(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172348
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20241205BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241205BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241205BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20241205BHJP
H01F 1/24 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01F27/32 140
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01F1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090004
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高弘
(72)【発明者】
【氏名】梅田 秀信
(72)【発明者】
【氏名】芝山 武志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 瑶平
(72)【発明者】
【氏名】小池 光晴
(72)【発明者】
【氏名】安田 渓斗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聖斗
【テーマコード(参考)】
5E041
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA02
5E041AA07
5E041BC01
5E041BD12
5E041CA02
5E041NN05
5E044CA03
5E044CA09
5E070AA01
5E070AB08
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB08
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】導体間の耐電圧の向上が図れる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1は、軟磁性材料の金属磁性粒子Pを複数含む素体2と、素体2に接している少なくとも二つの導体と、を備え、複数の金属磁性粒子Pのそれぞれの表面は、絶縁性を有する酸化膜Mによって覆われており、二つの導体のうちの少なくとも一つの導体において、当該導体の表面の少なくとも一部には、絶縁性を有する絶縁部20が形成されており、絶縁部20の厚みは、酸化膜Mの厚みよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性材料の金属磁性粒子を複数含む素体と、
前記素体に接している少なくとも二つの導体と、を備え、
複数の前記金属磁性粒子のそれぞれの表面は、絶縁性を有する第一絶縁部によって覆われており、
二つの前記導体のうちの少なくとも一つの導体において、当該導体の表面の少なくとも一部には、絶縁性を有する第二絶縁部が配置されており、
前記第二絶縁部の厚みは、前記第一絶縁部の厚みよりも大きい、積層型電子部品。
【請求項2】
二つの前記導体は、コイル導体である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記素体に配置されている端子電極を備え、
二つの前記導体のうちの一方の前記導体は、コイル導体であり、
二つの前記導体のうちの他方の前記導体は、前記端子電極である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第二絶縁部の厚みは、0.1μm以上20.0μm以下である、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記素体は、前記金属磁性粒子を含む磁性体層が積層されて形成されており、
二つの前記導体は、前記磁性体層の積層方向において対向して配置されており、
前記第二絶縁部は、二つの前記導体の間に配置されている、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記金属磁性粒子は、楕円体状をなす通常粒子と、前記通常粒子よりも厚さ方向について扁平な楕円体状をなす扁平粒子とを有し、
前記二つの前記導体の間には、前記通常粒子及び前記扁平粒子が配置されている、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記扁平粒子は、前記厚さ方向に直交する長軸方向及び短軸方向を含む面が前記磁性体層における前記導体の形成面に沿うように配置されている、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第二絶縁部は、二つの前記導体にわたって配置されている、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記素体は、前記金属磁性粒子を含む磁性体層が積層されて形成されており、
二つの前記導体は、コイル導体であり、
前記コイル導体の少なくとも一部は、複数の前記磁性体層の積層方向における同じ高さ位置において、前記積層方向から見て、互いに隣り合っている導体部を有している、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
二つの前記導体は、前記積層方向において対向して配置されており、
前記第二絶縁部は、前記積層方向において対向している二つの前記導体の間の配置されている導体間部分と、互いに隣り合っている二つの前記導体部の間に配置されている導体部間部分と、を有し、
前記導体間部分の厚みは、前記導体部間部分の厚みよりも大きい、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
二つの前記導体は、前記積層方向において対向して配置されており、
前記第二絶縁部は、前記積層方向において対向している二つの前記導体の間の配置されている導体間部分と、互いに隣り合っている二つの前記導体部の間に配置されている導体部間部分と、を有し、
前記導体間部分の厚みは、前記導体部間部分の厚みよりも小さい、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記導体は、銀を含んで形成されている、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記導体は、めっき導体である、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品として、たとえば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の積層型電子部品は、磁性材料で構成された直方体形状の磁性体部と、磁性体部の内部に配置されているコイルと、磁性体部に設けられ、コイルと電気的に接続される一対の外部電極と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層型電子部品においては、たとえば、コイルを構成するコイル導体同士、コイル導体と外部電極との間において、短絡が発生し得る。
【0005】
本発明の一側面は、導体間の耐電圧の向上が図れる積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一側面に係る積層型電子部品は、軟磁性材料の金属磁性粒子を複数含む素体と、素体に接している少なくとも二つの導体と、を備え、複数の金属磁性粒子のそれぞれの表面は、第一絶縁部によって覆われており、二つの導体のうちの少なくとも一方の導体において、当該導体の表面の少なくとも一部には、絶縁性を有する第二絶縁部が配置されており、第二絶縁部の厚みは、第一絶縁部の厚みよりも大きい。
【0007】
本発明の一側面に係る積層型電子部品では、二つの導体のうちの少なくとも一方の導体において、当該導体の表面の少なくとも一部には、絶縁性を有する第二絶縁部が配置されている。第二絶縁部の厚みは、第一絶縁部の厚みよりも大きい。このように、積層型電子部品では、導体間に第一絶縁部よりも厚い第二絶縁部が配置されているため、導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層型電子部品では、導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0008】
(2)上記(1)の積層型電子部品において、二つの導体は、コイル導体であってもよい。この構成では、コイル導体間における短絡を抑制できる。したがって、積層型電子部品では、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0009】
(3)上記(1)の積層型電子部品において、素体に配置されている端子電極を備え、二つの導体のうちの一方の導体は、コイル導体であり、二つの導体のうちの他方の導体は、端子電極であってもよい。この構成では、コイル導体と端子電極との間の短絡を抑制できる。したがって、積層型電子部品では、コイル導体と端子電極との間の耐電圧の向上が図れる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つの積層型電子部品において、第二絶縁部の厚みは、0.1μm以上20.0μm以下であってもよい。この構成では、導体間の短絡をより効果的に抑制できる。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つの積層型電子部品において、素体は、金属磁性粒子を含む磁性体層が積層されて形成されており、二つの導体は、磁性体層の積層方向において対向して配置されており、第二絶縁部は、二つの導体の間に配置されていてもよい。この構成では、二つの導体間における短絡を抑制できる。したがって、積層型電子部品では、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0012】
(6)上記(5)の積層型電子部品において、金属磁性粒子は、楕円体状をなす通常粒子と、通常粒子よりも厚さ方向について扁平な楕円体状をなす扁平粒子とを有し、二つの導体の間には、通常粒子及び扁平粒子が配置されていてもよい。扁平粒子は、導体間の僅かな隙間に配置されるため、通常粒子のみを用いる場合に比べて導体間の金属磁性粒子の存在数を増加させることができる。これにより、導体間に存在する金属磁性粒子の界面の数を十分に確保でき、導体間の耐電圧を向上できる。耐電圧向上のために単に扁平粒子をより多く配置する場合、導体間の金属磁性粒子の体積比率が増え、浮遊容量が増大してしまうことが考えられる。これに対し、積層型電子部品では、導体間に扁平粒子と通常粒子とが混在している。扁平粒子に比べて厚い通常粒子が配置されることで、金属磁性粒子同士の間隔を適度に確保できる。したがって、浮遊容量の増大を抑制できる。
【0013】
(7)上記(6)の積層型電子部品において、扁平粒子は、厚さ方向に直交する長軸方向及び短軸方向を含む面が磁性体層における導体の形成面に沿うように配置されていてもよい。この構成では、扁平粒子は、導体間の金属磁性粒子の存在数を増加させることができる。
【0014】
(8)上記(1)~(7)のいずれか一つの積層型電子部品において、第二絶縁部は、二つの導体にわたって配置されていてもよい。この構成では、二つの導体間に金属性粒子が配置されない(存在しない)。そのため、金属性粒子を介して二つの導体間に短絡が生じることを確実に回避できる。
【0015】
(9)上記(1)~(8)のいずれか一つの積層型電子部品において、素体は、金属磁性粒子を含む磁性体層が積層されて形成されており、二つの導体は、コイル導体であり、コイル導体の少なくとも一部は、複数の磁性体層の積層方向における同じ高さ位置において、積層方向から見て、互いに隣り合っている導体部を有していてもよい。この構成では、導体が渦巻き状を呈している構成において、導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0016】
(10)上記(9)の積層型電子部品において、二つの導体は、積層方向において対向して配置されており、第二絶縁部は、積層方向において対向している二つの導体の間の配置されている導体間部分と、互いに隣り合っている二つの導体部の間に配置されている導体部間部分と、を有し、導体間部分の厚みは、導体部間部分の厚みよりも大きくてもよい。
【0017】
(11)上記(9)の積層型電子部品において、二つの導体は、積層方向において対向して配置されており、第二絶縁部は、積層方向において対向している二つの導体の間の配置されている導体間部分と、互いに隣り合っている二つの導体部の間に配置されている導体部間部分と、を有し、導体間部分の厚みは、導体部間部分の厚みよりも小さくてもよい。
【0018】
(12)上記(1)~(10)のいずれか一つの積層型電子部品において、導体は、銀を含んで形成されていてもよい。
【0019】
(13)上記(1)~(11)のいずれか一つの積層型電子部品において、導体は、めっき導体であってもよい。この構成では、導体の表面粗さを小さくすることができる。そのため、積層型電子部品では、導体の表面に配置されている第二絶縁部の連続性を確保できる。また、めっき導体は、積層型電子部品の製造工程において熱処理が施された場合に、熱収縮や変形が生じ難い。そのため、導体の表面に配置されている第二絶縁部に破損などの不具合(欠陥)が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、導体間の耐電圧の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層コイル部品の断面構成を示す図である。
【
図4】
図4は、素体におけるコイル導体間の断面構成を拡大して示す概略的な図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を示す図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す積層コイル部品のコイルの構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図8に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図11】
図11は、
図8に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図12】
図12は、
図8に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図13】
図13は、
図8に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図14】
図14は、
図8に示す積層コイル部品の他の形態の断面構成を示す図である。
【
図15】
図15は、第三実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を示す図である。
【
図22】
図22は、第四実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
[第一実施形態]
図1に示されるように、積層コイル部品(積層型電子部品)1は、素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置された端子電極(導体)4及び端子電極(導体)5と、を備えている。
【0024】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、その外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e、2fと、を有している。一対の主面2c,2dが対向している対向方向が第一方向D1である。一対の端面2a,2bが対向している対向方向が第二方向D2である。一対の側面2e,2fが対向している対向方向が第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の長手方向であり、第一方向D1と直交している。第三方向D3は、素体2の幅方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。
【0025】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の端面2a,2bは、第三方向D3(一対の主面2c,2dの短辺方向)にも延びている。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の側面2e,2fは、第二方向D2(一対の端面2a,2bの長辺方向)にも延びている。主面2dは、積層コイル部品1を他の電子機器(たとえば、回路基板、又は、積層型電子部品など)に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定され得る。
【0026】
図3に示されるように、素体2は、複数の磁性体層6が積層されることによって構成されている。各磁性体層6は、第一方向D1に積層されている。すなわち、第一方向D1が積層方向である。素体2は、積層されている複数の磁性体層6を有している。実際の素体2では、複数の磁性体層6は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0027】
素体2(磁性体層6)は、複数の金属磁性粒子P(
図4参照)を含んでいる。金属磁性粒子Pは、軟磁性合金(軟磁性材料)から構成される。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Si系合金である。軟磁性合金がFe-Si系合金である場合、軟磁性合金は、Pを含んでいてもよい。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Ni-Si-M系合金であってもよい。「M」はCo、Cr、Mn、P、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Al、及び希土類元素から選択される一種以上の元素を含む。
【0028】
素体2では、金属磁性粒子P,P同士が結合している。金属磁性粒子P,P同士の結合は、たとえば金属磁性粒子Pの表面に形成される酸化膜(第一絶縁部)M同士の結合によって実現されている。酸化膜Mの厚さは、たとえば、5nm以上60nm以下である。酸化膜Mは、一又は複数の層によって構成されていてもよい。
【0029】
素体2は、
図4に示されるように、樹脂Rによる充填部分を含んでいる。樹脂Rは、複数の金属磁性粒子P,P間の少なくとも一部に存在している。樹脂Rは、電気絶縁性を有する樹脂である。樹脂Rとしては、たとえばシリコーン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。複数の金属磁性粒子P,P間には、樹脂Rによる充填のない空隙部分が存在していてもよい。
【0030】
金属磁性粒子Pは、より詳細には、楕円体状をなす通常粒子P1と、通常粒子よりも厚さ方向について扁平な楕円体状(円盤状)をなす扁平粒子P2とを含んで構成されている。厚さ方向は、便宜的に規定した方向である。ここでは、素体2内に配置された状態において、磁性体層6の積層方向を通常粒子P1及び扁平粒子P2の厚さ方向とする。通常粒子P1は、厚さ方向に直交する長軸方向及び短軸方向を含む面(以下、基準面K1と称す)を有している。同様に、扁平粒子P2は、厚さ方向に直交する長軸方向及び短軸方向を含む面(以下、基準面K2と称す)を有している。ここでは、厚さ方向に直交する長軸方向の長さが厚さ方向の長さの3倍以下のものを通常粒子P1とし、厚さ方向に直交する長軸方向の長さが厚さ方向の長さの3倍を超えるものを扁平粒子P2とする。
【0031】
通常粒子P1及び扁平粒子P2は、厚さ方向に直交する方向から見た場合、及び厚さ方向から見た場合にそれぞれ長径及び短径を有している。通常粒子P1と扁平粒子P2との関係において、通常粒子P1の長径は、扁平粒子P2の長径よりも小さくなっており、通常粒子P1の短径は、扁平粒子P2の短径よりも大きくなっている。通常粒子P1の体積は、扁平粒子P2の体積よりも大きくなっている。通常粒子P1の体積は、扁平粒子P2の体積の2倍より大きくてもよい。
【0032】
通常粒子P1及び扁平粒子P2の短径及び長径の測定及び体積の測定には、たとえば走査電子顕微鏡(SEM)を用いることができる。この場合、SEMにて素体2の断面写真を取得し、粒子断面の楕円近似を行うことにより粒子の直径及び短径を測定する。体積は、素体2の所定の領域における第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3に直交する各断面に存在する通常粒子P1及び扁平粒子P2それぞれの粒子径の平均値に基づいて算出する。
【0033】
図4の一例に示されるように、コイル導体14とコイル導体15との間には、複数の通常粒子P1と、少なくとも一つの扁平粒子P2とが配置されている。
図4は、通常粒子P1と扁平粒子P2の配置を概略的に示したものである。同図の例では、三つの通常粒子P1と、一つの扁平粒子P2とが磁性体層6の積層方向(第一方向D1)に並んでいる。扁平粒子P2は、コイル導体14,15の一方に接触している。三つの通常粒子P1は、磁性体層6の積層方向に一列に繋がり、扁平粒子P2とコイル導体14,15の他方とに接触している。
【0034】
図4に示す例では、通常粒子P1及び扁平粒子P2は、いずれも厚さ方向が磁性体層6の積層方向に沿うように配置されている。通常粒子P1では、長径が磁性体層6の面内方向の一軸(ここでは第二方向D2)に沿い、短径が第一方向D1及び第三方向D3に沿っている。扁平粒子P2では、長径が磁性体層6の面内方向の一軸(ここでは第二方向D2)に沿い、短径が第一方向D1及び第三方向D3に沿っている。
【0035】
扁平粒子P2は、厚さ方向に直交する長軸方向及び短軸方向を含む基準面K2が磁性体層6におけるコイル導体14の形成面14Aに沿うように配置されている。コイル導体14の形成面14Aは、磁性体層6においてコイル導体14が形成されている面であり、第二方向D2及び第三方向D3を面内方向とする面である。扁平粒子P2の基準面K2は、コイル導体14の形成面14Aに対して平行又は略平行となっている。
【0036】
扁平粒子P2は、長軸方向において複数の通常粒子P1に跨るように配置されている。本実施形態では、扁平粒子P2の長径は、通常粒子P1の長径よりも大きくなっており、扁平粒子P2は、第二方向D2について隣り合う三つの通常粒子P1に跨って配置されている。また、本実施形態では、扁平粒子P2の短径は、通常粒子P1の短径よりも大きくなっており、扁平粒子P2は、第三方向D3についても複数の通常粒子P1に跨るように配置されている。
【0037】
たとえば、コイル導体14,15間に存在する通常粒子P1の総体積は、コイル導体14,15間に存在する扁平粒子P2の総体積よりも大きくなっている。コイル導体14,15間に存在する通常粒子P1の総体積は、扁平粒子P2の総体積の2倍より大きくてもよい。他のコイル導体間についても、同様である。通常粒子P1の総体積及び扁平粒子P2の総体積は、たとえば素体2の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で3000倍に拡大し、通常粒子P1の体積及び扁平粒子P2の体積に当該断面での通常粒子P1及び扁平粒子P2の粒子数をそれぞれ乗じることで算出できる。
【0038】
図1及び
図2に示されるように、端子電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、端子電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、端子電極4及び端子電極5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。端子電極4及び端子電極5は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。端子電極4及び端子電極5は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。端子電極4及び端子電極5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、たとえばNi、Snなどが用いられる。
【0039】
端子電極4は、一方の端面2a側に配置されている。端子電極4は、端面2a上に位置する第一電極部分4aと、主面2c上に位置する第二電極部分4bと、主面2d上に位置する第三電極部分4cと、側面2e上に位置する第四電極部分4dと、側面2f上に位置する第五電極部分4eと、の五つの電極部分を含んでいる。第一電極部分4aと第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。端子電極4は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極部分4a、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eは、一体的に形成されている。
【0040】
本実施形態では、端子電極4の第二電極部分4b及び第三電極部分4cの縁(端面)は、たとえば第三方向D3に沿っている。第二電極部分4bの縁は、主面2c上において、直線的に形成されている。第三電極部分4cの縁は、主面2d上において、直線的に形成されている。端子電極4の第四電極部分4d及び第五電極部分4eの縁は、第一方向D1に沿っている。第四電極部分4dの縁は、側面2e上において、直線的に形成されている。第五電極部分4eの縁は、側面2f上において、直線的に形成されている。なお、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eのそれぞれの縁の形状は、湾曲していてもよいし、凹凸状に形成されていてもよい。
【0041】
端子電極5は、他方の端面2b側に配置されている。端子電極5は、端面2b上に位置する第一電極部分5aと、主面2c上に位置する第二電極部分5bと、主面2d上に位置する第三電極部分5cと、側面2e上に位置する第四電極部分5dと、側面2f上に位置する第五電極部分5eと、の五つの電極部分を含んでいる。第一電極部分5aと第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。端子電極5は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極部分5a、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eは、一体的に形成されている。
【0042】
本実施形態では、端子電極5の第二電極部分5b及び第三電極部分5cの縁は、たとえば第三方向D3に沿っている。第二電極部分5bの縁は、主面2c上において、直線的に形成されている。第三電極部分5cの縁は、主面2d上において、直線的に形成されている。端子電極5の第四電極部分5d及び第五電極部分5eの縁は、第一方向D1に沿っている。第四電極部分5dの縁は、側面2e上において、直線的に形成されている。第五電極部分5eの縁は、側面2f上において、直線的に形成されている。なお、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eのそれぞれの縁の形状は、湾曲していてもよいし、凹凸状に形成されていてもよい。
【0043】
積層コイル部品1は、
図2に示されるように、素体2内にコイル8が配置されている。
図3に示されるように、コイル8は、複数のコイル導体10,11,12,13,14,15,16,17と、第一接続導体18及び第二接続導体19とが電気的に接続されて螺旋状に構成されている。コイル導体10と第一接続導体18とは、一体に形成されている。コイル導体17と第二接続導体19とは、一体に形成されている。隣接するコイル導体10,11,12,13,14,15,16,17は、スルーホール導体(図示省略)で電気的に接続されている。第一接続導体18は、コイル8の一端部を構成している。第一接続導体18は、素体2の端面2aに露出して、端子電極4(第一電極部分4a)に接続されている。第二接続導体19は、コイル8の他端部を構成している。第二接続導体19は、素体2の端面2bに露出して、端子電極5(第一電極部分5a)に接続されている。
【0044】
コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料としては、たとえば、Ag、Cu、Au、Al、Pd、Pd/Ag合金などを用いることができる。本実施形態では、導電性材料は、Agである。コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0045】
図2に示されるように、積層コイル部品1では、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19の表面には、絶縁部(第二絶縁部)20が形成されている。絶縁部20は、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19の表面上に無電解めっき法によってCuめっきを形成し、Cuめっきを黒化処理することによって形成されている。
【0046】
絶縁部20は、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19の主面2c側の表面(上面)に配置されている。
図4に示す例では、コイル導体15の表面15Aに絶縁部20が配置されている。
図2に示されるように、絶縁部20は、コイル導体11と第一接続導体18との間に配置されている。絶縁部20は、コイル導体11とコイル導体12との間に配置されている。絶縁部20は、コイル導体12とコイル導体13との間に配置されている。絶縁部20は、コイル導体14とコイル導体15との間に配置されている。絶縁部20は、コイル導体15とコイル導体16との間に配置されている。絶縁部20は、コイル導体17とコイル導体16との間に配置されている。
【0047】
絶縁部20は、コイル導体11,12,13,14,15,16,17において、スルーホール導体が形成される部分には形成されていない。絶縁部20は、コイル導体11において、その全体に形成されていてもよいし、第一接続導体18と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部20は、コイル導体12において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体11と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部20は、コイル導体13において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体12と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部20は、コイル導体14において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体13と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。
【0048】
絶縁部20は、コイル導体15において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体14と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部20は、コイル導体16において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体15と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部20は、コイル導体17において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体16と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部20は、第二接続導体19において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体16と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。
【0049】
図4に示されるように、絶縁部20の厚みT1は、金属磁性粒子P(P1,P2)の酸化膜Mの厚みT2よりも大きい(厚い)(T1>T2)。言い換えれば、金属磁性粒子P(P1,P2)の酸化膜Mの厚みT2は、絶縁部20の厚みT1よりも小さい(薄い)(T2<T1)。絶縁部20の厚みT1は、0.1μm以上20.0μm以下である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19の表面には、絶縁性を有する絶縁部20が配置されている。絶縁部20の厚みT1は、酸化膜Mの厚みT2よりも大きい。このように、積層コイル部品1では、コイル導体間に酸化膜Mよりも厚い絶縁部20が配置されているため、コイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層型電子部品では、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0051】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、金属磁性粒子Pは、楕円体状をなす通常粒子P1と、通常粒子P1よりも厚さ方向について扁平な楕円体状をなす扁平粒子P2とを有する。コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19の間には、通常粒子P1及び扁平粒子P2が配置されていてもよい。扁平粒子P2は、コイル導体間の僅かな隙間に配置されるため、通常粒子P1のみを用いる場合に比べてコイル導体間の金属磁性粒子Pの存在数を増加させることができる。これにより、コイル導体間に存在する金属磁性粒子Pの界面の数を十分に確保でき、コイル導体間の耐電圧を向上できる。耐電圧向上のために単に扁平粒子P2をより多く配置する場合、コイル導体間の金属磁性粒子Pの体積比率が増え、浮遊容量が増大してしまうことが考えられる。これに対し、積層コイル部品1では、コイル導体間に扁平粒子P2と通常粒子P1とが混在している。扁平粒子P2に比べて厚い通常粒子P1が配置されることで、金属磁性粒子P同士の間隔を適度に確保できる。したがって、浮遊容量の増大を抑制できる。
【0052】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、扁平粒子P2は、厚さ方向に直交する長軸方向及び短軸方向を含む面が磁性体層6における導体の形成面に沿うように配置されている。この構成では、扁平粒子P2は、コイル導体間の金属磁性粒子Pの存在数を増加させることができる。
【0053】
上記第一実施形態では、絶縁部20が、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19において、主面2c側の表面に配置されている形態を一例に説明した。しかし、絶縁部は、他の位置に配置されていてもよい。
【0054】
図5に示されるように、積層コイル部品1Aは、絶縁部21を有している。絶縁部21は、第一部分21Aと、第二部分21Bと、を含んでいる。第一部分21Aは、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19において、主面2c側の表面に配置されている。第二部分21Bは、コイル導体10,11,12,13,14,15,16及び第一接続導体18において、主面2d側の表面に配置されている。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間において、短絡が発生することをより一層抑制できる。したがって、積層コイル部品1Aでは、コイル導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0055】
図6に示されるように、積層コイル部品1Bは、絶縁部22を有している。絶縁部22は、第一部分22Aと、第二部分22Bと、第三部分22Cと、を含んでいる。第一部分22Aは、コイル導体11,12,13,14,15,16,17及び第二接続導体19において、主面2c側の表面に配置されている。第二部分22Bは、コイル導体10,11,12,13,14,15,16及び第一接続導体18において、主面2d側の表面に配置されている。第三部分22Cは、コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17において、近接する端面2a,2b側又は側面2e,2f側の側面(表面)に配置されている。第三部分22Cは、コイル導体11,12,13,14,15,16,17において、端子電極4及び端子電極5と対向している位置に配置されていればよい。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間、及びコイル導体と端子電極4,5との間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Bでは、導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0056】
また、第一部分22A及び第二部分22Bの厚みは、第三部分22Cの厚みよりも大きい。言い換えれば、第三部分22Cの厚みは、第一部分22A及び第二部分22Bの厚みよりも小さい。コイル導体間の距離は、コイル導体と端子電極4,5との間の距離よりも短い。そのため、短絡は、コイル導体間の方がコイル導体と端子電極4,5との間よりも発生し易い。そこで、積層コイル部品1Bでは、第一部分22A及び第二部分22Bの厚みを第三部分22Cの厚みよりも大きくすることによって、コイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。
【0057】
図7に示されるように、積層コイル部品1Cは、絶縁部23を有している。絶縁部23は、コイル導体11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19の表面を全て覆っている。絶縁部23は、第一方向D1において対向している二つの導体にわたって配置されている。絶縁部23は、第一方向D1において対向しているコイル導体間に充填されているとも言える。この場合、第一方向D1において対向しているコイル導体間には、磁性体層6が配置されていない。すなわち、第一方向D1において対向しているコイル導体間には、金属磁性粒子Pが配置されていない(存在していない)。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間、及びコイル導体と端子電極4,5との間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Cでは、導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0058】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態について説明する。
図8に示されるように、第二実施形態に係る積層コイル部品1Dは、素体2内にコイル8Aが配置されている。
【0059】
図9に示されるように、コイル8Aは、複数のコイル導体25,26,27,28,29,30,31と、第一接続導体32及び第二接続導体33とが電気的に接続されて螺旋状に構成されている。コイル導体25と第一接続導体32とは、一体に形成されている。コイル導体31と第二接続導体33とは、一体に形成されている。隣接するコイル導体25,26,27,28,29,30,31は、スルーホール導体34,35,36,37,38,39で電気的に接続されている。第一接続導体32は、コイル8Aの一端部を構成している。第一接続導体32は、素体2の端面2aに露出して、端子電極4(第一電極部分4a)に接続されている。第二接続導体33は、コイル8Aの他端部を構成している。第二接続導体33は、素体2の端面2bに露出して、端子電極5(第一電極部分5a)に接続されている。
【0060】
コイル導体25,26,27,28,29,30は、第一方向D1(コイル軸に沿った方向)から見て、渦巻き状を呈している。コイル導体25,26,27,28,29,30のそれぞれは、直線状に延在している第一導体部と、第一導体部を接続している第二導体部と、を有している。コイル導体25,26,27,28,29,30のそれぞれは、磁性体層6の面内方向(第二方向D2及び第三方向D3)において、互いに隣り合う部分(外側部分、内側部分)を有している。コイル導体25,26,27,28,29,30のそれぞれにおいて、第一導体部及び第二導体部は、第一方向D1において同じ高さ位置に配置されている。
【0061】
コイル導体25,26,27,28,29,30,31、第一接続導体32及び第二接続導体33は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料としては、たとえば、Ag、Cu、Au、Al、Pd、Pd/Ag合金などを用いることができる。本実施形態では、導電性材料は、Agである。コイル導体25,26,27,28,29,30,31と、第一接続導体32及び第二接続導体33は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0062】
図8に示されるように、積層コイル部品1Dでは、コイル導体26,27,28,29,30,31及び第二接続導体33の表面には、絶縁部(第二絶縁部)40が形成されている。絶縁部40は、コイル導体26,27,28,29,30,31及び第二接続導体33の表面上に無電解めっき法によってCuめっきを形成し、Cuめっきを黒化処理することによって形成されている。
【0063】
絶縁部40は、コイル導体26,27,28,29,30,31及び第二接続導体33の主面2c側の表面(上面)に配置されている。絶縁部40は、コイル導体26とコイル導体25及び第一接続導体32との間に配置されている。絶縁部40は、コイル導体27とコイル導体26との間に配置されている。絶縁部40は、コイル導体28とコイル導体27との間に配置されている。絶縁部40は、コイル導体29とコイル導体28との間に配置されている。絶縁部40は、コイル導体30とコイル導体29間に配置されている。絶縁部40は、コイル導体31とコイル導体30との間に配置されている。
【0064】
絶縁部40は、コイル導体26,27,28,29,30,31において、スルーホール導体34,35,36,37,38,39が形成される部分には形成されていない。絶縁部40は、コイル導体26において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体25及び第一接続導体32と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部40は、コイル導体27において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体26と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部40は、コイル導体28において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体27と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部40は、コイル導体29において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体28と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。
【0065】
絶縁部40は、コイル導体30において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体29と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部40は、コイル導体31において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体30と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。絶縁部40は、第二接続導体33において、その全体に形成されていてもよいし、コイル導体30と第一方向D1において対向している部分にのみ形成されていてもよい。
【0066】
絶縁部40の厚みは、金属磁性粒子P(P1,P2)の酸化膜Mの厚みT2よりも大きい(厚い)。言い換えれば、金属磁性粒子P(P1,P2)の酸化膜Mの厚みT2は、絶縁部40の厚みT1よりも小さい(薄い)。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Dでは、コイル導体26,27,28,29,30,31及び第二接続導体33の表面には、絶縁性を有する絶縁部40が配置されている。絶縁部40の厚みは、酸化膜Mの厚みよりも大きい。このように、積層コイル部品1Dでは、コイル導体間に酸化膜Mよりも厚い絶縁部40が配置されているため、コイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Dでは、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0068】
上記第二実施形態では、絶縁部40が、コイル導体26,27,28,29,30,31及び第二接続導体33において、主面2c側の表面に配置されている形態を一例に説明した。しかし、絶縁部は、他の位置に配置されていてもよい。
【0069】
図10に示されるように、積層コイル部品1Eは、絶縁部41を有している。絶縁部41は、第一部分41Aと、第二部分41Bと、を含んでいる。第一部分41Aは、コイル導体26,27,28,29,30,31及び第二接続導体33において、主面2c側の表面に配置されている。第二部分41Bは、コイル導体25,26,27,28,29,30,31及び第一接続導体32において、主面2d側の表面に配置されている。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間において、短絡が発生することをより一層抑制できる。したがって、積層コイル部品1Eでは、コイル導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0070】
図11に示されるように、積層コイル部品1Fは、絶縁部42を有している。絶縁部42は、コイル導体25,26,27,28,29,30及び第一接続導体32において、磁性体層6の面内方向で対向している一対の部分のうちの一方の側面に配置されている。この構成では、磁性体層6の面内方向において対向しているコイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Fでは、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0071】
図12に示されるように、積層コイル部品1Gは、絶縁部42及び絶縁部43を有している。絶縁部42及び絶縁部43は、コイル導体25,26,27,28,29,30及び第一接続導体32において、磁性体層6の面内方向で対向している一対の部分のそれぞれの側面に配置されている。この構成では、磁性体層6の面内方向において対向しているコイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Gでは、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0072】
図13に示されるように、積層コイル部品1Hは、絶縁部44を有している。絶縁部44は、コイル導体25,26,27,28,29,30,31、第一接続導体32及び第二接続導体33の表面を全て覆っている。絶縁部44は、第一部分(導体間部分)44Aと、第二部分(導体間部分)44Bと、第三部分(導体部間部分)44Cと、第四部分(導体部間部分)44Dと、を有している。
【0073】
第一部分44Aは、コイル導体25,26,27,28,29,30,31、第一接続導体32及び第二接続導体33において、主面2c側の表面に配置されている。第二部分41Bは、コイル導体25,26,27,28,29,30,31、第一接続導体32及び第二接続導体33において、主面2d側の表面に配置されている。第三部分44C及び第四部分44Dは、コイル導体25,26,27,28,29,30、第一接続導体32及び第二接続導体33の側面に配置されている。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間、及びコイル導体と端子電極4,5との間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Hでは、導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0074】
また、第一部分44A及び第二部分44Bの厚みは、第三部分44C及び第四部分44Dの厚みよりも大きい(厚い)。言い換えれば、第三部分44C及び第四部分44Dの厚みは、第一部分44A及び第二部分44Bの厚みよりも小さい(薄い)。第一方向D1において対向しているコイル導体間の方が、面内方向において対向しているコイル導体(導体部)間よりも短絡が発生し易い。そこで、積層コイル部品1Hでは、第一部分44A及び第二部分44Bの厚みを第三部分44C及び第四部分44Dの厚みよりも大きくすることによって、コイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。
【0075】
図14に示されるように、積層コイル部品1Iは、絶縁部45を有している。絶縁部45は、コイル導体25,26,27,28,29,30,31、第一接続導体32及び第二接続導体33の表面を全て覆っている。絶縁部45は、第一方向D1において対向している二つの導体にわたって配置されている。絶縁部45は、第一方向D1において対向しているコイル導体間に充填されているとも言える。この場合、第一方向D1において対向しているコイル導体間には、磁性体層6が配置されていない。すなわち、第一方向D1において対向しているコイル導体間には、金属磁性粒子Pが配置されていない(存在していない)。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間、及びコイル導体と端子電極4,5との間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Iでは、導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0076】
[第三実施形態]
続いて、第三実施形態について説明する。
図15に示されるように、第三実施形態に係る積層コイル部品1Jは、素体2内にコイル8Bが配置されている。
【0077】
図16に示されるように、コイル8Bを構成する複数の層は、カバー層L1と、第一導体パターン層L2と、第二導体パターン層L3と、第三導体パターン層L4と、第四導体パターン層L5と、第五導体パターン層L6と、第六導体パターン層L7と、第七導体パターン層L8と、第八導体パターン層L9と、第九導体パターン層L10と、第十導体パターン層L11と、第十一導体パターン層L12と、第十二導体パターン層L13と、第十三導体パターン層L14と、第十四導体パターン層L15と、カバー層L16と、を含んで構成されている。カバー層L1,L16は、金属磁性粒子Pを含む磁性体層6のみによって構成された層である。カバー層L1は、素体2の主面2c側に複数配置されている。カバー層L16は、素体2の主面2d側に複数配置されている。カバー層L1,L16を除く各層は、上述した金属磁性粒子Pを含む磁性体層6を導体に対応する形状で刳り抜き、当該刳抜部分に導体を配置することによって構成されている。このため、これらの各層では、磁性体層6と導体とが面一となっている。
【0078】
導体は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料としては、たとえば、Ag、Cu、Au、Al、Pd、Pd/Ag合金などを用いることができる。本実施形態では、導電性材料は、Agである。磁性体層6の刳り抜きには、たとえばレーザ加工を用いることができる。導体部分の形成には、たとえば印刷法や薄膜成長法を用いることができる。
【0079】
第一導体パターン層L2は、カバー層L1と第二導体パターン層L3との間に積層されている。第一導体パターン層L2は、接続ライン50を有している。接続ライン50は、第二導体パターン層L3の外側導体ライン51(後述)の端部と内側導体ライン52(後述)とを接続している。接続ライン50は、分断領域A1(後述)に対応する位置で斜めに延在している。
【0080】
第二導体パターン層L3は、第一導体パターン層L2と第三導体パターン層L4との間に積層されている。第二導体パターン層L3は、外側導体ライン51と、内側導体ライン52と、を有している。外側導体ライン51は、第二導体パターン層L3の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン52は、外側導体ライン51よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン51の幅と内側導体ライン52の幅は、同程度となっている。外側導体ライン51と内側導体ライン52とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0081】
外側導体ライン51及び内側導体ライン52は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン51及び内側導体ライン52の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン51の二つの端部の間隔は、内側導体ライン52の二つの端部の間隔と同等である。
【0082】
第三導体パターン層L4は、第二導体パターン層L3と第四導体パターン層L5との間に積層されている。第三導体パターン層L4は、外側導体ライン53と、内側導体ライン54と、を有している。外側導体ライン53は、第三導体パターン層L4の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン54は、外側導体ライン53よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン53の幅と内側導体ライン54の幅は、同程度となっている。外側導体ライン53と内側導体ライン54とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0083】
外側導体ライン53及び内側導体ライン54は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン53及び内側導体ライン54の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン53の二つの端部の間隔は、内側導体ライン54の二つの端部の間隔と同等である。
【0084】
第四導体パターン層L5は、第三導体パターン層L4と第五導体パターン層L6との間に積層されている。第四導体パターン層L5は、積層方向に隣り合う第三導体パターン層L4と第五導体パターン層L6との外側導体ライン53,57同士及び内側導体ライン54,58同士を階段状に接続する層である。第四導体パターン層L5は、外側接続ライン55と、内側接続ライン56と、を有している。外側接続ライン55及び内側接続ライン56は、いずれも直線状をなし、分断領域A1に対応して配置されている。
【0085】
第五導体パターン層L6は、第四導体パターン層L5と第六導体パターン層L7との間に積層されている。第五導体パターン層L6は、外側導体ライン57と、内側導体ライン58と、を有している。外側導体ライン57は、第五導体パターン層L6の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン58は、外側導体ライン57よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン57の幅と内側導体ライン58の幅は、同程度となっている。外側導体ライン57と内側導体ライン58とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0086】
外側導体ライン57及び内側導体ライン58は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン57及び内側導体ライン58の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン57の二つの端部の間隔は、内側導体ライン58の二つの端部の間隔と同等である。
【0087】
第六導体パターン層L7は、第五導体パターン層L6と第七導体パターン層L8との間に積層されている。第六導体パターン層L7は、外側導体ライン59と、内側導体ライン60と、を有している。外側導体ライン59は、第六導体パターン層L7の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン60は、外側導体ライン59よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン59の幅と内側導体ライン60の幅は、同程度となっている。外側導体ライン59と内側導体ライン60とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0088】
外側導体ライン59及び内側導体ライン60は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン59及び内側導体ライン60の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン59の二つの端部の間隔は、内側導体ライン60の二つの端部の間隔と同等である。
【0089】
第七導体パターン層L8は、第六導体パターン層L7と第八導体パターン層L9との間に積層されている。第七導体パターン層L8は、積層方向に隣り合う第六導体パターン層L7と第八導体パターン層L9との外側導体ライン59,63同士及び内側導体ライン60,64同士を階段状に接続する層である。第七導体パターン層L8は、外側接続ライン61と、内側接続ライン62と、を有している。外側接続ライン61及び内側接続ライン62は、いずれも直線状をなし、分断領域A1に対応して配置されている。
【0090】
第八導体パターン層L9は、第七導体パターン層L8と第九導体パターン層L10との間に積層されている。第八導体パターン層L9は、外側導体ライン63と、内側導体ライン64と、を有している。外側導体ライン63は、第八導体パターン層L9の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン64は、外側導体ライン63よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン63の幅と内側導体ライン64の幅は、同程度となっている。外側導体ライン63と内側導体ライン64とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0091】
外側導体ライン63及び内側導体ライン64は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン63及び内側導体ライン64の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン63の二つの端部の間隔は、内側導体ライン64の二つの端部の間隔と同等である。
【0092】
第九導体パターン層L10は、第八導体パターン層L9と第十導体パターン層L11との間に積層されている。第九導体パターン層L10は、外側導体ライン65と、内側導体ライン66と、を有している。外側導体ライン65は、第九導体パターン層L10の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン66は、外側導体ライン65よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン65の幅と内側導体ライン66の幅は、同程度となっている。外側導体ライン65と内側導体ライン66とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0093】
外側導体ライン65及び内側導体ライン66は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン65及び内側導体ライン66の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン65の二つの端部の間隔は、内側導体ライン66の二つの端部の間隔と同等である。
【0094】
第十導体パターン層L11は、第九導体パターン層L10と第十一導体パターン層L12との間に積層されている。第十導体パターン層L11は、積層方向に隣り合う第九導体パターン層L10と第十一導体パターン層L12との外側導体ライン65,69同士及び内側導体ライン66,70同士を階段状に接続する層である。第十導体パターン層L11は、外側接続ライン67と、内側接続ライン68と、を有している。外側接続ライン67及び内側接続ライン68は、いずれも直線状をなし、分断領域A1に対応して配置されている。
【0095】
第十一導体パターン層L12は、第十導体パターン層L11と第十二導体パターン層L13との間に積層されている。第十一導体パターン層L12は、外側導体ライン69と、内側導体ライン70と、を有している。外側導体ライン69は、第十一導体パターン層L12の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン70は、外側導体ライン69よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン69の幅と内側導体ライン70の幅は、同程度となっている。外側導体ライン69と内側導体ライン70とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0096】
外側導体ライン69及び内側導体ライン70は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン69及び内側導体ライン70の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン69の二つの端部の間隔は、内側導体ライン70の二つの端部の間隔と同等である。
【0097】
第十二導体パターン層L13は、第十一導体パターン層L12と第十三導体パターン層L14との間に積層されている。第十二導体パターン層L13は、外側導体ライン71と、内側導体ライン72と、を有している。外側導体ライン71は、第十二導体パターン層L13の外形よりも一回り小さい形状で矩形環状に配置され、内側導体ライン72は、外側導体ライン71よりも更に一回り小さい形状で矩形環状に配置されている。外側導体ライン71の幅と内側導体ライン72の幅は、同程度となっている。外側導体ライン71と内側導体ライン72とは、これらのラインの幅よりも小さい間隔で離間している。
【0098】
外側導体ライン71及び内側導体ライン72は、所定の分断領域A1において一部が分断された状態となっている。分断領域A1は、たとえば外側導体ライン71及び内側導体ライン72の1ターンの長さの1/4以下となっている。外側導体ライン71の二つの端部の間隔は、内側導体ライン72の二つの端部の間隔と同等である。
【0099】
第十三導体パターン層L14は、引出導体73と、スルーホール74と、を有している。引出導体73は、平面視で長方形状をなし、素体2の端面2a側に配置されている。引出導体73は、第十二導体パターン層L13の外側導体ライン71と端子電極4と接続している。スルーホール74は、引出導体73と離間して素体2の端面2b側に配置され、第十二導体パターン層L13の内側導体ライン72に接続されている。
【0100】
第十四導体パターン層L15は、引出導体75を有している。引出導体75は、平面視で長方形状をなし、素体2の端面2b側に配置されている。引出導体75は、第十三導体パターン層L14のスルーホール74を介し、第十二導体パターン層L13の内側導体ライン72を端子電極5に接続している。
【0101】
本実施形態では、上述した各層において、磁性体層6の一部に抵抗率が他の領域よりも高い高比抵抗領域A2が設けられている。ここでの抵抗率は、電気抵抗率を指す。磁性体層6での抵抗率の調整は、たとえば素体2に含まれる金属磁性粒子Pの粒径の調整によって実現できる。たとえば金属磁性粒子Pの平均粒径を他の領域の金属磁性粒子Pの平均粒径よりも小さくすることで、所望の領域に高比抵抗領域A2を配置することができる。
【0102】
第二導体パターン層L3、第三導体パターン層L4、第五導体パターン層L6、第六導体パターン層L7、第八導体パターン層L9、第九導体パターン層L10、第十一導体パターン層L12及び第十二導体パターン層L13では、外側導体ライン51,53,57,59,63,65,69,71と内側導体ライン52,54,58,60,64,66,70,72との間の領域の抵抗率が、第二導体パターン層L3、第三導体パターン層L4、第五導体パターン層L6、第六導体パターン層L7、第八導体パターン層L9、第九導体パターン層L10、第十一導体パターン層L12及び第十二導体パターン層L13の中央領域A3の抵抗率よりも高くなっている。ここでは、中央領域A3は、内側導体ライン52,54,58,60,64,66,70,72よりも内側に位置し、内側導体ライン52,54,58,60,64,66,70,72よりも一回り小さい長方形状の領域である。
【0103】
図16に示す例では、第二導体パターン層L3、第三導体パターン層L4、第五導体パターン層L6、第六導体パターン層L7、第八導体パターン層L9、第九導体パターン層L10、第十一導体パターン層L12及び第十二導体パターン層L13のいずれにおいても、中央領域A3を除き、外側導体ライン51,53,57,59,63,65,69,71及び内側導体ライン52,54,58,60,64,66,70,72を囲むように高比抵抗領域A2が配置されている。これにより、外側導体ライン51,53,57,59,63,65,69,71よりも外側の領域、外側導体ライン51,53,57,59,63,65,69,71と内側導体ライン52,54,58,60,64,66,70,72との間の領域、内側導体ライン52,54,58,60,64,66,70,72と中央領域A3との間の領域が、分断領域A1と共に高比抵抗領域A2となっている。
【0104】
第四導体パターン層L5、第七導体パターン層L8及び第十導体パターン層L11では、中央領域A3を除いた部分の全体に高比抵抗領域A2が配置されている。第四導体パターン層L5、第七導体パターン層L8及び第十導体パターン層L11では、外側接続ライン55,61,67及び内側接続ライン56,62,68の周囲も高比抵抗領域A2となっている。また、第十三導体パターン層L14では、中央領域A3を除いて高比抵抗領域A2となっている。これにより、引出導体73及びスルーホール74は、いずれも高比抵抗領域A2によって囲まれた状態となっている。
【0105】
図15に示されるように、外側導体ライン51及び外側導体ライン53は、コイル導体76を構成している。内側導体ライン52及び内側導体ライン64は、コイル導体77を構成している。外側導体ライン57及び外側導体ライン59は、コイル導体78を構成している。内側導体ライン58及び内側導体ライン60は、コイル導体79を構成している。外側導体ライン63及び外側導体ライン65は、コイル導体80を構成している。内側導体ライン64及び内側導体ライン66は、コイル導体81を構成している。外側導体ライン69及び外側導体ライン71は、コイル導体82を構成している。内側導体ライン70及び内側導体ライン72は、コイル導体83を構成している。
【0106】
積層コイル部品1Jでは、コイル導体78,79,80,81,82,83の表面には、絶縁部(第二絶縁部)84が形成されている。絶縁部84は、コイル導体78,79,80,81,82,83の表面上に無電解めっき法によってCuめっきを形成し、Cuめっきを黒化処理することによって形成されている。
【0107】
絶縁部84は、コイル導体78,79,80,81,82,83の主面2c側の表面(上面)に配置されている。絶縁部84は、コイル導体78とコイル導体76との間に配置されている。絶縁部84は、コイル導体79とコイル導体77との間に配置されている。絶縁部84は、コイル導体80とコイル導体78との間に配置されている。絶縁部84は、コイル導体81とコイル導体79との間に配置されている。絶縁部84は、コイル導体82とコイル導体80との間に配置されている。絶縁部84は、コイル導体83とコイル導体81との間に配置されている。
【0108】
絶縁部84は、コイル導体78,80,82において、外側接続ライン55,61,67と接続される部分には形成されていない。絶縁部84は、コイル導体79,81,83において、内側接続ライン56,62,68と接続される部分には形成されていない。
【0109】
絶縁部84の厚みは、金属磁性粒子P(P1,P2)の酸化膜Mの厚みT2よりも大きい(厚い)。言い換えれば、金属磁性粒子P(P1,P2)の酸化膜Mの厚みT2は、絶縁部84の厚みT1よりも小さい(薄い)。
【0110】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Jでは、コイル導体78,79,80,81,82,83の表面には、絶縁性を有する絶縁部84が配置されている。絶縁部84の厚みは、酸化膜Mの厚みよりも大きい。このように、積層コイル部品1Jでは、導体間に酸化膜Mよりも厚い絶縁部84が配置されているため、コイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Jでは、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0111】
上記第二実施形態では、絶縁部84が、コイル導体78,79,80,81,82,83において、主面2c側の表面に配置されている形態を一例に説明した。しかし、絶縁部は、他の位置に配置されていてもよい。
【0112】
図17に示されるように、積層コイル部品1Kは、絶縁部85を有している。絶縁部85は、第一部分85Aと、第二部分85Bと、を含んでいる。第一部分85Aは、コイル導体78,79,80,81,82,83及び引出導体73,75において、主面2c側の表面に配置されている。第二部分85Bは、コイル導体78,79,80,81,82,83において、主面2d側の表面に配置されている。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間において、短絡が発生することをより一層抑制できる。したがって、積層コイル部品1Kでは、コイル導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0113】
図18に示されるように、積層コイル部品1Lは、絶縁部86を有している。絶縁部86は、コイル導体76,78,80,82において、コイル導体77,79,81,83と磁性体層6の面内方向で対向している側面に配置されている。絶縁部86は、引出導体73において、端面2b側の側面に配置されている。この構成では、磁性体層6の面内方向において対向しているコイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Lでは、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0114】
図19に示されるように、積層コイル部品1Mは、絶縁部86及び絶縁部87を有している。絶縁部86は、コイル導体76,78,80,82において、コイル導体77,79,81,83と磁性体層6の面内方向で対向している側面に配置されている。絶縁部86は、引出導体73において、端面2b側の側面に配置されている。絶縁部87は、コイル導体77,79,81,83において、コイル導体76,78,80,82と磁性体層6の面内方向で対向している側面に配置されている。この構成では、磁性体層6の面内方向において対向しているコイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Mでは、コイル導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0115】
図20に示されるように、積層コイル部品1Nは、絶縁部88を有している。絶縁部88は、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83及び引出導体73,75の表面を全て覆っている。絶縁部88は、第一部分(導体間部分)88Aと、第二部分(導体間部分)88Bと、第三部分(導体部間部分)88Cと、第四部分(導体部間部分)88Dと、を有している。
【0116】
第一部分88Aは、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83及び引出導体73,75において、主面2c側の表面に配置されている。第二部分88Bは、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83及び引出導体73,75において、主面2d側の表面に配置されている。第三部分88C及び第四部分88Dは、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83及び引出導体73,75の側面に配置されている。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間、及びコイル導体と端子電極4,5との間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Nでは、導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0117】
また、第一部分88A及び第二部分88Bの厚みは、第三部分88C及び第四部分88Dの厚みよりも小さい(薄い)。言い換えれば、第三部分88C及び第四部分88Dの厚みは、第一部分88A及び第二部分88Bの厚みよりも大きい(厚い)。面内方向において対向しているコイル導体間の方が、第一方向D1において対向しているコイル導体間よりも短絡が発生し易い。そこで、積層コイル部品1Nでは、第三部分88C及び第四部分88Dの厚みを第一部分88A及び第二部分88Bの厚みよりも大きくすることによって、面合い方向において対向しているコイル導体間において短絡が発生することを抑制できる。
【0118】
図21に示されるように、積層コイル部品1Oは、絶縁部89を有している。絶縁部89は、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83及び引出導体73,75の表面を全て覆っている。絶縁部89は、第一方向D1において対向している二つの導体にわたって配置されている。絶縁部89は、第一方向D1において対向しているコイル導体間に充填されているとも言える。この場合、第一方向D1において対向しているコイル導体間には、磁性体層6が配置されていない。すなわち、第一方向D1において対向しているコイル導体間には、金属磁性粒子Pが配置されていない(存在していない)。この構成では、第一方向D1において対向しているコイル導体間、及びコイル導体と端子電極4,5との間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Oでは、導体間の耐電圧の向上がより一層図れる。
【0119】
[第四実施形態]
続いて、第四実施形態について説明する。
図22に示されるように、第四実施形態に係る積層コイル部品1Pは、素体2と、素体2の底部にそれぞれ配置された端子電極4A及び端子電極5Aと、を備えている。積層コイル部品1Pは、素体2内にコイル8Cが配置されている。
【0120】
図23に示されるように、コイル8Cを構成する複数の層は、カバー層L1と、第一導体パターン層L2と、第二導体パターン層L3と、第三導体パターン層L4と、第四導体パターン層L5と、第五導体パターン層L6と、第六導体パターン層L7と、第七導体パターン層L8と、第八導体パターン層L9と、第九導体パターン層L10と、第十導体パターン層L11と、第十一導体パターン層L12と、第十二導体パターン層L13と、第十三導体パターン層L17と、第十四導体パターン層L18と、を含んで構成されている。
【0121】
第十三導体パターン層L17は、第十二導体パターン層L13と第十四導体パターン層L18との間に積層されている。第十三導体パターン層L17は、コイル8Cと端子電極4A,5Aとを接続する層である。第十三導体パターン層L17は、スルーホール90と、スルーホール91と、を有している。スルーホール90は、平面視で矩形状をなし、素体2の端面2a側に配置されている。スルーホール90は、第十二導体パターン層L13の外側導体ライン71と接続されている。スルーホール91は、平面視で矩形状をなし、スルーホール90と離間して素体2の端面2b側に配置され、第十二導体パターン層L13の内側導体ライン72に接続されている。
【0122】
第十四導体パターン層L18は、端子導体92と、端子導体93と、を有している。端子導体92及び端子導体93は、平面視で長方形状を呈している。端子導体92は、端子電極4Aを構成している。端子導体92は、スルーホール90を介して第十二導体パターン層L13の外側導体ライン71と接続されている。端子導体93は、端子電極5Aを構成している。端子導体93は、スルーホール91を介して第十二導体パターン層L13の内側導体ライン72と接続されている。
【0123】
図22に示されるように、積層コイル部品1Pでは、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83の表面には、絶縁部(第二絶縁部)94が形成されている。絶縁部94は、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83の表面上に無電解めっき法によってCuめっきを形成し、Cuめっきを黒化処理することによって形成されている。
【0124】
絶縁部94は、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83の表面を全て覆っている。絶縁部94は、第一方向D1において対向している二つのコイル導体にわたって配置されている。絶縁部94は、第一方向D1において対向しているコイル導体間に充填されているとも言える。
【0125】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Pでは、コイル導体76,77,78,79,80,81,82,83の表面には、絶縁性を有する絶縁部94が配置されている。絶縁部94の厚みは、酸化膜Mの厚みよりも大きい。このように、積層コイル部品1Pでは、導体間に酸化膜Mよりも厚い絶縁部94が配置されているため、導体間において短絡が発生することを抑制できる。したがって、積層コイル部品1Pでは、導体間の耐電圧の向上が図れる。
【0126】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0127】
上記実施形態では、
図4に示されるように、扁平粒子P2がコイル導体14に接触している形態を一例に説明した。しかし、扁平粒子P2は、コイル導体14に接触しない態様であってもよい。たとえば、扁平粒子P2は、第一方向D1において、通常粒子P1,P1間に位置してもよい。この場合、コイル導体には、いずれも通常粒子P1が接触している。
【0128】
上記実施形態では、
図4に示されるように、コイル導体14,15間に一つの扁平粒子P2が配置されている形態を一例に説明した。しかし、扁平粒子P2は、コイル導体間において複数配置されていてもよい。
【0129】
上記実施形態では、導体を形成する導電性材料がAgである形態を一例に説明した。しかし、導体はめっき導体であってもよい。この構成では、導体の表面粗さを小さくすることができる。そのため、積層コイル部品では、導体の表面に配置されている絶縁部の連続性を確保できる。また、めっき導体は、積層コイル部品の製造工程において熱処理が施された場合に、熱収縮や変形が生じ難い。そのため、導体の表面に配置されている絶縁部に破損などの不具合(欠陥)が生じることを抑制できる。
【0130】
上記第一実施形態及び第二実施形態では、端子電極4が第一電極部分4a、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eを有しており、端子電極5が第一電極部分5a、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eを有している形態を一例に説明した。しかし、端子電極の形状はこれに限定されない。端子電極は、たとえば、主面2dにのみ配置されていてもよいし(底面端子型)、端面2a,2bと主面2dとにわたって配置されていてもよい(L字端子型)。
【0131】
上記第三実施形態及び第四実施形態では、上述した各層において、磁性体層6の一部に抵抗率が他の領域よりも高い高比抵抗領域A2が設けられている形態を一例に説明した。しかし、高比抵抗領域A2は設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1L,1M,1N,1O,1P…積層コイル部品(積層型電子部品)、2…素体、4,4A…端子電極、5,5A…端子電極、6…磁性体層、10,11,12,13,14,15,16,17,25,26,27,28,29,30,31,76,77,78,79,80,81,82,83…コイル導体、20,21,22,23,41,42,43,44,45,84,85,86,87,88,89,94…絶縁部(第二絶縁部)、18,32…第一接続導体、19,33…第二接続導体、44A,88A…第一部分(導体間部分)、44B,88B…第二部分(導体間部分)、44C,88C…第三部分(導体部間部分)、44D,88D…第四部分(導体部間部分)、73,75…引出導体、M…酸化膜(第一絶縁部)、P…金属磁性粒子、P1…通常粒子、P2…扁平粒子、T1,T2…厚み。