(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172363
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/01 213
B41J2/01 401
B41J2/01 205
B41J2/175 115
B41J2/01 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090026
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】次村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
(72)【発明者】
【氏名】疇地 悠
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB40
2C056EC53
2C056EC70
2C056EC72
2C056EC76
2C056ED01
2C056EE05
2C056FA10
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】多様な階調の画像を形成することを可能にする。
【解決手段】印刷システムは、主走査方向に並ぶ複数のノズル列を有するヘッド、ヘッドを主走査方向に移動させる移動機構、及び、コントローラを含むプリンタと、プリンタに接続されコントローラを含む外部装置とを備えている。外部装置のコントローラは、画像データに含まれる特定の画素の画素値に基づいて、4つのノズルのそれぞれから吐出される個別インク量を決定する決定処理を実行可能である。プリンタのコントローラは、ヘッドが正又は逆走査方向に移動しているときに、用紙の所定領域に4つのノズルのそれぞれから決定された個別インク量のインクを吐出させるように、ヘッドを制御する吐出走査を実行可能である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿った複数のノズルを有する第1ノズル列と、前記第1方向に沿った複数のノズルを有する第2ノズル列とが、前記第1方向と交差する第2方向に並んで配列されたヘッドと、
前記ヘッドと記録媒体の一方を前記ヘッドと前記記録媒体の他方に対して前記第2方向に相対的に移動させる移動機構と、
コントローラシステムと、を備えており、
前記コントローラシステムは、
画像データに含まれる特定の画素の画素値に基づいて、前記複数のノズルのうちの第1ノズル及び第2ノズルのそれぞれから吐出される個別液体量を決定する決定処理と、
前記移動機構による前記ヘッドと前記記録媒体との相対移動中において、前記記録媒体の特定領域に前記第1ノズルと前記第2ノズルとの少なくともいずれかから前記記録媒体に同色の液体を吐出させる吐出処理であって、前記決定処理により決定された前記個別液体量の液体を吐出させるように、前記ヘッドを制御する吐出処理とを実行可能であることを特徴とする液体吐出システム。
【請求項2】
前記第1ノズルは、1吐出周期内の吐出期間において、M種類(Mは2以上の整数)の液体量のいずれかの液体を吐出可能であり、
前記第2ノズルは、1吐出周期内の吐出期間において、N種類(Nは2以上の整数)の液体量のいずれかの液体を吐出可能であり、
前記コントローラシステムは、
前記決定処理において、前記第1ノズルから吐出される液体の前記個別液体量を前記M種類の液体量のいずれかに決定し、前記第2ノズルから吐出される液体の前記個別液体量を前記N種類の液体量のいずれかに決定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項3】
前記第1ノズルは前記第1ノズル列に含まれ、
前記第2ノズルは前記第2ノズル列に含まれ、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとが前記第2方向に重なる位置に配置されており、
前記コントローラシステムは、
前記吐出処理において、前記移動機構による前記ヘッドと前記記録媒体との1回の相対移動中において、前記特定領域に前記第1ノズルと前記第2ノズルとから液体を吐出させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項4】
前記移動機構は、前記第2方向に前記ヘッドを移動させることが可能であり、
前記コントローラシステムは、
前記吐出処理において、
前記移動機構による1回目の前記ヘッドの移動中において、前記特定領域に前記第1ノズル又は前記第2ノズルから液体を吐出させ、
前記移動機構による2回目の前記ヘッドの移動中において、前記特定領域に前記第1ノズル又は前記第2ノズルから液体を吐出させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項5】
前記記録媒体を前記第1方向に搬送する搬送機構をさらに備え、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは前記第1ノズル列に含まれ、
前記コントローラシステムは、
前記吐出処理において、
前記1回目の前記ヘッドの移動中において、前記第1ノズルから液体を吐出させ、前記搬送機構による記録媒体の搬送後の前記2回目の前記ヘッドの移動中において前記第2ノズルから液体を吐出させることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出システム。
【請求項6】
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検出する検出手段をさらに備えており、
前記コントローラシステムは、
前記決定処理において、前記特定の画素の画素値に基づいて第1液体量及び前記第1液体量よりも大きい第2液体量を導出し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルのうち前記異常ノズルが存在する場合、前記異常ノズルの前記個別液体量として前記第1液体量を決定し、前記異常ノズル以外のノズルの前記個別液体量として前記第2液体量を決定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項7】
前記コントローラシステムは、
前記決定処理において、前記特定の画素の画素値に基づいて第1液体量及び前記第1液体量よりも大きい第2液体量を導出し、ある前記ノズルの前記個別液体量として前記第1液体量及び前記第2液体量の一方を決定した後、当該ノズルの前記個別液体量として前記第1液体量及び前記第2液体量の他方を決定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項8】
前記コントローラシステムは、
一の記録媒体に対して印刷が実行される際の前記決定処理において、前記第1液体量及び前記第2液体量の一方を同じ前記ノズルの前記個別液体量として決定されることを許容し、
一の記録媒体に対する印刷が終了した後に実行される、別の記録媒体に対して印刷が実行される際の前記決定処理において、前回の前記決定処理において前記第1液体量及び前記第2液体量の一方が前記個別液体量として決定されたノズルに対し、前記第1液体量及び前記第2液体量の他方が前記個別液体量として決定されるようにすることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出システム。
【請求項9】
前記第1ノズルに供給される液体を収容する第1収容部と、
前記第2ノズルに供給される液体を収容する第2収容部と、をさらに備え、
前記コントローラシステムは、
前記決定処理において、前記特定の画素の画素値に基づいて第1液体量及び前記第1液体量よりも大きい第2液体量を導出し、前記第1収容部の液体量が閾値以下であり前記第2収容部の液体量が前記閾値を超えている場合、前記第1ノズルの前記個別液体量として前記第1液体量を決定し、前記第1ノズル以外のノズルの前記個別液体量として前記第2液体量を決定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項10】
前記記録媒体を前記第1方向に搬送する搬送機構をさらに備え、
前記移動機構は、前記第2方向の一方及び他方に前記ヘッドを移動させることが可能であり、
前記コントローラシステムは、
前記吐出処理において、前記移動機構により前記第2方向の一方へ前記ヘッドを移動させる1回目の相対移動中に、前記第1ノズル、前記第2ノズルの順に液体を吐出させ、前記搬送機構による記録媒体の搬送後に前記移動機構により前記第2方向の他方へ前記ヘッドを移動させる2回目の相対移動中に、前記第2ノズル、前記第1ノズルの順に液体を吐出させ、
前記決定処理において、前記1回目の相対移動の場合と前記2回目の相対移動の場合とのいずれにおいてもそれぞれの前記特定領域に吐出される総液体量が同じである場合、当該特定領域に吐出される液体の液体量の順が同じになるように、前記個別液体量を決定することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出システム。
【請求項11】
前記ヘッド及び前記移動機構を含む液体吐出装置をさらに備えており、
前記コントローラシステムが、前記液体吐出装置に含まれることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に液体を吐出するヘッドを有する液体吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カラーインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されてなるノズル列が主走査方向に3列配列され、黒インクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されてなるノズル列が主走査方向に3列配列された記録ヘッドを有するインクジェットプリンタについて記載されている。6列のノズル列を構成する複数のノズルは、主走査方向に重なる位置に配置されている。これにより、インクジェットプリンタでは、白黒印字モードにおいて、カラー印字モードのときの3倍の速度で印字可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、複数のノズルそれぞれからどのようなインク量を吐出するかについて開示されていない。一般的に、1つのノズルから吐出可能な液体量のバリエーションには限りがあるため、特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、多様な階調の画像を形成することができない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、多様な階調の画像を形成することが可能な液体吐出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出システムは、第1方向に沿った複数のノズルを有する第1ノズル列と、前記第1方向に沿った複数のノズルを有する第2ノズル列とが、前記第1方向と交差する第2方向に並んで配列されたヘッドと、前記ヘッドと記録媒体の一方を前記ヘッドと前記記録媒体の他方に対して前記第2方向に相対的に移動させる移動機構と、コントローラシステムと、を備えており、前記コントローラシステムは、画像データに含まれる特定の画素の画素値に基づいて、前記複数のノズルのうちの第1ノズル及び第2ノズルのそれぞれから吐出される個別液体量を決定する決定処理と、前記移動機構による前記ヘッドと前記記録媒体との相対移動中において、前記記録媒体の特定領域に前記第1ノズルと前記第2ノズルとの少なくともいずれかから前記記録媒体に同色の液体を吐出させる吐出処理であって、前記決定処理により決定された前記個別液体量の液体を吐出させるように、前記ヘッドを制御する吐出処理とを実行可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出システムによると、画素値に応じて、第1ノズル及び第2ノズルそれぞれの個別液体量が決定され、各個別液体量の液体が記録媒体の特定領域に向けて吐出される。つまり、特定の画素に応じたドットが、第1ノズル及び第2ノズルのそれぞれから個別液体量の液体が特定領域に吐出されることにより形成される。この場合、特定の画素に応じたドットが、1つのノズルから所定液体量の液体が特定領域に向けて吐出されることにより形成される場合に比べ、多様な階調の画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷システムの全体構成を示す平面図である。
【
図3】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図4】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図5】
図1の印刷システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】ノズルの吐出検査時の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示す印刷システムで印刷を実行する際の外部装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図8に示す印刷データの生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】35種類の合計インク量のそれぞれに対応する4種類のインク量の組合せを示す図である。
【
図11】
図9に示す第2決定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図1に示す印刷システムで印刷を実行する際のプリンタの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】印刷処理により用紙に形成されたドットの一部を示し、4つのノズルから吐出されたインクが所定領域内に着弾し用紙にドットが形成された状況図である。
【
図14】本発明の第2及び第3実施形態に係る印刷システムにより、用紙にドットが形成される状況を示す図であり、(a)はノズルからインクが吐出されていないときの状況を示し、(b)はノズルから「小」のインク量のインクが吐出されたときの状況を示し、(c)はノズルから「中」のインク量のインクが吐出されたときの状況を示し、(d)はノズルから「大」のインク量のインクが吐出されたときの状況を示す。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る印刷システムで実行される第2決定処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第4実施形態に係る印刷システムで実行される第2決定処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態に係る印刷システム(本発明の「液体吐出システム」)100は、プリンタ101(本発明の「液体吐出装置」)と、プリンタ101のコントローラ90(後述する)と情報を送受信可能に接続された外部装置102とを含む。
【0010】
図1~
図5を参照し、プリンタ101の全体構成、及び、プリンタ101の各部の構成について説明する。プリンタ101は、
図1に示すように、下面10Aに複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を主走査方向に移動させる移動機構30と、用紙1(本発明の「記録媒体」)を下方から支持するプラテン40と、用紙1を搬送方向に搬送する搬送機構50と、メンテナンスユニット70と、コントローラ90とを備えている。主走査方向(本発明の「第2方向」)は、
図1中左右方向であって、鉛直方向と直交する方向である。搬送方向は、主走査方向及び鉛直方向と直交する副走査方向(本発明の「第1方向」)である。
【0011】
複数のノズルNは、主走査方向に並ぶ4つのノズル列NR1~NR4を構成している。なお、4つのノズル列NR1~NR4のうち、ノズル列を特定しない場合、「ノズル列NR」と称することがある。また、ノズル列NR1が本発明の「第1ノズル列」に該当し、ノズル列NR2~NR4のいずれかが本発明の「第2ノズル列」に該当する。各ノズル列NR1~NR4は、副走査方向に沿って等間隔に配列された複数のノズルNで構成されている。また、ノズル列NR1~NR4毎の複数のノズルNは、主走査方向に沿って互いに重なる位置に配置されている。本実施形態において、各ノズル列NR1~NR4を構成する複数のノズルNのうち、副走査方向に隣接する2つのノズルNは、1回の走査動作(後述する)で用紙1に形成された画像の印字解像度である300dpiに相当する間隔ずつ離隔して配置されている。なお、ノズルNの副走査方向の間隔は適宜変更してもよい。
【0012】
4つのノズル列NR1~NR4は、主走査方向に沿って等間隔に配列されている。これら4つのノズル列NR1~NR4を構成する複数のノズルNは、ブラックインクをそれぞれ吐出する。つまり、本実施形態におけるプリンタ101はモノクロプリンタである。
【0013】
本実施形態におけるノズル列NRは、副走査方向に直線状に並ぶ複数のノズルNによって構成されているが、当該複数のノズルNが副走査方向に直線状に並んでいなくてもよい。ノズル列NRは、副走査方向に沿って複数のノズルNを有しておればよい。つまり、ノズル列NRは、副走査方向に隣接する2つのノズルが主走査方向にズレて配置されつつも、副走査方向に延びる直線に当該ノズル列NRを構成する複数のノズルNから射影した点の位置が所定印字解像度に相当する間隔で副走査方向に離隔して配置される複数のノズルNによって構成されておればよい。また、ノズル列NRは副走査方向と主走査方向に交差する方向に沿って複数のノズルNを有していてもよい。
【0014】
移動機構30は、キャリッジ31と、一対のガイド32,33と、ベルト34と、サブタンク35と、キャリッジモータ30M(
図5参照)とを含む。キャリッジ31は、ヘッド10及びサブタンク35を保持する。一対のガイド32,33は、キャリッジ31を支持する。ベルト34は、キャリッジ31に連結されている。ガイド32,33及びベルト34は、主走査方向に延びている。コントローラ90の制御によりキャリッジモータ30Mが駆動されると、ベルト34が走行し、ガイド32,33に沿ってキャリッジ31が主走査方向に移動する。
【0015】
主走査方向は、
図1において左方に向かう正走査方向と、
図1において右方に向かう逆走査方向(正走査方向とは逆の方向)とからなる。移動機構30は、正走査方向及び逆走査方向の双方向に、ヘッド10を移動させることができる。
【0016】
ここで、プリンタ101は、カートリッジホルダ15を含み、カートリッジホルダ15に4つのインクカートリッジ16A~16Dが取り外し可能に装着されている。また、インクカートリッジ16Aが本発明の「第1収容部」に該当し、インクカートリッジ16B~16Dのいずれかが本発明の「第2収容部」に該当する。また、4つのインクカートリッジ16A~16Dのうち、インクカートリッジを特定しない場合、「インクカートリッジ16」と称することがある。
【0017】
4つのインクカートリッジ16A~16Dは、主走査方向に並んでおり、いずれもブラックのインク(本発明の「液体」)を貯留している。インクカートリッジ16A~16Dそれぞれに貯留されているブラックインクは同じ組成であってよい。サブタンク35は、ノズル列NR1~NR4に対応して4つの個別タンク(不図示)を有しており、4つの個別タンクが4本のチューブ17を介してカートリッジホルダ15に装着された4つのインクカートリッジ16A~16Dと接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ16A~16Dからサブタンク35にインクが供給される。
【0018】
ヘッド10は、キャリッジ31に搭載され、サブタンク35の下端部に接続されている。サブタンク35に供給された各インクカートリッジ16A~16Dのインクは、対応するノズル列NR1~NR4に供給される。つまり、インクカートリッジ16Aのインクはノズル列NR1を構成する複数のノズルN1から吐出されるように供給され、インクカートリッジ16Bのインクはノズル列NR2を構成する複数のノズルN2から吐出されるように供給される。インクカートリッジ16Cのインクはノズル列NR3を構成する複数のノズルN3から吐出されるように供給され、インクカートリッジ16Dのインクはノズル列NR4を構成する複数のノズルN4から吐出されるように供給される。
【0019】
プラテン40は、ヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙1が支持される。
【0020】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52と、搬送モータ50M(
図5参照)とを有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10及びプラテン40が配置されている。コントローラ90の制御により搬送モータ50Mが駆動されると、ローラ対51,52が用紙1を挟持した状態で回転し、用紙1が搬送方向に搬送される。このように、搬送機構50はヘッド10に対して相対的に用紙1を搬送する。
【0021】
ヘッド10は、
図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0022】
流路ユニット12の下面10Aに、複数のノズルN(
図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、ノズル列NR毎に設けられた4つの共通流路12Aと、ノズルN毎に個別に連通する複数の個別流路12Bとが形成されている。4つの共通流路12Aは、4つのインクカートリッジ16A~16Dとサブタンク35などを介して連通している。個別流路12Bは、共通流路12Aの出口から圧力室12Pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12Pが開口している。
【0023】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12Pを覆うように配置された金属製の振動板13Aと、振動板13Aの上面に配置された圧電層13Bと、圧電層13Bの上面に複数の圧力室12Pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13Cとを含む。
【0024】
振動板13A及び複数の個別電極13Cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13Aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13Cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、コントローラ90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14Sを介して駆動信号を個別電極13Cに供給する。これにより、個別電極13Cの電位が所定の駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化する。このとき、振動板13A及び圧電層13Bにおいて各個別電極13Cと各圧力室12Pとで挟まれた部分(アクチュエータ13X)が変形することにより、圧力室12Pの容積が変化し、圧力室12P内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13Xは、個別電極13C毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13Cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0025】
メンテナンスユニット70は、
図1に示すように、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを含む。キャップ71は、プラテン40よりも主走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ31を、プラテン40よりも主走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズルNがキャップ71と対向する。
【0026】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構75(
図5参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ31を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズルNとキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構75によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がヘッド10の下面10Aに密着し、複数のノズルNがキャップ71に覆われる。なお、キャップ71はヘッド10の下面10Aに密着することで複数のノズルNを覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、ヘッド10の下面10Aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズルNを覆うものであってもよい。
【0027】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット70では、上述したように複数のノズルNがキャップ71によって覆われた状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズルNからヘッド10内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージ(回復動作)を行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0028】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズルNをまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズルNからヘッド10内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、最も左側のノズル列NR1を構成する複数のノズルN1を覆う部分と、残りの3つのノズル列NR2~NR4を構成する複数のノズルN2~N4を覆う部分とを別々に有し、吸引パージにおいて、ヘッド10内のインクを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列NR毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列NR毎に個別に、ノズルNからインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0029】
また、
図3に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する検査用駆動の際に、高電圧電源回路77により所定の正の電位(例えば600V程度)が付与される。一方で、ヘッド10は、グランド電位に保持されている。これにより、ヘッド10と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、判定回路78が接続されている。判定回路78は、検出用電極76から出力された信号の電位と、閾値VTとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0030】
より詳細に説明すると、ヘッド10と、検出用電極76との間には電位差が生じているため、ノズルNから吐出されたインクは帯電している。キャリッジ31を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズルNから検出用電極76に向けてインクを吐出させると、
図4(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が、ヘッド10が駆動されていないときの電位VAから低下し、電位VAよりも低い電位VBに達する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に上昇して電位VAに戻る。すなわち、ヘッド10の駆動期間TDにおいて、検出用電極76の電位が変化する。
【0031】
一方で、ノズルNからインクが吐出されていない場合には、
図4(b)に示すように、ヘッド10の駆動期間TDにおいて、検出用電極76の電位は、電位VAからほとんど変化しない。そこで、判定回路78は、これらを区別するために閾値VT(VB<VT<VA)が設定されている。そして、判定回路78は、ヘッド10の駆動期間TDにおいて、検出用電極76から出力される電圧信号の最大の電位と閾値VTとを比較し、その判定結果に応じた判定用信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極76と、高電圧電源回路77と抵抗79と判定回路78とを合わせたものが、本発明の「検出手段」に相当する。そして、この検出手段は、ノズルNが、インクが正常に吐出されない異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する。
【0032】
また、ここでは、高電圧電源回路77により、検出用電極76に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路77により、検出用電極76に負の電位(例えば-600V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ31を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズルNから検出用電極76に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が電位VAから上昇し、検出用電極76にインクが着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に低下して電位VAに戻る。
【0033】
コントローラ(本発明の「コントローラシステムの一部」)90は、
図5に示すように、CPU91と、ROM92と、RAM93と、ASIC94と、フラッシュメモリ95とを含む。
【0034】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータ(印刷データ等)を一時的に記憶する。コントローラ90は、外部装置102と通信可能に接続されており、当該外部装置102から出力された印刷指令に基づいて、CPU91やASIC94により後述の印刷処理を実行する。
【0035】
印刷処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、外部装置102等から受信した印刷指令(後述の印刷データ)に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30M及び搬送モータ50Mを駆動させ、搬送機構50によって用紙1を搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、ヘッド10を主走査方向に移動させながらヘッド10が用紙1と対向しているときに用紙1にノズルNからインクを吐出させる走査動作とを行わせる。これにより、用紙1上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0036】
ASIC94は、
図5に示すように、出力回路97及び転送回路98を含む。出力回路97は、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を印字周期毎に転送回路98に出力する。印字周期(本発明の「吐出周期」)は、用紙1上に形成される画像の解像度(印字解像度)に対応する単位距離だけ用紙1がヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0037】
波形信号FIREは、4つの波形データを直列化したシリアル信号である。4つの波形データは、それぞれ1印字周期内の吐出期間にノズルNから吐出されるインク量が「無(吐出なし)」「小」「中」「大」に対応するものであり、パルス数が互いに異なる。本実施形態における「小」のときのインク量は4plであり、「中」のときのインク量は10plであり、「大」のときのインク量は35plである。なお、「無」は吐出しないため、0plである。このように本実施形態においては、各ノズルNから4種類のインク量のインクを各吐出期間において吐出することができる。なお、吐出期間は、1印字周期内においてノズルNから1回のインク吐出が行われる期間である。また、これらインク量は適宜変更してもよい。
【0038】
選択信号SINは、上記4つの波形データの中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、印刷指令に含まれる印刷データに基づいて、アクチュエータ13X毎、かつ、印字周期毎に生成される。
【0039】
転送回路98は、出力回路97から受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路98は、上記各信号に対応するLow Voltage Differential Signaling(LVDS)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0040】
ASIC94は、印刷処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14Sを介して駆動信号を個別電極13Cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、1以上のノズルNのそれぞれから、4種類の吐出量(無、小、中、大)の中から選択されたインク量のインクを用紙1に向けて吐出させる。
【0041】
ASIC94は、ドライバIC14、キャリッジモータ30M、搬送モータ50M、キャップ昇降機構75、吸引ポンプ72、及び、高電圧電源回路77等と電気的に接続されている。また、ASIC94には、判定回路78から判定用信号が入力される。
【0042】
また、プリンタ101は、以上で説明した構成のほかに、
図5に示すように操作部60と時計部61とを有している。操作部60は、例えば、プリンタ101の筐体に設けられたボタンなどである。ユーザが操作部60を操作することによって、コントローラ90に対する信号の入力を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、操作部60が、図示しない電源スイッチを含んでいる。そして、ユーザが電源スイッチを操作することにより、プリンタ101の電源のオンとオフとを切り換えることができる。ユーザが操作部60の電源スイッチを操作してプリンタ101の電源をオンにしたときには、操作部60から、プリンタ101の電源がオンになったことを示す電源オン信号が出力され、コントローラ90が、この電源オン信号を受信する。
【0044】
時計部61は時刻を計時しており、コントローラ90は、時計部61から時刻を示す時刻信号を受信する。
【0045】
外部装置102は、例えば、PC(パーソナルコンピューター)であり、外部装置102全体の制御を司るコントローラ103を有する。コントローラ(本発明の「コントローラシステムの一部」)103はプリンタ101のコントローラ90と接続されている。また、コントローラ103も、コントローラ90と同様にCPU、ROM、RAM、ASIC、フラッシュメモリ(ともに不図示)などを含む。
【0046】
<ノズルの吐出検査時の制御>
次に、プリンタ101において、ノズルNの吐出検査時のコントローラ90による制御について説明する。プリンタ101では、待機時に、コントローラ90が
図6のフローに沿って処理を行う。
【0047】
図6のフローについてより詳細に説明すると、コントローラ90は、時計部61から受信した時刻信号が所定時刻であるか否かを判定する(S1)。コントローラ90は、時計部61から受信した時刻信号が所定時刻であることを示しておらず(S1:NO)、前回の検査処理(後述する)から所定期間経過していない間は(S2:NO)、待機している。
【0048】
ここで所定期間は、後述の検査処理を定期的に行うための期間であり、コントローラ90は、S2において、時計部61からの時刻信号と後述の検査履歴情報とに基づいて、前回の検査処理から所定期間が経過したか否かを判定する。
【0049】
また、時計部61から受信した時刻信号が所定時刻であることを示しているときに(S1:YES)、S3に進む。本実施形態における所定時刻は、AM6:00などの早朝に設定されているが、特に限定するものではない。
【0050】
また、前回の検査処理から所定期間経過したときにも(S2:YES)、S3に進む。前回の検査処理から所定期間経過することで、ノズルN内のインクの粘度が変わって、異常ノズルであるか否かの状態が変わることがある。そこで、本実施形態では、前回の検査処理から所定期間経過したときに、検査用駆動を行わせる。これにより、異常ノズルを正確に把握することができる。
【0051】
コントローラ90は、S3において、検査処理を実行する。検査処理では、コントローラ90は、ヘッド10を、複数のノズルNの各々から順にインクを吐出させるように駆動させる検査用駆動を行わせるための制御信号をドライバIC14に送信する。なお、本実施形態における検査用駆動においては、ノズルNから吐出されるインク量が「小」であるが、「中」や「大」であってもよい。また、このとき、コントローラ90は、時計部61からの時刻信号に基づいて、検査用駆動が行われた時刻の情報である検査履歴情報をフラッシュメモリ95に記憶させる。そして、コントローラ90は、検査用駆動時に判定回路78からノズルN毎に出力された判定用信号に基づいて、複数のノズルNのうち、異常ノズルであるノズルNの情報をすべてフラッシュメモリ95に記憶させる。こうして、ノズルNの吐出検査時のフローが終了する。
【0052】
本実施形態においては、検査用駆動の契機が所定時刻を示す時刻信号及び前回の検査処理から所定期間経過しているときであったが、これ以外の契機(例えば、操作部60からの電源オン信号を受信したとき)によって検査処理を行うための検査用駆動が実行されてもよい。
【0053】
<印刷時の制御>
続いて、用紙1に印刷するときの印刷システム100の制御について説明する。本実施形態においては、
図7に示すように、主走査方向の解像度が600dpi、副走査方向の解像度が300dpiの画像Aを用紙1に印刷するときの制御について説明する。なお、解像度は適宜変更してもよい。また、本実施形態においては、画像Aはグレースケール画像である。画像Aに含まれる画素A1~A4のそれぞれの濃淡は、8ビットの値により256階調で表される。なお、画素の濃淡は256階調に限られず、それ未満であってもそれより大きくてもよい。
【0054】
外部装置102では、ユーザが入力部(不図示)により、用紙1に印刷を実行するための印刷実行指示を入力したときに、コントローラ103が
図8のフローに沿って処理を行う。なお、印刷実行指示は、ユーザが入力部により、ディスプレイ(不図示)に表示される印刷を実行するための印刷実行ボタンを選択することなどで実行される。
【0055】
図8のフローについてより詳細に説明すると、コントローラ103は、まず、印刷実行指示が行われたか否かを判定する(S21)。印刷実行指示が行われていない場合(S21:NO)、S21を繰り返す。印刷実行指示が行われた場合(S21:YES)、コントローラ103は印刷データの生成処理を実行する(S22)。
【0056】
S22の印刷データの生成処理は、
図9のフローに沿って行われる。印刷データは、今回印刷する画像Aの画像データに含まれる各画素に応じて、印字周期内の吐出期間に各ノズルNから吐出させる個別インク量(本発明の「個別液体量」)を示すデータであり、画像Aの画像データに基づいて生成される。なお、印刷実行指示が行われた画像がカラー画像である場合、コントローラ103は、そのカラー画像をグレースケール画像に変換する処理を行い、画像Aの画像データを得てもよい。コントローラ103は、
図9に示すように、まず、第1決定処理(本発明の「決定処理の一部」)を行う(S31)。
【0057】
コントローラ103は、35種類の合計インク量と、34種類の閾値とを記憶している。35種類の合計インク量(本発明の「総液体量」)は、
図10に示すように、「無」、「小」、「中」、「大」に対応する4種類のインク量を互いに異ならせて組み合わせたときの合計インク量である。本実施形態においては、一の画素を35階調で表現することが可能である。
【0058】
34種類の閾値は、画素値に対応する濃度が35種類の合計インク量のいずれに対応するかを適宜、区別するための閾値であり、第1の閾値から第34の閾値が存在する。つまり、第1の閾値は合計インク量が0plで示す濃度と4plで示す濃度との間の濃度に対応する閾値であり、第2の閾値は合計インク量が4plで示す濃度と8plで示す濃度との間の濃度に対応する閾値である。このように第1の閾値から第34の閾値が合計インク量に応じて順に存在する。そして、画素の画素値が第1の閾値未満であるとき、合計インク量が0plに対応し、画素値が第1の閾値以上且つ第2閾値未満であるとき、合計インク量が4plに対応する。このように画素値が第K(Kは自然数)の閾値以上且つ第(K+1)の閾値未満であるときに、これら閾値間に対応する合計インク量に対応する。そして、画素値が第34の閾値以上であるとき、合計インク量140plに対応する。本実施形態では、34種類の閾値はそれぞれ8ビットの値で示される。閾値は256階調のグレースケール画像に対して、画素の濃淡を表現するのに適した合計インク量を考慮した上で決めれたものであればよい。
【0059】
第1決定処理では、コントローラ103が画像Aの画像データの各画素A1~A4の画素値から各画素A1~A4における合計インク量を導出する。つまり、各画素A1~A4の画素値が34種類の閾値により区別された35種類の合計インク量のいずれに対応するかを決定し、当該画素A1~A4における合計インク量を導出する。本実施形態における画素A1は、例えば、合計インク量が49plに対応する。以下の説明においては、主に画素A1について説明するが、残りの画素A2~A4についても同様にして決定される。
【0060】
次に、コントローラ103は、第2決定処理(本発明の「決定処理の一部」)を行う(S32)。S32の第2決定処理は、
図11のフローに沿って行われる。コントローラ103は、
図11に示すように、まず、1の画素の合計インク量に基づいて4つのノズルNから吐出させるインク量(本発明の「第1液体量」及び「第2液体量」)をそれぞれ導出する(S41)。本実施形態においては、1の画素に対応するドットを形成する際に最大4つのノズルN1~N4からインクを吐出する。つまり、1の画素に対応して4つのノズルN1~N4が割り当てられる。これら4つのノズルN1~N4は、4つのノズル列NR1~NR4のそれぞれに属し主走査方向に沿って直線状に並ぶ4つのノズルNである。コントローラ103は、S41において、画素A1の合計インク量に対応するインク量として、「無」、「小」、「中」、「大」を導出する(
図10参照)。なお、本発明の第1液体量は「無」、「小」、「中」のいずれかのインク量に該当し、本発明の第2液体量は、第1液体量よりも大きい「小」、「中」、「大」のいずれかのインク量に該当する。例えば、第1液体量が「小」に該当する場合、第2液体量は「中」、「大」のいずれかのインク量に該当する。
【0061】
次に、コントローラ103は、インク量の小さい順に並べたインク量リストを作成し、記憶する(S42)。画素A1においては、「無」、「小」、「中」、「大」の順のインク量リストが作成される。
【0062】
次に、コントローラ103は、インク量リストが空でないか否かを判定する(S43)。インク量リストが空でない場合(S43:YES)、コントローラ103は画素に対応する4つのノズルN1~N4の中にフラッシュメモリ95に記憶された異常ノズルがあるか否かを判定する(S44)。
【0063】
異常ノズルがある場合(S44:YES)、コントローラ103は、インク量リストの1つ目、すなわち、最も小さいインク量を異常ノズルであるノズルNから吐出させる個別インク量に決定し、当該インク量リストから1つ目のインク量を消去する(S45)。S45の後、S43に戻る。なお、各ノズルNの決定された個別インク量はコントローラ103のフラッシュメモリに記憶される。
【0064】
一方、異常ノズルがない場合(S44:NO)、コントローラ103は、個別インク量が未決定のノズルNに供給するインクカートリッジ16のうちインク残量が閾値以下のものがあるか否かを判定する(S46)。本実施形態におけるプリンタ101のコントローラ90は、各ノズルNからの合計吐出インク量を記憶しており、例えば、1枚の用紙1に対する印刷処理が終了する度に各インクカートリッジ16A~16Dのインク残量を導出し記憶している。これら合計吐出インク量及びインク残量はフラッシュメモリ95に記憶されており、コントローラ103は、フラッシュメモリ95のインク残量に基づいて、S46の判定を行う。なお、各インクカートリッジ16A~16Dのインク残量はノズルNからインクが吐出される度に導出してもよいし、上述以外の適宜のタイミングで導出してもよい。また、インクカートリッジ16A~16Dのインク残量を検出する残量センサを設けてもよい。この場合、残量センサが検出するインク残量が閾値以下であるか否かで判定すればよい。
【0065】
インク残量が閾値以下のインクカートリッジ16がある場合(S46:YES)、コントローラ103は、インク量リストのうち最も小さいインク量を当該インクカートリッジ16からインクが供給されるノズルNから吐出させる個別インク量に決定し、当該インク量リストから1つ目のインク量を消去する(S47)。なお、S47において、インク残量が閾値以下のインクカートリッジ16が複数存在し、ノズルNも複数存在する場合、いずれかのノズルNの個別インク量を決定すればよい。
【0066】
一方、インクカートリッジ16のインク残量がいずれも閾値を超えている場合(S46:NO)、コントローラ103はインク量リストのうち最も小さいインク量を合計吐出インク量が最も多いノズルNから吐出させる個別インク量に決定し、当該インク量リストから1つ目のインク量を消去する(S48)。コントローラ103は、フラッシュメモリ95の各ノズルNの合計吐出インク量に基づいて、S48の処理を行う。なお、コントローラ90は、インクカートリッジ16を交換したタイミングで当該インクカートリッジ16からインクが供給される各ノズルNの合計吐出インク量をゼロにリセットする。
【0067】
S43に戻って、S42に作成されたインク量リストが空の場合(S43:NO)、S49に進む。S45,S47,S48の少なくともいずれかを1以上経由することで、インク量リストが空になる。
【0068】
次に、コントローラ103は、S49において、画像Aのすべての画素A1~A4について、各ノズルN1~N4から吐出させる個別インク量を決定したか否かを判定する。個別インク量の決定がすべての画素A1~A4について行われていない場合(S49:NO)、S41に戻り、個別インク量が未決定の画素の合計インク量に対応するインク量を導出する。一方、個別インク量の決定がすべての画素A1~A4について行われた場合(S49:YES)、第2決定処理のフローを終了する。
【0069】
図9に戻って、S32の後、コントローラ103は、各ノズルNからS32で決定された個別インク量を吐出させるための印刷データを生成し、プリンタ101に送信する(S33)。こうして、印刷データの生成処理が終了する。
【0070】
<印刷処理>
ここで、印刷処理について
図12を参照しつつ説明する。印刷処理は、外部装置102からプリンタ101に印刷指令としての印刷データが送信されたときに、プリンタ101のコントローラ90が
図12のフローに沿って処理を行う。
【0071】
コントローラ90は、印刷指令を受信したか否かを判定する(S61)。印刷指令を受信していない場合(S61:NO)、S61を繰り返す。一方、印刷指令を受信した場合(S61:YES)、S62に進む。
【0072】
コントローラ90は、S62において、印刷処理を実行する。印刷処理(本発明の「吐出処理」)では、まず、コントローラ90が、取得した印刷データに基づいて正又は逆走査方向の1回の走査動作である吐出走査と、副走査方向への用紙1の搬送とを交互に繰り返すことで、用紙1への印刷を行う。吐出走査間に行われる用紙1の搬送においても、ノズル列NRを構成する複数のノズルNのうち副走査方向の両端に配置された2つのノズルNの副走査方向の離隔距離に等しい距離だけ用紙1が搬送される。
【0073】
吐出走査では、ヘッド10の各ノズル列NR1~NR4を構成するノズルNからそれぞれ決定された個別インク量のインクを吐出させる。また、吐出走査では、ヘッド10が用紙1に対して正又は逆走査方向へ移動しているときに、ノズルN1(本発明の「第1ノズル」)から用紙1の所定領域(本発明の「特定領域」)に向けてインクを吐出させ、ノズルN2~N4(本発明の「第2ノズル」)も用紙1の同じ所定領域に向けてインクを吐出させる。このようにコントローラ90は、吐出走査において、ノズルN1~N4のそれぞれから決定された個別インク量のインクを吐出させるように、ヘッド10を制御する。
【0074】
例えば、
図7に示す画素A1に対応するドットD1を用紙1に形成する際、ノズルN1に個別インク量「無」が割り当てられ、ノズルN2に個別インク量「小」が割り当てられ、ノズルN3に個別インク量「中」が割り当てられ、ノズルN4に個別インク量「大」が割り当てられている場合、
図13に示すように、各ノズルN1~N4から個別インク量のインクが用紙1の同じ所定領域B1に向けて吐出される。つまり、所定領域B1に各ノズルN1~N4から吐出されたインクDA1~DA4により、画素A1に対応するドットD1が形成される。なお、個別インク量「無」の場合、ノズルN1からインクは吐出されないが、
図13には「無」に該当するインクDA1の部分を破線で示している。
【0075】
同様に画素A2~A4に対応するドットD2~D4を用紙1に形成する際も、各ノズルN1~N4に割り当てられた個別インク量のインクDA1~DA4が用紙1の各画素A2~A4に対応する所定領域B2~B4に向けて吐出される。なお、本実施形態においては、画素A1と主走査方向に並ぶ画素A2に対応するドットD2を形成するために、画素A1に対応するドットD1を形成する際と同じノズルN1~N4に個別インク量が割り当てられ、当該同じノズルN1~N4からインクが所定領域B2に向けて吐出される。画素A1と副走査方向に並ぶ画素A3は、画素A1のノズルN1~N4と副走査方向に隣接するノズルN1~N4に個別インク量が割り当てられ、当該ノズルN1~N4からインクが吐出される。また、画素A4に対応するドットD4については、画素A3に対応するドットD3と同じノズルN1~N4に個別インク量が割り当てられ、当該同じノズルN1~N4からインクが吐出される。このように吐出走査では、画像Aのすべての画素A1~A4について決定された個別インク量のインクを、各ノズルN1~N4から上述のように用紙1に吐出される。こうして、用紙1に画像Aに対応した画像が形成される。
【0076】
各ノズルN1~N4から、1印字周期内の吐出期間において、所定領域B1~B4にインクが吐出されるものの、用紙1の同じ位置にずれずにインクが着弾するものもあれば、部分的に重なるようにインクが着弾するものや部分的にも重ならず多少ずれてインクが着弾するものなどがある。しかしながら、各ノズルN1~N4から吐出されるインクDA1~DA4は、1印字周期内の吐出期間において、同じ位置に向けて吐出され、当該位置の近傍領域である所定領域B1~B4内に着弾する。こうして、各画素A1~A4に対応するドットD1~D4が、4つのノズルN1~N4から吐出されたインクDA1~DA4によって用紙1に形成される。
【0077】
印刷処理において、印刷データに基づいた用紙1への画像形成が終了すると、用紙1が排出されて印刷が終了し、フローが終了する。
【0078】
以上に述べたように、本実施形態の印刷システム100によると、特定の画素の画素値に応じた1つのドットを形成するために、画素値に応じて決定された合計インク量に基づきノズルN1~N4それぞれの個別インク量が決定され、決定された個別インク量のインクがノズルN1~N4それぞれから用紙1の所定領域に向けて吐出される。この場合、特定の画素の画素値に応じた1つのドットを形成するために、画素値に応じたインク量が1つのノズルNから所定領域に向けて吐出される場合に比べ、多様な階調(本実施形態においては35階調)の画像を形成することが可能となる。
【0079】
本実施形態の印刷システム100によると、各ノズルN1~N4は1印字周期内の吐出期間に4種類(本発明の「M種類及びN種類」)のインク量のいずれかのインクを吐出可能である。そして、S32の第2決定処理において、各画素A1~A4の画素値から決定された合計インク量に応じて、各ノズルNから吐出させる個別インク量を4種類のインク量の中から決定する。これにより、各画素A1~A4に応じたドットを、35種類の合計インク量の中から決定したインク量により表現することができる。
【0080】
変形例として、互いに異なる16種類のインク量のうち4種類(本発明の「M種類及びN種類」)のインク量ずつ個別にノズルN1~N4から吐出可能であってもよい。この場合、ノズルN1~N4のノズル径を互いに異ならせることで実現可能となる。これにより、最大256種類(4の4乗の種類)の合計インク量の中から決定したインク量により、特定の画素を表現することが可能となる。
【0081】
本実施形態の印刷システム100によると、各ノズルN1~N4が互いに異なるノズル列NR1~NR4に含まれ、印刷処理の1回の吐出走査において、所定領域B1~B4に各ノズルN1~N4からインクが吐出される。これにより、複数回の吐出走査により所定領域B1~B4にインクを吐出する必要がなくなり、印刷速度の低下を抑制することが可能となる。
【0082】
また、コントローラ103は、S45において、異常ノズルであるノズルNに対して、インク量の小さい個別インク量を決定する。これにより、ノズルNから本来吐出されるべきインク量と異常ノズルから実際に吐出されるインク量との差が小さくなり、異常ノズルが存在していても、画質が低下するのを抑制することができる。
【0083】
また、コントローラ103は、S48において、合計吐出インク量が最も多いノズルNに対して、インク量リストのうち最も小さいインク量の個別インク量を決定する。つまり、ある画素においてノズルNに例えば「大」の個別インク量の割り当てを決定した後に、別の画素において、S48を経由し、当該ノズルNの合計吐出インク量が多くなっていたときに、「大」よりも小さい「無」、「小」、「中」のいずれかの個別インク量を割り当てる。これにより、複数のノズルN間で合計吐出インク量に大きな差が生じるのを抑制することができる。また、例えば、「小」の液体(本発明の「第1液体量」)が同じノズルから吐出され続けると、当該ノズルN近傍では、インク流動が小さいため、インクが乾燥により増粘しやすくなる。これに対し、本構成では、「小」の液体が同じノズルNから吐出され続けることがなく、同じノズルNから吐出されるインク量を変更することで、ノズルN近傍での、インク流動を大きくしインクの増粘を抑制することができる。
【0084】
変形例として、今回の画素において、あるノズルNに割り当てる個別インク量として前回の画素とは異なる個別インク量を、合計吐出インク量にかかわらず割り当ててもよい。これにおいても、上述のように複数のノズルN間で合計吐出インク量に大きな差が生じるのを抑制することができる。
【0085】
また、コントローラ103は、S47において、インク残量が閾値以下のインクカートリッジ16からインクが供給されるノズルNに対し、インク量リストのうち最も小さいインク量の個別インク量を決定する。例えば、ノズルN1にインクを供給するインクカートリッジ16Aのインク残量が閾値以下の場合、ノズルN1から吐出させる個別インク量をインク量リストのうち最も小さいインク量に決定する。これにより、インクカートリッジ16Aのインク量が閾値以下であってもインクカートリッジ16Aにインクの補充が完了するまで又はインクカートリッジ16Aを新品に交換するまでの間においても、用紙1への印刷を実行することが可能となる。
【0086】
また、変形例として、コントローラ90は、吐出走査において、ヘッド10が正走査方向に移動するときはノズルN1~N4から順にインクを吐出させ、ヘッド10が逆走査方向に移動するときは正走査方向のときとは逆の順、つまりノズルN4~N1の順にインクを吐出させるように、ヘッド10を制御する。この場合、コントローラ103は、S32において、1回目の吐出走査と2回目の吐出走査とで、所定領域(画素に対応するドットを形成する領域)に吐出される合計インク量が同じである場合、当該所定領域のそれぞれに吐出されるインクのインク量の順が同じになるように、各ノズルN1~N4に割り当てる個別インク量を決定する。つまり、1回目の吐出走査においてノズルN1~N4から順に第1所定領域に吐出されるインク量が「小」、「小」、「中」、「大」である場合、2回目の吐出走査においてノズルN4~N1から順に第2所定領域に吐出されるインク量が「小」、「小」、「中」、「大」となるように、各吐出走査で各ノズルN1~N4に割り当てる個別インク量を決定する。これにより、第1所定領域に形成されたドット(画像)と、第2所定領域に形成されたドット(画像)との間における、画質のバラツキを抑制することが可能となる。
【0087】
<第2実施形態>
続いて、
図14を参照し、本発明の第2実施形態に係る印刷システム100について説明する。
第1実施形態における吐出走査においては、1回の走査動作が行われる。これに対し、第2実施形態における吐出走査においては、4回の走査動作が行われる。より詳細には、正走査方向の走査動作と逆走査方向の走査動作とが交互に2回ずつ行われる。本実施形態における吐出走査は双方向印刷の場合であるが、片方向印刷の場合、正又は逆走査方向の一方向の走査動作が4回行われる。なお、片方向印刷の場合は今回の走査動作後に今回の走査動作での移動方向とは逆方向に移動してから次の走査動作が行われる。吐出走査の走査動作間には搬送処理が行われる。搬送処理は、1回の走査動作が終了し次の走査動作が行われる前に行われ、1回の搬送で、用紙1に印刷する画像の副走査方向の解像度(本実施形態では300dpi:副走査方向に隣接する2つのノズルNの間隔)に相当する距離だけ用紙1が搬送される。また、本実施形態における吐出走査においては、1の画素に対しては同じノズル列NRに属する複数のノズルNだけからインクが吐出される。また、1の画素に対応するドットを副走査方向に隣接する4つのノズルNからインクを吐出することで形成する。なお、吐出走査における走査動作の最大回数は、ノズル列NRを構成するノズルNの数以下であり、且つ1の画素に対して割り当てるノズル数以下であればよい。
【0088】
本実施形態における第2決定処理(S32)においては、1の画素に対応するドットを形成する際に副走査方向に隣接する最大4つのノズルNからインクを吐出する。つまり、1の画素に対応して副走査方向に隣接する4つのノズルNが割り当てられる。なお、本実施形態においては、同じノズル列NRに属する複数のノズルNからインクが吐出されるため、S44において、異常ノズルがない場合(S44:NO)、S48に進めばよい。つまり、S46、S47を実行しなくてもよい。本実施形態の第2決定処理においては、1の画素に対応するドットを形成する際にインクを吐出するノズルNが第1実施形態と異なり、且つS46,S47を実行しないだけで、これら以外は上述の第1実施形態と同様である。こうして、コントローラ103は、各ノズルNからS32で決定された個別インク量を吐出させるための印刷データを生成する(S33)。
【0089】
本実施形態における吐出走査について、以下に説明する。本実施形態における吐出走査においては、4回の走査動作と、走査動作間の搬送処理とが実行される。なお、画素A1の印刷手順について説明し、他の画素A2~A4については省略する。コントローラ90は、まず、正走査方向の1回目の走査動作を行う。1回目の走査動作においてコントローラ90は、ノズル列NR1の第1のノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、ノズル列NR1の第1のノズルN1には例えば、「無」の個別インク量が割り当てられているため、当該第1のノズルN1からインクは吐出されないが、
図14(a)には「無」に該当するインクDA1の部分を所定領域B1内に破線で示している。
【0090】
次に、コントローラ90は、副走査方向に隣接する2つのノズルNの間隔に相当する距離だけ用紙1を搬送する。そして、コントローラ90は、逆走査方向の2回目の走査動作を行う。2回目の走査動作においてコントローラ90は、第1のノズルN1に搬送方向下流において隣接する第2のノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、第2のノズルN1には例えば、「小」の個別インク量が割り当てられている。これにより、
図14(b)に示すように、「小」に該当するインクDA2が所定領域B1内に形成される。
【0091】
次に、コントローラ90は、副走査方向に隣接する2つのノズルNの間隔に相当する距離だけ用紙1を搬送する。そして、コントローラ90は、正走査方向の3回目の走査動作を行う。3回目の走査動作においてコントローラ90は、第2のノズルN1に搬送方向下流において隣接する第3のノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、第3のノズルN1には例えば、「中」の個別インク量が割り当てられている。これにより、
図14(c)に示すように、「中」に該当するインクDA3が所定領域B1内に形成される。
【0092】
次に、コントローラ90は、副走査方向に隣接する2つのノズルNの間隔に相当する距離だけ用紙1を搬送する。そして、コントローラ90は、逆走査方向の4回目の走査動作を行う。4回目の走査動作においてコントローラ90は、第3のノズルN1に搬送方向下流において隣接する第4のノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、第4のノズルN1には例えば、「大」の個別インク量が割り当てられている。これにより、
図14(d)に示すように、「大」に該当するインクDA4が所定領域B1内に形成される。こうして、1回の吐出走査が終了することで、画素A1に対応するドットD1が用紙1に形成される。なお、他の画素A2~A4についても画素A1と同様にして所定領域B2~B4内にドットD2~D4が形成される。こうして、印刷処理による用紙1への画像の印刷が終了する。
【0093】
このような第2実施形態における印刷システム100においても、画素値に応じて、4つのノズルN1それぞれの個別インク量が決定され、各個別インク量のインクが用紙1の所定領域B1に向けて吐出される。つまり、第1実施形態と同様に、特定の画素A1に応じたドットD1が、4つのノズルN1のそれぞれから個別インク量のインクDA1~DA4が所定領域B1に吐出されることにより形成される。この場合、特定の画素A1に応じたドットD1が、1つのノズルNから4種類のインク量のうちのいずれかのインクが所定領域B1に向けて吐出されることにより形成される場合に比べ、多様な階調(本実施形態においては35階調)の画像を形成することが可能となる。なお、上述の第1実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0094】
また、同じノズル列NRに含まれるノズルN(本発明の「第1ノズル」及び「第2ノズル」)を用いて、多様な階調の画像を形成する。この場合、ノズル列NRの数が少なくても多様な階調の画像を形成できるため、ヘッド10の主走査方向の幅を小さくすることが可能となる。
【0095】
<第3実施形態>
続いて、
図15を参照し、本発明の第3実施形態に係る印刷システム100について説明する。
第2実施形態における吐出走査においては、走査動作間に搬送処理が行われる。これに対して、第3実施形態における吐出走査においては、走査動作間に搬送処理が実行されず、4回の走査動作が行われる。本実施形態においても、正走査方向の走査動作と逆走査方向の走査動作とが交互に2回ずつ行われる。本実施形態における吐出走査は双方向印刷の場合であるが、片方向印刷の場合、第2実施形態と同様に、正又は逆走査方向の一方向の走査動作が4回行われる。また、本実施形態における吐出走査においては、1の画素に対しては同じノズルNからインクが吐出される。つまり、本実施形態においては、1のノズルNが本発明の第1ノズル及び第2ノズルに該当する。
【0096】
本実施形態における第2決定処理(S32)においては、1の画素に対応するドットを形成する際に同じノズルNから走査動作毎に1回のインクが吐出され、最大4回のインクが吐出される。つまり、1の画素に対応して走査動作毎に同じノズルNが割り当てられる。本実施形態においては、同じノズルNからインクが吐出されるため、
図15に示すように、コントローラ103は、上述のS41に代えてS341を実行する。S341において、コントローラ103は1の画素の合計インク量に基づいて走査動作毎に同じノズルNから吐出させるインク量を導出する。
【0097】
次に、コントローラ103は、走査動作毎に、導出されたインク量をノズルNから吐出させる個別インク量に決定する(S342)。例えば、画素A1においては、特定のノズルNにおいて、1回目の走査動作では「無」が割り当てられ、2回目の走査動作では「小」が割り当てられ、3回目の走査動作では「中」が割り当てられ、4回目の走査動作では「大」が割り当てられる。なお、「無」、「小」、「中」、「大」の割り当て順は適宜変更してもよい。そして、S342の後、上述のS49に進む。S49において、画像Aのすべての画素A1~A4について、ノズルNから吐出させる個別インク量を決定したか否かを判定する。個別インク量の決定がすべての画素A1~A4について行われていない場合(S49:NO)、S341に戻る。なお、画素A2に対応する個別インク量の割り当ては、画素A2が画素A1の主走査方向に隣接するため、画素A1に対応するノズルNと主走査方向に隣接するノズルNに割り当てればよい。また、画素A3に対応する個別インク量の割り当ては、画素A3が画素A1の副走査方向に隣接するため、画素A1に対応するノズルNと副走査方向に隣接するノズルNに割り当てればよい。また、画素A4に対応する個別インク量の割り当ては、画素A4が画素A2の副走査方向に隣接するため、画素A2に対応するノズルNと副走査方向に隣接するノズルNに割り当てればよい。なお、画素A2~A4に対応するノズルNの割り当ては上述のノズルNに限らず、適宜変更可能である。
【0098】
一方、個別インク量の決定がすべての画素A1~A4について行われた場合(S49:YES)、第2決定処理のフローを終了する。こうして、コントローラ103は、各ノズルNからS32で決定された個別インク量を吐出させるための印刷データを生成する(S33)。
【0099】
本実施形態における吐出走査ついて、以下に説明する。本実施形態における吐出走査においても、第2実施形態と同様に、4回の走査動作が実行される。なお、画素A1の印刷手順について説明し、他の画素A2~A4については省略する。画素A1に対応するドットの形成は、第2実施形態とほぼ同様であるため、
図14を参照して以下に説明する。本実施形態においても、コントローラ90は、正走査方向の1回目の走査動作を行う。1回目の走査動作においてコントローラ90は、特定のノズルN(例えば、ノズル列NR1のノズルN1)から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、ノズルN1には例えば、「無」の個別インク量が割り当てられているため、当該ノズルN1からインクは吐出されないが、
図14(a)には「無」に該当するインクDA1の部分を所定領域B1内に破線で示している。
【0100】
次に、コントローラ90は、逆走査方向の2回目の走査動作を行う。2回目の走査動作においてコントローラ90は、1回目の走査動作のときと同じノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、ノズルN1には例えば、「小」の個別インク量が割り当てられている。これにより、
図14(b)に示すように、「小」に該当するインクDA2が所定領域B1内に形成される。
【0101】
次に、コントローラ90は、正走査方向の3回目の走査動作を行う。3回目の走査動作においてコントローラ90は、1回目の走査動作のときと同じノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、ノズルN1には例えば、「中」の個別インク量が割り当てられている。これにより、
図14(c)に示すように、「中」に該当するインクDA3が所定領域B1内に形成される。
【0102】
次に、コントローラ90は、逆走査方向の4回目の走査動作を行う。4回目の走査動作においてコントローラ90は、1回目の走査動作のときと同じノズルN1から所定領域B1に第2決定処理で決定された個別インク量のインクを吐出するようにヘッド10を制御する。なお、ノズルN1には例えば、「大」の個別インク量が割り当てられている。これにより、
図14(d)に示すように、「大」に該当するインクDA4が所定領域B1内に形成される。こうして、1回の吐出走査が終了することで、画素A1に対応するドットD1が用紙1に形成される。なお、他の画素A2~A4についても画素A1と同様にしてドットD2~D4が形成される。こうして、印刷処理による用紙1への画像の印刷が終了する。
【0103】
このような第3実施形態における印刷システム100においても、画素値に応じて、走査動作毎に同じノズルNに対する個別インク量が決定され、各個別インク量のインクが用紙1の所定領域B1~B4に向けて吐出される。つまり、第1実施形態と同様に、特定の画素A1~A4に応じたドットD1~D4が、個別インク量のインクDA1~DA4が所定領域B1~B4に吐出されることにより形成される。これにおいても上述の第1実施形態と同様に、多様な階調(本実施形態においては35階調)の画像を形成することが可能となる。なお、上述の第1実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0104】
<第4実施形態>
続いて、
図16を参照し、本発明の第4実施形態に係る印刷システム100について説明する。
本実施形態における第2決定処理(S32)においては、同じ用紙に印刷する複数の画素について、同じノズルNからは同じ個別インク量を吐出するように、個別インク量を決定する。すなわち、コントローラ103は、今回の画素が前回の画素と同じ用紙1に対して印刷する画素であり、今回の画素に対応するノズルNと、同じ用紙1に印刷し個別インク量が決定済みの他の画素に対応するノズルNとが同じであり、且つ、今回の画素と同じ用紙1に印刷し個別インク量が決定済みの他の画素における合計インク量が同じである場合、ノズルNへ割り当てられた個別インク量が今回の画素と他の画素とにおいて同じになるように決定する。
【0105】
より詳細には、
図16に示すように、コントローラ103は、個別インク量の決定がすべての画素について行われていない場合(S49:NO)、S401に進む。コントローラ103は、S401において、今回の画素は前回の画素と同じ用紙1に対して印刷を実行するものであるか否かを判定する。別の用紙1に印刷を実行する画素である場合(S401:NO)、S41に進む。このようにS41に進むことで、別の用紙1に印刷を実行する際は、後述のS404を経由せず、S48を経由した場合、同じ合計インク量であっても異なる個別インク量が同じノズルNに割り当てられることがある。つまり、前回の用紙1に印刷する第1の画素において、第1のノズルN~第4のノズルNのうち、第1のノズルNに「無」が割り当てられ、第2のノズルNに「小」が割り当てられ、第3のノズルNに「中」が割り当てられ、第4のノズルNに「大」が割り当てられていても、今回の用紙1に印刷する第2の画素において、第1のノズルN~第4のノズルNのうち、第1のノズルNに「小」が割り当てられ、第2のノズルNに「中」が割り当てられ、第3のノズルNに「大」が割り当てられ、第4のノズルNに「無」が割り当てられていてもよい。つまり、合計吐出インク量が、第4のノズルN、第1のノズルN、第2のノズルN、第3のノズルNの順に多い場合、上述のように個別インク量が割り当てられる。
【0106】
同じ用紙1に印刷を実行する画素である場合(S401:YES)、コントローラ103は、今回の画素に対応するドットを形成するのに使用する4つのノズルNは、同じ用紙1に印刷し個別インク量が決定済みの他の画素に対応するドットを形成するのに使用するものであるか否かを判定する(S402)。今回の画素に対応するドットを形成するのに使用する4つのノズルNは、同じ用紙1に印刷し個別インク量が決定済みの他の画素に対応するドットを形成するのに使用するものと異なる場合(S402:NO)、S41へと進む。
【0107】
一方、今回の画素に対応するドットを形成するのに使用する4つのノズルNは、同じ用紙1に印刷し個別インク量が決定済みの他の画素に対応するドットを形成するのに使用するものと同じ場合(S402:YES)、コントローラ103は今回の画素の合計インク量と当該他の画素の合計インク量が同じであるか否かを判定する(S403)。合計インク量が同じでない場合(S403:NO)、S41へと進む。
【0108】
一方、合計インク量が同じである場合(S403:YES)、コントローラ103は他の画素における4つのノズルNへの個別インク量の割り当てと、今回の画素における4つのノズルNへの個別インク量の割り当てとを同じにする。この後、S49へと戻る。これら以外は第1及び第2実施形態と同様である。
【0109】
このような第4実施形態における印刷システム100においては、S404を経由することで、同じ用紙1に対する印刷時においては、同じノズルNから同一インク量のインクが吐出されることが許容される。このため、用紙1単位では、ノズルNの特性誤差等による画質のずれを抑制することが可能となる。また、一の用紙1に対する印刷と、別の用紙1に対する印刷とで、同じノズルNから吐出されるインク量を変更可能とすることで、複数のノズルN間で合計吐出インク量に大きな差が生じるのを抑制することができる。
【0110】
変形例として、今回の画素が別の用紙1に対する印刷である場合、当該画素において、ノズルNに対し、前回の画素とは異なる個別インク量を、合計吐出インク量にかかわらず割り当ててもよい。これにおいても、上述のように複数のノズルN間で合計吐出インク量に大きな差が生じるのを抑制することができる。
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の各実施形態及び変形例においては、外部装置102のコントローラ103で印刷データを生成していたが、プリンタ101のコントローラ90だけで印刷データを生成し、印刷処理を実行してもよい。つまり、プリンタ101だけで印刷システム100が構成されていてもよい。これにおいても、上述の各実施形態及び変形例と同様な効果を得ることができる。
【0112】
また、上述の各実施形態の第1決定処理においては、第1の画素の画素値が、34種類の閾値により区別された35種類の合計インク量のいずれに対応するかを決定していたが、第1の画素の画素値が隣接する合計インク量間に対応するような画素値である場合、第1の画素に隣接する第2の画素の画素値に、第1の画素と決定された合計インク量との差分を加算して、第2の画素に対応する合計インク量を決定してもよい。つまり、第1決定処理において、誤差拡散法をさらに用いてもよい。
【0113】
また、上述の各実施形態の第2決定処理においては、合計インク量に基づいて適宜のノズルN(本発明の「第1ノズル」及び「第2ノズル」)から吐出する個別インク量を決定すればよく、特にS42~S48を実行しなくてもよい。
【0114】
また、上述の各実施形態では、ノズルNから検出用電極76に向けてインクを吐出させたときの検出用電極76の電位に応じて、判定回路78が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力したが、これには限られない。例えば、鉛直方向に延びた検出用電極を配置し、ノズルNから検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電位に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。あるいは、ノズルNから吐出されたインクを検出する光センサを設け、光センサから、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。
【0115】
また、以上の例では、インクが吐出されないノズルNを異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズルNからのインクの吐出方向が正常であるか否かに応じた信号を出力する検出手段を設け、この検出手段からの信号に基づいて、吐出方向に異常のあるノズルNを異常ノズルと判定してもよい。
【0116】
また、インクが吐出されないこと以外の異常ノズルの状態に応じた信号を出力する検出手段を設け、検出手段からの信号に基づいて、異常ノズルの状態に関する情報を取得してもよい。異常ノズルの状態とは、例えば、異常ノズルにおいて、インクの吐出方向に異常がある、しぶきが発生する、気泡が混入している、紙粉が詰まっている等の状態のことである。このとき、検査用駆動としては、ノズルNからインクを吐出させない程度にインクに圧力を付与し、当該ノズルN近傍のインクを振動させてもよい。そして、このノズルN近傍のインクの振動状況に応じた信号を検出手段から出力させて、異常ノズルの状態に関する情報を取得してもよい。また、上述の各実施形態におけるプリンタ101は検出手段を有していなくてもよい。
【0117】
また、上述の各実施形態及び変形例においては、ヘッド10が4つのノズル列NR1~NR4を有しているが、ヘッド10は2、3又は5以上のノズル列NRを有していてもよい。また、ノズル列NR1~NR4が主走査方向に等間隔に配置されていなくてもよい。この場合、印刷時に、主走査方向の所定印字解像度に応じたタイミングで、各ノズル列NR1~NR4のノズルNからインクを吐出するように、ヘッド10を制御すればよい。また、上述の印刷処理においては、ノズル列NRを構成する複数のノズルNのうちの一部のノズルNだけから、上述のようにインクを吐出させてもよい。また、第1実施形態において、吐出走査によりインクを吐出させるノズル列NRは、複数のノズル列NRの中から2以上のノズル列NRを選択し、当該2以上のノズル列NRのノズルNからインクを吐出させればよい。また、第2実施形態において、吐出走査によりインクを吐出させるノズル列NRは、1のノズル列NRだけであってもよい。
【0118】
上述の各実施形態においては、4種類のインク量のインクをノズルNから吐出することが可能であるが、2,3又は5以上の種類のインク量のインクをノズルNから吐出することが可能であってもよい。
【0119】
上述の第1実施形態におけるヘッド10は、シリアル式に限定されず、ライン式(用紙1の搬送方向と交差する方向に移動しないように固定されたもの)であってもよい。この場合、ライン式のヘッドは、用紙1の搬送方向(本発明の「第2方向」)と交差する方向(本発明の「第1方向」)に沿った複数のノズルから構成された複数のノズル列を含む。また、複数のノズル列は搬送方向に並んで配置される。このようなライン式のヘッドを含むプリンタにおいても上述と同様な効果を得ることができる。
【0120】
上述の第2及び第3実施形態におけるヘッド10は、ブラックインクを吐出するモノクロヘッドに限定されず、ノズル列NR毎に互いに異なる色のインクを吐出するカラーヘッドであってもよい。これにおいても、上述と同様な効果を得ることができる。
【0121】
本発明の液体吐出装置としては、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出ヘッドを有する装置)にも適用可能である。吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよいし、シート状以外の記録媒体であってもよい。ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。この場合、液体を吐出する領域が同じすべてのノズルから同じ種類(同じ色)の液体が吐出可能に構成されておればよい。
【符号の説明】
【0122】
10 ヘッド
16 インクカートリッジ
30 移動機構
50 搬送機構
76 検出用電極(検出手段の一部)
77 高電圧電源回路(検出手段の一部)
78 判定回路(検出手段の一部)
79 抵抗(検出手段の一部)
90 コントローラ(コントローラシステムの一部)
100 印刷システム(液体吐出システム)
101 プリンタ(液体吐出装置)
103 コントローラ(コントローラシステムの一部)
N ノズル
NR ノズル列