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特開2024-172342鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置及び推定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172342
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20241205BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089996
(22)【出願日】2023-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】512273266
【氏名又は名称】KEYTEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和彦
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG03
2G105LL02
5J070AC02
5J070AD02
5J070AE11
5J070AF02
5J070AH31
5J070BE01
5J070BG09
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート構造体である床においてレーダ走査を行ってハイパボーラ波形を取得した場合、床の壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形であったとしても、壁近傍の鉄筋の位置を推定し得る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置及び推定方法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得部0361と、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得部0362と、頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持部0363と、頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定部0364と、を有する。
【選択図】図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得部と、
取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得部と、
頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持部と、
頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定部と、
を有する鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置。
【請求項2】
頂点可視波形の波形情報を取得する頂点可視波形情報取得部を有し、
頂点推定手段保持部の頂点推定手段はさらに頂点可視波形情報にも基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するように構成され、
前記頂点推定部は頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置。
【請求項3】
さらに推定された頂点位置情報を出力する頂点位置情報出力部を有する請求項1または請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置。
【請求項4】
頂点推定手段は、複数の頂点可視波形情報に基づいて頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する複数推定手段である請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置。
【請求項5】
頂点推定手段は、頂点可視波形情報に基づいてコンクリートの比誘電率を算出することで頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する比誘電率推定手段を含む請求項2または請求項4に記載の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置。
【請求項6】
頂点不可視波形部分はレーダ探索装置がコンクリート構造物の形状によってレーダ探査が困難な困難部分に存在する頂点不可視波形部分である請求項1または請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置。
【請求項7】
鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得ステップと、
取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得ステップと、
頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持ステップと、
頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定ステップと、
を有する計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法。
【請求項8】
頂点可視波形の波形情報を取得する頂点可視波形情報取得ステップを有し、
頂点推定手段保持ステップの頂点推定手段はさらに頂点可視波形情報にも基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するように構成され、
前記頂点推定ステップは頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する請求項7に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法。
【請求項9】
さらに推定された頂点位置情報を出力する頂点位置情報出力ステップを有する請求項7または請求項8に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法。
【請求項10】
頂点推定手段は、複数の頂点可視波形情報に基づいて頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する複数推定手段である請求項8に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法。
【請求項11】
頂点推定手段は、頂点可視波形情報に基づいてコンクリートの比誘電率を算出することで頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する比誘電率推定手段を含む請求項8または請求項10に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法。
【請求項12】
頂点不可視波形部分はレーダ探索装置がコンクリート構造物の形状によってレーダ探査が困難な困難部分に存在する頂点不可視波形部分である請求項7または請求項8に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法。
【請求項13】
鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得プログラムと、
取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得プログラムと、
頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持プログラムと、
頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定プログラムと、
を有する計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法。
【請求項14】
頂点可視波形の波形情報を取得する頂点可視波形情報取得プログラムを有し、
頂点推定手段保持プログラムの頂点推定手段はさらに頂点可視波形情報にも基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するように構成され、
前記頂点推定プログラムは頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する請求項13に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法。
【請求項15】
さらに推定された頂点位置情報を出力する頂点位置情報出力プログラムを有する請求項13または請求項14に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法。
【請求項16】
頂点推定手段は、複数の頂点可視波形情報に基づいて頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する複数推定手段である請求項13に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法。
【請求項17】
頂点推定手段は、頂点可視波形情報に基づいてコンクリートの比誘電率を算出することで頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する比誘電率推定手段を含む請求項13または請求項16に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法。
【請求項18】
頂点不可視波形部分はレーダ探索装置がコンクリート構造物の形状によってレーダ探査が困難な困難部分に存在する頂点不可視波形部分である請求項13または請求項14に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造体の内部において配置される鉄筋の位置を計算し、部分的に不明な鉄筋の位置情報を推定することが可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置及び推定方法に関する。なお、本発明の鉄筋には、断面円形の丸鋼と呼ばれる鉄筋、及び、表面に凹凸を設けた異形鉄筋と呼ばれる鉄筋の双方を含むが、本明細書において、便宜上断面円形の丸鋼として扱うこととする。
【背景技術】
【0002】
近い将来の発生が予想される大地震に対する備えとしてや、老朽化対策として、近年、ビルや橋梁等の多くの鉄筋コンクリート構造体に対する補強の施工が行われている。この補強施工を行う場合には、鉄筋コンクリート構造体のコンクリートに埋設されている鉄筋の位置を把握する必要がある。
【0003】
従来において、建造時の設計図等から鉄筋の情報が得られない場合に採用される鉄筋の位置の測定方法としては、例えば、電磁波レーダを用いた測定方法が知られている。この電磁波レーダを用いた測定方法では、例えば、内部に鉄筋が配置されている鉄筋コンクリート構造体である床をレーダ走査し、このレーダ走査の間に鉄筋で反射して戻る反射波の情報であるハイパボーラ(hyperbola)波形を取得して、その頂点の位置から鉄筋の位置及び深さを測定するようにしている。
【0004】
このハイパボーラ波形は、図1Aの二次元画像(反射波を受信するまでの時間を電磁波レーダの鉄筋からの位置に応じて表示するレーダ画面の画像)に示すように、電磁波レーダ0120が鉄筋コンクリート構造体である床0100の内部に埋設されている鉄筋0130の直上を直交する方向に通過する時点において、反射波を受信するまでの時間に基いて計測される鉄筋0130を頂点として表示される左右対称の山形波形である。なお、ハイパボーラ波形(情報)については後段で詳述する。
この鉄筋の位置の測定方法に類する方法としては、例えば、特許文献1に記載された推定方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7043663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来における鉄筋の位置の測定方法において、例えば、図1Bに示すように、鉄筋コンクリート構造体である床0100が壁Wで遮られている場合には、壁際において電磁波レーダ0120の進行が制約を受ける。そのため、床0100の壁W近傍に鉄筋0130wが埋設されている場合には、レーダ走査を行ってこの壁W近傍の鉄筋0130wに係るハイパボーラ波形Hを取得したとしても、床0100の壁Wから離れた位置に埋設されている鉄筋0130に係るハイパボーラ波形Hと比較して判るように、ハイパボーラ波形Hの裾r(実線部分)のみが可視で頂点p(破線部分)が不可視な波形となってしまう。その結果、床0100の壁W近傍に位置する鉄筋0130wの位置を測定することができないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっている。
【0007】
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたものであり、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床においてレーダ走査を行ってハイパボーラ波形を取得した場合、床の壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形であったとしても、壁近傍の鉄筋の位置を推定することが可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置及び推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置及び推定方法を提供する。
すなわち、本発明の第一の態様は、鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得部と、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得部と、頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持部と、頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定部と、を有する構成としている。
【0009】
また、本発明の第二の態様は、頂点可視波形の波形情報を取得する頂点可視波形情報取得部を有し、頂点推定手段保持部の頂点推定手段はさらに頂点可視波形情報にも基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するように構成され、前記頂点推定部は頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する構成としている。
【0010】
さらに、本発明の第三の態様は、さらに推定された頂点位置情報を出力する頂点位置情報出力部を有する構成としている。
【0011】
さらにまた、本発明の第四の態様において、頂点推定手段は、複数の頂点可視波形情報に基づいて頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する複数推定手段である構成としている。
【0012】
さらにまた、本発明の第五の態様において、頂点推定手段は、頂点可視波形情報に基づいてコンクリートの比誘電率を算出することで頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する比誘電率推定手段を含む構成としている。
【0013】
さらにまた、本発明の第六の態様において、頂点不可視波形部分はレーダ探索装置がコンクリート構造物の形状によってレーダ探査が困難な困難部分に存在する頂点不可視波形部分である構成としている。
【0014】
一方、本発明の第七の態様に係る計算機である鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の動作方法おいて、鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得ステップと、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得ステップと、頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持ステップと、頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定ステップと、
を有する構成としている。
【0015】
また、本発明の第八の態様は、頂点可視波形の波形情報を取得する頂点可視波形情報取得ステップを有し、頂点推定手段保持ステップの頂点推定手段はさらに頂点可視波形情報にも基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するように構成され、前記頂点推定ステップは頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する構成としている。
【0016】
さらに、本発明の第九の態様は、さらに推定された頂点位置情報を出力する頂点位置情報出力ステップを有する構成としている。
【0017】
さらにまた、本発明の第十の態様において、頂点推定手段は、複数の頂点可視波形情報に基づいて頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する複数推定手段である構成としている。
【0018】
さらにまた、本発明の第十一の態様において、頂点推定手段は、頂点可視波形情報に基づいてコンクリートの比誘電率を算出することで頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する比誘電率推定手段を含む構成としている。
【0019】
さらにまた、本発明の第十二の態様において、頂点不可視波形部分はレーダ探索装置がコンクリート構造物の形状によってレーダ探査が困難な困難部分に存在する頂点不可視波形部分である構成としている。
【0020】
そして、本発明の第十三の態様に係る計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定方法は、鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果取得プログラムと、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得する頂点不可視波形部分情報取得プログラムと、頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための頂点推定手段を保持する頂点推定手段保持プログラムと、頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する頂点推定プログラムと、を有する構成としている。
【0021】
また、本発明の第十四の態様は、頂点可視波形の波形情報を取得する頂点可視波形情報取得プログラムを有し、頂点推定手段保持プログラムの頂点推定手段はさらに頂点可視波形情報にも基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するように構成され、前記頂点推定プログラムは頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する構成としている。
【0022】
さらに、本発明の第十五の態様は、さらに推定された頂点位置情報を出力する頂点位置情報出力プログラムを有する構成としている。
【0023】
さらにまた、本発明の第十六の態様において、頂点推定手段は、複数の頂点可視波形情報に基づいて頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する複数推定手段である構成としている。
【0024】
さらにまた、本発明の第十七の態様において、頂点推定手段は、頂点可視波形情報に基づいてコンクリートの比誘電率を算出することで頂点不可視波形部分のハイパボーラ曲線の形状を推定する比誘電率推定手段を含む構成としている。
【0025】
さらにまた、本発明の第十八の態様において、頂点不可視波形部分はレーダ探索装置がコンクリート構造物の形状によってレーダ探査が困難な困難部分に存在する頂点不可視波形部分である構成としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床や壁、柱、天井などにおいてレーダ走査を行ってハイパボーラ波形を取得した場合に、床などの壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形であったとしても、壁近傍の鉄筋の位置をいずれも推定することが可能であるという非常に優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】鉄筋コンクリート構造体である床においてレーダ走査を行う際の鉄筋とハイパボーラ波形との関係を模式的に示す二次元画像
図1B】鉄筋コンクリート構造体である床においてレーダ走査を行って取得される壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形を模式的に示す二次元画像
図2】ハードウェア構成を説明するための図
図3A】実施形態1に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の概略構成図
図3B】鉄筋コンクリート構造体である床の平面図
図3C】実施形態1に係る鉄筋コンクリート構造のレーダ不可視領域の推定装置における機能ブロック図
図3D】鉄筋コンクリート構造体の鉄筋に対する電磁波の輻射によりハイパボーラ波形が二次元画像上に形成される理由を説明する模式図
図3E】鉄筋コンクリート構造体の鉄筋に対する電磁波の輻射により二次元画像上に形成されるハイパボーラ波形の特徴を示す図
図3F図3Eと同じく鉄筋コンクリート構造体の鉄筋に対する電磁波の輻射により二次元画像上に形成されるハイパボーラ波形の特徴を示す図
図3G】鉄筋コンクリート構造体である床においてレーダ走査を行って取得される壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形を模式的に示す二次元画像
図3H】ハイパボーラ図形に基いて導出される曲線の方程式を用いて頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)のデータ(曲率)から頂点可視のハイパボーラ図形を推定する要領を説明する図
図4】実施形態1に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置のハードウェア構成例を示す図
図5】実施形態1に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の処理フローチャート
図6A】実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の機能ブロック図
図6B】レーダ探査結果取得部で取得したレーダ探査結果である複数のハイパボーラ波形を示す図
図6C】実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置によって頂点が可視なハイパボーラ波形を頂点が不可視なハイパボーラ波形にカーブフィッティングする要領を説明する図
図6D】実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置におけるデータベース化した複数のハイパボーラ図形を示す表
図7】実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置のハードウェア構成例を示す図
図8】実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の処理フローチャート
図9A】実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の機能ブロック図
図9B】レーダ探査結果取得部で取得したレーダ探査結果である複数のハイパボーラ波形を示す図
図9C】実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置におけるデータベース化した複数のハイパボーラ図形を示す表
図9D】実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置によってテンプレートであるハイパボーラ図形を頂点が不可視なハイパボーラ波形にカーブフィッティングする要領を説明する図
図10】実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置のハードウェア構成例を示す図
図11】実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に関し、実施形態2は主に請求項2,4,8,10,14,16に関し、実施形態3は主に請求項5,11,17に関する。
なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0029】
<本発明を構成し得るハードウェアについて>
本発明は、原則的に電子計算機を利用する発明であるが、ソフトウェアによって実現され、ハードウェアによっても実現され、ソフトウェアとハードウェアの協働によっても実現される。本発明の各構成要件の全部又は一部を実現するハードウェアでは、コンピュータの基本的構成であるCPU,メモリ,バス,入出力装置,各種周辺機器,ユーザインターフェースなどによって構成される。各種周辺機器には、記憶装置,インターネット等のインターフェース,インターネット等機器,ディスプレイ,キーボード,マウス,スピーカー,カメラ,ビデオ,テレビ,実験室又は工場等での生産状態を把握するための各種センサ(流量センサ,温度センサ,重量センサ,液量センサ,赤外線センサ,出荷個数計数機,梱包個数計数機,異物検査装置,不良品計数機,放射線検査装置,表面状態検査装置,回路検査装置,人感センサ,作業者作業状況把握装置(映像,ID,PC作業量などで)等),CD装置,DVD装置,ブルーレイ装置,USBメモリ,USBメモリインターフェイス,着脱可能タイプのハードディスク,一般的なハードディスク,プロジェクタ装置,SSD,電話,ファックス,コピー機,印刷装置,ムービー編集装置,各種センサ装置などが含まれる。
【0030】
また、本発明のシステムは、必ずしも一つの筐体によって構成されている必要はなく、複数の筐体を通信で結合して構成されるものであってもよい。また、通信は、LAN,WAN,wifi(登録商標),ブルートゥース(登録商標),赤外線通信,超音波通信であってもよく、一部が国境を跨いで設置されていてもよい。さらに、複数の筐体のそれぞれが異なる主体によって運営されていてもよく、一の主体によって運営されていてもよい。本発明のシステムの運用主体は、単数であるか複数であるかは問わない。また、本発明のシステムの他に第三者の利用する端末、さらに他の第三者の利用する端末を含むシステムとしても発明を構成することができる。また、これらの端末は国境を越えて設置されていてもよい。さらに、本発明のシステムや前記端末の他に第三者の関連情報や、関連人物の登録のために利用される装置、登録の内容を記録するためのデータベースに利用される装置等が用意されてもよい。これらは、本発明のシステムに備えてもよいし、本発明のシステム外に備えてこれらの情報を利用することができるように本発明のシステムを構成してもよい。
【0031】
図2に示すように、コンピュータは、マザーボード上に構成される、チップセット,CPU,不揮発性メモリ,メインメモリ,各種バス,BIOS,各種インターフェース,リアルタイムクロック等からなる。これらはオペレーティングシステムやデバイスドライバ,各種プログラム等と協働して動作する。本発明を構成する各種プログラムや各種データはこれらのハードウェア資源を効率的に利用して各種の処理を実行するように構成されている。
【0032】
≪チップセット≫
「チップセット」は、コンピュータのマザーボードに実装され、CPUの外部バスと、メモリや周辺機器を接続する標準バスとの連絡機能、つまり、ブリッジ機能を集積した大規模集積回路(LSI)のセットである。2チップセット構成を採用する場合と、1チップセット構成を採用する場合とがある。CPUやメインメモリに近い側をノースブリッジ、遠い側で比較的低速な外部I/Oとのインターフェースの側にサウスブリッジが設けられる。
【0033】
(ノースブリッジ)
ノースブリッジには、CPUインターフェース,メモリコントローラ,グラフィックインターフェースが含まれる。従来のノースブリッジの機能のほとんどをCPUに担わせてもよい。ノースブリッジは、メインメモリのメモリスロットとはメモリバスを介して接続し、グラフィックカードのグラフィックカードスロットとは、ハイスピードグラフィックバス(AGP,PCI Express)で接続される。
【0034】
(サウスブリッジ)
サウスブリッジは、PCIインターフェース(PCIスロット)とPCIバスを介して接続して、ATA(SATA)インターフェース,USBインターフェース,Ethernetインターフェース等とのI/O機能やサウンド機能を担う。高速な動作が必要でない、あるいは不可能であるようなPS/2ポート,フロッピーディスクドライブ,シリアルポート,パラレルポート,ISAバスをサポートする回路を組み込むことは、チップセット自体の高速化の足かせとなるため、サウスブリッジのチップから分離させ、スーパーI/Oチップと呼ばれる別のLSIに担当させることとしてもよい。CPU(MPU)と、周辺機器や各種制御部を繋ぐためにバスが用いられる。バスはチップセットによって連結される。メインメモリとの接続に利用されるメモリバスは、高速化を図るために、これに代えてチャネル構造を採用してもよい。バスとしてはシリアルバスかパラレルバスを採用できる。パラレルバスは、シリアルバスが1ビットずつデータを転送するのに対して、元データそのものや元データから切り出した複数ビットをひとかたまりにして、同時に複数本の通信路で伝送する。クロック信号の専用線がデータ線と平行して設けられ、受信側でのデータ復調の同期を行う。CPU(チップセット)と外部デバイスをつなぐバスとしても用いられ、GPIB,IDE/(パラレル)ATA,SCSI,PCI等がある。高速化に限界があるため、PCIの改良版PCI ExpressやパラレルATAの改良版シリアルATAでは、データラインはシリアルバスでもよい。
【0035】
≪CPU≫
CPUは、メインメモリ上にあるプログラムと呼ばれる命令列を順に読み込んで解釈・実行することで信号からなる情報を同じくメインメモリ上に出力する。CPUは、コンピュータ内での演算を行なう中心として機能する。なお、CPUは、演算の中心となるCPUコア部分と、その周辺部分とから構成され、CPU内部に、レジスタ,キャッシュメモリ,キャッシュメモリとCPUコアとを接続する内部バス,DMAコントローラ,タイマ,ノースブリッジとの接続バスとのインターフェース等が含まれる。なお、CPUコアは一つのCPU(チップ)に複数備えられていてもよい。また、CPUに加えてグラフィックインターフェース(GPU)若しくはFPUによって、処理を行ってもよい。
【0036】
≪不揮発性メモリ≫
(HDD)
ハードディスクドライブの基本構造は、磁気ディスク,磁気ヘッド及び磁気ヘッドを搭載するアームから構成される。外部インターフェースは、SATAA(過去ではATA)を採用することができる。高機能なコントローラ、例えば、SCSIを用いて,ハードディスクドライブ間の通信をサポートする。例えば、ファイルを別のハードディスクドライブにコピーする時、コントローラがセクタを読み取って別のハードディスクドライブに転送して書き込むといったことができる。この時ホストCPUのメモリにはアクセスしない。したがってCPUの負荷を増やさないで済む。
なお、不揮発性メモリとしては「NANDフラッシュ」から構成されるSSDをHDDとともに採用してもよいし、HDDに置き換えて採用してもよい。
【0037】
≪メインメモリ≫
CPUが直接アクセスしてメインメモリ上の各種プログラムを実行する。メインメモリは揮発性のメモリでDRAMが用いられる。メインメモリ上のプログラムはプログラムの起動命令を受けて不揮発性メモリからメインメモリ上に展開される。その後もプログラム内で各種実行命令や、実行手順にしたがってCPUがプログラムを実行する。
【0038】
≪オペレーティングシステム(OS)≫
オペレーティングシステムは、コンピュータ上の資源をアプリケーションに利用させるための管理をしたり、各種デバイスドライバを管理したり、ハードウェアであるコンピュータ自身を管理するために用いられる。小型のコンピュータではオペレーティングシステムとしてファームウェアを用いることもある。
【0039】
≪デバイスドライバ≫
デバイスドライバは、オペレーティングシステムを介して計算機に付属する各種のデバイスをユーザやアプリケーションに利用可能にするためのデバイスのハードウェアを制御するプログラムである。
【0040】
≪BIOS≫
BIOSは、コンピュータのハードウェアを立ち上げてオペレーティングシステムを稼働させるための手順をCPUに実行させるもので、最も典型的にはコンピュータの起動命令を受けるとCPUが最初に読取りに行くハードウェアである。ここには、ディスク(不揮発性メモリ)に格納されているオペレーティングシステムのアドレスが記載されており、CPUに展開されたBIOSによってオペレーティングシステムが順次メインメモリに展開されて稼働状態となる。なお、BIOSは、バスに接続されている各種デバイスの有無をチェックするチェック機能をも有している。チェックの結果はメインメモリ上に保存され、適宜オペレーティングシステムによって利用可能な状態となる。なお、外部装置などをチェックするようにBIOSを構成してもよい。
【0041】
≪I/Oコントローラ≫
I/Oコントローラは、外部機器との接続に利用される。USBコネクタもその一例である。
【0042】
≪USB,IEEE1394コネクタ,LAN端子等≫
USB,IEEE1394コネクタ、LAN端子等は、最も代表的な通信規格のインターフェースである。
【0043】
以上については、本願明細書中の全ての実施形態におけるハードウェア構成の説明で共通に利用される構成である。
<実施形態1>
【0044】
本実施形態は、主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に関する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 概要>
【0045】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置は、鉄筋コンクリート構造体において電磁波レーダを走査させて、鉄筋コンクリート構造体の内部に配置されている鉄筋の位置データを収集し、後ろの段落0057~0059において詳述するように、この鉄筋の位置データに基づいて鉄筋に係る反射波の波形情報である所謂ハイパボーラ(hyperbola)情報を取得する。そして、この推定装置では、取得したハイパボーラ情報において、頂点が不可視な波形部分の波形情報が存在する場合には、この頂点が不可視な波形部分の波形情報に基づいて鉄筋の位置を推定する。
【0046】
このような鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床などにおいて電磁波レーダを走査させることでハイパボーラ波形を取得する場合、例えば、床の壁近傍の鉄筋に係るハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形になったとしても、この床の壁近傍に埋設されている鉄筋の位置を推定することができるという効果を奏する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0047】
≪鉄筋コンクリート構造体≫
本発明に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置の推定対象となる鉄筋コンクリート構造体としては、建築物の柱,梁,床,壁,基礎等のほか、橋梁やトンネル等を挙げることができる。
【0048】
≪推定装置等について≫
図3Aに示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0360はノート型パソコン等の計算機であり、鉄筋コンクリート構造体、例えば、建築物における床0300の内部に埋設配置されている複数本の鉄筋0301の位置データを後述する台車状の電磁波レーダ0350を用いて収集する。なお、鉄筋コンクリート構造体において、複数本の鉄筋0301と略直交する方向にも複数本の鉄筋を配置して上下二層の鉄筋群とするのが一般的であるが、簡単のため、図3Aでは鉄筋0301と略直交する鉄筋を省略している。また、本願発明は、鉄筋コンクリート構造体の内部に鉄筋群が一層或いは上下二層に配置されている場合のみならず、鉄筋群が三層以上に配置されている場合にも当然適用可能である。
【0049】
本実施形態において、レーダ不可視領域の推定装置0360と電磁波レーダ0350とは無線ランを介してデータの送受信を行うように構成されており、この無線ランを介してのデータの送受信は、電磁波レーダを輻射していない状態で行われるようにしている。このデータの送受信は、有線を介して行うように構成されていたり、USB等のメモリを介して行うように構成されていたりしてもよい。
【0050】
≪レーダ探査≫
本発明に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置におけるレーダ探査とは、電磁波を用いた探査であり、鉄筋コンクリート構造体内部に高周波の電磁波を輻射し、その反射波を受信することで、鉄筋コンクリート構造体内部の鉄筋や異物の深さや位置を特定する。
【0051】
≪電磁波レーダ≫
図3Aに示すように、台車状を成す電磁波レーダ0350は、床0300に設定した所定の走査開始位置からスタートして、床0300内部に対して移動しつつ電磁波を輻射する送信アンテナ0351と、輻射した電磁波の床0300内部の鉄筋0301からの反射波を移動しつつ受信する受信アンテナ0352と、送信アンテナ0351から輻射した電磁波が鉄筋で反射して受信アンテナ0352に受信されるまでの時間に応じた位置を表示するレーダ画面0353を備えている(図3Aにおける相反する方向の二つの矢印は、図示中央の鉄筋0301に輻射した電磁波及び反射して戻る電磁波をそれぞれ示している。)。
【0052】
≪電磁波レーダに係る距離計測等≫
この場合、電磁波レーダ0350の車輪0354には、リニアエンコーダやロータリーエンコーダ等の図示しない距離計が組み込まれており、床0300をレーダ走査する際の走査開始位置から現在位置までの距離が判るようになっている。なお、電磁波レーダ0350でレーダ走査を行うの際の移動速度は、鉄筋0301の配置状況の把握に関与しないので、レーダ走査に際して電磁波レーダ0350を手動で移動させてもよいし、例えば、モータにより一定の速度で自走させてもよい。
【0053】
≪電磁波レーダの移動方式等≫
ここで、電磁波レーダ0350を自走式のものとした場合には、例えば、ビル屋上や橋梁等の屋外におけるレーダ走査において、準天頂衛星システム(みちびき)を用いて移動させるようにしてもよい。一方、例えば、上述のように建築物の床面等の屋内におけるレーダ走査においては、建築物の内部に複数のビーコンを配置すると共に電磁波レーダ0350にビーコン用の受信端末を搭載して、電磁波レーダ0350を複数のビーコンに案内されて移動させるようにしてもよい。
【0054】
≪電磁波レーダによるレーダ探査要領≫
このような電磁波レーダ0350を用いて床0300をレーダ走査する場合、床0300上において電磁波レーダ0350を鉄筋0301と直交する方向に移動させる。本実施形態のように鉄筋コンクリート構造体が建築物の床0300である場合には、図3Bの床の平面図に示すように、複数の鉄筋0301が床0300の左右に位置する壁Wl,Wrに対していずれも平行に配筋されているのが一般的なので、これを考慮して、例えば図示右側の壁Wrの近傍位置から電磁波レーダ0350を図示左側の壁Wlに向けて移動させて、床0300の図示左右方向に並べて配筋されている複数の鉄筋0301の各位置を把握する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0055】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 全体≫
図3Cに示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0360は、レーダ探査結果取得部0361と、頂点不可視波形部分情報取得部0362と、頂点推定手段保持部0363と、頂点推定部0364と、頂点位置情報出力部0365と、を有している。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0056】
≪実施形態1 構成 機能ブロック レーダ探査結果取得部≫
「レーダ探査結果取得部0361」は、上記電磁波レーダを鉄筋と直交する方向に移動させるレーダ走査を実施することで、複数本の鉄筋に係る反射波の波形情報である各ハイパボーラ波形(情報)をレーダ探査結果として取得する。
【0057】
≪実施形態1 レーダ探査結果取得部で取得される波形情報(ハイパボーラ波形)≫
ここで、図3Dの鉄筋の埋設状態における断面にレーダ画面の二次元画像を合わせた模式図に示すように、電磁波レーダ0350を鉄筋0301の配筋方向と直交する方向(図示左右方向)に走査スタート地点Sから移動させてレーダ走査を行う場合、送信アンテナから輻射される電磁波は、進行方向及び後退方向に広がりを持って進むため、例えば、電磁波レーダ0350が鉄筋0301の直上を通過する手前の距離計で計測される走査スタート地点Sからの距離P1の地点でも、前方の鉄筋0301からの斜めの反射波R1を受信することとなる。この際、電磁波レーダ0350のレーダ画面では、P1の地点で輻射された電磁波が反射波R1となって戻るまでの時間t1又はこの時間t1に比例して求められる鉄筋0301までの距離d1がP1の地点直下に表示されるようになっている。そして、電磁波レーダ0350が鉄筋0301の直上の距離計で計測される走査スタート地点Sからの距離P2の地点では、このP2の地点で輻射された電磁波が反射波となって戻るまでの時間t2又はこの時間t2に比例して求められる電磁波レーダ0350から鉄筋0301までの距離d2が最短となり、レーダ画面において、この時間又は距離がP2の地点に対応して鉄筋位置として表示されるようになっている。その後、電磁波レーダ0350が距離計で計測される走査スタート地点Sからの距離P3の地点を通過した際は、通り過ぎた鉄筋0301からの斜めの反射波を受信することとなり、電磁波レーダ0350のレーダ画面では、P3の地点で輻射された電磁波が反射波R3となって戻るまでの時間t3又はこの時間t3に比例して求められる鉄筋0301までの距離d3がP3の地点直下に表示されるようになっている。
【0058】
≪ハイパボーラ波形の頂点(ピーク)と鉄筋≫
このようなレーダ探査を行った結果、レーダ画面には、距離計で計測される走査スタート地点Sからの距離P1~P3の地点における各鉄筋位置表示がトレースされて鉄筋0301を通る鉛直線を中心とする左右対称の山形波形、すなわち、鉄筋0301のハイパボーラ波形(情報)として表示され、この鉄筋0301のハイパボーラ波形の頂点(ピーク)に基づいて、鉄筋0301が左右対称のハイパボーラ波形の中心線CL上に位置していることを認識できる。すなわち、床0300の水平方向における鉄筋0301の配筋位置の情報を得ることができる。
なお、鉄筋0301からの距離d2が最短となる鉄筋0301の直上の位置P2を電磁波レーダ0350が通過する際に、この電磁波レーダ0350の通過を周囲に認識させるための通過音や光を発するように構成することができる。
【0059】
≪ハイパボーラ波形の特徴≫
このハイパボーラ波形は、図3Eに示すように、鉄筋0301の深さが浅い場合に山形の頂部が鋭いハイパボーラ波形1になり、同一径の鉄筋0301の深度が深くなるにつれて山形の頂部が緩いハイパボーラ波形2,3,4になるという特徴を有する。また、同じ深さの位置に埋設されている鉄筋の直径が互いに異なるが場合において、図3Fに示すように、細い鉄筋0301Sに係るハイパボーラ波形は頂部が鋭いハイパボーラ波形5になり、太い鉄筋0301Lに係るハイパボーラ波形は頂部が緩いハイパボーラ波形6になるという特徴も有する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0060】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点不可視波形部分情報取得部≫
「頂点不可視波形部分情報取得部0362」は、レーダ探査結果取得部0361で取得したレーダ探査結果であるハイパボーラ波形において、頂点が不可視な波形部分の波形情報を取得するべく機能する。
【0061】
≪頂点が不可視な波形部分の波形情報≫
頂点が不可視な波形部分の波形情報とは、上記レーダ探査により取得される波形情報のうち、ハイパボーラ波形の頂点(ピーク)が欠けていて裾の部分のみが認識できる状態の波形情報のことである。
【0062】
≪頂点が不可視な波形部分の波形情報の具体例≫
具体的には、例えば、図3Gに示すように、鉄筋コンクリート構造体である床0300が壁Wで遮られている場合には、壁際において電磁波レーダ0350の進行が制約を受ける。そのため、床0300の壁W近傍に鉄筋0301が埋設されている場合には、壁W近傍までレーダ走査を行ったとしても、この壁W近傍で取得できる情報は、頂点p(破線部分)が不可視なハイパボーラ波形Hwの裾r(実線部分)のみの部分波形となってしまう。
「頂点不可視波形部分情報取得部0362」は、このようなハイパボーラ波形の頂点が不可視な裾r(波形部分)の波形情報を取得する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0063】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点推定手段保持部≫
「頂点推定手段保持部0363」は、頂点不可視波形部分情報取得部0362で取得した頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための推定手段を保持する機能を有する。
【0064】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点推定手段≫
この頂点推定手段保持部0363では、ハイパボーラ図形に基いて導出される曲線の方程式y=f(x)に頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)のデータ(曲率)を代入して求められるハイパボーラ図形を算出する頂点推定手段を保持する。この場合、曲線の方程式y=f(x)における「x」は、距離計で計測される走査スタート地点からの距離である。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0065】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点推定部≫
「頂点推定部0364」は、頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するべく機能する。
【0066】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点推定部による頂点位置の推定≫
この頂点推定部0364では、図3Hに示すように、二次曲線であるハイパボーラ図形に基いて導出される方程式y=f(x)に頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)rの曲率を代入してハイパボーラ図形を求め、この求めたハイパボーラ図形をノート型パソコン等の計算機であるレーダ不可視領域の推定装置におけるディスプレイ或いは電磁波レーダのレーダ画面において、頂点不可視波形部分情報である裾のみが可視で頂点が不可視なハイパボーラ波形に重ね合わせることで、頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0067】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点位置情報出力部≫
「頂点位置情報出力部0365」は、頂点推定部0364で推定された頂点位置情報を出力する。すなわち、床0300の壁近傍に埋設されている鉄筋0301の水平方向における位置の情報を出力する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 ハードウェア構成 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0068】
図4に示すように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0460は、CPU0461と、HDD、ROM等の不揮発性メモリ0462と、D-RAM等のメインメモリ0463と、インターフェースとから構成されている。不揮発性メモリ0462には、プログラムとしてレーダ探査結果取得プログラム、頂点不可視波形部分情報取得プログラ、頂点推定手段保持プログラム、頂点推定プログラム、頂点位置情報出力プログラムが格納されている。データとしては、電流信号や位相角の情報であり、これらのプログラムやデータは、メインメモリ0463の保持領域に読み込まれて作動領域で実行される。また、インターフェースには、特定小電力無線等がある。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 処理の流れ 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0069】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、図5に示すように、レーダ探査結果取得ステップS0501が実行されて、鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果が取得される。
次いで、頂点不可視波形部分情報取得ステップS0502が実行されて、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報が取得される。
これに続いて、頂点推定手段保持ステップS0503が実行されて、頂点不可視波形部分情報に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための推定手段が保持される。
そして、頂点推定ステップS0504が実行されて、頂点不可視波形部分情報である頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)のデータ(曲率)と、頂点推定手段であるハイパボーラ図形に基いて導出される二次方程式y=f(x)とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置の推定が成された後、頂点位置情報出力ステップS0505が実行されて、推定された頂点位置情報が出力される。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 効果 主に請求項1,3,6,7,9,12,13,15,18に対応>
【0070】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置は、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床や壁、柱、天井などにおいてレーダ走査を行ってハイパボーラ波形を取得した場合において、床などの壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形であったとしても、壁近傍の鉄筋の位置をいずれも推定することが可能であるという効果を奏する。
<実施形態2>
【0071】
本実施形態は、主に請求項2,4,8,10,14,16に関する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 概要>
【0072】
本実施形態は実施形態1を基本としており、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、鉄筋コンクリート構造体において電磁波レーダを走査させて取得したハイパボーラ情報において、頂点が可視な波形情報とともに頂点が不可視な波形部分の波形情報が存在する場合には、頂点が可視な波形情報を用いて不可視な波形部分の頂点位置を推定し、頂点が不可視なハイパボーラ情報が取得された鉄筋の位置を推定する。
【0073】
このような本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床などにおいて電磁波レーダを走査させることでハイパボーラ波形を取得する場合、先の実施形態に係る推定装置と同様に、床の壁近傍に埋設されている鉄筋のハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形になったとしても、この床の壁近傍における鉄筋の位置を推定することができるという効果を奏する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0074】
≪実施形態2 構成 機能ブロック 全体≫
図6Aに示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0660は、レーダ探査結果取得部0661と、頂点不可視波形部分情報取得部0662と、頂点推定手段保持部0663と、頂点推定部0664と、頂点位置情報出力部0665と、を有しているのに加えて、頂点可視波形情報取得部0666を有している。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0075】
≪実施形態2 構成 機能ブロック 頂点可視波形情報取得部≫
「頂点可視波形情報取得部0666」は、頂点可視波形の波形情報を取得するべく機能する。
【0076】
≪頂点が可視な波形情報≫
頂点が可視な波形情報とは、レーダ探査によりハイパボーラ波形の頂点(ピーク)が認識できる状態で取得される波形情報のことである。
【0077】
≪頂点が可視な波形情報の具体例≫
具体的には、レーダ探査結果取得部0661で取得したレーダ探査結果であるハイパボーラ波形において、図6Bのレーダ画面に示すように、鉄筋0601に係る頂点pが可視な左右対称の山形波形、例えば、電磁波レーダを用いて床をレーダ走査する場合には、床の水平方向における複数本の鉄筋0601の配筋位置の情報を取得する。
【0078】
≪実施形態1 構成 機能ブロック 頂点推定手段保持部≫
≪レーダ探査結果であるハイパボーラ波形を頂点可視波形情報とする場合≫
本実施形態において、「頂点推定手段保持部0663」は、頂点可視波形情報取得部0666で取得した複数のハイパボーラ波形の中から、頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)に重ね合わせ得る裾を有するハイパボーラ波形(後述するカーブフィッティングに適したハイパボーラ波形)を抽出する頂点推定手段としての複数推定手段を保持する。
【0079】
上述したように、鉄筋コンクリート構造体である床0300の場合、壁近傍の鉄筋を含めて同じ径の複数の鉄筋が互いに同一レベルで且つ平行に配筋されているのが一般的なので、これを考慮して、このような場合は、図6Bのレーダ画面に示すように、頂点可視波形情報取得部0666において互いに同じ形状を成すハイパボーラ波形Hが複数取得されるものとしている。したがって、頂点推定手段保持部0663の複数推定手段では、同じ形状の複数のハイパボーラ波形Hからいずれか一つのハイパボーラ波形を抽出する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0080】
≪実施形態2 構成 機能ブロック 頂点推定部≫
本実施形態において、「頂点推定部0664」では、ノート型パソコン等の計算機であるレーダ不可視領域の推定装置におけるディスプレイ或いは電磁波レーダのレーダ画面において、図6Cの上部に示すように、頂点推定手段保持部0663の複数推定手段によって取得した一つの頂点可視波形情報である頂点が可視なハイパボーラ波形Hと、頂点不可視波形部分情報である裾rのみが可視で頂点が不可視なハイパボーラ波形Hwを表示し、図6Cの下部に示すように、頂点が可視なハイパボーラ波形Hを矢印方向に移動させて、頂点が不可視なハイパボーラ波形Hwにカーブフィッティングすることで、頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0081】
≪頂点が可視な波形情報の他の具体例≫
ここで、レーダ探査結果取得部0661で取得したレーダ探査結果であるハイパボーラ波形において、頂点可視波形情報取得部0666が取得する頂点可視波形の波形情報には、上記したようなレーダ探査結果であるハイパボーラ波形(頂点可視波形情報)のほか、図6Dに示すように、上記した「鉄筋の埋設深さの深浅及び鉄筋の太さの大小に応じてハイパボーラ波形における山形の頂部の緩急が変化する特徴」に基づいてデータベース化した複数のハイパボーラ図形も含まれる。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0082】
≪データベース化した複数のハイパボーラ図形を頂点可視波形情報とする場合≫
このように、頂点推定手段保持部0663において、データベース化した複数のハイパボーラ図形を頂点可視波形情報として扱う場合には、図6Dに示すデータベース化した複数のハイパボーラ図形の中から、頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)に重ね合わせ得る裾を有するハイパボーラ図形を抽出する頂点推定手段としての複数推定手段を保持する。
【0083】
そして、「頂点推定部0664」において、データベース化した複数のハイパボーラ図形を頂点可視波形情報として扱う場合には、図6Dに示すデータベース化した複数のハイパボーラ図形の中から、頂点が不可視なハイパボーラ波形の裾(波形部分)に重ね合わせ得る裾を有するハイパボーラ図形を抽出し、ノート型パソコン等の計算機であるレーダ不可視領域の推定装置におけるディスプレイ或いは電磁波レーダのレーダ画面において、頂点不可視波形部分情報である裾のみが可視で頂点が不可視なハイパボーラ波形に、抽出したハイパボーラ図形を上記したハイパボーラ波形Hwと同様にカーブフィッティングすることで、頂点不可視波形部分の頂点位置を推定する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 ハードウェア構成 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0084】
図7に示すように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0760は、CPU0761と、HDD、ROM等の不揮発性メモリ0762と、D-RAM等のメインメモリ0763と、インターフェースとから構成されている。不揮発性メモリ0762には、プログラムとしてレーダ探査結果取得プログラム、頂点不可視波形部分情報取得プログラ、頂点可視波形情報取得プログラム、頂点推定手段保持プログラム、頂点推定プログラム、頂点位置情報出力プログラムが格納されており、頂点推定手段保持プログラムでは頂点推定手段としての複数推定手段が用いられる。データとしては、電流信号や位相角の情報であり、これらのプログラムやデータは、メインメモリ0763の保持領域に読み込まれて作動領域で実行される。また、インターフェースには、特定小電力無線等がある。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 処理の流れ 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0085】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、図8に示すように、レーダ探査結果取得ステップS0801が実行されて、鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果が取得される。
次いで、頂点不可視波形部分情報取得ステップS0802が実行されて、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報が取得され、次に、頂点可視波形情報取得ステップS0803が実行されて、頂点可視波形の波形情報が取得される。
これに続いて、頂点推定手段保持ステップS0804が実行されて、頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための推定手段としての複数推定手段が保持される。
そして、頂点推定ステップS0805が実行されて、頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段としての複数推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置の推定が成された後、頂点位置情報出力ステップS0806が実行されて、推定された頂点位置情報が出力される。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 効果 主に請求項2,4,8,10,14,16に対応>
【0086】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置は、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床や壁、柱、天井などにおいてレーダ走査を行ってハイパボーラ波形を取得した場合において、床などの壁近傍に埋設されている鉄筋に係るハイパボーラ波形が、その裾の部分のみが見えて頂点が見えない波形であったとしても、壁近傍の鉄筋の位置を推定することが可能であるという効果を奏する。
<実施形態3>
【0087】
本実施形態は、主に請求項5,11,17に関する。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 概要>
【0088】
本実施形態は、実施形態1,2を基本としており、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、鉄筋コンクリート構造体において電磁波レーダを走査させて取得したハイパボーラ情報において、頂点が可視な波形情報とともに頂点が不可視な波形部分の波形情報が存在する場合には、頂点が可視な波形情報に基づいてコンクリート固有の比誘電率を算出することで頂点が不可視な波形部分のハイパボーラ波形の形状を推定する。
【0089】
このような本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床などにおいてレーダ走査によってハイパボーラ波形を取得する場合、壁近傍の鉄筋の水平方向位置のみならず深さをも推定することができる。
加えて、例えば、後ろの段落0092及び図9Bにおいて詳述するように、鉄筋コンクリート構造体である床に鉄筋が上下方向に複数層埋設されていて、鉄筋が密集している箇所がある場合(所謂密集配筋の場合)において、レーダ走査により取得される下層側に位置する鉄筋のハイパボーラ波形が、上層側の鉄筋に隠れて頂点が不可視で裾の部分のみが見える波形になったとしても、この下層側の鉄筋の水平方向位置及び深さを推定することができるという効果を奏する。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項5,11,17に対応>
【0090】
≪実施形態3 構成 機能ブロック 全体≫
図9Aに示すように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0960は、レーダ探査結果取得部0961と、頂点不可視波形部分情報取得部0962と、頂点可視波形情報取得部0966と、頂点推定手段保持部0963と、頂点推定部0964と、頂点位置情報出力部0965を有している。
この鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置0960が先の本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置と比較して特徴とするところは、頂点不可視波形部分情報取得部0962で取得される頂点が不可視な波形部分の波形情報が鉄筋コンクリート構造体における所謂密集配筋によるものである点、及び、頂点推定手段保持部0963が有する頂点推定手段が比誘電率推定手段を含む点にある。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項5,11,17に対応>
【0091】
≪実施形態3 構成 機能ブロック 頂点不可視波形部分情報取得部≫
≪頂点が不可視な波形部分の波形情報の具体例≫
「頂点不可視波形部分情報取得部0962」において取得される頂点が不可視な波形部分の波形情報は、鉄筋コンクリート構造体における所謂密集配筋によるものである。
【0092】
≪密集配筋≫
密集配筋とは、例えば、図9Bに示すように、鉄筋コンクリート構造体である床0900に鉄筋0901が上中下の三層で埋設されていて、上層鉄筋0901U及び中層鉄筋0901Mが所謂W筋状態(各々の水平方向位置が互いに等しく配筋されている状態)であり、中層鉄筋0901M及び下層鉄筋0901Lが所謂千鳥筋状態(各々が千鳥状に配筋されている状態)であることを指す。
このような場合には、レーダ走査により取得される中層鉄筋0901Mが上層鉄筋0901Uに隠れてしまうため、中層鉄筋0901Mのハイパボーラ波形は、頂点(破線部分)が不可視なハイパボーラ波形Hwの裾r(実線部分)のみの部分波形となってしまう。
本実施形態において、「頂点不可視波形部分情報取得部0962」は、このような中層鉄筋0901Mに基づくハイパボーラ波形の頂点が不可視な裾r(波形部分)の波形情報を取得する。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 構成 主に請求項5,11,17に対応>
【0093】
≪実施形態3 構成 機能ブロック 頂点推定手段保持部≫
本実施形態において、「頂点推定手段保持部0963」が保持する頂点推定手段に含まれる比誘電率推定手段は、頂点可視波形情報取得部0966で取得した頂点可視波形情報であるハイパボーラ波形に基づいてコンクリートの比誘電率を算出するものとなっている。
【0094】
≪比誘電率及び鉄筋の深さ≫
ここで、鉄筋の深さD(m)は、送信アンテナから輻射された電磁波が鉄筋で反射して受信アンテナで受信されるまでの時間T(s)の半分(片道分)に、コンクリートを透過する電磁波の速度V(m/s)を掛けて求められ、式1で表される。
D=(1/2)×T×V 式1
【0095】
この際、電磁波の空気(真空)中の速度は3×10(m/s)である。そして、この電磁波がコンクリートを透過する際の速度Vは、媒質であるコンクリート固有の比誘電率で定まり、式2で表される。
V=(3×10)/(ε1/2 式2
【0096】
よって、鉄筋の深さD(m)は、式1及び式2により、式3で表される。
D=(1/2)×{(3×10)/(ε1/2}×T 式3
コンクリート固有の比誘電率εは、標準的な状態において6~8である。このように、コンクリート固有の比誘電率εには幅があることから、鉄筋のより正確な深さD、すなわち、鉄筋のより正確な頂点可視波形情報であるハイパボーラ波形を得るためには、正確なコンクリートの比誘電率εを求める必要がある。
【0097】
本実施形態において、頂点推定手段保持部0963が保持する頂点推定手段に含まれる比誘電率推定手段では、図9Cに示すように、コンクリートの比誘電率εの大小(6~8)及び鉄筋の埋設深さdの深浅に基づいて複数のハイパボーラ図形をデータベース化し、これらの複数のハイパボーラ図形を用いて、コンクリートの正確な比誘電率及び鉄筋の埋設深さを取得する。
すなわち、鉄筋コンクリート構造体である床に複数埋設されている鉄筋の中から、レーダ走査により取得されるハイパボーラ波形の頂点が可視で且つこの頂点の位置が互いに異なる2本の鉄筋、例えば、図9Bにおいて、上層鉄筋0901U及び下層鉄筋0901Lを選択する。そして、ノート型パソコン等の計算機であるレーダ不可視領域の推定装置におけるディスプレイ或いは電磁波レーダのレーダ画面において、これらの鉄筋0901U,0901Lの2つのハイパボーラ波形のうちの少なくとも一方のハイパボーラ波形に対して、データベース化した複数のハイパボーラ図形を選択的に重ね合わせ、ハイパボーラ波形とハイパボーラ図形とが重なった時点でレーダ画面に表示される数値を鉄筋コンクリート構造体である床のコンクリートの比誘電率εとして算出するようにしている。
【0098】
なお、頂点推定手段保持部0963が保持する頂点推定手段に含まれる比誘電率推定手段において、頂点可視波形情報取得部0966で取得した頂点可視波形情報であるハイパボーラ波形に基づいて導出される曲線の方程式y=f(x)を用いてコンクリートの比誘電率を算出するようにしてもよい。
すなわち、例えば、図9Bにおいて、上層鉄筋0901U及び下層鉄筋0901Lを選択し、これらの鉄筋0901U,0901Lに係る2つのハイパボーラ波形に基づいて導出される以下の式4及び式5を用いてコンクリートの比誘電率を算出するようにしてもよい。。
y=f(x,D1,ε) 式4
y=f(x,D2,ε) 式5
この際、式4及び式5における「D1」,「D2」は、コンクリート固有の比誘電率εを標準的な6に仮設定して上記式3により求めた鉄筋0901U,0901Lの各見かけ上の深さである。また、式4及び式5における「x」は、距離計で計測される走査スタート地点からの距離であり、既知の値である。
なお、より正確な比誘電率を算出するには、鉄筋径についても考慮する必要があるが、煩雑を避けるため、本明細書では省略する。
【0099】
≪実施形態3 構成 機能ブロック 頂点推定部≫
そして、本実施形態において、「頂点推定部0964」は、頂点可視波形情報取得部0966で取得した頂点可視波形情報と、頂点不可視波形部分情報取得部0962で取得した頂点不可視波形部分情報と、頂点推定手段保持部0963の頂点推定手段である比誘電率推定手段に基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するべく機能する。
【0100】
具体的には、頂点可視波形情報取得部0966で取得した頂点可視波形情報である上層鉄筋0901U及び下層鉄筋0901Lの各ハイパボーラ波形、及び、頂点不可視波形部分情報取得部0962で取得した頂点不可視波形部分情報である裾のみが可視で頂点が不可視な中層鉄筋0901Mのハイパボーラ波形が表示されているノート型パソコン等の計算機であるレーダ不可視領域の推定装置におけるディスプレイ或いは電磁波レーダのレーダ画面において、図9Dに示すように、テンプレートであるハイパボーラ図形F1を表示する。このハイパボーラ図形F1は、上述の比誘電率推定手段により算出した正確な比誘電率εとして作成した図形であり、上記段落0059の「ハイパボーラ波形の特徴」で説明したように、深さの変化に対応してハイパボーラ図形の山形の頂部が変化するようになっている。
そして、レーダ画面において、例えば、ハイパボーラ図形F1を矢印方向に移動させて、上層鉄筋0901Uのハイパボーラ波形Hに重なるようフィッティングすることで、上層鉄筋0901Uのハイパボーラ波形に最もよく当てはまる一点鎖線で示すハイパボーラ図形F2とした後、このハイパボーラ図形F2を頂点不可視波形部分情報である裾rのみが可視で頂点が不可視な中層鉄筋0901Mのハイパボーラ波形Hw方向に移動させて、頂点が不可視なハイパボーラ波形Hwにカーブフィッティングすることで、頂点不可視波形部分の鉄筋深さを含めた頂点P(中層鉄筋0901M)の位置を推定する。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 ハードウェア構成 主に請求項5,11,17に対応>
【0101】
図10に示すように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置1060は、CPU1061と、HDD、ROM等の不揮発性メモリ1062と、D-RAM等のメインメモリ1063と、インターフェースとから構成されている。不揮発性メモリ1062には、プログラムとしてレーダ探査結果取得プログラム、頂点不可視波形部分情報取得プログラ、頂点可視波形情報取得プログラム、頂点推定手段保持プログラム、頂点推定プログラム、頂点位置情報出力プログラムが格納されており、頂点推定手段保持プログラムでは頂点推定手段としての複数推定手段が用いられる。データとしては、電流信号や位相角の情報であり、これらのプログラムやデータは、メインメモリ1063の保持領域に読み込まれて作動領域で実行される。また、インターフェースには、特定小電力無線等がある。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 処理の流れ 主に請求項5,11,17に対応>
【0102】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、図11に示すように、レーダ探査結果取得ステップS1101が実行されて、鉄筋コンクリート構造体のレーダ探査結果が取得される。
次いで、頂点不可視波形部分情報取得ステップS1102が実行されて、取得したレーダ探査結果にてハイパボーラ波形の頂点が不可視な波形部分の波形情報が取得され、次に、頂点可視波形情報取得ステップS1103が実行されて、頂点可視波形の波形情報が取得される。
これに続いて、頂点推定手段保持ステップS1104が実行されて、頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置を推定するための推定手段としての複数推定手段が保持される。
そして、頂点推定ステップS1105が実行されて、頂点可視波形情報と頂点不可視波形部分情報と頂点推定手段としての複数推定手段とに基づいて頂点不可視波形部分の頂点位置の推定が成された後、頂点位置情報出力ステップS1106が実行されて、推定された頂点位置情報が出力される。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置 効果 主に請求項5,11,17に対応>
【0103】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置では、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床などにおいてレーダ走査によってハイパボーラ波形を取得する場合、壁近傍の鉄筋の水平方向位置のみならず深さをも推定することができるのに加えて、例えば、鉄筋コンクリート構造体である床に鉄筋が上下方向に複数層埋設されていて、鉄筋が密集している箇所がある場合(所謂密集配筋の場合)において、レーダ走査により取得される下層側に位置する鉄筋のハイパボーラ波形が、上層側の鉄筋に隠れて頂点が不可視で裾の部分のみが見える波形になったとしても、この下層側の鉄筋の水平方向位置及び深さを推定することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0104】
0360 鉄筋コンクリート構造体のレーダ不可視領域の推定装置
0361 レーダ探査結果取得部
0362 頂点不可視波形部分情報取得部
0363 頂点推定手段保持部
0364 頂点推定部
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11