(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172344
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20241205BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N25/70
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089998
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】521182560
【氏名又は名称】ブリルニクス シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】韓 相萬
(72)【発明者】
【氏名】盛 一也
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA04
4M118DD04
4M118DD09
4M118FA06
4M118FA14
4M118FA38
4M118HA25
5C024CX03
5C024CX43
5C024GX02
5C024GY18
5C024HX29
5C024HX35
5C024HX40
(57)【要約】
【課題】蓄積期間中に蓄積信号を検出可能な構成において、可能な限り高利得で低ノイズの特性を提供することが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供する。
【解決手段】フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPDとの間に形成され、FDとPDとの間の電荷転送経路CTPを制御可能な第1のトランジェントゲートPGを含み、第1のトランジェントゲートPGによりFDとPDとを結合し、PDにより生成された光電荷をFDに直ちに転送する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換を行う画素が配置された画素部を有し、
前記画素は、
光電変換により光電荷を生成する光電変換素子と、
前記光電変換素子により生成された電荷が転送されるフローティングディフュージョン(FD)と、
前記FDと前記光電変換素子との間に形成され、前記FDと前記光電変換素子との間の電荷転送経路を制御可能な第1のトランジェントゲートと、
を含み、
前記第1のトランジェントゲートにより前記FDと前記光電変換素子とを結合し、前記光電変換素子により生成された光電荷を前記FDに直ちに転送する
固体撮像装置。
【請求項2】
前記画素は、
前記光電変換素子から不要な電荷を前記FD以外の領域に転送可能な第2のトランジェントゲートを含む
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記画素は、
前記FDに接続された蓄積接続素子と、
前記蓄積接続素子を介して前記FDの電荷を蓄積する蓄積容量素子と、を含み、読み出し時の変換利得を切り替え可能な利得切換部を有する
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部を有し、
前記画素は、前記読み出し部の制御の下、
前記第1のトランジェントゲートをバイアスして適切な電位勾配に変調可能である
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記第1のトランジェントゲートは、
前記FDと前記光電変換素子間の前記電荷転送経路に沿うよう一対の第1の変調用ゲートを含み、転送パスが第1導電型半導体層によりピン止めされた前記第1の変調用ゲートに横電界を印加して前記光電変換素子の電位を制御する、第1の横電界変調(LEFM)構造を有する
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記第1のLEFM構造は、
前記第1の変調用ゲートに接続され、前記第1の変調用ゲートで生成された電荷の前記FDへのリークを抑止するため、生成された電荷を排出する第1のドレインを含む
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1のLEFM構造おいては、
前記第1のドレインは前記第1の変調用ゲートより電位が高く、
前記第1の変調用ゲートと前記光電変換素子との間に、障壁が形成されている
請求項6記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記第2のトランジェントゲートは、
前記FDと前記光電変換素子間の前記電荷転送経路に沿うよう一対の第2の変調用ゲートを含み、転送パスが第1導電型半導体層によりピン止めされた前記第2の変調用ゲートに横電界を印加して前記光電変換素子の電位を制御する、第2のLEFM構造を有する
請求項7記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記第2のLEFM構造は、
前記第2の変調用ゲートに接続され、前記第2の変調用ゲートで生成された電荷の前記FDへのリークを抑止するため、生成された電荷を排出する第2のドレインを含む
請求項8記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記第2のLEFM構造おいては、
前記第2のドレインは前記第2の変調用ゲートより電位が高く、
前記第2の変調用ゲートと前記光電変換素子との間に、障壁が形成されている
請求項9記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記画素は、
前記FDを所定の電位にリセットするリセット素子と、
前記FDの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、を含み、
前記画素または前画素アレイは、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器を含む
請求項1から10のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記参照電圧は、対応する光電荷を監視するためのしきい値を得るために、ランプまたは定数として設定可能である
請求項11記載の固体撮像装置。
【請求項13】
光電変換を行う画素が配置された画素部を有し、
前記画素は、
光電変換により光電荷を生成する光電変換素子と、
前記光電変換素子により生成された電荷が転送されるフローティングディフュージョン(FD)と、
前記FDと前記光電変換素子との間に形成され、前記FDと前記光電変換素子との間の電荷転送経路を制御可能な第1のトランジェントゲートと、
を含む、固体撮像装置の駆動方法であって、
前記第1のトランジェントゲートにより前記FDと前記光電変換素子とを結合し、
前記光電変換素子により生成された光電荷を前記FDに直ちに転送する
固体撮像装置の駆動方法。
【請求項14】
固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、
前記固体撮像装置は、
光電変換を行う画素が配置された画素部を有し、
前記画素は、
光電変換により光電荷を生成する光電変換素子と、
前記光電変換素子により生成された電荷が転送されるフローティングディフュージョン(FD)と、
前記FDと前記光電変換素子との間に形成され、前記FDと前記光電変換素子との間の電荷転送経路を制御可能な第1のトランジェントゲートと、
を含み、
前記第1のトランジェントゲートにより前記FDと前記光電変換素子とを結合し、前記光電変換素子により生成された光電荷を前記FDに直ちに転送する
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を検出して電荷を発生させる光電変換素子を用いた固体撮像装置(イメージセンサ)として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用に供されている。
CMOSイメージセンサは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ、医療用内視鏡、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話等の携帯端末装置(モバイル機器)等の各種電子機器の一部として広く適用されている。
【0003】
CMOSイメージセンサは、画素毎にフォトダイオード(光電変換素子)および浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion、フローティングディフュージョン)を有するFDアンプを持ち合わせており、その読み出しは、画素アレイの中のある一行を選択し、それらを同時に列(カラム)出力方向へと読み出すような列並列出力型が主流である。
【0004】
また、列並列出力型CMOSイメージセンサの画素信号読み出し(出力)回路については実に様々なものが提案されている。
それらの中で、その最も進んだ回路のひとつが、列(カラム)毎にアナログ-デジタル変換器(ADC(Analog digital converter))を備え、画素信号をデジタル信号として取り出す回路である(たとえば特許文献1,2参照)。
【0005】
この列並列ADC搭載CMOSイメージセンサ(カラムAD方式CMOSイメージセンサ)では、比較器(コンパレータ)はいわゆるRAMP波と画素信号の比較をして、後段のカウンタでデジタルCDSを行うことによりAD変換を行う。
【0006】
しかしながら、この種のCMOSイメージセンサは、信号の高速転送が可能であるが、グローバルシャッタ読み出しができないという不利益がある。
【0007】
これに対して、各画素に比較器を含むADC(さらにはメモリ部)を配置して、画素アレイ部中の全画素に対して同一のタイミングで露光開始と露光終了とを実行するグローバルシャッタをも実現可能にするデジタル画素(ピクセル)センサが提案されている(たとえば特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-278135号公報
【特許文献2】特開2005-295346号公報
【特許文献3】US 7164114 B2 FIG、4
【特許文献4】US 2010/0181464 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来のデジタル画素センサを備えたCMOSイメージセンサでは、グローバルシャッタ機能を実現することは可能であり、また、各画素に比較器を含むADCを配置して、所定の読み出しモードによって広ダイナミックレンジ化を図ることが可能である。
【0010】
なお、ダイナミックレンジを拡大させる方法としては、たとえば、イメージセンサの同一の画素から蓄積時間の異なる2種類の信号を読み出し、この2種類の信号を組み合わせて、ダイナミックレンジを拡大させる方法や、高感度の画素でダイナミックレンジの小さい信号と、低感度でダイナミックレンジを拡大した信号を組み合わせてダイナミックレンジを拡大させる方法などが知られている。
【0011】
デジタルピクセルセンサ(DPS)アーキテクチャは1990年代から2000年代初頭にかけて,グローバルシャッタ(GS)動作における高速・低消費電力・高ダイナミックレンジ(HDR)の実現を目指して高い期待を持って研究されていた。
しかし、その光学性能は、フロントサイドイルミネーション(FSI)素子を使用しているため、フォトダイオード(PD)のフィルファクターが低く、画素サイズが大きいという理由から、当時のGS画素と比較して劣っていた。
ところが、近年のCMOS製造プロセスの進歩により、CMOSイメージセンサ(CIS)画素と画素レベルのアナログデジタル変換(ADC)および画素内メモリを別々の積層ウェハ上に製造する積層型裏面照射型DPSアプローチが可能になり、画素サイズの縮小と高画質化が可能になっている。
【0012】
このような背景から、トリプル量子化(3Q)方式を用いた積層型DPSが開発され、4.6μm画素サイズで10ビット/画素のADCを用いて30フレーム/秒でDR 127dB,電力5.7mW という超低電力が実現されている。
【0013】
デジタルピクセルセンサDPSの構成としては電荷蓄積部と増幅回路とアナログデジタル変換部が一体となった構成であるが、一般には電荷蓄積部には暗電流(低リーク、ノイズ)が少ない埋め込みフォトダイオードが用いられる。
埋め込みフォトダイオードは、電荷蓄積部が半導体表面に露出し浮遊状態にある表面型受光素子に対して、電荷蓄積部が半導体表面には露出されていない構造を持つ埋め込み型受光素子であり、NPN接合または PNP接合のトランジスタ構造を持つフォトダイオードのことである。
受光面に直接露出していないベース領域が埋め込み層として光電荷蓄積部となる構造を持つ。この埋め込み層はリセット状態では空乏化しているため、比較的薄い濃度の接合となる。
【0014】
前述したとおり、デジタルピクセルセンサ(DPS)は電荷蓄積部と増幅回路とアナログデジタル変換部が一体となった構成であるが、その回路を構成するためには、電気的に電荷蓄積部と増幅回路入力段に接続する必要があるが、シリコン基板内でその回路を構成する場合には、増幅回路と電荷蓄積部にオーミックな接続が必要で、接合部には極めて高い濃度の接合が必要になる。
【0015】
このため、デジタルピクセルセンサ(DPS)を構成する電荷蓄積部は高い濃度を含むN型半導体により構成されるが、埋め込み型の電荷蓄積部となりえないため、暗電流特性が極めて劣化する課題があった。
また、以上の背景から、低照度側の光電変換信号を埋め込み電荷蓄積部、高照度側の信号をFDに蓄積部に分配して、個別的に量子化するトリプル量子化(3Q)方式や2Q方式を開発してこの問題を回避しつつ、DPSの優位性である高ダイナミックレンジ、低消費電流特性をもちながら、低ノイズのDPSが実現されている。
しかしながら、こちらも回路構成が複雑化するため、画素縮小化が困難、それぞれの信号接続点でSNRが劣化するなどの課題がある。
【0016】
以下、DPSの構成を電荷蓄積部、増幅回路(ソースフォロア)、リセット回路として、ノイズおよび暗電流に関して説明する。
【0017】
Qsfnoise( SF Noise) は接合容量に依存する、接合容量Cpixに依存し容量が小さいほどノイズが減る。
光電荷蓄積部と検出ノードが同じ場所に形成されるため、PDのN+領域が直接接触してPDとバッファゲインを接続することになる。そのため、このN+領域によって暗電流が誘導され、検出ノードの容量が増加する。
【0018】
DPSアーキテクチャは、画素(ピクセル)ごとにADCを採用し、デジタルデータはデジタルメモリと同様の方法でイメージセンサアレイから読み出される。
DPSは、アナログイメージセンサと比較して、非常に高いダイナミックレンジやグルーバル動作など、いくつかの利点を備えている。
しかし、光電荷の検出が常に必要であるため、光電荷蓄積領域は光検出領域でなければならないことが本質的に必要である。
このため、PD領域はオーミックコンタクトが可能な高濃度領域である必要がある。暗電流性能はドーピング濃度とPDの形成に関係するため、暗電流性能の低下を防ぐためには、光電荷蓄積領域も高ドーズ領域である必要がある。
また、この光検出領域は、光電荷蓄積と共通である必要がある。そのため、バッファ回路に接続するフォトディテクタ領域の容量が大きくなり、ノイズ性能が低下してしまう。
【0019】
本発明は、蓄積期間中に蓄積信号を検出可能な構成において、可能な限り高利得で低ノイズの特性を提供することが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の観点の固体撮像装置は、光電変換を行う画素が配置された画素部を有し、前記画素は、光電変換により光電荷を生成する光電変換素子と、前記光電変換素子により生成された電荷が転送されるフローティングディフュージョン(FD)と、前記FDと前記光電変換素子との間に形成され、前記FDと前記光電変換素子との間の電荷転送経路を制御可能な第1のトランジェントゲートと、を含み、前記第1のトランジェントゲートにより前記FDと前記光電変換素子とを結合し、前記光電変換素子により生成された光電荷を前記FDに直ちに転送する。
【0021】
本発明の第2の観点は、光電変換を行う画素が配置された画素部を有し、前記画素は、光電変換により光電荷を生成する光電変換素子と、前記光電変換素子により生成された電荷が転送されるフローティングディフュージョン(FD)と、前記FDと前記光電変換素子との間に形成され、前記FDと前記光電変換素子との間の電荷転送経路を制御可能な第1のトランジェントゲートと、を含む、固体撮像装置の駆動方法であって、記第1のトランジェントゲートにより前記FDと前記光電変換素子とを結合し、前記光電変換素子により生成された光電荷を前記FDに直ちに転送する。
【0022】
本発明の第3の観点の電子機器は、固体撮像装置と、前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、前記固体撮像装置は、光電変換を行う画素が配置された画素部を有し、前記画素は、光電変換により光電荷を生成する光電変換素子と、前記光電変換素子により生成された電荷が転送されるフローティングディフュージョン(FD)と、前記FDと前記光電変換素子との間に形成され、前記FDと前記光電変換素子との間の電荷転送経路を制御可能な第1のトランジェントゲートと、を含み、前記第1のトランジェントゲートにより前記FDと前記光電変換素子とを結合し、前記光電変換素子により生成された光電荷を前記FDに直ちに転送する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄積期間中に蓄積信号を検出可能な構成において、可能な限り高利得で低ノイズの特性を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の画素部のデジタル画素アレイの一例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置のデジタル画素の一例を示す回路図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の画素の光電変換読み出し部の要部を抽出して示す回路図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るDPS動作のタイミングチャートおよびポテンシャル図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートを有する電荷転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図、並びに第1のトランジェントゲートを持たない比較例の電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【
図7】比較例の電荷蓄積転送系の動作、効率等について説明するための図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートを有する電荷転送系の動作、効率等について説明するための図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートを有する電荷転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図、並びに、第1のトランジェントゲートPGを持つ基本構造の電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1および第2のトランジェントゲートを有する電荷転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図、並びに、第1のトランジェントゲートPGを持つ基本構造の電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1および第2のトランジェントゲートを有する電荷転送系のシミュレーション結果を説明するための簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図、並びに、第1および第2のトランジェントゲートPGを持たない比較例の電荷蓄積転送系のシミュレーション結果を説明するための簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【
図12】2つの変調ゲートを電荷転送経路に沿うように配置した画素要部の等価回路の例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用される電子機器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
本実施形態において、固体撮像装置10は、たとえば画素としてデジタル画素(Digital Pixel)を含むCMOSイメージセンサにより構成される。
【0027】
この固体撮像装置10は、
図1に示すように、撮像部としての画素部20、垂直走査回路(行走査回路)30、出力回路40、およびタイミング制御回路50を主構成要素として有している。
これらの構成要素のうち、たとえば垂直走査回路30、出力回路40、およびタイミング制御回路50により画素信号の読み出し部60が構成される。
【0028】
本第1の実施形態において、固体撮像装置10は、画素部20において、デジタル画素として光電変換読み出し部210、AD(アナログデジタル)変換部220、およびメモリ部230を含み、たとえば積層型のCMOSイメージセンサとして構成されている。なお、固体撮像装置10は、グローバルシャッタの動作機能を持つように構成されてもよい。
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10において、後で詳述するように、各デジタル画素DPがAD(アナログデジタル)変換機能を有しており、AD変換部は、光電変換読み出し部により読み出される電圧信号VSLと参照電圧VREFとを比較し、読み出される電圧信号VSLに対してアナログデジタル(AD)変換処理を行い、デジタル化した比較結果信号を出力する比較器(コンパレータ)を有している。
【0029】
たとえば、比較器は、読み出し部60の制御の下、蓄積期間(露光期間)にフォトダイオードPD(光電変換素子)から出力ノード(フローティングディフュージョンFD)に溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理と、蓄積期間後の転送期間に出力ノード(フローティングディフュージョンFD)に転送されたフォトダイオードPD(光電変換素子)の蓄積電荷に応じた電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理と、を行う。
【0030】
そして、本実施形態においては、第2の比較処理中に不規則な強い光が光電変換素子(フォトダイオードPD)に入射したとしても、フォトダイオードPD(光電変換素子)から不要な電荷をフローティングディフュージョンFD領域外に放出し、PD(光電変換素子)からフローティングディフュージョンFDに電荷がオーバーフローしてFDレベルが変動することを防止するシャッタゲート(SGまたはAB)を有している。
これにより、第2の比較処理中に、不規則な強い光がフォトダイオードPD(光電変換素子)に入射したとしてもFDレベルが変動することを防止し、正常なAD変換処理を実現可能に構成されている。
【0031】
さらに、本第1の実施形態において、画素200は、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)との間に形成され、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードにPD(光電変換素子)との間の電荷転送経路CTPを制御可能な第1のトランジェントゲートPGが配置されている。
本第1の実施形態においては、第1のトランジェントゲートPGによりフローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)とを結合させ、フォトダイオードPD(光電変換素子)により生成された光電荷をフローティングディフュージョンFDに光電変換後直ちに転送させる。
【0032】
なお、本実施形態においては、後述するように、画素200は、フォトダイオードPDから不要な電荷をフローティングディフュージョンFD以外の領域に転送可能な第2のトランジェントゲートABを含む構成を採用することも可能である。
【0033】
本第1の実施形態においては、画素部20の画素200から画素信号を読み出す読み出し部60を有している。
画素200は、読み出し部60の制御の下、第1のトランジェントゲートPGをバイアスして適切な電位勾配に変調可能である。
【0034】
本第1の実施形態において、第1のトランジェントゲートPGは、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)間の電荷転送経路CTPに沿うよう一対の第1の変調用ゲートTG1,TG2を含み、転送パスTPが第1導電型(p型)半導体層によりピン止めされた第1の変調用ゲートTG1,TG2に横電界を印加してフォトダイオードPD(光電変換素子)の電位を制御する、第1の横電界変調(LEFM)構造を採用可能である。
【0035】
以下、固体撮像装置10の各部の構成および機能の概要、特に、画素部20およびLEFM構造を採用したデジタル画素の構成、機能および効果等について詳述する。
【0036】
(画素部20およびデジタル画素200の構成)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素部のデジタル画素アレイの一例を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素の一例を示す回路図である。
図4(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素の光電変換読み出し部210の要部を抽出して示す回路図およびポテンシャル図であって、比較例と並べて示してある。
図5(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10のDPS動作概念を示すタイミングチャートおよびポテンシャル図である。
【0037】
画素部20は、
図2に示すように、複数のデジタル画素200がN行M列の行列状(マトリクス状)に配列されている。
なお、
図2においては、図面の簡単化のため、9つのデジタル画素200が3行3列の行列状(M=3、N=3のマトリクス状)に配置されている例が示されている。
【0038】
本第1の実施形態に係るデジタル画素200は、光電変換読み出し部(
図2ではPDと表記)210、AD変換部(
図2ではADCと表記)220、およびメモリ部(
図2ではMEMと表記)230を含んで構成されている。
本第1の実施形態の画素部20は、第1の基板110と第2の基板120の積層型のCMOSイメージセンサとして構成されるが、本例では、
図3に示すように、第1の基板110に光電変換読み出し部210が形成され、第2の基板120にAD変換部220およびメモリ部230が形成されている。
【0039】
デジタル画素200の光電変換読み出し部210は、フォトダイオード(光電変換素子)と画素内アンプとを含んで構成される。
具体的には、この光電変換読み出し部210は、たとえば光電変換素子であるフォトダイオードPDを有する。
【0040】
フォトダイオードPDは、蓄積期間に光電変換により生成した電荷をフローティングディフュージョンFDに直ちに転送する機能を有し、また、生成し転送された電荷はフローティングディフュージョンFDに蓄積される。
フォトダイオードPDの蓄積部PNDとフローティングディフュージョンFDとの間に、一般的なCMOSイメージセンサで適用される転送トランジスタに代えて、第1のトランジェントゲートPGが配置されている。
また、フォトダイオードPDの蓄積部PNDと所定の固定電位VAAPIXとの間に第1の電荷オーバーフローゲート素子としての第1のシャッタゲートトランジスタSG-Trが接続されている。
【0041】
そして、光電変換読み出し部210は、一つの出力ノードNDとしてのフローティングディフュージョンFDに対応して、リセット素子としてのリセットトランジスタRST-Tr、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF-Tr、蓄積素子としての蓄積トランジスタBIN-Tr、蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS、および読み出しノードND1をそれぞれ一つずつ有する。
【0042】
そして、本第1の実施形態においては、ソースフォロワトランジスタSF-Trおよび読み出しノードND1を含んで出力バッファ部211が構成されている。
また、蓄積トランジスタBIN-Trおよび蓄積キャパシタCSを含んで利得切換部212が構成されている。
なお、
図4においては、利得切換部212は図面の簡単化等のため省略してある。
【0043】
本第1の実施形態に係る光電変換読み出し部210は、出力バッファ部211の読み出しノードND1がAD変換部220の入力部に接続されている。
光電変換読み出し部210は、出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFDの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号VSLをAD変換部220に出力する。
【0044】
たとえば、光電変換読み出し部210は、AD変換部220の第1の比較処理期間PCMP1において、蓄積期間PIに光電変換素子であるフォトダイオードPD0から出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFDに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号VSLを出力する。
【0045】
さらに、光電変換読み出し部210は、AD変換部220の第2の比較処理期間PCMP2において、蓄積期間PI後の転送期間PTに出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFDに転送されたフォトダイオードPD1の蓄積電荷に応じた電圧信号VSLを出力する。
光電変換読み出し部210は、第2の比較処理期間PCMP2において、画素信号としての読み出しリセット信号(信号電圧)(VRST)および読み出し信号(信号電圧)(VSIG)をAD変換部220に出力する。
【0046】
フォトダイオードPDは、入射光量に応じた量の信号電荷(ここでは電子)を発生し、蓄積する。
以下、信号電荷は電子であり、各トランジスタがn型トランジスタである場合について説明するが、信号電荷が正孔(ホール)であったり、各トランジスタがp型トランジスタであっても構わない。
【0047】
各デジタル画素200において、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による表面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまう。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0048】
デジタル画素200の光電変換読み出し部210においては、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)との間に形成され、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードにPD(光電変換素子)との間の電荷転送経路CTPを制御可能な第1のトランジェントゲートPGが配置されている。
本第1の実施形態においては、第1のトランジェントゲートPGによりフローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)とを結合させ、フォトダイオードPD(光電変換素子)により生成された光電荷をフローティングディフュージョンFDに光電変換後直ちに転送させる。
【0049】
なお、本実施形態においては、後述するように、画素200は、フォトダイオードPDから不要な電荷をフローティングディフュージョンFD以外の領域に転送可能な第2のトランジェントゲートABを含む構成を採用することも可能である。
【0050】
本第1の実施形態において、第1のトランジェントゲートPGは、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)間の電荷転送経路CTPに沿うよう一対の第1の変調用ゲートTG1,TG2を含み、転送パスTPが第1導電型(p型)半導体層によりピン止めされた第1の変調用ゲートTG1,TG2に横電界を印加してフォトダイオードPD(光電変換素子)の電位を制御する、第1のLEFM(横電界変調)構造を採用可能である。
【0051】
通常、転送トランジスタTG-Trは、フォトダイオードPDの蓄積部PNDとフローティングディフュージョンFDの間に接続され、制御線を通じてゲートに印加される制御信号TG0により制御される。
転送トランジスタTG-Trは、制御信号TGがハイ(H)レベルの転送期間PTに選択されて導通状態となり、フォトダイオードPD0で光電変換され蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFDに転送する。
なお、フォトダイオードPDおよびフローティングディフュージョンFDが所定のリセット電位にリセットされた後、フォトダイオードPD0は蓄積期間PIとなるが、このとき、入射光により発生した電荷が、FD自身の容量(すなわちゲイン)に影響を与えないように制御された転送トランジスタTG0―Tr下のパスを通じて隣接したフローティングディフュージョンFDに溢れ出し、対応する信号電圧が生成される。
【0052】
電荷オーバーフローゲート素子としてのシャッタゲートトランジスタSG-Trは、フォトダイオードPDの蓄積部PNDと所定の固定電位VAAPIXとの間が接続され、制御戦を通じて印加される制御信号SGにより制御される。
シャッタゲートトランジスタSG-Trは、制御信号SG0がHレベルの期間に選択されて導通状態となり、たとえばフォトダイオードPDの電荷蓄積部PNDと所定の固定電位VAAPIX間にアンチグルーミングとしてのエミッタフローを形成し、不要な電荷を固定電位VAAPIXに放出させる。
【0053】
このように、転送トランジスタTG-TrとシャッタゲートトランジスタSG-Trは、それぞれ個別のタイミングで駆動制御される。
【0054】
リセットトランジスタRST-Trは、電源電圧VDDの電源線VddとフローティングディフュージョンFDの間に接続され、制御線を通じてゲートに印加される制御信号RSTにより制御される。
リセットトランジスタRST-Trは、制御信号RSTがHレベルのリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFDを電源電圧VDDの電源線Vddの電位にリセットする。
【0055】
蓄積トランジスタBIN―Trは、フローティングディフュージョンFDとリセットトランジスタRST―Trとの間に接続され、その接続ノードND2と基準電位VSSとの間に蓄積キャパシタCSが接続されている。
蓄積トランジスタBIN-Trは、制御線を通じてゲートに印加される制御信号BINにより制御される。
蓄積トランジスタBIN1-Trは、制御信号BINがHレベルのリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFDと蓄積キャパシタCSとを接続する。
【0056】
ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF-Trは、ソースが読み出しノードND1に接続され、ドレイン側が電源線Vddに接続され、ゲートがフローティングディフュージョンFDに接続されている。
そして、出力バッファ部211を形成する出力ノードND1は、AD変換部220の入力部に接続された信号線LSGN1に接続されている。
読み出しノードND1が接続された信号線LSGN1と基準電位VSS(たとえばGND)の間に電流源素子としてのカレントトランジスタIC-Trのドレイン、ソースが接続されている。カレントトランジスタIC-Trのゲートは制御信号VBNPIXの供給ラインに接続されている。
そして、読み出しノードND1とAD変換部220の入力部間の信号線LSGN1は、電流源素子としてのカレントトランジスタIC-Trにより駆動される。
【0057】
図6(A)は、本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートPGを有する電荷転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
図6(B)は、第1のトランジェントゲートPGを持たない比較例の電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
図7は、比較例の電荷蓄積転送系の動作、効率等について説明するための図である。
図8は、本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートを有する電荷転送系の動作、効率等について説明するための図である。
【0058】
本例では、フォトダイオードPDが矩形領域RCTとして形成され、X方向の一側部にフローティングディフュージョンFDが接続され、他側部に重なるようにしてシャッターゲートABが配置されている。
第1のトランジェントゲートPGは、フローティングディフュージョンFDとフォトダイオードPD(光電変換素子)間の電荷転送経路CTPに沿うよう一対の第1の変調用ゲートTG1,TG2が設けられ、転送パスTPが第1導電型(p型)半導体層によりピン止めされた第1の変調用ゲートTG1,TG2に横電界を印加してフォトダイオードPD(光電変換素子)の電位を制御する、第1のLEFM(横電界変調)構造が採用されている。
【0059】
本実施形態に係るCMOSイメージセンサには、1PG(LEFM)、1PD、1AB ゲートの電荷経路の横に1セットのLEFM-TG構造の第1の変調用ゲートTG1,TG2が配置されている。
LEFM以外は比較例(従来型)と同じ構造である。
LEFM-TG は、横電界を印加してフォトダイオードPD の電位が制御される。
LEFM-TG は、すべての転送パスTPがP+ 層2001によってピン止めされているため、転送パスにバリアがなく、トラップが存在しないという利点がある。したがって、低い暗電流を実現できる。
比較例の場合、露光時間中はTGがオンしているため、TGゲートの下に多くのトラップが存在する。そのため、トラップは大きな暗電流を引き起こす。
【0060】
ここで、比較例と本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートを有する電荷転送系の動作、効率等について説明する。
【0061】
比較例は、
図7に関連付けて示されている。
比較例の構造ではゲートTGに1.5Vなど低い電圧を印加した場合、PD-TGバリア(Aで示す破線の丸)、ゲートTG下でのバリア(Bで示す破線の丸)が有りフォトダイオードPDから発生した電子がフローティングディフュージョンFDへの転送に障害が発生する。
そのため2.7Vなど高い電圧を印加する必要がある。
ただし、高い電圧を印加した場合はゲートTGの下にフローティングディフュージョンFDからの電子が逆流して入り込む(Cで示す破線の丸)いわば汲み上げ現象がおこるおそれがある
また、ゲートTGがオンの間、ゲートTG下にはホール(Hole)が無くなり(Dで示す破線の丸)、ゲートTG下にあるトラップ(Trap)から大量の暗電流が発生する。
【0062】
本実施形態については、
図8に関連付けて示されている。
LEFM構造ではゲートTGに1.5Vなど低い電圧を印加しても、フォトダイオードPDからフローティングディフュージョンFDへの電荷転送経路全領域に電界勾配が発生されバリアなく電界転送ができる。
そのため、電荷転送経路CTPのポテンシャルを高くする必要も無くFDからの電荷の逆流問題も起こらない。
また、LEFM構造のゲートTGはOnになっていてもFDへの転送路がPDと同様に高い濃度のHoleで覆われていて(Dで示す破線の丸)Trapからの暗電流を防ぐことが可能である。
比較例(従来)の構造と比べて本第1の実施形態のLEFM構造では低電圧駆動ができ低電力化、より優れた電荷転送効率、チャージトラップを無くすことにより低ノイズが期待できる。
【0063】
【0064】
デジタル画素200のAD変換部220は、光電変換読み出し部210により出力されるアナログの電圧信号VSLを、所定の傾きを持たせて変化させたランプ波形または固定電圧の参照電圧VREFと比較して、デジタル信号に変換する機能する。
【0065】
AD変換部220は、
図3に示すように、比較器(COMP)221、出力側の負荷キャパシタCL1、およびリセットスイッチSW-RSTを含んで構成されている。
【0066】
比較器221は、第1の入力端子としての反転入力端子(-)に、光電変換読み出し部210の出力バッファ部211から信号線LSGN1に出力された電圧信号VSLが供給され、第2の入力端子としての非反転入力端子(+)に参照電圧VREFが供給され、電圧信号VSTと参照電圧VREFとを比較し、デジタル化した比較結果信号SCMPを出力するAD変換処理(比較処理)を行う。
【0067】
比較器221は、第1の入力端子としての反転入力端子(-)に結合キャパシタCC1が接続されており、第1の基板110側の光電変換読み出し部210の出力バッファ部211と第2の基板120側のAD変換部220の比較器221の入力部をAC結合することにより、低ノイズ化を図り、低照度時に高SNRを実現可能なように構成されている。
【0068】
また、比較器221は、出力端子と第1の入力端子としての反転入力端子(-)との間にリセットスイッチSW-RSTが接続され、出力端子と基準電位VSSとの間に負荷キャパシタCL1が接続されている。
【0069】
基本的に、AD変換部220においては、光電変換読み出し部210の出力バッファ部211から信号線LSGN1に読み出されたアナログ信号(電位VSL)は比較器221で参照電圧VREF、たとえばある傾きを持った線形に変化するスロープ波形であるランプ信号RAMPと比較される。
このとき、たとえば比較器221と同様に列毎に配置された図示しないカウンタが動作しており、ランプ波形のあるランプ信号RAMPとカウンタ値が一対一の対応を取りながら変化することで電圧信号VSLをデジタル信号に変換する。
基本的に、AD変換部220は、参照電圧VREF(たとえばランプ信号RAMP)の変化は電圧の変化を時間の変化に変換するものであり、その時間をある周期(クロック)で数えることでデジタル値に変換する。
そして、アナログ信号VSLとランプ信号RAMP(参照電圧VREF)が交わったとき、比較器221の出力が反転し、図示しないカウンタの入力クロックを停止し、または、入力を停止していたクロックを図示しないカウンタに入力し、そのときのカウンタの値(データ)がメモリ部230に記憶されてAD変換を完了させる。
以上のAD変換期間終了後、各デジタル画素200のメモリ部230に格納されたデータ(信号)は出力回路40から図示しない信号処理回路に出力され、所定の信号処理により2次元画像が生成される。
【0070】
メモリ部230はSRAMやDRAMにより構成され、デジタル変換された信号が供給され、フォトコンバージョン符号に対応し、画素アレイ周辺の出力回路40の外部IOバッファにより読み出すことができる。
本例では、メモリ部230は、比較器221の出力に2つのメモリ231,232が接続されている。
【0071】
垂直走査回路30は、タイミング制御回路50の制御に応じてシャッタ行および読み出し行において行走査制御線を通してデジタル画素200の光電変換読み出し部210の駆動を行う。
垂直走査回路30は、タイミング制御回路50の制御に応じて、各デジタル画素200の比較器221に対して、比較処理に準じて設定される参照電圧VREFを供給する。
また、垂直走査回路30は、アドレス信号に従い、信号の読み出しを行うリード行と、フォトダイオードPDに蓄積された電荷をリセットするシャッタ行の行アドレスの行選択信号を出力する。
【0072】
出力回路40は、たとえば画素部20の各デジタル画素200のメモリ出力に対応して配置されたIOバッファを含み、各デジタル画素200から読み出されるデジタルデータを外部に出力する。
【0073】
タイミング制御回路50は、画素部20、垂直走査回路30、出力回路40等の信号処理に必要なタイミング信号を生成する。
【0074】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、画素200は、フォトダイオードPD、第1のトランジェントゲート(PG)、シャッターゲート(AB)、リセット(RST)トランジスタ、ソースフォロワ(SF)トランジスタを含んで構成されている。
フォトダイオードPDは埋め込み型フォトダイオードで形成され、第1のトランジェントゲート(PG)の変調ゲート(トランスファーゲート)は蓄積期間中のフローティングディフュージョンFDへの電荷転送経路CTPに接続されている。RSTゲートは,電荷転送前にFDを強制的に静止レベル(Vrst)にするために接続されている。
光電変換された電子は、フォトダイオードPDで発生した直後に転送され、別途形成されたFDに蓄積される。
光信号の電荷は、印加された光信号レベル(Qsig:光信号電荷)に応じて、FDのノード容量で電圧領域(Vsig)への変換が以下の式で行われる。Vsig -Vrst = Qsig/C(FD)。
この変換係数は,FDノード容量に従う。FDの光信号(Vsig-Vrst)は増幅回路例えばソースフォロワーバッファとして一定の負荷電流を持つSFゲートに印加され、露光期間中の動作基準として基準信号を入力したい比較器(コンパレータ)を介してADC入力として結合される。
比較器(コンパレータ)はリセットスイッチと出力負荷容量で構成することができる。SRAMやDRAMなどのメモリは、光電変換符号に対応したデジタル化信号としてコンパレータ出力に接続され、任意に期間に画素配列周辺の外部IOバッファで読み出すことができる。
【0075】
本第1の実施形態によれば、蓄積期間中に蓄積信号の検出な可能なDPSの構成において、可能な限り高利得で低ノイズの特性を提供することが可能となる。
【0076】
また、本第1の実施形態の固体撮像装置10によれば、小さな画素サイズで所定の読み出しモードによりダイナミックレンジを拡大することが可能となる。
また、本第1の実施形態によれば、実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能で、しかも低ノイズ化を図れ、有効画素領域を最大限に拡大することができ、コストあたりの価値を最大限に高めることが可能となる。
【0077】
(第2の実施形態)
図9(A)は、本発明の第2の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1のトランジェントゲートPGを有する電荷転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
図9(B)は、第1のトランジェントゲートPGを持つ基本構造の電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【0078】
本第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aの画素200Aが上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素200と異なる点は、次の通りである。
【0079】
本第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aの画素200Aにおいては、変調ゲート(転送ゲート)TGで発生した電荷がFDノードに転送されるのを防ぐため、LEFM- TGにドレインノードDRNが追加、結合されている。
【0080】
このように、LEFM構造はゲートTG上にドレインノードDRNを追加することができる。
ゲートTGで生成された電荷は、FDノードへのリークを防ぐためにドレインノードDRNによって排出される。ドレインノードDRNはゲートTGよりも電位が高く、TGとPDの間に障壁を形成しているため、TG下で発生した電荷はドレインにドリフトする。
【0081】
本第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができることはもとより、さらに、可能な限り高利得で低ノイズの特性を提供することが可能となる。
【0082】
(第3の実施形態)
図10(A)は、本発明の第3の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1および第2のトランジェントゲートPGを有する電荷転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
図10(B)は、第1のトランジェントゲートPGを持つ基本構造の電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【0083】
本第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bの画素200Bが上述した第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aの画素200Aと異なる点は、次の通りである。
【0084】
本第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bの画素200Bは、第1のトランジェントゲートPG1に加えて、第2のトランジェントゲートPG2にもLEFM構造が採用されている。
この構成を採用することにより、TGとABとの偏りを統一(均一化)するのに役立つ。
【0085】
このように、LEFM構造を備えたABゲートのさらなる利点は、ゲートABのオフ(露光開始) 時に、電荷のゲートABからのスピルバック(こぼれること)を防ぐことができることである。
比較例の従来の場合、不要な電荷をドレインノードに排出するためにゲートABがハイになっている間、ゲートABの下に電荷が存在する。
これらの電荷は、ゲートABがゲートオフして露光を開始するときにフォトダイオードPDに波及するおそれがある。
LEFM構造では、転送経路TPにはドレインノードDRNまでの潜在的なギャップが大きく、スピルバック(こぼれ)のおそれはない。
【0086】
図11(A)は、本発明の第3の実施形態に係るデジタル画素の主要部である第1および第2のトランジェントゲートPG2を有する電荷転送系のシミュレーション結果を説明するための簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
図11(B)は、第1および第2のトランジェントゲートPG2を持たない比較例の電荷蓄積転送系のシミュレーション結果を説明するための簡略平面図、簡略断面図、およびポテンシャル図である。
【0087】
比較例では、n-fermi より大きいAB ゲート = 2.2V AB ゲート下に電荷が存在する。
これらの電荷は、潜在的な障壁により ゲートABのオフ時にこぼれるおそれがある。
これに対して、転送パスTPにはドレインノードDRNまでの大きな電位ギャップがあることから、光電荷がこぼれるおそれは極めて小さい。
【0088】
なお、
図12に、2つの変調ゲートTGを電荷転送経路CTPに沿うように配置した画素の要部の等価回路の例を示してある。
【0089】
以上説明した固体撮像装置10,10A,10Bは、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯端末、あるいは監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器に、撮像デバイスとして適用することができる。
【0090】
図13は、本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用されるカメラシステムを搭載し
た電子機器の構成の一例を示す図である。
【0091】
本電子機器300は、
図13に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置10,10A,10Bが適用可能なCMOSイメージセンサ310を有する。
さらに、電子機器300は、このCMOSイメージセンサ310の画素領域に入射光を導く(被写体像を結像する)光学系(レンズ等)320を有する。
電子機器300は、CMOSイメージセンサ310の出力信号を処理する信号処理回路(PRC)330を有する。
【0092】
信号処理回路330は、CMOSイメージセンサ310の出力信号に対して所定の信号処理を施す。
信号処理回路330で処理された画像信号は、液晶ディスプレイ等からなるモニタに動画として映し出し、あるいはプリンタに出力することも可能であり、またメモリカード等の記録媒体に直接記録する等、種々の態様が可能である。
【0093】
上述したように、CMOSイメージセンサ310として、前述した固体撮像装置10,10A,10Bを搭載することで、高性能、小型、低コストのカメラシステムを提供することが可能となる。
そして、カメラの設置の要件に実装サイズ、接続可能ケーブル本数、ケーブル長さ、設置高さなどの制約がある用途に使われる、たとえば、監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0094】
10,10A,10B・・・固体撮像装置、20・・・画素部、PD・・・フォトダイオード、FD・・・フローティングディフュージョン、PG・・・第1のトランジェントゲート、AB・・・第2のトランジェントゲート、200・・・デジタル画素、211・・・出力バッファ部、221・・・比較器、222・・・ドライバ、230・・・メモリ部、231~233・・・メモリ、30・・・垂直走査回路、40・・・出力回路、50・・・タイミング制御回路、60・・・読み出し部、300・・・電子機器、310・・・CMOSイメージセンサ、320・・・光学系、330・・・信号処理回路(PRC)。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】