089984
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】西埜植 一紀
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】大西 泰造
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 務
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA14
2H033AA15
2H033BA02
2H033BA04
2H033BB01
2H033BB28
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB37
2H033BB38
2H033CA07
2H033CA12
2H033CA13
2H033CA16
2H033CA22
2H033CA30
2H033CA34
2H033CA39
2H033CA40
(57)【要約】
【課題】記録媒体の坪量、形状及び定着部材の状態に応じてニップ幅のバランスを調整できる定着装置を提供できる。
【解決手段】定着ローラ2と、加圧ローラ3と、定着ローラ2に加圧ローラ3を押圧して定着ニップPを形成する押圧機構4とを備え、定着ニップPに記録媒体Sを搬送し、記録媒体Sにトナー画像を定着させる定着装置1であって、押圧機構4は、搬送する記録媒体Sの坪量に応じて加圧ローラ3の圧力を変化させることで定着ニップPのニップ幅を変化させる第一圧力可変手段41と、定着ローラ2の状態に応じてニップ幅を変化させる第二圧力可変手段42と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と、加圧部材と、前記定着部材に前記加圧部材を押圧して定着ニップを形成する押圧機構とを備え、前記定着ニップに記録媒体を搬送し、前記記録媒体にトナー画像を定着させる定着装置であって、
前記押圧機構は、搬送する前記記録媒体の坪量に応じて前記加圧部材の圧力を変化させることで定着ニップ幅を変化させる第一圧力可変手段と、
前記定着部材の状態に応じて前記定着ニップ幅を変化させる第二圧力可変手段と、を備える定着装置。
【請求項2】
前記第二圧力可変手段は、前記定着部材の軸方向の両端部に配置される第三カム部材と、第四カム部材と、を備え、
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、それぞれ独立して前記定着ニップ幅を変更する請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の状態とは、軸方向の温度分布であり、
前記定着部材の軸方向の温度分布を測定する温度センサを更に備える、
請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記温度センサが測定した前記定着部材の軸方向の温度分布に応じて前記定着ニップ幅を調整する請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の軸方向両端の温度差が所定値になったときに定着ニップ幅を調整する請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、測定した温度分布測定結果に基づき、温度が高い側の定着ニップ幅を狭くする請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、測定した温度分布測定結果に基づき、温度が低い側の定着ニップ幅を広くする請求項4に記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着部材の状態とは、外径であり、
前記定着部材の外径を測定する外径センサを更に備える、
請求項2に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記外径センサが測定した前記定着部材の外径に応じて前記定着ニップ幅を変更する請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の軸方向両端の外径が所定値になったときに定着ニップ幅を調整する請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の外径に基づき、外径が大きい側の定着ニップ幅を狭くする請求項9に記載の定着装置。
【請求項12】
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の外径に基づき、外径が小さい側の定着ニップ幅を広くする請求項9に記載の定着装置。
【請求項13】
前記第一圧力可変手段は、前記定着部材の軸方向の両端部に配置される第一カム部材と、第二カム部材と、を備え、
前記第一カム部材及び前記第二カム部材は、それぞれ独立して前記定着ニップ幅を変更する請求項1に記載の定着装置。
【請求項14】
前記第一カム部材及び前記第二カム部材は、前記記録媒体の坪量が小さい程、定着ニップ幅を狭くする請求項13に記載の定着装置。
【請求項15】
定着ニップ幅を調整した後に、搬送速度を測定する請求項13又は14に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は、薄紙から厚紙までの幅広い坪量帯の紙や長尺紙への対応(通紙性確保)が求められている。画像形成装置の定着装置では、一般的に、加熱部材にバネ等で加圧部材を押圧して定着ニップを形成し、定着ニップ幅のバランスが軸方向でほぼ同じになるような構成が用いられる。例えば、特許文献1には、加熱手段よって加熱される定着部材と、定着部材を加圧して定着ニップを形成する加圧部材と、加圧部材の加圧力を変化させる加圧可変手段を備えた定着装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012―83654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通紙する記録媒体の坪量(熱容量)や紙幅の違いによって、通紙中に定着部材の軸方向の温度バランスが変化し、熱膨張により定着部材に外径差が発生する場合がある。これによりニップ幅のバランスが崩れ、しわ等の紙変形やJAMが発生するといった問題がある。
【0005】
このような課題に関し、本発明では、記録媒体の坪量、形状及び定着部材の状態に応じてニップ幅のバランスを調整できる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1) 定着部材と、加圧部材と、前記定着部材に前記加圧部材を押圧して定着ニップを形成する押圧機構とを備え、前記定着ニップに記録媒体を搬送し、前記記録媒体にトナー画像を定着させる定着装置であって、
前記押圧機構は、搬送する前記記録媒体の坪量に応じて前記加圧部材の圧力を変化させることで定着ニップ幅を変化させる第一圧力可変手段と、
前記定着部材の状態に応じて前記定着ニップ幅を変化させる第二圧力可変手段と、を備える定着装置。
【0007】
(2) 前記第二圧力可変手段は、前記定着部材の軸方向の両端部に配置される第三カム部材と、第四カム部材と、を備え、
前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、それぞれ独立して前記定着ニップ幅を変更する
(1)に記載の定着装置。
【0008】
(3) 前記定着部材の状態とは、軸方向の温度分布であり、
前記定着部材の軸方向の温度分布を測定する温度センサを更に備える、
(2)に記載の定着装置。
【0009】
(4) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記温度センサが測定した前記定着部材の軸方向の温度分布に応じて前記定着ニップ幅を調整する
(3)に記載の定着装置。
【0010】
(5) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の軸方向両端の温度差が所定値になったときに定着ニップ幅を調整する
(4)に記載の定着装置。
【0011】
(6) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、測定した温度分布測定結果に基づき、温度が高い側の定着ニップ幅を狭くする
(4)に記載の定着装置。
【0012】
(7) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、測定した温度分布測定結果に基づき、温度が低い側の定着ニップ幅を広くする
(4)に記載の定着装置。
【0013】
(8) 前記定着部材の状態とは、外径であり、
前記定着部材の外径を測定する外径センサを更に備える、
(2)に記載の定着装置。
【0014】
(9) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記外径センサが測定した前記定着部材の外径に応じて前記定着ニップ幅を変更する
(8)に記載の定着装置。
【0015】
(10) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の軸方向両端の外径が所定値になったときに定着ニップ幅を調整する
(9)に記載の定着装置。
【0016】
(11) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の外径に基づき、外径が大きい側の定着ニップ幅を狭くする
(9)に記載の定着装置。
【0017】
(12) 前記第三カム部材及び前記第四カム部材は、前記定着部材の外径に基づき、外径が小さい側の定着ニップ幅を広くする
(9)に記載の定着装置。
【0018】
(13) 前記第一圧力可変手段は、前記定着部材の軸方向の両端部に配置される第一カム部材と、第二カム部材と、を備え、
前記第一カム部材及び前記第二カム部材は、それぞれ独立して前記定着ニップ幅を変更する
(1)に記載の定着装置。
【0019】
(14) 前記第一カム部材及び前記第二カム部材は、前記記録媒体の坪量が小さい程、定着ニップ幅を狭くする
(13)に記載の定着装置。
【0020】
(15) 定着ニップ幅を調整した後に、搬送速度を測定する
(13)又は(14)に記載の定着装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、記録媒体の坪量、形状及び定着部材の状態に応じてニップ幅のバランスを調整できる定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る定着装置の概略を示す構成図である。
図2図1に示す押圧機構の構成を示す斜視図である。
図3】第一カム部材の形状を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
図1に示すように、定着装置1は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた記録媒体Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、記録媒体Sにトナー像を定着させる。定着装置1は、筐体内にユニットとして配置される。記録媒体Sには、普通紙、厚紙、薄紙、封筒など、様々な種類のものがある。
【0025】
図1及び図2に示すように定着装置1は、定着部材としての定着ローラ2と、加圧部材としての加圧ローラ3と、押圧機構4と、温度センサ5と、外径センサ6と、速度センサ7と、を備えて構成されている。
【0026】
定着ローラ2には、図示しないヒータが内蔵されている。加圧ローラ3は押圧機構4によって定着ローラ2に押圧される。これにより、定着ローラ2と加圧ローラ3とは互いに圧着され、この圧着部分に定着ニップPが形成される。
【0027】
温度センサ5は、定着ローラ2の軸方向の両端に配置され、軸方向の温度分布を検出する。外径センサ6は、定着ローラ2の軸方向の両端に配置され、定着ローラ2の外径を検出する光学式センサである。速度センサ7は、定着ニップPの前後に配置されており、記録媒体Sを搬送する速度を測定する光学式センサである。
【0028】
記録媒体Sは、定着ニップPを通過するときに加熱および加圧される。これにより記録媒体Sにトナー像が定着される。定着ニップPのニップ圧は、定着ローラ2に加圧ローラ3を押し付けるときの加圧力(押圧力)が大きくなるほど大きくなる。また、定着ニップPのニップ幅は、ニップ圧が大きくなるほど広くなる。ニップ圧の適正値は、記録媒体Sの種類によって異なる。例えば、記録媒体Sが厚紙の場合と薄紙の場合で比較すると、厚紙の方が薄紙よりもニップ圧の適正値が高くなる。したがって、ニップ圧は、記録媒体Sの種類に応じて切り替えるように制御することが好ましい。
【0029】
図1及び図2に示すように、押圧機構4は、定着ローラ2に加圧ローラ3を押圧して定着ニップPを形成するための機構である。押圧機構4は、定着ローラ2に加圧ローラ3を押圧する際に押圧力を変化させるための第一圧力可変手段41と、第二圧力可変手段42と、第一圧力可変手段41及び第二圧力可変手段42が取り付けられるカム軸43と、を備えている。カム軸43の両端には複数のギアによって構成される動力伝達機構50が接続されており、動力源60からの回転力が伝達される構成となっている。
【0030】
第一圧力可変手段41は、第一カム部材41aと、第二カム部材41bと、を備えている。図2に示すように、第一カム部材41a及び第二カム部材41bは、加圧ローラ3の中心軸方向の一端側(前側)と他端側(後側)に一つずつ配置されている。
【0031】
第一カム部材41a及び第二カム部材41bは、カム軸43の中心軸周り方向において回転可能に配置されている。第一カム部材41a及び第二カム部材41bは、それぞれが独立して回転することで定着ローラ2から加圧ローラ3を離間又は押圧するものである。つまり、第一カム部材41aを回転することで、定着ニップPの前側のニップ幅を調整し、第二カム部材41bを回転することで、定着ニップPの後側のニップ幅を調整する。
【0032】
第二圧力可変手段42は、第三カム部材42aと、第四カム部材42bと、を備えている。図2に示すように、第三カム部材42a及び第四カム部材42bは、加圧ローラ3の中心軸方向の一端側(前側)と他端側(後側)に一つずつ配置されている。また、第三カム部材42aは、第一カム部材41aよりも内側に配置され、第四カム部材42bは第二カム部材41bよりも内側に配置されている。
【0033】
第三カム部材42a及び第四カム部材42bは、カム軸43の中心軸周り方向において回転可能に配置されている。第一カム部材41a及び第二カム部材41bは、それぞれが独立して回転することで定着ローラ2から加圧ローラ3を離間又は押圧するものである。つまり、第三カム部材42aを回転することで、定着ニップPの前側のニップ幅を調整し、第四カム部材42bを回転することで、定着ニップPの後側のニップ幅を調整する。
【0034】
ここで第一カム部材41aの形状について説明する。なお、以下では第一カム部材41aについて説明するが、第二カム部材41b、第三カム部材42a及び第四カム部材42bはいずれも同一の形状となっている。図3に示すように、第一カム部材41aは5段階に回転角度が設定されている。この回転角度は適宜設定できるが、本実施形態では、角度θ1が0°、角度θ2が132°、角度θ3が172°、角度θ4が288°、角度θ5が228°に設定されている。
【0035】
第一カム部材41aの回転中心からカム面までの距離である、カム高さは回転角度によって異なるように形成されている。以降の説明では、第一カム部材41aの回転中心からカム面までの距離を「カム高さ」とも記す。カム高さは、角度θ1<角度θ2<角度θ3<角度θ4<角度θ5の順に設定されている。つまり、角度θ1において最小となり、角度θ5において最大となる。そのため、圧力荷重は、角度θ1が最小、角度θ2小、角度θ3が中、角度θ4が大、角度θ5が最大となる。
【0036】
続いて、本発明の実施形態に係る定着装置1の動作として、押圧機構4により定着ローラ2に加圧ローラ3を押圧して、ニップ幅を調節する際の動作について説明する。
【0037】
画像形成装置で指定される印刷ジョブでは、印刷ジョブ中に記録媒体の種類が切り替わることがある。その場合、ある種類の記録媒体が定着ニップPを通過してから、それと別の種類の記録媒体が定着ニップPに到達するまでの間に、第一カム部材41a又は第二カム部材41b回転角を変更する。これにより、記録媒体の種類に応じて定着ニップPのニップ幅が変更される。定着ニップPに記録媒体が存在しない間に定着ニップ幅を変更することで、記録媒体のしわやJAMが発生することを防ぐことができる。また、速度センサ7により、記録媒体の先端が定着ニップPの前後に到達した時間を検知することで搬送速度の測定を行う。
【0038】
また、厚紙と薄紙を順に搬送して、各々の記録媒体にトナー像を定着させる場合、厚紙と薄紙では、厚紙のほうが適正な定着温度が高くなる。このため、厚紙と薄紙にトナー像を順に定着させる場合は、厚紙にトナー像を定着してから、薄紙にトナー像を定着するまでの間に、定着温度を下げる必要がある。
【0039】
しかし、定着温度を下げるには長い時間がかかるため、そのための待ち時間を設けると画像形成の生産性が低下してしまう。そこで、第一カム部材41a又は第二カム部材41bを回転させることでニップ幅を変更し、変更後のニップ幅を安定して維持することができる。つまり、記録媒体の坪量が小さい程、第一カム部材41a又は第二カム部材41bを回転させてニップ幅を小さくすることにより、定着ニップPを通過する記録媒体に加えられる熱量を減らすことができる。これにより、厚紙が通過した後の定着温度をそれほど下げなくても、薄紙への定着に適した熱量によって薄紙にトナー像を定着させることができる。このため、定着温度を下げるための待ち時間を短縮し、画像形成の生産性を向上させることができる。
【0040】
第一圧力可変手段41(第一カム部材41a、第二カム部材41b)によって、記録媒体Sの坪量に応じた適切なニップ幅に調整を行った後に、所定の条件に基づいて第二圧力可変手段42により、ニップ幅の微調節を行う。所定の条件としては種々の条件が考えられる。所定の条件が定着ローラ2の温度の場合と、定着ローラ2の外径である場合について、それぞれ説明する。
【0041】
<第1実施形態>
まず、所定の条件が定着ローラ2の温度である場合について説明する。一般に、定着ローラ2の温度は、記録媒体Sの種類などに応じて予め適正な温度範囲が決められており、その温度範囲に収まるようにヒータが制御される。ただし、定着ローラ2の温度は印刷ジョブ中に種々の理由で変化することがある。定着ローラ2の温度が適正な温度範囲を超えて高くなったり低くなったりすると、記録媒体Sに定着される画像の品質にばらつきが生じるおそれがある。
【0042】
そこで本実施形態においては、定着ローラ2の温度変化に応じて定着ニップPのニップ幅を調整するために、温度センサ5を用いる。第一圧力可変手段41によって記録媒体Sの種類に応じて大まかなニップ幅の調整を行った後に、第二圧力可変手段42(第三カム部材42a、第四カム部材42b)を用いてニップ幅の微調整を行う。両端の温度センサ5,5で検出した温度差が所定値(本実施形態では5℃)を超えたときに第三カム部材42a又は第四カム部材42bのどちらか一方を回転させることで、定着ニップPのニップ幅を調整する。
【0043】
具体的には、第三カム部材42a又は第四カム部材42bの内、温度センサ5から入力される定着ローラ2の温度が高い方のカム高さが大きくなる方向に回転させる。つまり、温度が高い側の定着ニップPの幅が狭くなるように調整する。これにより、薄紙時においては、ニップ幅を狭くしても、温度が高いため定着性を確保した状態でしわを防止することができる。また、厚紙時においては、ニップ幅を狭くしても、温度が高いため定着性を確保した状態で記録媒体Sの斜め搬送を防止できる。
【0044】
第三カム部材42a又は第四カム部材42bの内、温度センサ5から入力される定着ローラ2の温度が低い方のカム高さが小さくなる方向に回転させてもよい。つまり、温度が低い側の定着ニップPの幅が広くなるように調整する。これにより、薄紙時において、定着性がよくなるとともにしわを防ぐことができる。また、厚紙時において定着ニップ幅が広がるため、定着性がよくなり紙の斜め搬送を防止できる。
【0045】
以上説明したように、第1実施形態にかかる定着装置1は、定着ローラ2、加圧ローラ3、押圧機構4、温度センサ5、第二圧力可変手段42を備えて構成される。
【0046】
第1実施形態によれば、押圧機構4の第一カム部材41a又は第二カム部材41bが回転することでニップ幅を調整することができるため、記録媒体の坪量に応じて、適切な値のニップ幅に調整することができる。このため、種類の異なる記録媒体として、たとえば、厚さ(坪量)の異なる記録媒体を連続的に搬送して画像形成を実施する場合に、各々の記録媒体の厚さに適したニップ圧でトナー像を記録媒体に定着させることができる。また、速度センサ7を備えることが好ましい。これにより、定着ニップPのニップ幅バランスを監視できる。
【0047】
また、記録媒体の坪量に応じて定着ニップPの幅を調整する第一圧力可変手段41の他に温度センサ5の測定結果に応じて、定着ニップPの幅を微調整する第二圧力可変手段42を備える。これにより、より好適なニップ幅の調整を行うことができる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、所定の条件が定着ローラ2の外径である場合について説明する。定着ローラ2の外径は、通紙中に定着部材の軸方向の温度バランスが変化することで、熱膨張が起こり、定着ローラ2に外径差が発生する場合がある。これにより定着ローラ2の軸方向においてニップ幅のバランスが崩れるおそれがある。
【0049】
そこで本実施形態においては、第一圧力可変手段41によって記録媒体Sの種類に応じて大まかなニップ幅の調整を行った後に、第二圧力可変手段42(第三カム部材42a、第四カム部材42b)を用いてニップ幅の微調整を行う。両端の外径センサ6,6で検出した外径差が所定値(本実施形態では0.5mm)を超えたときに第三カム部材42a又は第四カム部材42bのどちらか一方を回転させることで、定着ニップPのニップ幅を調整する。
【0050】
具体的には、第三カム部材42a又は第四カム部材42bの内、外径センサ6から入力される定着ローラ2の外径が大きい方をカム高さが大きくなる方向に回転させる。つまり、定着ニップPの幅が狭くなるように調整する。これにより、薄紙時には定着ローラ2への負担が減るため、長寿命化できるとともにしわを防止することができる。厚紙時には定着ローラ2への負担が減るため、長寿命化できるとともに紙の斜め搬送を防ぐことができる。
【0051】
また、第三カム部材42a又は第四カム部材42bの内、外径センサ6から入力される定着ローラ2の外径が小さい方のカム高さを小さくなる方向に回転させる。つまり、定着ニップPの幅が広くなるように調整する。これにより、薄紙時にはニップ幅が広がることで、定着性がよくなるとともにしわも防止することができる。厚紙時にはニップ幅が広がることで、定着性がよくなるとともに紙の斜め搬送を防ぐことができる。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態にかかる定着装置1は、定着ローラ2、加圧ローラ3、押圧機構4、外径センサ6、第二圧力可変手段42を備えて構成されている。
【0053】
第2実施形態によれば、記録媒体の坪量に応じて定着ニップPのニップ幅を調整する第一圧力可変手段41の他に外径センサ6の測定結果に応じて、定着ニップPのニップ幅を微調整する第二圧力可変手段42を備える。これにより、より好適なニップ幅の調整を行うことができる。
【0054】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。また、上述した実施形態は、技術的な矛盾などが生じないかぎり、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0055】
例えば、定着ローラ2の温度や外径に基づいて定着ニップPのニップ幅の調整を行ったが、加圧ローラ3の温度や外径を測定して定着ニップPのニップ幅の調整を行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 定着装置
2 定着ローラ(定着部材)
3 加圧ローラ(加圧部材)
4 押圧機構
41 第一圧力可変手段
42 第二圧力可変手段
5 温度センサ
6 外径センサ
7 速度センサ
P 定着ニップ
S 記録媒体
図1
図2
図3