(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172356
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シリンジ用の補助具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61M5/315 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090012
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】390029344
【氏名又は名称】株式会社北浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】辻村 裕次
(72)【発明者】
【氏名】有馬 二朗
(72)【発明者】
【氏名】上田 英司
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC04
4C066DD08
4C066EE14
4C066GG15
4C066HH12
(57)【要約】
【課題】フランジの厚みや径が互いに異なる複数種類のシリンジに対応可能であって、製造コストの上昇および部品管理の煩雑さを抑制することができるシリンジ用の補助具を提供する。
【解決手段】シリンジ用の補助具1は、上層部10と下層部11と中間部12とが一体形成されている。上層部10は、フランジの上側の面を覆う下面10bを有する。下層部11は、フランジの下側の面を覆う上面11aを有する。中間部12は、上層部10と下層部11とを互いにZ方向に離間した状態で接続する。上層部10と下層部11との間には、フランジ収容空間14が形成されている。下層部11の上面11aは、上凸の円弧形状で形成された凸円弧部分11cを有する。上層部10の下面10bと下層部11の上面11aとは、フランジをその厚み方向に弾性的に挟持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジにおけるプランジャーのフランジに側方から装着可能な補助具であって、
前記フランジにおける前記プランジャーの本体軸部が接続された側とは反対側の第1主面を覆う第1層部と、
前記フランジにおける前記第1主面とは反対側の第2主面を覆うとともに、前記プランジャーの前記本体軸部が挿通する切欠き部を有する第2層部と、
前記第2層部の前記切欠き部の開口部とは反対側の部分において、前記第1層部を前記第2層部に対して離間した状態で接続することにより、前記第1層部と前記第2層部との間に、前記切欠き部の前記開口部側に開放されたフランジ挿入口を有するとともに前記フランジ挿入口を通じて前記フランジを収容することができるフランジ収容空間を形成する中間部と、
を備え、
前記第1層部における前記フランジ収容空間に面する第1内面、および、前記第2層部における前記フランジ収容空間に面する第2内面の内の一方の内面は、前記フランジの挿抜方向において、前記フランジ収容空間の側に向けて凸の弧状形状で形成された凸弧部分を少なくとも一部に有し、
前記凸弧部分と、前記第1内面および前記第2内面の内の他方の内面とは、前記フランジを厚み方向に弾性的に挟持する、
シリンジ用の補助具。
【請求項2】
前記他方の内面は、前記フランジの挿抜方向において、前記一方の内面における凸弧部分に対応する部分に、前記フランジ収容空間の側とは反対側に向けて凹む弧状形状で形成された凹弧部分を有する、
請求項1に記載のシリンジ用の補助具。
【請求項3】
前記一方の内面は、前記フランジ挿入口側の端部において、前記フランジの挿抜方向における前記フランジ収容空間の内側から前記フランジ挿入口側へと行くのに従って前記第1内面と前記第2内面との間隔が漸次大きくなるようにテーパー形状で形成されたテーパー部分を有する、
請求項1に記載のシリンジ用の補助具。
【請求項4】
前記凸弧部分は、前記フランジの挿抜方向において、前記一方の内面の内の前記テーパー部分を除く領域の全体に亘って円弧状に形成され、
前記フランジの挿抜方向における前記領域の中点から前記第1層部と前記第2層部との対向方向であるフランジ中心軸方向に仮想線を引く場合に、
前記凸弧部分における円弧の中心は、前記仮想線上に配置されている、
請求項3に記載のシリンジ用の補助具。
【請求項5】
前記中間部は、前記フランジの挿抜方向における前記フランジ収容空間と外方とを連通するとともに、前記フランジの一部の挿通を許す窓部を有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載のシリンジ用の補助具。
【請求項6】
前記第1層部における前記第1内面とは反対側の第1外面は、前記フランジ収容空間とは反対側に向けて凸の曲面で形成されている、
請求項1から請求項4の何れかに記載のシリンジ用の補助具。
【請求項7】
前記第1層部と前記第2層部との離間方向の一方側から見た場合に、角丸長方形または長円形の外観形状を有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載のシリンジ用の補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ用の補助具に関し、特にシリンジにおけるプランジャーのフランジに側方から装着可能なシリンジ用の補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジは、医療分野をはじめとする広範な分野で使用されている。シリンジを用いて吸入・押出を行う対象である流体としては、粘度の低い流体だけでなく、粘度の高い流体の場合もある。このうち、粘度の高い流体を吸入・押出しようとする場合には、ユーザは大きな力でプランジャーを押し引きする必要がある。
【0003】
ここで、粘度の高い流体(例えば、経管栄養注入で用いられるミキサー食など)をシリンジに対して吸入・押出を行う場合には、ユーザはプランジャーの先端に設けられたフランジに対して手指や掌で強い力で操作することが必要となる。具体的には、粘度の高い流体を吸入しようとする場合には、シリンダやチューブなどの流路抵抗に抗して強い力でフランジを引き、シリンダ内の流体を押出する場合には、シリンダやチューブなどの流路抵抗に抗して強い力でフランジを押圧しなければならない。このような操作を繰り返し行う場合には、ユーザが手指や掌に痛みを感じることとなってしまう。
【0004】
特許文献1には、エラストマーを用いて形成された補助具(プランジャヘッド)が開示されている。特許文献1に開示の補助具は、平板形状の頂壁と、頂壁に対向配置され、平面視でU字形状を有する底壁と、頂壁と底壁とを繋ぐ側壁および端壁と、が一体形成されている。頂壁における底壁側の下面は、平面で形成されている。底壁における頂壁側の上面は、端壁に近い部分が他の部分よりも頂壁側に隆起するように設けられた隆起部を有する。また、底壁における上面は、隆起部よりも端壁から離れた箇所に頂壁に向けて突出するように形成された係止突起を有する。
【0005】
特許文献1に開示の補助具では、隆起部の上面が頂壁の下面と平行に形成されている。当該補助具では、端壁とは反対側の挿入口から頂壁と底壁との間の隙間に対してフランジが挿入されて行き、頂壁の下面と隆起部の上面との間にフランジが差し込まることによってフランジに装着される。なお、フランジへの補助具の装着は、フランジに形成された係止突条が底壁の係止突起を乗り越えることで完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シリンジには、プランジャーにおけるフランジの厚みや径が互いに異なる複数の種類が存在する。また、シリンジのフランジについては、高い寸法精度では形成されておらず、同一種類のシリンジであっても厚みにバラツキがある。本願の発明者等は、フランジの厚みに関して1mm程度の差異があることを究明した。
【0008】
特許文献1に開示の補助具を使用しようとするユーザは、フランジの厚みや径に応じて複数種類の補助具を準備しておく必要があり、製造コストや管理の面などで問題がある。即ち、特許文献1に開示の補助具では、頂壁の下面と隆起部の上面との隙間を最も厚みの薄いフランジに合わせた場合、厚みの厚いフランジに装着するのに頂壁の下面と隆起部の上面との隙間を押し広げるための強い力が必要となり、実質的に装着することが困難となる場合も生じ得る。逆に、頂壁の下面と隆起部の上面との隙間を最も厚みの厚いフランジに合わせた場合、厚みが薄いフランジに装着されると頂壁の下面や隆起部の上面とフランジとの間に隙間が生じてガタつきが生じてしまい、使用し難いという問題がある。このため、特許文献1に開示の補助具を採用しようとするユーザは、頂壁の下面と隆起部の上面との間隔が互いに異なる複数種類の補助具を準備しておく必要がある。よって、特許文献1に開示の補助具では、複数種類の製造が必要となるために製造コストの上昇を招くとともに、使用の現場などで複数種類を管理する必要が生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、フランジの厚みや径が互いに異なる複数種類のシリンジに対応可能であって、製造コストの上昇および部品管理の煩雑さを抑制することができるシリンジ用の補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るシリンジ用の補助具は、シリンジにおけるプランジャーのフランジに側方から装着可能な補助具であって、第1層部と、第2層部と、中間部と、を備える。前記第1層部は、前記フランジにおける前記プランジャーの本体軸部が接続された側とは反対側の第1主面を覆う。前記第2層部は、前記フランジにおける前記第1主面とは反対側の第2主面を覆うとともに、前記プランジャーの前記本体軸部が挿通する切欠き部を有する。前記中間部は、前記フランジの挿抜方向における前記第2層部の前記切欠き部の開口部とは反対側の部分において、前記第1層部を前記第2層部に対して離間した状態で接続することにより、前記第1層部と前記第2層部との間に、前記切欠き部の前記開口部側に開放されたフランジ挿入口を有するとともに前記フランジ挿入口を通じて前記フランジを収容することができるフランジ収容空間を形成する。
【0011】
本態様に係るシリンジ用の補助具において、前記第1層部における前記フランジ収容空間に面する第1内面、および、前記第2層部における前記フランジ収容空間に面する第2内面の内の一方の内面は、前記フランジの挿抜方向において、前記フランジ収容空間の側に向けて凸の弧状形状で形成された凸弧部分を少なくとも一部に有する。
【0012】
また、本態様に係るシリンジ用の補助具において、前記凸弧部分と、前記第1内面および前記第2内面の内の他方の内面とは、前記フランジを厚み方向に弾性的に挟持する。
【0013】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、上記一方の内面が凸弧部分を有するように形成されているとともに、当該凸弧部分の一部と上記他方の内面とで弾性的にフランジを厚み方向に挟持する構成を有するので、フランジ収容空間に対してフランジを挿入する際の力で上記凸弧部分が法線方向内側に向けて弾性変形される。即ち、凸弧部分においては上記一方の内面がフランジの挿入方向に対して傾斜した面となっているため、フランジを挿入する際の力(挿入方向へ付加する力)の分力によって凸弧部分をその法線方向内側(厚み方向の内側)に向けて押圧することができる。よって、上記態様に係るシリンジ用の補助具では、フランジの厚みや径が大きい場合においても、フランジに装着が可能である。
【0014】
また、上記態様に係るシリンジ用の補助具では、上記一方の内面における凸弧部分と上記他方の内面とでフランジを厚み方向に弾性的に挟持する構成を有するので、フランジの厚みや径が小さい場合においても、ガタつきを生じることなくフランジに装着が可能である。
【0015】
上記態様に係るシリンジ用の補助具において、前記他方の内面は、前記フランジの挿抜方向において、前記一方の内面における凸弧部分に対応する部分に、前記フランジ収容空間の側とは反対側に向けて凹む弧状形状で形成された凹弧部分を有してもよい。
【0016】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、上記他方の内面が、フランジの挿抜方向において、上記のように凸弧部分に対応する部分に、凹弧部分を有するので、上記他方の内面がフランジの挿抜方向に直線状となるように形成されている場合(平面で形成されている場合)に比べてフランジとの接触面積を小さくすることができ、フランジを挿入する際の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0017】
また、上記他方の内面が凹弧部分を有するようにすることにより、フランジとの接触面積を小さくすることができるため、他方の内面における凹弧部分とフランジとの接触抵抗を小さく抑えてスムーズな装着が可能である。
【0018】
上記態様に係るシリンジ用の補助具において、前記一方の内面は、前記フランジ挿入口側の端部において、前記フランジの挿抜方向における前記フランジ収容空間の内側から前記フランジ挿入口側へと行くのに従って前記第1内面と前記第2内面との間隔が漸次大きくなるようにテーパー形状で形成されたテーパー部分を有してもよい。
【0019】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、フランジの挿抜方向におけるフランジの挿入口側の端部において、上記一方の内面はテーパー部分を有することにより、当該部分で第1内面と第2内面との間隔が漸次大きくなる。このため、フランジ挿入口からのフランジの挿入を容易に行うことが可能となる。
【0020】
上記態様に係るシリンジ用の補助具において、前記凸弧部分は、前記フランジの挿抜方向において、前記一方の内面の内の前記テーパー部分を除く領域の全体に亘って円弧状に形成されてもよい。この場合において、前記フランジの挿抜方向における前記領域の中点から前記第1層部と前記第2層部との対向方向であるフランジ軸芯方向に仮想線を引く場合に、前記凸弧部分における円弧の中心は、前記仮想線上に配置されていてもよい。
【0021】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、フランジ収容空間にフランジを収容した場合に、フランジの挿抜方向における凸弧部分の中央部分(中点位置)で凸弧部分と上記他方の内面とでフランジが支持されることとなる。このため、上記態様に係るシリンジ用の補助具では、フランジに装着した際に、当該フランジをバランスよく支持することができる。
【0022】
上記態様に係るシリンジ用の補助具において、前記中間部は、前記フランジの挿抜方向における前記フランジ収容空間と外方とを連通するとともに、前記フランジの一部の挿通を許す窓部を有してもよい。
【0023】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、中間部が窓部を有するように形成されているので、大径のフランジに装着する場合においても、フランジの一部が窓部から外部にはみ出すようにすることで、プランジャーを押圧し易い位置にフランジに装着することができる。
【0024】
上記態様に係るシリンジ用の補助具において、前記第1層部における前記第1内面とは反対側の第1外面は、前記フランジ収容空間とは反対側に向けて凸の曲面で形成されてもよい。
【0025】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、第1層部の第1外面が上記のように凸の曲面で形成されているので、フランジに装着した補助具の第1外面に手指や掌を当接させて押圧力を加える場合にも手指に対して隙間が生じ難くすることができる。よって、上記態様に係るシリンジ用の補助具では、フランジに装着した状態でユーザが押圧する際に手指や掌に局所的な反力が作用するのを抑制することができ、ユーザが手指や掌に痛みを感じるのを抑制することができる。
【0026】
上記態様に係るシリンジ用の補助具において、前記第1層部と前記第2層部との離間方向の一方側から見た場合に、角丸長方形または長円形の外観形状を有してもよい。
【0027】
上記態様に係るシリンジ用の補助具では、上記一方側から見た場合に角丸長方形または長円形(楕円形を含む。)の外観形状を有するので、当該補助具を装着したフランジをユーザが押し引きし易い。即ち、手の幅方向に補助具の長辺方向を合わせて把持することで、押圧する際にユーザは掌の痛みを感じ難いとともに、フランジを押圧し易い。また、吸入時にフランジを引っ張ろうとする際には、補助具が上記のような外観形状を有することにより、ユーザは第2層部の外面(第2内面とは反対側の主面)に手指をかけて操作を行うことで手指に痛みを感じ難いとともに、フランジを引っ張りやすい。
【発明の効果】
【0028】
上記の各態様に係るシリンジ用の補助具では、フランジの厚みや径が互いに異なる複数種類のシリンジに対応可能であって、製造コストの上昇および部品管理の煩雑さを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る補助具と、当該補助具の装着対象となるシリンジとを示す模式図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を示す断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線断面を示す断面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線断面を示す断面図である。
【
図6】補助具とシリンジのフランジとの位置関係を、補助具の下層部を省略した状態で下側から見た図である。
【
図7】(a)はフランジ収容空間に厚みT1のフランジを収容した状態を示す断面図であり、(b)はフランジ収容空間に厚みT2のフランジを収容した状態を示す断面図であり、(c)はフランジ収容空間に大径のフランジを収容した状態を示す断面図である。
【
図8】フランジに補助具を装着した状態でプランジャーを押圧する状態を示す模式図である。
【
図9】(a)は変形例1に係る補助具を示す断面図であり、(b)は変形例2に係る補助具を示す断面図である。
【
図10】(a)は変形例3に係る補助具を前側から見た図であり、(b)は変形例4に係る補助具を前側から見た図である。
【
図11】(a)は変形例5に係る補助具の一部を示す図であり、(b)は変形例6に係る補助具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0031】
1.シリンジ500およびシリンジ用の補助具1
シリンジ500と、シリンジ500におけるプランジャー503のフランジ502に装着可能なシリンジ用の補助具(以下では、単に補助具を記載する。)と、について、
図1を用いて説明する。
【0032】
本実施形態のシリンジ500は、一例として経管栄養注入用のシリンジである。
図1に示すように、シリンジ500は、筒状のシリンダ504と、シリンダ504の一端に設けられた筒先505と、シリンダ504に対して挿抜可能なプランジャー503と、を備える。プランジャー503は、シリンダ504内に挿入される本体軸部501と、本体軸部501の一端部に設けられたフランジ502と、を有する。
【0033】
フランジ502は、径が2Dで、厚みがTで形成された円板状の形状を有する。フランジ502は、その中心軸Ax502が、プランジャー503の中心軸Ax503に一致するように形成されている。
【0034】
ここで、フランジ502における上面502aは、本体軸部501が接続された側とは反対側の主面であって、第1主面に該当する。フランジ502の下面502bは、本体軸部501が接続された側の主面であって、第2主面に該当する。フランジ502の中心軸Ax502は、径中心を通り本体軸部501の長手方向に沿って延びる軸である。
【0035】
なお、本実施形態において、補助具1の装着対象であるシリンジ500は、経管栄養注入用に使用するシリンジである。このため、経管栄養注入時においては、シリンダ504内に高粘度の流体である高濃度自然流動食(所謂、ミキサー食)が吸入され、プランジャー503を押し下げる(押圧する)ことで高濃度自然流動食がシリンダ504からチューブ等を介して胃瘻へと押し出される。
【0036】
補助具1は、シリンジ500におけるプランジャー503のフランジ502に装着可能である。補助具1は、シリンジ500のフランジ502操作面(上面502a)よりも大きい上面を有し、補助具1をフランジ502に装着してユーザが操作する場合において、ユーザの手指や掌に作用する圧力を軽減するものである。補助具1は、弾性材料(一例として、ポリプロピレン)から形成されており、上層部(第1層部)10と、下層部(第2層部)11と、中間部12と、が一体形成されてなる。補助具1は、上層部10の主面を平面視する場合に、角丸の長方形状を有する。ただし、平面視における補助具1の形状については、円形状や長円形状(楕円形状を含む)とすることもできる。
【0037】
上層部10は、板状に形成された部位であって、補助具1をフランジ502に装着した状態において、フランジ502の上面(本体軸部501が接続されたのとは反対側の主面)502aを覆う。下層部11は、板状に形成された部位であって、補助具1をフランジ502に装着した状態において、フランジ502の下面(厚み方向における上面502aとは反対側の主面)502bを覆うとともに、プランジャー503の本体軸部501が挿通する切欠き部13を有する。
【0038】
中間部12は、上層部10と下層部11とを互いの厚み方向に離間した状態で接続することにより、上層部10と下層部11との間にフランジ502を収容可能なフランジ収容空間14を形成する。なお、中間部12は、上層部10と下層部11との各端部であって、フランジ502の挿抜方向における下層部11の切欠き部13の開口部13aとは反対側の部分をそれぞれ接続する。即ち、中間部12は、上層部10および下層部11の各後端縁部同士を上下方向に接続する。
【0039】
2.補助具1の詳細形状
補助具1の詳細形状について、
図2から
図6を用いて説明する。なお、以降で用いる図において、「+X」はフランジ収容空間14へのフランジ502の挿入方向奥側(後方側)を、「-X」はその逆の前方側を、「+Y」は挿入方向奥側から挿入方向入口側を向いた場合の一方側(右方側)を、「-Y」はその逆の左方側を、「+Z」は上層部10と下層部11との対向方向の一方側(上方側)を、「-Z」はその逆の下方側を、それぞれ示す。
【0040】
図2および
図3に示すように、上層部10は、X方向およびY方向に延びる板状の部位である。下層部11は、上層部10の-Z側において、上層部10に沿ってX方向およびY方向に延びる板状の部位である。即ち、上層部10と下層部11とは、互いに対向して配置されている。中間部12は、上層部10における+X側の端部と下層部11における+X側の端部とを接続する。
【0041】
図2および
図3に示すように、上層部10における厚み方向(Z方向)の一方の主面である上面(第1外面)10aは、上方に向けて突出する球面状(三次元曲面形状)に形成され、ユーザの掌になじむように(フィットするように)形成されている。具体的に、上層部10の上面10aは、X方向において、-Z側に中心が配置された曲率半径r1で弧を描き、Y方向において、-Z側に中心が配置された曲率半径r5で弧を描くように形成されている。即ち、上層部10の上面10aは、上層部10の上面10aは、X方向およびY方向の各中程部分が+Z向きに凸の曲面(可展面でない三次元曲面)で形成されている。
【0042】
なお、上層部10の上面10aについては、楕円球面の一部である曲面で構成されていてもよい。
【0043】
上層部10における厚み方向(Z方向)のもう一方の主面である下面(第1内面)10bは、X方向に沿って+Z方向に凹むように湾曲する曲面に形成されている。具体的に、上層部10の下面10bは、X方向およびY方向に延びる面であって、X方向において、-Z側に中心が配置された曲率半径r2で弧(円弧)を描くように形成された凹円弧部分10cを有する。上層部10における下面10bの凹円弧部分10cは、X方向の各箇所において、Y方向に直線状に延びるように形成されている。即ち、上層部10における下面10bの凹円弧部分10cは、可展面を以って形成されている。
【0044】
なお、本実施形態に係る補助具1では、上層部10における下面10bの凹円弧部分10cがY方向に直線状の延びるように形成されているので、例えば、射出成形で製造する際に、成形型を簡易なものとすることができる。即ち、複雑な成形型を採用しなくても、容易に型抜きを可能とすることができる。
【0045】
また、上層部10の下面10bは、凹円弧部分10cに対して当該凹円弧部分10cにおけるX方向の一方の端(フランジ挿入口14a側の端に連続し、フランジ収容空間14の-X方向端に設けられたフランジ挿入口(-X側の外方に向けて開口された口部)14aの近傍部分に面する下面テーパー部分10dをさらに有する。下面テーパー部分10dは、凹円弧部分10cとの接続箇所であるポイントP1からフランジ挿入口14a側の端であるポイントP3へと行くのに従って、ポイントP1を基準に+Z側へと高さ位置が漸次高くなるように形成されている。
【0046】
図2および
図3に示すように、下層部11における厚み方向(Z方向)の一方の主面である上面(第2内面)11aは、上層部10における下面10bと同様に、X方向に沿って+Z方向に突出するように湾曲する曲面に形成されている。具体的に、下層部11の上面11aは、X方向およびY方向に延びる面であって、X方向において、-Z側に中心が配置された曲率半径r3で弧(円弧)を描くように形成された凸円弧部分11cを有する。下層部11における上面11aの凸円弧部分11cは、X方向の各箇所において、Y方向に直線状に延びるように形成されている。即ち、下層部11における上面11aの凸円弧部分11cは、可展面を以って形成されている。
【0047】
下層部11における上面11bの凸円弧部分10cについてもY方向に直線状の延びるように形成されているので、例えば、射出成形で製造する際に、成形型を簡易なものとすることができる。即ち、複雑な成形型を採用しなくても、容易に型抜きを可能とすることができる。
【0048】
なお、下層部11における上面11aの凸円弧部分11cと、上層部10における下面10bの凹円弧部分10cとは、X方向において、互いの間隔が略同じとなるように形成されている。
【0049】
ここで、上層部10における凹円弧部分10cと下層部11における凸円弧部分11cとのZ方向での間隔G1は、フランジ502の厚みTの内で想定される最大値と略同じに設定されている。また、X方向における凹円弧部分10cの端部(ポイントP1,P2)と凸円弧部分11cの中央部分(ポイントP6)とのZ方向での間隔G2は、フランジ502の厚みTの内で想定される最小値と略同じに設定されている。これにより、想定される範囲の厚みTを有するフランジ502に補助具1が装着された場合に、フランジ収容空間14内でフランジ502を確実に支持することができる。
【0050】
また、下層部11の上面11aは、凸円弧部分11cに対して当該凸円弧部分11cにおけるX方向の一方の端(フランジ挿入口14a側の端)で連続し、フランジ挿入口14aの近傍部分に面する上面テーパー部分11dを有する。上面テーパー部分11dは、凸円弧部分11cとの接続箇所であるポイントP4からフランジ挿入口14a側の端であるポイントP5へと行くのに従って、ポイントP4を基準に-Z側へと高さ位置が漸次低くなるように形成されている。即ち、補助具1のフランジ収容空間14は、フランジ挿入口14a側の端部において、下面テーパー部分10dと上面テーパー部分11dとが形成された部分で、X方向におけるフランジ収納空間14の内側からフランジ挿入口14aへと行くのに従って、上層部10の下面10bと下層部11の上面11aとの間隔が漸次大きくなる。
【0051】
下層部11における厚み方向(Z方向)のもう一方の主面である下面(外面)11bは、下方(-Z側)に突出する球面状(三次元曲面形状)に形成され、ユーザの手指になじむように(フィットするように)形成されている。具体的に、下層部11の下面11bは、X方向およびY方向に延びる面であって、X方向において+Z側に中心が配置された曲率半径r4で弧を描き、Y方向において+Z側に中心が配置された曲率半径r6で弧を描くように形成されている。即ち、下層部11の下面11bは、X方向およびY方向の各中程部分が-Z向きに凸の曲面(可展面でない三次元曲面)で形成されている。なお、本実施形態では、曲率半径r4,r6は曲率半径r1,r5よりも大きく設定されている。
【0052】
次に、
図3および
図4に示すように、中間部12は、上層部10の後端部から下層部11の後端部までZ方向に延びる壁状部として設けられている。本実施形態では、上層部10および下層部11後端部の全域に亘って形成され、耐久性をもたせるものとなっている。なお、中間部12は、上層部10および下層部11の後端部の一部範囲に形成されていてもよいが、
図3に示す正面視において、切欠き部13を中心に対称に形成されていることが好ましい。
【0053】
また、中間部12は、フランジ収容空間14と外方とを繋ぐように設けられた窓部15を有する。
図5に示すように、窓部15は、相対的に大径のフランジ502に対して補助具1が装着される場合に、フランジ502の一部が外部にはみ出すのを許容するために設けられている。
【0054】
ここで、本実施形態では、窓部15はフランジ収容空間14の高さ、即ち、フランジ収容空間14におけるZ方向の高さ寸法と同等の高さ寸法を有し、
図3に示すように、切欠き部13よりも大きい幅寸法を有するように形成されている。これにより、仮に大径のフランジ502を有するシリンジ500が対象となる場合においても、X方向において、プランジャー503の中心軸Ax503を補助具1の中心線CLxと略合致させることができる。これより、シリンジ500に対してバランスよく補助具1を装着することができ、ユーザがプランジャー503を押圧し易い。
【0055】
また、中間部12に窓部15を設けることにより、フランジ502の径が大きい場合にも、フランジ502が中間部12の内壁面に当たるのを回避することができ、プランジャー503をフランジ収容空間14の奥までしっかりと挿入することができる。また、中間部12に窓部15が設けられてなる構造を採用することにより、例えば、射出成形により製造する際の成形型の製作を容易なものとすることができる。
【0056】
なお、
図4に示すように、切欠き部13は、X方向における開口部13aとは反対側であって、中間部12の内面近傍の部分(奥端部)13bまで続くように形成されている。また、切欠き部13の奥端部13bは、
図1に示すように、X方向に沿って段階的に縮幅するように形成されている。これにより、フランジ502をフランジ収容空間14の奥へと挿入して行く際に、本体軸部501が切欠き部13に面する壁部で案内され、Y方向においてもフランジ502の中心軸Ax502(
図1を参照。)と補助具1の中心線CLxとを略合致させることができる。
【0057】
図5に示すように、補助具1を下側から見た場合に、切欠き部13は、入口部13c、中程部13d、および奥部13eを有する。入口部13cは、開口部13aから所定の領域に形成され、切欠き部13に臨む縁部11f同士の幅W
13が、開口部13a側(-X側)から奥側(+X側)に向けて漸次狭まって行くように形成されている。
【0058】
中程部13dは、入口部13cに連続し、幅W13が略一定となるように形成されている。奥部13eは、中程部13dに連続するとともに奥端部13bまで続くように形成され、幅W13が奥側に向けて漸次狭まって行くように形成されている。
【0059】
本実施形態に係る補助具1では、切欠き部13を
図5に示すような形状で形成することにより、本体軸部501の断面サイズの大小にかかわらず、プランジャー503をしっかりと保持することが可能であって、Y方向でのズレを防止することができる。
【0060】
また、切欠き部13が入口部13cを有するので、プランジャー503の本体軸部501に対する切欠き部13の位置を正確に合わせなくても、切欠き部13に対してプランジャー503の本体軸部501を進入させることができる。
【0061】
図5および
図6に示すように、フランジ502は、奥端部13bに対してプランジャー503の本体軸部501が当接するところまでフランジ収容空間14に対して挿入可能となっている。ただし、本体軸部501の断面サイズが大きい場合には、
図5で示した切欠き部13の中程部13dなどで縁部11fに本体軸部501が当接する場合もある。
【0062】
図5および
図6に示すように、本実施形態に係る補助具1は、Y方向の寸法W
YがX方向の寸法W
Xよりも長い角丸長方形の平面形状(Z方向の一方から見た場合の形状)を有する。ただし、上記のように長円形状(楕円形状)とすることもできる。
【0063】
3.補助具1における上層部10の下面10bおよび下層部11の上面11aの形状および配置
補助具1における上層部10の下面10bおよび下層部11の上面11aの形状および配置について、
図1、
図2、および
図7を用いて説明する。
【0064】
図1に示すように、シリンジ500におけるプランジャー503のフランジ502は、直径が2D(mm)、厚みがT(mm)である。本願発明者等が調査した結果、経管栄養注入用として用いられるシリンジ500では、直径2Dは27mm~34mmの範囲にあることが分かった。また、
図6に示すように、厚みTは、シリンジ500の種類や製造バラツキなどにより、厚いものでT1(mm)、薄いものでT2(mm)である。そして、調査の結果、経管栄養注入用として用いられるシリンジ500では、厚みT1が2.5mm、厚みT2が1.4mmであった。
【0065】
従って、本実施形態では、補助具1は、上記のようなフランジ502に対して適切に装着できるように形成されている。
【0066】
具体的に、本実施形態に係る補助具1は、X方向の外形寸法がフランジ502の直径2Dの最大値の0.8~1.5倍程度とされ、Y方向の外形寸法がフランジ502の直径2Dの最大値の1.5~2.5程度とされている。これは、補助具1における平面視での外径寸法をフランジ502の直径よりも大きく設定することで、プランジャー503を押し引きする場合に手指にかかる力の分散を図り、局所的な力の作用による手指の痛みを感じ難くさせるためである。
【0067】
次に、
図2に示すように、上層部10における下面10bの凹円弧部分10cは、X方向において、下面10bの内の下面テーパー部分10dを除く領域の全体に亘る部分(ポイントP1からポイントP2までの部分)に配設されている。ポイントP1とポイントP2とは、補助具1におけるX方向の中心線CLxに対して線対称の位置関係で配される。
【0068】
ここで、X方向におけるポイントP1とポイントP2との間の寸法2Lを、フランジ502の直径2Dの最大値と同じか、若干大きい値(例えば、2Dにおける最大値の1.1倍程度)と仮定する。
【0069】
また、
図2に示すように、上層部10の下面10bと下層部11の上面11aとの間隔G1は、X方向におけるポイントP1とポイントP2との間で略一様となるように仮定する。さらに、
図2および
図7に示すように、間隔G1を、フランジ502の厚みTの内での最大値であるT1と同じか、T1に対して1mm以内の余裕をもたせた値と仮定する。このように僅かな余裕をもつように仮定するのは、フランジ502に補助具1を装着し易くすることができるためである。
【0070】
次に、
図2に示すように、下層部11の上面11aにおける凸円弧部分11cの曲面を、補助具1におけるX方向の中心線CLx上に中心を有し、次式で表される曲率半径r3を以って形成することができる。
r3=(L
2+T2
2-T1
2)/(2(T1-T2)) ・・(1)
なお、上層部10の下面10bにおける凹円弧部分11cと、下層部11の上面11aにおける凸円弧部分11cとは、X方向において互いに対応した位置関係で、且つ、互いに同心円の関係で形成されている。ただし、製造誤差の関係を考慮して、必ずしも同心円とする必要はない。
【0071】
4.フランジ502への補助具1の装着
シリンジ500におけるフランジ502への補助具1の装着について、
図2および
図7を用いて説明する。
【0072】
図2に示すように、シリンジ500のフランジ502へ補助具1を装着する場合には、補助具1の側方(X方向におけるフランジ挿入口14aの側)からフランジ502を矢印A1で示すようにフランジ挿入口から+X方向へ挿入して行く。この場合、上層部10の下面10bがフランジ挿入口14a側に下面テーパー部分10dを有し、下層部11の上面11aがフランジ挿入口14a側に上面テーパー部分11dを有するので、スムーズにフランジ収容空間14へのフランジ502の挿入がなされる。
【0073】
フランジ収容空間14のフランジ挿入口14aから+X側に向けてフランジ502が挿入されて行く場合には、フランジ502の上面502a(
図1を参照。)がポイントP1周辺に対して摺動し、下面502b(
図1を参照。)が下層部11の上面11aに対して摺動して行く。この場合に、下層部11の上面11aは凸円弧部分11cを有するので、中心線CLxに至るまでは上り傾斜となっている。このため、
図2に示すように、フランジ502を補助具1に対して矢印A1のように相対的に押圧することで、フランジ502の下面502bによって下層部11に対して法線方向内向きの力A2が付加される。
【0074】
図7(a)に示すように、厚みT1の(厚肉の)フランジ502をフランジ収容空間14の奥まで挿入した場合には、フランジ502の上面502aにおけるX方向の両側の2箇所で、矢印B1で示すように上層部10に対して+Z方向の力を付加する。これにより、上層部10、下層部11、および中間部12は、矢印B1で示すようにフランジ502から力が付加されることにより一部が弾性変形する。
【0075】
フランジ502は、箇所B1,B2の3点で上層部10および下層部11からの反力を受けて、フランジ収容空間14にガタつきなく収容される。即ち、補助具1が装着された状態において、フランジ502は、上層部10に2点、下層部11の1点の合計3点で支持される。なお、ここでの「点」は、数学的な点である必要は必ずしもなく、上層部10や下層部11が弾性変形してフランジ502の上面502aや下面502bに対して面接触する場合も含むものである。
【0076】
一方、
図7(b)に示すように、厚みがT2の(薄肉の)フランジ502の場合には、フランジ502の上面502aにおけるX方向の両側の2箇所B4が上層部10における下面10bの凹円弧部分10cに当接する。そして、フランジ502の下面502bにおけるX方向の中央の箇所B5が下層部11における上面11aの凸円弧部分11cの頂部分に当接する。
【0077】
フランジ502は、箇所B4,B5の3点で上層部10の下面10bおよび下層部11の上面11aに対して略隙間なく当接し、フランジ収容空間14にガタつきなく収容される。即ち、フランジ502が薄肉である場合においても、フランジ502は、上層部10に2点、下層部11に1点の合計3点で支持される。
【0078】
なお、
図7(c)に示すように、
図7(a)や
図7(b)に示したフランジ502よりも相対的に大径のフランジ502の場合には、フランジ502の一部(X方向におけるフランジ挿入口14a側とは反対側の部分)が、中間部12に設けられた窓部15に挿入される(箇所B6)。これにより、補助具1は、大径のフランジ502を、フランジ収容空間14の内部にしっかりと収容可能である。なお、フランジ502の大きさによっては、補助具1の中心線CLxに対してプランジャー503の中心軸Ax503(フランジ502の中心軸Ax502)を略合致させることもできる。この場合には、ユーザは良好に押出および吸入の操作を行うことができる。
【0079】
また、
図7(c)に示す場合においても、フランジ502を上層部10の下面10bと下層部11の上面11aとで3点支持することができ、フランジ502をフランジ収容空間14にガタつきなく収容することができる。
【0080】
5.フランジ502への補助具1の装着時におけるシリンジ500と補助具1との位置関係
フランジ502に対して補助具1を装着した場合におけるシリンジ500と補助具1とのX方向での位置関係について、
図2、および
図4から
図8を用いて説明する。
【0081】
上述のように、フランジ収容空間14へのフランジ502の挿入は、プランジャー503の本体軸部501が奥端部13bあるいは切欠き部13を臨む縁部11fに当接する位置まで行われる(
図4,6)。フランジ収容空間14にフランジ502の挿入が完了した場合には、X方向において、プランジャー503の中心軸Ax503、即ち、シリンジ500の中心軸を、中心線CLxに対して略合致させることができる。なお、略合致とは、完全に合致する場合だけでなく、5mm以内のズレ(より望ましくは3mm以内のズレ、さらに望ましくは1mm以内のズレ)がある場合も含むことを意味する。
【0082】
図8に示すように、フランジ501に補助具1を装着した状態で、ユーザがプランジャー503の押圧しようとする場合には、装着した補助具1の上(上層部10の上面10a)に手510を添える。なお、この場合には、手の幅方向に補助具1の長手方向が合致し、手の長さ方向に補助具1の短手方向(長さW
Xの側)が合致するようにする。そして、
図8に示すように前腕がシリンジ500の軸方向に沿うようにして手首を曲げた状態で、掌の手首に近い部分に力をいれる。これにより、手指に痛みを感じることなく矢印C1のようにプランジャー503を押圧することができる。
【0083】
一方、ユーザがプランジャー503を引っ張ろうとする場合には、人差指、中指、薬指などを矢印C2のように下層部11の下面11bに当接させつ操作を行う。補助具1のサイズ(X方向およびY方向のサイズ)はフランジ502のサイズよりも大きいので、プランジャー503の押し引き時にユーザが手指に痛みを感じ難い。
【0084】
6.効果
本実施形態に係る補助具1では、下層部11における上面11aが凸円弧部分11cを有するように形成されているとともに、下層部11の凸円弧部分11cの一部と上層部10の下面10bとで弾性的にフランジ502をその厚み方向に挟持する構成を有するので、フランジ収容空間14に対してフランジ502を挿入する際の力で下層部11が-Z側に向けて変位するように補助具1が弾性変形する。即ち、下層部11における上面11aは、凸円弧部分11cにおいてフランジ502の挿入方向に対して傾斜した面となっているため、フランジ502を挿入する際の力(挿入方向へ付加する力)の分力によって当該当接部分から-Z側に向けて下層部11が押圧される。よって、補助具1では、フランジ502の厚みが厚い場合においても、フランジに装着が可能である。
【0085】
また、補助具1では、下層部11における上面11aの凸円弧部分11cと上層部10における下面10bとでフランジ502をその厚み方向に弾性的に挟持する構成を有するので、フランジ502の厚みが薄い場合においても、ガタつきを生じることなくフランジ502に装着が可能である。
【0086】
また、補助具1では、上層部10の下面10bが、フランジ502の挿抜方向(X方向)において、下層部11の凸円弧部分11cに対応する部分に、凹円弧部分10cを有するので、上層部10の下面10bがX方向に直線状となるように形成されている場合(平面あるいは可展面で形成されている場合)に比べてフランジ502を挿入する際の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0087】
また、上層部10の下面10bが凹円弧部分10cを有するようにすることにより、フランジ502の挿入時に上層部10の下面10bの2点でフランジ502の上面502aに当接させることができる。
【0088】
また、補助具1では、フランジ502の挿抜方向(X方向)におけるフランジ挿入口14a側の端部において、下層部11の上面11aは上面テーパー部分11dを有する構成を採用しているので、当該部分(
図2のポイントP4とポイントP5との間の部分)で下層部11の上面11aと上層部10の下面10bとの間隔が漸次大きくなる。このため、フランジ挿入口14aからのフランジ502の挿入を容易に行うことが可能となる。
【0089】
また、補助具1では、中間部12が窓部15を有するので、
図5で示したように大径のフランジ502に装着する場合においても、フランジ502の一部が窓部15に挿入、あるいは窓部15から外方にはみ出すようにすることで、プランジャー503を押圧し易い位置(プランジャー503の中心軸Ax503(フランジ502の中心軸Ax502)を補助具1の中心線CLxに略合致する位置またはその近傍位置)に装着することができる。よって、プランジャー503の中心軸Ax503が補助具1の中心線CLxから大きく外れて配置される場合に比べて、バランスよくフランジ502に装着することができ、ユーザがプランジャー503を押し引きのし易さを実現することができる。
【0090】
また、補助具1では、下層部11における上面11aにおいて、上面テーパー部分11dが設けられた範囲を除く領域の全体に亘って凸円弧部分11cが形成されているとともに、凸円弧部分11cの円弧の中心が補助具1の中心線CLx上に配置されているので、フランジ収容空間14にフランジ502を収容した場合には、X方向における凸円弧部分11cの中央部分でフランジ502の下面502bが支持されることとなる。このため、補助具1では、フランジ502に装着した際に、フランジ502をバランスよく支持することができる。
【0091】
また、補助具1では、上層部10の上面10aが
図2および
図3に示すように上凸の曲面で形成されているので、フランジ502に装着した補助具1の上層部10の上面10aに手指や掌を当接させて押圧力を加える場合にも手指や掌との間に隙間が生じ難くすることができる。よって、補助具1では、フランジ502に装着した状態でユーザが押圧する際に手指や掌に対して局所的な反力が付加されるのを抑制することができ、ユーザが手指や掌に痛みを感じるのを抑制することができる。なお、上記実施形態では、補助具1をポリプロピレンなどの弾性部材から形成しているので、ユーザが手指や掌に痛みを感じるのをさらに抑制することができる。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る補助具1では、フランジ502の厚みが互いに異なる複数種のシリンジ500に対応可能であって、製造コストの上昇および部品管理の煩雑さを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る補助具1では、厚みが異なる複数種のフランジ502に装着可能であるので、従来技術のようにフランジ502の厚み毎に複数用意しておく必要がない。よって、製造コストの上昇、および部材管理の煩雑さなどを抑制することもできる。
【0094】
また、シリンダ504に対して粘度の高い流体を吸入・押出する場合にも、フランジ502よりも平面サイズ(Z方向の一方側から見た場合のサイズ)が大きな補助具1を装着することによって、プランジャー503を強い力で押し引きする場合にもユーザが手指や掌などに痛みを感じるのを抑制することができる。
【0095】
さらに、本実施形態に係る補助具1では、上層部10と下層部11と中間部12とが一体に形成されてなるので、複数個の部材を組み合わせて構成されたものに比べて、製造に係る工数の低減を図ることができ、製造コストの上昇を抑制することができる。また、一体に形成されているので、ヒンジなどを複数の部材同士が連結されたものに比べ、繰り返し使用した場合にもガタつきや損傷などが生じ難く、高い耐久性を確保することができる。
【0096】
[変形例1]
変形例1に係るシリンジ用の補助具2について、
図9(a)を用いて説明する。
図9(a)は、上記実施形態の
図2に対応する断面図である。そして、本変形例に係る補助具2は、下層部21における上面(第2内面)21aの形状に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点を主に説明する。
【0097】
図9(a)に示すように、補助具2における下層部21では、フランジ収容空間14に面する上面21aが、凸円弧部分21c1,21c2と、平坦部21eと、上面テーパー部分21dとを有する。凸円弧部分21c1は、X方向に延びる面であって、X方向において-Z側に中心が配置された曲率半径r11で円弧を描くように形成されている。凸円弧部分21c2も、X方向に延びる面であって、X方向において-Z側に中心が配置された曲率半径r12で円弧を描くように形成されている。
【0098】
平坦部21eは、凸円弧部分21c1に対してポイントP21で連続し、凸円弧部分21c2に対してポイントP22で連続する。なお、平坦部21eは、ポイントP21で凸円弧部分21c1と段差なく連続し、ポイントP22で凸円弧部分21c2と段差なく連続するように形成されている。
【0099】
なお、下層部21の下面(外面)21bは、上記実施形態の下層部11における下面11bと同じ形状を以って形成されている。
【0100】
本変形例に係る補助具2では、下層部21における上面21aの形状が上記実施形態と異なる点を除き、上記実施形態と同じ構成を備えるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0101】
また、本変形例に係る補助具2では、下層部21の上面21aが平坦部21eを有し、フランジ502の挿入時にフランジ502の下面502bが平坦部21eに面接触することとなる。このため、より広い面積でフランジ502の下面502bと下層部21の上面21aとが当接することから、フランジ502を補助具2に対してより安定した姿勢で保持することができる。
【0102】
なお、本変形例では、X方向において、平坦部21eの両側に凸円弧部分21c1,21c2を配置することとしたが、逆に、X方向の中程部分に凸円弧部分を配置し、その両側に平坦部を配置することとしてもよい。
【0103】
[変形例2]
変形例2に係るシリンジ用の補助具3について、
図9(b)を用いて説明する。
図9(b)は、上記実施形態の
図2に対応する断面図である。そして、本変形例に係る補助具3は、上層部30における下面(第1内面)30bの形状に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点を主に説明する。
【0104】
図9(b)に示すように、補助具3における上層部30では、フランジ収容空間14に面する下面30bがX方向の略全域で平坦面を以って形成されている。なお、本変形例での「平坦面」とは、製造誤差での凹凸を含むことを許容することを意味する。
【0105】
なお、上層部30の上面(第1外面)30aは、上記実施形態の上層部10における上面10aと同じ形状を以って形成されている。
【0106】
本変形例に係る補助具3では、上層部30における下面30bの形状が上記実施形態と異なる点を除き、上記実施形態と同じ構成を備えるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0107】
また、本変形例に係る補助具3では、上層部30の下面30bが平坦面を以って形成されているので、フランジ502に装着した際に、フランジ502の上面502aが上層部30の下面30bの略全域に対して面接触することとなる。このため、より広い面積でフランジ502の上面502aと上層部30の下面30bとが当接することから、補助具3によりフランジ502をより安定した姿勢で保持することができる。
【0108】
[変形例3]
変形例3に係るシリンジ用の補助具4について、
図10(a)を用いて説明する。
図10(a)は、補助具4を-X方向から見た図である。そして、本変形例に係る補助具4は、下層部41における上面(第2内面)41aの形状に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点を主に説明する。
【0109】
上記実施形態に係る補助具1の下層部11は、上面11aにおける凸円弧部分11cが可展面である曲面で構成されることとした。これに対して、
図10(a)に示すように、本変形例に係る補助具4では、下層部41における上面41aの凸円弧部分41cが可展面でない曲面で構成されている。即ち、補助具4を-X側から正面視した場合に、下層部41における上面41aの凸円弧部分41cは、Y方向に延びる面であって、Y方向において-Z側に中心が配置された曲率半径r21,r22で円弧を描くように形成されている。なお、曲率半径r21と曲率半径r22とは、同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
【0110】
なお、本変形例に係る補助具4において、下層部41の下面(外面)41bは、上記実施形態に係る補助具1における下層部11の下面11bと同様の曲面を以って形成されている。
【0111】
本変形例に係る補助具4では、下層部41の上面41aにおける凸円弧部分41cの形状が三次元曲面(可展面でない曲面)を以って形成されている点を除き、上記実施形態と同じ構成を備えるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0112】
また、本変形例に係る補助具4では、下層部41の上面41aにおける凸円弧部分41cの形状が三次元曲面を以って形成されているので、フランジ502をフランジ収容空間14に挿入した際において、フランジ502の下面502b(
図1を参照。)と下層部41の上面41aとの間での摺動抵抗をより小さくすることができる。よって、本変形例では、より簡易な操作でフランジ502に補助具4を装着することができる。
【0113】
ここで、本変形例においては、下層部41の上面41aにおける凸円弧部分41cの形状について、曲率半径r3(
図2を参照。)を大きくして、X方向に略直線状に延びるようにすることも可能である。
【0114】
[変形例4]
変形例4に係るシリンジ用の補助具5について、
図10(b)を用いて説明する。
図10(b)は、補助具5を-X方向から見た図である。そして、本変形例に係る補助具5は、上層部50における下面(第1内面)50bの形状に特徴を有し、それ以外の構成については上記変形例3と同じである。以下では、上記変形例3との差異点を主に説明する。
【0115】
上記実施形態および上記変形例3に係る補助具1,4の上層部10は、下面10bにおける凹円弧部分10cが可展面である曲面で構成されることとした。これに対して、
図10(b)に示すように、本変形例に係る補助具5では、上層部50における下面50bの凹円弧部分50cが可展面でない曲面で構成されている。即ち、補助具5を-X側から正面視した場合に、上層部50における下面50bの凹円弧部分50cは、Y方向に延びる面であって、Y方向において-Z側に中心が配置された曲率半径r31で円弧を描くように形成されている。
【0116】
なお、本変形例に係る補助具5において、上層部50の上面(第1外面)50aは、上記実施形態および上記変形例3に係る補助具1、4における上層部10の上面10aと同様の曲面を以って形成されている。
【0117】
本変形例に係る補助具5では、上層部50の下面50bにおける凹円弧部分50cの形状が三次元曲面(可展面でない曲面)を以って形成されている点を除き、上記実施形態と同じ構成を備えるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0118】
また、本変形例に係る補助具5では、上層部50の下面50bにおける凹円弧部分50cの形状が三次元曲面を以って形成されているので、フランジ502をフランジ収容空間14に挿入した際において、フランジ502の下面502b(
図1を参照。)と上層部50の下面50bとの間での摺動抵抗をより小さくすることができる。よって、本変形例では、より簡易な操作でフランジ502に補助具5を装着することができる。
【0119】
ここで、本変形例においても、上記変形例3と同様に、下層部41の上面41aにおける凸円弧部分41cの形状について、曲率半径r3(
図2を参照。)を大きくして、X方向に略直線状に延びるようにすることも可能である。
【0120】
[変形例5]
変形例5に係るシリンジ用の補助具6について、
図11(a)を用いて説明する。
図11(a)は、補助具6の一部を-Y方向から見た図である。そして、本変形例に係る補助具6は、上層部60における下面60bの形状に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点を主に説明する。
【0121】
図11(a)に示すように、上層部60における下面60cは、下面テーパー部分60dおよび凹円弧部分60cに加えて、段差部60eを有する。即ち、
図11(a)の拡大部分に示すように、X方向における下面テーパー部分60dと凹円弧部分60cとの間に、段差部60eを有する。段差部60eは、下面テーパー部分60dの後方側(+X側)の端部と、当該端部よりも上方側(+Z側)に位置する凹円弧部分60cの前方側(-X側)の端部とを繋ぐように形成されている。
【0122】
本変形例に係る補助具6では、上層部60の下面60bが段差部60eを有する点を除き、上記実施形態と同じ構成を備えるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0123】
また、本変形例に係る補助具6では、フランジ収容空間に収容されたフランジ502が段差部60eによって抜けにくくすることができ、フランジ502をしっかりと保持することができる。
【0124】
[変形例6]
変形例6に係るシリンジ用の補助具7について、
図11(b)を用いて説明する。
図11(b)は、補助具7のY-Z断面を前方側(-X側)から見た図である。そして、本変形例に係る補助具7は、下層部71に形成された切欠き部73の形状に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点を主に説明する。
【0125】
図11(b)に示すように、本変形例に係る補助具7は、フランジ511に接合された側から下方側(-Z側)へと行くのに従って断面サイズが漸増する本体軸部511を有するプランジャー513に対応可能な補助具である。具体的には、補助具7の下層部71は、切欠き部73を臨む縁部71f同士の幅W
71が上面71a側から下面71b側へと行くのに従って漸次大きくなるように下向きテーパー状に形成されている。
【0126】
本変形例に係る補助具6では、上層部60の下面60bが段差部60eを有する点を除き、上記実施形態と同じ構成を備えるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0127】
また、本変形例に係る補助具7では、
図11(b)に示すようなテーパー形状の本体軸部511を有するシリンジに対しても装着可能である。
【0128】
[その他の変形例]
上記実施形態では、上層部10の下面10bおいて下面テーパー部分10dを除く領域の全体に亘って円弧形状を描くように形成された凹円弧部分10cが配設されてなる構成を採用したが、本発明では、上層部の下面におけるX方向の一部に凹円弧部分が配設されてなる構成を採用することもできる。
【0129】
同様に、上記実施形態では、下層部11の上面11aにおいて上面テーパー部分11dを除く領域の全体に亘って円弧形状を描くように形成された凸円弧部分11cが配設されてなる構成を採用したが、本発明では、下層部の上面におけるX方向の一部に凸円弧部分が配設されてなる構成を採用することもできる。
【0130】
また、上記変形例3,4では、正面側から見た場合の下層部41の上面41aについて、左右方向(Y方向)の全域に亘って円弧形状を描くように形成された凸円弧部分41cが配設されてなる構成を採用したが、本発明では、下層部の上面におけるY方向の一部に凸円弧部分が配設されてなる構成を採用することもできる。
【0131】
また、上記実施形態および上記変形例1~6では、装着対象とするシリンジ500として経管栄養注入用のシリンジを適用することとしたが、本発明では、装着対象とするシリンジの用途について、これに限定を受けるものではない。即ち、シリンダに粘度の高い流体が吸入され押し出されるような用途のシリンジを装着対象とすることが可能である。なお、装着対象とするシリンジに関しては、医療用途に限定されず、工業用途のものを対象とすることも可能である。
【0132】
また、上記実施形態および上記変形例1~6では、上層部10の下面10bが凹円弧部分10c,60cを有し、下層部11,21の上面11a,21aが凸円弧部分11c,21c1,21c2を有することとしたが、本発明は、上層部の下面における凹状の面部および下層部の上面における凸状の面部について、必ずしも円弧形状を有する必要はない。例えば、楕円の一部や長円の一部のプロファイルを有する面部とすることもできる。
【0133】
また、上記実施形態および上記変形例1~6では、上層部10,30,50,60におけるX方向の一方の端部(フランジ挿入口14aとは反対側の端部)と、下層部11,21,41,71におけるX方向の一方の端部(フランジ挿入口14aとは反対側の端部)と、を接続するように中間部12,52を形成することとしたが、本発明では、中間部12,52とは別に上層部と下層部とを接続する部位(第2中間部)を設けてもよい。例えば、
図3等において、Y方向の両側で上層部と下層部とをZ方向に接続する第2中間部を設けてもよい。そして、この場合において、第2中間部は、X方向の全域に亘って上層部と下層部とを接続してもよいし、一部領域で上層部と下層部とを接続してもよい。第2中間部について、X方向の一部領域で上層部と下層部とを接続する構成を採用する場合には、フランジをフランジ挿入口から挿入する際の抵抗を小さく抑えることができる。
【0134】
逆に、第2中間部について、X方向の全域に亘って上層部と下層部とを接続することとすれば、フランジ収容空間でのフランジの保持性を高く確保することができるとともに、補助具の高い耐久性を確保することもできる。
【0135】
さらに、経腸栄養の注入作業においては、プランジャーを押圧する操作の方が引く操作よりも大きな力が必要となるため、補助具における上層部の厚みを下層部に対して厚くすることで、部材コストの上昇を抑制しながら耐久性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0136】
1~7 シリンジ用の補助具
10,30,50,60 上層部(第1層部)
10a,30a,50a 上面(第1外面)
10b,30b,50b 下面(第1内面)
10c,50c,60c 凹円弧部分
10d,60d 下面テーパー部分
11,21,41,71 下層部(第2層部)
11a,21a,41a,71a 上面(第2内面)
11b,21b,41b,71b 下面(外面)
11c,21c1,21c2,41c 凸円弧部分
11d,21d 上面テーパー部分
12 中間部
13,73 切欠き部
13a 開口部
14 フランジ収容空間
14a フランジ挿入口
15 窓部
500 シリンジ
501 本体軸部
502 フランジ
503 プランジャー