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特開2024-172355光ファイバケーブルの製造方法および製造装置
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  • 特開-光ファイバケーブルの製造方法および製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172355
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G02B6/44 391
G02B6/44 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090011
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 文一
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201BB67
2H201KK08
2H201KK09
2H201KK34C
2H201MM02
2H201MM31
(57)【要約】
【課題】 抗張力体を誤検知することなく、光ファイバケーブルの外被の厚さの異常を正しく検知することができる、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】 ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造方法は、前記外被となる樹脂を被覆する被覆工程と、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、前記外被形成工程後、前記外被の厚みを測定する測定工程と、を含み、前記測定工程は、複数のセンサにより前記外被の厚みを測定し、前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記外被となる樹脂を被覆する被覆工程と、
前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、
前記外被形成工程後、前記外被の厚みを測定する測定工程と、を含み、
前記測定工程は、複数のセンサにより前記外被の厚みを測定し、
前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる、光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記中心軸を基準として、前記複数のセンサの間隔のうち、少なくとも一つの間隔は、前記複数の抗張力体同士のすべての間隔と異なる、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記ケーブルコアの断面における中心線に対し、前記抗張力体は線対称に配置されており、前記複数のセンサは非線対称に配置されている、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項4】
前記複数のセンサの数は、前記複数の抗張力体の数と異なっている、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記複数のセンサの数は、前記複数の抗張力体の数よりも少ない、請求項4に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項6】
前記抗張力体の数は四つであり、
前記抗張力体は等間隔で配置され、
前記複数のセンサは、第一センサと、前記第一センサに隣接する第二センサと、を有し、
前記中心軸と、前記第一センサおよび前記第二センサとが成す角度が、鋭角または鈍角である、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項7】
前記外被形成工程は、
前記光ファイバケーブルをサイジングダイスに入線させる入線工程と、
前記サイジングダイス内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、前記領域に前記光ファイバケーブルを通過させるサイジング工程と、
前記領域を通過した前記光ファイバケーブルの前記樹脂を冷却する冷却工程と、を含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項8】
ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造装置であって、
前記外被となる樹脂を被覆する押出部と、
前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成部と、
前記外被形成部の下流側に設けられ、前記外被の厚みを測定する複数のセンサと、備え、
前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる、光ファイバケーブルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、超音波センサを用いたケーブル被覆厚の測定方法を開示している。当該測定方法では、二つの超音波センサがそれぞれ、ケーブル通路に配置された水冷トラフの入口寄りおよび出口寄りの水中に配置され、押出機から押し出されたケーブルの任意の位置の被覆厚を測定する。二つの測定値の差から、入口寄りの被覆厚の測定値を補正して、ケーブル被覆厚を求める。
【0003】
特許文献2も、超音波センサを用いたケーブル被覆厚の測定方法を開示している。当該測定方法では、ケーブル被覆と同質材料からなる厚さ既知の基準試料を、水冷トラフの被覆厚測定位置に近い水中に配置する。この基準試料の厚さとケーブル被覆の厚さとを超音波センサで測定し、二つの測定値から、ケーブルの被覆厚を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-017308号公報
【特許文献2】特開昭60-038610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバケーブルの外被は、高温で溶融状態にある樹脂をクロスヘッドから押し出してケーブルコア上に被覆させ、その後に冷却設備で固めることで形成される。光ファイバケーブルは通常一定速度でクロスヘッドから押し出されるが、樹脂の粘性によって押出速度が一定にならず、樹脂の被覆量が変動し、被覆の厚みが不均一になることがある。
【0006】
光ファイバケーブルの外被の厚みが薄いと、破損強度が低くなる。また、外被の厚みが厚くなると、ケーブル内において、光ファイバの実装密度が一部高くなることで、外被から一部の光ファイバに側圧が集中して作用して、伝送特性が低下することがあった。
【0007】
光ファイバケーブルの外形の変形などを検知するため、特許文献1または特許文献2のように、冷却設備の水中に超音波センサが設けられた光ファイバケーブルの測定方法がある。このような測定方法では、超音波センサが光ファイバケーブルの外被の外面で反射した超音波と、光ファイバケーブルの外被の内面で反射した超音波とを受信して、受信タイミングの差に基づいて、外被の厚みが測定される。
【0008】
しかしながら超音波センサは、光ファイバケーブルの外被の内面で反射した超音波を受信するのではなく、光ファイバケーブルの外被に埋め込まれている抗張力体で反射した超音波を受信してしまうことがある。このような状況を避けるために、超音波センサの測定位置を予め、抗張力体の位置から外して配置することは可能である。抗張力体はクロスヘッドからケーブルコアと並走して押し出されるため、ケーブルコアの中心軸に対する抗張力体の位置は概ね特定されうる。しかしながら冷却設備中の水流により光ファイバケーブルの位置がずれ、抗張力体の位置が本来あるべき位置からずれることがある。超音波センサが抗張力体で反射した超音波を受信してしまうと、外被の厚みを正確に測定することができない。
【0009】
本開示は、抗張力体を誤検知することなく、光ファイバケーブルの外被の厚さの異常を正しく検知することができる、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の光ファイバケーブルの製造方法は、
ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記外被となる樹脂を被覆する被覆工程と、
前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、
前記外被形成工程後、前記外被の厚みを測定する測定工程と、を含み、
前記測定工程は、複数のセンサにより前記外被の厚みを測定し、
前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる。
【0011】
本開示の光ファイバケーブルの製造装置は、
ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造装置であって、
前記抗張力体を内包しながら前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、前記外被となる前記樹脂を被覆する押出部と、
前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成部と、
前記外被形成部の下流側に設けられ、前記外被の厚みを測定する複数のセンサと、備え、
前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、抗張力体を誤検知することなく、光ファイバケーブルの外被の厚さの異常を正しく検知することができる、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る光ファイバケーブルの製造装置を例示する概略構成図である。
図2図2は、光ファイバケーブルの、図1のII-II線の位置における断面を模式的に表した図である。
図3図3は、変形例1に係る光ファイバケーブルの製造装置を例示する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本開示の一形態の説明)
まず本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、
(1)ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記外被となる樹脂を被覆する被覆工程と、
前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、
前記外被形成工程後、前記外被の厚みを測定する測定工程と、を含み、
前記測定工程は、複数のセンサにより前記外被の厚みを測定し、
前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる。
【0015】
本開示によれば、ケーブルコアの中心軸を基準として、ケーブルコアの周方向において、複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、抗張力体の周方向の位置とは異なる。このため、少なくとも1つのセンサは、抗張力体を誤検知することがない。したがって、外被の厚さの異常を正確に検知することができる。
【0016】
(2)上記(1)において、前記中心軸を基準として、前記複数のセンサの間隔のうち、少なくとも一つの間隔は、前記複数の抗張力体同士のすべての間隔と異なっていてもよい。
【0017】
本開示によれば、ケーブルコアの中心軸を基準として、複数のセンサの間隔のうち、少なくとも一つの間隔は、複数の抗張力体同士のすべての間隔と異なる。このため、複数のセンサのうち少なくとも一つのセンサは抗張力体を誤検知せず、外被の厚みを測定することができる。したがって、外被の厚さの異常を正確に検知することができる。
【0018】
(3)上記(1)または(2)において、前記ケーブルコアの断面における中心線に対し、前記抗張力体は線対称に配置されており、前記複数のセンサは非線対称に配置されていてもよい。
【0019】
本開示によれば、ケーブルコアの断面における中心線に対し、抗張力体は線対称に配置されており、複数のセンサは非線対称に配置されているため、少なくとも一つのセンサは抗張力体を誤検知せず、外被の厚みを測定することができる。したがって、外被の厚さの異常をより正確に検知することが可能となる。
【0020】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記複数のセンサの数は、前記複数の抗張力体の数と異なっていてもよい。
【0021】
本開示によれば、複数のセンサの数は複数の抗張力体の数と異なっている。このため、複数のセンサの間隔が抗張力体の全ての間隔に対して異なるように、複数のセンサを配置しやすい。したがって、センサが抗張力体を誤検知せずに、外被の厚みを測定することができる。
【0022】
(5)上記(4)において、前記複数のセンサの数は、前記複数の抗張力体の数よりも少なくてもよい。
【0023】
本開示によれば、複数のセンサの数は、前記複数の抗張力体の数よりも少ない。センサのコストを低減できるため、比較的低コストで、外被の厚さの異常を検知することができる。
【0024】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記抗張力体の数は四つであり、
前記抗張力体は等間隔で配置され、
前記複数のセンサは、第一センサと、前記第一センサに隣接する第二センサと、を有し、
前記中心軸と、前記第一センサおよび前記第二センサとが成す角度が、鋭角または鈍角であってもよい。
【0025】
本開示によれば、四つの抗張力体が等間隔で配置され、中心軸と、第一センサおよび第二センサとが成す角度が、鋭角または鈍角であるため、少なくとも一つのセンサは抗張力体を誤検知せず、外被の厚みを測定することができる。
【0026】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記外被形成工程は、
前記光ファイバケーブルをサイジングダイスに入線させる入線工程と、
前記サイジングダイス内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、前記領域に前記光ファイバケーブルを通過させるサイジング工程と、
前記領域を通過した前記光ファイバケーブルの前記樹脂を冷却する冷却工程と、を含んでもよい。
【0027】
ケーブルコアが角形状や楕円形状の場合、その上に形成される外被も同様の形状となって、光ファイバケーブルの外形が、本来意図していた丸い形状とはならないことがある。しかしながら本開示によれば、外被形成工程が、光ファイバケーブルをサイジングダイスに入線させる入線工程と、サイジングダイス内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、当該領域に光ファイバケーブルを通過させる、サイジング工程と、当該領域を通過した光ファイバケーブルの樹脂を冷却する冷却工程と、を含むため、光ファイバケーブルの外形を丸い形状とすることができる。
【0028】
なお、被覆量の変動により、厚みが不均一な状態のまま光ファイバケーブルがサイジングダイス内を通過した場合でも、光ファイバケーブルの外形は丸い形状となるが、外被の厚みが長手方向で不均一となることがある。外被の厚みの不均一性は、曲げに弱い箇所が局所的に生じるため、空気圧送などで光ファイバケーブルを布設する場合、光ファイバケーブルが座屈することがある。しかしながら本開示によれば、光ファイバケーブルの外被の厚さの異常をより正確に検知することが可能となるため、サイジングダイスを用いて外被厚が長手方向で不均一になった場合でも、外被の厚みの不均一性などの異常を検知することができる。
【0029】
(8)本開示の一形態に係る光ファイバケーブルの製造装置は、
ケーブルコアと、前記ケーブルコアに沿って配置された複数の抗張力体と、前記ケーブルコアを外側から被覆するとともに前記抗張力体を内包する外被と、を有する光ファイバケーブルの製造装置であって、
前記外被となる樹脂を被覆する押出部と、
前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成部と、
前記外被形成部の下流側に設けられ、前記外被の厚みを測定する複数のセンサと、備え、
前記ケーブルコアの中心軸を基準として、前記ケーブルコアの周方向において、前記複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、前記抗張力体の周方向の位置とは異なる。
【0030】
本開示によれば、ケーブルコアの中心軸を基準として、ケーブルコアの周方向において、複数のセンサの少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、抗張力体の周方向の位置とは異なる。このため、少なくとも1つのセンサは、抗張力体を誤検知することはない。したがって、外被の厚さの異常を正確に測定することができる。
【0031】
(本開示の一形態の詳細)
以下、本開示に係る光ファイバケーブルの製造方法および製造装置の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号又は名称を付し、重複する説明を適宜省略する。また、各図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0032】
(光ファイバケーブルの製造装置)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る光ファイバケーブルの製造装置について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る光ファイバケーブル102の製造装置1を例示する概略構成図である。図1に示すように、製造装置1は、供給ドラム10と、繰出機20と、押出機30と、第1の水槽40と、第2の水槽50と、引取機60と、巻取ドラム70と、複数のセンサ90と、を備える。
【0033】
供給ドラム10は、光ファイバケーブル102の内部材であるケーブルコア101と、複数の抗張力体Tと、を供給する。ケーブルコア101は、内部に複数の光ファイバ心線を含んでいる。ケーブルコア101は、たとえば、スロットロッド内に複数の光ファイバ心線が収納されたスロット型でもよいし、スロットロッドを有さないスロットレス型でもよい。ケーブルコア101に含まれる複数の光ファイバ心線は、たとえば、複数の光ファイバリボンとして構成されていてもよい。光ファイバリボンは、複数の光ファイバ心線が並列に配置されてテープ樹脂で被覆された構造を有するものである。光ファイバリボンは、たとえば、並列に配置された複数の光ファイバ心線のうち隣接する光ファイバ心線が軸方向に沿って間欠的にテープ樹脂で接着された間欠接着型の光ファイバリボンであってもよい。ケーブルコア101の外周は、たとえば、押さえ巻きテープで巻かれている。
【0034】
複数の抗張力体Tは、ケーブルコア101とともに、ケーブルコア101に沿って、供給ドラム10から送り出される。複数の抗張力体Tはさらに、ケーブルコア101の断面における中心線に対し、線対称に配置されるように送り出される。各抗張力体Tは、たとえば、アラミドFRP(繊維強化プラスチック)やガラスFRPである。
【0035】
繰出機20は、キャプスタンベルトを備えている。繰出機20は、たとえば、制御装置(不図示)からの制御信号に基づいて、押出機30へのケーブルコア101の繰り出し速度を制御する。
【0036】
押出機30は、ケーブルコア101を外側から被覆するとともに抗張力体Tを内包するように溶融樹脂を押出して、外被となる溶融樹脂を被覆する装置である。溶融樹脂としては、たとえば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を特に制限なく用いることができる。溶融樹脂は、たとえば低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)であってもよい。押出機30は、クロスヘッド31を備えている。押出機30は、熱可塑性樹脂を加熱して溶融樹脂とし、溶融樹脂をクロスヘッド31に供給する。繰出機20から送られたケーブルコア101の周囲には、クロスヘッド31において、複数の抗張力体Tを内包するように溶融樹脂が被覆される。押出機30は押出部の一例である。
【0037】
本実施形態のクロスヘッド31は、引き落としにより溶融樹脂を押出している。クロスヘッド31は、下流側に設けられ、中央にケーブルコア101を通過させるダイス孔を有するダイスと、上流側に設けられ、中央にケーブルコア101を通過させ、ダイス孔と同心上に設けられるポイント孔を有するポイントと、ダイスとポイントの間に設けられ、溶融樹脂を供給する流路とを有する。ケーブルコア101がダイス孔およびポイント孔を通過する際に、流路から供給された溶融樹脂がケーブルコア101に被覆される。このとき、流路の吐出口から押し出された溶融樹脂は、すぐにはケーブルコア101には接触せず、徐々に細くなって、クロスヘッド31の出口から離れた地点で、抗張力体Tおよびケーブルコア101に接触して被覆され、光ファイバケーブル102が形成される。溶融樹脂が被覆された光ファイバケーブル102は、第1の水槽40へと送られる。
【0038】
本明細書において、「上流側」とは、光ファイバケーブル102の走行方向の上流側のことをいう。また、本明細書において、「下流側」とは、光ファイバケーブル102の走行方向の下流側のことをいう。
【0039】
第1の水槽40は、溶融樹脂を冷却することで固化させる。第1の水槽40内の圧力は、たとえば、大気圧と同程度である。押出機30によって被覆された樹脂は高温で溶融状態にあるが、光ファイバケーブル102が第1の水槽40内を通過することで、樹脂の温度は下がり、樹脂は固化する。本実施形態の第1の水槽40は、媒体として水を含んでいるが、水以外の媒体を含んでもよい。その後、光ファイバケーブル102は、第2の水槽50へと送られる。
【0040】
第2の水槽50は、第1の水槽40よりも下流側に設けられている。第2の水槽50内の圧力は、たとえば、大気圧と同程度である。第2の水槽50は、溶融樹脂をさらに冷却することで固化して、外被を形成するように設けられている。この固化した樹脂が、光ファイバケーブル102の外被となる。言い換えると、第1の水槽40および第2の水槽50は、光ファイバケーブル102の樹脂を冷却することで、外被を形成している。第2の水槽50は、水ではなく、水以外の冷媒を含むように構成してもよい。その後、光ファイバケーブル102は、引取機60へと送られる。第1の水槽40および第2の水槽50は、外被形成部の一例である。
【0041】
引取機60は、キャプスタンベルトを備えている。引取機60は、たとえば、制御装置(不図示)からの制御信号に基づいて、巻取ドラム70への光ファイバケーブル102の巻き取り速度を制御する。巻取ドラム70は、光ファイバケーブル102を巻き取るドラムである。
【0042】
複数のセンサ90は、第2の水槽50の下流側に設けられている。各センサ90は、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定するよう構成されている。各センサ90は、たとえば超音波センサである。各センサ90は、第2の水槽50の水中を通過する光ファイバケーブル102に向かって超音波を発信する。発信された超音波の一部は、光ファイバケーブル102の外被の外面で反射し、出力された超音波の他の一部は、光ファイバケーブル102の外被の内面で反射する。反射されたこれらの超音波を受信することで、センサ90は、二つの超音波の受信タイミングの差に基づき、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定する。
【0043】
図2は、光ファイバケーブル102の、図1のII-II線の位置における断面を模式的に表した図である。図2は、ケーブルコア101の中心軸Oに直交する断面でみた状態における、複数のセンサ90(第一センサ90A、第二センサ90B、第三センサ90C)と、複数の抗張力体Tの位置関係を例示している。図2では、中心軸Oと、複数のセンサ90と、複数の抗張力体Tの位置関係を示すことを目的としているため、ケーブルコア101内に含まれる複数の光ファイバ心線は省略する。
【0044】
図2に示すように、光ファイバケーブル102は、ケーブルコア101と、ケーブルコア101に沿って配置された複数の抗張力体Tと、ケーブルコア101を外側から被覆するとともに抗張力体Tを内包する外被と、を有する。ケーブルコア101の断面における中心線に対し、複数の抗張力体Tは線対称に配置されている。さらに複数の抗張力体Tは、等間隔で配置されている。
【0045】
本実施形態において、抗張力体Tの数は、四つである。より具体的には、複数の抗張力体Tは、第一抗張力体TAと、第二抗張力体TBと、第三抗張力体TCと、第四抗張力体TDと、を有する。なお、抗張力体Tは、1本ではなく、2本以上の抗張力体がまとまって配置されるような、抗張力体セットであってもよい。ケーブルコア101の中心軸Oを基準として、ケーブルコア101の周方向において、中心軸Oと、隣り合う二つの抗張力体Tとが成す角度はすべて90度である。言い換えると、第一抗張力体TAと、第二抗張力体TBと、第三抗張力体TCと、第四抗張力体TDは、等間隔で配置されている。中心軸Oと第一抗張力体TAとを結ぶ直線L(中心線)を中心に、第一抗張力体TAと、第二抗張力体TBと、第三抗張力体TCと、第四抗張力体TDは、線対称に配置されている。
【0046】
複数のセンサ90は、直線Lを中心に、非線対称に配置されている。さらに複数のセンサ90の数は、複数の抗張力体Tの数と異なっている。本実施形態では、複数のセンサ90の数は、複数の抗張力体Tの数よりも少ない。
【0047】
本実施形態において、複数のセンサ90の数は、たとえば三つである。より具体的には、複数のセンサ90は、第一センサ90Aと、第一センサ90Aに隣接する第二センサ90Bと、第二センサに隣接するとともに第一センサ90Aにも隣接する第三センサ90Cとを、有する。中心軸Oと、第一センサ90Aと第二センサ90Bとがなす角度φ2は、鋭角であり、たとえば60度である。中心軸Oと、第一センサ90Aと第三センサ90Cとがなす角度φ3は、鈍角であり、たとえば110度である。第一センサ90Aと、第二センサ90Bと、第三センサ90Cは、中心軸Oと第一抗張力体TAとを結ぶ直線L含め、中心軸Oを通過するいずれの直線に対しても、非線対称に配置されている。
【0048】
ケーブルコア101の中心軸Oを基準として、ケーブルコア101の周方向において、複数のセンサ90のうち、少なくとも一つのセンサの周方向の位置は常に、抗張力体Tの周方向の位置とは異なっている。たとえば、第一抗張力体TAに最も近くに設けられるセンサは第一センサ90Aである。この第一センサ90Aの周方向の位置は、第一抗張力体TAの周方向の位置とは異なっている。言い換えると、第一センサ90Aは、中心軸Oと第一抗張力体TAとを結ぶ直線L上に位置しない。同様にして、第一センサ90Aは、中心軸Oと他の抗張力体Tとを結ぶいずれの直線(不図示)上にも位置しない。このように第一センサ90Aの周方向の位置は、いずれの抗張力体Tの周方向の位置とも異なっている。
【0049】
第二センサ90Bの周方向の位置は、いずれの抗張力体Tの周方向の位置とも異なっている。第三センサ90Cの周方向の位置は、いずれの抗張力体Tの周方向の位置とも異なっている。
【0050】
本実施形態では、中心軸Oを基準として、複数の各センサ90の間隔のうち、少なくとも一つの間隔は、複数の抗張力体T同士のすべての間隔と異なっている。本明細書において、中心軸Oを基準として、ケーブルコア101の周方向における二つの部材の「間隔」とは、ケーブルコア101の中心軸Oを中心として、当該二つの部材がなす角度をいう。
【0051】
本実施形態において、たとえば第一センサ90Aと第二センサ90Bの間隔(角度φ2)は、60度である。一方で、第一抗張力体TAと第二抗張力体TBの間隔は、90度である。第一抗張力体TAと第三抗張力体TCの間隔は180度である。第一抗張力体TAと第四抗張力体TDの間隔は、ケーブルコア101の周方向左回り(反時計回り)において、90度である。第一抗張力体TAと第四抗張力体TDの間隔は、ケーブルコア101の周方向右回り(時計回り)においては270度でもある。このように、第一センサ90Aと第二センサ90Bの間隔(60度)は、複数の抗張力体T同士のいずれの間隔(90度、180度、270度)とも異なっている。同様にして、第一センサ90Aと第三センサ90Cの間隔(角度φ3)は110度であり、複数の抗張力体T同士のいずれの間隔とも異なっている。
【0052】
(光ファイバケーブルの製造方法)
本開示の一実施形態に係る光ファイバケーブルの製造方法として、上述の製造装置1を用いた例について説明する。本実施形態に係る光ファイバケーブル102の製造方法は、たとえば、被覆工程と、外被形成工程と、測定工程と、を含む。本実施形態に係る光ファイバケーブル102の製造方法において、光ファイバケーブル102の線速は、特に制限はされないが、たとえば、5m/分以上40m/分以下であることが好ましい。
【0053】
被覆工程は、押出機30により、光ファイバケーブル102の内部材であるケーブルコア101を外側から被覆するとともに複数の抗張力体Tを内包するように溶融樹脂を押出して、外被となる溶融樹脂で被覆する工程である。被覆工程において、押出温度(溶融樹脂の樹脂温度)は、たとえば、170℃以上210℃以下であることが好ましい。
【0054】
外被形成工程は、光ファイバケーブル102を第1の水槽40および第2の水槽50内に通過させ、溶融樹脂を固化して外被を形成する工程である。第1の水槽40内の圧力は、大気圧と同程度にする。第2の水槽50内の圧力は、大気圧と同程度にする。外被形成工程において、第1の水槽40内の温度は、たとえば、15℃以上50℃以下にすることが好ましい。第2の水槽50内の温度は、第1の水槽40内の温度と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
測定工程は、外被形成工程後、複数のセンサにより、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定する工程である。複数のセンサ90はそれぞれ、抗張力体Tが配置されていない部分の外被の厚みを測定している場合には、これらの測定値は予め定められた所定範囲内で出力される。
【0056】
ここで、複数のセンサ90の一つが、光ファイバケーブル102の外被の内面で反射した超音波を受信するのではなく、光ファイバケーブル102の外被に埋め込まれている抗張力体Tで反射した超音波を受信してしまうことがある。たとえば、第四抗張力体TDに最も近くに設けられるセンサは、第三センサ90Cである(図2)。この第三センサ90Cは、第三センサ90Cの周方向の位置が第四抗張力体TDの周方向の位置と異なるように、設けられている。しかしながら、第2の水槽50中の水流により、光ファイバケーブル102の位置がずれ、第四抗張力体TDの周方向の位置が本来あるべき位置からずれてしまうことがある。仮に、第三センサ90Cが、第四抗張力体TDで反射した超音波を受信してしまうと、第三センサ90Cの測定値は予め定められた所定範囲外の値が出力される。たとえば、製造装置1が、外径が20mmであって、外被の厚みが1.5mmである光ファイバケーブルを製造する場合において、第三センサ90Cによる実測値が、複数のセンサ90すべてにより測定される測定値の平均と比較して0.5mm以上小さいと出力される場合がある。
【0057】
しかしながら本実施形態では、ケーブルコア101の中心軸Oを基準として、ケーブルコア101の周方向において、複数のセンサ90の少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、抗張力体Tの周方向の位置とは異なる。たとえば、第一センサ90Aは、第一抗張力体TAの周方向の位置とは異なっている。このため、仮に第三センサ90Cが第四抗張力体TDを誤検知してしまった場合でも、第一センサ90Aが第一抗張力体TAを誤検知することはない。もしすべてのセンサにおいて、所定範囲を大きく逸脱する測定値が出力された場合のみ、外被の厚さの異常が発生したと判断すればよい。このように、少なくとも1つのセンサは、抗張力体Tを誤検知することがないため、本実施形態によれば外被の厚さの異常を正確に検知することができる。
【0058】
なお本実施形態において、光ファイバケーブル102の外被の厚さの異常が検知された場合には、ケーブル上における外被異常部の位置に応じて、光ファイバケーブルの製造のやり方を変えてもよい。たとえば外被異常部が、製造する光ファイバケーブル102の全長のうち、余長部分などの、比較的端部に近い位置にある場合には、全長製造した後に、当該外被異常部をケーブル全体から部分的に廃棄してもよい。たとえば外被異常部が、製造する光ファイバケーブル102の全長のうち、比較的中央に近い位置にある場合には、全長製造した後に、形成した全ての外被をケーブルコア101から剥がし、再度外被を形成し直してもよい。このような方法により本実施形態では、被覆厚が均一な光ファイバケーブル102を製造することができる。
【0059】
本実施形態では、第一センサ90Aと第二センサ90Bの間隔(60度)は、複数の抗張力体T同士のいずれの間隔(90度、180度、270度)とも異なっている。仮に第三センサ90Cが第四抗張力体TDを誤検知したとしても、第一センサ90Aあるいは第二センサ90Bは、抗張力体Tを誤検知することなく、外被の厚みを測定することができる。したがって、外被の厚さの異常を正確に検知することができる。
【0060】
本実施形態では、ケーブルコア101の断面における中心線に対し、複数の抗張力体Tは線対称に配置されており、複数のセンサ90は非線対称に配置されている。複数のセンサ90のうち、少なくとも1つのセンサ90(たとえば第一センサ90A)の周方向の位置を、抗張力体Tの周方向の位置と異なるように配置しやすいため、当該一つのセンサ90(第一センサ90A)が抗張力体Tを誤検知することを低減させることができる。よって、外被の厚さの異常を検知することができる。
【0061】
複数のセンサ90の数は、複数の抗張力体Tの数と異なっている。このため、複数のセンサ90の間隔が抗張力体Tの全ての間隔に対して異なるように、複数のセンサ90を配置しやすい。したがって、複数のセンサ90が抗張力体Tを誤検知せずに、外被の厚みを測定することができる。
【0062】
複数のセンサ90の数は、複数の抗張力体Tの数よりも少ない。センサ90のコストを低減できるため、比較的低コストで、外被の厚さの異常を検知することができる。
【0063】
本実施形態では、四つの抗張力体Tが等間隔で配置される。すなわち、中心軸Oと、隣り合う二つの抗張力体Tの成す角度がすべて90度である。一方、中心軸Oと、第一センサ90Aおよび第二センサ90Bとが成す角度φ2は、鋭角である。このため、第一センサ90Aおよび第二センサ90Bの少なくとも一方は抗張力体Tを誤検知せず、外被の厚みを測定することができる。同様にして、中心軸Oと、第一センサ90Aおよび第三センサ90Cとが成す角度φ3が、鈍角である。このため、第一センサ90Aおよび第三センサ90Cの少なくとも一方は抗張力体Tを誤検知せず、外被の厚みを測定することができる。
【0064】
(光ファイバケーブルの製造装置の変形例1)
製造装置1は、サイジングダイス43を有してもよい。図3は、変形例1に係る光ファイバケーブル102の製造装置1Aを例示する概略構成図である。図3に示す構成のうち、図1に示した構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図3に示すように、製造装置1Aの第1の水槽40Aは、光ファイバケーブル102のサイジングのために設けられたサイジング槽である。図3に示すように、第1の水槽40Aは、冷却部41と、入線口42と、サイジングダイス43と、排気管44と、真空ポンプ45と、を備えている。
【0066】
図3の例では、冷却部41は、入線口42の上流側に設けられている。冷却部41は、入線口42の上流側ではなく、入線口42に設けられてもよい。冷却部41には、例えばシャワー孔(不図示)や、徐冷水槽(不図示)が設けられている。シャワー孔は、クロスヘッド31で被覆された溶融樹脂を予備冷却するための水等を、サイジングダイス43に入線させる前に、溶融樹脂へ向けて噴出させるものである。徐冷水槽は、光ファイバケーブル102の進行方向における長さが比較的短い水槽を有しており、光ファイバケーブル102を、サイジングダイス43に入線させる前に、水槽内に通過させるものである。押出機30により被覆された溶融樹脂の粘性抵抗は、冷却前では比較的高いため、光ファイバケーブル102が入線口42やサイジングダイス43に入線される際に、溶融樹脂の形状が乱れたり、溶融樹脂がケーブルコア101の外周から剥がれたりして、ケーブルの外観を損なってしまうことがある。しかしながら、シャワー孔や徐冷水槽の水によって溶融樹脂を予備的にある程度固めることで、このような形状の乱れを低減することができる。
【0067】
排気管44は、第1の水槽40A内の空気を外部へと導く管である。真空ポンプ45は、排気管44上に設けられている。真空ポンプ45は、排気管44を通して第1の水槽40A内の気体を第1の水槽40Aの外部へと排出し、第1の水槽40A内を陰圧にする。
【0068】
入線口42は、第1の水槽40Aへの入口であり、サイジングダイス43への入口でもある。クロスヘッド31において溶融樹脂が被覆された光ファイバケーブル102は、入線口42から第1の水槽40Aの内部に配置されたサイジングダイス43へと入線する。
【0069】
サイジングダイス43は、光ファイバケーブル102を所望の形状および大きさにサイジングするためのダイスである。本例において、サイジングダイス43は円筒状であり、内周の形状は真円状である。サイジングダイス43の内径は、光ファイバケーブル102に所望する外径と実質的に等しい。
【0070】
サイジングダイス43は、陰圧にされた第1の水槽40A内に配置されているため、サイジングダイス43の内側の領域は陰圧である。サイジングダイス43には、複数の孔(不図示)が設けられている。複数の孔は、例えば、サイジングダイス43の周方向および軸方向に沿って所定の間隔で設けられている。複数の孔を設けることによって、サイジングダイス43内を光ファイバケーブル102が通過している際においても、サイジングダイス43の内側の領域を第1の水槽40A内と同じ圧力に保ちやすくなる。その後、光ファイバケーブル102は、第1の水槽40Aから第2の水槽50へ送られ、溶融樹脂はさらに冷却される。
【0071】
(光ファイバケーブルの製造方法の変形例1)
製造装置1Aを用いた、光ファイバケーブル102の製造方法においては、外被形成工程は、予備冷却工程と、入線工程と、サイジング工程と、冷却工程と、を含む。
【0072】
予備冷却工程は、光ファイバケーブル102がサイジングダイス43に入線する前に、冷却部41によって光ファイバケーブル102の溶融樹脂を予備冷却する工程である。本例の予備冷却工程では、例えば徐冷水槽や、シャワー孔からの水で光ファイバケーブル102の溶融樹脂が冷却される。入線工程は、予備冷却工程の後に、溶融樹脂が被覆された光ファイバケーブル102を入線口42へと導いてサイジングダイス43に入線させる工程である。
【0073】
サイジング工程は、サイジングダイス43内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、該領域に光ファイバケーブル102を通過させる工程である。本例では、真空ポンプ45によって陰圧にした第1の水槽40A内にサイジングダイス43を配置しているため、サイジングダイス43内の全領域が陰圧になっている。サイジングダイス43内の圧力は、例えば、-60kPa以上-5kPa以下にすることが好ましい。なお、サイジングダイス43内の圧力は、第1の水槽40A内の圧力と等しいため、第1の水槽40A内の圧力を制御することにより、サイジングダイス43内の圧力も制御できる。
【0074】
第1の水槽40A内の温度は、例えば、15℃以上50℃以下にすることが好ましい。サイジングダイス43内の温度は、第1の水槽40A内の温度と等しくなる。また、被覆工程において溶融樹脂が被覆された後、陰圧の領域内に光ファイバケーブル102が入るまでの時間は、0秒より大きく10秒以下であることが好ましい。この時間は、例えば、クロスヘッド31と第1の水槽40Aのとの間の距離や、光ファイバケーブル102の線速を調整することによって制御できる。
【0075】
サイジングダイス43内が陰圧であるため、光ファイバケーブル102内の圧力は、光ファイバケーブル102の周囲の圧力よりも高くなっている。そのため、光ファイバケーブル102がサイジングダイス43内を通過する際、光ファイバケーブル102内の空気は膨張し、外被は径方向外側へと押し広げられ、外被がサイジングダイス43の内壁と接するようになる。よって、光ファイバケーブル102の形状は、サイジングダイス43内に入線する前に歪な円状であったとしても、サイジング工程を経ることによって、サイジングダイス43の内周によって規定される真円状となる。また、光ファイバケーブル102の外径は、サイジングダイス43の内径と略等しくなる。
【0076】
冷却工程は、陰圧となっているサイジングダイス43内の少なくとも一部の領域を通過した光ファイバケーブル102の樹脂を冷却する工程である。本例においては、陰圧になっているサイジングダイス43の全領域を通過した光ファイバケーブル102の樹脂は、第1の水槽40Aおよび第2の水槽50を通過することにより、冷却される。
【0077】
ここで、ケーブルコア101が角形状や楕円形状の場合、その上に形成される外被も同様の形状となって、光ファイバケーブル102の外形が丸い形状とはならないことがある。しかしながら本例によれば、外被形成工程が、光ファイバケーブル102をサイジングダイス43に入線させる入線工程と、サイジングダイス43内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、当該領域に光ファイバケーブル102を通過させるサイジング工程と、当該領域を通過した光ファイバケーブルの樹脂を冷却する冷却工程と、を含む。このため、光ファイバケーブル102の外形を丸い形状とすることができる。
【0078】
また、押出機30における溶融樹脂内の被覆量の変動により、厚みが不均一な状態のまま光ファイバケーブル102がサイジングダイス43内を通過しても、光ファイバケーブル102の外形は丸い形状となるが、外被の厚みは長手方向で不均一となることがある。外被の厚みの不均一性は、曲げに弱い箇所が局所的に生じるため、空気圧送などで光ファイバケーブルを布設する場合、光ファイバケーブルが座屈することがある。しかしながら本例によれば、光ファイバケーブルの外被の厚さの異常をより正確に検知することが可能となるため、サイジングダイスを用いて外被厚が長手方向で不均一になった場合でも、外被の厚みの不均一性などの異常を検知することができる。
【0079】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0080】
例えば、押出機30のクロスヘッド31は、引き落としにより溶融樹脂を押出しているが、押出方法はこれに限定されない。クロスヘッド31内でケーブルコア101に溶融樹脂を接触させてから押し出す充実押出方式により、溶融樹脂は押し出されてもよい。また製造装置1、1Aは、冷却設備の上流側に、外径を測定する他の光学センサをさらに備え、冷却前の光ファイバケーブルの外径を測定してもよい。
【0081】
上記説明では、複数の抗張力体Tの数は四つであったが、複数の抗張力体Tの数は四つに限定されない。複数の抗張力体Tの数は、たとえば二、八、十六でもよい。いずれの場合も、複数の抗張力体Tは、中心軸Oを基準として、ケーブルコア101の断面における中心線に対し、線対称に配置されており、等間隔で配置されうる。
【0082】
上記説明では、複数のセンサ90の数は三つであったが、複数のセンサ90の数は三つに限定されない。複数のセンサ90の数は、複数の抗張力体Tの数よりも多くてもよい。複数のセンサ90の数は、たとえば五つでもよい。この場合、少なくとも1つのセンサ90は、抗張力体Tを誤検知せず、外被の厚みを確実に測定することができる。
【0083】
複数のセンサ90の数は、複数の抗張力体Tの数と同じであってもよい。たとえば、複数の抗張力体Tの数は四つであり、複数のセンサ90の数も四つでもよい。この場合においても、ケーブルコア101の中心軸Oを基準として、ケーブルコア101の周方向において、複数のセンサ90の少なくとも一つのセンサの周方向の位置が常に、抗張力体Tの周方向の位置とは異なっていればよい。たとえば、ケーブルコア101の断面における中心線に対し、複数のセンサ90が非線対称に配置されてもよい。中心軸Oと、隣り合う二つのセンサ90とが成す、少なくとも1つの角度が、鋭角または鈍角であってもよい。五つのセンサ90を等間隔に配置した場合の五か所の配置位置のうち、四か所の配置位置に四つのセンサ90を配置してもよい。
【0084】
ケーブルコア101の中心軸Oに直交する断面でみた状態において、複数のセンサ90の間隔のうち、少なくとも一つの間隔が11.25度よりも狭くてもよい。複数の抗張力体Tは、ケーブルコア101を中心に多い場合には十六等配されることがある。この場合、複数の抗張力体Tの間隔は22.5度である。ケーブルコア101の中心軸Oに直交する断面でみた状態において、複数のセンサ90の間隔のうち、少なくとも一つの間隔が11.25度よりも狭い場合、少なくとも一つのセンサは抗張力体Tを誤検知せず、外被の厚みを測定することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,1A 製造装置
10 供給ドラム
20 繰出機
30 押出機
31 クロスヘッド
40、40A 第1の水槽
41 冷却部
42 入線口
43 サイジングダイス
44 排気管
45 真空ポンプ
50 第2の水槽
60 引取機
70 巻取ドラム
90 センサ
90A 第一センサ
90B 第二センサ
90C 第三センサ
101 ケーブルコア
102 光ファイバケーブル
T 抗張力体
TA 第一抗張力体
TB 第二抗張力体
TC 第三抗張力体
TD 第四抗張力体
L 直線
図1
図2
図3