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特開2024-17236動作状態通知装置及び動作状態通知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017236
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】動作状態通知装置及び動作状態通知方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240201BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240201BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20240201BHJP
   H01H 9/16 20060101ALI20240201BHJP
   H01H 13/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G08B25/04 H
G06F3/02 400
H01H9/16 G
H01H13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119749
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】泉 友成
【テーマコード(参考)】
5B020
5C087
5E555
5G052
5G206
【Fターム(参考)】
5B020AA15
5B020GG01
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG71
5C087GG83
5E555AA08
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC01
5E555BC09
5E555CA11
5E555CB20
5E555DA24
5E555FA00
5G052AA24
5G052BB01
5G052JA02
5G052JA08
5G052JB20
5G206AS45H
5G206AS45Z
5G206KS08
5G206QS09
(57)【要約】
【課題】 緊急通報装置などを含む種々の装置において、極めて薄型で、押下操作が可能であると共に、装置の動作状態を触感(触った場合の感触)により通知できる操作部を備えるようにする。
【解決手段】 押圧部201と触感提供部202とは、共にシート状のものであり、これらからなる通報ボタンユニット100は、シート状の極めて薄型のものである。動作状態になると、駆動回路104は、触感提供部202が第1の触感を提供できるようする。検出回路102により、押圧部201が押圧操作されたことが検出されると、通報処理部103が、所定の処理として所定の通報先に通報を行う。また、検出回路102が、押圧部が押圧操作されたことを検出すると、駆動回路104が、触感提供部202を第2の触感を提供ができるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニットと操作ユニットとを備える動作状態通知装置であって、
前記操作ユニットは、
シート状に形成され、使用者からの押圧操作を受け付けた場合に、出力信号を出力する押圧部と、
シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える触感提供部と
を備え、
前記制御ユニットは、
動作状態になった場合に、前記通報ボタンユニットの前記触感提供部を第1の状態に遷移させ、第1の触感を提供可能にする第1の駆動制御手段と、
前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号を検出する検出手段と、
前記検出手段により、前記押圧部からの前記出力信号が検出された場合に、所定の処理を実行する処理実行手段と、
前記検出手段により、前記押圧部からの前記出力信号が検出された場合に、前記操作ユニットの前記触感提供部を第2の状態に遷移させ、第2の触感を提供可能にする第2の駆動制御手段と
を備えることを特徴とする動作状態通知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動作状態通知装置であって、
前記通報ボタンユニットの前記触感提供部は、温度変化素子であり、
前記触感提供部の前記第1の状態と前記第2の状態とは、異なる温度状態である
ことを特徴とする動作状態通知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動作状態通知装置であって、
前記通報ボタンユニットの前記触感提供部は、電気刺激付与素子であり、
前記触感提供部の前記第1の状態は、前記電気刺激付与素子への給電状態であり、前記触感提供部の前記第2の状態は、前記電気刺激付与素子への非給電状態である
ことを特徴とする動作状態通知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の動作状態通知装置であって、
前記制御ユニットは、緊急通報装置であり、
前記制御ユニットの前記処理実行手段は、前記検出手段により、前記押圧部からの前記出力信号が検出された場合に、所定の通報先に対して通報を行うものであり、
前記操作ユニットの前記触感提供部を通じて、当該緊急通報装置が動作状態になった場合と、前記押圧部からの前記出力信号が検出され押下操作が検出された場合とを通知可能にする
ことを特徴とする動作状態通知装置。
【請求項5】
制御ユニットと操作ユニットとを備える動作状態通知装置の前記制御ユニットで用いられる動作状態通知方法あって、
前記操作ユニットは、シート状に形成され、使用者からの押圧操作を受け付けた場合に、出力信号を出力する押圧部と、シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える触感提供部とを備えるものであり、
動作状態になった場合に、第1の駆動制御手段が、前記通報ボタンユニットの前記触感提供部を第1の状態に遷移させ、第1の触感を提供可能にする第1の駆動制御工程と、
検出手段が、前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号を検出する検出工程と、
前記検出工程において、前記押圧部からの前記出力信号を検出した場合に、処理実行手段が、所定の処理を実行する処理実行工程と、
前記検出工程において、前記押圧部からの前記出力信号を検出した場合に、第2の駆動制御手段が、前記操作ユニットの前記触感提供部を第2の状態に遷移させ、第2の触感を提供可能にする第2の駆動制御工程と
を有することを特徴とする動作状態通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、指先など通じて感じられる触感によって、動作状態を通知できるようにする装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行や店舗などは、不特定多数の人が出入り可能であるため、従来から防犯対策として緊急通報システムが構築されている。また、近年においては、一般家庭においても、ホームセキュリティシステムなどと呼ばれる緊急通報システムが構築されるようになってきている。緊急通報システムは、緊急通報装置に1以上の通報ボタン(非常ボタン)が接続されて構成され、不審者遭遇時に通報ボタンを押下操作すると、緊急通報装置が所定の通報先に緊急通報を行うものである。これにより、警備員や警察官が駆け付けるなどといった対応を迅速に取ることが可能になる。
【0003】
従来の緊急通報システムの通報ボタン(非常ボタン)は、シーソー型スイッチや押し釦型スイッチが用いられており、ある程度の高さがあるため目立つ場合があり、不審者に気付かれない場所に設置するなどの工夫が必要であった。また、操作した場合には「カッチ」と比較的に大きな音を発生させるものもあり、不審者に気付かれないように押下操作することが難しいものもあった。このため、後に記す特許文献1には、非常時の操作において音がしなく、薄型の非常ボタン構造に関する発明が開示されている。特許文献1に開示された非常ボタンは、内部に受光素子を備え、スライド窓を解放することにより、外部からの入射光を当該受光素子が受光した場合に非常信号を出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-212043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された非常ボタンは、シーソー型スイッチや押し釦型スイッチが用いられたものよりも薄型ではあるものの、受光素子やスライド窓を備える構成であるため、ある程度の厚みを有するものである。また、特許文献1に開示された非常ボタンは、押下操作ではなくスライド操作が必要なものであり、押下操作に比べ操作し難い場合があると考えられる。また、特許文献1に開示された非常ボタンは、外部からの入射光が必要であるために、暗い場所での使用には適さない。このように、特許文献1に開示された非常ボタンは、従来のものに比べて薄型で、操作時に操作音を発生させない点で優れているものの、いくつかの問題点を有している。
【0006】
このため、極めて薄型であるために机の上などの目立つ場所に設置しても目立つことが無く、押下操作が可能で、周囲の明るさにも動作が左右されることなく、安定して機能する通報ボタン(非常ボタン)の実現が望まれている。また、極めて薄型の通報ボタン(非常ボタン)であっても、不審者に気付かれることなく、押下操作が可能な状態にあるか否か、また、押下操作が受け付けられか否か等を使用者(操作者)に対して確実に通知できるようにすることも望まれる。すなわち、光や音以外の方法により、動作の状態の通知をできるようにすることが望まれる。このように、光や音以外の方法で上述した動作の状態を通知できれば、視覚や聴覚に障害がある使用者に対しても、適切に動作の状態を通知できる。
【0007】
以上のことに鑑み、この発明は、上記問題点を一掃し、例えば緊急通報装置などを含む種々の装置において、極めて薄型で、押下操作が可能であると共に、装置の動作状態を触感(触った場合の感触)により通知できる操作部を備えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の動作状態通報装置は、
制御ユニットと操作ユニットとを備える動作状態通知装置であって、
前記操作ユニットは、
シート状に形成され、使用者からの押圧操作を受け付けた場合に、出力信号を出力する押圧部と、
シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える触感提供部と
を備え、
前記制御ユニットは、
動作状態になった場合に、前記通報ボタンユニットの前記触感提供部を第1の状態に遷移させ、第1の触感を提供可能にする第1の駆動制御手段と、
前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号を検出する検出手段と、
前記検出手段により、前記押圧部からの前記出力信号が検出された場合に、所定の処理を実行する処理実行手段と、
前記検出手段により、前記押圧部からの前記出力信号が検出された場合に、前記操作ユニットの前記触感提供部を第2の状態に遷移させ、第2の触感を提供可能にする第2の駆動制御手段と
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の緊急通報システムによれば、押圧部と触感提供部とは、共にシート状のものであり、これらからなる操作ユニットは、シート型(シート状)の極めて薄型のものである。制御ユニットは、動作状態になると、第1の駆動制御手段により、触感提供部が第1の状態に遷移するように制御され、第1の触感の提供ができるようにされる。この場合に、使用者の指などが触感提供部に接触すると、使用者は第1の触感を感じることができ、自機が動作可能な状態にあることを認識することができると共に、近傍に押圧部が存在することも認識できる。
【0010】
検出手段により、押圧部が押圧操作されたことが検出されると、処理実行手段により、所定の処理が実行される。また、検出手段により、押圧部が押圧操作されたことが検出されると、第2の駆動制御手段により、触感提供部が第2の状態に遷移するように制御され、第2の触感の提供ができるようにされる。この場合に、使用者の指などが触感提供部に接触すると、使用者は第2の触感を感じることができ、押圧部に対す押圧操作が受け付けられたことが認識できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、緊急通報装置などを含む種々の装置において、極めて薄型で、押下操作が可能であると共に、装置の動作状態を触感(触った場合の感触)により通知できる操作部を備えるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態の緊急通報システムの構成例を説明するためのブロック図である。
図2】実施の形態の緊急通報システムの通報ボタンユニットの設置例と押圧部と触感提供部の構成例とを説明するための図である。
図3】実施の形態の緊急通報システムの通報ボタンユニットの構成例都を説明するための図である。
図4】実施の形態の緊急通報システムで行われる処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、この発明による、装置、方法、プログラムの一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、例えば、銀行や店舗といった不特定多数の者が出入りする警備対象施設に設置される緊急通報システムに、この発明による装置、方法が適用された場合を例にして説明する。
【0014】
[緊急通報システムの構成例]
図1は、この発明による装置、方法が適用された実施の形態の緊急通報システム1の構成例を説明するためのブロック図である。図1に示すように、この実施の形態の緊急通報システム1は、通報ボタンユニット(操作ユニット)100と、緊急通報装置(制御ユニット)200とからなる。緊急通報システム1は、不審者の侵入などの通報事象が発生した場合に、通報ボタンユニット100に対して押下操作を行うことにより、緊急通報装置200が、ネットワーク2を介して、緊急通報受理機関3に対して、緊急通報を行う。
【0015】
ネットワーク2は、例えば、アナログ電話網(PSTN(Public Switched Telephone Network))やIP(Internet Protocol)網などの広域通信網である。ネットワーク2がIP網の場合には、ネットワーク2と緊急通報装置200との間に、いわゆるゲートウェイ装置が設けられる。ゲートウェイ装置は、プロトコルが異なるネットワークを接続する機能を有するものである。緊急通報受理機関3は、例えば、警備会社や警察機関といった緊急通報を受け付けて、これに対応することができる機関である。
【0016】
<通報ボタンユニット100の構成例>
図2は、実施の形態の緊急通報システム1の通報ボタンユニット100の設置例と、押圧部101と触感提供部102の構成例とを説明するための図である。図1に示したように、通報ボタンユニット100は、押圧部101と触感提供部102とを備えて構成されるものであり、この実施の形態においては、厚さが1mm以下の極めて薄型に構成されるシート型入出力デバイスである。
【0017】
このため、図2(A)に示すように、例えば、銀行や店舗といった警備対象施設に置かれ、顧客と対面する従業員が使用するデスク(机)4の天板の上面に、シート型入出力デバイスである通報ボタンユニット100を貼付するようにして設けることができる。また、通報ボタンユニット100の上面(押圧面)に対しては、例えばデスク4の天板と同様の彩色を施すなどの対応を取ることによって、いわゆるカモフラージュすることができる。換言すれば、通報ボタンユニット100は、これが設けられた部分に擬態することができるものであり、人目につきやすく、かつ、操作しやすい場所に、目立たないように配置することができるものである。
【0018】
この実施の形態において、押圧部101は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride))を圧電体として用いた圧電(ピエゾ)素子で構成される。押圧部101は、図2(B)に示すように、下側電極101Dと上側電極101Uとで圧電体101Pを挟んで構成したものであり、その厚みは例えば0.1mm程度である。上側電極101Uは配線(+)を通じて、また、下側電極101Dは配線(-)を通じて、それぞれが緊急通報装置200の検出回路202に接続される。
【0019】
押圧部101に押圧力(圧力)が加わった場合に、圧電体101Pに電圧が発生し、図2(B)に示すように、配線(+)及び配線(-)を通じて、緊急通報装置200の検出回路202に印加される。このように、押圧部101は、押圧操作されると、電圧を出力信号として発生させて、検出回路202に供給できるものである。これにより、検出回路202では、押圧部101から電圧が印加されれば、押圧部101に対して押圧操作が行われたことを検出できる。また、検出回路202では、押圧部101から電圧が印加されていなければ、押圧部101に対して押圧操作されていないことが検出できる。
【0020】
触感提供部102は、これに触れた場合に何等かの感触を与えることができるものであり、この実施の形態において触感提供部102は、導電ペーストにより形成された発熱素子であり、触感(触った場合の感触)として温度変化を与えるものである。触感提供部102は、図2(C)に示すように、その厚みは例えば0.1mm程度のものであり、その両端が配線(+)及び配線(-)を通じて、緊急通報装置200の駆動回路204に接続されている。
【0021】
触感提供部102は、駆動回路204から電力が供給されている場合には、発熱状態(第1の状態)となり、触感提供部102部分に触れている使用者の指を通じて他の部分よりも明らかに高い温度(第1の触感(温かさ、熱さ))を感じさせる。この場合の高い温度は、例えば43℃以上で、室温より温かいと感じ取れる程度の温度である。なお、第1の触感を、温かさ、熱さとしているのは、人によって感じ方が違うからであり、明らかに高い温度になっていることを感じ取れる状態を意味している。また、触感提供部102は、駆動回路204から電力が供給されていない場合には、非発熱状態(第2の状態)となり、触感提供部102部分に触れている使用者の指を通じて発熱状態のときと比べて明らかに低い温度(第2の触感)を感じさせる。この場合の低い温度は、発熱状態である43℃よりも明らかに低いと分かる例えば35℃以下、大まかには室温程度である。
【0022】
押圧部101と触感提供部102とは、同一シート上に配置されていれば、どのような態様で配置されていてもよい。しかし、使用者の指により同時に触れられるようにしておくと便利である。図3は、通報ボタンユニット100の構成例を説明するための図である。図3(A)に示す通報ボタンユニット100Aは、四角形状のシートの中心部分に、四角形状の押圧部101Aを配置し、その下側に細長の触感提供部102Aを配置して構成したものである。押圧部101Aは、図2(B)を用いて説明した構成の感圧素子であり、触感提供部102Aは、図2(C)を用いて説明した構成の発熱素子である。
【0023】
図3(A)に示した態様の通報ボタンユニット100Aの場合には、使用者の指、例えば指先の内側(指紋のある部分(指の腹))の一部で触感提供部102Aによる温度を感じ取り、同じ指先の内側の全体を使って押圧部101Aを押圧操作することができる。なお、図3(A)の場合には、押圧部101Aの下側に触感提供部102Aを配置したが、これに限るものではなく、押圧部101Aの下側、上側、右側、左側の1か所以上に触感提供部102Aを配置する構成としてもよい。
【0024】
また、図3(B)に示す通報ボタンユニット100Bは、四角形状のシートの中心部分に、四角形状の押圧部101Bを配置し、その周囲を囲むように、触感提供部102Bを配置して構成したものである。押圧部101Aは、図2(B)に示した構成の感圧素子であり、触感提供部102Aは、形状が異なるだけで、図2(C)に示した構成の発熱素子である。図3(B)に示した態様の通報ボタンユニット100Bの場合には、触感提供部102B部分に接触している使用者の指先の内側の全体で、触感提供部102Aによる温度を感じ取り、同じ指先の内側の全体で押圧部101Bを押圧操作することができる。
【0025】
また、図3(A)、(B)の通報ボタンユニット100A、100Bの押圧部101A、100Bを円形状のものとし、触感提供部102A、102Bを円弧上のものとしてもよい。すなわち、押圧部101A、100Bと、触感提供部102A、102Bとは、種々の形状のものとすることができる。
【0026】
<緊急通報装置200の構成例>
緊急通報装置200は、図1に示したように、制御部201と、検出回路202と、通報処理部203と、駆動回路204と、駆動制御部205と備える。制御部201は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えて構成されたマイクロプロセッサであり、緊急通報装置200の各部を制御する機能を実現する。検出回路202は、上述もしたように、通報ボタンユニット100の押圧部101からの配線(+)と配線(-)とが接続され、押圧部101から印加される電圧の変化に応じて、押圧部101が押圧(押下)された場合にこれを検出し、制御部201に通知する。制御部201は、検出回路202を通じて押圧部101が押圧操作されたことが検出された場合には、通報処理部203を制御して通報処理を行うようにする。
【0027】
通報処理部203は、検出回路202を通じて通報ボタンユニット100の押圧部101が押圧操作されたことが検出された場合に、制御部201の制御の下、緊急通報受理機関3に対して、通報事象が発生したことを通報する処理を行う。通報処理部203は、制御部201の不揮発性メモリに記憶保持されている緊急通報受理機関3の電話番号を用いて、緊急通報受理機関3に電話を掛け、緊急通報受理機関3が応答したら通報する。この場合の通報は、例えば、当該警備対象施設の名称等の識別情報を含む通報メッセージを送信するものである。
【0028】
駆動回路204は、通報ボタンユニット100の触感提供部102からの配線(+)と配線(-)とが接続され、触感提供部102に対して駆動電源を供給する機能を実現する。駆動制御部205は、制御部201の制御の下、駆動回路204を制御し、触感提供部102に駆動電源を供給する場合と、供給しない場合とを切り替える。
【0029】
この実施の形態の緊急通報装置200では、電源が投入され動作状態になったら、制御部201の制御の下、駆動制御部205は、駆動回路204を制御し、通報ボタンユニット100の触感提供部102に駆動電源を供給する。これにより、触感提供部102は、第1の状態(発熱状態)となる。この場合、通報ボタンユニット100の触感提供部102部分に使用者が指先の内側などを接触させた場合には、熱さを感じさせることができ、緊急通報システム1が動作状態にあることを使用者に認識させることができる。また、近傍に押圧部101が存在することも認識させることができる。
【0030】
緊急通報システム1が動作状態にあるときに、不審者の侵入といった所定の通報事象が発生した場合に、通報ボタンユニット100の押圧部101が押圧操作されたとする。この場合、制御部201の制御の下、駆動制御部205は、駆動回路204を制御し、通報ボタンユニット100の触感提供部102への駆動電源の供給を停止させて、第2の状態(非発熱状態)にする。これにより、通報ボタンユニット100の触感提供部102部分に使用者が指先の内側などを接触させた場合には、熱さを感じさないようにでき、通報ボタンユニット100の押圧部101に対する押圧操作が認識され、受け付けられたことを認識させることができる。
【0031】
触感提供部102への駆動電力の供給を停止させた直後においては、制御部201が通報処理部203を制御して、緊急通報受理機関3に電話を掛け、緊急通報受理機関3との間に通話回線を接続し、通報処理を行う。この通報処理が適切に行うことができた場合、制御部201の制御の下、駆動制御部205は、駆動回路204を制御し、通報ボタンユニット100の触感提供部102に駆動電源の供給を再開して、第1の状態(発熱状態)にする。このように、触感提供部102は、第1の状態(発熱状態)にあり、押圧部101が押圧操作されることにより、第2の状態(非発熱状態)なり、通報が適切に行われることにより、再度、第1の状態(発熱状態)戻るようにされる。このような、触感提供部102の一連の温度変化によって、適切に通報処理が実行されたことを使用者が認識できる。
【0032】
[緊急通報システムで行われる処理のまとめ]
図4は、実施の形態の緊急通報システム1で行われる処理を説明するためのフローチャートである。図4のフローチャートに示す処理は、緊急通報装置200の制御部201の制御の下に実行される処理である。緊急通報装置200に電源が投入されると、必要な各部に電源が供給され、緊急通報装置200が動作状態に遷移する(ステップS101)。この場合に、まず、制御部201は、駆動制御部205を制御し、駆動回路204を通じて、通報ボタンユニット100の触感提供部102に駆動電力を供給するようにして、触感提供部102を駆動させる(ステップS102)。これにより、発熱素子である触感提供部102は、第1の状態(発熱状態)となり、第1の触感(温かさ、熱さ)を感じさせるようになる。
【0033】
次に、制御部201は、検出回路202からの検出出力を監視し、通報ボタンユニット100の押圧部101が押圧操作(押下操作)されたか否かを判別する(ステップS103)。ステップS103の判別処理において、押圧部101は押圧操作されていないと判別したときには、制御部201は、電源を落とす終了操作が行われたか否かを判別する(ステップS104)。ステップS104の判別処理において、終了操作が行われたと判別したときには、各部への駆動電力の供給を停止するなどの所定の終了処理を行い(ステップS105)、この図4に示す処理を終了する。ステップS104の判別処理において、終了処理は行われていないと判別したときには、ステップS103からの処理を繰り返すようにする。
【0034】
また、ステップS103の判別処理において、押圧部101が押圧操作されたと判別したとする。この場合、制御部201は、駆動制御部205を制御し、駆動回路204を通じて、通報ボタンユニット100の触感提供部102に供給している駆動電力の供給を停止させ、触感提供部102を停止させる(ステップS106)。これにより、発熱素子である触感提供部102は、第2の状態(非発熱状態)となり、第2の触感である温かさや熱さを感じさせない状態、換言すれば発熱していない状態を感じさせる状態になる。
【0035】
次に、制御部201は、通報処理部203を制御し、オフフック状態にして回線を捕捉し、登録された番号への発信、すなわち、緊急通報受理機関3に対して発信する(電話を掛ける)処理を実行する(ステップS107)。なお、ステップS107において発信処理を実行した場合には、制御部201は、図示しない時計回路を用いて、発信処理を実行してからの経過時間の計測を開始させる。後述するタイムアウトになったか否かを判別するためである。
【0036】
制御部201は、通報処理部203の状態を監視し、緊急通報受理機関3が応答して、緊急通報受理機関3と当該緊急通報装置200との間に通信回線が接続されたか否かを判別する(ステップS108)。ステップS108の判別処理において、通信回線が接続されたと判別したときには、制御部201は、通報処理部203を制御し、通報事象の発生を緊急通報受理機関3に通報する処理を行う(ステップS109)。なお、ステップS109では、ステップS107において開始させた、発信処理を実行してからの経過時間の計測を終了させる。
【0037】
次に、制御部201は、駆動制御部205を制御し、駆動回路204を通じて、通報ボタンユニット100の触感提供部102への駆動電力の供給を再開して、触感提供部102を再駆動させる(ステップS110)。これにより、発熱素子である触感提供部102は、第1の状態(発熱状態)に復帰し、第1の触感(温かさ、熱さ)を感じさせるようになる。
【0038】
この後、制御部201は、電源を落とす終了操作が行われたか否かを判別する(ステップS111)。ステップS111の判別処理において、終了操作が行われたと判別したときには、各部への駆動電力の供給を停止するなどの所定の終了処理を行い(ステップS112)、この図4に示す処理を終了する。ステップS111の判別処理において、終了処理は行われていないと判別したときには、ステップS111からの処理を繰り返すようにする。
【0039】
また、ステップS108の判別処理において、通信回線が接続されていないと判別したとする。この場合、制御部201は、上述したようにステップS107において計測を開始した発信処理からの経過時間が、所定時間以上となり、いわゆるタイムアウトになったか否かを判別する(ステップS113)。ステップS113の判別処理において、タイムアウトになっていないと判別したときには、ステップS108からの処理を繰り返す。また、ステップS113の判別処理において、タイムアウトになったと判別したした時には、ステップS107において捕捉した回線を解放したり、発信処理からの経過時間の計測を終了したりするなどの復旧処理を行う(ステップS114)。この後、ステップS107からの処理を繰り返すようにし、発信処理のリトライを行う。
【0040】
このように、この実施の形態の緊急通報システム1においては、動作状態になったら発熱素子である触感提供部102を駆動して発熱状態にする。この場合に、触感提供部102部分に使用者が指先などを接触させていれば熱さを感じることになり、緊急通報システム1が動作状態にあることを認識することができると共に、近傍に押圧部101が存在することも認識できる。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作されたら、触感提供部102を停止させて非発熱状態にし、緊急通報受理機関3への発信処理を行う。この場合に、触感提供部102部分に使用者が指先などを接触させて熱さを感じなければ、押圧部101への押圧操作が緊急通報装置200で受け付けられたことを認識できる。
【0041】
更に、当該発信処理に応じて通信回線が接続されたら、制御部201は、通報処理部203を通じて通報処理を行い、触感提供部102を再駆動して発熱状態に復帰させる。この場合、触感提供部102部分に使用者が指先などを接触させていれば、再度、熱さを感じることになり、適切に通報処理が行われたことを認識できる。このように、緊急通報システム1が動作状態にあること→押圧部101への押圧操作が受け付けられたこと→適切に通報が行われたことを、使用者は触感提供部102の温度変化に応じて、順次に認識することができる。
【0042】
[実施の形態の効果]
この実施の形態の緊急通報システムは、PVDFを圧電体として用いた圧電(ピエゾ)素子により押圧部101を構成し、導電ペースを用いて発熱素子である触感提供部102を構成しており、極めて薄型(シート型)の通報ボタンユニットが実現できる。また発熱素子である触感提供部102により、動作状態等を周囲に知られることなく使用者が認識することができる。従って、使用者(操作者)が、視覚や聴覚に障害のある者であっても、動作状態等を認識することができる。これにより、極めて薄型で、押下操作が可能で、動作状態等を周囲に知られることなく使用者が認識可能な通報ボタン(非常ボタン)を備えた緊急通報システムが実現できる。
【0043】
[変形例]
<状態通知の他の例>
上述した実施の形態では、発熱素子である触感提供部102により、緊急通報システム1が動作状態にあること→押圧部101への押圧操作が受け付けられたこと→適切に通報が行われたことの3状態を通知するようにした。しかし、これに限るものではない。通報ボタンユニット100の押圧部101が押圧操作され、これが認識されて通報処理が行われるまでにかかる時間は、実際にはごく短い。このため、触感提供部102が、発熱状態→非発熱状態→発熱状態というように遷移したとしても、上述した3つの状態を確実に認識することが難しい場合もあると考えられる。
【0044】
そこで、押圧部101が押圧への押圧操作が受け付けられたことは通知せずに、押圧部101への押圧操作が受け付けられ、これに応じて適切に通報処理が行われた場合に、使用者に通知するようにしてもよい。簡単には、図4に示した処理において、ステップS106の触感提供部102を停止させる処理は行わずに、ステップS110において、触感提供部102を停止させる処理を行うようにすればよい。これにより、触感提供部102が発熱状態(温かさ、熱さを感じさせる状態)にあれば、緊急通報システム1が動作状態にあることを使用者に通知できる。また、触感提供部102が非発熱状態(温かさ、熱さを感じさせない状態)にあれば、正常に通報処理が行われた状態にあることを使用者に通知できる。
【0045】
<触感提供部102の他の例>
上述した実施の形態において、触感提供部102は、例えば導電ペーストにより構成された発熱素子であり、温かさ、あるいは、熱さを感じるか否かによって、緊急通報システムの状態を通知するようにした。しかし、これに限るものではない。触感提供部102は、電気刺激を与えるものや、発熱状態と冷却状態とを与えるものなど、使用者に対して使用者の指先などを通じて認識できる所定の触感(触れた場合に得られる感触)を与えることができるものであればよい。
【0046】
<電気刺激を与えるもの>
触感提供部102を、電気刺激を与えるもの(電気刺激付与素子)として実現するには、例えば、所定の間隔を空けて両極の電極(+電極と-電極)を設けることが考えられる。すなわち、駆動回路204からの配線(+)の末端に+電極を設け、駆動回路204からの配線(-)の末端に-電極を設け、これらを通報ボタンユニット100の上面であって、指先などが同時に接触可能な位置に露呈させて固定する。これにより、両電極間に駆動回路204から所定の電圧が印加されている場合に、両電極を使用者の指先などが同時に触れると、ピリピリとした電気刺激を与えることができる。また、両電極間に駆動回路204からの所定の電圧が印加されていない場合には、両電極に使用者の指先などが同時に触れても、ピリピリとした電気刺激が与えられることはない。
【0047】
従って、両電極間に駆動回路204から所定の電圧が印加されている場合が第1の状態(電気刺激付与状態)となり、また、両電極間に駆動回路204からの所定の電圧が印加されていない場合が第2の状態(電気刺激非付与状態)となる。これにより、緊急通報システム1が動作状態にあるときには、触感提供部102に電圧を印加して電気刺激を与えることができるようにする。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作され、これが検出されたときには、触感提供部102への電圧の印加を停止して、電気刺激を与えないようにする。更に、通報が適切に行われた時には、触感提供部102への電圧の印加を再開して、電気刺激を与えることができるようにする。このようにすれば、上述した実施の形態の場合と同様に、3状態を使用者が触感、この場合には電気刺激の有無に応じて認識することが可能になる。
【0048】
また、別の例として、緊急通報システム1が動作状態にあるときには、触感提供部102に電圧を印加して電気刺激を与えることができるようにする。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作され、通報が適切に行われた時には、触感提供部102への電圧の印加を停止して、電気刺激を与えないようにする。このようにすれば、緊急通報システム1が動作状態にある場合と、通報事象発生後に押圧部101が押圧操作され、通報が適正に行われた場合とを、使用者が電気刺激の有無によって適切に認識することができる。
【0049】
なお、この例の場合、両極の電極を設けるだけなので、通報ボタンユニット100の構成が複雑になったり、厚みが増したりすることもない。しかし、過大な電気刺激を与えることが無く、適度な電気刺激となるように、両電極に印加する電圧は低レベルのものとなる。例えば、パルス幅が0.2ms、パルス高(電圧)が17V~42V、電流が33mA~118mA、パルス間隔が23ms~700msとなる電気刺激を与えることができるようにすればよい。
【0050】
<発熱状態と冷却状態とを与えるもの>
触感提供部102を、発熱状態と冷却状態とを与えるものとして実現する場合には、ペルティエ素子(ペルチェ素子)を用いる。ペルティエ素子は、ペルティエ効果を用いた板状の半導体熱電素子の一種であり、CPUの冷却装置としても用いられるものである。ペルティエ素子は、所定方向に直流電流を流すと、素子の上面で吸熱(冷却)し、下面で発熱(加熱)する。また、直流電流の向きを変えると冷却面と加熱面が入れ替わる。このような特性を生かし、上述した実施の形態の触感提供部102として用いた発熱素子の代わりに、ペルティエ素子を用いるようにする。ペルティエ素子もまた、例えば、0.1mm程度に薄型化できる。
【0051】
これにより、ペルティエ素子により実現される触感提供部102に対して、駆動回路204から第1の方向に直流電流を供給するようにすると、触感提供部102の上面が発熱して、熱さを感じさせることができる。また、駆動回路204から第1の方向とは逆方向(第2の方向)の直流電流を供給するようにすると、触感提供部102の上面が吸熱して冷却され、冷たさ感じさせることができる。すなわち、ペルティエ素子である触感提供部102に駆動回路204から第1の方向に直流電流が供給されている場合が、第1の状態(発熱状態)となる。また、ペルティエ素子である触感提供部102に駆動回路204から第1の方向とは逆方向の直流電流が供給されている場合が、第2の状態(吸熱状態(冷却状態))となる。
【0052】
これにより、緊急通報システム1が動作状態にあるときには、触感提供部102に第1の方向の直流電流を供給して、発熱状態(温かさ、熱さを与える状態)にする。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作され、これが検出されたときには、触感提供部102への第1の方向とは逆方向の直流電流を供給して、吸熱状態(冷たさを与える状態)にする。更に、通報が適切に行われた時には、触感提供部102へ第1の方向の直流電流を供給して、発熱状態(温かさ、熱さを与える状態)にする。このようにすれば、上述した実施の形態の場合と同様に、3状態を使用者が触感(温かさ、熱さと冷たさ)に応じて認識できる。
【0053】
また、別の例として、緊急通報システム1が動作状態にあるときには、触感提供部102に第1の方向の直流電流を供給して、発熱状態(温かさ、熱さを与える状態)にする。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作され、通報が適切に行われた時には、触感提供部102へは第1の方向とは逆方向の直流電流を供給して、吸熱状態(冷たさを与える状態)にする。このようにすれば、緊急通報システム1が動作状態にある場合と、通報事象発生後に押圧部101が押圧操作され、通報が適正に行われた場合とを、使用者が熱さと冷たさによって適切に認識することができる。
【0054】
<冷却状態を与えるもの>
また、触感提供部102として、ペルティエ素子を用い、冷却状態のオン/オフによって、動作状態等を示すようにしてももちろんよい。すなわち、ペルティエ素子により実現される触感提供部102に対して、駆動回路204から所定方向の直流電流を供給するようにすると、触感提供部102の上面が吸熱され、冷たさを感じさせることができる。また、駆動回路204からの所定方向の直流電流の供給を停止すると、触感提供部102の上面の吸熱が停止され、冷たさ感じさせないようにできる。すなわち、ペルティエ素子である触感提供部102に所定方向の直流電流が供給されている場合が、第1の状態(冷却状態)となる。また、ペルティエ素子である触感提供部102に駆動回路204から所定方向の直流電流が供給されていない場合が、第2の状態(非冷却状態)となる。
【0055】
これにより、緊急通報システム1が動作状態にあるときには、触感提供部102に所定方向の直流電流を供給して、冷却状態(冷たさを与える状態)にする。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作され、これが検出されたときには、触感提供部102への所定方向の直流電流の供給を停止して、非冷却状態(冷たさを与えない状態)にする。更に、通報が適切に行われた時には、触感提供部102へ所定方向の直流電流を供給して、冷却状態(冷たさを与える状態)にする。このようにすれば、上述した実施の形態の場合と同様に、3状態を使用者が触感(冷たく感じる状態と、冷たく感じない状態)に応じて認識できる。
【0056】
また、別の例として、緊急通報システム1が動作状態にあるときには、触感提供部102に所定方向の直流電流を供給して、冷却状態(冷たさを与える状態)にする。この後、通報事象が発生し、押圧部101が押圧操作され、通報が適切に行われた時には、触感提供部102へは所定方向の直流電流の供給を停止して、非例冷却状態(冷たさを与えない状態)にする。このようにすれば、緊急通報システム1が動作状態にある場合と、通報事象発生後に押圧部101が押圧操作され、通報が適正に行われた場合とを、使用者が冷たさを感じる状態と冷たさを感じない状態とよって適切に認識することができる。
【0057】
<その他の変形例>
なお、上述した実施の形態の緊急通報システム1では、図1に示したように、1つの通報ボタンユニット100が、緊急通報装置200に接続されているものとして説明したが、これに限るものではない。緊急通報装置200に対しては、複数の通報ボタンユニット100を接続し、必要な場所に配置することができる。すなわち、通報ボタンユニット100は、デスク上だけでなく、デスクの引き出しの全面部分、デスクの引き出しの中、壁面など、種々の場所に貼付するようにして設けることができる。通報ボタンユニット100は、シート型であるため、曲面部分への貼付も可能である。
【0058】
また、通報ボタンユニット100の形状、大きさは、例えば指先の内側部分(指の腹部分)操作することを想定すると、1辺が1.5cm~2cmの正方形とすることが考えられる。しかし、これに限るものではない。通報ボタンユニット100の形状、大きさについては種々の形状、大きさとすることができる。従って、押圧部101、触感提供部102の形状、大きさ、配置位置は、種々の態様とすることができる。要は、押圧部101を適切に押下操作でき、触感提供部102を通じて所定の触感を感じることができるようにすればよい。
【0059】
また、上述した実施の形態では、発熱素子として、導電ペーストを用いるようにしたが、これに限るものではない。発熱素子として、上述したペルティエ素子を用いてもよい。要は、駆動電力の供給によって、適度な温かさや熱さを感じさせることができ、駆動電力の供給停止によって迅速に加熱状態を終息させて、温度を低下させることができる種々のものを用いることができる。
【0060】
また、電気刺激を与えるもの(電気刺激付与素子)も、上述したものに限らず、過度の電気刺激を与えることなく、適度な電気刺激を与えることが可能な方式のものを用いることができる。また、ペルティエ素子以外にも、冷却状態を形成することができ、薄型に構成することができる素子があれば、これを用いてもよい。また、また、それぞれが別々の冷却素子と発熱素子とを用いるようにすることも可能である。この場合には、冷却素子と発熱素子とを別々に制御することになる。
【0061】
すなわち、通報ボタンユニット100の触感提供部102としては、導電ペースト等の発熱素子や冷感や温感を与えるペルティエ素子などの触感として温度変化を与える種々の温度変化素子を用いることができる。また、電気刺激を与えることができる種々の構成の電気刺激付与素子を用いることができる。
【0062】
<発熱素子の形成方法の具体例>
FHE(Flexible Hybrid Electronics)基板技術においては、「導電ペーストには焼成時間及び焼成温度に比例して抵抗値が下がる。」という特徴があり、これを利用して触感提供部102を構成することができる。例えば、図3に示したように、実際に発熱する部分となる発熱部102A、102Bは、導電ペーストで形成した上で、低温で、あるいは、短時間、あるいは、低温かつ短時間で、1回目の焼成を行う。これにより、発熱部102A、102Bからなる部分を高抵抗にすることができる。
【0063】
その後、発熱部102A、102Bを遮熱し、遮熱した発熱部102A、102Bと、発熱部102A、102Bから引き出された引き出し線部分(図示せず)との全体を高温で、あるいは、長時間、あるいは、高温かつ長時間で、2回目の焼成を行う。これにより、引き出し線部分は低抵抗化した上で、発熱部102A、102Bは遮熱しているので高抵抗のままとすることができる。すなわち、高抵抗化されて効率よく発熱する発熱部102A、102Bと、低抵抗化されて発熱が抑制された引き出し線部分とからなる発熱素子を構成することができる。
【0064】
このように、FHE基板技術を利用し、高抵抗化して効率よく発熱する発熱部102A、102Bと、これに効率よく電力を供給する低抵抗化した引き出し線部分とからなる発熱素子を形成することができる。従って、低抵抗化した発熱部に対して、低抵抗した引き出し線を接続して発熱素子を形成することもできる。ここで説明した発熱素子の形成方法は一例であり、利用に適した発熱素子を形成することが可能な種々の方法を用いることができる。
【0065】
[他の装置への応用]
この発明の装置、方法は、緊急通報システム以外にも、種々の装置に対して適用可能である。例えば、自動販売機、患者が看護師を呼び出すためのナースコールシステム、ドアホンシステム、エレベーターの操作ボタンシステムといった、押下操作する操作ユニットと、操作ユニットに対する操作に応じて種々の処理を実行するようにする制御ユニットを備えたシステム(装置)にこの発明を適用することができる。
【0066】
例えば、自動販売機に適用する場合には、操作ボタンに触れた場合に、温かさや熱さを感じれば販売中であることが分かる。この後、当該操作ボタンが押下操作され、金銭の投入や電子マネーによる支払いがされた場合には、商品を排出する処理を実行し、当該操作ボタンを通じて冷たさを感じさせることにより、操作ボタンに対する押下操作が適切に受付けられたことを通知できる。なお、自動販売機の場合には、操作ボタンに軽く触れた場合には、当該接触を検知して、商品名を音声により放音するなど、視覚に障害を持つ方に対する方策を講じることもできる。
【0067】
また、ナースコールシステム、ドアホンシステムの場合には、操作ボタンに触れた場合に、温かさや熱さを感じれば当該ナースコールシステムやドアホンシステムが動作中であることが分かる。この後、当該操作ボタンが押下操作された場合には、ナースセンターの呼び出し音を鳴らしたり、屋内の呼び出し音を鳴らしたりするなどの呼び出し処理を実行する。この後、当該操作ボタンを通じて冷たさを感じさせることにより、操作ボタンに対する押下操作が適切に受付けられたことを通知できる。
【0068】
また、エレベーターの操作ボタンシステムの場合であって、エレベーターに乗る前において、エレベーターの外の操作ボタンに触れた場合に、温かさや熱さを感じれば当該エレベーターが動作中であることが分かる。この後、当該操作ボタンが押下操作された場合には、当該操作階にエレベーター移動させる処理が実行される。この後、当該操作ボタンを通じて冷たさを感じさせることにより、操作ボタンに対する押下操作が適切に受付けられたことを通知できる。なお、この例の場合、操作ボタンに軽く触れた場合には、当該接触を検知して、「上に行きます。」、「下に行きます。」といった向かう方向を音声により放音するなどの対応を取ることも可能である。
【0069】
また、エレベーターの操作ボタンシステムの場合であって、エレベーターに乗った後において、エレベーターの外の操作ボタンに触れた場合に、温かさや熱さを感じれば当該エレベーターが動作中であることが分かる。この後、当該操作ボタンが押下操作された場合には、操作された操作ボタンに応じた階にエレベーター移動させる処理が実行される。この後、当該操作ボタンを通じて冷たさを感じさせることにより、操作ボタンに対する押下操作が適切に受付けられたことを通知できる。なお、この例の場合、操作ボタンに軽く触れた場合には、当該接触を検知して、「8階に向かいます。」などの向かう階を音声により放音するなどの対応を取ることも可能である。
【0070】
また、ここでは操作ボタンの温かさや熱さにより動作中であることを伝え、冷たさにより操作ボタンに対する操作が受け付けられたことを操作ボタンの冷たさにより通知したが、これに限るものではない。電気刺激の有無によって、動作中と操作受付完了とを通知することも可能である。このように、操作ユニットと制御ユニットを備えた種々のシステム(装置)にこの発明を適用することができ、上述した緊急通報装置の場合と同様の対象で、制御ユニットの動作状態を通知することができる。
【0071】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項の操作ユニットの押圧部、触感提供部の機能は、実施の形態の通報ボタンユニット100の押圧部101、触感提供部102が実現している。また、請求項の制御ユニットの第1の駆動制御手段と、第2の駆動制御手段の機能は、いずれも実施の形態の緊急通報装置200の駆動回路204と駆動制御部205とが協働して実現している。また、請求項の制御ユニットの検出手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置200の主に検出回路202が実現し、請求項の制御ユニットの処理実行手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置200の主に通報処理部203が実現している。
【0072】
また、図4のフローチャートに示した処理を実行する方法が、この発明による動作状態通知方法の一実施の形態が適用されたものである。また、図1に示した緊急通報装置の検出回路202、通報処理部203、駆動回路204、駆動制御部205の各機能は、制御部201で実行されるプログラムにより、制御部201の機能として実現することができる。すなわち、図4のフローチャートに示した処理を実行するプログラムが、この発明による動作状態通知方法に対応したプログラムとなる。
【符号の説明】
【0073】
1…緊急通報システム、100、100A、100B…通報ボタンユニット、101、101A、101B…押圧部、101D…下側電極、101P…圧電体、101U…上側電極、102、102A、102B…触感提供部、200…緊急通報装置、201…制御部、202…検出回路、203…通報処理部、204…駆動回路、205…駆動制御部、2…ネットワーク、3…緊急通報受理機関、4…デスク(机)
図1
図2
図3
図4