(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172341
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シーラント打設ノズル
(51)【国際特許分類】
E04B 2/88 20060101AFI20241205BHJP
E04B 2/96 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E04B2/88
E04B2/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089995
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
(72)【発明者】
【氏名】山田 寛
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳五
(72)【発明者】
【氏名】片岡 保
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002PA01
2E002UA01
2E002UA02
2E002UB04
2E002WA17
2E002WA19
2E002XA12
2E002XA18
(57)【要約】
【課題】カーテンウォールにおいて、シーラント打設の施工性を向上する。
【解決手段】カーテンウォールにおいてガラスの周縁部と枠体との間の隙間にシーラントを打設するためのシーラント打設ノズル60は、シーラントが通る流路63が内部に形成されたシャフト部62と、シャフト部62の先端に設けられ、シーラントの吐出口65を有するヘッド部64と、を備える。ヘッド部64は、吐出口65から隙間に吐出されたシーラントを押さえつけて均すための押さえ部66を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンウォールにおいてガラスの周縁部と枠体との間の隙間にシーラントを打設するためのシーラント打設ノズルであって、
前記シーラントが通る流路が内部に形成されたシャフト部と、
前記シャフト部の先端に設けられ、前記シーラントの吐出口を有するヘッド部と、
を備え、
前記ヘッド部は、前記吐出口から前記隙間に吐出されたシーラントを押さえつけて均すための押さえ部を有するシーラント打設ノズル。
【請求項2】
前記押さえ部は、前記吐出口が形成された面と同一面に設けられる、請求項1に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項3】
前記押さえ部は、前記吐出口の両側に設けられる、請求項1に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項4】
前記吐出口からの前記シーラントの吐出方向は、前記流路の方向に対して角度付けされている、請求項1から3のいずれかに記載のシーラント打設ノズル。
【請求項5】
前記シーラントの吐出方向は、前記流路の方向に対して70°~110°角度付けされている、請求項4に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項6】
前記シーラントは、構造シーラントである、請求項1または2に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項7】
前記構造シーラントは、主剤と硬化剤から構成され、シリコーンポリマーを主原料としている、請求項6に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項8】
前記主剤と前記硬化剤の容積混合比率は10:1である、請求項7に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項9】
前記主剤に前記硬化剤を添加してから初期硬化するまでの時間は1~4時間である、請求項7に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項10】
前記シーラントは、建築用シーリング材である、請求項1または2に記載のシーラント打設ノズル。
【請求項11】
前記建築用シーリング材は、2成分系シリコーンまたは1成分系シリコーンのいずれかである、請求項10に記載のシーラント打設ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールにおけるガラスと枠体とを接着するシーラントの打設ノズルに関し、特にSSG(Structural Sealant Glazing)構法を用いたカーテンウォールにおけるシーラントの打設ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁面を構成するガラスを支持するための構法として、SSG構法が知られている。SSGは、ガラスとそれを支持する枠体を構造シーラントにて接着する構法である。構造シーラントをガラスと枠体の間に打設する装置としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構造シーラント吐出装置では、単に構造シーラントをノズルの先端の吐出部から吐出するだけであり、ガラスと枠体の間の隙間に構造シーラントを好適に充填するのは容易ではなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、カーテンウォールにおけるシーラント打設の施工性を向上できるシーラント打設ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のシーラント打設ノズルは、カーテンウォールにおいてガラスの周縁部と枠体との間の隙間にシーラントを打設するためのシーラント打設ノズルであって、シーラントが通る流路が内部に形成されたシャフト部と、シャフト部の先端に設けられ、シーラントの吐出口を有するヘッド部と、を備える。ヘッド部は、吐出口から隙間に吐出されたシーラントを押さえつけて均すための押さえ部を有する。シーラントは、構造シーラントまたは建築用シーリング材であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るシーラント打設ノズルを適用可能なカーテンウォールの概略正面図である。
【
図2】
図1に示すカーテンウォールのA部分の概略横断面図である。
【
図3】
図1に示すカーテンウォールのB部分の概略横断面図である。
【
図4】実施形態に係るシーラント打設ノズルを用いたシーラント打設方法を説明するための概略縦断面図である。
【
図5】実施形態に係るシーラント打設ノズルを用いたシーラント打設方法を説明するための概略横断面図である。
【
図6】実施形態に係るシーラント打設ノズルを示す概略図である。
【
図7】実施形態に係るシーラント打設ノズルの構造を説明するための概略側面図である。
【
図8】工場において、カーテンウォールユニットに対してシーリングの打設を行う場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。以下の構成は本開示を理解するための例示を目的とするものであり、本開示の範囲は、添付の請求の範囲によってのみ定まる。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
図1は、実施形態に係るシーラント打設ノズルを適用可能なカーテンウォール100の概略正面図である。
図1に示すように、カーテンウォール100は、複数のカーテンウォールユニット10(ここでは4つのカーテンウォールユニット10A~10D)が建物の外周部に縦横に配置されて構成されている。
【0010】
各カーテンウォールユニット10は、スパンドレル部12と、ビジョン部14とを有する。ビジョン部14は、カーテンウォール100が取り付けられた建物の居住空間に対向するように配置される。スパンドレル部12は、上階の居住区間と下階の居住空間との間の境界部分に対向するように配置される。本実施形態では、スパンドレル部12に単層ガラスが配置され、ビジョン部14に複層ガラスが配置されている。別の実施形態では、スパンドレル部12とビジョン部14に一枚の複層ガラスが配置されてもよい。
【0011】
図2は、
図1に示すカーテンウォール100のA部分の概略横断面図である。
図2は、上階のカーテンウォールユニット10Aと下階のカーテンウォールユニット10Bの結合部分を示している。
図2に示すように、上階のカーテンウォールユニット10Aのビジョン部14と、下階のカーテンウォールユニット10Bのスパンドレル部12とが上下に配置されている。
【0012】
図3は、
図1に示すカーテンウォール100のB部分の概略横断面図である。
図3は、横方向に並ぶ2つのカーテンウォールユニット10A、10Cの結合部分を示している。
【0013】
ビジョン部14は、複層ガラス16を備える。複層ガラス16は、離間した状態で対向配置された2枚のガラスパネル16a、16bの間に空間16cを設け、該空間16cに乾燥空気を封入したものである。複層ガラス16は、ガラスパネル16a、16b間の距離を規定するためのスペーサや16dと、空間16c内での結露を防止するための乾燥剤16eとを備える。一方、スパンドレル部12は、1枚のガラスパネルから成る単層ガラス18を備える。
【0014】
各カーテンウォールユニット10において、複層ガラス16および単層ガラス18は、枠体20により支持される。枠体20は、縦方向に延びる方立22と、横方向に延びる無目24とが四角形状に組まれた構成を有する。枠体20は、カーテンウォールユニット10が取り付けられる建物の階高に相当する高さを有する。枠体20は、アルミなどの金属で構成される。枠体20の方立22および無目24には、連結部26が形成されており、隣接するカーテンウォールユニット10の枠体20は、互いの連結部26を係合することにより連結される。
【0015】
複層ガラス16および単層ガラス18は、それらの周縁部に設けられた構造シーラント28によって枠体20の方立22および無目24に接着される。構造シーラント28のガラス面内方向内側には、ガスケット30が配置されている。カーテンウォールユニット10は、複層ガラス16および単層ガラス18と支持部材としての枠体20とを構造シーラント28にて接着するSSG構法で作られたカーテンウォールユニットである。
【0016】
本実施形態において、構造シーラント28は、耐風加重(負圧)などに対する構造保持の役割を有するとともに、防水性および気密性を確保する役割を有する。構造シーラント28は、シリコーンポリマーを主原料とした、主剤と硬化剤から構成される2成分形シリコーン系構造シーラントであってよい。2成分形シリコーン系構造シーラントでは、反応性ポリマーを主成分とした主剤Si-OH(シラノール)と、架橋剤を主成分とした硬化剤Si-OR(アルコキシ)を混合することによって縮合反応が開始され、シロキサン結合Si-O-Siが進行することで硬化する。縮合反応時にアルコールが脱離するので、脱アルコール形(アルコールタイプ)と称される。シリコーン系構造シーラントにおいては、主剤と硬化剤の容積混合比率は10:1(比重換算すると100:7.6)であることが望ましい。
【0017】
構造シーラント28に代えて、建築用シーリング材が用いられてもよい。建築用シーリング材は、防水を目的としており、ウェザーシールとも呼ばれ、2成分系シリコーンまたは1成分系シリコーンのいずれかである。2成分形の建築用シーリング材は、例えばシリコーン系、変成シリコーン系、ポリイソブチレン系、ポリサルファイド系などがある。構造シーラント28に代えて建築用シーリング材を用いる場合は、構造保持を目的としてガラスの屋外側の表面を押さえる外押縁を設ける。
【0018】
枠体20の方立22および無目24には、構造シーラント28によりガラス(複層ガラス16、単層ガラス18)に接着される部分から屋外側に向けて突出するフィン部32が設けられている。フィン部32は、ガラスの外周端を囲うように形成されている。フィン部32とガラスの外周端との間には、隙間34が設けられている。隙間34は、屋外側に開口を有する。
【0019】
複層ガラス16の下側に位置するフィン部32は、セッティングブロック36を介して複層ガラス16の外周端を載置させて支持する。
【0020】
フィン部32上に配置されるセッティングブロック36は、1個であってもよいし、複数個であってもよい。
【0021】
カーテンウォールユニット10は、ガラスを押さえる外押縁38を備える。外押縁38は、断面視で概略L字状の部材であり、アルミやステンレスなどの金属で形成されてよい。外押縁38の一端には係合部が形成されている。係合部は、フィン部32に形成された被係合部と係合可能に構成されている。外押縁38の係合部をフィン部32の被係合部と係合することにより、外押縁38が枠体20に固定される。外押縁38の他端には、ガラスの屋外側の表面を押さえるための押さえ部が形成されている。
【0022】
図4は、実施形態に係るシーラント打設ノズルを用いたシーラント打設方法を説明するための概略縦断面図である。
図5は、実施形態に係るシーラント打設ノズルを用いたシーラント打設方法を説明するための概略横断面図である。
【0023】
まず、ガラス(複層ガラス16、単層ガラス18)の周縁部と枠体20とを隙間40を空けて配置する。ガラスと枠体20の間にはガスケット30が挟まれ、このガスケット30により隙間40の幅が規定される。隙間40は、ガスケット30よりもガラスの面方向外側に形成される。
【0024】
次に、シーラント打設ノズルを準備する。
図6は、実施形態に係るシーラント打設ノズル60を示す概略図である。
図6に示すシーラント打設ノズル60は、ハンマー型の打設ノズルであり、中空角柱状のシャフト部62と、シャフト部62の先端に設けられた扁平板状のヘッド部64とを備える。シャフト部62の内部には、構造シーラントが通る流路63が形成されている。ヘッド部64には、流路63を通った構造シーラントが吐出される吐出口65が形成されている。
図6には、吐出口65から吐出された構造シーラント68が図示されている。ヘッド部64における吐出口65の両側には、吐出口65から隙間40内に吐出された構造シーラント68を押さえつけて均すための押さえ部66が設けられている。押さえ部66は、ヘッド部64において、吐出口65が形成された面と同一面に設けられる。
【0025】
図7は、実施形態に係るシーラント打設ノズル60の構造を説明するための概略側面図である。シーラント打設ノズル60において、吐出口65からのシーラントの吐出方向は、流路63の方向(シャフト部62の延在方向)に対して所定の角度の角度付けがされている。例えば、シーラントの吐出方向は、流路の方向に対して70°~110°(垂直方向から±20°)の範囲で角度付けされてよい。
【0026】
図4および
図5に戻る。次に、シーラント打設ノズル60を開口34aから隙間34に挿入し、シーラント打設ノズル60の吐出口65を隙間40の入口に配置する。そして、シーラント打設ノズル60の流路63に構造シーラントを送り込み、吐出口65から吐出させ、隙間40に、ガラスの面方向外側から構造シーラントを充填する。
【0027】
構造シーラントを充填する際には、シーラント打設ノズル60の押さえ部66を用いて、吐出された構造シーラント68を押さえつけて均す。これにより、好適に隙間40内に構造シーラントを充填することができる。この構造シーラントの打設作業を、ガラスの全周にわたって行う。接着性能を確保する観点から、主剤に硬化剤を混合してから初期硬化するまでの所定の時間内に構造シーラントの打設を完了することが望ましい(主剤に硬化剤を添加してから初期硬化するまでの時間は具体的には1~4時間程度であることが望ましい)。
【0028】
構造シーラントの打設作業が完了後、ガラスの屋外側の表面を押さえる外押縁38を取り付ける。別の実施形態では、外押縁38を取り付けなくてもよい。その後、打設した構造シーラントを所定の期間養生する。構造シーラントの硬化により、ガラスの接着が完了となる。
【0029】
以上、本実施形態に係るシーラント打設ノズル60を説明した。このシーラント打設ノズルによれば、ヘッド部64に設けた押さえ部66を用いて、吐出口65から隙間40内に吐出された構造シーラントを押さえつけて均すことができる。これにより、ガラスと枠体20との間の隙間に構造シーラントを均一に充填することが可能となる。上記の特許文献1に開示されたような単に先端から構造シーラントを吐出するだけの打設ノズルの場合、吐出された構造シーラントを均すための器具を別途用いる必要があり、施工性が低下する。本実施形態に係るシーラント打設ノズル60によれば、構造シーラントの吐出と均し作業を一つの器具で同時に行うことができるので、シーラント打設の施工性を大幅に向上することができる。
【0030】
また、本実施形態に係るシーラント打設ノズル60によれば、流路63の方向に対して所定の角度の角度付けをして構造シーラントを吐出できるので、フィン部32とガラスの外周端との間の隙間34が狭く、ノズルを自由に傾けることが難しいような場合であっても、好適にガラスと枠体20との間の隙間40に構造シーラントを吐出することができる。
【0031】
上記では、カーテンウォールユニット10を建物に取り付けたまま、シーラントの打設を行う場合について説明した。
図8は、工場において、カーテンウォールユニット10に対してシーリングの打設を行う場合を説明するための図である。この場合、床面上に架台80を準備し、架台80上に、方立22および無目24の延在方向が水平となるように、枠体20を載置する。次に、枠体20の上側に、表面が水平となるようにガラス(複層ガラス16、単層ガラス18)を載置する。このとき、ガラスと枠体20の間にガスケットが挟まれ、ガラスの周縁部と枠体20との間に隙間40(
図4、
図5参照)が形成される。
【0032】
枠体20には、構造シーラントによりガラスに接着される部分から上側に向けて突出するフィン部32が設けられている。フィン部32とガラスの外周端との間には、上側に開口34aを有する隙間34(
図4、
図5参照)が設けられている。
【0033】
このように架台80上に載置された枠体20およびガラスに対し、構造シーラントの打設を行う。上述したシーラント打設ノズル60を上側の開口34aからフィン部32とガラスの外周端との間の隙間34に挿入し、シーラント打設ノズル60の吐出口をガラスの周縁部と枠体20との間の隙間40の入口に配置する。そして、シーラント打設ノズル60の吐出口から構造シーラントを吐出させ、隙間40に、ガラスの面方向外側から構造シーラントを充填する。このとき、主剤と硬化剤とを連続的に混合混錬しながら打設する連続混合混錬打設装置を用いることができる。
【0034】
このように、工場等においてカーテンウォールユニット単体に対して構造シーリングの打設を行う場合も、ガラスの面方向外側からシーラントを充填することで、容易に構造シーラントの打設を行うことができる。また、構造シーラントの充填の度合いもガラス越しに確認できる。
【0035】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0036】
10 カーテンウォールユニット、 12 スパンドレル部、 14 ビジョン部、 16 複層ガラス、 18 単層ガラス、 20 枠体、 22 方立、 24 無目、 38 外押縁、 32 フィン部、 30 ガスケット、 60 シーラント打設ノズル、 62 シャフト部、 64 ヘッド部、 65 吐出口、 63 流路、 100 カーテンウォール。