(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172337
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】デバイスおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/14 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G06F11/14 641Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089991
(22)【出願日】2023-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】519446001
【氏名又は名称】EDGEMATRIX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100215267
【弁理士】
【氏名又は名称】古屋 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100215555
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】杉原 英文
(57)【要約】
【課題】何らかの原因によって停止したデバイスの電源を制御することにより、停止状態から稼働状態へ復帰させることを可能とする、デバイスおよび制御方法を提供する。
【解決手段】デバイス1は、ボード2と、外部装置から電力が供給されるとともに、ボード2に電力を供給するボード電源3と、ボード2に搭載されてボード電源3から電力を供給される主演算処理装置(主CPU)4と、主CPU4との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置(副CPU)5と、ボード電源3から電力が供給されることにより充電が行われ、副CPU5に電力を供給する副電源6とを備え、副CPU5が主CPU4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、副CPU5は所定の時間においてボード2に電力を供給させないようボード電源3を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
を備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は所定の時間において前記ボードに電力を供給させないよう前記ボード電源を制御する、デバイス。
【請求項2】
前記ボードに搭載され、前記ボード電源から電力を供給されるモジュールをさらに備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記モジュールに電力を供給するよう前記ボード電源を制御する、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記モジュールは、外部機器との間で通信を行うための通信モジュールを含む、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
外部機器に電力を供給するイーサネット電力供給器をさらに備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記外部機器に電力を供給するよう前記イーサネット電力供給器を制御する、請求項1記載のデバイス。
請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、前記副演算処理装置は該検知の時刻を記録する、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
を備えたデバイスによる制御方法であって、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置が機能しているか否かを前記副演算処理装置により検知する工程と、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったことが前記副演算処理装置により検知されたときに、前記副演算処理装置が所定の時間において前記ボード電源を制御して前記ボードに電力を供給させない工程と、
を備えた、制御方法。
【請求項7】
前記デバイスは、前記ボードに搭載され、前記ボード電源から電力を供給されるモジュールをさらに備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記モジュールに電力を供給するよう前記ボード電源を制御する、請求項6記載の制御方法。
【請求項8】
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、前記副演算処理装置は該検知の時刻を記録する工程をさらに備えた、請求項6記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工知能(AI)を利用して、エッジデバイス(端末)でデータの処理を行うエッジAI機器として様々なものが知られている。このようなエッジAI機器では、データがクラウド上で処理されるのではなくエッジAI機器自身で処理されるため、リアルタイム性を向上させたりプライバシーの保護性を高めたりすることができる。このようなエッジAI機器として、従来から様々なものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なエッジAI機器では、映像入力から異常や変化をAIで監視し、外部へ何らかの方法で、その異常や変化を通知することをリアルタイムで行っており、その重要度によって、高い稼働率や可用性・信頼性が要求される。しかしながら、天候など環境の変化や事故等による電源断、あるいはバグ等やシステム自体の発熱など、事前に予期できないシステム上の問題によりエッジAI機器が停止してしまう場合が起こる。またAI推論用GPUは推論処理が過負荷となると高温となり、自身が停止してしまうことでエッジAI機器の機能停止が起こる。
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、何らかの原因によって停止したデバイスの電源を制御することにより、停止状態から稼働状態へ復帰させることを可能とする、デバイスおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のデバイスは、
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
を備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は所定の時間において前記ボードに電力を供給させないよう前記ボード電源を制御するものであることを特徴とする。
【0007】
本開示のデバイスは、
前記ボードに搭載され、前記ボード電源から電力を供給されるモジュールをさらに備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記モジュールに電力を供給するよう前記ボード電源を制御してもよい。
【0008】
本開示のデバイスにおいて、
前記モジュールは、外部機器との間で通信を行うための通信モジュールを含むこともできる。
【0009】
本開示のデバイスにおいて、
外部機器に電力を供給するイーサネット電力供給器をさらに備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記外部機器に電力を供給するよう前記イーサネット電力供給器を制御することもできる。
【0010】
本開示のデバイスにおいて、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、前記副演算処理装置は該検知の時刻を記録することもできる。
【0011】
本開示の制御方法は、
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
を備えたデバイスによる制御方法であって、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置が機能しているか否かを前記副演算処理装置により検知する工程と、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったことが前記副演算処理装置により検知されたときに、前記副演算処理装置が所定の時間において前記ボード電源を制御して前記ボードに電力を供給させない工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
本開示の制御方法において、
前記デバイスは、前記ボードに搭載され、前記ボード電源から電力を供給されるモジュールをさらに備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記モジュールに電力を供給するよう前記ボード電源を制御してもよい。
【0013】
本開示の制御方法は、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、前記副演算処理装置は該検知の時刻を記録する工程をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示のデバイスおよび制御方法によれば、何らかの原因によって停止したデバイスの電源を制御することにより、停止状態から稼働状態へ復帰させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態によるデバイスの主要な構成要素を示す図である。
【
図2】
図1に示すデバイスにおける制御系の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本開示に係る制御方法における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
[デバイス1]
図1に示すように、本開示の実施形態によるデバイス1は、ボード2と、ボード電源3と、主演算処理装置(主CPU)4と、副演算処理装置(副CPU)5と、副電源6と、モジュール7と、イーサネット電力供給器(PoE電源)8とを備える。これらの構成要素の配置は、
図1に示す配置に限定されない。
【0018】
ボード2としては、電子基板やマザーボードが挙げられるが、CPU、メモリ、ICチップ等のモジュールを搭載できるものであれば特に限定されない。
【0019】
ボード電源3は、外部装置から電力供給を受けて、ボード2に電力を供給する。このボード2に供給された電力が各モジュールに供給される。また、
図1に示すように、ボード電源3は、副電源6にも電力を供給し、これにより副電源6は充電される。ボード電源3は特に限定されない。
【0020】
主演算処理装置(主CPU)4は、ボード2に搭載されてボード電源3から電力を供給され、各モジュール7やPoE電源8を含むデバイス1全体に対して所定の制御を行う。主CPU4により、モジュール7やPoE電源8の電源制御を行うこともできる。主CPU4の例としてはNVIDIA(登録商標)JETSON(登録商標)CPUやGPUが挙げられるが、特に限定されない。
【0021】
副演算処理装置(副CPU)5は、主CPU4との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う。副CPU5は、ボード2の電源制御を行うことが可能である。また、副CPU5は、主CPU4を介して、モジュール7やPoE電源8の電源制御を行うことも可能である。このような機能を発揮できるものであれば、副CPU5も特に限定されない。「シリアル通信」によって、少ない信号線での通信が可能であり、独立して副CPU5が稼働する際の副CPU5への負荷が軽減される。
【0022】
本明細書において、「電源を制御する(電源制御)」とは、ボード2や主CPU4等にボード電源3から電力を供給させること及び供給させないことをいい(電源オンオフ)、コールドリセット、コールドリブートも含む。例えば、シリアル通信によって主CPU4が機能していないこと(主CPU4の電源断、フリーズ、異常。以下、まとめて「異常等」という)が副CPU5により検知されたときに、副CPU5は所定の時間においてボード2に電力を供給させないようボード電源3を制御することができる。ボード2や、主CPU4、モジュール7等を十分に放電させるため、コールドリセットを行う所定の時間は、好ましくは30秒から255分、より好ましくは30秒である。
【0023】
主CPU4と副CPU5との間でハートビート信号が定期的に送受信されることによりシリアル通信が行われるが、副CPU5が主CPU4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、主CPU4に異常等が発生したとみなして、副CPU5はボード電源3を制御して主CPU4への電力の供給を停止して所定の時間が経過した後に再供給することもできる。「所定の期間」としては、例えば、主CPU4の瞬断を検知するために、例えば10分受信しないときに異常が発生したとみなすことができる。また、シリアル通信によって主CPU4の異常等を検知したときに、副CPU5はこの主CPU4の異常等の履歴(ログ、時刻)を記録することもできる。なお、「主CPU4の異常等」の原因としては、アプリ(プログラム)のバグ、CPUの発熱、通信異常などが挙げられる。
【0024】
副CPU5は、外部電源入力のあるなしを検知する入力ピン(不図示)を有し、この入力ピンにより、電源断によって主CPU4が停止したのかその他の原因によって主CPU4が停止したのかを判断できるようになる。また、この入力ピンにより、電源断時の時刻を記録できるようになる。なお、入力ピンの構成としては、以上の機能を発揮できれば特に限定されない。
【0025】
副電源6は、ボード電源3から電力が供給されることにより充電され、副CPU5に電力を供給する。ボード電源3への電力供給が停止しても、フル充電された副電源6は1時間~1日独立して副CPU5に電力を供給できることが好ましい。主CPU4の異常等を検知する機能および主CPU4の異常等の履歴を記録する機能を副CPU5に発揮させるためである。上記機能を発揮できるものであれば、副電源6も特に限定されない。もっとも、主CPU4と比べて、副CPU5の機能は限定的なので、副CPU5と副電源6として小型のものを使用できるという利点がある。
【0026】
モジュール7は、ボード2に搭載され所定の機能を発揮する。デバイス1の用途に合わせてモジュール7を適宜に選択できる。具体的には、モジュール7は、外部機器との間で通信を行うための通信モジュールを含む。通信モジュールとしては5G/LTE対応の通信モジュールが挙げられる。ボード2に搭載されるモジュール7の数は限定されない。
【0027】
モジュール7は、電源スイッチ(モジュール電源スイッチ)7aを有する。モジュール電源スイッチ7aは、ボード電源3に電気的に接続され、ボード電源3から電力が供給される。モジュール7は通常、ボード電源3から供給される電力により所定の機能を発揮する。モジュール電源スイッチ7aとして、公知のものを用いることができ、特に限定されない。
【0028】
イーサネット電力供給器(PoE電源)8は、外部機器(例えば、IPカメラ)に電力を供給するイーサネット電力供給器である。PoE電源8の数は限定されない。
【0029】
次に、デバイス1の制御系の構成について
図2を用いて説明する。
図2に示すように、主CPU4と副CPU5にはそれぞれ制御部4a、5aが設けられている。制御部4a、5aには、通信部4b、5b、記憶部4c、5c、タイマー4d、5dがそれぞれ接続されている。そして、制御部4a、5aからこれらの構成要素に対して様々な指令が送られるようになっている。
【0030】
通信部4b、5bを介して主CPU4と副CPU5との間でシリアル通信ができるようになっている。シリアル通信が途絶えた場合、制御部5aは主CPU4に異常等が発生したと判断する。記憶部5cには、主CPU4に異常等が発生したログ等の様々な情報が記憶され、記憶部4cには記憶部5cから読み出したログ等の様々な情報が記憶される。また、ログはタイマー5dの時刻に合わせて記録される。コールドリブート後に、タイマー4dの時刻はタイマー5dの時刻と一致するように調整されるが、シリアル通信中に、主CPU4と副CPU5との間で時刻合わせが行われることが主CPU4の異常等を検知するために好ましい。
【0031】
[制御方法]
次に、このような構成からなるデバイス1の動作(制御方法)について
図3に示すフローチャートを用いて説明する。以下に示すデバイス1の動作は、副演算処理装置(副CPU)5の制御部5aが各構成要素を制御することにより行われる。なお、通常時(主CPU4が正常に機能しているとき)の電力供給は、外部装置からボード電源3に対して行われ、この電力がボード2、主CPU4、モジュール7、PoE電源8に供給される。さらに、副電源6も、ボード電源3から電力供給を受け、充電される。
【0032】
図3は、本開示に係る制御方法における処理を示すフローチャートである。まず、副CPU5(制御部5a)がシリアル通信によって主CPU4が機能しているか否かを検知する(
図3、ステップS10)。
【0033】
副CPU5が主CPU4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知すると、主CPU4が機能していない(例えば、外部電源瞬断や発熱等によるバグが原因でシリアル通信が途絶えた)とみなして(
図3、ステップS20の「NO」)、副CPU5は主CPU4に異常等が発生したと記憶部6cに記録する(
図3、ステップS30)。
【0034】
次に、副CPU5は、所定の時間においてボード2(および主CPU4)に電力を供給させないようにボード電源3を制御する(
図3、ステップS40)。ここで、副CPU5は、ボード2に電力を供給させないよう外部電源からボード電源3への電力供給を停止することができる。
【0035】
ステップS40の後、副CPU5は、ボード電源3を制御してボード2に電力を供給させる(
図3、ステップS50)。これにより、主CPU4にも電力が供給され、シリアル通信が再開する(
図3、ステップS60)。
【0036】
他方、副CPU5が主CPU4からハートビート信号を受信する、あるいはハートビート信号をしない期間が所定の期間よりも小さいと検知すると、主CPU4が機能しているとみなして(
図3、ステップS20の「YES」)、副CPU5はシリアル通信を継続する(
図3、ステップS60)。
【0037】
最後に、ボード電源3を停止させる停止信号が発信されると(
図3、ステップS70の「YES」)、ボード電源3が停止する(
図3、ステップS80)。他方、ステップS60の後に、停止信号が発信されないと(
図3、ステップS70の「NO」)、シリアル通信は継続されつつ、処理はステップS10に戻る。
【0038】
以上のような構成からなる本実施の形態のデバイス1および制御方法において、ボード2と、外部装置から電力が供給されるとともに、ボード2に電力を供給するボード電源3と、ボード2に搭載されてボード電源3から電力を供給される主演算処理装置(主CPU)4と、主演算処理装置4との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置(副CPU)5と、ボード電源3から電力が供給されることにより充電が行われ、副演算処理装置5に電力を供給する副電源6と、が設けられている。副演算処理装置5が主演算処理装置4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、副演算処理装置5は所定の時間においてボード2に電力を供給させないようボード電源3を制御する。
【0039】
このような本開示に係るデバイス1および制御方法によれば、副CPU5への電力供給が続く限り、シリアル通信によって主演算処理装置4の瞬断も検知可能であり、また、外部電源がボード電源3へ電力が供給される限り、ボード電源3からボード2への電力供給を副CPU5により制御(再開も含む)できる。具体的には、デバイス1が正常動作していると副CPU5は主CPU4と通信し、ハートビート信号を交換する。他方、動作中に何らかの原因(バグ、GPU発熱等)でハートビート信号が停止すると、副CPU5はそれを検出して電源再投入を行う。外部電源が立ち上がる時に、主CPU4も立ち上がり、シリアル通信が再開する。結果として、主電源(ボード電源3)が入っていれば、止まらないサービスを提供できる。このように、ハートビート信号を利用することにより、主演算処理装置4の異常等を自動的に検知することができる。
【0040】
副CPU5は、ハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、所定の時間においてボード2に電力を供給させないようボード電源3を制御し、さらにボード2に電力を供給させるようボード電源3を制御することができる(コールドブート。
図3、ステップS40~S50)。主CPU4が瞬断した場合、本来のシャットダウン処理が行われていないためシステムの状態に矛盾が生じたりする恐れがある。アプリの再起動に過ぎないウォームリブートに比べて、上記のようにボード2、ひいては主CPU4(ハードウェア)の電源を完全に切った状態から再起動させるコールドリブートによって、瞬断による不具合を効果的に抑制することができる。
【0041】
また、本開示に係るデバイス1および制御方法において、ボード2に搭載され、ボード電源3から電力を供給されるモジュール7がさらに設けられ、副演算処理装置5が主演算処理装置4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、副演算処理装置5はモジュール7に電力を供給するようボード電源3を制御してもよい。このモジュール7として、外部機器との間で通信を行うための通信モジュール7を含んでよい。また、本開示に係るデバイス1および制御方法において、外部機器に電力を供給するイーサネット電力供給器(PoE電源)8がさらに設けられ、副演算処理装置5が主演算処理装置4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、副演算処理装置5は前記外部機器に電力を供給するようイーサネット電力供給器8を制御してもよい。
【0042】
このように、本開示に係るデバイス1および制御方法は、多種多様なモジュールに適用でき、副CPU5は各モジュールに対して個別に電源制御することもできる。上述したように、主CPU4がモジュール7やPoE電源8を含むデバイス1全体に対して所定の制御を行い、主CPU4がモジュール7やPoE電源8の電源制御(放電、コールドリブート)をすることができる。他方、副CPU5単独では、例えば、通信モジュール7が外部機器と正常に通信を行っているか検知できない。もっとも、主CPU4を介すれば、副CPU5は通信モジュール7やPoE電源8が外部機器と正常に通信を行っているか検知することができ、これらの電源制御を個別に行うことも可能である。
【0043】
また、本開示に係るデバイス1および制御方法において、副演算処理装置5が主演算処理装置4からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、副演算処理装置5は検知した時刻を記録してもよい。このように、主CPU4に異常等(電源断)が発生した場合、副CPU5は、異常等のログを記録し、電源回復時に主CPU4が正常に起動した場合にそのログを読み出すことが好ましい(主CPU4では電源断を検出できないのでログを取れない)。本開示に係るデバイス1および制御方法によれば、この記録(ログ)を基に、異常等の原因を追究できる。
【0044】
何らかの原因によって停止したデバイスの電源を制御して停止状態から稼働状態へ復帰させるために、従来から、外部に専用装置を配置し、LANなどで停止を検知してデバイスの電源を制御できる装置があるが、外部装置のスペースが必要であり、LANなどの敷設とその外部装置等自体のためのコストがかかり、さらに復帰までに時間がかかるといった欠点があった。これに対して、本開示に係るデバイス1および制御方法では、デバイス1内に小型化可能な制御用副CPU5を配置し、主CPU4を含むボード2全体の電源制御を行えるのに加え、重要能動部品でかつ通信障害を起こしやすい通信モジュール7とPoE電源8を個別に電源制御できることで、機器(デバイス1)停止からの復帰を短時間で柔軟に行うことが可能である。また、雷などの外部要因で電源瞬断が機器の正常復帰を阻害することが多く発生するが、本開示に係るデバイス1および制御方法では、副CPU5に小型化可能なバッテリー(副電源6)を取り付け、瞬断時も副CPU5は動作を継続できるようにして制御の安定性を高めている。
【0045】
なお、本実施の形態による貨幣処理システムは、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0046】
例えば、
図1に示す例では、副演算処理装置(副CPU)5がデバイス1に内蔵されたものと図示しているが、副CPU5はデバイス1の外付けモジュールとしてデバイス1に取り付けられてもよい。この場合、副電源6やケーブル配線などと共に、副CPU5は防水性、耐熱性、対候性等を備えた筐体に格納されてもよい。また、副電源6に対して外部電源から電力供給させてもよい。
【0047】
また、デバイス1は、AIを利用するエッジAI機器として好適に使用できる。
【0048】
また、本実施の形態のデバイス1および制御方法において、モジュール7やイーサネット電力供給器8の回復時に正常に起動しなかった場合、副CPU5はそれを検出して、再度、正常に立ち上がるように電源再投入を行ってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 デバイス
2 ボード
3 ボード電源
4 主演算処理装置(主CPU)
5 副演算処理装置(副CPU)
6 副電源
7 モジュール(通信モジュール)
7a モジュール電源スイッチ
8 イーサネット電力供給器(PoE電源)
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
前記ボードに搭載され、前記ボード電源から電力を供給されるモジュールと、
を備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は所定の時間において前記ボードに電力を供給させないよう前記ボード電源を制御し、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記モジュールに電力を供給するよう前記ボード電源を制御する、デバイス。
【請求項2】
前記モジュールは、外部機器との間で通信を行うための通信モジュールを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
外部機器に電力を供給するイーサネット電力供給器と、
を備え、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は所定の時間において前記ボードに電力を供給させないよう前記ボード電源を制御し、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記外部機器に電力を供給するよう前記イーサネット電力供給器を制御する、デバイス。
【請求項4】
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、前記副演算処理装置は該検知の時刻を記録する、請求項1または3記載のデバイス。
【請求項5】
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
前記ボードに搭載され、前記ボード電源から電力を供給されるモジュールと、
を備えたデバイスによる制御方法であって、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置が機能しているか否かを前記副演算処理装置により検知する工程と、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったことが前記副演算処理装置により検知されたときに、前記副演算処理装置が所定の時間において前記ボード電源を制御して前記ボードに電力を供給させない工程と、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記モジュールに電力を供給するよう前記ボード電源を制御する工程と、
を備えた、制御方法。
【請求項6】
ボードと、
外部装置から電力が供給されるとともに、前記ボードに電力を供給するボード電源と、
前記ボードに搭載されて前記ボード電源から電力を供給される主演算処理装置と、
前記主演算処理装置との間でハートビート信号を定期的に送受信することによりシリアル通信を行う副演算処理装置と、
前記ボード電源から電力が供給されることにより充電が行われ、前記副演算処理装置に電力を供給する副電源と、
外部機器に電力を供給するイーサネット電力供給器と、
を備えたデバイスによる制御方法であって、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置が機能しているか否かを前記副演算処理装置により検知する工程と、
前記シリアル通信によって前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったことが前記副演算処理装置により検知されたときに、前記副演算処理装置が所定の時間において前記ボード電源を制御して前記ボードに電力を供給させない工程と、
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったときに、前記副演算処理装置は前記外部機器に電力を供給するよう前記イーサネット電力供給器を制御する工程と、
を備えた、制御方法。
【請求項7】
前記副演算処理装置が前記主演算処理装置からハートビート信号を受信しない期間が所定の期間よりも大きくなったと検知したときに、前記副演算処理装置は該検知の時刻を記録する工程をさらに備えた、請求項5または6記載の制御方法。