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  • 特開-構造物劣化診断システム 図1
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  • 特開-構造物劣化診断システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172346
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】構造物劣化診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241205BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090002
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井関 晃広
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA12
2G024CA04
2G024EA13
2G024FA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造物の劣化を、検査員よる定期検査を必要とせずに、定量的に診断することができる構造物劣化診断システムを得る
【解決手段】第1の加速度センサおよび第2の加速度センサにより検出された加速度から、構造物の劣化診断の指標となる特徴量を、それぞれ第1の特徴量と第2の特徴量として算出し、現在の第1の特徴量と関連付けられた第2の特徴量と同じ第2の特徴量に関連付けられて記憶されている過去の第1の特徴量を抽出し、前記過去の第1の特徴量と前記現在の第1の特徴量との間に予め設定した有意差が存在する場合には、前記構造物に劣化が発生していると判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設置され、前記構造物の加速度を検出する第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
前記第1の加速度センサと第2の加速度センサにより検出された前記加速度に基づいて前記構造物の劣化診断を行う診断部と
を備え、
前記診断部は、
前記第1の加速度センサおよび前記第2の加速度センサにより検出された前記加速度から、前記構造物の劣化診断の指標となる特徴量を、それぞれ第1の特徴量と第2の特徴量として算出し、
算出した前記第1の特徴量と前記第2の特徴量とを関連付けた関連データを時間経過とともに順次記憶部に記憶させ、
前記記憶部に順次記憶された前記関連データの中から、現在の第1の特徴量と関連付けられた第2の特徴量と同じ第2の特徴量に関連付けられて記憶されている過去の第1の特徴量を抽出し、前記過去の第1の特徴量と前記現在の第1の特徴量との間に予め設定した有意差が存在する場合には、前記構造物に劣化が発生していると判断する
構造物劣化診断システム。
【請求項2】
前記特徴量は、前記構造物の傾きであることを特徴とする請求項1に記載の構造物劣化診断システム。
【請求項3】
前記特徴量は、前記構造物の活荷重変位であることを特徴とする請求項1に記載の構造物劣化診断システム。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、橋梁等の構造物の劣化診断を行う構造物劣化診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の劣化状態を検出する方法としては、検査員による定期検査により、目視あるいは何らかの計器を用いて行われることが主流であった。また、劣化診断対象である橋梁などの構造物に経年的に発生する亀裂に関して、定量的な検査を、簡単かつ迅速に行う従来技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、紫外線または青色系可視光などの励起光によって発光する蛍光色素を、劣化診断対象である構造物にあらかじめ混入させている。そして、この構造物に紫外線または青色系可視光などを発光する光源を照射し、目視あるいはCCDカメラ等による撮像画像の解析処理により、亀裂の発生を定量的に判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-83493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
【0006】
特許文献1では、定量的な劣化診断を可能にしてはいるものの、あくまでも、検査員による定期検査を基本としている。さらに、劣化診断対象の構造物に対して、蛍光色素をあらかじめ混入させておく必要があった。
【0007】
一方、近年では、構造物の劣化診断を定期検査よりも短い周期で、検査員を介さずに無人で行うことのできる劣化診断システムが望まれている。さらに、新規の構造物だけでなく、既存の構造物に対しても、容易に対応できることが望まれる。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、構造物の劣化を、検査員よる定期検査を必要とせずに、定量的に診断することができる構造物劣化診断システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る構造物劣化診断システムは、構造物に設置され、構造物の加速度を検出する第1の加速度センサと第2の加速度センサと、前記第1の加速度センサと第2の加速度センサにより検出された前記加速度に基づいて前記構造物の劣化診断を行う診断部とを備え、前記診断部は、第1の加速度センサおよび第2の加速度センサにより検出された加速度から、構造物の劣化診断の指標となる特徴量を、それぞれ第1の特徴量と第2の特徴量として算出し、算出した第1の特徴量と第2の特徴量とを関連付けた関連データを時間経過とともに順次記憶部に記憶させ、記憶部に順次記憶された関連データの中から、現在の第1の特徴量と関連付けられた第2の特徴量と同じ第2の特徴量に関連付けられて記憶されている過去の第1の特徴量を抽出し、過去の第1の特徴量と現在の第1の特徴量との間に予め設定した有意差が存在する場合には、前記構造物に劣化が発生していると判断するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストの上昇を抑制するとともに、構造物の劣化を、検査員よる定期検査を必要とせずに、定量的に診断することができる構造物劣化診断システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの診断対象である構造物に対して2つのセンサが設置され、定常状態と劣化進行状態における診断状態を示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態1において、傾きを特徴量とした場合の、センサ1およびセンサ2の傾きの時間推移、センサ1の傾きとセンサ2の傾きの関係性、および傾き異常度を示した図である。
図4】本開示の実施の形態1において、変位量を特徴量とした場合の、センサ1およびセンサ2の変位量の定常状態と劣化進行状態とを対比して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の構造物劣化診断システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
本開示は、複数のセンサのそれぞれについて算出した特徴量の相互の関係性の時間的変化から構造物の劣化診断を迅速に行うことを技術的特徴とするものである。
実施の形態1.
本実施の形態1では、構造物の構造体に2以上のセンサを設ける場合の一例として、橋梁の主桁に設置された2つのセンサによる測定結果の比較に基づいて構造物の劣化診断を行う場合について説明する。
【0014】
図1は、本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの構成図である。本実施の形態1における構造物劣化診断システムは、2つのセンサ10(1)、10(2)と、診断部20とを備えて構成されている。なお、センサ10(1)とセンサ10(2)を区別しない場合は、センサ10と呼ぶことがある。
【0015】
また、図2は、本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの診断対象である構造物に対して2つのセンサ10(1)、10(2)が設置され、定常状態と劣化進行状態における診断状態を示した説明図である。図2では、構造物の具体例として橋梁30が示されている。
【0016】
図2(a)は、劣化が発生する前の定常状態を示している。一方、図2(b)は、劣化により橋梁30に亀裂が発生している劣化進行状態を示している。
【0017】
本実施の形態1において、センサ10(1)、10(2)は、橋梁30の構成部品である主桁に設置される。ここで、主桁は、診断対象である構造物の構造体に相当する。
【0018】
なお、以下の説明では、2つのセンサ10(1)、10(2)による検出結果に基づいて劣化診断を行う場合について説明する。ただし、センサ10自体は、橋梁30の3箇所以上に設置されていてもよい。3つ以上のセンサ10が設置されている場合には、個々のセンサ10の設置位置における検出結果を、他のセンサとの検出結果と比較することで、複数の劣化診断結果を得ることができる。
【0019】
なお、センサ10(1)、10(2)には、橋梁30に発生する加速度情報を検出し、診断部20に対して加速度情報を出力する。センサ10の一例としては、薄膜の水晶振動子を用い、応答性に優れ、測定範囲がDC~数十Hz程度の加速度を測定可能な3軸加速度センサが挙げられる。
【0020】
このように、センサ10として3軸の加速度センサを用いることにより、水平出しが不要となり、傾きや振動の方向に関わらず、センサ出力を行うことができる。したがって、水平出しを行うなど、傾きの方向などが特定できる場合には、2軸あるいは1軸の加速度センサであってもよい。
【0021】
また、センサ10は、設置箇所における構造物の3軸の加速度に関するアナログ信号を、所定のサンプリングレート(例えば、50Hzのサンプリングレート)でデジタル信号に変換し、加速度情報として診断部20へ送信することができる。
【0022】
センサ10(1)およびセンサ10(2)から出力される加速度情報を受信する診断部20は、先の図1に示したように、特徴量変換部21、異常度算出部22、異常判定部23および記憶部24を備えて構成されている。記憶部24には、センサ10(1)およびセンサ10(2)から出力された加速度情報が順次記憶される。
【0023】
特徴量変換部21は、記憶部24に記憶されたセンサ10(1)およびセンサ10(2)から受信した加速度情報を、センサ10(1)およびセンサ10(2)の設置位置における構造物に関する傾き、変位、固有振動数に変換する。ここで、傾き、変位、固有振動数のそれぞれは、構造物の劣化を診断するための指標値となる特徴量に相当する。
【0024】
なお、本実施の形態1における「変位」は、活荷重変位を意味している。ここで、活荷重とは、荷重の大きさが一定ではなく、その作用位置が変化するものを意味している。このような活荷重が変位する要因としては、橋梁30を通過する車両1の重量のほか、橋梁30そのものの自重、地震によって橋梁30に働く慣性力などが挙げられる。以下の説明では、「変位」と「活荷重変位」を同義として扱う。
【0025】
異常度算出部22は、特徴量変換部21による変換処理で生成された複数の特徴量である傾き、活荷重変位、固有振動数のそれぞれについて、異常度を算出する。傾き、活荷重変位、固有振動数のそれぞれについて、以下に個別に異常度の算出方法を詳細に説明する。
【0026】
図3は、本開示の実施の形態1において、傾きを特徴量とした場合の、センサ10(1)およびセンサ10(2)の傾きの時間推移、センサ10(1)の傾きとセンサ10(2)の傾きの関係性、および傾き異常度を示した図である。図3(a)は、縦軸を傾き、横軸を日付とした、傾きの時間推移を示している。図3(a)において、特徴量である傾きに対して、異常状態を判定するための閾値を設定することは困難であることがわかる。
【0027】
図3(b)は、縦軸をセンサ10(1)の傾き、横軸をセンサ10(2)とした、センサ10(1)の傾きとセンサ10(2)の傾きの関係を示している。図3(b)では、「予測分布」、「正常データ分布」、および「異常データ分布」が示されている。
【0028】
「予測分布」は、図3(a)に示した「学習期間」において算出した傾きに関する推移状態を示す時系列データから、センサ10(2)の傾きを入力とし、センサ10(1)の傾きを出力としたときのセンサ10(1)の傾きとセンサ10(2)の傾きの関係性から作成できる分布である。
【0029】
具体的には、異常度算出部22は、ガウス過程回帰を利用して、学習期間において得られた時系列データから、入力である温度と出力である傾きとの関係を、応答曲面あるいは回帰直線という形でモデル化する。さらに、異常度算出部22は、モデル化された応答曲面あるいは回帰直線から、例えば3σの範囲を「予測分布」として作成することができる。
【0030】
換言すると、「予測分布」は、学習期間において得られた時系列データから推定したガウス分布の共分散行列を使った統計処理によって特定される信頼区間に相当する。
【0031】
一方、「正常データ分布」および「異常データ分布」は、図3(a)に示した「学習期間」の後の「判定期間」において収集された時系列データをプロットした分布であり、予測分布の範囲内に含まれるデータの分布が正常データ分布に相当し、予測分布の範囲外となるデータの分布が異常データ分布に相当する。
【0032】
このようなガウス過程回帰を利用する重要な特徴の1つは、その非線形性であり、入出力関係が線形回帰ではうまくフィッティングできない場合にも、有効である。もう1つの重要な特徴は、ベイズ推定を用いている点であり、ノンパラメトリックな回帰モデルである点にある。
【0033】
そこで、図3(b)に示したような「異常データ分布」の状態の有無を判断するための指標となる異常度を算出する具体的な手法について、数式および図3(c)を用いてさらに説明する。
【0034】
センサ10(2)の傾きを入力とし、センサ10(1)の傾きを出力としたときの、ガウス過程回帰を利用した異常度の算出手順は、以下のようになる。
<手順1>N組の学習データを考えたとき,入力の学習データを
【0035】
【数1】
とし、出力の学習データを
【0036】
【数2】
とし学習データを
【0037】
【数3】
とする。
<手順2>任意の座標xにおける応答曲面(1次元の場合は曲線)の出力をf(x)とする。観測時のノイズを表すモデルは、平均値0、分散値σ2の正規分布に従うものと仮定すると、下式(1)となる。
【0038】
【数4】
<手順3>入力xにおける応答曲面の値f(x)の分布が、あるデータDから
【0039】
【数5】
として得られていれば、信頼区間に相当する予測分布は下式(2)として表現される。
【0040】
【数6】
<手順4>応答曲面の滑らかさに関するモデルについては、任意入力xとx’における応答曲面の値をそれぞれf(x)、f(x’)する。このとき、f(x)とf(x’)は、下式(3)のような確率分布に従う。
【0041】
【数7】
ここで、Kはカーネル関数であり、直感的には、「xとx’がどのくらい似ているか」を表す関数である。カーネル関数としては、RBF(radial basis function:動径基底関数)カーネル等がよく利用される。
【0042】
一般に下式(4)に示すN個の入力
【0043】
【数8】
があった場合、fNは、下式(5)の事前分布(prior distribution)に従う。
【0044】
【数9】
これがガウス過程の基本的な想定である。ただし、K(x、x’)は、入力がN個ならN×N行列になり、入力が2個であれば、上式(3)のように2×2行列になる。
<手順5>異常度α(x’)は、GPRの、予測分布の平均
【0045】
【数10】
と分散
【0046】
【数11】
を用いて、下式(6)により計算することができる。
【0047】
【数12】
すなわち、各特徴量に対応するそれぞれの異常度は、学習期間において算出された予測分布(信頼区間に相当)に基づいて算出することができる。
【0048】
以上の手順で傾きに関する異常度を、学習期間および判定期間にわたって算出したものが、図3(c)に示した傾き異常度となる。適切な閾値を設定し、閾値以上となる異常度があるか否かを判断することで、図3(b)に示した異常データ分布の状態が発生していることを定量的に判断することができる。
【0049】
このような一連の処理を行うことで、異常度算出部22は、特徴量であるのセンサ10(1)傾きとセンサ10(2)の傾きを、異常状態の有無を高精度に判定するための指標値である異常度に変換することができる。この結果、特徴量として傾きを使用する際に、傾きに対しては、センサごとに設置場所やセンサ出力の度合いが異なることもあり、異常状態を判定するための閾値を設定することが困難であったが、センサ10(1)傾きとセンサ10(2)の傾きから算出した傾き異常度に対しては、異常状態を判定するための閾値を容易に設定することができる。
【0050】
すなわち、診断部20は、傾き異常度を用いてセンサ10(1)の傾きとセンサ10(2)の傾きの関係性について、過去と現在に有意差があるか否かを判定する機能を有することで、傾きに基づく異常状態の識別を高精度に行うことが可能となる。
【0051】
次に、特徴量として活荷重変位を用いる場合について説明する。
【0052】
図4は、本開示の実施の形態1における2つのセンサ10(1)、10(2)を用いた劣化診断において、活荷重変位の定常状態と劣化進行状態とを対比して示した説明図である。図4(A)は定常状態を示しており、図4(B)は劣化進行状態を示している。なお、定常状態とは図2(a)に示すように橋梁に亀裂等が発生していない状態である、また、劣化進行状態とは図2(b)に示すように橋梁に亀裂等が発生している状態である。
【0053】
図4(A)の定常状態としては、以下のような図4(a1)および図4(a2)が示されている。
【0054】
図4(a1):2つのセンサ10(1)、10(2)により、図2(A)の定常状態において測定された変位量を時系列データとして示した図。
【0055】
図4(a2):図4(a1)の測定結果に基づいて、同一の時間範囲におけるセンサ10(1)の最大変位量とセンサ10(2)の最大変位量との相関関係を示した図。
【0056】
一方、図4(B)の劣化進行状態としては、以下のような図4(b1)および図4(b2)が示されている。
【0057】
図4(b1):2つのセンサ10(1)、10(2)により、図2(B)の劣化進行状態において測定された変位量を時系列データとして示した図。
【0058】
図4(b2):図4(b1)の測定結果に基づいて、同一の時間範囲におけるセンサ10(1)の最大変位量とセンサ10(2)の最大変位量との相関関係を示した図。
【0059】
次に、図4を用いて、診断部20により実行される具体的な劣化診断方法について説明する。診断部20は、センサ10(1)、センサ10(2)のそれぞれで測定された活荷重変位をあらかじめ決められたサンプリング周期で順次取得することで、図4(a1)あるいは図4(b1)に示したように、活荷重変位の時間推移に相当するデータとして、活荷重変位の時系列データを生成する。
【0060】
さらに、診断部20は、生成した活荷重変位の時系列データから、同一の時間範囲ごとに最大変位量を算出する。ここで、同一の時間範囲とは、センサ10(1)が設置された橋梁30の位置を車両が通過した時刻と、その後、センサ10(2)が設置された橋梁30の位置を同一の車両が通過した時刻とを含む時間範囲を意味している。すなわち、同一の時間範囲とは、あらかじめ設定された所定の時間範囲であり、センサ10(1)とセンサ10(2)とで、上述したように、同一の車両が通過した時刻が含まれればよく、センサ10(1)に割り当てられた所定の時間範囲と、センサ10(2)に割り当てられた所定の時間範囲とが完全に同一である必要はない。
【0061】
診断部20は、同一の時間範囲においてセンサ10(1)の測定結果に基づいて算出した第1の最大変位量と、同一の時間範囲においてセンサ10(2)の測定結果に基づいて算出した第1の最大変位量との相互の関係性の時間的変化を求める。
【0062】
詳細な説明は省略するが、傾きの場合と同様の一連の処理を行うことで、異常度算出部22は、図4(A)の定常状態において、センサ1の最大変位量とセンサ2の最大変位量の相互の関係性の時系列データから図4(a2)に示すように、予測分布を作成する。
【0063】
そして、異常判定部23は、図4(B)の劣化進行状態において、センサ1の最大変位量とセンサ2の最大変位量の相互の関係性の時系列データから、予測分布から外れた相互の関係性の回数をカウントして、その回数を異常度として所定の閾値を超えた場合に、構造物の劣化が進行していると迅速に判断できる。
【0064】
すなわち、診断部20は、最大変位量の異常度を用いてセンサ10(1)の最大変位量とセンサ10(2)の最大変位量の関係性について、過去と現在に有意差があるか否かを判定する機能を有することで、最大変位量に基づく異常状態の識別を高精度に行うことが可能となる。
【0065】
以上のように、実施の形態1によれば、複数のセンサにより検出された加速度情報から算出された特徴量の相互の関係性に対応して、異常度を求め、それら異常度の状態から、過去と現在において複数のセンサにより算出された特徴量の関係性に有意差があるか否かを判定する機能を有することで、構造物の異常状態の識別を高精度に行うことが可能となる。
【0066】
なお、本実施の形態1では、複数のセンサにより検出された傾きと最大変位量を例に説明したが、1つのセンサにより検出された加速度情報から、橋梁の橋軸方向の傾きと橋軸直角方向の傾きのように異なる2方向の傾きの関係性に基づき、構造物の異常状態の識別を行うようにしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、橋梁を例に説明したが、ビル、トンネルの付帯物(ジェットファンの取付や照明装置等)、のり面および水道管等の劣化診断にも適応できる。
【符号の説明】
【0068】
10(1) センサ1、10(2) センサ2、20 診断部、21 特徴量変換部、22 異常度算出部、24 記憶部。
図1
図2
図3
図4