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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017237
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】非繊維製品用抗ウイルス加工剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/06 20060101AFI20240201BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240201BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240201BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240201BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A01N59/06 Z
C09D7/61
C09D201/00
A01P1/00
A01N25/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119750
(22)【出願日】2022-07-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】593157910
【氏名又は名称】株式会社タイショーテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 渓
(72)【発明者】
【氏名】横山 友紀
(72)【発明者】
【氏名】吉川 祐人
(72)【発明者】
【氏名】山内 章裕
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA08
4H011DA14
4H011DH16
4J038HA376
4J038NA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な非繊維製品用抗ウイルス加工剤を提供すること。
【解決手段】アルミニウム塩を有効成分として含有する、非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム塩を有効成分として含有する、非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項2】
前記アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、硫酸イオンとを含む塩である、請求項1に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項3】
前記アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、硫酸イオンと、1価の陽イオンと、を含む塩である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項4】
前記1価の陽イオンがカリウムイオンである、請求項3に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項5】
前記非繊維製品が、プラスチック成形物、塗料又はコーティング剤である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項6】
前記アルミニウム塩の平均粒子径が100μm以下である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項7】
対象ウイルスが、オルソミクソウイルス科又はカリシウイルス科に属するウイルスである、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項8】
樹脂と、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、を含有し、
前記アルミニウム塩が、前記樹脂に分散している、抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項9】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物の全質量を基準として、0.25質量%以上である、請求項8に記載の抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、溶剤又は固体分散媒と、を含有する、抗ウイルス加工用組成物。
【請求項11】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量を基準として、0.25質量%以上である、請求項10に記載の抗ウイルス加工用組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の抗ウイルス加工用組成物により形成され、抗ウイルス性が付与された膜を含む、物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非繊維製品用抗ウイルス加工剤に関する。本発明はまた、抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物、抗ウイルス加工用組成物及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザウイルス及びノロウイルスの蔓延、さらには新型コロナウイルス感染症のパンデミックを背景に、新たな付加価値として抗ウイルス加工剤が配合された抗ウイルス加工製品に注目が集まっている。抗ウイルス性が付与された物品についてはこれまでにも種々の提案がなされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003-511177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な非繊維製品用抗ウイルス加工剤を提供することを目的とする。本発明は、新規な抗ウイルス性プラスチック成形物を提供することを目的とする。本発明は、新規な抗ウイルス加工用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の各発明に関する。
[1]
アルミニウム塩を有効成分として含有する、非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[2]
前記アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、硫酸イオンとを含む塩である、[1]に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[3]
前記アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、硫酸イオンと、1価の陽イオンと、を含む塩である、[1]~[3]のいずれかに記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[4]
前記1価の陽イオンがカリウムイオンである、[3]に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[5]
前記非繊維製品が、プラスチック成形物、塗料又はコーティング剤である、[1]~[4]のいずれかに記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[6]
前記アルミニウム塩の平均粒子径が100μm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[7]
対象ウイルスが、オルソミクソウイルス科又はカリシウイルス科に属するウイルスである、[1]~[6]のいずれかに記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
[8]
樹脂と、[1]~[7]のいずれかに記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、を含有し、前記アルミニウム塩が、前記樹脂に分散している、抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
[9]
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物の全質量を基準として、0.25質量%以上である、[8]に記載の抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
[10]
[1]~[7]のいずれかに記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、溶剤又は固体分散媒と、を含有する、抗ウイルス加工用組成物。
[11]
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量を基準として、0.25質量%以上である、[10]に記載の抗ウイルス加工用組成物。
[12]
[10]に記載の抗ウイルス加工用組成物により形成され、抗ウイルス性が付与された膜を含む、物品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規な非繊維製品用抗ウイルス加工剤を提供することが可能となる。本発明によれば、新規な抗ウイルス性プラスチック成形物を提供することが可能となる。本発明によれば、新規な抗ウイルス加工用組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
本明細書において、「抗ウイルス加工剤」とは、物品に抗ウイルス性を付与する用途に使用される剤を意味する。「抗ウイルス」は、特定のウイルスの数を減少させることを示す。
【0009】
本明細書において、「非繊維製品」とは、繊維製品(紙(例えば、ティッシュペーパー)、衣類等)以外の製品を意味する。非繊維製品としては、例えば、プラスチック成形物(家具、文具、食器、電化製品、バス用品、トイレ用品、自動車用品、包装資材、保護フィルム、壁紙、化粧板等)、溶剤系コーティング剤、水系コーティング剤、溶剤系塗料、水系塗料、粉体塗料、UV硬化型塗料、塗り壁材、接着剤、目地材、石膏ボード、セメント、タイル、ゴム製品、金属製品、木工製品、ガラス製品、油脂ワックス、洗浄剤等が挙げられる。
【0010】
本実施形態に係る非繊維製品用抗ウイルス加工剤は、アルミニウム塩を有効成分として含有する。
【0011】
抗ウイルス加工剤は、エンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス)及びノンエンベロープウイルスの両方に対して、抗ウイルス効果を有している。抗ウイルス加工剤の対象ウイルスとしては、例えば、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、アレナウイルス(Arenaviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)等に属するエンベロープウイルス、カリシウイルス科(Caliciviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、レオウイルス科(Reoviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、アデノウイルス科(Adenoviridae)、パピローマウイルス科(Papillomaviridae)等に属するノンエンベロープウイルスを挙げることができる。
【0012】
オルソミクソウイルス科に属するウイルスとしては、例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トゴトウイルス、アイサウイルス等が挙げられる。カリシウイルス科に属するウイルスとしては、ノロウイルス、サポウイルス、ラゴウイルス、ベシウイルス、ネボウイルス等が挙げられる。
【0013】
抗ウイルス加工剤の対象ウイルスは、オルソミクソウイルス科又はカリシウイルス科に属するウイルスであってよい。
【0014】
アルミニウム塩は、構成イオンとして、アルミニウムイオン(Al3+)を含む塩である。アルミニウム塩の構成イオンとして含まれる陰イオンとしては、例えば、硫酸イオン(SO 2-)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、フッ化物イオン(F)、硫酸水素イオン(HSO4 )、亜硫酸イオン(SO3 2-)、亜硫酸水素イオン(HSO3 )、硝酸イオン(NO3 )、亜硝酸イオン(NO2 )、リン酸イオン(PO 3-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(H2PO )、炭酸イオン(CO3 2-)、炭酸水素イオン(HCO )、水酸化物イオン(OH)、脂肪酸イオン(R-COO(Rは炭素鎖を示す))が挙げられる。
【0015】
アルミニウム塩は、アルミニウムイオンと、硫酸イオンとを含む塩であってよく、アルミニウムイオンと、塩化物イオンとを含む塩(例えば、塩化アルミニウム)であってよい。アルミニウム塩は、抗ウイルス活性がより一層優れたものとなることから、アルミニウムイオンと、硫酸イオンとを含む塩であることが好ましい。
【0016】
アルミニウム塩は、アルミニウムイオン以外の陽イオンを更に含んでいてよい。アルミニウムイオン以外の陽イオンとしては、例えば、カリウムイオン(K)、アンモニウムイオン(NH )、ナトリウムイオン(Na)、リチウムイオン(Li)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、銅イオン(Cu)、銀イオン(Ag)が挙げられる。
【0017】
アルミニウム塩は、アルミニウムイオンと、硫酸イオンと、を含み、アルミニウムイオン以外の陽イオンを含まない塩(例えば、硫酸アルミニウム)であってよく、アルミニウムイオンと、硫酸イオンと、アルミニウムイオン以外の陽イオンと、を含む塩であってもよい。
【0018】
アルミニウム塩は、抗ウイルス活性がより一層優れたものとなることから、アルミニウムイオンと、1価の陽イオンと、硫酸イオンと、を含む塩であってよい。1価の陽イオンは、カリウムイオン又はアンモニウムイオンであってよい。
【0019】
アルミニウム塩は、式(1):AlM(SOで表される組成を有する化合物であってよい。式(1)において、Mは、カリウム(K)又はアンモニウム(NH)であってよい。アルミニウム塩は、式(1)においてMがカリウムである硫酸アルミニウムカリウム、又は、式(1)においてMがアンモニウムである硫酸アルミニウムアンモニウムであってよく、抗ウイルス活性が更に優れたものとなることから、硫酸アルミニウムカリウムであってよい。
【0020】
アルミニウム塩は、抗ウイルス効果に更に優れることから、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよく、硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アルミニウムアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0021】
アルミニウム塩は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。アルミニウム塩の無水物としては、例えば、硫酸アルミニウムカリウム無水物、硫酸アルミニウムアンモニウム無水物、硫酸アルミニウム無水物が挙げられる。アルミニウム塩の水和物としては、例えば、硫酸アルミニウムカリウム12水和物、硫酸アルミニウム14~18水和物及び塩化アルミニウム6水和物が挙げられる。アルミニウム塩が無水物である場合、樹脂混練時の混ざりやすさが更に向上し、ダマが更に生じにくくなる。また、アルミニウム塩が無水物である場合、混練中に樹脂内部に気泡が更に生じにくくなる。したがって、アルミニウム塩は、樹脂とともに用いる場合には、無水物が水和物と比べより適している。
【0022】
アルミニウム塩の平均粒子径は、抗ウイルス性プラスチック成形物等の非繊維製品に用いた場合の外観がより良好になることから、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、又は10μm以下であってよい。アルミニウム塩の平均粒子径が20μm以下である場合、抗ウイルス性プラスチック成形物等の非繊維製品に用いた場合の外観が特に良好なものとなる。アルミニウム塩の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、又は15μm以上であってよい。
【0023】
アルミニウム塩の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2100(株式会社島津製作所)を使用し、体積基準にて測定したものであってよい。
【0024】
抗ウイルス加工剤は、アルミニウム塩のみを含有するものであってもよく、抗ウイルス加工剤の形状及び具体的態様に応じて、アルミニウム塩以外の成分を含有するものであってもよい。その他成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、防藻剤、抗酸化剤、消臭剤、キレート剤、紫外線吸収剤、光安定剤、溶媒、乳化剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、担体、賦形剤、固結防止剤、可塑剤、触媒等を使用することができる。これらの成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
抗ウイルス加工剤中のアルミニウム塩の含有量は、例えば、非繊維製品の種類等に応じて、適宜設定してよい。抗ウイルス加工剤における、アルミニウム塩の含有量は、例えば、抗ウイルス加工剤の全質量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下又は10質量%以下であってよい。
【0026】
抗ウイルス加工剤中のアルミニウム塩以外の成分の含有量は、例えば、抗ウイルス加工剤の全質量を基準として、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよく、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0027】
抗ウイルス加工剤は、固体、液体(懸濁液を含む。)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。抗ウイルス加工剤の形態は、非繊維製品の種類及び用途等に応じて適宜設定してよい。
【0028】
アルミニウム塩の配合量は、非繊維製品の全質量に対して、0.01質量%、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.20質量%以上、0.25質量%以上、0.30質量%以上、0.35質量%以上、0.40質量%以上、0.45質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、0.70質量%以上、0.80質量%以上、0.90質量%以上、1.00質量%以上、1.25質量%以上、1.50質量%以上、1.75質量%以上、2.00質量%以上、2.25質量%以上、2.50質量%以上、2.75質量%以上、又は、3.00質量%以上であってよい。アルミニウム塩の配合量は、非繊維製品の全質量に対して、10.00質量%以下、9.00質量%以下、8.00質量%以下、7.00質量%以下、6.00質量%以下、5.00質量%以下、4.50質量%以下、4.00質量%以下、3.50質量%以下、3.00質量%以下、2.50質量%以下、2.00質量%以下、1.50質量%以下、1.00質量%以下又は0.75質量%以下であってよい。
【0029】
本実施形態に係る抗ウイルス加工剤は、非繊維製品の表面部分に付着させるだけでなく、非繊維製品中に含有させることによっても非繊維製品に抗ウイルス性を付与することができる。
【0030】
抗ウイルス加工剤の抗ウイルス活性値は、2以上であってよく、3以上であってよい。抗ウイルス加工剤の抗ウイルス活性値は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0031】
本実施形態に係る抗ウイルス加工剤は、耐光性を有している。そのため、本実施形態に係る抗ウイルス加工剤によって抗ウイルス加工が施されたものは、光曝露による抗ウイルス活性の著しい低下が抑制されている。
【0032】
本実施形態に係る抗ウイルス加工剤は、耐水性を有している。そのため、本実施形態に係る抗ウイルス加工剤によって抗ウイルス加工が施されたものは、水との接触による抗ウイルス活性の著しい低下が抑制されている。
【0033】
本実施形態に係る抗ウイルス加工剤は、アルミニウム塩を有効成分とするため、銀、銅、及び白金を有効成分として含む化合物と比較して安価に入手できることがあり、コスト面で有利である。
【0034】
酸化チタン等の光触媒を有効成分として含む抗ウイルス性物品では、抗ウイルス効果の発現に光の存在が必要であるが、本実施形態に係る抗ウイルス加工剤によって抗ウイルス加工が施されたものは、光が存在しているか否かにかかわらず、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0035】
本実施形態に係る非繊維製品は、抗ウイルス加工剤の有効成分である上述したアルミニウム塩を含み、抗ウイルス性が付与された非繊維製品である。
【0036】
本実施形態に係る非繊維製品を製造する方法は、抗ウイルス加工剤を非繊維製品に含有させる又は付着させる工程を備える。当該方法は、非繊維製品用抗ウイルス加工剤を非繊維製品に含有させる又は付着させる工程を備える、非繊維製品に抗ウイルス性を付与する方法と捉えることもできる。
【0037】
抗ウイルス加工剤を非繊維製品に含有させる方法は、特に制限されず、例えば、非繊維製品の製造工程において、非繊維製品の材料に抗ウイルス加工剤を混合する方法であってよい。抗ウイルス加工剤を非繊維製品に付着させる方法は、特に制限されず、非繊維製品の表面上に抗ウイルス加工剤を含む液体を塗布、又は噴霧する方法、非繊維製品を液状の抗ウイルス加工剤に浸漬させる方法であってよい。抗ウイルス加工剤を非繊維製品に付着させる方法では、必要に応じて、抗ウイルス加工剤を非繊維製品に付着させた後に、抗ウイルス加工剤が付着した物品を乾燥させてもよい。
【0038】
本実施形態に係る抗ウイルス性プラスチック成形物は、樹脂と、上述した抗ウイルス加工剤とを含む。抗ウイルス性プラスチック成形物において、アルミニウム塩は、樹脂に分散している。
【0039】
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、PVA樹脂、EVA樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
【0040】
抗ウイルス性プラスチック成形物において、アルミニウム塩の含有量は、抗ウイルス性プラスチック成形物全質量に対して、0.15質量%以上、0.20質量%以上、0.25質量%以上、0.30質量%以上、0.35質量%以上、0.40質量%以上、0.45質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、0.70質量%以上、0.80質量%以上、0.90質量%以上、1.00質量%以上、1.25質量%以上、1.50質量%以上、1.75質量%以上、2.00質量%以上、2.25質量%以上、2.50質量%以上、2.75質量%以上、又は、3.00質量%以上であってよい。アルミニウム塩の配合量は、抗ウイルス性プラスチック成形物全質量に対して、10.00質量%以下、9.00質量%以下、8.00質量%以下、7.00質量%以下、6.00質量%以下、5.00質量%以下、4.50質量%以下、4.00質量%以下、3.50質量%以下、3.00質量%以下、2.50質量%以下、2.00質量%以下、1.50質量%以下、1.00質量%以下又は0.75質量%以下であってよい。
【0041】
抗ウイルス性プラスチック成形物の形状は、例えば、シート状、板状、フィルム状、立体状が挙げられる。
【0042】
抗ウイルス性プラスチック成形物は、例えば、樹脂と、アルミニウム塩と、を混合又は混練して樹脂材料を得ることと、樹脂材料を成形することとを含む方法によって製造することができる。混合又は混練する方法としては、通常の方法を用いることができる。
【0043】
本実施形態に係る抗ウイルス加工用組成物は、上述した抗ウイルス加工剤を含有する。抗ウイルス加工用組成物において、上述したアルミニウム塩が、抗ウイルス加工の有効成分である。本実施形態に係る抗ウイルス加工用組成物は、例えば、コーティング剤又は塗料等の用途に用いられる。抗ウイルス加工用組成物の形状は、液状又は粉末状であってよい。塗料としては、例えば、溶剤系塗料、UV硬化型塗料、粉体塗料、水系塗料が挙げられる。溶剤系塗料としては、例えば、ポリウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、フッ素樹脂系、アルキド樹脂系、メラミン樹脂系、シリコーン樹脂系、塩化ビニル樹脂系及びニトロセルロース系が挙げられる。水系塗料としては、例えば、塩化ビニル樹脂エマルジョン系、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系、ロジン樹脂エマルジョン系及びアクリル樹脂エマルジョン系が挙げられる。粉体塗料としては、例えば、塩化ビニル樹脂系、ポリエチレン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、フッ素樹脂系、ポリエステル樹脂系、及びエポキシポリエステル樹脂系が挙げられる。UV硬化型塗料としては、例えば、アクリル樹脂系が挙げられる。
【0044】
抗ウイルス加工用組成物は、上述した抗ウイルス加工剤と、溶剤又は固体分散媒と、を含有していてよい。抗ウイルス加工用組成物が溶剤を含む場合、抗ウイルス加工用組成物は、溶剤系塗料、溶剤系コーティング剤、水系塗料、水系コーティング剤及び洗浄剤等に好適に用いることができる。抗ウイルス加工用組成物が固体分散媒を含む場合、抗ウイルス加工用組成物は、粉体塗料、塗り壁材等の用途に好適に用いることができる。固体分散媒には、粉体混合製品が含まれる。固体分散媒としては例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸亜鉛、酸化クロム、シリカ、ゼオライト、ガラス、珪藻土、雲母、ベントナイト、けい砂、金属粉、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、べんがら、紺青、群青、モリブテン赤、クロムグリーン、黄鉛、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリ-ン、ハンザエロー、ペレリンレッド、キナクリドンレッド、チオインジゴレッドが挙げられる。
【0045】
溶剤は、水又は有機溶剤であってよい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等のエステル化合物、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素化合物、水などが挙げられる。溶剤は、1種単独で用いて、2種以上を併用してもよい。
【0046】
抗ウイルス加工用組成物において、アルミニウム塩の含有量は、抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量に基準として、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.20質量%以上、0.25質量%以上、0.30質量%以上、0.35質量%以上、0.40質量%以上、0.45質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、0.70質量%以上、0.80質量%以上、0.90質量%以上、1.00質量%以上、1.25質量%以上、1.50質量%以上、1.75質量%以上、2.00質量%以上、2.25質量%以上、2.50質量%以上、2.75質量%以上、又は、3.00質量%以上であってよい。アルミニウム塩の配合量は、抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量を基準として、10.00質量%以下、9.00質量%以下、8.00質量%以下、7.00質量%以下、6.00質量%以下、5.00質量%以下、4.50質量%以下、4.00質量%以下、3.50質量%以下、3.00質量%以下、2.50質量%以下、2.00質量%以下、1.50質量%以下、1.00質量%以下又は0.75質量%以下であってよい。本明細書において、「不揮発分」とは、揮発する物質以外の成分であり、抗ウイルス加工用組成物を乾燥させた際に揮発しないで残存する成分を意味する。
【0047】
抗ウイルス加工用組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含んでいてよい。抗ウイルス加工用組成物は、硬化性成分を更に含んでいてよい。硬化性成分は、例えば、溶剤系ポリウレタン樹脂塗料に用いられるものを用いることができる。
【0048】
抗ウイルス加工用組成物は、例えば、溶剤及び必要に応じて添加されるその他の成分を含む原料と、アルミニウム塩と、を混合することを含む方法によって製造することができる。
【0049】
本実施形態に係る物品は、抗ウイルス加工用組成物により形成され、抗ウイルス性が付与された膜を含む。当該物品は、基材を更に備えていてよい。すなわち、本実施形態に係る物品は、基材と、基材上に形成され、抗ウイルス性が付与された膜とを備えていてよい。
【0050】
基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、PVA樹脂、EVA樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、石膏、セメント、タイル、ゴム、金属、木材、ガラスが挙げられる。基材は、シート状、板状、フィルム状、又は立体状であってよい。
【0051】
抗ウイルス性が付与された膜の不揮発分重量は、例えば、1g/m以上、3g/m以上、5g/m以上、10g/m以上、20g/m以上、50g/m以上、100g/m以上、200g/m以上、500g/m以上、又は1000g/m以上であってよく、1000g/m以下、500g/m以下、200g/m以下、100g/m以下、50g/m以下、20g/m以下、10g/m以下、5g/m以下、3g/m以下、又は1g/m以下であってよい。抗ウイルス性が付与された膜は、基材の表面の一部又は全面にわたり形成されていてよい。
【0052】
物品の例としては、例えば、家具、文具、食器、電化製品、バス用品、トイレ用品、自動車用品、包装資材、保護フィルム、壁紙、化粧板、目地材、石膏ボード、セメント、タイル、ゴム製品、金属製品、木工製品、ガラス製品が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る物品は、例えば、基材上に上述した抗ウイルス加工用組成物を塗布して塗膜を形成することを含む方法によって製造することができる。基材には、抗ウイルス加工用組成物を塗布する前にプライマーが塗布されていてもよい。
【実施例0054】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「%」は特に言及ない限り、「質量%」を意味する。
【0055】
<抗ウイルス活性値の測定>
~抗ウイルス試験法~
ISO21702を参照として実施した。試験片50mm四方に対して、0.4mLのインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルス培養液を接種した。その後、40mm四方のポリエチレンフィルムを上から被せ、25℃・湿度90%以上の条件で試料とウイルスを接触させた。24時間後、10mLのSCDLP培地にて、ウイルスを洗い出した。その後、洗い出し液の10倍希釈系列を作製し、これを用いてウイルス感染価を測定した。
【0056】
~ウイルス感染価の測定方法(プラーク法)~
6ウェルプレートに単層培養した細胞を維持培地で洗浄した。培地を抜き取り、各ウェルに洗い出し液の10倍希釈系列をそれぞれ0.1mLずつ接種した。インフルエンザウイルスの場合は34℃、ネコカリシウイルスの場合は37℃で5%CO条件下にて1時間培養した。培養後、維持培地で細胞を洗浄した。洗浄後のウェルに寒天培地を注ぎ、室温で10分間静置して寒天培地を固めた。その後、インフルエンザウイルスの場合は34℃、ネコカリシウイルスの場合は37℃で5%CO条件下にて2-3日間培養した。培養後、3.7%ホルマリン溶液を添加し、1時間静置して細胞を固定した。固定後、ホルマリン溶液と寒天培地を取り除き、メチレンブルー溶液で細胞を染色した。ウイルスに感染した細胞は染まらずに白抜け(プラーク)するため、そのプラーク数を計測することでウイルス感染価を算出した。算出には下記の式を用いた。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm当たりのウイルス感染価(PFU/cm
C:プラーク数
D:洗い出し液の希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0057】
~抗ウイルス活性値の算出~
以下の式に従い、抗ウイルス活性値を算出した。抗ウイルス活性値3以上のときに効果大(◎)、抗ウイルス活性値2以上3未満のときに効果中(○)とした。
抗ウイルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm当たりのウイルス感染値の常用対数値
【0058】
<試験片の作製>
~抗ウイルス加工剤を添加したプラスチック成形物の作製~
テストミキシングロール機を用いて140℃~160℃でポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社)を混練した。そこにアルミニウム塩の粉末を樹脂重量に対して0.25%~4%となるように添加し、さらに15分混練してポリエチレン樹脂中にアルミニウム塩を分散させた。その後、厚さ1mmとなるようにシート状に成形して試験片とした。
【0059】
~抗ウイルス加工剤を添加した塗料塗膜の作製~
市販の溶剤系ポリウレタン樹脂塗料(和信ペイント社)にアルミニウム塩を塗料の不揮発分重量に対して0.25%~2%となるように添加してよく分散させた。その後、プライマー(染めQテクノロジィ社)を吹き付けたポリプロピレン板に、調製した塗料を不揮発分重量が10g/mとなるように塗布した。その後、室温で1日間養生し、試験片とした。
【0060】
~アルミニウム塩について~
・硫酸アルミニウムカリウム 無水(アルミニウム塩A)・・・大明化学工業社
・硫酸アルミニウムカリウム 無水(アルミニウム塩B)・・・内藤製薬社
・硫酸アルミニウムアンモニウム 12水(アルミニウム塩C)・・・関東化学社
・硫酸アルミニウムカリウム 無水(アルミニウム塩D)・・・関東化学社
・アルミニウム塩E、アルミニウム塩F・・・食品添加物公定書解説書第9版を参照とし、硫酸アルミニウムカリウム 12水(関東化学社)を200℃で4時間加熱し、硫酸アルミニウムカリウム 無水を得た。その後、得られた硫酸アルミニウムカリウム 無水を粉砕してアルミニウム塩Eとアルミニウム塩Fとした。
・硫酸アルミニウム 14~18水和物(アルミニウム塩G)・・・関東化学社
・塩化アルミニウム 6水和物(アルミニウム塩H)・・・関東化学社
・硫酸アルミニウムアンモニウム 無水(アルミニウム塩I)・・・食品添加物公定書解説書第9版を参照とし、硫酸アルミニウムアンモニウム 12水(関東化学社)を200℃で4時間加熱した後、粉砕して硫酸アルミニウムアンモニウム無水とした。
・硫酸アルミニウム 無水(アルミニウム塩J)・・・関東化学社
【0061】
<評価結果>
(抗ウイルス性)
表1は、アルミニウム塩によるプラスチック成形物への抗ウイルス性付与の結果を示す。本明細書において、「抗IV活性」は、抗インフルエンザウイルス活性を意味し、「抗FCV活性」は、抗ネコカリシウイルス活性を意味する。
【表1】
【0062】
表1のとおり、アルミニウム塩を含むプラスチック成形物が抗ウイルス性を有することが示された。
【0063】
(耐光性)
アルミニウム塩Aを含むポリエチレン樹脂シートに対してキセノン光を10時間照射し、その後、抗ウイルス活性値を測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0064】
表2に示されるとおり、アルミニウム塩Aは光照射後も変わらず、0.5%で抗IV活性◎、1.0%で抗FCV活性◎であった。アルミニウム塩Bは光照射後も変わらず、0.5%で抗IV活性と、抗FCV活性共に◎であった。
【0065】
(耐水性)
アルミニウム塩Aまたはアルミニウム塩Bを含むポリエチレン樹脂シートを25℃で蒸留水に16時間浸漬した。その後、抗ウイルス活性値を測定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0066】
アルミニウム塩Aとアルミニウム塩Bは共に浸漬処理後も2.0%で抗IV活性◎、3.0%で抗FCV活性◎であった。
【0067】
(プラスチック成形物の樹脂外観の評価)
アルミニウム塩を含むプラスチック成形物(ポリエチレン樹脂)の樹脂外観を評価した。結果を表4及び表5に示す。
【表4】
【0068】
表4のとおり、アルミニウム塩の平均粒子径を小さくすることによって、プラスチック成形物の樹脂外観が更に良好になることが示された。
【表5】
【0069】
表5のとおり、各硫酸塩は水和物だと樹脂混練時に混ざりにくく、ダマが生じやすかった(樹脂混練時の加熱で無水化し、固結してしまうと推察される)。また、塩化アルミニウムの水和物は混練中に樹脂内部に気泡が生じた。そのため、樹脂に添加する際には無水物が適している。
【0070】
<溶剤系コーティング及び塗料について>
溶剤系ポリウレタン樹脂塗料にアルミニウム塩を添加し、不揮発分重量が10g/mとなるように基材に塗工したものを試験片とし、抗ウイルス試験を実施した。抗ウイルス試験の結果についてはプラスチック成形物(ポリエチレン樹脂)系と同様に評価した。
【表6】
【0071】
アルミニウム塩A、アルミニウム塩B、アルミニウム塩E、アルミニウム塩J、アルミニウム塩Dは1%で抗IV活性と抗FCV活性が◎であった。アルミニウム塩Iは1%で抗FCV活性が〇であった。
【表7】
【0072】
コーティングにした場合、平均粒子径4.3μmのアルミニウム塩Aと平均粒子径15μmのアルミニウム塩Bは塗膜の外観が良好であった。平均粒子径79μmのアルミニウム塩Eでは表面にややザラつきが生じる程度であった。。平均粒子径133μmのアルミニウム塩Fは塗膜内での分散性が悪く、粒子が非常に目立ち、外観が著しく悪くなった。

【手続補正書】
【提出日】2022-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム塩を有効成分として含有し、
前記アルミニウム塩が、アルミニウムイオン、硫酸イオン及び1価の陽イオンで構成される化合物と、硫酸アルミニウムと、塩化アルミニウムと、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項2】
前記1価の陽イオンがカリウムイオンである、請求項1に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項3】
前記非繊維製品が、プラスチック成形物、塗料又はコーティング剤である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項4】
前記アルミニウム塩の平均粒子径が100μm以下である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項5】
対象ウイルスが、オルソミクソウイルス科又はカリシウイルス科に属するウイルスである、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項6】
樹脂と、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、を含有し、
前記アルミニウム塩が、前記樹脂に分散している、抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項7】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物の全質量を基準として、0.25質量%以上である、請求項に記載の抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、溶剤又は固体分散媒と、を含有する、抗ウイルス加工用組成物。
【請求項9】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量を基準として、0.25質量%以上である、請求項に記載の抗ウイルス加工用組成物。
【請求項10】
請求項に記載の抗ウイルス加工用組成物により形成され、抗ウイルス性が付与された膜を含む、物品。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム塩を有効成分として含有し、
前記アルミニウム塩が、アルミニウムイオン、硫酸イオン及び1価の陽イオンで構成される化合物と、硫酸アルミニウムと、塩化アルミニウムと、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、非繊維製品用抗ウイルス加工剤(但し、抗菌性を有する金属イオンと界面活性剤との反応により生成される水不溶性金属塩を有効成分として含有するもの、及び、鉄イオンと、アルミニウムイオンと、酸化タングステンと、スルホン酸とを有効成分として含有するものを除く。)
【請求項2】
前記1価の陽イオンがカリウムイオンである、請求項1に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項3】
前記非繊維製品が、プラスチック成形物、塗料又はコーティング剤である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項4】
前記アルミニウム塩の平均粒子径が100μm以下である、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項5】
対象ウイルスが、オルソミクソウイルス科又はカリシウイルス科に属するウイルスである、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項6】
樹脂と、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、を含有し、
前記アルミニウム塩が、前記樹脂に分散している、抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項7】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物の全質量を基準として、0.25質量%以上である、請求項6に記載の抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、溶剤又は固体分散媒と、を含有する、抗ウイルス加工用組成物。
【請求項9】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量を基準として、0.25質量%以上である、請求項8に記載の抗ウイルス加工用組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の抗ウイルス加工用組成物により形成され、抗ウイルス性が付与された膜を含む、物品。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム塩を有効成分として含有する、非繊維製品用抗ウイルス加工剤であって、
前記アルミニウム塩が、硫酸アルミニウムカリウム無水物であり、
前記アルミニウム塩の平均粒子径が20μm以下であり、
前記非繊維製品が、プラスチック成形物、溶剤系塗料、UV硬化型塗料、粉体塗料、又は溶剤系コーティング剤である、非繊維製品用抗ウイルス加工剤(但し、抗菌性を有する金属イオンと界面活性剤との反応により生成される水不溶性金属塩を有効成分として含有するもの、及び、鉄イオンと、アルミニウムイオンと、酸化タングステンと、スルホン酸とを有効成分として含有するものを除く。)。
【請求項2】
前記アルミニウム塩の平均粒子径が15μm以下である、請求項1に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項3】
対象ウイルスが、オルソミクソウイルス科又はカリシウイルス科に属するウイルスである、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤。
【請求項4】
樹脂と、請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、を含有し、
前記アルミニウム塩が、前記樹脂に分散している、抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項5】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物の全質量を基準として、0.25質量%以上である、請求項に記載の抗ウイルス性が付与されたプラスチック成形物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の非繊維製品用抗ウイルス加工剤と、有機溶剤又は固体分散媒と、を含有し、
非繊維製品用である、抗ウイルス加工用組成物。
【請求項7】
前記アルミニウム塩の含有量が、前記抗ウイルス加工用組成物の不揮発分全量を基準として、0.25質量%以上である、請求項に記載の抗ウイルス加工用組成物。
【請求項8】
請求項に記載の抗ウイルス加工用組成物により形成され、抗ウイルス性が付与された膜を含む、非繊維製品