(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172357
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】技能分析システム及び技能分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20241205BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241205BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090013
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 浩史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇
(72)【発明者】
【氏名】緒方 真
(72)【発明者】
【氏名】杉江 一寿
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】分析精度の向上を図った技能分析システム等を提供する。
【解決手段】技能分析システム10は、作業対象物に対する作業者の作業に関する計測データの特徴量を説明変数とし、作業対象物の品質データを目的変数として回帰分析を行い、回帰分析に基づく重要特徴量の抽出結果を表示部14に表示させる処理部13を備え、処理部13は、品質データにおいて品質が低い側の外れ値に該当するもの、及び、当該外れ値の品質データに対応する計測データを回帰分析の対象から除外する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物に対する作業者の作業に関する計測データの特徴量を説明変数とし、前記作業対象物の品質データを目的変数として回帰分析を行い、当該回帰分析に基づく重要特徴量の抽出結果を表示装置に表示させる処理部を備え、
前記処理部は、前記品質データにおいて品質が低い側の外れ値に該当するもの、及び、当該外れ値の品質データに対応する前記計測データを前記回帰分析の対象から除外する、技能分析システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記品質データにおいて品質が高い側の外れ値に該当するもの、及び当該品質データに対応する前記計測データを前記回帰分析の対象に含めること
を特徴とする請求項1に記載の技能分析システム。
【請求項3】
前記処理部は、複数種類の前記特徴量について所定の相関調査を行い、相対的に相関が強い特徴量の種類の組合せを示すグループのそれぞれから特徴量を1種類ずつ選択し、選択した特徴量を前記回帰分析の対象に含めること
を特徴とする請求項1に記載の技能分析システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記回帰分析で抽出された前記重要特徴量を前記表示装置に表示させる際、当該重要特徴量が所定の前記グループに属する場合には、当該グループに属する他の特徴量を当該重要特徴量に対応付けて表示させること
を特徴とする請求項3に記載の技能分析システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記作業対象物の品質が高いほど前記品質データの値が大きくなる場合、前記品質データの第1四分位数から、前記品質データの四分位範囲と所定値との乗算値を減算した値を閾値として設定し、当該閾値よりも値が小さい前記品質データ、及び当該品質データに対応する前記計測データを前記回帰分析の対象から除外すること
を特徴とする請求項1に記載の技能分析システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記作業対象物の品質が高いほど前記品質データの値が小さくなる場合、前記品質データの第3四分位数に、前記品質データの四分位範囲と所定値との乗算値を加算した値を閾値として設定し、当該閾値よりも値が大きい前記品質データ、及び当該品質データに対応する前記計測データを前記回帰分析の対象から除外すること
を特徴とする請求項1に記載の技能分析システム。
【請求項7】
前記処理部は、前記品質データの箱ひげ図を前記表示装置に表示させ、さらに、ユーザによる入力操作で前記所定値の大きさが調整されるようにすること
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載の技能分析システム。
【請求項8】
前記処理部は、複数の前記グループから特徴量を1種類ずつ選択する際の組合せの中から、当該組合せに基づく前記目的変数の推定値と、実際の前記目的変数の値と、の間の相関係数が1に最も近くなる組合せを特定し、当該組合せを含む前記特徴量に基づいて、前記回帰分析を行うこと
を特徴とする請求項3に記載の技能分析システム。
【請求項9】
前記処理部は、複数種類のモデルのそれぞれで前記回帰分析を行い、前記説明変数が前記目的変数に寄与している度合いを示す変数重要度に基づく前記特徴量の点数付けを前記モデルごとに行い、点数の合計値の大きさに基づいて、前記重要特徴量を抽出すること
を特徴とする請求項1に記載の技能分析システム。
【請求項10】
前記処理部は、前記回帰分析のモデル候補の中から、前記重要特徴量の抽出に用いられる複数種類のモデルをユーザの入力操作で選択する際の選択画面を前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項9に記載の技能分析システム。
【請求項11】
作業対象物の品質データにおいて品質が低い側の外れ値に該当するもの、及び、前記作業対象物に対する作業者の作業に関する計測データのうちで前記外れ値の品質データに対応するものを回帰分析の対象から除外する外れ値除外ステップと、
前記計測データの特徴量を説明変数とし、前記品質データを目的変数として前記回帰分析を行い、当該回帰分析に基づく重要特徴量の抽出結果を表示装置に表示させる表示ステップと、を含む、技能分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、技能分析システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の作業対象物の品質に影響を与えるような特徴量を抽出する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「代表特徴量の中から、前記製品品質データの変動に対して寄与する代表特徴量を品質影響因子候補として特定する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、製品(作業対象物)の品質に影響を与える可能性の高い特徴量を抽出するようにしているが、分析精度の点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、分析精度の向上を図った技能分析システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係る技能分析システムは、作業対象物に対する作業者の作業に関する計測データの特徴量を説明変数とし、前記作業対象物の品質データを目的変数として回帰分析を行い、当該回帰分析に基づく重要特徴量の抽出結果を表示装置に表示させる処理部を備え、前記処理部は、前記品質データにおいて品質が低い側の外れ値に該当するもの、及び、当該外れ値の品質データに対応する前記計測データを前記回帰分析の対象から除外することとした。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、分析精度の向上を図った技能分析システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る技能分析システムの分析対象の例を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る技能分析システムの機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る技能分析システムの処理部が実行する処理のフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る技能分析システムにおいて、下側外れ値の品質データの除外に関する箱ひげ図である。
【
図5】第1実施形態に係る技能分析システムにおいて、下側外れ値の閾値設定に関する表示例である。
【
図6】第1実施形態に係る技能分析システムの相関データに関する説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る技能分析システムにおける回帰分析の一例である重回帰分析に関する説明図である。
【
図8】第1実施形態に係る技能分析システムの分析結果の表示例である。
【
図9】第2実施形態に係る技能分析システムの処理部が実行する処理のフローチャートである。
【
図10】第2実施形態に係る技能分析システムにおける回帰分析の対象とする特徴量の選択に関する説明図である。
【
図11】第3実施形態に係る技能分析システムの機能ブロック図である。
【
図12】第3実施形態に係る技能分析システムの処理部が実行する処理のフローチャートである。
【
図13】第3実施形態に係る技能分析システムで回帰分析に用いられるモデルの選択画面の表示例である。
【
図14】第3実施形態に係る技能分析システムにおいて、複数種類のモデルを用いた場合の重要特徴量の抽出に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
以下では、一例として、作業者M1(
図1参照)の溶接作業に関する品質データや計測データに基づいて分析が行われる場合について説明するが、分析対象となる作業の種類は溶接に限定されるものではない。例えば、塗装や鋳造の他、鍛造や切削、研削、精密加工、めっき、板金加工、金型の仕上げ、レンズの研磨といったさまざまな作業を分析対象とすることが可能である。
【0010】
図1は、第1実施形態に係る技能分析システムの分析対象の例を示す説明図である。
図1では、作業者M1が作業対象物W1の溶接を行っている様子を示している。作業者M1は、溶接電源P1に接続された溶接トーチT1を使って、溶接ワイヤ(図示せず)の先端を作業対象物W1に近づけた状態でアーク溶接を行う。なお、溶接ワイヤは、ワイヤ供給装置(図示せず)から繰り出される。作業者M1が溶接を行っている様子は、動作計測用のカメラC1,C2,C3で撮像される。また、溶接電源P1の電圧や電流の時々刻々の値が検出される。なお、カメラC1,C2,C3の撮像結果や電圧・電流の検出値は、溶接作業に関する計測データとして用いられる。
【0011】
作業者M1が一連の作業を行った後、別の作業者(図示せず)が同様の作業を行い、この作業に関する所定の計測データが取得される。分析対象となる所定の作業を行う作業者の数は、例えば、数十人であってもよく、また、数百人や数千人であってもよい。また、作業者には、熟練作業者や、平均程度の技能を有する作業者の他、技能の低い作業者も含まれるようにするとよい。これによって、熟練作業者が他の作業者に比べて、どのような点で優れているのかを特定しやすくなる。また、技能レベルの異なるさまざまな作業者のデータが得られるため、後記する回帰分析の精度が高められる。
【0012】
図2は、技能分析システム10の機能ブロック図である。
技能分析システム10は、所定の作業対象物に対して作業員が行う作業を分析し、重要な特徴量を抽出して、ユーザに提示するシステムである。このような技能分析システム10は、一台のコンピュータ(例えば、サーバ)で構成されていてもよいし、また、信号線やネットワークを介して、複数台のコンピュータ(図示せず)が所定に接続された構成であってもよい。
【0013】
図2に示すように、技能分析システム10は、記憶部11と、入力部12と、処理部13と、表示部14(表示装置)と、を備えている。記憶部11は、図示はしないが、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリと、を含んで構成されている。記憶部11には、所定のプログラムが予め格納されている他、後記する相関データ11aが格納される。その他、入力部12を介して入力される計測データ・品質データや処理部13の演算結果も、記憶部11に格納される。
【0014】
入力部12は、所定の計測データや品質データの入力に用いられるインタフェースである。例えば、所定のデータベース(図示せず)から入力部12を介して、計測データや品質データが入力される。
【0015】
なお、「計測データ」とは、作業者の動作について時々刻々の計測を行うことで得られる所定のデータである。例えば、溶接作業について分析が行われる場合には、溶接トーチT1(
図1参照)の傾斜角度や溶接速度の他、溶接の狙い位置、溶接ワイヤ(図示せず)の単位時間当たりの供給量、溶接電源P1(
図1参照)における電圧・電流の値が計測データとして用いられる。その他、モーションキャプチャ(図示せず)によって取得される作業者の動作データや、作業対象物の温度・圧力の値が計測データとして用いられてもよい。また、作業者の視線や姿勢の他、作業者の呼吸・鼓動・脳波といった生体データも計測データとして用いることが可能である。
【0016】
また、「品質データ」とは、作業対象物の出来の良し悪しの度合いを示すデータである。このような品質データとして、例えば、作業対象物における欠陥の数や、所定の狙い値からのずれ量、溶接ビードの乱れ度合いの他、所定の採点結果といったものが用いられる。品質データには、前記した複数種類の計測データが対応付けられる。そして、計測データ及び品質データのセットが、入力部12を介して入力されるようになっている。例えば、1回の溶接作業で得られた動作データや電流値等の計測データと、この溶接作業後の作業対象物における欠陥の数(品質データ)と、がセットで入力されるようにしてもよい。なお、計測データや品質データの数が多いほど、分析精度が高くなる傾向がある。
【0017】
図2に示す処理部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部11に格納されたプログラムを読み出して、所定の処理を実行する。表示部14は、処理部13の処理結果を所定に表示させる。このような表示部14として、例えば、ディスプレイが用いられる。なお、タッチディスプレイのように、表示部14がユーザインタフェースの機能を兼ね備えるようにしてもよい。
【0018】
また、技能分析システム10の処理結果が、ネットワーク(図示せず)を介して、ユーザの情報端末(図示せず)に送信されるようにしてもよい。このような情報端末として、例えば、スマートフォンや携帯電話、タブレット、パソコン、ウェアラブル端末が挙げられる。この場合には、ユーザの情報端末が表示部14として機能する。
【0019】
図2に示すように、処理部13は、下側外れ値除外部131と、特徴量抽出部132と、前処理部133と、相関調査部134と、特徴量選択部135と、分析部136と、重要特徴量探索部137と、を備えている。
【0020】
下側外れ値除外部131は、品質データのうちで極端に品質が低い下側外れ値に該当するものと、この品質データに対応付けられた計測データと、を分析部136による回帰分析の対象から除外する。これによって、例えば、初心者の中でも技能が極端に低い作業者に関する品質データや計測データ(ノイズとして作用するようなデータ)を除いた上で回帰分析が行われるため、分析の精度を高めることができる。なお、下側外れ値の詳細については後記する。
【0021】
特徴量抽出部132は、複数種類の計測データのそれぞれの特徴量を抽出する。このような特徴量として、例えば、平均値や標準偏差が用いられる。具体例を挙げると、1人の作業者が溶接作業を行ったときの溶接速度の平均値が特徴量として用いられてもよい(他の作業者についても同様)。また、複数種類の計測データの演算結果に基づいて、新たな特徴量が生成されるようにしてもよい。例えば、アーク溶接において、電流[A]×電圧[V]×60/溶接速度[cm/min]は入熱量[J/cm]となるが、この入熱量[J/cm]は、溶接作業の良し悪し(つまり、作業対象物の品質)に大きな影響を与えることが多い。したがって、特徴量の一つとして入熱量[J/cm]が用いられるようにしてもよい。
【0022】
前処理部133は、特徴量抽出部132で抽出された特徴量に対して、所定の前処理を行う。例えば、前処理部133は、特徴量の平均値に対する偏差を標準偏差で除算することで標準化(つまり、前処理)を行う。このような標準化によって、単位が異なる計測データの特徴量同士でも品質への影響を正しく評価できるようになる。なお、品質データについては、標準化等の前処理を行う必要は特にない。後記する回帰分析では、目的変数(品質データ)の数が1つだからである。
【0023】
相関調査部134は、計測データの特徴量同士の相関を調査する。このような相関の調査として、相関係数を算出するといった方法が用いられる。所定の特徴量同士で強い相関があるか否かの判定基準となる閾値は特に限定されるものではないが、例えば、相関係数の絶対値が0.7以上である場合に強い相関があると判定されるようにしてもよい。なお、相関調査の方法として、スペクトラルクラスタリング等のクラスタリングを用いることも可能である。相関調査部134による調査結果は、相関データ11aとして記憶部11に格納される。相関データは、相関の強い複数種類の特徴量が対応付けられてグループ化されたデータである。
【0024】
特徴量選択部135は、相関データ11aを参照し、強い相関を有する特徴量のグループの中から、分析部136の回帰分析に用いる特徴量の種類を1つずつ選択する。次に説明する回帰分析では、目的変数(品質データ)に対して説明変数(複数種類の計測データ)が及ぼす影響が分析されるが、互いに相関の強い特徴量が混在していた場合には、いわゆる多重共線性の問題が生じて、回帰分析の結果が不安定になることが多いからである。
【0025】
なお、特徴量の選択方法は特に限定されるものではないが、例えば、1つのグループに属する複数種類の特徴量のうち、品質データ(目的変数)との間の相関係数が最も大きいものが選択されるようにしてもよい。
【0026】
分析部136は、品質データを目的変数とし、計測データに対応する複数種類の特徴量を説明変数として、所定の回帰分析を行い、計測データの種類ごとの変数重要度を算出する。このような回帰分析の手法として、例えば、重回帰分析やLasso回帰、Ridge回帰、部分的最小二乗法といったものが用いられる。また、データ数が多い場合には、勾配ブースティング決定木やニューラルネットワークといった手法が用いられてもよい。
【0027】
分析部136によって算出される「変数重要度」とは、所定の説明変数(計測データに対応する特徴量)が目的変数(つまり、品質データ)に対して寄与している度合いを示す数値である。例えば、重回帰分析が行われる場合には、変数重要度としてt値が用いられる。また、部分的最小二乗法が行われる場合には、変数重要度としてVIP(Variable Importance for Prediction)が用いられる。
【0028】
重要特徴量探索部137は、分析部136で算出される変数重要度の高さ順に、複数種類の特徴量の順位付けを行う。これによって、どのような種類の特徴量が作業対象物の品質に寄与しているかを特定できる。重要特徴量探索部137による探索結果は、重要特徴量として、表示部14に所定に表示される。
【0029】
また、回帰分析の結果に基づいて特定された重要特徴量のうち、相関の強い他の特徴量が存在するものについては、他の特徴量に対応付けて表示部14に表示される。前記したように、相関の強い複数種類の特徴量は、グループ化された状態で相関データ11aとして記憶部11に格納されている。このように重要特徴量との間で相関の強い他の特徴量も示すことで、溶接等の作業を行う際にどのような特徴量が作業対象物の品質に影響を与えるのかをユーザが漏れなく把握できる。
【0030】
図3は、技能分析システムの処理部が実行する処理のフローチャートである(適宜、
図2も参照)。
ステップS101において処理部13は、計測データ及び品質データの入力を受け付ける。前記したように、計測データ及び品質データは、所定のデータベース(図示せず)から入力部12を介して入力される。計測データには、例えば、溶接トーチT1(
図1参照)の角度や溶接速度といった複数種類のデータが含まれている。品質データには、作業対象物における欠陥の数といった所定の1種類のデータが含まれるものとする。
【0031】
ステップS102において処理部13は、下側外れ値除外部131によって、品質データにおいて下側外れ値に該当するものを回帰分析の対象から除外する。なお、「下側外れ値」という文言に含まれる「下側」とは、品質が低いという意味である。すなわち、処理部13は、作業対象物の品質データにおいて品質が低い側の外れ値に該当するもの、及び、当該外れ値の品質データに対応する計測データを回帰分析の対象から除外する(外れ値除外ステップ)。
【0032】
図4は、下側外れ値の品質データの除外に関する箱ひげ図である。
なお、
図4の例では、所定の作業が行われた後の作業対象物の品質が高いほど、品質データの値が大きくなるものとする。
図4に示す箱ひげ図は、データのばらつき具合を示す統計図であり、最小値Q
minと、第1四分位数Q
1と、中央値Q
2と、第3四分位数Q
3と、最大値Q
Maxと、を含んで構成されている。ここで、第1四分位数Q
1とは、所定のデータ群を値の小さい順に並べた場合において、小さい方からのデータの個数が25%に達するときのデータ(つまり、品質データ)の値である。また、第3四分位数Q
3とは、所定のデータ群を値の小さい順に並べた場合において、小さい方からのデータの個数が75%に達するときのデータ(つまり、品質データ)の値である。第3四分位数Q
3から第1四分位数Q
1を減算した値(Q
3-Q
1)を四分位範囲という。
【0033】
例えば、初心者が溶接作業を行った場合、溶接の品質が極端に低くなることがある。このように品質が極端に低い場合、その計測データは回帰分析の際にノイズとして作用して、回帰分析の精度の低下を招く可能性がある。そこで、
図4の例では、第1四分位数Q
1から四分位範囲(Q
3-Q
1)の1.5倍を減算した値よりも品質データの値が小さいもの(破線D1で囲んだ3つの品質データ)については、回帰分析の対象から除外するようにしている。
【0034】
また、除外の対象となった品質データに対応する計測データも回帰分析の対象から除外される。これによって、品質が極端に低い品質データ等が除外された上で回帰分析が行われるため、回帰分析の精度が高められる。このように、処理部13は、作業対象物の品質が高いほど品質データの値が大きくなる場合、品質データの第1四分位数Q1から、品質データの四分位範囲(Q3-Q1)と所定値(例えば、1.5という値)との乗算値を減算した値を閾値として設定し、当該閾値よりも値が小さい品質データ、及び当該品質データに対応する前記計測データを回帰分析の対象から除外する。
【0035】
また、例えば、品質データが作業対象物における欠陥率である場合には、欠陥率が低いほど品質が高くなる。この場合には、例えば、四分位範囲(Q3-Q1)の1.5倍を第3四分位数Q3に加算した値よりも品質データの値が大きいものが回帰分析の対象から除外される。すなわち、処理部13は、作業対象物の品質が高いほど品質データの値が小さくなる場合、品質データの第3四分位数Q3に、品質データの四分位範囲(Q3-Q1)と所定値(例えば、1.5という値)との乗算値を加算した値を閾値として設定し、当該閾値よりも値が大きい品質データ、及び当該品質データに対応する前記計測データを回帰分析の対象から除外する。
【0036】
一方、熟練作業者の中でも技能が際立って高い者が溶接作業を行った場合、溶接の品質が他と比べて極端に高くなることがある。この場合には、計測データにノイズが含まれている可能性はほとんどなく、また、溶接の品質が高められた要因が計測データに内包されている可能性が高い。したがって、
図4の例では、四分位範囲(Q
3-Q
1)の1.5倍を第3四分位数Q
3に加算した値よりも品質データの値が大きいもの(破線D2で囲んだ2つの品質データ)については、回帰分析の対象に含めるようにしている。すなわち、処理部13は、品質データにおいて品質が高い側の外れ値に該当するもの、及び当該品質データに対応する計測データを回帰分析の対象に含めるようにする。これによって、技能が際立って高い者の計測データや品質データを回帰分析の対象に含めることができる。
【0037】
なお、品質データにおいて、回帰分析の対象から除外するか否かの判定基準となる閾値が、1.5×(Q3-Q1)といったように固定値であってもよいが、次に説明するように、この閾値をユーザが設定できるようにしていてもよい。
【0038】
図5は、下側外れ値の閾値設定に関する表示例である。
図5の例では、所定の品質データの箱ひげ図が表示部14(
図2参照)に表示されている他、下側外れ値の閾値設定に関するプルダウンリストK1が表示されている。具体的には、第1四分位数Q
1から四分位範囲(Q
3-Q
1)のa倍を減算した値を下側外れ値の閾値とする際の「a倍」の部分をユーザが設定できるようになっている。例えば、
図5に示すように、aの値として「1.7」が選択された状態で決定ボタンB1が押されると、aの値が「1.7」に設定される。
【0039】
このように、処理部13は、品質データの箱ひげ図を表示部14(表示装置)に表示させ、さらに、ユーザによる入力操作で所定値(aの値)の大きさが調整されるようにする。これによって、下側外れ値の閾値に関するユーザの設定の自由度が高められる。なお、ユーザによって設定されるaの値は、1よりも大きくてもよく、また、1以下であってもよい。
【0040】
再び、
図3に戻って説明を続ける。
ステップS102において品質データの下側外れ値を回帰分析の対象から除外した後、処理部13の処理はステップS103に進む。ステップS103において処理部13は、特徴量抽出部132によって、計測データの特徴量を抽出する。すなわち、処理部13は、複数種類の計測データのそれぞれについて、平均値や標準偏差といった特徴量を抽出する。なお、前記した入熱量[J/cm]のように、複数種類の計測データを所定に演算することで、新たな特徴量が生成されるようにしてもよい。
【0041】
ステップS104において処理部13は、前処理部133によって、所定の前処理を行う。例えば、処理部13は、計測データの平均値に対する偏差を標準偏差で除算するといった標準化を前処理として行う。標準化後のデータは、その平均値が0になり、標準偏差が1になるため、単位が異なるデータの間でも品質への影響度等を正しく評価できるようになる。
【0042】
ステップS105において処理部13は、相関調査部134によって、特徴量同士の相関調査を行うことで相関データ11aを生成し、この相関データ11aを記憶部11に保存する。すなわち、処理部13は、相関の強い複数種類の特徴量を対応付けてグループ化することで相関データ11aを生成し、この相関データ11aを記憶部11に格納する。
【0043】
図6は、相関データ11aに関する説明図である。
図6に示す相関データ11aの例では、所定のグループIDと、相関の高い特徴量の組合せ(つまり、グループ)と、が対応付けられている。例えば、グループIDがG0001のグループでは、相関の高い特徴量の組合せとして、特徴量α・特徴量βが対応付けられている。また、グループIDがG0002のグループでは、相関の高い特徴量の組合せとして、特徴量γ・特徴量δ・特徴量εが対応付けられている。このように、3種類以上の特徴量の種類が1つのグループに含まれることもある。
【0044】
図3のステップS106において処理部13は、特徴量選択部135によって、相関が強い特徴量のグループの中から1つずつを選択する。これによって、互いに相関の強い特徴量が混在した状態で回帰分析が行われることを防止できる。その結果、いわゆる多重共線性の問題が生じることを抑制し、回帰分析を適切に行うことができる。例えば、
図6に示すグループG0001から特徴量αが選択され、グループG0002から特徴量γが選択され、また、グループG0003から特徴量ζが選択されるといったように、それぞれのグループから特徴量が1つずつ選択される。
【0045】
このように、処理部13は、複数種類の特徴量について所定の相関調査を行い(
図3のS105)、相対的に相関が強い特徴量の種類の組合せを示すグループのそれぞれから特徴量を1種類ずつ選択し、選択した特徴量を回帰分析の対象に含めるようにする(S106)。
【0046】
なお、所定の特徴量において相関が強い他の種類の特徴量が存在しない場合、この特徴量は、グループを特に形成せずに単独で存在することになる。相関が強いグループごとに1つずつが選択された特徴量、及び、グループを特に形成していない特徴量は、相関が弱いデータ(つまり、独立変数)であるため、回帰分析に適している。
【0047】
次に、
図3のステップS107において処理部13は、分析部136によって、品質データを目的変数として回帰分析を行う。なお、回帰分析に用いられる説明変数は、ステップS106で選択された特徴量、及び、グループを特に形成していない特徴量である。このように回帰分析が行われることで、複数種類の特徴量のうち、作業対象物の品質に対してどの特徴量が特に影響を与えているのかを特定できる。また、回帰分析によって、それぞれの説明変数(つまり、計測データに基づく特徴量)について、目的変数(つまり、品質データ)に寄与している度合いを示す変数重要度が算出される。
【0048】
図7は、回帰分析の一例である重回帰分析に関する説明図である。
なお、
図7の縦軸は所定の計測データに基づく特徴量であり、横軸は品質データである。
図7では簡単のために1つの特徴量を示しているが、実際には複数種類の特徴量に基づいて重回帰分析が行われる。
図7にプロットした複数の点は、複数の作業者のそれぞれに対応するデータである。直線L1は、最小二乗法等に基づく所定の回帰式で表される直線である。重回帰分析の結果として、変数重要度に相当するt値が算出される。t値は、特徴量が品質データに与える影響の度合いを示す数値であり、複数種類の特徴量のそれぞれについて算出される。なお、回帰分析の手法は重回帰分析に限定されるものではなく、前記したように、Lasso回帰やRidge回帰、部分的最小二乗法といった他の手法が用いられてもよい。
【0049】
このように回帰分析を行った後、
図3のステップS108において処理部13は、重要特徴量探索部137によって、重要特徴量を探索する。すなわち、処理部13は、回帰分析の結果として算出される特徴量ごとの変数重要度の高さ順に、特徴量の順位付けを行う。例えば、順位が1位の重要特徴量は、変数重要度が最も高いため、作業対象物の品質に寄与している度合いが最も高いといえる。
【0050】
次に、
図3のステップS109において処理部13は、分析の結果を表示部14に表示させる。このように、処理部13は、作業対象物に対する作業者の作業に関する計測データの特徴量を説明変数とし、作業対象物の品質データを目的変数として回帰分析を行い(S108)、当該回帰分析に基づく重要特徴量の抽出結果を表示部14(表示装置)に表示させる(表示ステップ)。
【0051】
図8は、分析結果の表示例である。
図8の例では、溶接ビードの高さを品質データとして場合の分析結果が表示されている。具体的には、特徴量を順位付けした場合の1位~5位が重要特徴量として、縦方向に並んだ状態で表示部14(
図2参照)に表示されている。
図8の例では、溶接ビードの高さ(品質データ)に与える影響が最も大きい重要特徴量として、特徴量α・特徴量βが挙げられている。ここで、特徴量α・特徴量βは、相関が強い1つのグループに属しており、相関データ11a(
図2参照)から読み出されるものとする。
【0052】
前記したように、相関が強い特徴量のグループの中から1つずつが選択された上で回帰分析が行われるため、(
図3のS106,S107)、変数重要度に基づいて特定される重要特徴量は、特徴量α及び特徴量βのうちの一方(例えば、特徴量α)である。処理部13は、記憶部11に格納されている相関データ11aを参照し、重要特徴量に対応付けられている他の特徴量(例えば、特徴量β)が存在する場合には、この特徴量も併せて表示させる。
【0053】
すなわち、処理部13は、回帰分析で抽出された重要特徴量を表示部14(表示装置)に表示させる際、当該重要特徴量が所定の前記グループに属する場合には、当該グループに属する他の特徴量を当該重要特徴量に対応付けて表示させる。これによって、ユーザは、相関が強い特徴量α及び特徴量βの両方が溶接ビードの高さに影響を及ぼすことを容易に把握できる。
【0054】
図8に示す特徴量αの横側の上向き矢印は、特徴量αの値が大きいほど作業対象物の品質が高くなることを示している。また、特徴量βの横側の下向き矢印は、特徴量βの値が小さいほど作業対象物の品質が高くなることを示している。これらの矢印を示すことで、計測データに基づく特徴量の値が大きいほど品質が高くなるのか、それとも、特徴量の値が小さいほど品質が高くなるのかをユーザが一目で把握できる。
【0055】
また、
図8の例では、順位が2位の重要特徴量として、特徴量γ・特徴量δ・特徴量εが示されている。これらの特徴量γ・特徴量δ・特徴量εのうちの一つが回帰分析で特定され、残りは相関データ11a(
図2参照)から読み出される。
また、順位が3位の重要特徴量として、特徴量ρが示されている。この特徴量ρは、他に相関が強い特徴量が特に存在しないため、相関データ11a(
図2参照)には含まれていない。
【0056】
<効果>
第1実施形態によれば、作業対象物の品質が極端に低い下側外れ値の品質データ、及びこの品質データに対応する計測データが回帰分析の対象から除外される(
図3のS102)。これによって、ノイズとして作用するようなデータが除外されるため、回帰分析を行う際の分析精度が高められる。
また、処理部13が回帰分析で特定した重要特徴量を表示させる際、この重要特徴量との間で強い相関を有する他の特徴量も併せて表示させる。これによって、作業対象物の品質にどのような特徴量(計測データ)が強い影響を及ぼしているのかをユーザが漏れなく把握できる。
【0057】
また、第1実施形態によれば、作業対象物の品質に影響を与える可能性が高い重要特徴量をユーザに提示することで、熟練作業者の暗黙知(言語化されていない知)を形式知(言語化された知)として表す作業をサポートできる。つまり、重要特徴量の抽出の自動化を図ることで、熟練作業者の暗黙知を形式知にする作業の少なくとも一部を非属人化し、この作業を短期間で行うことができる。さらに、回帰分析の結果を用いて、所定の技能教育や品質管理の他、作業動作の補助といったことに応用することが可能になる。
【0058】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、相関が強い特徴量のグループの中から1ずつを選択する際の全ての組合せのそれぞれについて処理部13(
図2参照)が回帰分析を行う点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他(技能分析システム10の構成等:
図2参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0059】
図9は、第2実施形態に係る技能分析システムの処理部が実行する処理のフローチャートである(適宜、
図2も参照)。
なお、
図9のステップS101~S105については、第1実施形態(
図3参照)と同様であるから、説明を省略する。
図9のステップS105において特徴量同士の相関調査及び相関データ11aの保存を行った後、処理部13の処理はステップS201に進む。
【0060】
ステップS201において処理部13は、全ての組合せを調べたか否かを判定する。つまり、処理部13は、相関が強い特徴量のグループの中から1ずつを選択する際の全ての組合せを調べたか否かを判定する。ステップS201において、まだ調べていない特徴量の組合せ(つまり、回帰分析が行われていない特徴量の組合せ)が存在する場合(S201:No)、処理部13の処理はステップS106に進む。ここで、特徴量の選択の仕方について、
図10を用いて説明する。
【0061】
図10は、回帰分析の対象とする特徴量の選択に関する説明図である。
なお、
図10において、グループIDが「G0001」~「G0006」の計6つのグループは、
図6に示す相関データ11aに対応している。例えば、
図10に示す6つのグループから特徴量を1つずつ選択する際の組合せは、2
4×3
2=144通りある。処理部13は、記憶部11の相関データ11a(
図2参照)を参照して、6つのグループから特徴量を1つずつ選択し、さらに、グループを形成していない特徴量ρ,τ,σ,ω,・・・も説明変数に入れた上で回帰分析を行う(S107:
図9参照)。そして、処理部13は、6つのグループから特徴量を1つずつ選択する際の全ての組合せについて回帰分析を行う。
【0062】
再び、
図9に戻って説明を続ける。
ステップS106において処理部13は、相関が強い特徴量のグループの中から1つずつを選択する。なお、ステップS106で選択される特徴量の組合せは、回帰分析がまだ行われていない組合せである。
ステップS107において処理部13は、分析部136によって、品質データを目的変数とする回帰分析を行う。つまり、処理部13は、ステップS106で選択した組合せの特徴量の他、相関データ11aに含まれていない特徴量(相関が強い他の特徴量が存在しないような特徴量)を説明変数とし、品質データを目的変数として、回帰分析を行う。ステップS107の処理を行った後、処理部13の処理はステップS201に戻る。
【0063】
また、ステップS201において、全ての特徴量の組合せを調べた場合(S201:Yes)、処理部13の処理はステップS202に進む。ステップS202において処理部13は、所定の特徴量の組合せに基づいて、重要特徴量を探索する。すなわち、処理部13は、複数のグループから特徴量を1種類ずつ選択する際の組合せの中から、当該組合せに基づく目的変数(品質データ)の推定値と、実際の目的変数(品質データ)の値と、の間の相関係数が1に最も近くなる組合せを特定する。そして、処理部13は、相関係数が1に最も近くなる組合せでの回帰分析の結果に基づいて、変数重要度の高さ順に特徴量の順位付けを行い、例えば、1位~5位の特徴量を重要特徴量として特定する。
【0064】
ステップS109において処理部13は、分析結果を表示部14に表示させる。なお、分析結果の表示例については、第1実施形態(
図8参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0065】
<効果>
第2実施形態によれば、処理部13が各グループから特徴量を1つずつ選択する際の全ての組合せについて回帰分析を網羅的に行うようにしている。これによって、計測データに基づく複数種類の特徴量のうち、作業対象物の品質に影響を及ぼす特徴量を高精度に特定できる。
【0066】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、処理部13A(
図11参照)が複数種類のモデルのそれぞれを使って回帰分析を行い、さらに、変数重要度に基づく点数の合計値の大きさに基づいて重要特徴量を探索する点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0067】
図11は、第3実施形態に係る技能分析システム10Aの機能ブロック図である。
図11に示す技能分析システム10Aの処理部13Aは、第1実施形態で説明した構成に含まれる分析部136(
図2参照)に代えて、複数モデル分析部136Aを備えた構成になっている。複数モデル分析部136Aは、分析手法が異なる複数のモデルのそれぞれに基づいて、回帰分析を行う。このような複数のモデルとして、例えば、重回帰分析やLasso回帰、部分的最小二乗法、Ridge回帰といったものが用いられる。なお、データ数が多い場合には、勾配ブースティング決定木やニューラルネットワークといったものが用いられてもよい。
【0068】
図12は、技能分析システムの処理部が実行する処理のフローチャートである(適宜、
図11も参照)。
なお、
図12のステップS101~S106については第1実施形態(
図3参照)と同様であるから、説明を省略する。ステップS106において相関が強い特徴量のグループの中から1つずつを選択した後、処理部13Aの処理はステップS307に進む。
【0069】
ステップS307において処理部13Aは、複数モデル分析部136Aによって、複数のモデルのそれぞれを用いて回帰分析を行う。例えば、処理部13Aは、勾配ブースティング決定木、部分的最小二乗法、及びLasso回帰の計3つの手法のそれぞれを用いて、回帰分析を行う。なお、ステップS307で用いられる複数のモデルは、予め設定されていてもよく、また、次に説明するように、ユーザが選択できるようにしてもよい。
【0070】
図13は、回帰分析に用いられるモデルの選択画面の表示例である。
図13に示すように、ユーザの入力操作に基づいて、プルダウンリストK2の中から回帰分析に関する所定のモデルが選択されるようにしてもよい。
図13の例では、回帰分析に用いられるモデルの候補の中から部分的最小二乗法が選択されている。また、プルダウンリストK2の下側の提示欄K3には、ユーザによって選択されたモデルの名称が表示されている。すなわち、処理部13A(
図11参照)は、回帰分析のモデル候補の中から、重要特徴量の抽出に用いられる複数種類のモデルをユーザの入力操作で選択する際の選択画面を表示部14(表示装置)に表示させる。
【0071】
ユーザは、複数種類のモデルを選択した後、決定ボタンB2を押す。このように、回帰分析のモデルを候補の中から、実際に用いる複数種類のモデルをユーザが選択できるようにすることで、ユーザによる設定の自由度が高められる。
【0072】
次に、
図12のステップS308において処理部13Aは、重要特徴量探索部137によって、点数の合計値に基づいて重要特徴量を探索する。例えば、処理部13Aは、所定の回帰分析のモデルを用いた場合の結果に基づいて、変数重要度の高さ順に特徴量を順位付けし、さらに、順位に対応して点数付けを行う。また、処理部13Aは、他のモデルを用いて回帰分析を行った場合についても同様の処理を行う。そして、処理部13Aは、それぞれの特徴量について、複数種類のモデルに対応する点数の合計値を算出し、合計値の大きさ順に所定の数の特徴量を重要特徴量として抽出する。
【0073】
図14は、複数種類のモデルを用いた場合の重要特徴量の抽出に関する説明図である。
図14の例では、例えば、回帰分析の手法として勾配ブースティング決定木を用いた場合において、変数重要度の高いものから順に、特徴量α,γ,ζ,κ,μが1位~5位に順位付けされている。また、変数重要度の高さが1位のものには5点が付けられている他、2位には4点、3位には3点、4位には2点、5位には1点が付けられている。なお、部分的最小二乗法やLasso回帰が行われた場合についても同様である。
【0074】
そして、処理部13Aは、特徴量α,γ,ζ,κ,μ,τ,ωのそれぞれについて、回帰分析の各手法を行った場合の合計点数を算出する。
図14の例では、特徴量ζの合計点数が最も高く、次いで、特徴量γ,α,τ,κ,ω,μとなっている(ただし、特徴量κ,ωの合計点数は等しくなっている)。このように、処理部13は、複数種類のモデルのそれぞれで回帰分析を行い、説明変数(計測データ)が目的変数(品質データ)に寄与している度合いを示す変数重要度に基づく特徴量の点数付けをモデルごとに行う。そして、処理部13は、点数の合計値の大きさに基づいて、重要特徴量を抽出する。なお、
図14に示す点数付けの仕方や、特徴量の順位付けの仕方は一例であり、これに限定されるものではない。
【0075】
このように重要特徴量を探索した後、
図12のステップS109において処理部13Aは、分析結果を表示させる。なお、分析結果の表示例については第1実施形態(
図8参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0076】
<効果>
第3実施形態によれば、回帰分析の手法として、処理部13Aが複数のモデルを用いるようにしている。回帰分析のそれぞれの手法(つまり、複数のモデル)は、ある点では他の手法よりも優れているが、別の点では劣っているといったように一長一短であるが、複数のモデルに基づく合計点数を比較することで、汎用性が高く(つまり、ロバストで)、高精度な分析結果を得ることができる。
【0077】
≪変形例≫
以上、本開示に係る技能分析システム10,10Aや技能分析方法について各実施形態で説明したが、本開示はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、回帰分析に用いられる品質データが1種類である場合について説明したが、複数種類であってもよい。この場合には、
図3等に示す一連の処理が品質データの種類ごとに行われる。
【0078】
また、
図3に示すフローチャートにおいて、ステップS102,S103の処理の順序を入れ替えるようにしてもよい。つまり、処理部13が、計測データに基づく特徴量を抽出した後、品質データの下側外れ値を除外するようにしてもよい。なお、第2、第3実施形態についても同様のことがいえる。
【0079】
また、技能分析システム10,10Aが実行する処理(技能分析方法)が、コンピュータの所定のプログラムとして実行されてもよい。前記したプログラムは、通信線を介して提供することもできる他、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0080】
また、本開示は、各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、各実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0081】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10,10A 技能分析システム
11 記憶部
11a 相関データ
12 入力部
13,13A 処理部
14 表示部(表示装置)
131 下側外れ値除外部
132 特徴量抽出部
133 前処理部
134 相関調査部
135 特徴量選択部
136 分析部
136A 複数モデル分析部
137 重要特徴量探索部
M1 作業者
W1 作業対象物
S102 ステップ(外れ値除外ステップ)
S109 ステップ(表示ステップ)