(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017234
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】マンホール用鉄蓋の施錠装置
(51)【国際特許分類】
E02D 29/14 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E02D29/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119745
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】畑 信行
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BB02
(57)【要約】
【課題】鉄蓋の施錠と手鉤孔の閉塞とが同時に行えると共に、鉄蓋と手鉤孔用小蓋との間の密閉性を高め、管路への雨水の侵入を防ぐことのできるマンホール用鉄蓋の施錠装置を提供する。
【解決手段】受枠内に嵌め込まれる鉄蓋の下部に回動自在に取り付けられたロック本体と、前記鉄蓋に形成された手鉤孔と、前記ロック本体に回動自在に取り付けられた、前記手鉤孔を閉塞する閉塞用小蓋と、前記受枠に形成されたフック受けとからなり、前記鉄蓋の開放時、前記ロック本体は、前記閉塞用小蓋の下降に伴って前記軸支部を中心として前記フックが前記フック受けから外れる方向に回動する、マンホール用鉄蓋の施錠装置において、前記閉塞用小蓋の昇降をガイドするガイド手段と、前記手鉤孔の閉塞時、前記手鉤孔を密閉する手鉤孔用シール手段を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠内に嵌め込まれる鉄蓋の下部に回動自在に取り付けられたロック本体と、
前記鉄蓋に形成された手鉤孔と、
前記ロック本体に回動自在に取り付けられた、前記手鉤孔を閉塞する閉塞用小蓋と、
前記受枠に形成されたフック受けとからなり、
前記ロック本体は、
前記フック受けと係合する少なくとも1つのフックを有し、
前記鉄蓋の閉塞時、前記ロック本体は、
前記鉄蓋との軸支部を中心として前記フックが前記フック受けに係合する方向に回動すると共に、前記閉塞用小蓋を上昇させて前記手鉤孔を閉塞させ、
前記鉄蓋の開放時、前記ロック本体は、
前記閉塞用小蓋の下降に伴って前記軸支部を中心として前記フックが前記フック受けから外れる方向に回動する、マンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記閉塞用小蓋の昇降をガイドするガイド手段と、
前記手鉤孔の閉塞時、前記手鉤孔を密閉する手鉤孔用シール手段を備えることを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記手鉤孔用シール手段は、
前記鉄蓋に形成されたガイド面と、
前記閉塞用小蓋に取り付けられるシール部材とからなることを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項3】
請求項2に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記ガイド面は、重力方向に対する角度が前記鉄蓋の側面の重力方向に対する角度よりも大きく形成されることを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項4】
請求項2に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記シール部材は、前記鉄蓋と対向する面に前記手鉤孔の周縁形状に対応する凸状部を有することを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項5】
請求項1に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記ガイド手段は、
前記閉塞用小蓋に形成されたガイド用突起と、
前記鉄蓋に形成された、前記ガイド用突起が昇降するガイド溝とからなることを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項6】
請求項5に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記ガイド用突起の上部には、ストッパが形成され、
前記ガイド溝の下部には、前記ストッパを受けるストッパ受けが形成されていることを特徴とするマンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項7】
請求項1に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記ガイド手段は、
前記鉄蓋に形成されたガイド用突起と、
前記閉塞用小蓋に形成された前記ガイド用突起に沿って昇降するガイド溝とからなることを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項8】
請求項7に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記ガイド溝の上部には、ストッパが形成され、
前記ガイド用突起の下部には、前記ストッパを受けるストッパ受けが形成されていることを特徴とするマンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項9】
請求項1に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記フックが前記フック受けに係合する方向の回転力を前記ロック本体に付与するねじりばねを有していることを特徴とするマンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項10】
請求項1に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記ロック本体は、前記軸支部の下方に少なくとも1つの受枠当接部を有し、
前記フックの下部には、前記受枠の周壁上部との接触を避ける逃げ部が形成されていることを特徴する、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【請求項11】
請求項10に記載のマンホール用鉄蓋の施錠装置において、
前記受枠当接部は、前記ロック本体の幅方向中央に形成されていることを特徴とする、マンホール用鉄蓋の施錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄蓋に設けられた手鉤孔からの余計な雨水の侵入を防ぐことができるマンホール用鉄蓋の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄蓋の下面に設けられたロック本体による鉄蓋の施錠と、ロック本体に回動自在に取り付けられた手鉤孔用開閉蓋による手鉤孔の閉塞とが同時に行えるマンホール用鉄蓋の施錠装置が知られている。
【0003】
特許文献1の鉄蓋施錠装置は、ロック本体による鉄蓋の施錠と手鉤孔用開閉蓋による手鉤孔の閉塞とが同時に行えると共に、鉄蓋を開閉するための専用手鉤以外の工具では、ロック本体による施錠を解除することができない構造を有している。このような発明によれば、不特定人による鉄蓋の開放を防止することができ、安全性の高い鉄蓋施錠装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、下水道には、合流式と分流式の2つの方式がある。合流式は、生活排水と雨水を同じ管路で運び、下水処理場でまとめて処理してから河川等の公共用水域に放流する。分流式は、生活排水と雨水を別々の管路で運び、雨水はそのまま公共用水域に放流し、生活排水だけを下水処理場まで運び処理してから公共用水域に放流する。このとき、生活排水を運ぶ管路に余計な雨水が侵入すると、下水処理場に負担がかかってしまい、下水処理場の処理能力を超えた場合には、十分に処理されない生活排水が公共用水域へ放流されるおそれがある。
【0006】
特許文献1の鉄蓋施錠装置は、手鉤孔用開閉蓋によって手鉤孔の閉塞が可能であり、砂利やゴミ等の異物が管路内に侵入しにくい構造ではあるが、大雨等の際には、鉄蓋と手鉤孔用開閉蓋の隙間から雨水が管路へ侵入してしまうという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、鉄蓋の施錠と手鉤孔の閉塞とが同時に行えると共に、鉄蓋と手鉤孔用小蓋との間の密閉性を高め、管路への雨水の侵入を防ぐことのできるマンホール用鉄蓋の施錠装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、受枠内に嵌め込まれる鉄蓋の下部に回動自在に取り付けられたロック本体と、前記鉄蓋に形成された手鉤孔と、前記ロック本体に回動自在に取り付けられた、前記手鉤孔を閉塞する閉塞用小蓋と、前記受枠に形成されたフック受けとからなり、前記ロック本体は、前記フック受けと係合する少なくとも1つのフックを有し、前記鉄蓋の閉塞時、前記ロック本体は、前記鉄蓋との軸支部を中心として前記フックが前記フック受けに係合する方向に回動すると共に、前記閉塞用小蓋を上昇させて前記手鉤孔を閉塞させ、前記鉄蓋の開放時、前記ロック本体は、前記閉塞用小蓋の下降に伴って前記軸支部を中心として前記フックが前記フック受けから外れる方向に回動する、マンホール用鉄蓋の施錠装置において、前記閉塞用小蓋の昇降をガイドするガイド手段と、前記手鉤孔の閉塞時、前記手鉤孔を密閉する手鉤孔用シール手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記手鉤孔用シール手段は、前記鉄蓋に形成されたガイド面と、前記閉塞用小蓋に取り付けられるシール部材とからなると好適である。
【0011】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記ガイド面は、重力方向に対する角度が前記鉄蓋の側面の重力方向に対する角度よりも大きく形成されると好適である。
【0012】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記シール部材は、前記鉄蓋と対向する面に前記手鉤孔の周縁形状に対応する凸状部を有すると好適である。
【0013】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記ガイド手段は、前記閉塞用小蓋に形成されたガイド用突起と、前記鉄蓋に形成された、前記ガイド用突起が昇降するガイド溝とからなると好適である。
【0014】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記ガイド用突起の上部には、ストッパが形成され、前記ガイド溝の下部には、前記ストッパを受けるストッパ受けが形成されていると好適である。
【0015】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記ガイド手段は、前記鉄蓋に形成されたガイド用突起と、前記閉塞用小蓋に形成された前記ガイド用突起に沿って昇降するガイド溝とからなると好適である。
【0016】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記ガイド溝の上部には、ストッパが形成され、前記ガイド用突起の下部には、前記ストッパを受けるストッパ受けが形成されていると好適である。
【0017】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記フックが前記フック受けに係合する方向の回転力を前記ロック本体に付与するねじりばねを有していると好適である。
【0018】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、 前記ロック本体は、前記軸支部の下方に少なくとも1つの受枠当接部を有し、 前記フックの下部には、前記受枠の周壁上部との接触を避ける逃げ部が形成されていると好適である。
【0019】
本発明に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、前記受枠当接部は、前記ロック本体の幅方向中央に形成されていると好適である。
【0020】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、手鉤孔の周縁部と閉塞用小蓋との隙間を密閉するシール部材と、閉塞用小蓋の昇降をガイドし、重力方向に対して一定の傾斜角度を有するガイド面からなる手鉤孔用シール手段を設けることによって、鉄蓋と手鉤孔用小蓋との間の密閉性及び受枠と手鉤孔用小蓋との間の密閉性を高めることができる。また、ガイド面の傾斜角度が鉄蓋の側面の重力方向に対する角度よりも大きく形成されることにより、閉塞用小蓋の下降時に、閉塞用小蓋は、受枠の周壁から離間する方向に移動するため、シール部材の擦れや摩耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置の施錠時における断面図。
【
図3】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置を鉄蓋の径方向内側からみた斜視図
【
図5】本実施形態に係るロック本体と閉塞用小蓋を示す分解斜視図。
【
図6】本実施形態に係る閉塞用小蓋を示す分解斜視図。
【
図7】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋の開蓋時の状態を示す図であって、手鉤を閉塞用小蓋に当接させた状態を示す断面図。
【
図8】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋の開蓋時の状態を示す図であって、手鉤を手鉤孔に挿入し施錠を解除した状態を示す断面図。
【
図9】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋の開蓋時の状態を示す図であって、手鉤を手前に引き上げて鉄蓋を開放する状態を示す断面図。
【
図10】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋の閉蓋時の状態を示す図であって、受枠当接部が受枠の周壁上端と当接した状態を示す断面図。
【
図11】本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋の閉蓋時の状態を示す図であって、受枠当接部が受枠の周壁を滑る状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置の施錠時における断面図、
図2は、本実施形態に係る鉄蓋の断面図、
図3は、本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置を鉄蓋の径方向内側からみた斜視図、
図4は、本実施形態に係るロック本体の斜視図、
図5は、本実施形態に係るロック本体と閉塞用小蓋を示す分解斜視図、
図6は、本実施形態に係る閉塞用小蓋を示す分解斜視図である。なお、本明細書において、鉄蓋の径方向内側及び外側とは、
図1及び
図2に示す矢印の方向と向きと定義する。また、本明細書において、ロック本体及び鉄蓋の幅方向とは、
図4に示す矢印の方向と向きと定義する。
【0025】
本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置は、
図1に示すように、マンホール上部に設置された受枠10に形成されるフック受け12と、鉄蓋20の下部に取り付けられたロック本体30と、鉄蓋20の一部を開口するように形成された手鉤孔23と、手鉤孔23を閉塞する閉塞用小蓋40によって構成される。
【0026】
受枠10は、例えば下水道の配管を点検・管理するために道路などに設けられ、開口が円形であるマンホールの上部に設置される。
図1に示すように、受枠10の周壁11は、開口面から重力方向下方に向かって円の直径が小さくなるような勾配が形成され、勾配の下端には後述するロック本体30のフック34と係合するフック受け12を備える。フック受け12は、受枠10の周壁11から下方へ延長し、周方向にひとつながりの突起部となる。
【0027】
鉄蓋20には、受枠10の周壁11と略平行な勾配を有する側面21が形成される。このため、鉄蓋20を受枠10に嵌め込んだ際、側面21と周壁11が接触し、鉄蓋20は受枠10から落下することがない。なお、本明細書において、
図2に示すように、重力方向に対する側面21の勾配角度をθ1と定義する。
【0028】
また、鉄蓋20は、
図2に示すように、周縁近傍の下部に形成される軸支部用溝22と、軸支部用溝22に対して径方向外側に形成される手鉤孔23と、手鉤孔23の下方に形成されるガイド溝25を有する。
【0029】
軸支部用溝22は、
図1に示すように、ロック本体30の取り付け部であって、後述する軸支部31を回動自在に支える。軸支部用溝22は、
図2に示すように、鉄蓋20の幅方向に対向して形成される一対の溝であって、鉄蓋20の周縁近傍の下部に設けられる。
図3に示すように、対向する軸支部用溝22の少なくとも一方側には、径方向内側に開放される入口22aを有する。ロック本体30は、後述する軸支部31を入口22aから軸支部用溝22に挿入することにより、鉄蓋20に回動自在に取付けられる。
【0030】
入口22aには、
図3に示すように、軸支部用溝22から軸支部31が抜け出さないように、抜き出し防止用ボルト24aが挿通され、防止用ボルト24aはナット24bにより固定されている。
【0031】
手鉤孔23は、鉄蓋20を開閉する際に使用される手鉤を挿入するための孔である。手鉤孔23は、
図1に示すように、ロック本体30の取付位置と対応する位置であって、鉄蓋20の周縁部に形成される。手鉤孔23は、一例として、鉄蓋20の上部から見て略U字状に開口するように形成される。
【0032】
ガイド溝25は、閉塞用小蓋40の昇降をガイドする。ガイド溝25は、
図2に示すように、手鉤孔23の下部に、鉄蓋20の幅方向に対向して形成される一対の溝である。ガイド溝25は、鉄蓋20の径方向に対向するガイド面を有する。本明細書において、径方向内側に位置するガイド面を内側ガイド面25a、径方向外側に位置するガイド面を外側ガイド面25bと定義する。内側ガイド面25a及び外側ガイド面25bは、重力方向に対して角度θ2となる勾配を有する。勾配角度θ2は、側面21の勾配角度θ1の勾配より大きくなるように形成される。本実施形態において、勾配角度θ2は、勾配角度θ2に対して、0.1~30°大きいと好適であり、2°程度大きいとより好適である。
【0033】
内側ガイド面25aの下部には、後述する閉塞用小蓋40のストッパ44を受けるストッパ受け26が形成される。
【0034】
ロック本体30は、
図1及び
図4に示すように、鉄蓋20との取り付け部である軸支部31と、軸支部31に対して下方に形成されるウエイト部32と、軸支部31に対して鉄蓋20の径方向外側に形成されるアーム33と、軸支部31に対して下方であって鉄蓋20の径方向外側に形成される一対のフック34と、一対のフック34の間に形成される受枠当接部35とを有する。
【0035】
ロック本体30は、
図1に示すように、軸支部31を軸支部用溝22に挿入することにより、鉄蓋20に対して回動可能に取り付けられる。ロック本体30は、鉄蓋20の閉蓋時において、ウエイト部32の自重により、フック34がフック受け12に係合する状態で保持される。なお、ロック本体30の径方向内側にねじりばね36を設け、ロック本体30に軸支部31を中心として
図1中、時計回りの回転力を付与し、フック34とフック受け12の係合を補助しても構わない。
【0036】
軸支部31は、
図4に示すように、幅方向外側に向かって延出する一対の軸部である。軸支部31は、鉄蓋20の径方向外側に、軸径の一部が平面に形成された平面部31aを有する。
【0037】
アーム33は、ロック本体30の略中央部から鉄蓋20の径方向外側かつ上方に向かって突設し、先端部には係合軸33aが形成される。係合軸33aは、後述する閉塞用小蓋40の係合溝41と係合し、閉塞用小蓋40を支持する。
【0038】
フック34は、
図1に示すように、鉄蓋20の閉蓋時、受枠10のフック受け12と係合し、鉄蓋20を施錠する。フック34は、
図4に示すように、左右対称となるように幅方向に一対に形成される。フック34の下部には、一部が凹形状に形成された逃げ部34aを有し、鉄蓋20の閉蓋時において、受枠10とフック34との接触を回避することができる。
【0039】
受枠当接部35は、一対のフック34の間であって幅方向略中央に形成される。受枠当接部35は、
図1に示すように、逃げ部34aよりも鉄蓋20の径方向外側に延出するように形成される。このような受枠当接部35によれば、鉄蓋20の閉蓋時に受枠当接部35のみが受枠10の周壁11と当接し、衝撃によるフック34の損傷を防ぐことができる。
【0040】
閉塞用小蓋40は、
図1に示すように、鉄蓋20の閉蓋時、手鉤孔23を閉塞する。閉塞用小蓋40は、
図5に示すように、ロック本体30の幅方向に対向して形成される一対の係合溝41と、係合溝41の下部に形成されるウエイト部42と、両側面の外側に形成される一対のガイド用突起43を有する。また、閉塞用小蓋40の上部には、シール部材50が取り付けられる。
【0041】
係合溝41には、ロック本体30の係合軸33aが挿入され、閉塞用小蓋40は、ロック本体30に対して回動自在に取付けられる。係合溝41は、鉄蓋20の径方向内側が開放するように形成される。
【0042】
ガイド用突起43は、鉄蓋20のガイド溝25とスライド自在に係合し、閉塞用小蓋40の昇降をガイドする。ガイド用突起43の上部には、鉄蓋20の径方向内側に向かって突出するストッパ44が形成される。また、ガイド用突起43の下部には、
図6に示すように、鉄蓋20の径方向外側に向かって突出する傾き防止用突起部47が形成されても構わない。このような傾き防止用突起部47によれば、鉄蓋20のガイド溝25の幅が広い場合であっても、ガイド用突起43自体の幅を広げることなく、傾き防止用突起部47を外側ガイド面25bに当接させ、閉塞用小蓋40の傾きを防ぐことができる。
【0043】
シール部材50は、
図1に示すように、鉄蓋20の閉蓋時において、鉄蓋20と閉塞用小蓋40との間に位置し、鉄蓋20と閉塞用小蓋40との隙間を塞ぎ、手鉤孔23を密閉する。シール部材50は、
図6に示すように、手鉤孔23の周縁部形状に対応した形状を有する。シール部材50は、閉塞用小蓋40の上部に形成されたシール用当接面45に当接し、シール用溝46に嵌め込むことで閉塞用小蓋40に固定される。シール部材50は、鉄蓋20と対向する面に、断面形状が略三角形であって手鉤孔23の周縁部形状に対応する凸状部51を有する。このような凸状部51によれば、鉄蓋20の閉蓋時にシール部材50と鉄蓋20との間に発生する面圧を高め、シール効果を向上させることができる。シール部材50には、弾力性を有する材料であって、紫外線や風雨にさらされても物性の変化が少ない材料が用いられ、例えば、ゴム等の高分子材料が用いられると好適である。
【0044】
次に、本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による、鉄蓋20の開放及び施錠方法について、図面を参照しながら説明する。
【0045】
図7は、本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋20の開閉状態を示す図であって、手鉤60を閉塞用小蓋40に当接させた状態を示す断面図、
図8は、手鉤60を手鉤孔23に挿入し施錠を解除した状態を示す断面図、
図9は、手鉤60を手前に引き上げて鉄蓋20を開放する状態を示す断面図、
図10は、本実施形態に係るマンホール用鉄蓋の施錠装置による鉄蓋20の閉蓋時の状態を示す図であって、受枠当接部35が受枠10の周壁11上端と当接した状態を示す断面図、
図11は、受枠当接部35が受枠の周壁11を滑る状態を示す断面図である。
【0046】
図7に示すように、施錠された状態のロック本体30に取り付けられた閉塞用小蓋40の上面に、手鉤60のT字状先端部61を当接させる。次に、
図8に示すように、T字状先端部61を手鉤孔23に挿入して、閉塞用小蓋40を押し下げると、閉塞用小蓋40の下降に伴ってロック本体30が軸支部31を中心として
図8中、反時計方向に回動する。これによりフック34がフック受け12から外れ、鉄蓋20の施錠が解除される。このようにして、鉄蓋20の施錠が解除されたら、手鉤60を90°回転させ、T字状先端部61を手鉤孔23の周縁下部に引っ掛ける。次に、
図9に示すように、T字状先端部61を手鉤孔23の周縁下部に引っ掛けた状態で、手鉤60を鉄蓋20の径方向外側に倒し込み、てこの原理を利用して、鉄蓋20と受枠10の食い込みを解除する。この後、手鉤60を手前に引き上げれば、鉄蓋20は開放される。
【0047】
手鉤60により閉塞用小蓋40が押し下げられる際、閉塞用小蓋40のガイド用突起43が鉄蓋20のガイド溝25にガイドされるので、閉塞用小蓋40は、どこにも引っ掛かることなく、姿勢を維持した状態で円滑に下降する。閉塞用小蓋40が下降すると、ガイド用突起43上部のストッパ44が、鉄蓋20のガイド溝25下部のストッパ受け26に当接するため、閉塞用小蓋40は、ガイド溝25から外れることがない。
【0048】
なお、このとき軸支部31には平面部31aが形成されているため、ロック本体30が軸支部31を中心として
図9中、反時計方向に回動した際、軸支部31は鉄蓋20の軸支部用溝22内で下方に移動することができる。このため、軸支部31に平面部31aが形成されていない場合と比較して、ロック本体30は、鉄蓋20の径方向内側の下面との干渉を回避することができ、より大きく回動することが可能となる。
【0049】
一方、鉄蓋20を閉蓋するときは、上記の鉄蓋20を開放するときと逆の手順で、手鉤60を使用してロック本体30を回動させ、鉄蓋20を閉蓋するのが好ましいが、実際の作業の現場では、手鉤60を使わずに、鉄蓋20をそのまま受枠10に落とし込まれる場合も考えられる。その際には、
図10及び
図11に示すように、受枠当接部35が受枠10の周壁11の上端と当接し、ロック本体30は、受枠当接部35が受枠10の周壁11を滑ることによって、自然に軸支部31を中心に回動し、鉄蓋20が下がる。ロック本体30は、フック34がフック受け12を乗り越えると、ロック本体30のウエイト部32の自重と、ねじりばね36により
図1に示す姿勢に保持され、鉄蓋20は施錠される。
【0050】
また、ロック本体30には、下水道管路内の雰囲気による腐食を防ぐため塗装処理等が施されている。ロック本体30の閉蓋時に受枠10と接触する部分は、塗膜が剥がれ金属面が露出することで、接触部から腐食が進行する恐れがある。そのため、フック34の下部には逃げ部34aを形成し、受枠当接部35以外の部位と受枠10とを接触させないことにより、フック34等の強度が重要視される個所への損傷や腐食を防ぐことができる。
【0051】
また、鉄蓋20の閉蓋と同時に、閉塞用小蓋40は、アーム33を介してロック本体30により持ち上げられて、手鉤孔23が自動的に閉塞される。ロック本体30により閉塞用小蓋40が押し上げられる際、閉塞用小蓋40のガイド用突起43が鉄蓋20のガイド溝25にガイドされるので、閉塞用小蓋40は、どこにも引っ掛かることなく、姿勢を維持した状態で円滑に上昇する。
【0052】
このとき、ガイド溝25の内側ガイド面25aには、勾配角度θ2の勾配が形成されているため、閉塞用小蓋40は、内側ガイド面25aに沿って持ち上げられる際、鉄蓋20の径方向外側に押付けられる方向に力がかかる。このため、閉塞用小蓋40は、鉄蓋20の閉蓋時において、受枠10の周壁11と密着し、手鉤孔23は、密閉性の高い状態で閉塞される。
【0053】
このように、閉塞用小蓋40の昇降をガイドするガイド溝25とガイド用突起43を設けることによって、鉄蓋20の開閉時、閉塞用小蓋40は、円滑に昇降することができる。本明細書において、ガイド溝25とガイド用突起43とは、ガイド手段を構成するものと定義する。
【0054】
また、このように、ガイド溝25のガイド面の勾配角度を、重力方向に対して大きく設けることによって、閉塞用小蓋40の閉蓋時、受枠10の周壁11と閉塞用小蓋40との隙間の密閉度を高めることができる。本明細書において、手鉤孔23の周縁部と閉塞用小蓋40との隙間を密閉するシール部材50と、勾配角度θ2を有するガイド面とは、手鉤孔用シール手段を構成するものと定義する。
【0055】
なお、閉塞用小蓋40の上面は、鉄蓋20の上面より若干下がっているので、手鉤孔23上を車等が通っても、閉塞用小蓋40が押し下げられ、フック34がフック受け12から外れて、施錠が解除される恐れはない。
【0056】
以上は、閉塞用小蓋40のガイド手段を、閉塞用小蓋40に形成したガイド用突起43と鉄蓋20に形成したガイド溝25とによって構成した例であるが、閉塞用小蓋40のガイド手段を、鉄蓋20に形成したガイド用突起と、閉塞用小蓋40に形成した前記突起に沿って昇降するガイド溝とにより構成しても構わない。この場合、閉塞用小蓋40の抜け止め防止のためのストッパは、前記ガイド用突起の下部に形成し、前記ストッパを受けるストッパ受けは、前記ガイド溝の上部に形成する。また、この場合、閉塞用小蓋40は、外側ガイド面に沿って持ち上げられる。外側ガイド面には、内側ガイド面と同様に勾配角度θ2の勾配が形成されているため、閉塞用小蓋40には、鉄蓋20の径方向外側に押付けられる方向に力がかかる。したがって、閉塞用小蓋40は、受枠10の周壁11と密着し、手鉤孔23は、密閉性の高い状態で閉塞される。
【0057】
なお、上記では、手鉤孔23は、一例として、鉄蓋20の上部から見て略U字状に開口するように形成される構造について説明を行ったが、手鉤孔23の形状は略U字状に限らず、手鉤60のT字状先端部61が挿入可能であれば、その他の形状であっても構わない。また、上記では、ロック本体30に1つの受枠当接部35が形成される構造について説明を行ったが、受枠当接部35の数量は1に限らず、複数形成されても構わない。また上記では、受枠当接部35は、一対のフック34の内側に形成される構造について説明を行ったが、受枠当接部35の位置はこれに限らず、フック34の外側に形成されても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0058】
10 受枠
11 周壁
12 フック受け
20 鉄蓋
21 側面
22 軸支部用溝
22a 入口
23 手鉤孔
24a 抜き出し防止用ボルト
24b ナット
25 ガイド溝
25a 内側ガイド面
25b 外側ガイド面
26 ストッパ受け
30 ロック本体
31 軸支部
31a 平面部
32 ウエイト部
33 アーム
33a 係合軸
34 フック
34a 逃げ部
35 受枠当接部
36 ねじりばね
40 閉塞用小蓋
41 係合溝
42 ウエイト部
43 ガイド用突起
44 ストッパ
45 シール当接面
46 シール用溝
47 傾き防止用突起部
50 シール部材
51 凸状部
60 手鉤
61 T字状先端部